JP5006459B1 - 標識用複合粒子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蛍光色素を含有するシリカナノ粒子及び蛍光色素を含有する有機高分子のいずれかより選ばれる蛍光性ナノ粒子と、該蛍光性ナノ粒子の表面に結合したプラズモン吸収を生じる金属ナノ粒子とを少なくとも含む標識用複合粒子。
【選択図】なし
Description
(a)判定までに要する時間が通常20分以下であり迅速な検査が可能である。
(b)通常のイムノアッセイで行われるB/F分離等の操作を要しないため、検体液を滴下するだけで測定できる。したがって検体数が多くても測定が容易である。
(c)特別な検出装置を必要とせず判定が容易なため、被検者が自身で検査することもできる。
これらの特徴を利用して、イムノクロマト法は妊娠検査やインフルエンザ検査等に広く用いられており、POCT(Point Of Care Testing)の手法としても注目を集めている(例えば、特許文献1参照)。また、食物アレルゲンの検査試薬等としても広く利用されている。
(d)試薬生産コストの上昇
イムノクロマト試薬の製造工程においては、通常、抗体を感作させた標識粒子をパッドに含有させ、これを乾燥させることでコンジュゲートパッドを作製する。標識粒子が、金粒子や着色ラテックス粒子等の着色粒子である場合には、粒子の吸光度が高いのでパッドへの粒子の吸着状態を容易に判断できる。しかし標識粒子が蛍光粒子の場合は、粒子の吸光度が低いため、パッドへの蛍光粒子の吸着状態を容易に判断できない。この場合には、標識粒子の吸着状態を蛍光検出装置で判定する必要があり、その分生産コストが高くなる。
(e)使用環境の制限
蛍光検出型イムノクロマト試薬は、蛍光検出器が故障した場合や蛍光検出装置を持ち合わせていない場合など、蛍光検出器が使用できない状況では使用し得ない。
(f)保存安定性
蛍光粒子は経時的に退色しうるため、長期間保管した試薬では精度が低下しうると同時に、検査終了後にテストラインの発色能を保持した状態で長期保管ができない。
[1]蛍光色素を含有するシリカナノ粒子及び蛍光色素を含有する有機高分子のいずれかより選ばれる蛍光性ナノ粒子と、該蛍光性ナノ粒子の表面に結合したプラズモン吸収を生じる金属ナノ粒子とを少なくとも含む標識用複合粒子で標識された標識生体分子を用いた、ラテラルフロー法による標的物質の検出方法であって、下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの検出手段を実施することを特徴とする検出方法:
(A)該標識用複合粒子が有する該金属ナノ粒子のプラズモン吸収による発色を目視により検出、
(B)該標識用複合粒子に該標識用複合粒子に含まれる蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長の光を照射し、これにより該標識用複合粒子に含まれる金属ナノ粒子にプラズモン吸収を生じさせて該金属ナノ粒子表面の電場を増強し、当該電場増強により増強された照射光のエネルギーが該蛍光性ナノ粒子に吸収されて生じる蛍光を測定・検出。
[2]金属ナノ粒子が金、銀、銅及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種よりなる粒子である、[1]に記載の検出方法。
[3]蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長の少なくとも一部と、金属ナノ粒子のプラズモン吸収帯域波長の少なくとも一部とが重複している、[1]又は[2]に記載の検出方法。
[4]蛍光色素の最大吸収波長と金属ナノ粒子の最大プラズモン吸収波長との差が0〜30nmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の検出方法。
[5]蛍光色素がローダミン6Gであり、金属ナノ粒子が金粒子である、[1]〜[4]のいずれかに記載の検出方法。
[6]生体分子が抗体であり、ラテラルフロー法がイムノクロマト法である、[1]〜[5]のいずれかに記載の検出方法。
[7]蛍光色素を含有するシリカナノ粒子及び蛍光色素を含有する有機高分子のいずれかより選ばれる蛍光性ナノ粒子と、該蛍光性ナノ粒子の表面に結合したプラズモン吸収を生じる金属ナノ粒子とを少なくとも含む標識用複合粒子で標識された標識生体分子であって、ラテラルフロー法に用いる標識生体分子。
[8]ラテラルフロー法が、下記(A)及び(B)の検出手段を実施できるものである、[7]に記載の標識生体分子。
(A)該標識用複合粒子が有する該金属ナノ粒子のプラズモン吸収による発色を目視により検出、
(B)該標識用複合粒子に該標識用複合粒子に含まれる蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長の光を照射し、これにより該標識用複合粒子に含まれる金属ナノ粒子にプラズモン吸収を生じさせて該金属ナノ粒子表面の電場を増強し、当該電場増強により増強された照射光のエネルギーが該蛍光性ナノ粒子に吸収されて生じる蛍光を測定・検出。
[9]金属ナノ粒子が金、銀、銅及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種よりなる粒子である、[7]又は[8]に記載の標識生体分子。
[10]蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長の少なくとも一部と、金属ナノ粒子のプラズモン吸収帯域波長の少なくとも一部とが重複している、[7]〜[9]のいずれかに記載の標識生体分子。
[11]蛍光色素の最大吸収波長と金属ナノ粒子の最大プラズモン吸収波長との差が0〜30nmである、[7]〜[10]のいずれかに記載の標識生体分子。
[12]蛍光色素がローダミン6Gであり、金属ナノ粒子が金粒子である、[7]〜[11]のいずれかに記載の標識生体分子。
[13]生体分子が抗体であり、ラテラルフロー法がイムノクロマト法である、[7]〜[12]のいずれかに記載の標識生体分子。
また、本発明の標識用複合粒子は、蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長と金属ナノ粒子のプラズモン吸収帯域波長とを少なくとも一部重複させることにより、蛍光色素を励起するための励起光エネルギーを標識用複合粒子表層に存在する金属ナノ粒子にもプラズモン吸収させることが可能になる。このようにして励起光が表面プラズモンに変換されると、金属ナノ粒子表面近傍の電場が増強される。その結果、その内側の蛍光性ナノ粒子に実質的に照射した励起光以上のエネルギーを付与できるようになり、これにより当該蛍光性ナノ粒子はより高い蛍光を発することができる。
本発明の標識用複合粒子は、蛍光性ナノ粒子をコアとし、その表面に金属ナノ粒子が結合した構造を有している。金属ナノ粒子は目視を含む吸光法で検出することができ、蛍光性ナノ粒子は蛍光検出器で検出することができるため、1種類の標識用粒子で吸光と蛍光の2種類の検出手段に対応することができ、しかも感度に優れる。
また、金属ナノ粒子との結合に寄与する官能基を表面に有する蛍光性ナノ粒子を調製することもできる。このような方法として、例えば、蛍光色素が結合したオルガノアルコキシシランとTEOSのようなテトラアルコキシシランとをアンモニア水含有溶媒中で混合し、アンモニアなどの触媒の存在下で、該溶媒中に蛍光色素を含有するシリカのコア粒子を形成させて該コア粒子の分散液を得、続いてこの分散液に、チオール基等の所望の官能基を有するオルガノアルコキシシランを添加してシリカのコア粒子にシェル層を形成させる方法等が挙げられる。
ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体などからなるナノ粒子は市販品を用いても良く、通常の合成方法(例えば特開平10−55911参照)で合成したものを用いても良い。
ナノサイズの有機高分子を膨潤させる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等を挙げることができる。ナノサイズの有機高分子を膨潤させない溶媒としては水、ジオキサン等が挙げられる。
上記金属ナノ粒子は、本発明の標識用複合粒子において上記蛍光性ナノ粒子の表面に結合して存在し、特定の波長に対してプラズモン吸収を生じる。その結果、吸収された光エネルギーは表面プラズモンとして金属ナノ粒子表面に局在し、これにより金属ナノ粒子表面近傍域において局所的に著しく増強された電場が発生する。金属ナノ粒子のプラズモン吸収帯域の波長は、上述したように、上記蛍光性ナノ粒子に含まれる蛍光色素の励起帯域の波長と少なくとも一部が重複していることが好ましい。さらに、上記蛍光色素の最大吸収波長と前記金属ナノ粒子の最大プラズモン吸収波長との差は0〜30nmであることが好ましく、0〜10nmであることが好ましい。このように蛍光色素の最大吸収波長と金属ナノ粒子の最大プラズモン吸収波長とを調整することで、励起光が金属ナノ粒子にもプラズモン吸収されて、金属ナノ粒子表面の電場が増強される(すなわちプラズモン増強される。)。これにより励起光の光量が実質的に増強され、その結果蛍光色素から発せられる蛍光の強度も増大させることができる。プラズモン増強により、励起光のパワーを格段に増強させることができるため、蛍光強度も飛躍的の上昇しうる。
本発明の標識生体分子は、生体分子が標識用複合粒子表面に結合した構造、すなわち、生体分子が標識用複合粒子により標識された構造を有する。
上記生体分子は、所望の標的物質との特異的な結合能を有することが好ましい。当該生体分子と標的物質の組み合わせの例として、抗体とその抗原、抗原とその抗体、核酸(DNAやRNA等)と該核酸に相補的な配列を有する核酸、受容体とそのリガンド、リガンドとその受容体、レクチンと糖鎖、アプタマーと該アプタマーに特異的に結合する分子、等が挙げられる。
本発明のラテラルフロー用テストストップは、
(1)試料添加用部材(サンプルパッド)と本発明の標識生体分子を含有させてなる部材(コンジュゲートパッド)とが、
(2)前記コンジュゲートパッドと、標的物質と標識生体分子とを含む複合体を捕捉するための捕捉分子が固定化されたメンブレン(捕捉分子固定化メンブレン)とが、並びに
(3)前記抗体固定化メンブレンと吸収パッドとが
相互に毛細管現象が生じるように直列に連結している構造であることが好ましい。
また、標的物質に特異的に結合する生体分子であって、標識生体分子が結合する部位とは異なる部位に結合する生体分子(以下生体分子Aと呼ぶ)を、該標識生体分子と共にコンジュゲートパッドに含有させておけば、標的物質を挟むサンドイッチ複合体を液相中で効率的に形成させることができる。この場合において、例えば、当該生体分子Aにビオチン又は単鎖オリゴヌクレオチド等(以下、結合子と呼ぶことがある。)を結合させておけば、アビジンやストレプトアビジン又は当該単鎖オリゴヌクレオチドに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチド等を上記捕捉分子として用いることもできる。上記生体分子Aの例として、例えば抗体、抗原、核酸、レクチン、アプタマー、リガンド等が挙げられる。
図1(a)は、本発明のラテラルフロー用テストストリップの好ましい一実施形態の平面図を示し、図1(b)は、図1(a)で示したラテラルフロー用テストストリップの縦断面図を示す図である。
本発明のラテラルフロー用テストストリップ1は、サンプルパッド2、コンジュゲートパッド3、捕捉分子固定化メンブレン4、吸収パッド5からなることが好ましい。上記各構成部材は粘着剤付きバッキングシート6により裏打ちされていることが好ましい。
(サンプルパッド2)
サンプルパッド2は標的物質を含む液体試料を滴下する構成部材である。
コンジュゲートパッド3は本発明の標識生体分子を含有する構成部材であり、サンプルパッド2から毛細管現象により移動してきた液体試料に含まれる標的物質が特異的分子認識反応によって本発明の標識生体分子と液相中で結合して複合体の形成が開始される部分である。
捕捉分子固定化メンブレン4は前記複合体を含む溶液が毛細管現象により移動してくる構成部材であり、固定化捕捉分子−標的物質−標識生体分子からなる複合体、又は、固定化捕捉分子−結合子−生体分子A−標的物質−標識生体分子からなる複合体の形成反応が行われる捕捉分子固定化部(判定部)を有する。
前記メンブレンにおける前記捕捉分子固定化部(判定部)の形状としては局所的に捕捉用分子が固定化されている限り特に制限はなく、ライン状、円状、帯状等が挙げられるが、ライン状であることが好ましく、通常には幅0.5〜1.5mmのライン状である。
前述の捕捉分子固定化後に、非特異的吸着による測定への影響を防止するために前記捕捉分子固定化メンブレン全体にいわゆるブロッキング処理を施しておくことが好ましい。例えば、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等のブロッキング剤を含有する緩衝液中に適当な時間浸漬した後乾燥することでブロッキングを行うことができる。市販の前記ブロッキング剤としては、例えば、スキムミルク(DIFCO社製)、4%ブロックエース(明治乳業社製)などが挙げられる。
吸収パッド5は、毛細管現象でメンブレンを移動してきた溶液を吸収し、一定の流れを生じさせるための構成部材である。
前記粘着剤付きバッキングシートとしては、AR9020(商品名、Adhesives Research社製)等が挙げられる。
本発明のラテラルフロー用キットは、上記テストストリップを含む。通常には、上記テストストリップがハウジング(格納)された形態のラテラルフロー装置と必要により測定に必要な各種の試薬類等を含む。テストストリップそのものをラテラルフロー装置としてもよい。上記テストストリップのハウジング材料は通常には樹脂製である。ハウジング材料には、通常、格納されたテストストリップのサンプルパッドに試料を添加するための窓(穴)とテストラインやコントロールラインの吸光や蛍光を検出できるようにするための窓(穴)を少なくとも存在する。テストストリップがハウジングされたラテラルフロー装置においてはテストストリップが格納されているために、検査の際や検査後にテストストリップを直接ハンドリングする必要がない。これにより、血液試料等により人体や検査室等が汚染されるリスクが低減される。ラテラルフロー用キットの中でも、特に抗原抗体反応により標的物質を検出するためのキットは、一般にイムノクロマトグラフィー用キット又はイムノクロマト試薬等とも呼ばれる。
次に本発明の複合化された粒子を用いてなる標的物質の検出方法について説明する。
標的物質を含有しうる液体試料をラテラルフロー用テストストリップのサンプルパッド2に滴下することで、サンプルパッド2を通過した当該液体試料がコンジュゲートパッド3に浸透して接触し、該コンジュゲートパッド3に保持されていた標識生体分子と当該液体試料中の標的分子との結合反応が開始する。液体試料は、前記結合反応により標識生体分子と該標的物質とを含む複合体を形成しながら、毛細管現象により捕捉分子固定化メンブレン4、吸収バッド5へと順次移動していき、試料中に標的物質が含まれる場合には、上述したようにテストライン上に標識生体分子が濃縮される。この濃縮された標識生体分子に含まれる標識用複合粒子の吸光(プラズモン共鳴)を目視で、又は該標識用複合粒子の蛍光を蛍光検出器を用いて検出することで、標的物質の存在を検出することができる。蛍光を検出するために照射する励起光波長が、金属ナノ粒子にプラズモン吸収を生じさせるものであれば、前述したように照射した励起光のエネルギーが増強されるため、蛍光色素はより強い蛍光を発し、標的物質のより高感度な検出が可能になる。本発明において「検出」とは、定性的な検出と定量的な検出の双方を含む概念である。
滴下する液体試料の量はテストストリップの構成に合わせて適宜調節することができる。
上記臨床検体としては、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、唾液、膵液、胃液、喀痰、鼻や咽等の粘膜から採取したぬぐい液等の体液や便等が挙げられるがこれらに限定されず、目的とする標的物質が含まれ得る試料であればよい。
本発明の検出方法により検出できる臨床検体中の標的物質としては、例えば、微生物、細菌、ウィルス、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、脂質、糖脂質、核酸、毒素等またはこれらの複合体等が挙げられる。より具体的に例示すれば、癌胎児性抗原(CEA)、α−フェトプロテイン(AFP)、前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)、CA19−9、CA125、CA15−3、前立腺特異抗原(PSA)、遊離PSA等の腫瘍マーカー、HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗体、HBc抗体、HCV抗体、p24抗原等の感染症マーカー、FDP、Dダイマー、PIC、ATIII、FM等の凝固線溶マーカー、CK−MB、ミオグロビン、トロポニン、CRP、BNP等の心不全マーカー、TSH、HCG等のホルモン類、インスリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の検出方法により検出できる食品検体中の標的物質としては、微生物、細菌、ウィルス、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、脂質、糖脂質、核酸、毒素、アレルゲン等またはこれらの複合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の検出方法により検出できる環境サンプリング検体中の標的物質としては、微生物、細菌、ウィルス、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、脂質、糖脂質、核酸、毒素等またはこれらの複合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の標的物質の検出方法に用いる蛍光検出装置は、励起光源およびフィルタを含む構成を有する。
前記励起光源としては水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、レーザダイオード、発光ダイオードなどが挙げられる。前記フィルタは、励起光源から特定の波長の光のみを透過するためのフィルタと、さらに、蛍光のみを検出する観点から、前記励起光を除去し蛍光のみを透過するフィルタであり、前記蛍光粒子の蛍光波長、蛍光波長から適宜選択する。
前記蛍光検出装置は、前記蛍光を受光する光電子倍増管又はCCD検出器を備えていてもよい。これにより目視では確認できない強度ないしは波長の蛍光も検出でき、さらにはその蛍光強度を測定できることから標的物質の定量もでき、高感度検出及び定量が可能となる。
コア粒子としての蛍光色素含有シリカは、特開2009−221059に記載された手法により、粒径約300nmのローダミン6G含有シリカ粒子を作製した。具体的には、以下の方法で作製した。5−(及び−6)−カルボキシローダミン6G・スクシンイミジルエステル(商品名、HiLyte Biosciences社製)6.0mgを1mLのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。ここに2.5μLのAPSを加え、室温(23℃)で1時間反応を行い、カルボキシローダミン6G−APSのDMF溶液を得た。14質量%のアンモニア水0.7mlにエタノールを2.8ml加え混合し、その中にTEOSを20μLと前記カルボキシローダミン6G−APSのDMF溶液を20μl加え、室温(25℃)にて3時間撹拌した。続いて、反応液にTEOSを10μLと前記カルボキシローダミン6G−APSのDMF溶液を10μL加え、室温(25℃)にて3時間撹拌した。さらに反応液にTEOSを10μLと前記カルボキシローダミン6G−APSのDMF溶液を10μL加え、室温(25℃)にて3時間撹拌した。反応終了後、遠心分離(5000×g)を30分行い、粒子を沈降させた後、直ちに上清液を除去した。得られた沈殿物をエタノールに再分散させ、再度遠心分離(5000×g)を30分行い、粒子を沈降させた。同様のエタノール洗浄操作をさらに1回繰り返し、未反応のTEOS等を除去した。さらにエタノールの代わりに蒸留水を用いた以外は同様な洗浄操作を4回行い、遊離色素等を除去することで粒径約300nmのローダミン6G含有シリカ粒子を作製した(以下、比較標識用粒子と呼ぶ。)。
続いて、上記反応液を18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行い、上清を除去した。沈殿した粒子に蒸留水を加えて分散させ、再度18000×gの重力加速度で30分間遠心分離を行った。本洗浄操作をさらに2回繰り返し、未反応の原材料を除去して標識用複合粒子(以下、本発明標識用複合粒子と呼ぶ。)を得た。この本発明標識用複合粒子の粒径は約380nmであった。ここで、本発明標識用複合粒子中の蛍光色素であるローダミン6Gの最大吸収波長は535nmであり、金粒子の最大プラズモン吸収波長530nmである。
製造例1で調製した本発明標識用複合粒子のコロイド(20mg/mL)500μLに、0.5MのMES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)緩衝液(pH6.0)を100μL、50mg/mLのNHSを461μL、19.2mg/mLのEDC(1-ethyl-3-(3-(dimethylamino)propyl)carbodiimide)を150μL、蒸留水を1.089mL加え、30分間混合した。
反応液を15,000×Gの重力加速度で30分遠心分離し、上清を除去後、蒸留水を1mL加え粒子を分散させた。同様にして更に2回遠心分離と蒸留水への分散を繰り返して粒子を洗浄し、最後に50mMのKH2PO4緩衝液(pH8.0)1mLに分散させた。ここに50mMのKH2PO4緩衝液(pH8.0)に溶解した1mg/mLの抗hCG抗体(Anti−hCG マウスIgG1、Medix Biochemica社製)を1mL加え、2時間混合した。続いて100mg/mLのBSA溶液を100μL加え、さらに1時間混合した。
反応液を15,000×Gの重力加速度で30分遠心分離し、上清を除去後、50mMのKH2PO4緩衝液(pH8.0)を1mL加え粒子を分散させた。同様にして更に2回、遠心分離と50mMのKH2PO4緩衝液(pH8.0)への分散を繰り返して粒子を洗浄し、最後に50mMのKH2PO4緩衝液(pH8.0)1mLに分散させ、本発明標識用複合粒子で標識された抗hCG抗体(以下、本発明標識抗体と呼ぶ。)のコロイドを得た(収量10mg/mL×1mL)。
製造例2で調製した本発明標識抗体のコロイド(10mg/mL)0.3mL、50mg/mLスクロース3mL、及び蒸留水1.7mLを混合した。得られたコロイドをコンジュゲートパッド(商品名:Glass Fiber Conjugate Pad、MILLIPORE社製、8×150mm)1枚に対し0.8mL均質に含有させた。
本発明標識抗体を含有させたコンジュゲートパッドは薄い赤色であり、パッドに本発明標識抗体が均質に含有されていることを目視で確認することができた。
下記に示すように、製造例3で作製したコンジュゲートパッドを用いてイムノクロマトグラフィー用テストストリップを作製した。
メンブレン(丈25mm、商品名:Hi−Flow Plus120 メンブレン、MILLIPORE社製)の中央付近(端から約12mm)に、幅約1mmのテストラインとして、抗hCG抗体(alpha subunit of FSH(LH),clone code/6601、Medix Biochemica社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH2PO4,pH7.0)+5%スクロース)を0.75μL/cmの塗布量で塗布した。
続いて、幅約1mmのコントロールラインとして、抗IgG抗体(Anti Mouse IgG、Dako社製)を1mg/mL含有する溶液((50mM KH2PO4,pH7.0)シュガー・フリー)を0.75μL/cmの塗布量で塗布し、50℃で30分乾燥させた。なお、テストラインとコントロールラインとの間隔は1cmとした。
次に、ブロッキング処理として前記メンブレン全体をブロッキングバッファー(0.5%カゼイン含有50mMホウ酸緩衝液(pH8.5))中に室温で30分浸した。
前記メンブレンをメンブレン洗浄/安定バッファー(0.5%スクロース、0.05%コール酸ナトリウム含有50mMトリスヒドロキシメチルアミノメタン塩酸塩緩衝液(pH7.5))に移し室温で30分静置した。メンブレンを引上げ、ペーパータオル上に置いて室温で一夜乾燥させて、抗体固定化メンブレンを作製した。
サンプルパッド(商品名:Glass Fiber Conjugate Pad(GFCP)、MILLIPORE社製)、製造例3で作成したコンジュゲートパッド、前記抗体固定化メンブレン、及び吸収パッド(商品名:Cellulose Fiber Sample Pad(CFSP)、MILLIPORE社製)をバッキングシート(商品名AR9020,Adhesives Research社製)上でこの順に組み立て、5mm幅、長さ60mmのストリップ状に切断し、図1(a)及び図1(b)に示した構成のテストストリップを作製した。
なお、各構成部材は、図1(a)及び図1(b)に示しているように、各々その両端を隣接する部材と2mm程度重ね合わせて貼付した。
上記製造例2において、上記製造例1に記載の比較標識用粒子コロイドを標識用粒子として用いた以外は、上記製造例2と同様の方法により、比較標識用粒子で標識された抗hCG抗体(以下、比較標識抗体と呼ぶ。)のコロイドを得た(収量10mg/mL×1mL)。
比較製造例1で作製した比較標識抗体のコロイド(10mg/mL)0.3mL、50mg/mLスクロース3mL、及び蒸留水1.7mLを混合した。得られたコロイドをコンジュゲートパッド(商品名:Glass Fiber Conjugate Pad、MILLIPORE社製、8×150mm)1枚に対し0.8mL均質に含有させた。
比較標識抗体を含有させたコンジュゲートパッドは無色であり、パッドに比較標識抗体が均質に含有されていることを目視では確認することはできなかった。
上記比較製造例2で作製したコンジュゲートパッドを用いた以外は、上記製造例4と同様の方法によりラテラルフロー用テストストリップを作製した。
前記製造例5で作製したテストストリップをイムノクロマトグラフィー装置として用い、100、50、20、10、5、2又は0.2IU/LのリコンビナントhCG(ロート製薬社製)100μLをテストストリップのサンプルパッド部分に100μL滴下した。その後5分間放置し、目視で抗hCG抗体を塗布したテストライン及び抗IgG抗体を塗布したコントロールラインの発色を確認した。その結果、リコンビナントhCGが100、50及び20IU/Lの場合は目視でテストラインおよびコントロールラインの発色が確認できた。リコンビナントhCGが10、5、2、0.2IU/Lのときは目視ではテストラインの発色は確認されなかった。
上記比較製造例3で作製したテストストリップをイムノクロマトグラフィー装置として用いた以外は、上記試験例1と同じ方法でリコンビナントhCGの蛍光検出を行った。
その結果、リコンビナントhCGが20、10、5及び2IU/Lのサンプルについてテストラインおよびコントロールラインの蛍光を検出できたが、0.2IU/Lのサンプルについてはテストラインの蛍光を検出できなかった。
以上の結果から、蛍光シリカナノ粒子の表面に金属ナノ粒子が存在する本発明の標識用複合粒子を用いることで、蛍光シリカナノ粒子からなる標識用粒子を用いた場合に比べて顕著に高い検出感度が実現できることがわかった。
粒径0.16μm、濃度10mg/mLの着色ラテックス粒子(DC02B/5641,Bangs Laboratories社製)1mLを用いて、製造例2と同様の方法で抗hCG抗体を標識し、50mMのKH2PO4緩衝液(pH8.0)に分散した着色ラテックス粒子標識抗hCG抗体のコロイド1mL(10mg/mL)を得た。
続いて、粒径0.19μm、濃度10mg/mLの蛍光ラテックス粒子(FS02F/8234、Bangs Laboratories社製)1mlを用いて、製造例2と同様の方法で抗hCG抗体を標識し、50mMのKH2PO4緩衝液(pH8.0)に分散した蛍光ラテックス粒子標識抗hCG抗体のコロイド1mL(10mg/mL)を得た。
着色ラテックス粒子標識抗hCG抗体と蛍光ラテックス粒子標識抗hCG抗体の混合粒子を含有させたコンジュゲートパッドは薄い青色であり、パッドに粒子が均質に含有されていることが目視で確認できた。
コンジュゲートパッドとして、参考例1で作製したコンジュゲートパッドを用いた以外は、製造例4と同じ方法でテストストリップを作製した。
上記参考例2で作製したテストストリップをイムノクロマトグラフィー装置として用いた以外は、上記試験例1と同じ方法でリコンビナントhCGの蛍光検出を行った。
その結果、リコンビナントhCGが100、50又は20IU/Lの場合は目視でテストラインおよびコントロールラインの発色が確認できたが、リコンビナントhCGが10、5、2又は0.2IU/Lのときは目視ではテストラインの発色は確認できなかった。蛍光検出装置を用いた評価においては、リコンビナントhCGが20、10、5及び2IU/Lのサンプルについてテストラインおよびコントロールラインの蛍光発色を確認できたが、0.2IU/Lのサンプルについてはテストラインおよびコントロールラインの蛍光発色を確認できなかった。
この系では、標的物質である抗原が着色粒子標識抗hCG抗体と蛍光粒子標識抗hCG抗体の両方に結合する。そのため、1粒子当たりの表面に捕捉されるhCGの量は、本発明標識生体分子の場合と比較して低下する。これにより、テストラインの抗体が各標識粒子それぞれを捕捉する力が小さくなり、標的物質の検出感度が低下したことも影響していると考えられる。
参考例1で作製した、蛍光ラテックス粒子標識抗hCG抗体を含有させたコンジュゲートパッドを用いて作製したテストストリップと、製造例4で作製した本発明のラテラルフロー用テストストリップそれぞれを、室温で9ヶ月間放置した。
9ヶ月間放置後のテストストリップに、100、50、20、10、5又は3IU/LのリコンビナントhCGを滴下し、ラインの検出を行ったところ、蛍光ラテックス粒子標識抗hCG抗体を含有させたテストストリップでは何れの濃度のリコンビナントhCGを滴下した場合でも、テストラインの蛍光を検出できなかった。
一方、本発明のラテラルフロー用テストストリップは、リコンビナントhCGが50IU/L以上であれば目視でテストラインおよびコントロールラインの発色が確認でき、蛍光検出では0.1IU/LのリコンビナントhCGを検出できた。
参考例2で作製した蛍光ラテックス粒子標識抗hCG抗体を含有させたコンジュゲートパッドを用いて作製したテストストリップと、製造例4で作製した本発明のラテラルフロー用テストストリップそれぞれについて、50IU/LのリコンビナントhCGを100μL滴下し、テストラインとコントロールラインを発色させた。このテストストリップを室温で10ヶ月間放置した。
その結果、蛍光ラテックス粒子を含有させたコンジュゲートパッドを用いて作製したテストストリップは蛍光検出器を用いてもコントロールライン及びテストラインの蛍光を確認できなかった。一方、本発明のラテラルフロー用テストストリップでは目視でコントロールライン及びテストラインの発色を確認することができた。
2 サンプルパッド
3 コンジュゲートパッド
4 抗体固定化メンブレン
41 判定部(テストライン)
42 コントロールライン
5 吸収パッド
6 バッキングシート
7 標識用複合粒子
8 金属ナノ粒子
9 蛍光性ナノ粒子
10 蛍光色素
Claims (13)
- 蛍光色素を含有するシリカナノ粒子及び蛍光色素を含有する有機高分子のいずれかより選ばれる蛍光性ナノ粒子と、該蛍光性ナノ粒子の表面に結合したプラズモン吸収を生じる金属ナノ粒子とを少なくとも含む標識用複合粒子で標識された標識生体分子を用いた、ラテラルフロー法による標的物質の検出方法であって、下記(A)及び(B)の少なくともいずれかの検出手段を実施することを特徴とする検出方法:
(A)該標識用複合粒子が有する該金属ナノ粒子のプラズモン吸収による発色を目視により検出、
(B)該標識用複合粒子に該標識用複合粒子に含まれる蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長の光を照射し、これにより該標識用複合粒子に含まれる金属ナノ粒子にプラズモン吸収を生じさせて該金属ナノ粒子表面の電場を増強し、当該電場増強により増強された照射光のエネルギーが該蛍光性ナノ粒子に吸収されて生じる蛍光を測定・検出。 - 金属ナノ粒子が金、銀、銅及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種よりなる粒子である、請求項1に記載の検出方法。
- 蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長の少なくとも一部と、金属ナノ粒子のプラズモン吸収帯域波長の少なくとも一部とが重複している、請求項1又は2に記載の検出方法。
- 蛍光色素の最大吸収波長と金属ナノ粒子の最大プラズモン吸収波長との差が0〜30nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の検出方法。
- 蛍光色素がローダミン6Gであり、金属ナノ粒子が金粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の検出方法。
- 生体分子が抗体であり、ラテラルフロー法がイムノクロマト法である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の検出方法。
- 蛍光色素を含有するシリカナノ粒子及び蛍光色素を含有する有機高分子のいずれかより選ばれる蛍光性ナノ粒子と、該蛍光性ナノ粒子の表面に結合したプラズモン吸収を生じる金属ナノ粒子とを少なくとも含む標識用複合粒子で標識された標識生体分子であって、ラテラルフロー法に用いる標識生体分子。
- ラテラルフロー法が、下記(A)及び(B)の検出手段を実施できるものである、請求項7に記載の標識生体分子。
(A)該標識用複合粒子が有する該金属ナノ粒子のプラズモン吸収による発色を目視により検出、
(B)該標識用複合粒子に該標識用複合粒子に含まれる蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長の光を照射し、これにより該標識用複合粒子に含まれる金属ナノ粒子にプラズモン吸収を生じさせて該金属ナノ粒子表面の電場を増強し、当該電場増強により増強された照射光のエネルギーが該蛍光性ナノ粒子に吸収されて生じる蛍光を測定・検出。 - 金属ナノ粒子が金、銀、銅及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種よりなる粒子である、請求項7又は8に記載の標識生体分子。
- 蛍光性ナノ粒子の励起帯域波長の少なくとも一部と、金属ナノ粒子のプラズモン吸収帯域波長の少なくとも一部とが重複している、請求項7〜9のいずれか1項に記載の標識生体分子。
- 蛍光色素の最大吸収波長と金属ナノ粒子の最大プラズモン吸収波長との差が0〜30nmである、請求項7〜10のいずれか1項に記載の標識生体分子。
- 蛍光色素がローダミン6Gであり、金属ナノ粒子が金粒子である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の標識生体分子。
- 生体分子が抗体であり、ラテラルフロー法がイムノクロマト法である、請求項7〜12のいずれか1項に記載の標識生体分子。
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