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JP5004308B2 - エンジンの排気浄化装置 - Google Patents

エンジンの排気浄化装置 Download PDF

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JP5004308B2 JP2008294335A JP2008294335A JP5004308B2 JP 5004308 B2 JP5004308 B2 JP 5004308B2 JP 2008294335 A JP2008294335 A JP 2008294335A JP 2008294335 A JP2008294335 A JP 2008294335A JP 5004308 B2 JP5004308 B2 JP 5004308B2
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Description

本発明はエンジンの排気を浄化するための排気浄化装置に関し、特に排気中に供給された尿素水から生成されるアンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元するアンモニア選択還元型NOx触媒を備えた排気浄化装置に関する。
エンジンの排気中に含まれる汚染物質の1つであるNOx(窒素酸化物)を浄化するための排気浄化装置として、エンジンの排気通路にアンモニア選択還元型NOx触媒を配設し、還元剤としてアンモニアをアンモニア選択還元型NOx触媒に供給することにより、NOxを還元して排気を浄化するようにした排気浄化装置が知られている。
このような排気浄化装置では、アンモニアをアンモニア選択還元型NOx触媒に供給するために、アンモニアに比べて取り扱いが容易な尿素水を排気中に供給するのが一般的であり、尿素水インジェクタなどを用いて排気中に尿素水を噴射する。尿素水インジェクタから排気中に供給された霧状の尿素水は排気の熱により加水分解し、その結果生成されるアンモニアがアンモニア選択還元型NOx触媒に供給される。NOx触媒に供給されたアンモニアと排気中のNOxとの間の脱硝反応がNOx触媒によって促進されることにより、NOxが還元されて排気の浄化が行われる。
このとき、尿素水インジェクタから噴射された霧状の尿素水の一部は、排気通路の内壁などに衝突することにより液化して排気通路などに付着し、水分が気化して固形の尿素結晶等となって排気通路の内壁などに尿素由来堆積物として堆積する。堆積した尿素由来堆積物は、排気通路の流動抵抗の増大や排気通路の閉塞などのトラブルを引き起こす上に、尿素由来堆積物の生成により本来NOxの還元に必要とされるアンモニアの量が不足し、排気浄化率を低下させる要因になる。又、堆積した尿素由来堆積物は排気温度の上昇時に一気にアンモニアに転化するため、必要以上のアンモニアがアンモニア選択還元型触媒に供給されて、その余剰分が大気中に放出される、所謂アンモニアスリップの問題も生じる。
このような不具合を鑑みて、尿素水インジェクタから噴射された尿素水の排気通路への付着を防止して排気中に良好に拡散・気化させるための対策として、例えば特許文献1の技術が提案されている。当該特許文献1には、エンジンからの排気を流通させる排気煙道に噴射装置を設け、この噴射装置から排気の流れ方向を横切るように尿素水を噴射し、尿素水から生成されるアンモニアを利用して下流側の脱硝触媒で排気中の窒素酸化物を還元するようにした排気浄化装置が開示されている。噴射装置から噴射された尿素水は排気煙道内の対向壁に衝突して付着することから、その対策として、尿素水の噴射経路上に衝突面を排気下流側に傾斜させた多孔板を多段に配設し、噴射された尿素水を多孔板に衝突させることにより排気煙道内の対向壁への尿素水の付着を防止すると共に、多孔板上に衝突した尿素水を膜沸騰させることにより多孔板への尿素水の付着も防止している。
特開2007−32472号公報
上記特許文献1の技術が想定する尿素水の膜沸騰は、特許文献1の図4に示すように排気及び尿素水の温度差が高く、多孔板への尿素水の噴霧衝突密度が低い条件で生起され、それ以外の領域では膜沸騰から核沸騰に遷移して、衝突した尿素水により多孔板が急激に冷却されるため、多孔板上への尿素水の付着が避けられなくなる。そこで、特許文献1の技術では、排気及び尿素水の温度差を前提として、尿素水の噴霧衝突密度を低下させるべく、多孔板の開口率、噴射点から多孔板までの距離、噴霧広がり角などを設定している。
しかしながら、エンジンの運転状態に応じて排気温度などの諸条件は大幅に変動し、上記のように噴霧衝突密度の設定に関して配慮したとしても、必ずしも全ての運転状態において尿素水の膜沸騰を成立できるとは限らない。従って、特許文献1の技術では、例えば排気温度の低い低負荷運転が継続されたときに核沸騰に遷移してしまい、冷却した多孔板上への尿素水の付着、ひいては尿素由来堆積物の堆積が発生して、堆積した尿素由来堆積物により上記種々のトラブルを生じてしまうという問題があった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、エンジンの運転状態に関わらず排気通路内の対向壁等への尿素水の付着を確実に防止でき、もって堆積した尿素由来体積物に起因する種々のトラブルを未然に回避することができるエンジンの排気浄化装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、エンジンの排気通路に配設されて内部にエンジンからの排気が導入されるケーシングと、ケーシングに配設され、ケーシング内を横切るように尿素水を噴射する尿素水噴射手段と、ケーシング内の尿素水噴射手段よりも下流側に配設され、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを選択還元するアンモニア選択還元型NOx触媒と、ケーシング内に導入された排気を案内して尿素水噴射手段から噴射された尿素水に対して略逆方向の排気気流を生起させる流通方向変更手段とを備えたものである。
従って、エンジンからの排気はケーシング内に導入されて流通方向変更手段により案内され、尿素水噴射手段から噴射された尿素水に対して略逆方向の排気気流を生起する。尿素水噴射手段からはケーシング内を横切るように尿素水が噴射されるため、噴射された尿素水はケーシング内の対向壁等に衝突・付着する場合があるが、本発明では、このときの尿素水噴霧が流通方向変更手段により生起された排気気流に逆らいながら進行する。このため、尿素水噴霧の液滴は減速作用を受けると共に、排気気流との間の相対速度が増加して気化が促進され、結果として尿素水噴霧は、ケーシング内の対向壁等に到達する以前に排気中に拡散・気化し、下流側のアンモニア選択還元型NOx触媒に移送されてアンモニアの生成に有効に利用され、ケーシング内の対向壁等への尿素水の衝突・付着が確実に防止される。よって、ケーシング内の対向壁等に付着した尿素水が尿素水由来堆積物として堆積したときのトラブル、例えば排気通路の流動抵抗の増大や排気通路の閉塞、アンモニア量の不足によるアンモニア選択還元型NOx触媒の排気浄化率の低下、或いは排気温度上昇時のアンモニアスリップ等の種々のトラブルが未然に防止される。
そして、エンジン運転状態の変化に伴って排気温度や排気流量が変動したとしても、流通方向変更手段により尿素水噴霧と略逆方向の排気気流は必ず生起され、この排気気流によりケーシング内の対向壁等への尿素水の付着が確実に防止される。よって、全てのエンジン運転状態において前述した作用効果が得られる。
請求項2の発明は、エンジンの排気通路に配設されて内部にエンジンからの排気が導入されるケーシングと、ケーシングに配設され、ケーシング内を横切るように尿素水を噴射する尿素水噴射手段と、ケーシング内の尿素水噴射手段よりも下流側に配設され、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを選択還元するアンモニア選択還元型NOx触媒と、ケーシング内を上流室とアンモニア選択還元型NOx触媒が収容される下流室とに区画すると共に、尿素水噴射手段の噴射軸線上で尿素水噴射手段に対向する対向面を備え、対向面と尿素水噴射手段との間に下流室内と連通する拡散室を形成する隔壁と、筒状をなして一端が隔壁の対向面から拡散室内に開口すると共に、内部が上流室内と連通して上流室からエンジンの排気が流入し、流入した排気を内部で案内して尿素水噴射手段から噴射された尿素水に対して略逆方向の排気気流を拡散室内に生起するガイドパイプとを備えたものである。
従って、エンジンからの排気はケーシング内に導入されて上流室からガイドパイプ内に流入し、ガイドパイプ内を案内される過程で、尿素水噴射手段から噴射された尿素水に対して略逆方向の排気気流を生起して拡散室内に導入される。尿素水噴射手段からはケーシング内を横切るように尿素水が噴射されるため、噴射された尿素水はケーシング内の対向壁等に衝突・付着する場合があるが、本発明では、このときの尿素水噴霧がガイドパイプにより生起された排気気流に逆らいながら進行する。このため、尿素水噴霧の液滴は減速作用を受けると共に、排気気流との間の相対速度が増加して気化が促進され、結果として、尿素水噴霧はケーシング内の対向壁等に到達する以前に排気中に拡散・気化し、下流側のアンモニア選択還元型NOx触媒に移送されてアンモニアの生成に有効に利用され、ケーシング内の対向壁等への尿素水の衝突・付着が確実に防止される。よって、ケーシング内の対向壁等に付着した尿素水が尿素水由来堆積物として堆積したときのトラブル、例えば排気通路の流動抵抗の増大や排気通路の閉塞、アンモニア量の不足によるアンモニア選択還元型NOx触媒の排気浄化率の低下、或いは排気温度上昇時のアンモニアスリップ等の種々のトラブルが未然に防止される。
そして、エンジン運転状態の変化に伴って排気温度や排気流量が変動したとしても、ガイドパイプにより尿素水噴霧と略逆方向の排気気流は必ず生起され、この排気気流によりケーシング内の対向壁等への尿素水の付着が確実に防止される。よって、全てのエンジン運転状態において前述した作用効果が得られる。
請求項3の発明は、エンジンの排気通路に配設されて内部にエンジンからの排気が導入されるケーシングと、ケーシングに配設され、ケーシング内を横切るように尿素水を噴射する尿素水噴射手段と、ケーシング内の尿素水噴射手段よりも下流側に配設され、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを選択還元するアンモニア選択還元型NOx触媒と、ケーシング内を上流室とアンモニア選択還元型NOx触媒が収容される下流室とに区画すると共に、尿素水噴射手段の噴射軸線上で相対向する第1及び第2の対向面を備え、両対向面の間に下流室内と連通する拡散室を形成する隔壁と、筒状をなして一端が隔壁の第1の対向面から拡散室内に開口すると共に、内部が上流室内と連通して上流室からエンジンの排気が流入し、流入した排気を案内して尿素水噴射手段から内部に噴射された尿素水に対して略同方向の排気気流を拡散室内に生起する第1のガイドパイプと、筒状をなして一端が隔壁の第2の対向面から拡散室内に開口し、内部が上流室内と連通して上流室からエンジンの排気が流入し、流入した排気を案内して噴射尿素水に対して略逆方向の排気気流を拡散室内に生起する第2のガイドパイプとを備えたものである。
従って、エンジンからの排気はケーシング内に導入されて上流室から第1及び第2のガイドパイプ内に流入し、第1のガイドパイプ内を案内された排気は、尿素水噴射手段から噴射された尿素水に対して略同方向の排気気流を生起して拡散室内に導入され、第2のガイドパイプ内を案内された排気は、尿素水噴射手段から噴射された尿素水に対して略逆方向の排気気流を生起して拡散室内に導入され、これらの排気気流は拡散室内で衝突して合流し、下流側のアンモニア選択還元型NOx触媒へと移送される。
排気気流の流通方向において、第1及び第2のガイドパイプに対して拡散室内の排気気流の衝突地点は下流側に相当することから、尿素水噴射手段から噴射された尿素水噴霧は排気気流の流通方向に倣って衝突地点へと案内されると共に、排気気流に逆らって衝突地点から遠ざかる方向への進行、即ち、衝突地点を通り過ぎたり衝突地点で反転したりする方向への進行が妨げられる。このため、尿素水噴射手段から噴射された尿素水噴霧は、第1のガイドパイプ内で生起された排気気流に案内されて積極的に下方へと移送され、衝突地点から大きく外れることなく、そのまま下流側のアンモニア選択還元型NOx触媒へと移送される。
結果として、ケーシングの対向壁等への尿素水の付着が防止されると共に、尿素水噴射手段側のケーシング内壁への尿素水の付着も防止され、これらの尿素水による尿素由来堆積物の堆積が防止される。よって、尿素由来堆積物の堆積に起因する種々のトラブルが未然に防止されると共に、堆積した尿素水由来堆積物により尿素水噴射手段の噴孔が閉塞されて噴射不能に陥る事態を未然に回避可能となる。
そして、エンジン運転状態の変化に伴って排気温度や排気流量が変動したとしても、第1及び第2のガイドパイプによる排気気流は必ず生起され、これらの排気気流によりケーシング内の対向壁や尿素水噴射手段側の内壁への尿素水の付着が確実に防止されるため、全てのエンジン運転状態において前述した作用効果が得られる。
又、逆方向の排気気流の衝突により尿素水噴霧は排気と激しく撹拌されるため、排気中に尿素水を一層良好に拡散・気化でき、もってアンモニア選択還元型NOx触媒の入口の各部位に対して均一にアンモニアを供給可能となる。
請求項4の発明は、請求項2又は3において、ガイドパイプが、他端をケーシングの内壁に接続されて閉塞されると共に、外周に形成された多数の孔を介してケーシングの上流室から内部にエンジンの排気を流入させるものである。
従って、ガイドパイプの外周の多数の孔を経て排気をガイドパイプ内に流入させるため、ガイドパイプ内で均一な排気気流を生起して、尿素水噴射手段から噴射されたほぼ全ての部位の尿素水噴霧に対して逆方向或いは同方向の排気気流を生起可能となる。
以上説明したように請求項1,2の発明のエンジンの排気浄化装置によれば、ケーシング内を横切るように噴射された尿素水に対して略逆方向の排気気流を生起して、尿素水噴霧の液滴に減速作用を与えると共に、排気気流との間の相対速度を増加させて気化を促進するようにしたため、尿素水噴霧をケーシング内の対向壁等に到達する以前に排気中に拡散・気化させて、エンジンの運転状態に関わらずケーシング内の対向壁等への尿素水の付着を確実に防止でき、もって堆積した尿素由来体積物に起因する種々のトラブルを未然に回避することができる。
請求項3の発明のエンジンの排気浄化装置によれば、ケーシング内を横切るように噴射された尿素水に対して略同方向の排気気流及び略逆方向の排気気流を生起して衝突させるようにしたため、尿素水噴霧を排気気流の衝突地点に積極的に導いてそのままアンモニア選択還元型NOx触媒に移送でき、これによりエンジンの運転状態に関わらずケーシング内の対向壁や尿素水噴射手段側の内壁への尿素水の付着を確実に防止でき、もって堆積した尿素由来体積物に起因する種々のトラブルを未然に回避でき、しかも、アンモニア選択還元型NOx触媒の入口の各部位に均一にアンモニアを供給して浄化能力を最大限に発揮させることができる。
請求項4の発明のエンジンの排気浄化装置によれば、請求項2又は3に加えて、ガイドパイプ内で均一な排気気流を生起して、ほぼ全ての部位の尿素水噴霧に対して逆方向或いは同方向の排気気流を生起でき、もってケーシング内の対向壁等への尿素水の付着防止をより確実に防止することができる。
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化したエンジンの排気浄化装置を示す第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態の排気浄化装置が適用された4気筒のディーゼルエンジン(以下、エンジンという)の全体構成図である。
エンジン1は各気筒共通の高圧蓄圧室(以下、コモンレールという)2を備えており、図示しない燃料噴射ポンプから供給されてコモンレール2に蓄えられた高圧の燃料を、各気筒に設けられたインジェクタ4に供給し、各インジェクタ4からそれぞれの気筒内に燃料が噴射される。
吸気通路6にはターボチャージャ8が装備されており、図示しないエアクリーナから吸入された吸気は、吸気通路6からターボチャージャ8のコンプレッサ8aへと流入し、コンプレッサ8aで過給された吸気はインタークーラ10及び吸気制御弁12を介して吸気マニホールド14に導入される。又、吸気通路6のコンプレッサ8aより上流側には、エンジン1への吸入空気流量を検出するための吸気量センサ16が設けられている。
一方、エンジン1の各気筒から排気が排出される排気ポート(図示せず)は、排気マニホールド18を介して排気管20に接続されている。なお、排気マニホールド18と吸気マニホールド14との間には、EGR弁22を介して排気マニホールド18と吸気マニホールド14とを連通するEGR通路24が設けられている。
排気管20はターボチャージャ8のタービン8bを経た後、排気絞り弁26を介して排気後処理装置28に接続されている。又、タービン8bの回転軸はコンプレッサ8aの回転軸と連結されており、タービン8bが排気管20内を流動する排気を受けてコンプレッサ8aを駆動するようになっている。
排気浄化装置28のケーシング29内は隔壁30により前後に区画され、以下の説明では、区画された前側の空間を上流室29aと称し、後側の空間を下流室29bと称する。これらの上流室29a及び下流室29bにより本発明の排気通路が構成されており、後に詳述するが、エンジン1から排出される排気は上流室29a内から隔壁30を経て下流室29b内に導入されるようになっている。
上流室29a内には、前段酸化触媒32が収容されると共に、この前段酸化触媒32の下流側にはパティキュレートフィルタ(以下フィルタという)33が収容されている。フィルタ33は、排気中のパティキュレートを捕集することによりエンジン1の排気を浄化するために設けられる。
前段酸化触媒32は排気中のNO(一酸化窒素)を酸化させてNO(二酸化窒素)を生成するので、このように前段酸化触媒32とフィルタ33とを配置することにより、フィルタ33に捕集され堆積しているパティキュレートは、前段酸化触媒32から供給されたNOと反応して酸化し、フィルタ33の連続再生が行われるようになっている。
下流室29b内には、アンモニアを還元剤として排気中のNOx(窒素酸化物)を選択還元して排気を浄化するアンモニア選択還元型NOx触媒(以下、SCR触媒という)35が収容されると共に、このSCR触媒35の下流側にはSCR触媒35から流出したアンモニアを除去するための後段酸化触媒36が収容されている。なお、後段酸化触媒36は、フィルタ33の強制再生でパティキュレートが焼却される際に発生するCO(一酸化炭素)を酸化し、CO(二酸化炭素)として大気中に排出する機能も有している。
又、下流室29b内の最上流箇所に相当する隔壁30近傍には、連通路32内の排気中に尿素水を噴射供給する尿素水インジェクタ(尿素水噴射手段)38が設けられており、尿素水を蓄えた尿素水タンク39から図示しない尿素水供給ポンプを介して尿素水インジェクタ38に尿素水が供給され、尿素水インジェクタ38の開閉に応じて下流室29b内の排気中に尿素水が噴射されるようになっている。
尿素水インジェクタ38から噴射された霧状の尿素水は、排気の熱により加水分解してアンモニアとなり、SCR触媒35に供給される。SCR触媒35は供給されたアンモニアと排気中のNOxとの脱硝反応を促進することにより、NOxを還元して無害なNとする。
更に、上流室29a内の前段酸化触媒32の下流側には、排気後処理装置28内を流動する排気の温度を検出するための排気温度センサ40が設けられている。
ECU(制御手段)50は、エンジン1の運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、CPU、メモリ、タイマカウンタなどから構成され、様々な制御量の演算を行うと共に、その制御量に基づき各種デバイスの制御を行っている。
ECU50の入力側には、各種制御に必要な情報を収集するため、上述した吸気量センサ16や排気温度センサ40のほか、エンジン1の回転数を検出する回転数センサ51、及び図示しないアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ52などの各種センサ類が接続されている。又、ECU50の出力側には、演算した制御量に基づき制御が行われる各気筒のインジェクタ4、吸気制御弁12、EGR弁22、排気絞り弁26及び尿素水インジェクタ38などの各種デバイス類が接続されている。
エンジン1の各気筒への燃料供給量の演算、及び演算した燃料供給量に基づくインジェクタ4からの燃料供給制御もECU50によって行われる。エンジン1の運転に必要な燃料供給量(主噴射量)は、回転数センサ51によって検出されたエンジン1の回転数とアクセル開度センサ52によって検出されたアクセルペダルの踏込量とに基づき、予め記憶しているマップから読み出して決定する。各気筒に供給される燃料の量は、インジェクタ4の開弁時間によって調整され、決定された燃料量に対応した駆動時間で各インジェクタ4が開弁駆動され、各気筒に主噴射が行われることにより、エンジン1の運転に必要な量の燃料が供給される。
ECU50は、このような各気筒への燃料供給制御のほか、フィルタ33の強制再生やSCR触媒35にアンモニアを供給するための尿素水供給制御も行う。フィルタ33の強制再生については既に広く知られているものであり、ここでは詳細な説明を省略するが、ECU50は、排気温度センサ40の検出値に基づき、主噴射とは別にインジェクタ4から各気筒に燃料を噴射することにより、排気中に燃料を供給し、前段酸化触媒32における排気中の燃料の酸化反応によって排気を昇温してフィルタ33の強制再生を行う。
又、ECU50は、インジェクタ4からの主噴射量や、回転数センサ51によって検出されたエンジン1の回転数及び吸気量センサ16によって検出されたエンジン1への吸入空気流量などに基づき、エンジン1の単位時間あたりの排気排出量及びNOx排出量を求め、このNOx排出量に対してSCR触媒35によるNOxの選択還元に必要なアンモニアの量から尿素水の目標供給量を求める。そして、この目標供給量に基づき尿素水インジェクタ38を制御することにより、尿素水インジェクタ38からSCR触媒35上流側の排気中に尿素水を供給する。
尿素水インジェクタ38から噴射された霧状の尿素水は、前述したように、排気の熱により加水分解してアンモニアとなり、このアンモニアがSCR触媒35に供給される。SCR触媒35は、供給されたアンモニアと排気中のNOxとの脱硝反応を促進することにより、NOxを還元して無害なNとする。
図2はケーシング29の隔壁30周辺の構成を示す部分拡大断面図、図3は同じくケーシング29の隔壁30周辺の構成を示す図2のIII−III線断面図、図4は同じくケーシング29の隔壁30周辺の構成を示す図2のIV−IV線断面図である。
これらの図に示すように、尿素水インジェクタ38はケーシング29の上部に水平面として形成された設置面61上に固定され、設置面61に形成された透孔61aを介して下流室29b内に尿素水を噴射するようになっている。尿素水インジェクタ38の噴射軸線Lは垂直、即ちケーシング29の長手方向と直交する方向に設定されており、尿素水インジェクタ38からは、ケーシング29内を直角に横切るように下方に向けて尿素水が噴射される。このため[背景技術]でも述べたように、噴射された尿素水がケーシング29内の対向壁等に衝突して付着し、水分の気化により尿素由来堆積物として堆積して種々のトラブルを発生させる可能性がある。このような問題点を鑑みて、本実施形態では、ケーシング29内の対向壁等への尿素水の衝突・付着を防止すべく、ケーシング29内の尿素水インジェクタ38の箇所において排気の流通方向を変更しており、以下、当該構成について詳述する。
本実施形態の排気浄化装置は、ケーシング29内の排気の流通方向を変更するための流通方向変更手段として、ケーシング29内を上流室29aと下流室29bとに区画する上記した隔壁30、及び排気を案内すべく隔壁30に設けられたガイドパイプ62を備えている。
隔壁30は、尿素水インジェクタ38の噴射軸線L上に位置して、尿素水インジェクタ38が固定されたケーシング29の設置面61に対して所定間隔をおいて対向する水平な対向面63、対向面63の上流端(排気流通方向の上流側端部)より直角に立ち上げられて設置面61の上流端に接続される上流面64、及び対向面63の下流端(排気流通方向の下流側端部)より直角に立下げられてケーシング29の内壁に接続される下流面65から構成されている。この隔壁30によりケーシング29内が上流室29aと下流室29bとに区画されると共に、隔壁30の対向面63の上面と設置面61の下面との間には下流室29bと連通する拡散室66が形成され、対向面63の下面とケーシング29の内壁(尿素水インジェクタ38の対向壁に相当)との間には上流室29aと連通する流入室67が形成されている。
ガイドパイプ62は上下方向に延びる円筒状をなし、その軸心を尿素水インジェクタ38の噴射軸線Lと一致させた姿勢で流入室67内に配設されている。ガイドパイプ62の上端は対向面63に接続され、該対向面63上で拡散室66内に開口して所定間隔をおいて尿素水インジェクタ38と対向している。又、ガイドパイプ62の下端は流入室67内でケーシング29の内壁から離間して、流入室67内に開口しているため、結果として流入室67と拡散室66とはガイドパイプ62を介して相互に連通している。
次に、以上のように構成された本実施形態のエンジンの排気浄化装置の作用を説明する。
エンジン1の運転中において、図2〜4に矢印で示すように、エンジン1の排気は上流室29a内でフィルタ33を流通した後に下方に集約されての流入室67内のガイドパイプ62の下端から内部に流入し、ガイドパイプ62内から拡散室66を経て下流室29b内に導入され、この尿素水から生成されたアンモニアを利用してSCR触媒35によりNOx浄化が行われる。
ガイドパイプ62内を流通する際の排気は、下方から上方へと案内される過程で上方への速度成分を付与されるため、上方への気流を生起しながら拡散室66内に導入される。このときの排気の気流は、尿素水インジェクタ38から噴射軸線Lに沿って下方に向けて噴射される尿素水噴霧に対して同軸かつ逆方向をなし、この排気の気流中に尿素水インジェクタ38から尿素水が噴射される。
このため、尿素水噴霧は上方に向かう排気気流に逆らいながら下方に向けて進行することになり、排気気流が生起されない場合に比較して、尿素水噴霧の液滴は減速作用を受けると共に、排気気流との間の相対速度が増加する。前者の要因は、尿素水噴霧が拡散室66内からガイドパイプ62内を経て流入室67内のケーシング29の対向壁に到達するまでの時間を延長化することに繋がり、後者の要因は、尿素水噴霧の液滴表面と排気気流との間の熱伝達の促進、ひいては尿素水の気化促進に繋がる。
気化促進により尿素水噴霧の液滴の粒径は急速に縮小し、粒径の縮小に伴って尿素水噴霧の貫徹力は急速に弱まるため、排気気流に逆らって進行できなくなる。結果として、尿素水噴霧はケーシング29の対向壁に到達する以前に拡散室66内で排気中に拡散・気化し、下流側のSCR触媒35に移送されてアンモニアの生成に有効に利用され、ケーシング29の対向壁等への尿素水の衝突・付着が確実に防止される。よって、ケーシング29の対向壁等に付着した尿素水が尿素水由来堆積物として堆積したときのトラブル、例えば排気通路の流動抵抗の増大や排気通路の閉塞、アンモニア量の不足によるSCR触媒35の排気浄化率の低下、或いは排気温度上昇時のアンモニアスリップ等の種々のトラブルを未然に防止することができる。
そして、エンジン運転状態の変化に伴って排気温度や排気流量が変動したとしても、ガイドパイプ62により尿素水噴霧と同軸かつ逆方向の排気気流は必ず生起され、この排気気流によりケーシング29の対向壁等への尿素水の付着が確実に防止される。従って、例えば特許文献1に記載の多孔板上で尿素水を膜沸騰させる技術のように、エンジン運転状態の変化により膜沸騰から核沸騰に遷移して所期の作用効果を達成できなくなるような虞は一切なく、全てのエンジン運転状態において前述した作用効果を得ることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明を具体化したエンジン1の排気浄化装置を示す第2実施形態を説明する。本実施形態の排気浄化装置の全体的な構成は、図1に示した第1実施形態のものと同様であり、相違点は隔壁30及びガイドパイプ71周辺の構成にある。そこで、同一構成の箇所は共通する部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に説明する。
図5は第2実施形態の排気浄化装置におけるケーシング29の隔壁30周辺の構成を示す部分拡大断面図、図6は同じくケーシング29の隔壁30周辺の構成を示す図5のVI−VI線断面図、図7は同じくガイドパイプ71のスリット72の詳細を示す図5のA部詳細図、図8は同じくガイドパイプ71のスリット72の詳細を示す図7のVIII−VIII線断面図である。
第1実施形態のガイドパイプ62と同じく、本実施形態のガイドパイプ71も尿素水インジェクタ38の噴射軸線Lに軸心を一致させた円筒状をなし、その上端を隔壁30の対向面63上で拡散室66内に開口させて所定間隔をおいて尿素水インジェクタ38と対向している。但し、ガイドパイプ71の下端は、第1実施形態のガイドパイプ62のように流入室67内でケーシング29の内壁から離間せずに、ケーシング29の内壁に対して接続されて閉塞されており、ガイドパイプ71の外周全体に形成された多数のスリット72を介してガイドパイプ71の内部が流入室67内と連通している。各スリット72はガイドパイプ71の全周に列設されると共に、ガイドパイプ71の軸心方向に所定長さで延設されている。
以上のように構成された本実施形態の排気浄化装置では、エンジン1からの排気が上流室29a内でフィルタ33を流通した後に下方の流入室67内に集約され、流入室67内でガイドパイプ71の各スリット72を経て内部に流入してガイドパイプ71内を下方から上方へと案内される。従って、第1実施形態と同じく、ガイドパイプ71から拡散室66内に導入されるときの排気は、尿素水インジェクタ38から噴射軸線Lに沿って下方に向けて噴射される尿素水噴霧に対して同軸かつ逆方向をなす気流を生起し、この排気気流中に尿素水インジェクタ38から尿素水が噴射される。よって、上向きの排気気流に逆らいながら尿素水噴霧が下方に向けて進行し、ケーシング29の対向壁等への尿素水の付着が防止される。
そして、本実施形態では、スリット72を経てガイドパイプ71内に排気を流入させているため、第1実施形態に比較して均一な排気気流が生起され、ケーシング29の対向壁等への尿素水の付着防止作用をより確実に得ることができる。即ち、図2に示すようにガイドパイプ62の下端から排気を流入させる第1実施形態では、ガイドパイプ62の下端での排気の流入に偏りを生じることから、ガイドパイプ62内で生起される上方に向かう排気気流にも偏りが発生し、尿素インジェクタ38から噴射された全ての部位の尿素水噴霧に対して同軸かつ逆方向の排気気流を生起することは困難となる。これに対して本実施形態では、全周に列設された各スリット72を経てガイドパイプ71内に略同一条件で排気が流入するため、ガイドパイプ71内で生起される上方に向かう排気気流はより均一なものとなる。結果として、尿素インジェクタ38から噴射されたほぼ全ての部位の尿素水噴霧に対して同軸かつ逆方向の排気気流を生起でき、これにより第1実施形態に比較して、ケーシング29の対向壁等への尿素水の付着防止をより確実に防止することができる。
ところで、第2実施形態では、ガイドパイプ71の外周に多数のスリット72を列設したが、スリット72に限ることはなく種々に変更可能である。例えば図9は図7に対応する別例を示す詳細図であるが、この図に示すように、ガイドパイプ71の外周に多数の円形孔73を分散して形成してもよく、この場合でも各実施形態と同様の作用を得ることができる。
又、内外を連通させる単なるスリット72とせずに、各スリット72に対応して排気を所定角度で案内するフィン74を設けてもよい。図10は図8に対応する別例を示す断面図であり、各フィン74は一側を中心としてガイドパイプ71の内周方向に折曲して形成され、これによりガイドパイプ71の外周に各スリット72に対応して同一角度αをなす多数のフィン74を形成している。
このように構成された別例の排気浄化装置では、フィルタ33を流通後の排気が各スリット72を経てガイドパイプ71内に流入する際に、各フィン74に案内されて角度αに倣って流れ方向を変更されるため、ガイドパイプ71内で排気は噴射軸線Lを中心とした上方に向かう旋回流を生起する。生起された排気旋回流は尿素水インジェクタ38から噴射される尿素水噴霧に対して完全に逆方向ではなく、旋回に応じた所定角度をもって尿素水噴霧に交わるため、尿素水噴霧への減速作用については各実施形態よりも若干弱まるものの、排気旋回流は尿素水噴霧との間の相対速度を増加させるだけでなく撹拌作用も奏するため、尿素水噴霧の気化はより促進される。よって、総合的には各実施形態の排気浄化装置と同様の作用効果を得ることができる。
又、排気旋回流の速度成分はガイドパイプ71の中心部で小さく、外周側ほど大きくなるため、図6に破線で示すように、ガイドパイプ71の軸心に対して尿素水インジェクタ38の噴射軸線Lを偏心させてもよい。このように構成すれば、尿素水が最も密となる尿素水噴霧の中心部分が排気旋回流の速度成分の大きな部位に晒されることになり、尿素水噴霧への減速作用、相対速度の増加作用、及び撹拌作用をより効果的に得ることができる。
[第3実施形態]
次に、本発明を具体化したエンジン1の排気浄化装置を示す第3実施形態を説明する。本実施形態の排気浄化装置は、第2実施形態として述べたものを基本として別のガイドパイプ81を追加したものであり、相違点は追加したガイドパイプ81周辺の構成にある。そこで、同一構成の箇所は共通する部材番号を付して説明を省略し、相違点を重点的に説明する。
図11は第3実施形態の排気浄化装置におけるケーシング29の隔壁30周辺の構成を示す部分拡大断面図、図12は同じくケーシング29の隔壁30周辺の構成を示す図11のXII−XII線断面図である。
第2実施形態と同じく、流入室67内には外周に多数のスリット72を備えたガイドパイプ71が配設され、ガイドパイプ71の上端は隔壁30の対向面63上で拡散室66内に開口して所定間隔をおいて尿素水インジェクタ38と対向している。エンジン1の排気は流入室67内でガイドパイプ71の各スリット72を経て内部に流入してガイドパイプ71内を下方から上方へと案内された後、尿素水インジェクタ38から噴射軸線Lに沿って噴射される尿素水噴霧に対して同軸かつ逆方向をなす気流を生起して拡散室66内に導入される。
以上のガイドパイプ71に関する構成及び作用は第2実施形態のものと同様であるが、これに加えて本実施形態では同様のガイドパイプ81を尿素水インジェクタ38側にも配設しており、これに付随して隔壁30にも対向面83を新たに追加している。以下、説明の便宜上、第2実施形態と共通するガイドパイプ71を下側ガイドパイプ71(第2のガイドパイプ)、第2実施形態と共通する対向面63を下側対向面63(第2の対向面)と称し、新たなガイドパイプを上側ガイドパイプ81(第1のガイドパイプ)、同じく新たな対向面を上側対向面83(第1の対向面)と称して区別する。
隔壁30の上側対向面83は、下側対向面63と尿素水インジェクタ38が固定されたケーシング29の設置面61との間に配設され、結果として下側及び上側対向面63,83は尿素水インジェクタ38の噴射軸線L上で所定間隔をおいて相対向している。そして、上側対向面83の上流端は上流面64を介して下側対向面63の上流端に接続され、上側対向面83の下流端は下流面84を介して設置面61の下流端に接続されている。この隔壁30によりケーシング29内が上流室29aと下流室29bとに区画されると共に、隔壁30の下側及び上側対向面63,83の間には下流室29bと連通する拡散室66が形成され、上側対向面83の上面と設置面61との間、及び下側対向面63の下面とケーシング29の内壁との間には、それぞれ上流室29aと連通する流入室67が形成されている。
新たに追加された上側ガイドパイプ81は下側ガイドパイプ71と同様の構成であり、径や幅等を同一に設定されている。そして、上側ガイドパイプ81は軸心を尿素水インジェクタ38の噴射軸線Lと一致させた姿勢で上側の流入室67内に配設され、上側ガイドパイプ81の下端は上側対向面83上で拡散室66内に開口している。上側ガイドパイプ81の上端は上側の流入室67内で設置面61に対して接続されて閉塞され、上側ガイドパイプ81の外周全体に形成された多数のスリット82を介してガイドパイプ81の内部が上側の流入室67内と連通している。なお、スリット82の形状や数についても下側ガイドパイプ71と同一設定である。
以上のように構成された本実施形態の排気浄化装置では、下側ガイドパイプ71と同じく上側ガイドパイプ81でも各スリット82を経て内部に流入した排気を案内する作用が奏される。このときの排気は上側ガイドパイプ81内を上方から下方へと案内されて、尿素水インジェクタ38から噴射軸線Lに沿って下方に向けて噴射される尿素水噴霧に対して同軸かつ同方向をなす気流を生起して拡散室66内に導入される。下側及び上側ガイドパイプ71,81により生起された相互に逆方向の排気気流は、それぞれのガイドパイプ71,81内から拡散室66内に導入された直後に衝突して合流し、下流室29b内を下流側のSCR触媒35へと移送される。
双方の排気気流の衝突地点は互いの流量比に応じて異なるが、本実施形態では下側及び上側ガイドパイプ71,81の構成を同一に設定しているため、両ガイドパイプ71,81により生起される排気気流の流量がほぼ等しく、それぞれの排気気流は両ガイドパイプ71,81間のおよそ中間地点で衝突することになる。但し、必ずしも中間地点で排気気流を衝突させる必要はないため、双方の排気気流の流量を相違させるように両ガイドパイプ71,81の仕様を設定してもよい。
端的に表現すると、下側及び上側ガイドパイプ71,81により生起される同軸かつ相互に逆方向の排気気流は、尿素水インジェクタ38から噴射された尿素水噴霧を排気気流が衝突する地点(以下、衝突地点と称する)に積極的に導く作用を奏する。
即ち、排気気流の流通方向において、下側及び上側ガイドパイプ71,81に対して排気気流の衝突地点は下流側に相当することから、尿素水インジェクタ38から噴射された尿素水噴霧は排気気流の流通方向に倣って衝突地点へと案内されると共に、排気気流に逆らって衝突地点から遠ざかる方向への進行、即ち、衝突地点を経て下方に通り過ぎたり、衝突地点で上方に反転したりする方向への進行が妨げられる。このため、尿素水インジェクタ38から噴射された尿素水噴霧は、まず上側ガイドパイプ81内で生起された下向きの排気気流に案内されて積極的に下方へと移送される。下向きの排気気流は衝突地点において下側ガイドパイプ内で生起された上向きの排気気流と衝突するため、尿素水噴霧を下方に案内する作用は消失するものの、尿素水噴霧は自己の慣性により下方への進行を継続する。このときの尿素水噴霧は上向きの排気気流に逆らいながら衝突地点より下方に進行し、上向きの排気気流により速やかに上方に押し戻される。又、押し戻された尿素水噴霧が衝突地点より上方に進行すれば、下向きの排気気流により速やかに下方に押し戻される。結果として排気気流の衝突地点まで導かれた尿素水噴霧は衝突地点から上下方向に大きく外れることなく、そのまま下流側のSCR触媒35へと移送される。
よって、第1,2実施形態と同様に、ケーシング29の対向壁等への尿素水の付着が防止されると共に、加えて本実施形態では、尿素水インジェクタ38側のケーシング29内壁への尿素水の付着も防止される。即ち、第1,2実施形態では、上向きの排気気流によりケーシング29の対向壁等への尿素水の付着は防止できるものの、噴射された尿素水噴霧の一部が上向きの排気気流に押し戻されて上方に反転する場合があり、反転した尿素水噴霧は尿素水インジェクタ38側のケーシング29の内壁に衝突して付着する可能性がある。上記のように本実施形態では、このような尿素水噴霧の上方への反転が、上側ガイドパイプにより生起された下向きの排気気流により抑制されるため、結果として、尿素水インジェクタ38側のケーシング29の内壁への尿素水の衝突・付着、ひいては尿素由来堆積物の堆積が未然に防止される。従って、ケーシング29内の対向壁や尿素水インジェクタ38側の内壁に尿素水由来堆積物が堆積したときの種々のトラブルを未然に防止できると共に、堆積した尿素水由来堆積物により尿素水インジェクタ38の噴孔が閉塞されて噴射不能に陥る事態を未然に回避することができる。
そして、エンジン運転状態の変化に伴って排気温度や排気流量が変動したとしても、下側ガイドパイプ71による尿素水噴霧と同軸かつ逆方向の排気気流、及び上側ガイドパイプ81による尿素水噴霧と同軸かつ同方向の排気気流は必ず生起され、これらの排気気流によりケーシング29の対向壁や尿素水インジェクタ38側の内壁への尿素水の付着が確実に防止される。従って、全てのエンジン運転状態において前述した作用効果を得ることができる。
しかも、下向きの排気気流と共に下方に導かれる尿素水噴霧は、衝突地点において上向きの排気気流と衝突して激しく撹拌されるため、排気中に尿素水を一層良好に拡散・気化できる。これによりSCR触媒35の入口の各部位に対して均一にアンモニアを供給でき、もってSCR触媒が有する浄化能力を最大限に発揮させることができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態では、選択還元型のSCR触媒35を備えたディーゼルエンジン1の排気浄化装置に具体化したが、適用対象はこれに限ることはない。例えばガソリンエンジンでも希薄燃焼運転時を想定してSCR触媒35を備える場合があるため、このようなガソリンエンジンに適用してもよい。
又、上記各実施形態では、ケーシング29内を隔壁30により区画したが、必ずしも隔壁30を設ける必要はない。例えば図13に示すようにケーシング29内のフィルタ33とSCR触媒35との間に流通方向変更手段として湾曲形成したガイドパイプ91を配設し、ガイドパイプ91の一端をフィルタ33側に指向させ、ガイドパイプ91の他端を尿素水インジェクタ38側に指向させてもよい。この場合には、ガイドパイプ91の他端と尿素水インジェクタ38が固定された設置面61の下面との間が拡散室66として機能し、フィルタ33を流通した排気の一部がガイドパイプ91の一端から内部に流入してガイドパイプ91の湾曲に倣って案内された後、上方への気流を生起しながら拡散室66内に導入されるため、重複する説明はしないが、第1,2実施形態と同様の作用効果が得られる。
但し、ガイドパイプ91を流通せずにフィルタ33側からSCR触媒35側に素通りする排気が存在するため、尿素水噴霧に対して同軸かつ逆方向をなす排気気流は、隔壁30を備えた第1,2実施形態に比較して減少し、尿素水噴霧への減速作用や相対速度の増加作用が弱まる。従って、第1,2実施形態のようにガイドパイプ62,71と隔壁30とを併用するのが望ましく、このように構成すれば、全ての排気を隔壁30により遮りながらガイドパイプ62,71に案内して上方への気流を生起でき、結果として排気気流による作用効果を最大限に得ることができる。
又、上記第1,2実施形態では、尿素水インジェクタ38から噴射軸線Lに沿ってケーシング29内を直角に横切るように尿素水を噴射する一方、噴射された尿素水噴霧に対して同軸かつ完全に逆方向をなす排気気流をガイドパイプ62,71により生起し、加えて第3実施形態では、噴射軸線Lに沿って噴射される尿素水噴霧に対して同軸かつ完全に同方向をなす排気気流をガイドパイプ81により生起したが、尿素水は必ずしもケーシング29内を直角に横切るように噴射する必要はないし、排気気流は必ずしも尿素水噴霧と同軸である必要はなく、完全に逆方向や同方向である必要もない。
よって、例えば図14に示すように尿素水インジェクタ38からケーシング29内を斜め上流側に横切るように尿素水を噴射すると共に、噴射された尿素水噴霧に対して完全な逆方向でなく所定角度βで交差する排気気流をガイドパイプ101により生起するようにしてもよい。また、尿素水噴霧に対して完全な逆方向の排気気流を生起する場合であっても、尿素水インジェクタ38の噴射軸線Lに対して排気気流の軸心を偏心させるようにしてもよい。
又、隔壁30の対向面63,83に関しても同様であり、必ずしもケーシング29の設置面61に対して対向面63を完全に対向させたり、両対向面63,83を完全に対向させたりする必要はなく、所定角度で対向するように配置してもよい。
実施形態の排気浄化装置が適用されたディーゼルエンジンを示す全体構成図である。 第1実施形態におけるケーシングの隔壁周辺の構成を示す部分拡大断面図である。 同じくケーシングの隔壁周辺の構成を示す図2のIII−III線断面図である。 同じくケーシングの隔壁周辺の構成を示す図2のIV−IV線断面図である。 第2実施形態におけるケーシングの隔壁周辺の構成を示す部分拡大断面図である。 同じくケーシングの隔壁周辺の構成を示す図5のVI−VI線断面図である。 同じくガイドパイプのスリットの詳細を示す図5のA部詳細図である。 同じくガイドパイプのスリットの詳細を示す図7のVIII−VIII線断面図である。 ガイドパイプの外周に円形孔を形成した別例を示す図7に対応する詳細図である。 ガイドパイプの外周にスリットに対応してフィンを設けた別例を示す図8に対応する断面図である。 第3実施形態におけるケーシングの隔壁周辺の構成を示す部分拡大断面図である。 同じくケーシングの隔壁周辺の構成を示す図11のXII−XII線断面図である。 湾曲形成したガイドパイプを流通方向変更手段として用いた別例を示す断面図である。 尿素水インジェクタの噴射軸線に対して排気気流を所定角度で交差させるようにした別例を示す断面図である。
符号の説明
1 エンジン
29 ケーシング
29a 上流室
29b 下流室
30 隔壁(流通方向変更手段)
35 SCR触媒(アンモニア選択還元型NOx触媒)
38 尿素水インジェクタ(尿素水噴射手段)
62,91,101 ガイドパイプ(流通方向変更手段)
63 下側対向面(第2の対向面)
66 拡散室
71 下側ガイドパイプ(第2のガイドパイプ,流通方向変更手段)
72,82 スリット(孔)
73 円形孔(孔)
81 上側ガイドパイプ(第1のガイドパイプ,流通方向変更手段)
83 上側対向面(第1の対向面)

Claims (4)

  1. エンジンの排気通路に配設されて内部にエンジンからの排気が導入されるケーシングと、
    上記ケーシングに配設され、該ケーシング内を横切るように尿素水を噴射する尿素水噴射手段と、
    上記ケーシング内の上記尿素水噴射手段よりも下流側に配設され、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを選択還元するアンモニア選択還元型NOx触媒と、
    上記ケーシング内に導入された排気を案内して上記尿素水噴射手段から噴射された尿素水に対して略逆方向の排気気流を生起させる流通方向変更手段と
    を備えたことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
  2. エンジンの排気通路に配設されて内部にエンジンからの排気が導入されるケーシングと、
    上記ケーシングに配設され、該ケーシング内を横切るように尿素水を噴射する尿素水噴射手段と、
    上記ケーシング内の上記尿素水噴射手段よりも下流側に配設され、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを選択還元するアンモニア選択還元型NOx触媒と、
    上記ケーシング内を上流室と上記アンモニア選択還元型NOx触媒が収容される下流室とに区画すると共に、上記尿素水噴射手段の噴射軸線上で該尿素水噴射手段に対向する対向面を備え、該対向面と上記尿素水噴射手段との間に上記下流室内と連通する拡散室を形成する隔壁と、
    筒状をなして一端が上記隔壁の対向面から上記拡散室内に開口すると共に、内部が上記上流室内と連通して該上流室から上記エンジンの排気が流入し、該流入した排気を内部で案内して上記尿素水噴射手段から噴射された尿素水に対して略逆方向の排気気流を上記拡散室内に生起するガイドパイプと
    を備えたことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
  3. エンジンの排気通路に配設されて内部にエンジンからの排気が導入されるケーシングと、
    上記ケーシングに配設され、該ケーシング内を横切るように尿素水を噴射する尿素水噴射手段と、
    上記ケーシング内の上記尿素水噴射手段よりも下流側に配設され、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを選択還元するアンモニア選択還元型NOx触媒と、
    上記ケーシング内を上流室と上記アンモニア選択還元型NOx触媒が収容される下流室とに区画すると共に、上記尿素水噴射手段の噴射軸線上で相対向する第1及び第2の対向面を備え、両対向面の間に上記下流室内と連通する拡散室を形成する隔壁と、
    筒状をなして一端が上記隔壁の第1の対向面から上記拡散室内に開口すると共に、内部が上記上流室内と連通して該上流室から上記エンジンの排気が流入し、該流入した排気を案内して上記尿素水噴射手段から内部に噴射された尿素水に対して略同方向の排気気流を上記拡散室内に生起する第1のガイドパイプと、
    筒状をなして一端が上記隔壁の第2の対向面から上記拡散室内に開口し、内部が上記上流室内と連通して該上流室から上記エンジンの排気が流入し、該流入した排気を案内して上記噴射尿素水に対して略逆方向の排気気流を上記拡散室内に生起する第2のガイドパイプと
    を備えたことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
  4. 上記ガイドパイプは、他端を上記ケーシングの内壁に接続されて閉塞されると共に、外周に形成された多数の孔を介して上記ケーシングの上流室から内部に上記エンジンの排気を流入させることを特徴とする請求項2又は3記載のエンジンの排気浄化装置。
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