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JP5008271B2 - アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法 - Google Patents

アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法 Download PDF

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JP5008271B2 JP2005127623A JP2005127623A JP5008271B2 JP 5008271 B2 JP5008271 B2 JP 5008271B2 JP 2005127623 A JP2005127623 A JP 2005127623A JP 2005127623 A JP2005127623 A JP 2005127623A JP 5008271 B2 JP5008271 B2 JP 5008271B2
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Description

本発明は不飽和カルボン酸エステルの製造法に関するものである。
本発明は不飽和カルボン酸エステルの製造方法に関する。特に本発明はアルカン原料を主に不飽和アルデヒドへ変換し、得られた不飽和アルデヒドとアルコールから直接不飽和カルボン酸エステルを得る製造方法に関する。不飽和カルボン酸エステルの最も一般的な製造方法は、不飽和カルボン酸とアルコールから酸を触媒としてエステル反応により得る方法であり、公知技術として広く行われている。その原料となる不飽和カルボン酸は、オレフィンの酸化による不飽和アルデヒドの製造、不飽和アルデヒドをさらに酸化して不飽和カルボン酸を製造する公知技術が一般的である。現在も精力的な触媒改良による収率向上研究が行われている。すなわち、オレフィン類の反応性に富む不飽和炭素結合を利用した反応方法である。具体的な例としては、プロペンを原料に気相2段の酸化反応によって、アクロレインを経てアクリル酸が得られている。また、イソブテンを原料に同様にメタクロレインを経てメタクリル酸が得られている。
このようにして得られたアクリル酸およびメタクリル酸をアルコールとの通常行われている酸触媒反応によるエステル化によって、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル等のカルボン酸エステルの製造が公知技術として広く行われてきた。本発明は従来不活性として主に燃料に用いられていたアルカンを原料とし、主にまず、不飽和アルデヒドへ変換し、不飽和アルデヒドを得る工程と回収した不飽和アルデヒドとアルコールを酸素が存在する液相状態で触媒と反応させ、直接不飽和カルボン酸エステルを製造する方法に関するものである。
さらに、生成した不飽和カルボン酸エステルを分離回収し、純度の高い製品を得るとともに、原料アルカンのロスを少なくし、効率的に不飽和カルボン酸エステルを得るため、鋭意研究の結果本発明を完成させた。すなわち、主反応工程以外の複数のリサイクル工程を考案、最適化することによって、高い原料利用効率を実現したプロセスを提供するものである。不飽和カルボン酸エステルは商業的に重要な化学試薬である。特に重要なのは(メタ)アクリル酸エステルである。単独でまたは他のモノマーと重合され、塗料、接着剤、シーラント、コーキング材、などプラスチック材料として幅広く商業的に有効なポリマーとして利用されている。不飽和カルボン酸エステルの製造方法として古くから、現在に至るまで様々な方法が提案され、また、事業化されている。
オレフィン類はナフサクラッカー等から得られる化学原料であり、近年需要の増加に伴う原料不足、原料としての価格の高騰が大きな問題となっている。一方、アルカン類、例えばプロパン、イソブタン等は、プロピレン、イソブテン等のオレフィン類に比べ、化学構造から予想されるように、極めて安定であり反応性に乏しいため、化学原料としての利用は少ない。ところがアルカン類は、天然ガス中に豊富に含まれ、また供給量も安定していることから、近年アルカンを原料にした有用化学製品の研究開発、たとえばプロパンからアクリル酸を直接合成することを目指した触媒開発等が活発に行われてきている。
特開2000−24501号、特開2001−137709号などにはアルカンから不飽和カルボン酸を直接製造する触媒、触媒の製造方法が開示されている。すなわち、アルカンを原料とし、中間体アルデヒドを得ることなく、一段の酸化反応で対応する不飽和カルボン酸まで酸化し得る触媒反応技術の開発である。不飽和カルボン酸が得られれば、さらに従来技術として知られる酸とアルコールのエステル化反応で、ほぼ定量的、容易に不飽和カルボン酸エステルが得られる。すなわち、従来技術ではアルカンを原料として、不飽和カルボン酸を得るルートを目指し研究開発が進められてきた。
特公昭41−8954号公報 特開昭51−34257号公報 特開昭52−42549号公報
アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造法において、不飽和カルボン酸エステルを高収率かつ安定に得られる方法を提供する。
アルカンを原料として酸素含有ガスにて気相接触酸化反応を行うに際して、生成する不飽和アルデヒドの選択率を不飽和カルボン酸に比べて相対的に高めることで、目的の不飽和カルボン酸エステルの収率を高めることができる。
本発明によれば、アルカン原料を分子状酸素により接触酸化し、不飽和カルボン酸エステル類を得る方法において、従来のようにその中間生成物として不飽和カルボン酸が多く生成する触媒や条件を選択するよりも不飽和アルデヒドが多く生成する触媒や条件を選択する方が、目的物である不飽和カルボン酸エステルの収率を高める事ができる。
本発明は従来の不飽和カルボン酸エステル製造プロセスとは全く異なる概念、異なる反応を基に、反応プロセスを考案構築したものである。つまりアルカンを原料として、高い収率で不飽和カルボン酸エステルを得る方法を見出し本発明に至った。すなわち、アルカンからカルボン酸までを一段で合成するのではなく、中間体として不飽和アルデヒドを得、得られた不飽和アルデヒドをアルコールとの触媒反応によって直接エステルを得る反応(直メタ法)工程で構築された画期的な方法である。本法の特徴を、工程毎にさらに詳しく述べる。
本発明による方法は、気相酸化反応工程、急冷工程、脱水工程、不飽和アルデヒド吸収工程、アルカン回収リサイクル工程、酸化エステル化反応工程、未反応不飽和アルデヒドの回収工程、油水分離工程、不飽和カルボン酸エステルの精製工程、不飽和カルボン酸のエステル化工程からなる。
まず、気相酸化反応工程について説明する。アルカンとして例えば、プロパン及びまたは、イソブタンを原料とし、分子状酸素を含むガスとともに気相酸化反応器で気相接触酸化し、アクロレイン及びまたはメタクロレインを多く含む反応ガスを得る。本発明の場合、この反応が極めて重要である。従来のアルカン酸化技術では主に不飽和カルボン酸を得ることに主眼が置かれているのに対し、本発明では、カルボン酸の生成をむしろ抑制し、アルデヒドの生成とカルボン酸の生成比率を特定の範囲に制御して行うことが極めて重要であることを見出した。従来技術から見ると、カルボン酸は目的生成物であるため、カルボン酸収率を高めた反応がこの工程で行われている。
一方、本発明の特徴は、プロセス全体としてアルカンから不飽和カルボン酸エステルの収率を高めることができることにあり、アルデヒドから直接、エステルに変換する反応工程を擁しているため、アルデヒドは高い濃度領域で操作される。ここでいうアルデヒドの高い濃度領域と言う条件が極めて重要なことである。例えば、イソブタンを例に述べると主にメタクロレインとメタクリル酸が主な生成物質として生成する。本発明の方法では、メタクロレインが得られれば次の反応工程で例えばメタノールとの反応によってメタクリル酸メチルが得られるので、100%メタクロレインすることが好ましく見える。しかし、メタクリル酸を生成させず、メタクロレインとして得る条件ではアルカンの転化率が低くなること、メタクロレインのみが生成する触媒や条件では重合物が生成し易く、反応器出口から急冷塔で重合物による閉塞が起こりやすいことを見出した。
すなわち、メタクロレインを高濃度で得ることはプロセスを安定に維持するには問題があることがわかった。すなわち、メタクリル酸を一部生成する触媒や条件がプロセス上極めて重要であることを見出した。一方、メタクリル酸があまり多く生成する触媒や条件を選定すると、COxが増加しアルカン収率を低下させること、さらにメタクリル酸の生成が高くなると、別の現象によると推定される重合物が増加し反応器出口から急冷塔の工程で閉塞物が発生する現象が生じることがわかった。プロセスの安定性のみならず、メタクリル酸が多くなると酸触媒による通常のエステル化反応工程の負荷が増大するため本発明の特徴、効果を低減させ好ましくない。
すなわち、アルカンの気相酸化工程では、不飽和カルボン酸および不飽和アルデヒドを特定の範囲に管理して行うことが重要であり、具体的な操作の指標として例示すると、不飽和カルボン酸は生成物の選択率で0.5%〜30%、かつ不飽和アルデヒド/カルボン酸の比が2以上19以下、好ましくはカルボン酸の選択率が1〜20%で不飽和アルデヒド/不飽和カルボン酸の比が3以上19以下、さらに好ましくはカルボン酸の選択率が1〜12%で不飽和アルデヒド/不飽和カルボン酸の比が4以上18以下の操作条件および触媒が選定される。アルカンを活性化できる触媒としては、ヘテロポリ酸化合物触媒を利用することができる。その中で、例えば、PW系、PMo系、SiW系、SiMo系、PMoW系、PMoV系、のヘテロポリ酸類が好ましく、さらに好ましくは、例えばPMo12の元素比で表されるケギン構造を有するヘテロポリ酸類が好ましい。
より好ましくは、PMoVCuSb系、AsMoVCuSb系、SiMoVCuBi系、PMoWCuSb系、SiWMoVCu系、などのMoを含む触媒系が効果的な触媒系として挙げることができる。また、式AaMomNnXxOoを有する触媒では、Aは、Bi、V、W、の少なくとも1つであり、NはNb、Ta、Zr、Cu、Mn、Fe、Ni、Coの少なくとも1つであり、XはSb、Bi、Te、の少なくとも1つであり、aは1〜1.5、mは12、nは1〜8、xは1〜5である、などが基本構成としてあげられ、さらにNi,Fe,Co、Mn、Cr、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Pr,Nd、Pm、Sm、Gd、から選ばれた成分の単独または複数成分を含むこともできる。
好ましくはモリブデンおよびニオブを含む触媒であり、より好ましくは、モリブデン、バナジウム、ニオブ、アンチモンを含むブロンズ類似構造のVMoNb(Sb/Te)系、VMoNb(Sb/Te)Bi系触媒などが挙げられる。これらの触媒に活性や選択性の調製のためにさらにNi,Fe,Co、Mn、Cr、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Pr,Nd、Pm、Sm、Gd、から選ばれた成分の単独または複数成分を含むこともできるがこの限りではない。
また、アルカンからアルデヒドを効果的に得る反応方法として、アルカンを脱水素触媒と酸化触媒を組み合わせて行うことも効果的な方法の一つである。脱水素触媒を予備反応器に充填し、アルカンのみを供給し、一部を脱水素、変換し次いで広くオレフィンからアルデヒドを得るために知られる酸化触媒系を組み合わせて、アルデヒドを得ることができる。この方式は、予備反応器が必要にはなるが、中間体のオレフィンの分離生成工程は不要であるので、反応特性からは優れる方法の一つである。脱水素触媒として、アルミナ、酸化Cr/アルミナ、Pt/アルミナ、Pt/Zn−アルミナ、活性炭などから酸化触媒の選定と合わせて最適なものを選定して用いることができる。酸化触媒としては、シーライト構造を有するMoBiFeNiMgCe系、MoSbFeCoCeCs系等のモリブデンおよび鉄を含む複合酸化物類が好ましく用いられる。
酸化反応器の選定と触媒構造には重要な関係があり、概ね、気相酸化反応に用いる反応器が熱交換器型の固定床反応器の場合には、反応条件ガス線速における圧力損失が円柱状触媒の70%以下となる形状に設計、成型した触媒を用い。反応器として流動層反応器、ライザー型反応器を用いる場合には、30〜70重量%の範囲から選ばれたシリカを含む触媒粒子であって、平均粒子径が20〜150μm、好ましくは30〜100μm、かつ粒径分布を有した球状触媒が用いられる。ライザー型反応器を用いる場合には、触媒の保有する格子酸素でアルカンを酸化して目的生成物を得、触媒を再生塔に移動させた後に、酸素含有ガスで再酸化して触媒を再生する方法も効果的であり選択することができる。
反応系の選定はアルカン、酸素、不活性ガス等で構成される爆発範囲から外れた2つの条件から選定される。1つはアルカン爆発範囲下限以下の低濃度の組成であり、アルカンを高い転化率で反応させ、未反応のアルカンのロスが無視できる方法である。2つ目は、爆発範囲の上限より高い濃度が選定できる。この場合、爆発範囲を避けるため、供給するイソブタンを全て反応させるには量論量からも不足する。したがって、未反応イソブタンが多く残り、回収リサイクルしながら反応することが特徴の反応方法である。それぞれ、長所、短所があり、状況に適した触媒、反応方式を選定して実施することが好ましい。
次に反応器から急冷塔工程について詳細を説明する。アルカンの酸化反応によって生成した不飽和アルデヒドおよび不飽和カルボン酸を含む生成ガスは反応性が高いため生成物の熱分解(アフターバーニング)、重合反応を起こしやすい。したがって触媒層から出た反応ガスは可能な限り滞留時間を短くすることが好ましい。具体的な時間としては3秒以下、好ましくは2秒以下、さらに好ましくは1秒以下の時間で急冷塔に導入する。また、反応ガスを熱交換によって急激に冷却することも効果的である。冷却の方法としては、スチーム、水の噴霧、熱交換器による除熱など最適な手法から選択できる。冷却する温度は不飽和アルデヒドなどが変性しにくい350℃以下の温度まで冷却する。好ましくは330℃以下、さらに好ましくは300℃以下に冷却することが好ましい。
しかし、急冷等入り口までの温度が200℃以下まで低下すると、高沸点副生成物の付着等が起こりやすくなるため、220℃以上、好ましくは250℃以上の温度の範囲が好ましい。急冷等に導入された反応ガスは、100℃以下好ましくは90℃以下さらに好ましくは80℃以下に冷却する。この操作によって生成した不飽和アルデヒド、未反応アルカン等の低沸点成分類と比較的高い沸点である不飽和カルボン酸、水、および高沸点副生成物等を分離する。冷却方法も様々な方法が可能であるが、例を示すと、反応で凝縮した水を含む溶液をスプレー等によって噴霧し反応ガスと接触させ冷却する方法が効果的で簡便な手法として好ましい。この場合、新たに水を追加し液性を制御し噴霧する手法や、噴霧する循環水は熱交換器を介在させることによって塔底部の温度を一定の温度に制御することができる。
さらにスプレー法で行う場合には配管ラインにストレーナー等を設置することでノズル等の閉塞が抑制でき安定な噴霧状態を維持できるので好ましい。急冷塔塔底部からは、塔底液が、塔底部の液面高さが一定となるように、抜き出される。不飽和カルボン酸を含むこの塔底からの抜き出し液は次の不飽和カルボン酸エステル化工程に供給される。また、急冷塔底部の凝縮液は反応性の高い副生物も含むため、重合物による閉塞等が起こりやすい。重合物等の付着を抑制するためには滞留時間を短くすることが効果的であり、平均滞留時間は10時間以内、好ましくは5時間以内、さらに好ましくは3時間以内である。
また、塔底部の凝縮液には、タール状物も冷却操作によって発生するため塔壁や配管に付着し閉塞が起こりやすくなる。これらを抑制する方法として重合防止剤を添加することが好ましい。さらに凝集を抑制する分散剤を合わせて存在させることが液の抜き出し操作を容易にすることから好ましい。ここでもちいる重合防止剤は水溶性、油溶性の両方に溶解するものが好ましい、単独でその機能を持つ重合防止剤が操作からは好ましいが、複数組み合わせることで実施することもできる。添加する量は、凝縮液組成によってコストと効果からそれぞれ概ね1〜1000ppmの範囲から最適な量が選定され、好ましくは1〜500ppmの範囲である。重合防止剤はハイドロキノン類、Nオキシル構造を持つものなどから広く選定することができる。
次に、脱水工程について詳細を説明する。
不飽和カルボン酸を分離した、組成として不飽和アルデヒド、未反応のアルカン、炭酸ガス、水等を含むガスが、急冷塔上部から脱水塔に導かれる。該ガス中に水分が多く含まれたままであると、後工程の酸化エステル化工程に、水が持ち込まれる事となり、酸化エステル化の反応性が低下する。したがって、酸化エステル化工程の前段階で水を除去することは、酸化エステル化工程にとって極めて重要なことである。ガス中に含まれる水を分離除去する方法は、一般的に多く知られているが、本発明の方法は、次の方法による。要すれば、不飽和カルボン酸を分離したガス成分を酸化エステル化工程に使用するアルコールと同種のアルコールを含む液とを接触させ、水とアルコールの潜熱交換によって水を除去する極めて効率の良い方法である。具体例で説明すると塔上部より供給されるアルコールを含む液状の有機溶剤液は塔下部から上昇してくる不飽和アルデヒド、未反応のアルカン、炭酸ガス等、水を含む組成ガスと向流で接触し、熱変化から見ると潜熱交換作用と思われる効果によって、ガス状の水は凝縮液化して液体となり塔の底部へ下降する。一方アルコールを含む液状の有機溶剤液は水から熱を奪いガス化する。ガス状になったアルコール含有有機成分は、不飽和アルデヒド、未反応のアルカン、炭酸ガス等と同様に上部から次の不飽和アルデヒド吸収工程へ導かれる。すなわち、潜熱交換作用を用い簡便に脱水する方法である。
次に不飽和アルデヒド吸収工程を説明する。
脱水工程での潜熱交換作用によって脱水された後のガスは、その中に含まれる不飽和アルデヒドを液として得るために不飽和アルデヒド吸収塔の塔底部に導かれる。ガス状の不飽和アルデヒド含有有機成分は、不飽和アルデヒド吸収塔の塔底部における冷却凝縮および未凝縮の不飽和アルデヒドを含む塔内上昇ガスを塔頂からの溶媒と接触吸収させる方法によって得ることができる。得られた不飽和アルデヒドを含む有機溶液は、不飽和アルデヒドの酸化エステル化反応工程の原料として供される。
これが、本工程の概要ではあるが、その詳細は下記の如くその運転条件、重合防止法、不純物抑制法と多岐に及ぶ。
塔底部における冷却凝縮の方法としては、冷却された塔底液を塔内へ循環させながら、導入されたガスと循環液とを直接接触させる方法が好ましい。不飽和アルデヒド含有ガスをより効果的に冷却凝縮する為に、熱交換器を用いて循環塔底液を−10℃以下に冷却する。好ましくは−15℃以下、さらに好ましくは、−20℃以下に冷却する事が好ましい。
冷却凝縮の効果は、ガス温度ひいては塔内の操作温度を低下させ、ガス吸収としてはより好ましい運転条件を達成するということおよび、アルデヒド類は過酸化物を生じやすく、これはラジカル重合を引き起こす要因となることを冷却により回避できることにある。
熱交換器による冷却運転の方法としては、塔頂ガス温度が指標となり、塔頂ガス温度で、0℃以下になるように調整される。好ましくは、−5℃以下、更に好ましくは−10℃以下がよい。塔頂ガス温度が高くなると有効成分のベントロスが増大する為好ましくない。
上昇ガスと塔底循環液との気液の直接接触によりガス側の顕熱は液側に移動し、急激に冷却されその結果として不飽和アルデヒドを含むガス中の有機成分の殆どは凝縮する。 循環液はガスからの顕熱及び凝縮潜熱を受け液温が上昇し塔底へ流下後、熱交換器で冷却され循環液として再度塔内に供される。
また、吸収塔の操作圧力は例えば特開平2−256625号公報記載の様に、常圧から20kg/cm2Gの範囲から選択する事ができ、より高圧な条件ほど吸収効率も向上するが、あまりにも高圧の条件になると、運転操作に危険が伴うこと、更には吸収塔のみならず反応器やその他の機器全てに耐圧性を持たせる為には高価な材質が必要となること、高圧を達成する為には、高圧用のコンプレッサーが必要であること等、建設コストの面でも実用的ではない。
これらの事情を鑑みると、本発明では、常圧から2.0kg/cm2Gが好ましく、より好ましくは常圧から1.5kg/cm2Gの圧力条件で運転する。
未凝縮ガスは、塔頂から流下してくる溶剤と気液接触して溶剤中に溶解し塔底部へと流下して行く。吸収に使用される溶剤(以後吸収溶剤と言う)としては、最終製品である不飽和カルボン酸エステルを合成する原料アルコールを含む液、例えば最終製品がメタクリル酸メチルであればメタノール、メタクリル酸エチルであればエタノール、メタクリル酸n−ブチルであれば、n−ブタノールであればよい。
吸収溶剤は、純アルコールを新規にプロセス外から導入してもよいし、本工程の下流の工程で回収されたアルコールをリサイクル使用してもよい。または、それらを組み合わせて用いることもできる。但し、吸収溶剤中の水濃度は、2重量%以下とする。好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下とすることが望ましい。吸収溶剤中に水が多いと、酸化エステル化工程において、不飽和カルボン酸の副生量が増大し、不飽和カルボン酸エステルの生成を阻害してしまう。
更に吸収溶剤を複数の箇所から導入することも可能である。この場合には、塔頂に近い箇所ほど吸収溶剤中のアルコール濃度を高くして用いると良い。なお、不飽和アルデヒド類や不飽和カルボキシル化合物が多く含まれていると、過酸化物由来のラジカル重合の可能性がありこれを回避する為に、塔内温度の管理が重要なことは上述の通りであるが、本発明者らは、それのみならず液中の溶存酸素濃度管理の重要性を見いだした。従来は、ビニル化合物の重合防止の為には、分子状酸素を例えば蒸留塔や吸収塔、貯蔵タンク内に直接添加する事が当業者の間では常識となっている。これに反して、本発明者らは、溶存酸素濃度を1mg/L以下、好ましくは0.5mg/L以下とする事により、実質的に重合物の生成をなくす事ができる事を見いだしたのである。
また、該吸収塔底部は低温条件での凝縮が起こる為、所望の不飽和アルデヒド以外に酸類も凝縮する。その結果、液性は、pHで2〜3の酸性域になる。この条件下では、アルデヒド類がアルコールと反応してアセタールを生成してしまうことが知られている。
このアセタール類は当該プロセスの製品である不飽和カルボン酸エステルに近い沸点を有する物質が多く、製品の精製工程では蒸留分離することが困難である。アセタールが残留していると製品の純度低下につながる為、アセタールの生成を抑制することが重要である。本発明者らは、該プロセスにおけるアセタール生成の抑制法として、不飽和アルデヒド吸収液として使用する、本工程の下流の工程からリサイクルされたアルコールを含む液と pHの高い液を混合し、これを吸収液として吸収塔内に供し、塔底液のpHを5以上好ましくは6以上に調整する事で、アセタールの生成を抑制できる事を見いだした。混合するpHの高い液としては、水酸化ナトリウムのメタノール溶液等が挙げられるが、好ましくは、該プロセス内で用いているpHの高い液、例えば酸化エステル化工程の出口液等の一部をリサイクルして使用する事が好ましい。
直接接触させる部位および気液接触吸収させる部位においては、公知の気液接触方法による凝縮、吸収が行われ、その装置としては、多孔板塔、泡鐘塔、充填塔、あるいはこれらの組み合わせなどが使用できる。
塔内では、トレイや充填物が使用される。トレイの具体例としては、バブルキャップトレイ、デュアルトレイ、シーブトレイ、ターボグリッドトレイ、スーパーフラッシュトレイ、マックスフラクストレイ等が挙げられ、溢流堰やダウンカマーの有無などは区別されない。また、充填物の具体例としては、円柱状、円筒状、サドル型、球状、立方体状、角錐体状など従来から使用されている充填物の他、高性能な充填物として特殊な形状を持つ規則充填物や不規則充填物でもよく、これらは本発明に好ましく用いる事ができる。規則充填物としては、スルザーパッキング(スルザーブラザーズ社製)、住友スルザーパッキング(住友重機械工業社製)、テクノパック(三井物産社)などのガーゼ型規則充填物、エムシーパック(三菱化学エンジニアリング社製)、テクノパック(三井物産社)、メラパック(住友重機械工業社製)などのシート型規則充填物、フレキシグリッド(コーク社製)のグリッド型規則充填物、さらには、ハニカムパック(日本ガイシ社製)、グッドロールパッキング(東京特殊金網社製)、インパルスパッキング(ナガオカ社製)、ジェムパック(グリッチ社製)、モンツパック(モンツ社製)が挙げられる。不規則充填物としては、インタロックサドル(ノートン社製)、フレキシリング(日揮社製)、IMTP(ノートン社製)、カスケードミニリング(マツイマシン社製)、ラッシヒリング、テラレット(日鉄化工機)等が挙げられる。
続いて、酸化エステル化反応工程について説明する。これは、不飽和アルデヒドとアルコール及び分子素とから、不飽和カルボン酸を経ず、直接不飽和カルボン酸エステルを製造する工程である。この反応工程に用いる触媒は、貴金属担持触媒で式RrBbNnであって、Rはパラジウム、金、ルテニウムの少なくとも1つを含み、BはPb、Bi、Tl、Hg、から選ばれた少なくとも1つ、NはMg、K、Naの1つを含み、平均粒子径が30〜200μmの球状の担体に担持してなる触媒を用いることを特徴とする製造方法である。Nは通常0.01〜30重量%、好ましくは0.01〜5重量%の範囲から選ばれる量で使用する。好ましくは、パラジウム・鉛含有担持触媒、パラジウム・ビスマス含有担持触媒である。さらに好ましくは、活性化処理されたパラジウム・(鉛及び又はビスマス)含有担持触媒のパラジウム/(鉛、及び又は)担持組成比が原子比で3/0.7〜3/1.3であり、パラジウム・(鉛及び又はビスマス)金属間化合物である。例えばパラジウム・鉛金属間化合物の場合には、(111)面のX線回折角(2θ)が38.55〜38.70となる触媒が好ましい。
触媒成分としてR,B成分の他に異種元素として、例えば水銀、タリウム、テルル、ニッケル、クロム、コバルト、インジウム、タンタル、銅鉛、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、マンガン、銀、レニウム、アンチモン、スズ、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、白金、金、チタン、アルミニウム、硼素、珪素などを含んでいてもよい。これらの異種元素は通常、5重量%、好ましくは1重量%を超えない範囲むことができる。これ異種元素や上述のN成分などは結晶格子間にその少量が侵入したり、結晶格子金属の一部と置換していてもよい。また、N成分は、触媒調製時にパラジウム化合物あるいは鉛化合物を含む溶液に加えておき担体に吸着いは付着させてもよいし、あらかじめこれらを担持した担体を利用して触媒を調製することもできる。また、反応条件下に反応系に添加することも可能である。
触媒調製のために用いられるR,B成分は、例えば蟻酸塩、酢酸塩などの有機酸塩、硫酸塩酸塩、硝酸塩のごとき無機酸塩、アンミン錯体、ベンゾニトリル錯体などの有機金属錯体、酸化物、水酸化物などのなかから適宜選ばれる。例えばパラジウム化合物としては塩化パラジウム、酢酸パラジウムなどが、鉛化合物としては硝酸鉛、酢酸鉛、一方、ビスマス化合物としては有機化合物が好適である。N成分についても有機酸塩、無機酸塩、水酸化物などから選ばれる。
担体は活性炭、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、シリカアルミナマグネシア、ゼオライト、ジルコニア含有シリカ、マグネシア、水酸化マグネシウム、チタニア、炭酸カルシウム、などから広く選ぶことができる。好ましくは、化学的に安定な材料であり、特に酸および塩基に対して安定な担体である。さらに好ましく最適な、比表面積、細孔構造を有するものから選ばれる。好ましくは活性炭、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、シリカアルミナマグネシア、ゼオライト、ジルコニア含有シリカである。
担体へのジウムを坦持させる場合は、担持量は、担体重量に対して通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。鉛を坦持させる場合、その担持量は担体重量に対して通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であるが、パラジウム、鉛、ビスマスの各担持量よりも、むしろパラジウム/(鉛及び又はビスマス)の担持組成比(原子比)が重要である。
即ち、本発明の活性化の対象となるパラジウム・(鉛およびまたはビスマス)担持触媒のパラジウム/(鉛及び又はビスマス)の担持組成比(原子比)としては3/0.1〜3/10と広い範囲から選べるが、好ましくは3/0.1〜3/3の範囲、より好ましくは3/0.7〜3/1から選ぶのが好適である。
パラジウム・鉛系の触媒の場合には、さらに好ましくはパラジウム金属(3d(3/2)+3d(5/2))/鉛金属(4f(7/2)×1.75)のX線光電子スペクトル強度比が1/0.2〜1/0.7の範囲となることである。
X線回折角(2θ)が355未満の触媒ではアルコール基準の収率の低下が著しく、例えば蟻酸メチルの生成が増加する。38.70を越えるとアルデヒドの分解が顕著となり、アルデヒド基準の収率が低下する。また、担持鉛量が原子比で1.3を超えると蟻酸メチルの生成が顕著となり、0.7未満でルデヒドの分解によるMMA選択率の低下が大きい。本発明の活性化法により得られるパラジウム・鉛系の触媒の場合には、さらに好ましいパラジウム金属(3d(3/2)+3d(5/2))/鉛金属(4f(7/2)×1.75)のX線光電子スペクトル強度比が1/0.2〜1/0.7の範囲ではアルデヒド基準、及びアルコール基準の収率がともに改善される。このような担持触媒を得るには、パラジウム/鉛の担持組成比が原子比で3/1.3を越えない量に鉛の担持量を制た触媒を準備しておき、これを活性化処理に供するのが好ましい方法である。
該不飽和カルボン酸エステル造において使用するアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、オクタノールなどの脂肪族飽和アルコール、エチレングリコール、ブタンジオールなどのジオール、アリルアルコール、メタリルアルコールなどの脂肪族不飽和アルコール、ベンジルコールなどの芳香族アルコールなどがあげられる。これらのアルコールは単独もしくは任意の二種以上の混合物として用いることができる。このアルデヒドとアルコールとの使用量比には特に限定はなく、例えばアルデヒド/アルコールのモル比で10〜1/1000のような広いで実施できるが、一般的には1/2〜1/50の範囲で実施される。
本製造反応は気相反応、液相反応、潅液反応などの公知の方法で実施できる。好ましくは、液相反応であり、例えば、気泡塔反応器、ドラフトチューブ型反応器、撹拌槽反応器などの任意応器形式によることができる。
カルボン酸エステルの製造反応で使用する酸素は分子状酸素、すなわち酸素ガス自体又は酸素ガスを反応に不活性な希釈剤、例えば窒素、炭酸ガスなどで希釈した混合ガスの形とすることができ、空気を用いることもできる。また、この反応を連に実施する際には鉛を含む物質を反応器に加えながら反応を行うことで触媒の劣化を抑制できる。このとき、反応器出口側の酸素分圧を0.8kg/cm2G以下とすることで反応器に供給する原料液中の鉛濃度を少量にして触媒の劣化を抑制でき好ましい。反応圧力は減圧から加圧下の任意の広い圧力範囲で実ることができるが、通常は0.5〜20kg/cm2G の圧力で実施される。反応器流出ガスの酸素濃度が爆発範囲(8%)を越えないように全圧を設定するとよい。
このカルボン酸エステル製造反応は、反応系にアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物(例えば、物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩など)を添加して反応系のpHを6〜9に保持することが好ましい。特にpHを6以上にすることで触媒中の鉛成分の溶解を防ぐ効果がある。これらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の化合物は単独もしくは二種以上組み合わせて使用ことができる。本発明における酸化エステル化反応は100℃以上の高温でも実施できるが、好ましくは30〜100℃である。より好ましくは60〜100℃である。反応時間は特に限定されるものではなく、設定した条件により異なるので的には決められないが通常1〜20時間である。
続いて、酸化エステル化工程で生成した、不飽和カルボン酸エステル、未反応不飽和アルデヒド、未反応アルコール、副生する不飽和カルボン酸、水を含む液から未反応の不飽和アルデヒドと不飽和カルボン酸エステルとを分離回収し有効利用する方法について詳細に説明する。従来、酸化エステル化反応における未反応不飽和アルデヒド、未反応アルコールの回収については、特開平11−246453号公報に示されている様に、1本の蒸留塔で共沸生成物を利用して分離するという、設備的にも簡略なそして重合等のトラブルが少ない方法が見いだされており、本発明においても同様な技術で蒸留分離することができる。また、特開2000−1458号公報には、回収された未反応アルデヒドを含む溶液を酸化エステル化工程にリサイクルする方法が記載されているが、本発明においても、回収した不飽和アルデヒドおよび未反応アルコールを、アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造法に使用する事ができる。
酸化エステル化反応液から不飽和アルデヒドおよび未反応アルコールを分離する為に、蒸留塔の中間部に酸化エステル化反応液を供給し、蒸留分離によって不飽和アルデヒドおよび未反応アルコールを回収する。蒸留は公知の技術によって行う事ができるが、例えば、特開平11−246453号公報に記載された方法で蒸留する事が望ましい。
つまり、該工程では、塔頂から酸化エステル化工程で生じた低沸点化合物が抜き出され、焼却処理される。また、塔の中間段(供給段と塔頂の真中付近の段をいう)からは、主として回収された不飽和アルデヒドとアルコールが共沸混合物として抜き出される。これは、酸化エステル化工程へリサイクルする事ができる。さらに、塔底からは、主として不飽和カルボン酸エステル、未回収不飽和アルデヒド、未回収アルコール、水が抜き出され、製品の不飽和カルボン酸エステルを得るために、次工程へと供される。
つづいて、不飽和アルデヒドが分離された未反応アルカンを含むガスからアルカンを回収する工程について説明する。未反応のアルカンを含むガスは、酸素、窒素、生成した一酸化炭素、二酸化炭素、などを含んでおり、本工程では、気相酸化反応器の原料ガスとして、未反応アルカンを気相酸化反応器にリサクルするために、アルカンとそれ以外のガス成分を選択的に分離する。その1つが有機溶剤を用いた吸収方法である。アルカン類は有機溶剤に比較的容易に溶解する一方、酸素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素などは、溶解性が低いという原理に基づいた方法である。この方法で行えば、有機溶剤はガスに対して、相対的に熱容量が大きく、爆発による危険性を回避できる。
吸収に用いる溶剤としては、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケトン類、エーテル類などが使用可能であるが、吸収剤の選択は極めて重要であり、吸収機能はもちろんであるが、経済性、安全性、安定性などを考慮して決める必要がある。好ましいのは、炭化水素類であり、中でも炭素数6〜20からなる脂肪族炭化水素、脂肪族環式炭化水素、及び又は芳香族炭化水素が好ましい。
より好ましくは、炭素数7〜18からなる脂肪族炭化水素、脂肪族環式炭化水素、及び又は芳香族炭化水素である。炭素数が5以下では有機溶剤と未反応アルカンの比揮発度が小さく、蒸留により分離回収する場合に、多くの蒸留塔段数を必要とし多くのエネルギーを要する。一方、炭素数20以上を越えると常用の吸収塔の操作温度では、高粘度となり吸収効率が悪化するため好ましくない。好適な有機溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルヘプタン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、エイコサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、シメン、デユレン、メチルタフタレン、エチルナフタレン、プロピルナフタレン、ジメチルナフタレン、ジフェニールなどが挙げられるが、これらだけに限定されるものではない。
これらは、それぞれ単独で、あるいは混合物の形で使用できる。また不純物が蓄積してきた有機溶剤は、連続的あるいは間欠的に抜き出し蒸留操作などによって精製することもできる。アルカン含有ガスとの接触方式は、向流式、でも並流式でも良いが、吸収効率を上げるためには、多段向流接触がより好ましい。吸収塔の形式は、充填塔、多孔板塔、泡鐘塔、スプレー塔などのいずれの形式をもとることができる。吸収溶剤の供給量は、吸収塔の操作温度、操作圧力、ガス量および吸収溶剤の種類によって変化するので、一義的に規定するのは困難ではあるが、未反応アルカン1モルに対して、有機溶剤を0.5〜100モル、好ましくは、1〜50モル、より好ましくは2〜20モル供給するのがよい。
このように適正な量の吸収溶剤を供給することによって、実質全量のアルカンを回収することができる。吸収塔の操作温度は、吸収塔の内部または外部にクーラーを設置するなどして制御することができ、アルカンの吸収塔は、−20℃〜100℃、より好ましくは0℃〜80℃、さらに好ましくは20℃〜60℃の範囲から選べることができる。操作圧力は、吸収塔単独の最適条件からだけで設定されるべきではないが、吸収溶剤の吸収効率を向上させるため、加圧で操作し操作圧力を0.5〜10kg/cmG程度の範囲内で選ぶのが好ましい。また、加圧下で吸収塔を操作する場合には、吸収塔の操作圧力を高くした分だけ昇圧して運転することも可能である。
未反応アルカンを吸収した有機溶剤は次いで、蒸留塔、または放散塔に供給され、アルカンと有機溶剤が分離され、アルカンは反応器に、リサイクルされる。リサイクルされるアルカンに有機溶剤が含まれると有機溶剤の損失や反応への影響が懸念される。したがって、塔頂から得られるガス及び又は液中の有機溶剤量が1%以下、より好ましくは1000ppm以下さらに好ましくは100ppm以下に抑える。
また、蒸留塔もしくは放散塔は加圧下で操作することもでき、この場合は吸収塔および場合によっては反応器も同時に加圧下で操作することも可能で、プロセス全体を一貫して加圧下で操作することもできる。
また、アルカンの吸着分離回収方法として、複数の吸着ユニットが配列された圧力スイング吸着(PSA装置、pressure swing absorption gas generator)を用いた方法でアルカンを含むガスからアルカンのみを選択吸着して分離する。吸着したアルカンはバルブ操作などによって切り替えられ、圧力を操作することによって吸着塔からアルカンを脱離し反応器にリサクルすることもできる。
つづいて、不飽和カルボン酸エステル精製工程について説明する。
不飽和アルデヒド回収工程の塔底部からは、不飽和カルボン酸エステル、未回収不飽和アルデヒド、未回収アルコール、不飽和カルボン酸、水を主たる組成とする液が当該工程に供される。組成中の水分は、静置分離、遠心分離、抽出法等の操作で油水分離される。水分が除去された粗不飽和カルボン酸エステル含有液は高沸分離塔に供され、高沸点化合物、例えば不飽和カルボン酸等が蒸留分離される。塔頂からは、粗不飽和カルボン酸エステルが得られ低沸分離塔へ供され、塔底からは不飽和カルボン酸が得られ、不飽和カルボン酸エステル化工程に供される。
低沸分離塔では、低沸点化合物、例えば未回収の不飽和アルデヒド、未回収アルコール等が蒸留分離される。塔頂から抜き出される低沸点化合物には、有効成分としての不飽和アルデヒド、アルコールが含有されている為、これを回収し、酸化エステル化工程または不飽和アルデヒド回収工程にリサイクルすることができる。
低沸分離された粗不飽和カルボン酸エステルは、製品塔に供され、塔頂から製品を得る。
つづいて、不飽和カルボン酸エステル化工程について説明する。
急冷塔塔底液、高沸分離塔塔底液には、高濃度の不飽和カルボン酸が含まれている。
これらの液は、エステル化工程に供され、公知のエステル化触媒、例えば硫酸、強酸性イオン交換樹脂を用いてエステル化される。この工程で生成した不飽和カルボン酸エステルは、不飽和カルボン酸エステル精製工程に供される。
以下に実施例、比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例等で用いる圧力はゲージ圧力で表示し、kg/cm2Gで示すことにする。
[実施例1]
1.気相酸化反応工程
三酸化モリブデン144.0g、五酸化バナジウム8.27gおよびリン酸(85重量%)12.5gをパイレックス(登録商標)製三つ口フラスコに水1000mlとともに加え、24時間、加熱還流した。ついで、水溶液の不溶成分をロ別後濃縮し、赤褐色の結晶を得た。この結晶はX線回折、原子吸光分析および31PNMRで調べたところ、P:Mo:Vの原子比が1:11:1のモリブドバナドリン酸(PMo11V)であった。前述の操作を繰り返して得たモリブドバナドリン酸1678gを塩化第一銅49.5(g)を1450(L)の水に溶解し、この溶液に6.4重量%の硝酸アンモニウム水溶液725(g)を加え、よくかきまぜ、得られたスラリー溶液を濃縮し、ついで120℃で12時間乾燥した後、粉砕し、外径6(mm)、内径3(mm)、高さ6(mm)のリング形状に成型し、これを窒素気流中450℃で3時間、さらに空気中350℃で2時間焼成した。PMo11VCu0.5の組成をもつ触媒が得られた。
この触媒を外径48.6(mm)、内径45.0(mm)、長さ4.5(m)のジャケット付きステンレス製反応管(SUS304製)に、ガス入口部から出口部に向かって、触媒層を2層の反応帯に分け、入口部から2.3(m)間は触媒濃度C1、2.2(m)から4.5(m)間は触媒濃度C2になるように充填した。触媒濃度C2はリング触媒のみを充填した。また、触媒濃度C1は触媒濃度C2の半分になるように磁器製ラッシヒリング(外径6(mm)、内径3(mm)、高さ6(mm)のリング形状)で希釈した。
ジャケット部の熱媒温度を290℃で、イソブタン60vol%、酸素15vol%、水蒸気5vol%、窒素20vol%の混合ガスを接触時間3.3秒で供給した。12時間後に反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析したところ、イソブタンの8.3%が転化し、メタクロレインの選択率は50.1%、メタクリル酸の選択率は11.7%であった。
2.急冷脱水工程および不飽和アルデヒド吸収工程
次に、急冷塔、脱水塔、吸収塔による不飽和アルデヒド吸収工程は、特開平11−80077号公報を参考にして、以下のように実施した。
上記1.の工程で得られたメタクロレイン及び水蒸気を含有するガスを急冷塔に導入した。
導入されるメタクロレイン含有ガスの組成は、メタクロレインが2.35mol%、水が15mol%、アセトン等の液状副生物の合計が0.2mol%、そして窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、未反応イソブタン等の気体の合計が82.45mol%であった。クエンチ水を用いてガスを80℃に冷却し、部分脱水メタクロレインを得た。また、急冷塔塔底液は、エステル化工程に供された。
部分脱水メタクロレイン含有ガスを内径12cm、高さ5m、実段数30段のシーブトレイを装着した棚段塔式の脱水塔の塔底部へ、流量5.0Nm/hrで供給した。脱水塔の最上段からは、液状メタノールにハイドロキノン100重量ppmを加えた溶液を
200g/hrで供給した。脱水塔内におけるガス温度は底部で80℃、最上部で18℃に制御し、液状メタノール温度は、18℃に制御した。脱水塔の塔底部圧力は1.5kg/cm2Gに制御した。以上の条件で部分脱水混合ガスを更に脱水し、メタクロレインおよびメタノールガスを含む脱水混合ガスを脱水塔の最上部より得た。得られた脱水混合ガスを内径10cm、高さ5m、実段数30段のシーブトレイを装着した棚段塔型式の吸収塔の塔底気相部に供給した。吸収塔内の塔底液温度は、8℃、最上段の気相温度を−12℃に制御した。吸収塔の底部では、ボトム液を冷凍機にて−25℃に冷却循環しながら塔内に戻しつつ導入ガスの凝縮を行った。塔頂からは、液状メタノールにハイドロキノン100重量ppmを加えた溶液を 650g/hrで供給し、未凝縮のメタクロレインを吸収した。
さらに、塔頂から15段目には、後述の酸化エステル化工程反応液を混ぜpHを7〜8に調整した液を供給し、塔底液のpHは6.5に調整された。以上の条件で、脱水混合ガス中のメタクロレインガスとメタノールガスの実質的に全量が、凝縮、吸収により吸収塔の底部から得られた。得られた液状混合物の組成は、メタクロレイン35.5重量%、メタノール64.1重量%、水0.2重量%、アセトン等の副生物が0.1重量%であった。
3.未反応アルカン回収工程
特開平3−176439号公報の実施例1を参考にして未反応アルカンの回収を行った。つまり、未反応のイソブタン、酸素、二酸化炭素、その他窒素等を含有するガスをDixson Packingを充填した、径が15.84cm、充填高さ2mの吸収塔へ塔底部から5Nm3/hrで導入し、上部からn−パラフィンを47kg/hrで供給した。このn−パラフィンはデカン、ウンデカン、ドデカンの混合物であり、含有率はそれぞれ22,52,26重量%であった。吸収塔の外套部に−12℃の冷媒を循環させ常圧で操作したところ、未反応イソブタンの99.5%を回収することができた。このようにして得られた吸収液を放散塔上部から導入し、下部から気相酸化反応に用いるガスの一部を用いほぼ定量的にリサイクルすることができた。
4.酸化エステル化工程
本工程で用いる触媒を、以下のように製造、調整した。
シリカゾル水溶液としてステックスN−30(日産化学(株)製 SiO2分:30重量%)に硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムをそれぞれAl/(Si+Al)=10モル%、Mg/(Si+Mg)=10モル%となるように加え溶解させた後、130℃の温度に設定した噴霧乾燥機で噴霧乾燥して粒子系60μmの球状担体を得た。300℃、ついで600℃で焼成した後、これを担体として塩化パラジウム、硝酸鉛を担体100重量部当たりそれぞれパラジウム、鉛分として5重量部、6.5重量部となるように担持した後、ヒドラジンで還元して触媒(Pd5.0Pb6.5/Mg、Al−SiO2と表記する。)を得た。得られた担持触媒のPd/Pb担持組成比は原子比で3/1.95、パラジウム/鉛金属間化合物の(111)面のX線回折角(2θ)は38.745度であり、パラジウム(3d)/鉛(4f)のX線光電子スペクトルの強度比/1.24であった。ついで、触媒分離器を備え、液相部が3.5リットルの外部循環型ステンレス製気泡塔反応器にこの触媒800gを仕込み、触媒の活性化処理を行った。活性化処理を50時間で終了し、触媒を分析したところPd/Pb担持組成比(原子比)は3/1.09、パラジウム・属間化合物の(111)面のX線回折角(2θ)は38.634度であった。またパラジウム(3d)/鉛(4f)のX線光電子スペクトルの強度比は1/0.597であった。
この触媒990gを、触媒分離器を備えており、液相部が5.0リットルの外部循環型ステンレス製気泡塔反応器に仕込み、反応を実施した。37重量%のメタクロレイン/メタノール溶液を1.6リットル/hr、NaOH/メタノール溶液を0.06リットル/hrを連続的に反応器へ供給し、反応温度80℃、反応圧力5kg/cm2Gで出口酸素濃度が4.0%(酸素分圧0.2kg/cm2G相当)となるように空気量を調整しながらMMA生成反応を行い、10時間経過したところ、メタクロレイン転化率は60.8%、メタクリル酸メチルの選択率は91.2%であった。
5.不飽和アルデヒド回収工程
不飽和アルデヒド回収工程は、特開平11−246453号公報の実施例1を参考に実施した。上記工程4.で得たメタクロレイン、メタクリル酸メチル、水、メタクリル酸及びメタノールからなる反応混合物および、不飽和カルボン酸エステル化工程で得られたメタクリル酸メチルを含む液を径10cm、高さ6m、実段数45のシーブトレイを装着した棚段塔型式の蒸留塔の塔頂より30段目に、1943g/hrで供給した。
塔頂からは、塔内の流下液中の重合防止剤濃度が100ppm以上になるようにハイドロキノンを供給した。塔頂には、塔頂凝縮器を有する、減圧下でも液抜きできる装置を有し、塔底には、リボイラーおよび液面計でコントロールされた減圧下で塔底液を抜き出せる装置を有する。蒸留塔の塔頂温度は31℃、塔底温度は84℃、塔底より6段目の温度は81.4℃、塔頂の圧力は650torrで操作し、塔頂から15段目の塔中段液を700g/hr得た。
6.油水分離工程
上記工程5.で得た塔底液を1180g/hrで抜き出し、pHが2〜3となるように調整し、油水分離用遠心分離器へ供給した。油層は次の高沸分離工程に付した。
7.高沸分離工程
特開平11−302224号公報の実施例1を参考にして、高沸分離工程を以下のように実施した。内径10cm、実段30段のシーブトレイを装着した棚段塔型式の蒸留塔の塔頂より20段目に上記工程6.で遠心分離器によって油水分離された油層を1000g/hrで供給した。塔頂には塔頂凝縮器を有する、減圧下で液抜きのできる装置を有している。塔底にはリボイラー、および、液面計でコントロールされた減圧下で塔底液を抜き出せる装置を有する。塔頂より塔内流下液中の重合防止剤濃度が100ppm以上となるようにハイドロキノンを供給しながら、還流量が1000g/hr、塔頂圧が150mmHg、塔頂温度45℃、塔底温度70℃の条件下で連続蒸留を行い、塔頂液と塔底液を得た。塔頂液は、次の低沸分離工程へ送られ、塔底液はエステル化工程に付した。
8.低沸分離工程
特開平11−35523号公報の実施例1を参考にして、低沸分離工程を以下のように実施した。内径10cm、実段60段のシーブトレイを装着した棚段型式の蒸留塔の塔頂より20段目に工程7で得た凝縮液を920g/hrで供給した。塔頂には、ブライン冷却器を有する減圧下で液抜きが可能な装置を設け、塔底にはリボイラー、および、液面計でコントロールされた減圧下で塔底液を抜き出せる装置を有する。塔頂より塔内流下液中の重合防止剤濃度が100ppm以上となるようにハイドロキノンを供給しながら、還流量が400g/hr、塔頂圧が250mmHg、塔頂温度45℃、塔底温度80℃の条件下で連続蒸留した。塔底液である粗メタクリル酸メチルは、次のメタクリル酸メチル精製工程に送られた。
9.メタクリル酸メチル精製工程
上記工程8.で抜き出した塔底液を内径10cm、段数30段のシーブトレイを装着した棚段塔型式の蒸留塔の塔底に、688g/hrで供給した。塔頂にはブライン凝縮器を有する減圧下で液抜きできる装置を設け、塔底にはリボイラー、および、液面計でコントロールされた減圧下で塔底液を抜き出せる装置を有する。還流量が225g/hr、塔頂圧が140mmHg、塔頂温度が55℃、塔底温度が80℃の条件下で連続蒸留を行った。塔頂からは、588g/hrの精製メタクリル酸メチルを得た。
得られた精製メタクリル酸メチルのAPHAは約3であり、その純度は、99.90重量%以上であった。それを用いて製造したメタクリル酸メチルのポリマーの黄色度YIは3.5であり、モノマー、ポリマーともに優れた評価が得られた。
以上の工程で得られたメタクリル酸メチルは、仕込みイソブタンから44.5%の収率であった。
[実施例2](参考例)
酸化触媒として、Mo原料としてヘプタモリブデン酸アンモニウム、Fe、Co、Bi、Rb、Cu、In原料とし硝酸塩を用い、アンチモンとして酸化アンチモンを1ミクロン以下に粉砕し、各水溶液を混合してスラリー化した。得られたスラリー溶液を濃縮し、ついで120℃で12時間乾燥した後、粉砕し、外径6(mm)、内径3(mm)、高さ6(mm)のリング形状に成型し空気中540℃で2時間焼成してMo12Fe1.2Co6Bi2.4Sb1.3Cu1.2In0.3Rb0.15、の組成をもつ酸化触媒を得た。
この触媒を外径48.6(mm)、内径45.0(mm)、長さ4.5(m)のジャケット付きステンレス製反応管(SUS304製)に、ガス入口部から出口部に向かって、触媒層を2層の反応帯に分け、入口部から2.3(m)間は触媒濃度C1、2.2(m)から4.5(m)間は触媒濃度C2になるように充填した。触媒濃度C2はリング触媒のみを充填した。また、触媒濃度C1は触媒濃度C2の半分になるように磁器製ラッシヒリング(外径6(mm)、内径3(mm)、高さ6(mm)のリング形状)で希釈した。
イソブタンの脱水素触媒として活性炭を主原料に6mmφの球状に成型した触媒を充填した。イソブタンを反応温度550℃の脱水素反応器に接触時間3秒で通過させ、脱水素させたガスを次の酸化反応器に酸素、水蒸気、窒素と合わせて導入した。
酸化反応器のジャケット部の熱媒温度は350℃、酸化反応器に酸素を供給し、酸化反応器を通過させる時点の組成が、イソブタン40vol%、酸素15vol%、水蒸気5vol%、窒素バランスとなるように設定し混合ガスを接触時間3.3秒で供給した。12時間後に反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析したところ、イソブタンの30%が転化し、メタクロレインの選択率は65.3%、メタクリル酸の選択率は2.7%であった。
[実施例3]
水8450gにNb25として80.2重量%を含有するニオブ酸1290gとシュウ酸二水和物〔H224・2H2O〕4905gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.0、仕込みのニオブ濃度は0.532(molNb/Kg液)である。
この液を95℃で1時間加熱撹拌することによって、ニオブが溶解した水溶液を得た。この水溶液を静置、氷冷後、固体を吸引濾過によって濾別し、均一なニオブ混合液を得た。このニオブ混合液のシュウ酸/ニオブのモル比は下記の分析により2.32であった。
るつぼにこのニオブ混合液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、Nb250.864gを得た。この結果から、ニオブ濃度は0.65(molNb/Kg液)であった。
300mlのガラスビーカーにこのニオブ混合液3gを精秤し、約80℃の熱水200mlを加え、続いて1:1硫酸10mlを加えた。得られた溶液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO4を用いて滴定した。KMnO4によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って計算した結果、1.51(molシュウ酸/Kg)であった。
2KMnO4+3H2SO4+5H224→K2SO4+2MnSO4+10CO2
+8H2
得られたニオブ原料液を、下記の触媒調製のニオブ原料液(N)として用いた。
(乾燥粉体の調製)
仕込み組成式がMo10.22Nb0.10Sb0.26n/45wt%SiO2で示される酸化物触媒となる乾燥粉体を次のようにして製造した。
水4750gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH46Mo724・4H2O〕を909.1g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4VO3〕を131.7g、三酸化二アンチモン〔Sb23〕を149.5g加え、攪拌しながら90℃で2.5時間加熱して混合液(A)とした。
ニオブ混合液(N)786.6gに、三酸化二アンチモン〔Sb23〕44.8gを加えた。氷冷下で撹拌しながら、H22として30wt%を含有する過酸化水素水185.5gをゆっくり添加した。その後、攪拌混合して、混合液(B)とした。
得られた混合液(A)を70℃に冷却した後にSiO2として30.6wt%を含有するシリカゾル2941.2gを添加した。更にH22として30wt%を含有する過酸化水素水173.9gを添加し、50℃で1時間撹拌混合した。
次に混合液(B)を添加して原料調合液を得た。
得られた原料調合液を、遠心式噴霧乾燥器に供給して乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。乾燥機の入口温度は210℃、そして出口温度は120℃であった。
上記操作を5回繰り返し、乾燥粉体を集めて、以下の焼成例に用いた。乾燥粉体の保管は吸湿しないよう、密閉できる容器を用いた。
乾燥粉体480gを直径3インチのSUS製焼成管に充填し、5.0NL/minの窒素ガス流通下、管を回転させながら、340℃まで1時間で昇温し、340℃で4時間保持した。その後、640℃まで1時間で昇温し、640℃で2時間保持して本焼成して、触媒とした。
本触媒を実施例1と同様に反応を実施した。24時間後に反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析したところ、イソブタンの8.3%が転化し、メタクロレインの選択率は50.1%、メタクリル酸の選択率は11.8%であった。
[比較例1]
12−モリブドリン酸(H3PMo1240・30H2O:日本無機化学)の結晶2370(g)および塩化第一銅50(g)を20(L)の水に溶解し、この溶液に6.4重量%の硝酸アンモニウム水溶液100(g)を加え、よくかきまぜ、得られたスラリー溶液を濃縮し、ついで120℃で12時間乾燥した後、粉砕し、外径6(mm)、内径3(mm)、高さ6(mm)のリング形状に成型し、これを窒素気流中450℃で3時間、さらに空気中350℃で2時間焼成した。こうして、PMo12Cu0.5組成の触媒が得られた。
この触媒および実施例1と同様の反応器を用い、同じ条件で気相酸化反応を行った。但し生成したメタクロレインはリサイクルする事によりメタクリル酸の収率を高めるようにした。12時間後に反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析したところ、イソブタンの8.3%が転化し、メタクロレインの選択率は11.3%、メタクリル酸の選択率は40.7%であった。
さらに、実施例1の2〜9の工程を経て得られたメタクリル酸メチルは、仕込みイソブタンから40.4%の収率であった。
[比較例2]
12−モリブドリン酸(H3PMo1240・30H2O:日本無機化学)の結晶2370(g)と実施例2で用いたニオブ混合液(N)(ニオブ濃度が0.65(mol−Nb/Kg液))を384.7、硝酸クロム(III)九水和物を100.1g、硝酸カリウム101.2g加え、さらに、この溶液にキノリン1300gと水20Lを加えてかき混ぜ、得られたスラリーを濃縮した。ついで120℃で12時間乾燥した後、粉砕し、外径6(mm)、内径3(mm)、高さ6(mm)のリング形状に成型し、これを窒素気流中450℃で3時間、さらに空気中350℃で2時間焼成した。P1Mo12Nb0.1Cr0.251組成の触媒が得られた。
ここで得られた触媒を使用した他は、比較例1と同様の実験を行った。12時間後に反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析したところ、イソブタンの8.3%が転化し、メタクロレインの選択率は13.7%、メタクリル酸の選択率は30.2%であった。さらに、実施例1の2〜9の工程を経て得られたメタクリル酸メチルは、仕込みイソブタンから33.7%の収率であった。
本発明は、アルカン原料を分子状酸素により接触酸化し、不飽和カルボン酸エステル類を得る方法において、不飽和アルデヒドが多く生成する触媒や条件を選択することにより目的物である不飽和カルボン酸エステルの収率を高める事ができる。
本発明を実施するためのシステムの一例を示す概略図である。
符号の説明
a 原料アルカン
b 分子状酸素含有ガス
c 不飽和アルデヒド、不飽和カルボン酸含有ガス
d 不飽和カルボン酸除去ガス
e 不飽和カルボン酸含有廃水
f アルコール類
g 不飽和アルデヒド含有脱水ガス
h アルコール類
i リサイクルアルカン含有ガス
j 不飽和アルデヒド/アルコール溶液
k 分子状酸素含有ガス
l 酸化エステル化反応液
m 回収不飽和アルデヒド、アルコール
n 低沸廃油
o 不飽和カルボン酸エステル/水分含有液
p 粗不飽和カルボン酸エステル含有液
q 不飽和カルボン酸エステル
r 不飽和カルボン酸含有液
s 粗不飽和カルボン酸エステル含有液
(1)気相酸化反応工程
(2)急冷工程
(3)脱水工程
(4)不飽和アルデヒド吸収工程
(5)未反応アルカン回収工程
(6)酸化エステル化工程
(7)不飽和アルデヒド回収工程
(8)油水分離工程
(9)不飽和カルボン酸エステル精製工程(高沸分離、低沸分離、製品塔を含む)
(10)不飽和カルボン酸のエステル化工程

Claims (12)

  1. アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法であって、アルカンと酸素を気相で触媒と接触反応させることにより、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を不飽和アルデヒド/不飽和カルボン酸の比が2以上19以下で生成させ、未凝縮の不飽和アルデヒドを吸収塔に導入して、アルコールを含む有機溶媒との接触により不飽和アルデヒドを回収し、得られた不飽和アルデヒド及びアルコールと、酸素を含むガスとを液相で触媒と接触反応させて、不飽和カルボン酸エステルを合成する工程を有し、かつ前記吸収塔の塔底液をpH6.5以上に調整することを特徴とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法。
  2. アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法であって、未反応のアルカンを回収し、回収したアルカンを気相酸化反応器にリサイクルする工程を有することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法であって、不飽和カルボン酸エステルを合成する工程で生成した不飽和カルボン酸エステルを含む反応液から未反応不飽和アルデヒドを分離回収し、酸化エステル化反応工程に不飽和アルデヒドをリサイクルする工程を有する請求項1記載の製造方法。
  4. アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法であって、副生する不飽和カルボン酸を回収し、不飽和カルボン酸とアルコールを酸触媒によって不飽和カルボン酸エステルを合成する工程を有する請求項1記載の製造方法。
  5. 下記(1)〜(9)を含むプロセスで構成されることを特徴とした、アルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続製造方法。
    (1)気相酸化反応工程:アルカンと酸素を少なくとも含むガスを250℃以上の温度、気相で触媒と接触させ、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を不飽和アルデヒド/不飽和カルボン酸の比が2以上19以下で生成させる反応工程。
    (2)急冷工程:(1)の工程で得られた反応ガスを急冷し200℃以下の温度にし、反応物から不飽和カルボン酸を主として含む凝縮物と不飽和アルデヒド、水、未反応アルカンを含む成分を分離する工程。
    (3)脱水工程:水、不飽和アルデヒドおよび未反応のアルカンを含有する系にアルコールを含む有機溶媒とを接触させ水を選択的に除去する工程。
    (4)不飽和アルデヒド吸収工程:脱水された不飽和アルデヒド、未反応アルカンを含むガスを冷却し凝縮した不飽和アルデヒドを吸収塔に導入し、吸収塔の塔底液を6.5以上に調整して不飽和アルデヒドを回収しつつ、未凝縮の不飽和アルデヒドは、アルコールを含む有機溶媒と接触させ回収する工程。
    (5)アルカン回収リサイクル工程:未反応のアルカンを回収し、回収したアルカンを再度(1)の気相酸化反応工程にリサイクルする工程
    (6)酸化エステル化反応工程:(4)で得た不飽和アルデヒドを含むアルコール溶液を原料とし、酸素を含むガスと触媒の存在下で接触させ、不飽和カルボン酸エステルを合成する工程
    (7)未反応不飽和アルデヒドの回収工程:酸化エステル化反応によって生成した不飽和カルボン酸エステル、水、不飽和カルボン酸および未反応不飽和アルデヒド、残留アルコールを含む反応液から、低沸点成分である未反応の不飽和アルデヒド、アルコールを主として含む蒸留組成物と高沸点成分である不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、水を主として含む蒸留組成物に分離し、低沸点成分を上記(4)にリサイクルする工程。
    (8)油水分離工程:上記(7)の高沸点成分を含む液を油水分離する工程
    (9)不飽和カルボン酸エステルの精製工程:上記(8)で得た油層に含まれる不飽和カルボン酸エステルおよび不純物を含む溶液から不飽和カルボン酸エステルを精製し、純度の高い不飽和カルボン酸エステルを得る工程
  6. アルカンがプロパンであり、気相酸化反応で得られる不飽和アルデヒドがアクロレインであり、得られる不飽和カルボン酸がアクリル酸であり、酸化エステル化反応で得られる不飽和カルボン酸エステルがアクリル酸エステルである請求項1の製造方法。
  7. アルカンがイソブタンであり、気相酸化反応で得られる不飽和アルデヒドがメタクロレインであり、得られる不飽和カルボン酸がメタクリル酸であり、酸化エステル化反応で得られる不飽和カルボン酸エステルがメタクリル酸エステルである請求項1の製造方法。
  8. アルコールがメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、2エチルヘキサノールから選ばれ、単独及びまたは混合して用いることを特徴とする請求項1〜3の不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
  9. 気相酸化反応に用いる反応器が熱交換器型の固定床反応器であって、反応条件ガス線速における圧力損失が、円柱状触媒を反応器に用いた場合の70%以下となる形状に設計、成型した触媒を用いることを特徴する請求項1〜3の製造方法。
  10. 気相酸化反応に用いる反応器が流動層反応器であって、30〜70重量%のシリカを含み、平均粒子径が30〜100μmの球状触媒を用いることを特徴する請求項1〜3の製造方法。
  11. 不飽和アルデヒドとアルコールおよび酸素から酸化エステル化反応によって、不飽和カルボン酸エステルを生成する工程の貴金属担持触媒で式RrBbNnであって、Rはパラジウム、金、ルテニウムの少なくとも1つを含み、BはPb、Bi、Tl、Hg、から選ばれた少なくとも1つ、NはMg、K、Naの1つを含み、平均粒子径が30〜200μmの球状の担体に担持してなる触媒を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不飽和カルボン酸エステルの製造方法。
  12. 請求項1〜3のいずれかに記載のアルカンを原料とする不飽和カルボン酸エステルの連続的製法であって、未反応アルカンを含むガス混合物に、炭素数が6〜10の炭化水素系有機溶媒を接触させて、未反応アルカンを吸収回収し、次いでこの未反応アルカン吸収液を蒸留操作またはガス供給による放散(ストリッピング)操作により、アルカンと炭素数が6〜10の炭化水素系有機溶媒に分離し、得られたガス状のアルカンを再び原料として、気相酸化反応器にリサイクルする方法。
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