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JP5099832B2 - 象牙質−歯髄複合体再生治療剤 - Google Patents

象牙質−歯髄複合体再生治療剤 Download PDF

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Description

本発明は、進行したう蝕歯等の歯髄保存治療に利用可能な、象牙質−歯髄複合体再生治療剤に関する。
う蝕は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)およびストレプトコッカス・ソブリヌス(Streptococcus sobrinus)等の口内の酸産生菌による感染症の一つであり、脱灰と再石灰化のバランスがくずれることに起因する歯の実質欠損である。現在、う蝕が象牙質を超えて歯髄まで進行した歯の治療方法としては、露出した歯髄に覆髄剤として水酸化カルシウム製剤を塗布し、その後に歯科用セメント等を充填する方法がとられている。しかし、この方法では、水酸化カルシウムと接した歯髄面には壊死層が生じ、損傷を受けた歯髄組織は再生せず、第三象牙質が壊死層下にわずかに形成されるだけである。
象牙質と歯髄は、共に間葉系幹細胞に由来する組織であるが、前者は硬組織、後者は軟組織として、旧来は独立した組織として取扱われていた。近年の研究により、両者は発生学的にも機能的にも統合された組織として認識され、「象牙質−歯髄複合体」と呼ばれている。歯髄内の象牙芽細胞は、象牙質の象牙細管にその突起をのばし、外来刺激のセンサーとしての役割を果たすことが知られており、象牙質−歯髄複合体の生理的な形態と機能は、歯の生存に大きく関与する。そのため、上述したような現在の治療法での予後は、決して芳しくないのが実情である。
塩基性線維芽細胞増殖因子(塩基性線維芽細胞成長因子ともいう。以下、bFGFと省略する場合もある。)は、脳下垂体、脳、網膜、黄体、副腎、腎、胎盤、前立腺、胸腺、軟骨肉腫、マクロファージにおいて存在が確認されているペプチド性細胞増殖因子である(日本組織培養学会編、「細胞成長因子Part II」、朝倉書店、1987年、p.15−20)。塩基性線維芽細胞増殖因子は当初、BALB/c3T3細胞などの線維芽細胞で強い増殖作用を示すこと(D.Gospodarowicz、Nature、vol.249、p.123(1974))から命名されたが、その後、中胚葉由来のほとんどの細胞、特に血管内皮細胞の増殖を促進すること(D.Gospodarowicz、National Cancer Institute Monograph、vol.48、p.109(1978))、また骨格筋のサテライト細胞の増殖も促進させること(R.E.Allen、Experimental Cell Research、vol.152、p.154(1984))が明らかとなっている。また、近年では創傷治療における塩基性線維芽細胞増殖因子の臨床応用や、血管新生作用を用いた血管修復等への塩基性線維芽細胞増殖因子の応用も行われている。
塩基性線維芽細胞増殖因子は、インビトロで歯髄細胞の増殖を誘導し、さらに歯髄細胞の象牙芽細胞への分化調節作用を有していること(M.Nakashima、Archs Oral Biol.、vol.37(3)、p.231−236(1992)およびK.Nakao、Biochem Biophys Res Commun、vol.325、p.1052−1059(2004))、インビボでは、修復象牙質の形成にTGF−β1が有意な効果を奏するが、塩基性線維芽細胞増殖因子については効果が認められていないこと(D.Tziafas、Archs Oral Biol.、vol.43、p.431444(1998)およびC.−C.Hu、J.Endodontics、vol.24(11)、p.744−751(1998))が報告されている。
例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子製剤としては、国際公開第94/27630号パンフレットには、骨疾患治療に有用な塩基性線維芽細胞増殖因子を含有する架橋ゼラチンゲル製剤が、特開平7−233085号公報には、塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体が優れた軟骨組織新生ないし再生促進効果を有し、軟骨組織修復に有用であることが記載されている。特開平7−17876号公報には、塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体を含有する歯周疾患治療剤が開示されている。さらに、国際公開第03/082321号パンフレットには、歯周病の処置に有用な塩基性線維芽細胞増殖因子を含有する歯科用粘稠製剤が開示されている。特開平7−17876号公報に開示されている歯周疾患治療剤は、う蝕により欠損した象牙質の再生に応用が期待されている(特開平7−l7876号公報明細書段落[0035])。しかし、特開平7−17876号公報にはストレプトコッカス・ミュータンス等の酸産生菌に起因するう蝕や、咬耗または外傷による歯質の実質欠損の治療についての開示や示唆はなく、酸産生菌に起因するう蝕や、咬耗または外傷による歯質の実質欠損を根本的に治療し得る治療剤の開発が望まれている。
本発明の目的は、歯髄組織に存在する未分化間葉系幹細胞および象牙芽細胞に作用し、象牙質−歯髄複合体を積極的に再構築しうる薬剤を提供することにある。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討したところ、う蝕などにより失われた象牙質−歯髄複合体の欠損部または象牙質の欠損部に塩基性線維芽細胞増殖因子を投与することによって、歯髄細胞の増殖が誘導されて歯髄組織が再生されるのみならず、象牙芽細胞の増殖および分化誘導が活性化され、新たに象牙質を新生することで本来の機能を有する象牙質−歯髄複合体が再構築されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
〔1〕塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体を有効成分として含有する、象牙質−歯髄複合体の再生治療剤、
〔2〕塩基性線維芽細胞増殖因子がヒト塩基性線維芽細胞増殖因子である、上記〔1〕記載の再生治療剤、
〔3〕さらに担体を含有する、上記〔1〕記載の再生治療剤、
〔4〕担体が、ヒドロキシプロピルセルロースまたは架橋ゼラチンゲルである、上記〔3〕記載の再生治療剤、
〔5〕う蝕、咬耗または外傷による歯質の実質欠損を有する歯の治療に用いられる、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の再生治療剤、
〔6〕う蝕が歯髄まで進行した状態である、上記〔5〕記載の再生治療剤、
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の再生治療剤を製造するための塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体の使用、
〔8〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の再生治療剤、および当該治療剤を象牙質−歯髄複合体の再生治療に使用することができることまたは使用すべきであることを記載した当該治療剤に関する記載物を含む商業パッケージ、
〔9〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の再生治療剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含む象牙質−歯髄複合体の再生方法、
〔10〕塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体を有効成分として含有する、覆髄剤、
〔11〕上記〔10〕記載の覆髄剤を製造するための塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体の使用、
〔12〕上記〔10〕記載の覆髄剤、および当該覆髄剤を直接または間接覆髄に使用することができることまたは使用すべきであることを記載した当該覆髄剤に関する記載物を含む商業パッケージ、
〔13〕上記〔10〕記載の覆髄剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含む直接または間接覆髄方法。
図1は、bFGFが象牙質形成に及ぼす影響を示す図である。−:第三象牙質の形成がみられないもの、±:第三象牙質の形成がほとんどみられないもの、+:第三象牙質の形成が少量みられるもの、2+:第三象牙質の形成が中等量みられるもの、3+:第三象牙質の形成が著明にみられるもの。
図2は、イヌ歯髄露髄術後の象牙質−歯髄複合体の再生試験における、(A)無処理、(B)架橋ゼラチンゲルのみの処理、(C)bFGF処理、(D)ダイカル処理標本のHE染色後の光学顕微鏡写真である。
図3は、イヌ歯髄露髄術後の象牙質−歯髄複合体の再生試験における、(A)〜(B)bFGF処理および(C)ダイカル処理標本のHE染色後の高倍率光学顕微鏡写真である。(C)の矢印は歯髄中に形成された象牙質を示す。
図4は、露髄を伴わないイヌ象牙質欠損部術後の象牙質−歯髄複合体の再生試験における、bFGF処理標本のHE染色後の光学顕微鏡写真である。
本発明は、塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体を有効成分として含有する象牙質−歯髄複合体の再生治療剤を提供する。
本発明において象牙質−歯髄複合体とは、象牙質を産生しうる歯髄組織とこれを内包する象牙質両者を機能的な1単位ととらえた際の複合構造物である。
本発明において「再生治療」とは、う蝕または咬耗により欠損した象牙質および象牙質−歯髄複合体の再生を伴う治療形態である。
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGFまたはFGF−2:以下、bFGFと略する)およびその同族体は、天然に存在するものもしくは遺伝子組換え技術により微生物または培養細胞に産生させたものから単離精製することにより、またはそれらを化学的修飾もしくは生物的修飾することにより得られる。
天然のbFGFとしては、哺乳動物由来のものが挙げられる。哺乳動物としては、ヒト、サル、イヌ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ等が挙げられる。bFGFはこれら哺乳動物から公知の方法により得ることができ、また、市販のものを用いることもできる。本発明で用いるbFGFとしては特にヒトbFGFまたはその同族体が好ましい。
また本発明の再生治療剤においては、有効成分としてbFGFの同族体を用いてもよい。ここで、bFGFの同族体とは、下記〔I〕または〔II〕のポリペプチドを意味する。
〔I〕特定の哺乳動物で産生されるbFGFと実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチド。実質的に同一のアミノ酸配列とは、アミノ酸配列中の1〜6個のアミノ酸が別種のアミノ酸により置換されたものでbFGFの生物活性を有するものを意味する。
〔II〕特定の哺乳動物で産生されるbFGFのN末端および/またはC末端、あるいは上記〔I〕のポリペプチドのN末端および/またはC末端に、追加のアミノ酸セグメントが追加されたポリペプチド。追加のアミノ酸セグメントとは、1〜12個のアミノ酸からなり、bFGFの生物活性または上記〔I〕のポリペプチドの生物活性を損なわないものを意味する。
ヒトbFGFはアミノ酸146個のポリペプチドであるが、本発明の再生治療剤においては、ヒトbFGFの同族体(前記〔I〕の同族体)として、例えば特表平2−504468号公報に記載のアミノ酸146個のポリペプチドを用いてもよい。このポリペプチドは、ヒトbFGFのアミノ酸配列を構成する69位のシステイン(Cys)および87位のシステイン(Cys)がそれぞれセリン(Ser)により置換されたものである。
また、前記〔II〕の同族体として、例えば特表昭63−500843号公報に記載のアミノ酸155個のポリペプチドを用いてもよい。このポリペプチドは、ヒトbFGFのN末端にアミノ酸9個のセグメントが付加されたものである。
また、N末端にメチオニン(Met)が付加されたアミノ酸147個のポリペプチドや、特表昭63−501953号公報に記載のN末端にアミノ酸11個からなるセグメントが付加されたアミノ酸157個のポリペプチドを用いてもよい。
特に好ましいbFGFとしては、トラフェルミン(遺伝子組換え)が挙げられる。
本発明の再生治療剤においては、一種類のbFGFを単独で使用してもよいし、複数種を併用してもよい。さらに、前述したように、bFGFの同族体は複数種あるが、これらの同族体についても、それぞれを単独で使用してもよいし、併用してもよい。
なお、生体内におけるbFGFの存在量は極微量であるため、本発明の再生治療剤を商業的に安定して供給する上からは、遺伝子組換え技術により大腸菌等の微生物または培養細胞に産生させたbFGFまたはその同族体を使用することが特に好ましい。bFGFまたはその同族体(この場合は一般に前記〔I〕のポリペプチド)を産生させるための遺伝子を微生物または培養細胞に組み込んだ場合、この微生物または培養細胞から産生されるものは、一般に、bFGFのN末端および/またはC末端、または上記〔I〕のポリペプチドのN末端および/またはC末端に、追加のアミノ酸セグメントが付加したもの、すなわち前述した〔II〕のポリペプチドである。
本発明の再生治療剤は、通常の製剤技術に従ってbFGFおよび/またはその同族体を医薬上許容される担体、例えば、溶剤、等張化剤、乳化剤、懸濁剤、安定化剤、増粘剤、歯科領域で使用される充填剤等と合わせて、粘稠製剤、ゲル剤、液剤、軟膏剤、乳剤、注入剤、貼布剤、注射剤、粉剤等とすることができる。さらには、足場材料(スキャホールド)と組み合わせて使用することもできる。本発明の再生治療剤としては、具体的に、粘稠製剤およびゲル剤が好適なものとして挙げられる。以下、それぞれについて詳述する。
本発明の再生治療剤が粘稠製剤の場合(以下、本発明の粘稠製剤ともいう)、本発明の粘稠製剤に含有されるbFGFおよび/またはその同族体の濃度は、象牙質−歯髄複合体の再生を誘導する限り特に限定されないが、例えば、粘稠製剤の総重量に対して、通常0.0001〜20重量%、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜1重量%、さらにより好ましくは0.05〜0.5重量%である。
本発明の粘稠製剤は、25℃でE型粘度計を使用して測定した場合に約20〜25,000mPa・sの粘度を示す製剤であることが好ましく、より好ましくは、約1,000〜20,000mPa・s、特に好ましくは約3,000〜15,000mPa・sの粘度を有する。粘度がこの範囲内であれば、投与後の局所貯留性の点で好ましい。
当該粘度調整は、通常増粘剤の添加によって行うことができる。
増粘剤としては、溶液とした場合に、例えば上記の粘度(約20〜25,000mPa・s)を示すことができ、bFGFの安定性に悪影響を及ぼさず、かつ薬学的に許容し得る増粘剤であれば任意のものを任意の濃度で使用することができる。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、キサンタンガム、コンドロイチン酸、およびコンドロイチン硫酸ナトリウムなどを用いることができる。なかでも、bFGFの安定性に対する影響を考慮すると、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒアルロン酸ナトリウム、キサンタンガム、およびコンドロイチン硫酸ナトリウムを好ましく使用することができるが、特にヒドロキシプロピルセルロースを好ましく使用することができる。
これらの増粘剤のほかにも、アラビアゴム、アラビアゴム末、グアガム、グルコノ−δ−ラクトン、ゼラチン、デキストラン70、デキストリン、トラガント、トラガント末、ポビドン、水アメ、ロジン、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングリコール(70)、およびメチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体等の増粘剤も使用することができる。
本発明の粘稠製剤は、例えば国際公開第03/082321号パンフレット記載の方法により調製することができる。
前記ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、好ましくは、セルロースのヒドロキシプロピルエーテル誘導体であり、乾燥したものを定量するとき、ヒドロキシプロピル基53.4〜77.5%を含む(日本薬局方第14改正D)ものが好ましい。HPCは水に溶解すると粘稠性の液となるが、水溶液にした場合に25℃においてE型粘度計を使用して測定した場合に約20〜25,000mPa・sの粘度を示すHPCであれば、任意の分子量のHPCを上記の粘度を示す濃度で使用することができる。しかし、低濃度で高い増粘性を示す、分子量約100,000〜500,000のものを好ましく使用することができ、更に好ましくは約110,000〜400,000のものである。例えば、分子量約110,000〜150,000のHPCを使用する場合であれば、日本曹達(株)製のHPC−Mを、本発明の粘稠製剤全体に対して、好ましくは約2〜18重量%の割合で、より好ましくは約3〜10重量%の割合で使用することができる。また、分子量約250,000〜400,000のHPCを使用する場合であれば、日本曹達(株)製のHPC−Hを、本発明の粘稠製剤全体に対して、好ましくは約1〜9重量%の割合で、より好ましくは約2〜6重量%の割合で使用することができる。上記の粘度を達成することができる範囲で、異なる分子量のHPCを適宜混合して使用することもできる。
本発明の粘稠製剤は、bFGFおよび/またはその同族体に上記増粘剤を配合し、溶解液に溶解して所定の粘度を有する溶液とすることにより調製することができる。本発明の粘稠製剤全体に対するbFGFおよび/またはその同族体の割合は、上述したように、0.0001〜20重量%であり、このような割合になるようにbFGFおよび/またはその同族体を配合する。また、溶解液としては、水を好ましく使用することができる。本発明の粘稠製剤全体に対する増粘剤の使用比率は、用いる増粘剤の種類により異なるが、溶液の状態で約20〜25,000mPa・sの粘度(E型粘度計)を示す範囲で決定することができる。例えば増粘剤として分子量約110,000〜150,000のHPCを用いる場合、約2〜18重量%の割合、好ましくは約3〜10重量%の割合になるように増粘剤を溶解液に溶解する。また、分子量約250,000〜400,000のHPCを使用する場合であれば、約1〜9重量%の割合、好ましくは約2〜6重量%の割合になるように増粘剤を溶解液に溶解する。
本発明の再生治療剤がゲル剤の場合(以下、本発明のゲル剤ともいう)、本発明のゲル剤には、好ましくは担体としてゼラチンが含まれる。
前記ゼラチンは、生体内分解吸収性天然高分子であり、生体適合性に優れ、生体に対する刺激が少ないため、徐放性担体としても好ましい。一般的に、ゼラチンは水溶性であるため、水不溶化することが好ましい。具体的には、ゼラチンを架橋処理することにより水不溶性とした架橋ゼラチンゲルが好ましく用いられうる。
架橋ゼラチンゲルの原料となるゼラチンは、特に制限はなく、通常入手できるものでよい。このようなゼラチンとしては、例えば、等電点5付近のアルカリ処理ゼラチン(酸性ゼラチン)、等電点9付近の酸処理ゼラチン(アルカリゼラチン)等が挙げられるが、bFGFとの親和性の点で、等電点5付近の酸性ゼラチンが好ましい。ゼラチンは、一種類のみではなく、原料や、溶解性、分子量、等電点等の物性の異なるものを適宜混合して用いてもよい。
ゼラチンを架橋するための架橋剤としては、生体に対する毒性が低いものであれば特に限定されないが、例えば、グルタルアルデヒド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩や1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド−メト−p−トルエンスルホナート等の水溶性カルボジイミド、ビスエポキシ化合物、ホルマリンなどが好ましく、グルタルアルデヒドおよび1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩が特に好ましい。
ゼラチンは、熱処理または紫外線照射もしくは電子線照射によって架橋してもよい。
担体が架橋ゼラチンの場合、本発明のゲル剤は、例えば国際公開第94/27630号パンフレット記載の方法により調製することができる。
本発明のゲル剤で用いる架橋ゼラチンゲルの形状は特に制限はなく、例えば、円柱状、角柱状、シート状、ディスク状、球状、粒子状、粒状、ペースト状などが挙げられる。注入可能な製剤として用いる場合には、球状、粒子状、粒状、ペースト状のものが好ましい。
円柱状、角柱状、シート状、ディスク状の架橋ゼラチンゲルは、ゼラチン水溶液に架橋剤水溶液を添加するか、あるいは架橋剤水溶液にゼラチンを添加し、所望の形状の鋳型に流し込み、架橋反応させて調製することができる。また、成形したゼラチンゲルをそのまま、あるいは乾燥後に架橋剤水溶液を添加してもよい。架橋反応を停止させるには、エタノールアミン、グリシン等のアミノ基を持つ低分子物質に接触させるか、またはpH2.5以下の水溶液を添加する。得られた架橋ゼラチンゲルは、蒸留水、エタノール、2−プロパノール(以下、IPAと称する)、アセトン等により洗浄し、ゲル剤調製に供される。
得られる架橋ゼラチンゲルの含水率は、50〜99w/w%である。ここで、ゲルの含水率とは、湿潤時のゲル全重量に対するゲル中の水分重量の割合を示す。
ペースト状の架橋ゼラチンゲルは、上述の円柱状、角柱状、シート状、ディスク状の架橋ゼラチンゲルの調製方法と類似の方法で調製することができる。
架橋反応条件は適宜選択すべきものであるが、反応温度は0〜40℃、反応時間は1〜48時間が好ましい。
上記のようにして得られた架橋ゼラチンゲルは減圧乾燥または凍結乾燥させることもできる。
凍結乾燥は、例えば架橋ゼラチンゲルを蒸留水に入れ、液体窒素中で30分以上または−80℃で1時間以上凍結させた後に凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させることにより行う。
架橋ゼラチンゲルを調製する際のゼラチンと架橋剤の濃度は、所望の含水率により適宜選択すべきであるが、ゼラチン濃度1〜100w/v%、架橋剤濃度0.01〜100w/v%(1〜5400mMに相当)が好ましい。
架橋ゼラチンゲルは、原料であるゼラチンと架橋剤の濃度を変化させることにより所望の含水率とすることができる。含水率を高くするには、ゼラチン濃度、架橋剤濃度共に低くし、逆に含水率を低くするにはゼラチン濃度、架橋剤濃度共に高くすればよい。
上記のようにして調製した架橋ゼラチンゲルにbFGFを担持させるには、bFGF水溶液を架橋ゼラチンゲルに滴下して含浸させるか、架橋ゼラチンゲルをbFGF水溶液中に懸濁して再膨潤させる。
架橋ゼラチンゲルに担持させることができるbFGFの量は、架橋ゼラチンゲルの含水率等により異なるが、架橋ゼラチンゲル1mg当たり0.1〜500μgが可能である。
なお、徐放期間、bFGFの放出量等は、架橋ゼラチンゲルの含水率、用いたゼラチンの等電点等の物性、製剤に担持されるbFGFの量、投与される部位などの種々の条件により異なる。
上記のようにして得られた本発明のゲル剤は、凍結乾燥することもできる。凍結乾燥する場合には、例えば、液体窒素中で30分以上または−80℃で1時間以上凍結させた後に、凍結乾燥機で1〜3日間乾燥させることにより行う。
本発明のゲル剤を注入可能な製剤とする場合には、注射用精製水、生理食塩水、緩衝液などの媒体に適宜懸濁する。緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液などが挙げられる。さらに必要に応じ、注射可能な製剤の製造に通常使用される、分散剤、界面活性剤、等張化剤、pH調整剤、無痛化剤、安定化剤、保存剤、着色剤などを適宜配合することができる。
本発明の再生治療剤に担体が含まれることにより、bFGFおよび/またはその同族体は安定に保持され、低含量のbFGFおよび/またはその同族体を定量的かつ均一に塗布することができ、局所貯留性に優れた製剤とすることができる。
本発明の再生治療剤は、優れた象牙質−歯髄複合体再生作用を有しており、う蝕、咬耗または外傷等による歯質の実質欠損を有する歯、中でもう蝕が歯髄にまで進行した重度う蝕歯の治療に好適に用いることができる。また、本発明の再生治療剤は、ヒトのみならずその他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)の象牙質−歯髄複合体再生治療にも適用可能である。
本発明の再生治療剤により再生された象牙質−歯髄複合体は、水酸化カルシウム製剤等の既存の薬剤を適用した象牙質−歯髄と比べて、より生理的な形態に近い。また、本発明の再生治療剤により再生された象牙質−歯髄複合体は、水酸化カルシウム製剤等の既存の薬剤を適用した象牙質−歯髄と比べて、より生理的な機能に近いことが好ましい。
「生理的な形態」とは、生来の象牙質−歯髄複合体の有する形態をいう。具体的には、本発明の再生治療剤により再生された象牙質−歯髄複合体は、象牙質がう蝕窩洞側に、歯髄が生来の歯髄側に位置しており、象牙質の方向に象牙芽細胞の突起がのびている複合体である。「生理的な機能」とは、生来の象牙質−歯髄複合体の有する機能をいう。具体的には、エナメル質を裏打ちして咬合力に抵抗する歯を構成するとともに、う蝕・咬耗時に歯に加えられる機械的刺激あるいは化学的刺激に対する感覚器としての機能である。生来の象牙質−歯髄複合体において、歯髄内の象牙芽細胞は、象牙質の象牙細管にその突起をのばし、外来刺激のセンサーとしての役割を果たすことが知られているため、このような形態を有する本発明の再生治療剤により再生された象牙質−歯髄複合体は、生来の象牙質−歯髄複合体の有する機能をも有し得る。なお、水酸化カルシウム製剤によっても象牙質がわずかに形成されることが知られているが、その再生は歯髄内の第三象牙質に留まり、象牙質−歯髄複合体の生理的な形態が構成されることはない。
また、本発明は、本発明の再生治療剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、象牙質−歯髄複合体の再生方法を提供する。ここで、「それを必要とする対象」とは、う蝕、咬耗または外傷等による歯質の実質欠損を有する歯、中でもう蝕が歯髄にまで進行した重度う蝕歯を有する対象である。対象には、ヒトのみならずその他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル等)も含まれる。
本発明の再生治療剤の投与方法は、特に限定されないが、露髄面または象牙質欠損底部への局所投与が好ましい。例えば、20〜24G程度の太さの注射針を取り付けた注射筒で本発明の再生治療剤を適量取り、露髄面または象牙質欠損底部へ投与する方法等が挙げられる。また、簡易型注射器具のようなキット製品のリザーバー部分に予め本発明の再生治療剤を充填しておき、投与することも可能である。
本発明の再生治療剤の投与量は、対象や重症度、対象の体重や年齢等により適宜変更することができるが、一般的には、ヒトの場合には、露髄面または象牙質欠損底部を満たす量である。投与回数は症例、1回の処置あたりの投与量にもよるが、通常1〜2回程度とする。
また、本発明は、本発明の再生治療剤および記載物を含む商業的パッケージを提供する。該記載物には、本発明の再生治療剤を象牙質−歯髄複合体の再生治療に使用することができることまたは使用すべきであることが記載されている。
また、本発明の再生治療剤の象牙質−歯髄複合体の欠損部または象牙質の欠損部への投与は、後述の実施例1より明らかなように、欠損部を覆うような硬組織の形成および著しい血管の新生を引き起こす。また、実施例2より明らかなように、露髄を伴わない象牙質の欠損部への投与は、象牙質−歯髄複合体の形態を保持した象牙質の新生(第三象牙質)を引き起こす。従って、本発明は、塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体を有効成分として含有する覆髄剤を提供する。
ここで「覆髄」とは、直接覆髄および間接覆髄を意味する。「直接覆髄」とは、露髄した非感染性歯髄を保護して歯髄の硬組織形成能を促進させ、露出部の閉鎖をはかることであり、また、「間接覆髄」とは、深在性う蝕などで軟化象牙質や窩洞形成により菲薄となった健康窩底象牙質を被覆して、理化学的刺激や感染から歯髄を保護し、さらに修復象牙質(第三象牙質)の形成を促進させることである。
本発明の覆髄剤に有効成分として含有されるbFGFおよび/またはその同族体としては、本発明の再生治療剤と同様なものが用いられる。
本発明の覆髄剤に含有されるbFGFおよび/またはその同族体の濃度は、特に限定されないが、例えば、覆髄剤の総重量に対して、通常0.0001〜20重量%、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜1重量%、さらにより好ましくは0.05〜0.5重量%である。
本発明の覆髄剤は、従来用いられている水酸化カルシウム製剤と比べて、より生理的な形態と機能に近い象牙質−歯髄複合体を再生する優れた作用を有しており、象牙質−歯髄複合体のう蝕、咬耗または外傷等による歯質の実質欠損を有する歯の歯髄を保護する覆髄剤として好適に用いることができる。
また、本発明は、本発明の覆髄剤を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、直接または間接覆髄方法を提供する。対象、投与方法などは、本発明の再生治療剤と同様なものが挙げられる。
本発明の覆髄剤の投与量は、対象や重症度、対象の体重や年齢等により適宜変更することができるが、一般的には、ヒトの場合には、露髄面または象牙質欠損底部を満たす量である。投与回数は症例、1回の処置あたりの投与量にもよるが、通常1〜2回程度とする。
また、本発明は、本発明の覆髄剤および記載物を含む商業的パッケージを提供する。該記載物には、本発明の覆髄剤を直接または間接覆髄に使用することができることまたは使用すべきであることが記載されている。
本明細書中で挙げられた特許明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下に実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(方法)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC;日本曹達(株)製)を基剤とし0.089重量%のbFGF(科研製薬(株)製)を含有させた標品もしくは架橋ゼラチンゲルを基剤として0.4重量%のbFGF(科研製薬(株)製)を含有させた標品および架橋ゼラチンゲルを基剤としてダイカル(Ca(OH)製剤;Calk製)を含有させた標品を実験に供した。なお、標品は国際公開第03/082321号パンフレットおよび国際公開第94/27630号パンフレット記載の方法により調製した。
動物実験には1才齢の雌ビーグル犬を用いた。ケタラールおよびネンブタールの静脈内麻酔下、上下顎の犬歯唇面にダイヤモンドバーを用いて窩洞を形成し1/2のラウンドバーを用いて歯髄へ穿孔し露髄させた。生理食塩水で洗浄し止血、乾燥後、標品を露髄面へ添加し、窩洞はプライマー・ボンディング処理後光重合型レジンにて充填を行った。陰性対照として無処理あるいは基剤のみを用いた。処置後動物は通常食で飼育し、1ヶ月後に抜歯を行った。抜去した歯は緩衝4%パラホルムアルデヒド溶液にて固定、ギ酸・クエン酸ナトリウム脱灰液にて脱灰後、通法に従い組織切片を作製しHE染色を施し、病理組織学的にbFGFの象牙質−歯髄複合体の再生効果を検討した。
(結果)
架橋ゼラチンゲルを基剤とした標品を用い、bFGFの象牙質形成に及ぼす影響を検討した(図1)。検討は第三象牙質の形成を指標に5段階で行った(−:第三象牙質の形成がみられないもの、±:第三象牙質の形成がほとんどみられないもの、+:第三象牙質の形成が少量みられるもの、2+:第三象牙質の形成が中等量みられるもの、3+:第三象牙質の形成が著明にみられるもの)。無処理では、45%に第三象牙質の形成がみられるが、その形成程度はほとんどが+程度であった。また、ダイカル処理では、21.4%しか第三象牙質の形成がみられなかった。しかし、bFGF処理では、50%に新生象牙質の形成があり、全てが2+あるいは3+と、象牙質形成は著明に認められた。以上、bFGF処理により、第三象牙質の形成がはっきりと見られる傾向があった。なお、基剤としてHPCを用いた場合も、同様の結果が得られた(データ未掲載)。
架橋ゼラチンゲルを基剤とした標品を用い、象牙質−歯髄複合体の再生を光学顕微鏡(×20)で観察した(図2)。無処理では、硬組織形成は認められず、歯髄組織中には血管の拡張が認められた(図2(A))。架橋ゼラチンゲルのみの処理では、わずかの硬組織形成と血管の拡張像が認められた(図2(B))。bFGF処理では、欠損部を覆うように硬組織の形成および著しい血管の新生が認められた。また、著明な象牙質硬組織の形成が認められ、欠損象牙質深部まで一部硬組織形成を伴う豊富な結合織形成が認められた(図2(C))。新生象牙質に接して正常像とほぼ同一の象牙芽細胞様細胞の配列が認められ、生理的な象牙質−歯髄複合体の再生がうかがわれた。ダイカル処理では、少量の硬組織形成が認められるものの、欠損部に面する歯髄組織には血管拡張と著明な細胞浸潤が認められ、激しい炎症像を呈した(図2(D))。なお、基剤としてHPCを用いた場合も、同様の結果が得られた(データ未掲載)。
架橋ゼラチンゲルを基剤とした標品を用い、象牙質−歯髄複合体の再生を高倍率光学顕微鏡で観察した(図3)。bFGF処理では、硬組織の形成が著しく(図3(A)(×40))、象牙質への分化が認められた(図3(B)(×200))。また、ダイカル処理では、硬組織形成量は少なかった(図3(C)(×200))。なお、基剤としてHPCを用いた場合も、同様の結果が得られた(データ未掲載)。
[実施例2]
(方法)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC;日本曹達(株)製)を基剤とし0.089重量%のbFGF(科研製薬(株)製)を含有させた標品を実験に供した。動物実験は実施例1と同様に行い、象牙質の欠損を形成する際、露髄させず、標品を象牙質欠損底部へ添加し、露髄を伴わない場合のbFGFの象牙質−歯髄複合体の再生効果を検討した。
(結果)
実施例1と同様、露髄を伴わない場合でもbFGF処理により象牙質−歯髄複合体の形態を保持した象牙質の新生(第三象牙質)が認められた(図4)。
本発明の再生治療剤は、歯髄細胞の増殖誘導、歯髄組織の再生、象牙芽細胞の増殖および分化誘導、象牙質の再生(第三象牙質)作用を有する。従来、再生治癒が望めなかった重度う蝕歯の治療において、本発明の再生治療剤を適用することにより、象牙質−歯髄複合体の再生が可能となり、咀嚼機能や知覚を回復した理想的なう蝕歯の治療が期待できる。本発明の再生治療剤により再生された象牙質−歯髄複合体は、歯の強度、耐う蝕性、審美性、接着性等を維持し得る。その結果として、本治療剤を適用する方法は永久歯の寿命を画期的に延ばすことができる。
本発明の再生治療剤は、生理的な形態および/または機能を有する象牙質−歯髄複合体を再生することが可能であるため、咀嚼機能や知覚を回復させるう蝕の治療剤となり得る。また、本発明の覆髄剤は、生理的な形態および/または機能に近い象牙質−歯髄複合体を再生することが可能であるため、う蝕、咬耗または外傷等による歯質の実質欠損を有する歯の歯髄を保護する覆髄剤として好適に用いることができる。
本出願は、日本で出願された特願2005−305076(出願日:2005年10月19日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (9)

  1. 塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体を有効成分として含有する、生理的な形態を有する象牙質−歯髄複合体の局所投与用再生治療剤であって、前記同族体は、
    〔I〕塩基性線維芽細胞増殖因子のアミノ酸配列中の1〜6個のアミノ酸が別種のアミノ酸により置換され、かつ、塩基性線維芽細胞増殖因子の生物活性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、または
    〔II〕塩基性線維芽細胞増殖因子のN末端および/またはC末端、あるいは上記〔I〕のポリペプチドのN末端および/またはC末端に、1〜12個のアミノ酸からなる追加のアミノ酸セグメントが追加され、かつ、塩基性線維芽細胞増殖因子の生物活性または上記〔I〕のポリペプチドの生物活性を損なわないポリペプチドである、再生治療剤。
  2. 塩基性線維芽細胞増殖因子がヒト塩基性線維芽細胞増殖因子である、請求項1記載の再生治療剤。
  3. さらに担体を含有する、請求項1記載の再生治療剤。
  4. 担体が、ヒドロキシプロピルセルロースまたは架橋ゼラチンゲルである、請求項3記載の再生治療剤。
  5. う蝕、咬耗または外傷による歯質の実質欠損を有する歯の治療に用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の再生治療剤。
  6. う蝕が歯髄まで進行した状態である、請求項5記載の再生治療剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の再生治療剤を製造するための塩基性線維芽細胞増殖因子および/またはその同族体の使用であって、前記同族体は、
    〔I〕塩基性線維芽細胞増殖因子のアミノ酸配列中の1〜6個のアミノ酸が別種のアミノ酸により置換され、かつ、塩基性線維芽細胞増殖因子の生物活性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドであるか、または
    〔II〕塩基性線維芽細胞増殖因子のN末端および/またはC末端、あるいは上記〔I〕のポリペプチドのN末端および/またはC末端に、1〜12個のアミノ酸からなる追加のアミノ酸セグメントが追加され、かつ、塩基性線維芽細胞増殖因子の生物活性または上記〔I〕のポリペプチドの生物活性を損なわないポリペプチドである、使用。
  8. 治療剤が直接覆髄剤または間接覆髄剤である、請求項1〜のいずれか1項に記載の再生治療剤。
  9. 治療剤が直接覆髄剤または間接覆髄剤である、請求項7記載の使用。
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