以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
図1および図2は、本発明の実施形態に係るステアリングロック装置(以下「ロック装置」と略する。)を示す。このロック装置は、自動車のステアリングシャフトにおいてステアリングの近傍に配設されるもので、大略、ハウジング10の内部に、シリンダ錠20と、カム部材59と、ロックボルト64とを配設するとともに、自動車内の各機器への通電をオンオフさせるイグニッションスイッチ71に対してシリンダ錠20の回動を伝える連動部材73を配設したものである。
そして、本実施形態では、シリンダ錠20のシリンダ36がON位置23cからLOCK位置23aに向けてLOCK回動する時に、その間の所定位置で回動を阻止する回動阻止部として、ハウジング10内にストッパ部材32を配設するとともに、シリンダ36に係止部44を設けている。また、シリンダ36をキー差込方向に沿って押込可能に配設し、その押込操作を回動阻止部による阻止位置でのみ可能とするとともに、その押込状態でのシリンダ36の回動を不可能とする押込規制部として、シリンダ36に凸部48を設けるとともに、シリンダ36のキー差込方向先方に位置する区画プレート49に凹部54を設けている。さらに、回動阻止部による阻止状態を解除する阻止状態解除部として、ホルダ21に形成する収容部27内でストッパ部材32を揺動可能に配設するとともに、該ストッパ部材32を付勢する付勢部材である揺動付勢スプリング35を配設している。
具体的には、前記ハウジング10は、図中、水平方向に延びるロック部材配設部11と、垂直方向に延びるスイッチ部材配設部12とを備えた略L字形状をなす中空状のものである。これら配設部11,12の交差部には、水平方向に延びる突板部13が設けられ、この突板部13にスイッチ部材配設部12の軸心に位置するように軸受部14が設けられている。また、突板部13とスイッチ部材配設部12の内周面との間には、カム部材59と連動部材73とを連結するための連結空間部15が設けられている。そして、このハウジング10の角部には、ロック部材配設部の延び方向に沿って貫通し、ロックボルト64を進退可能に挿通する挿通孔16が設けられている。なお、この挿通孔16を形成したハウジング10の角部は、装着する自動車のステアリングシャフト(図示せず)の傾斜角度に従って傾斜されている。
そして、本実施形態では、ロック部材配設部11には、シリンダ錠20を構成する後述するホルダ21において、径方向外向きに膨出した収容部27を収容するとともに装着位置を規制(位置決め)する膨出部17が設けられている。そして、この膨出部17の内端部は、ホルダ21の挿入端部は勿論、収容部27に収容するストッパ部材32の付勢方向先端部を当接させ、付勢による進出を停止させる段部18を構成するように寸法設定されている。また、ロック部材配設部11の開口端近傍の下部には、ロックリンク55を揺動可能に配設するためのロックリンク配設部19が設けられている。
前記シリンダ錠20は、ロック部材配設部11の一端に装着する筒状のホルダ21と、該ホルダ21の内部に回動可能に配設するシリンダ36と、該シリンダ36の内部に配設する複数のタンブラとを備えている。
前記ホルダ21は、ハウジング10のロック部材配設部11に対して一部が露出し、他部が内部に装着される略円筒状のものである。このホルダ21には、図3(B)に示すように、その内周面にシリンダ36から径方向外側に突出するタンブラを挿入係止する係止溝22が設けられている。また、図3(C)に示すように、このホルダ21において、ハウジング10の外側に露出される面には、LOCK位置23a、ACC位置23b、ON位置23cおよびSTART位置23dの順番で時計回りの所定位置に表記が刻設されている。なお、本実施形態では、シリンダ36をLOCK位置23aからSTART位置23dの間のACC位置23bでキー操作を阻止するように設定しており、このACC位置23bに対して径方向に対向する位置にPUSH24という表記を更に刻設している。また、ホルダ21には、外周部の一部にハウジング10に対して固定するためのブラケット部25が軸方向に沿って延びるように設けられている。このブラケット部25の内側基部には、シリンダ36の回動範囲を規制する規制凸部26が設けられている。
そして、本実施形態のホルダ21には、図3(A),(B)に示すように、ストッパ部材32を進退可能に収容する収容部27が設けられている。この収容部27は、ハウジング10への挿入端から軸方向に沿って外向きに延びるように凹設した溝状のもので、この収容部27を形成するためにホルダ21の一部が径方向外向きに膨出するように形成され、ハウジング10の膨出部17内に装着される。本実施形態では、収容部27は、ストッパ部材32によるシリンダ36の回動阻止状態を解除する阻止状態解除部を構成するもので、ストッパ部材32をシリンダ36の回動方向に対して接線方向に沿って揺動可能に収容するために、LOCK位置23a側に位置する側面27aを、開口端の開口面積が広がるように傾斜させている。また、この収容部27の中央には、付勢手段である進出付勢スプリング34を配設するスプリング配設部28が設けられている。
さらに、本実施形態のホルダ21には、収容部27の開口端側に位置するように、該収容部27とで阻止状態解除部を構成する揺動付勢スプリング35を収容するスプリング収容部29が設けられている。このスプリング収容部29は、周方向の一部を中心から径方向に外向きに延びる窪みからなり、ホルダ21の挿入方向先端側は開放した状態で形成されている。そして、この開放部は、L字形状をなす別体のプレート部材30を配設することにより覆われている。
さらにまた、ホルダ21の挿入端には、シリンダ36の係止部44が収容される収容凹部31が設けられている。この収容凹部31は、シリンダ36の回動可能な範囲において係止部44が対応する移動範囲にかけて延びるように略C字形状に設けられている。勿論、この収容凹部31の底には、前記収容部27の開口部が位置している。
前記ストッパ部材32は、シリンダ36の係止部44とで該シリンダ36の回動を所定のACC位置23bで阻止する回動阻止部を構成するものである。このストッパ部材32は、図1、図2および図4に示すように、全体にわたって肉厚が均一な矩形状の金属板からなり、その一端中央には他端に向けて延びるスプリング配設部33が設けられている。そして、進出付勢スプリング34と一緒に収容部27内に配設されることにより、ホルダ21に対して軸方向であるキー差込方向に沿って進出可能に付勢されている。
前記ストッパ部材32は、収容部27の側面27aにより、収容部27内でシリンダ36の回動方向に対する接線方向に揺動可能である。そのため、本実施形態では、ホルダ21のスプリング収容部29に、該収容部27とで阻止状態解除部を構成する付勢部材である揺動付勢スプリング35が配設されている。これにより、収容部27内に配設した揺動付勢スプリング35による付勢方向は、シリンダ36の回動方向に対して接線方向で、かつ、LOCK位置23aの側からSTART位置23dの側に向かうように構成している。なお、この揺動付勢スプリング35の付勢方向先端には、ストッパ部材32の側面との摺接による抵抗を低減するために、接触部を略球状の曲面に加工した当接部材(図示せず)が配設されている。
前記シリンダ36は略円柱状をなし、ハウジング10内にホルダ21を介してLOCK位置23aからON位置23cを経てSTART位置23dにかけて、また、その逆向きに回動可能に配設されるものである。また、本実施形態のシリンダ36は、ホルダ21を介してハウジング10に対して軸方向であるキーの差込方向に沿って移動可能に配設されたものである。
このシリンダ36には、図1および図5に示すように、軸心に沿って延びるキー穴37と、軸心に対して直交方向に延びるように並設した複数のタンブラ挿通孔38(図1,2,7では図示せず。)とが設けられている。このシリンダ36において、キー穴37の開口端と逆側に位置する端部は閉塞され、この閉塞部にホルダ21の端部に位置決めするためのフランジ部39が設けられている。このフランジ部39には、図5(C),(D)に示すように、その両端が規制凸部26に当接することにより、ホルダ21に対するシリンダ36の回動範囲を規制するための規制溝部40が設けられている。また、図1に示すように、シリンダ36のキー穴37の開口端側には、外周部から径方向に窪む検知部材配設部41が設けられ、この検知部材配設部41内にキーをキー穴37に差し込むことにより回動するキー検知部材42が配設されている。
そして、本実施形態のシリンダ36には、図5(A)〜(D)に示すように、フランジ部39の中心から軸方向に沿ってキー差込方向に突出する略矩形状のカム装着部43が設けられている。また、フランジ部39には、シリンダ36がホルダ21の内部においてACC位置23bに回動した状態で、ストッパ部材32の付勢方向先端に位置するとともに収容部27のON位置23c側に位置するように係止部44が設けられている。この係止部44は、ストッパ部材32とでシリンダ36の回動を阻止する回動阻止部を構成するもので、キー差込方向とは逆向き突出するように設けられている。具体的には、この係止部44は、LOCK位置23aからSTART位置23dに向けたSTART回動時にはストッパ部材32を進出付勢スプリング34の付勢力に抗して後退させる傾斜面45、逆向きのLOCK回動時にはストッパ部材32の側面に当接(面接触)する係止面46、および、これらの面45,46の先端間にかけてシリンダ36の回動方向に延びる当接端面47を有する断面台形状のものである、さらに、フランジ部39には、外周部の所定位置にキー差込方向に突出する凸部48が設けられている。この凸部48は、後述する区画プレート49の凹部54とで押込規制部を構成するものである。
前記タンブラ(図示せず)は、スプリングと一緒にシリンダ36のタンブラ挿通孔38内に配設され、その中央に機械的構造体からなるキーを貫通させる貫通孔を設けたものである。そして、キーをシリンダ36のキー穴37に差し込むと、キー山がタンブラの貫通孔の縁を押圧することにより、各タンブラをスプリングの付勢力に抗してシリンダ36内に後退することにより、ホルダ21の係止溝22との係止が解除される。その結果、キーを回動操作することにより、シリンダ36をLOCK位置23aからSTART位置23dの範囲で回動可能とするものである。
図1に示すように、ハウジング10のロック部材配設部11において、前記シリンダ錠20の挿入端には、該ロック部材配設部11内を区画する区画プレート49が配設されている。この区画プレート49は、所定の肉厚を有するもので、その外周面にピン部材50によってハウジング10に固定するためのピン孔51が凹設されている。また、この区画プレート49には、図6に示すように、シリンダ36のカム装着部43を回動可能に貫通させるための貫通孔52が設けられている。また、ロック部材配設部11への組付状態で下部に位置するように、スライダ挿通溝53が設けられている。
そして、本実施形態では、シリンダ36のキー差込方向先方に位置するこの区画プレート49に、シリンダ36がACC位置23bに回動した状態で凸部48に対応する位置に、凸部48とでシリンダ36の押込規制部を構成する凹部54がキー差込方向に沿って窪むように設けられている。この凹部54は、凸部48より僅かに大きい窪みであり、シリンダ36がACC位置23bを除く位置では、凸部48が凹部54に一致せず、凹部54の周囲の面に当接することにより、シリンダ36の押込操作を不可能とする。そして、シリンダ36がACC位置23bに回動されると、凹部54に凸部48が一致することによりシリンダ36のキー差込方向への押込操作を可能とする。また、この押込状態では、凸部48が凹部54内に嵌合することにより、シリンダ36の回動操作ができないように構成している。
また、ロック部材配設部11のロックリンク配設部19には、キー検知部材42に対応するようにロックリンク55が揺動可能に配設されている。このロックリンク55は、シリンダ36のキー穴37にキーが差し込まれると、キー検知部材42に押圧されて揺動されることにより、後退(アンロック)状態のロックボルト64をスライダ66を介して進出不可能に係止するものである。具体的には、このロックリンク55は、キー検知部材42の回動軌跡に位置する当接部56と、該当接部56に対して逆側の端部に位置する係止爪部57とを備えている。当接部56の近傍には、キー検知部材42の非当接時にロックボルト64の係止を解除するための付勢手段として係止解除スプリング58が配設されている。
前記カム部材59は、シリンダ36のカム装着部43に装着されることにより、該シリンダ36と一体的にLOCK位置23aからSTART位置23dの範囲で回動されるもので、大略、装着部60と、カム部62と、連動用作動部63とを備えている。
前記装着部60は、ハウジング10の突板部13に対して回動可能、かつ、キー差込方向に沿った軸方向先方への移動を不可能に配設される。また、シリンダ錠20の側には、区画プレート49を貫通したカム装着部43を、軸方向に沿って移動可能かつ周方向に回動不可能に内嵌し、シリンダ36の回動に連動して回動可能とするものである。この装着部60の内部には、シリンダ36のカム装着部43をキー差込方向に対して逆向きに付勢するシリンダ付勢スプリング61が配設される。これにより、このシリンダ付勢スプリング61の付勢力によって、キー差込方向に押し込んだシリンダ36を非押込位置に復帰させるように構成している。なお、このシリンダ付勢スプリング61は、ストッパ部材32の進出付勢スプリング34の付勢力より大きい付勢力のものである。
前記カム部62は、ハウジング10への装着状態で、ロック部材配設部11の下部に位置するように設けられたものである。このカム部62は、カム部材59の軸方向に沿ってロックボルト64の進出方向と逆側、即ち、シリンダ錠20の側に位置する端面に、進出状態のロックボルト64をスライダ66を介してLOCK位置23aからACC位置23b間で後退させるカム面が設けられている。
前記連動用作動部63は、ハウジング10への装着状態で、突板部13の先端の連結空間部15に位置するように、カム部62に対して反対側に設けられたものである。この連動用作動部63には、その先端面外周縁にカサ歯車部が設けられている。
図1に示すように、前記ロックボルト64は、カム部材59の軸方向に沿って移動可能に配設されるもので、ハウジング10の挿通孔16に進退可能に装着されている。そして、本実施形態では、このロックボルト64の後端部に略L字形状に突出するスライダ連結部65を設け、このスライダ連結部65に、カム部材59の回動に連動させるための別体のスライダ66を配設する構成としている。
前記スライダ66は、ロック部材配設部11内において、区画プレート49を貫通して挿通孔側からシリンダ錠20にかけて軸方向に沿ってスライド可能に装着されるものである。このスライダ66の前端部には、ロックボルト64のスライダ連結部65に連結されるL字形状の連結部67が設けられている。また、スライダ66の後端部には、カム部材59のカム部62に摺接する摺動部68が設けられている。そして、これらの摺動によりカム部材59の回動に連動し、該スライダ66を介して前記ロックボルト64を、ステアリングシャフトに係合して該ステアリングシャフトの回転を防止するロック位置から、前記ステアリングシャフトとの係合が解除されて該ステアリングシャフトの回転を可能とするアンロック位置にかけて移動するように構成されている。さらに、スライダ66には、摺動部68からロックリンク55の側に向けて突出するロック部69が設けられている。このロック部69は、図2に示すように、ロックボルト64が挿通孔16内に完全に後退したアンロック位置で、ロックリンク55の係止爪部57に係合する構成としている。そして、本実施形態では、このスライダ66には、ロックリンク55の側にスライダ付勢スプリング70が配設され、このスライダ付勢スプリング70によりスライダ66を介してロックボルト64を進出方向に付勢する構成としている。
前記イグニッションスイッチ71は、シリンダ36の回動位置を検出する検出手段であり、ハウジングにおいてスイッチ部材配設部12の開口端に、イグニッションリッド72を介して配設されている。このイグニッションスイッチ71は、シリンダ36の回動をカム部材59および連動部材73を介して検出することにより、回動位置に従ってLOCK位置23aではエンジンおよび全ての機器を停止し、ACC位置23bではエンジンを停止するとともにオーディオなどの一部の負荷部品のみを動作させ、ON位置23cでは全ての負荷部品を動作可能とするとともにエンジンが駆動している場合にはその駆動状態を維持させ、START位置23dではエンジンを始動させるように電気回路を切り換えるものである。このイグニッションスイッチ71の内部には、付勢手段であるリターンスプリング(図示せず)が配設され、このリターンスプリングの付勢力によって連動部材73、カム部材59およびシリンダ36をSTART位置23dからON位置23cに復帰させる。
前記連動部材73は、カム部材59の回動に連動して回動されることにより、シリンダ36の回動位置をイグニッションスイッチ71に伝達するものである。また、イグニッションスイッチ71のリターンスプリングによる復帰させる付勢力をカム部材59を介してシリンダ36に伝達するものである。具体的には、この連動部材73は、その上端にイグニッションリッド72を貫通してイグニッションスイッチ71に連結される連結軸74が設けられている。また、この連動部材73の下端には、ハウジング10の軸受部14に回動可能に支持される軸部75が突設されている。この軸部75の上側には、円板状をなすように径方向外向きに突出し、連結空間部15に位置してカム部材59の連動用作動部63(カサ歯車部)に噛み合うカサ歯車部76が設けられている。
次に、前記構成のロック装置の動作について説明する。
まず、シリンダ36がLOCK位置23aにあり、キー穴37にキーが挿入されていない状態では、ロック装置は、図1に示すロック状態になっている。このステアリングシャフトのロック状態では、ロックボルト64がスライダ66を介してスライダ付勢スプリング70の付勢力で進出し、ハウジング10の挿通孔16からの突出部分がステアリングシャフトの係合凹部に係合している。
このロック状態で、運転者がキー穴37に正規キーを差し込むと、キー検知部材42がシリンダ36の径方向外向きに回動することにより、ロックリンク55が係止解除スプリング58の付勢力に抗して揺動する。また、タンブラがシリンダ36内に没入し、シリンダ36がホルダ21に対して回動可能な状態になる。この状態で、キーを回動操作することにより、シリンダ36を時計回りに回動させると、カム部材59が一体的に時計回りに回動する。
まず、シリンダ36がLOCK位置23aからSTART位置23dへ向けて時計回りに回動すると、図7(A),(B)に示すように、係止部44の傾斜面45がストッパ部材32におけるホルダ21の収容部27から突出した部分に当接する。そして、傾斜面45の傾斜に従ってストッパ部材32が進出付勢スプリング34の付勢力に抗して後退する。その後、図7(C)に示すように、運転者によるキーの回動操作がACC位置23bを越えると、係止部44がストッパ部材32を越えることにより、該ストッパ部材32が進出付勢スプリング34の付勢力によってキー差込方向に沿って進出する。なお、このストッパ部材32の進出は、先端がハウジング10の段部18に当接した状態で停止する。
また、シリンダ36の回動に連動してカム部材59が回動すると、カム部62にスライダ66の摺動部68が摺接することにより、図2に示すように、スライダ66がカム部62の後端面側に移動される。その結果、ロックボルト64が一体的に後向きに移動することにより、ハウジング10内に後退される。そして、キーをACC位置23bまで回動させると、スライダ66のロック部69がロックリンク55の係止爪部57に係止し、キーがキー穴37から抜かれるまでアンロック状態を維持する。
さらに、シリンダ36の回動によりカム部材59が回動されると、連動部材73が回動する。そして、イグニッションスイッチ71は、連動部材73の回動により、キーによるシリンダ36のACC位置23b、ON位置23cおよびSTART位置23dを順番に検出し、自動車のメインマイコンに出力する。
なお、運転者がキーをSTART位置23dまで回動させた状態で、運転者がキーから手を離すと、イグニッションスイッチ71が内蔵したリターンスプリングの収縮規制が解除される。そのため、このリターンスプリングの付勢力によって連動部材73が逆向きに回動され、カム部材が連動して回動し、シリンダ36を一体的に反時計回りに回動させ、ON位置23cに自動復帰させる。
一方、運転者がエンジンを停止するために、キーを介してシリンダ36をON位置23cからLOCK位置23aに向けて反時計回りに回動させると、カム部材59および連動部材73が連動して前記とは逆向きに回動する一方、ロックボルト64およびスライダ66は進出移動することなく、その位置を維持する。
具体的には、運転者がキーをACC位置23bまで回動させると、シリンダ36は、図7(D)に示すように、係止部44の係止面46がストッパ部材32におけるホルダ21の収容部27から突出した部分に当接する。この際、本実施形態では、収容部27におけるLOCK位置23a側の側面27aをLOCK回動方向先方に向けて広がるように設けているため、係止部44がストッパ部材32を押圧すると、該ストッパ部材32が側面27aに当接するまで、揺動付勢スプリング35の付勢力に抗して揺動する。また、ストッパ部材32が側面27aに当接すると、キー操作によるシリンダ36のLOCK位置23aへ向けた更なる回動操作は阻止される。
このようにストッパ部材32が揺動した回動阻止位置までシリンダ36を回動させると、該シリンダ36の凸部48が区画プレート49の凹部54に一致する。その結果、図7(E)に示すように、運転者がキーを押圧することにより、シリンダ36をシリンダ付勢スプリング61の付勢力に抗してキー差込方向に押し込むことが可能な状態になる。即ち、シリンダ36の係止部44がストッパ部材32に当接しただけの状態では、シリンダ36が完全にはACC位置23bに回動していない。そのため、凸部48と凹部54とはキー差込方向に一致せず、シリンダ36は押込不可能な状態が維持される。そして、キー操作によるシリンダ36の更なるLOCK位置23aへ向けた回動により、ストッパ部材32が揺動されると、凸部48と凹部54とがキー差込方向に一致し、シリンダ36を回動を阻止し、押し込みを可能とした状態となる。
そして、図示のようにシリンダ36をハウジング10に対して押し込むと、凸部48が凹部54に係合する。これにより、シリンダ36は、LOCK位置23aへ向けたLOCK回動およびSTART位置23dへ向けたSTART回動のいずれも不可能な状態となる。また、段部18により進出が阻止されたストッパ部材32の先端を、シリンダ36の係止部44が越える。これにより、係止部44によるストッパ部材32の押圧が解除され、該ストッパ部材32が揺動付勢スプリング35の付勢力によって揺動していない付勢位置に復帰する。その結果、ストッパ部材32の先端には、係止部44の当接端面47が位置する。
この状態で、キーを介したシリンダ36の押込操作を停止すると、図7(F)に示すように、シリンダ付勢スプリング61の付勢力でシリンダ36が押込前の回動可能位置に復帰する。この際、ストッパ部材32は、当接端面47との当接により進出付勢スプリング34の付勢力に抗して後退される。これにより、係止部44とストッパ部材32とを再係合させることなく、シリンダ36をLOCK位置23aに向けて更に回動させることが可能になる。
なお、このようにしてシリンダ36をLOCK位置23aまで回動させると、連動してカム部材59および連動部材73が回動する。この際、ロックボルト64は、スライダ66を介してロックリンク55に係合されているため、進出移動することなく、アンロック位置を保持する。一方、連動部材73を介してシリンダ36の回動位置を検出したイグニッションスイッチ71は、その情報を自動車のメインマイコンに出力する。
そして、運転者がキーをキー穴37から引き抜くと、図1に示すように、キーによるキー検知部材42の押圧が解除されることにより、係止解除スプリング58の付勢力でロックリンク55が回動する。これにより、ロックリンク55とスライダ66との係合が解除されることにより、スライダ付勢スプリング70の付勢力によってスライダ66と一緒にロックボルト64が進出し、ステアリングシャフトの係合凹部に係合する。なお、ロックボルト64とステアリングシャフトの係合凹部とが周方向に一致していない場合には、ロックボルト64の先端がステアリングシャフトの外周面に当接し、係合できない状態をなす。この場合には、ロックボルト64は若干進出した状態となり、ステアリングの回動により一致すると、ロックボルト付勢スプリングの付勢力で進出してステアリングをロック状態となる。
このように、本発明のロック装置は、LOCK回動操作を行う場合、回動阻止部を構成する係止部44およびストッパ部材32によって所定位置で回動が不可能になる。そして、シリンダ36は、押込規制部を構成する凸部48と凹部54により、キー差込方向に沿った押込操作を阻止位置でのみ可能とするとともに、この押込状態ではシリンダ36の回動を不可能としている。そのため、運転者によるキーの回動操作は、確実に阻止位置で一時的に停止される。また、シリンダ36の押込操作を行うと、阻止状態解除部を構成する収容部27および揺動付勢スプリング35により、係止部44およびストッパ部材32による阻止状態が解除されるため、運転者が押込操作を止めると再びキーの回動操作が可能になり、シリンダ36をLOCK位置23aに回動させることができる。
即ち、LOCK回動時には、所定のACC位置23bでキーの回動操作を確実に中断させ、押込操作および押込操作を停止することによる押戻動作を行わなければキーの回動操作を再開することはできない。そして、このような操作は、運転者が意識的に行わなければ行うことはできないため、確実に誤操作によるステアリングのロックを防止することができる。また、阻止状態解除部は、ホルダ21にストッパ部材32を揺動可能に収容する収容部27を設け、ストッパ部材32を揺動付勢スプリング35によってLOCK位置23a側からSTART位置23d側へ付勢するという簡単な構成であるため、確実に実現可能であるうえ、動作不良が発生する虞もない。
なお、本発明のステアリングロック装置は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、シリンダ錠20の構成部品としてホルダ21を設け、該ホルダ21にストッパ部材32の収容部27を設けたが、タンブラが係止する係止溝22および収容部27をハウジング10に設け、ホルダ21は設けない構成としてもよい。さらに、前記実施形態では、ロックボルト64に別体のスライダ66を配設したが、このスライダ66の構成をロックボルト64に一体的に設けてもよい。