JP5094295B2 - 膜電極接合体および燃料電池 - Google Patents
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Description
カソード極側触媒層:1/2O 2 +2H + +2e - →H 2 O(2)
これらの特許では、撥水性物質としてフッ化物あるいはフッ化物を含有するカーボン粒子を使用することを推奨している。しかし、これらの技術では、加湿の度合が大き過ぎる場合に生じる出力の低下を回避することは可能であるが、加湿の度合が小さ過ぎる場合には出力の低下を回避することができないばかりか、出力低下の幅が大きくなってしまうことがしばしば生じていた。
そのため、高出力の固体高分子型燃料電池においては、加湿度合の意図しないゆらぎが生じても触媒層の水分含有量を適切に保ち、高出力を維持するための方法が求められていた。
(1)一対の電極と該電極間に設けられた電解質膜を有する膜電極接合体であって、前記電極の電解質膜に接する側にそれぞれ触媒層が設けられており、該触媒層の少なくとも一方が、表面に炭化水素基または含フッ素有機基を有するシリカ微粒子を含有する、膜電極接合体。
(2)前記表面に炭化水素基または含フッ素有機基を有するシリカ微粒子中の該シリカ微粒子の一次粒子直径の平均値が50nm以下である、(1)の膜電極接合体。
(3)前記のシリカ微粒子が、前記触媒層中に、0.6〜25重量%の範囲で含まれる、(1)または(2)の膜電極接合体。
(4)前記含フッ素有機基が、2以上のフッ素原子を有する1価の有機基であって、炭素数が3以上16以下である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
(5)前記含フッ素有機基が、ポリフルオロアルキル基、ポリフルオロオキサアルキル基、ポリフルオロチオキサアルキル基、またはこれらのいずれかの基と2価の炭化水素基とが結合した有機基である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の膜電極接合体。
(6)前記シリカ微粒子が含まれる触媒層が、カソード電極に設けられている(1)〜(5)のいずれか1項の膜電極接合体。
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の膜電極接合体を有する燃料電池。
本明細書において、アルキル基等の「基」は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに、炭素数が限定されている基の場合、該炭素数は、置換基が有する炭素数を含めた数を意味している。
本発明の表面に炭化水素基または含フッ素有機基を有するシリカ微粒子を触媒層の水分調節剤として用いると、フル加湿運転で取り出し電流量が多くカソード電極側触媒層で生成水分によるフラッディングが起り易い条件の場合も、低加湿運転で電解質中のイオン伝導性の維持が難しい場合の両方において、高出力を維持することが可能になったものである。
一方、シリカの表面に炭化水素基または含フッ素有機基を化学修飾することでシリカの表面に撥水性を付与できることは以前から知られていたが、シリカ微粒子の表面に炭化水素基または含フッ素有機基を化学修飾したものを撥水剤として燃料電池の触媒層に適用しようとする試みは、従来殆ど行われていなかった。その理由は、該シリカ微粒子にはフッ化物樹脂ほど強い撥水性が期待できないと考えられていたからである。
それ故、表面に炭化水素基または含フッ素有機基を有するシリカ微粒子(以下、「本発明で用いるシリカ微粒子」ということがある)をカソード電極側触媒層に含有させることにより発現する本発明の効果は、公知特許、文献等からは類推し難いものであった。
シラン化合物は、
(R1)a(R2)b(R3)cSi(X)4-a-b-c
で表すことができ、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜16の1価の炭化水素基または含フッ素有機基であり、かつR1、R2、R3のうちの少なくとも1つは、炭化水素基または含フッ素有機基である。
Xはハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子)、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシ基で置換されたアルコキシ基、アミノキシ基、アミド基またはイソシアネート基である。
a、b、cはそれぞれ独立に0〜3の整数であって1≦a+b+c≦3である。ここで4−a−b−cが2または3の場合、複数のXは同じであっても異なっていてもよい。
R1、R2、R3が含フッ素有機基の場合、下記に例示する1価の有機基に含まれる水素原子の1以上がフッ素原子と置換された炭化水素基が好ましく、2以上のフッ素原子を含んでいることがさらに好ましい。
アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基等の1価の炭化水素基;クロロアルキル基等の1価のハロゲン化炭化水素基;エポキシ基、アミノ基、メルカプト基を有する1価の(ハロゲン化)炭化水素基;炭素鎖の中間にエステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、イミノ結合、アミド結合等の連結結合を有する1価の(ハロゲン化されていてもよい)炭化水素基;
ポリフルオロアルキル基、ポリフルオロオキサアルキル基、およびポリフルオロチオキサアルキル基は、ケイ素原子と結合する端部(その周辺も含む)がアルキレン基(特に、エチレン基)であって他の部分は水素原子が全てフッ素原子と置換されている基(以下、「パーフルオロ有機基」ということがある)であるのも好ましい。
パーフルオロ有機基としては、炭素数3以上のパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキサアルキル基、またはパーフルオロチオキサアルキル基が好ましく、特に炭素数3〜16のパーフルオロアルキル基が好ましい。
シリカ微粒子の表面に本シラン化合物を作用させる際の方法としては、本シラン化合物とシリカ微粒子を直接接触させる方法;本シラン化合物とシリカ微粒子を乾燥雰囲気で直接接触させた後、必要に応じて余剰成分を洗い流し水と接触させる方法;本シラン化合物の溶液中にシリカ微粒子を分散させた後溶媒を蒸発させ、その後水または水蒸気で処理する方法;予め本シラン化合物を水分の存在下で加水分解した後、シリカ微粒子と接触またはシリカ微粒子と種々の方法で混合する方法等;が挙げられる。上記各方法において、反応を促進するために適宜加熱してもよい。
シリカ微粒子の表面に存在させる炭化水素基または含フッ素有機基の量は、シリカ微粒子1g当り1.5×10-6〜1.5×10-3モルの範囲であることが好ましく、7.5×10-5〜7.5×10-4モルの範囲であることがより好ましいことを前述したが、これらの表面化学修飾基の最適量は、水分を保持している触媒層のバインダーに対し適度な撥水を及ぼすために最適な量であるか、あるいは、触媒層の水分含有量の安定化にとって最適な表面親疎水性基の数比率にするための量のどちらかと考えられる。
本発明で用いる電解質膜として、公知の電解質を膜状に製膜したものおよび公知の電解質膜を広く採用することができる。
その中でも、フッ素系ポリマーが化学的安定性に優れていることから好ましく使用できる。具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、Aciplex(登録商標、旭化成工業株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)の商品名で知られる高いプロトン伝導性を有するパーフルオロスルホン酸膜が挙げられる。
スルホアルキル化芳香族炭化水素系ポリマーの具体例としては、このような1977年イギリスのICI社によって開発された下記(化2)で代表される構造単位を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ドイツBASF社で開発された半結晶性のポリアリールエーテルケトン(PAEK)、住友化学工業等で販売されている下記(化3)で代表される構造単位を有するポリエーテルケトン(PEK)、テイジンアモコエンジニアリングプラスチックスで販売されているポリケトン(PK)、住友化学工業、テイジンアモコエンジニアリングプラスチックスや三井化学等で販売されている下記(化4)で代表される構造単位を有するポリエーテルスルホン(PES)、ソルベイアドバンスドポリマーズ(株)で販売されている下記(化5)で代表される構造単位を有するポリスルホン(PSU)、東レ、大日本化学工業、トープレン、出光石油化学や呉羽化学工業等で販売されている下記(化6)で代表される構造単位を有するリニア或いは架橋型のポリフェニレンサルフィッド(PPS)、旭化成工業、日本ジーイープラスチックス、三菱エンジニアリングプラスチックスや住友化学工業で販売されている下記(化7)で代表される構造単位を有する変性ポリフェニレンエーテル(PPE)等のエンジニアリングプラスチック或いはそのポリマアロイに下記(化1)で表されるスルホアルキル基を側鎖に導入した芳香族炭化水素系ポリマーが挙げられる。
このうち、主鎖の耐酸化劣化特性の観点から、主鎖構造は、PEEK、PEAK、PEK、PK、PPS、PESおよびPSUが好ましい。
また、本発明に用いる電解質膜を製造する際に、通常のポリマーに使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明の目的に反しない範囲内で使用できる。
(1)機械的強度を高める目的には、分子量10,000〜1,000,000で本発明の電解質と相溶性のよい高分子化合物が適する。例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホンが挙げられる。これらのポリマーは、2種類以上を併用してもよい。これらのポリマーの含有量としては全体に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上のものが好ましく、300℃以上のものがより好ましい。
(2)酸濃度を高める目的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱芳香族高分子のスルホン化物などのプトロン酸部位を有するポリマーなどが好ましく、含有量としては全体に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
イオン伝導度は例えば25℃95%RHにおいて、0.005S/cmであることが好ましく、0.01S/cm以上であるものがより好ましい。
強度としては例えば引っ張り強度が10MPa以上であることが好ましく、20MPa以上であるものがさらに好ましい。
膜状に形成した場合のイオン伝導方向は表面から裏面の方向が、それ以外の方向に対し高い方が好ましいが、ランダムであってもよい。
本発明に用いる電解質膜の耐熱温度は、200℃以上であることが好ましく、250℃以上がより好ましく、300℃以上がさらに好ましい。耐熱温度は例えば1℃/分の測度で加熱していったときの重量減少5%に達した時間として定義できる。この重量減少は、水分等の蒸発分を除いて計算される。
次に、本発明の膜電極接合体および、該膜電極接合体を用いた燃料電池について説明する。
図1は本発明の膜電極接合体の断面概略図の一例を示したものである。MEA10は、電解質膜11と、それを挟んで対向するアノード電極12及カソード電極13を備える。
アノード電極12とカソード電極13は、例えば、導電層12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層12b、13bは、活性金属触媒を担持した導電材をプロトン伝導材料に分散させた分散物からなる。触媒層12b、13bを電解質膜11に密着させるために、導電層シート12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものを、電解質膜11にホットプレス法(好ましくは120〜250℃、2〜100kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものを、電解質膜11に転写しながら圧着した後、導電層12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。但し、本発明の膜電極接合体では、触媒層のみを有していれば、導電層を有することを必須の要件とするものではない。
通常用いられる活性金属触媒の粒子サイズは、2〜10nmの範囲であり、粒子サイズが小さい程単位質量当りの表面積が大きくなるので活性が高まり有利であるが、小さすぎると凝集させずに分散させることが難しくなる傾向にあるので、2nm以上が好ましい。
分散液の溶媒はヘテロ環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、N−メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロリド、エチレンクロリド等)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセタミド等)、水等が好ましく用いられ、この中でもヘテロ環化合物、アルコール類、多価アルコール類、アミド類が好ましく用いられる。
(1)プロトン伝導材料塗布法:白金担持カーボン材料、プロトン伝導材料、溶媒を基本要素とする触媒層ペースト(インク)を電解質膜の両側に直接塗布し、多孔質導電シート等の導電層を熱圧着(ホットプレス)して5層構成のMEAを作製する。
(2)多孔質導電シート塗布法:触媒層ペーストを多孔質導電シート(導電層)表面に塗布し、触媒層を形成させた後、電解質膜と熱圧着(ホットプレス)し、5層構成のMEAを作製する。塗布の支持体が異なる以外は上記(1)と同様である。
(3)Decal法:触媒層ペーストを支持体(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート等)上に塗布し、触媒層を形成させた後、電解質膜に触媒層のみを熱圧着(ホットプレス)により転写させ3層のMEAを形成させ、多孔質導電シートを圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(4)触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクを電解質膜、多孔質導電シートまたはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを当該固体電解質に含浸させ、白金粒子を膜中で還元析出させて触媒層を形成させる。触媒層を形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEAを作製する。
電解質はスルホン酸を置換基として持つプロトン型でもよいし、特開2004−165096号公報、特開2005−190702号公報に記載されているように、スルホン酸が塩形態である塩型であってもよい。塩型である場合のスルホン酸のカウンターカチオンは、1価または2価のカチオンが好ましく、1価のカチオンがさらに好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カリウムが好ましく、これらのカチオンおよびプロトンの群から複数の物を採用してもよい。ナトリウム塩、カリウム塩であるものが特に好ましい。
燃料電池用途として使用するには、電解質膜がプロトン伝導性を有する必要性がある。そのために、酸との接触によって、電解質膜の塩置換率を接触する前の99%以下にする。触媒層と電解質膜を接合した後に酸と接触させることによって、電極接合時に受ける熱履歴による膜の含水率およびイオン伝導性の低下を回復させることができる。
(1)電解質膜の作製
特開2006−344578の実施例1と同様な工程で、ベンゼン環と硫黄原子を含んだアルキル鎖を介してベンゼン環に接続されたスルホ基を有するポリマーからなる電解質膜を合成した。次いで、25℃で、15重量%の濃度になるようにNN−ジメチルホルムアミド/メタノールの混合溶媒に溶解した。この溶液をスピンコートによりガラス上に展開し、風乾した後、80℃で真空乾燥して平均膜厚(dM)40μmの電解質膜を作製した。得られた化ポリスルホン1の平均イオン交換容量は1.2ミリ当量/gであった。
一次粒子直径の平均値が100nm、50nm、20nm、8nmであるシリカ微粒子を、それぞれ2−ブタノンと、重量比3:7で混合し、室温、窒素雰囲気下で分散しながら、トリフルオロプロピルトリメトキシシランをシリカ微粒子1g当り1.5×10-4モル添加した。次いで、50℃で1時間煮沸した後、純水をシリカ微粒子1g当り6.6g添加し、50℃煮沸をさらに1時間加えた。そして、煮沸温度を70℃に上げ、2−ブタノンと水を蒸発させた。得られたものを、室温、10Pa以下の環境で16時間真空脱水し、その後、2−ブタノンと、重量比1:9で混合し、室温で再度分散させることにより、表面がトリフルオロプロピル基で修飾されたシリカ微粒子の10重量%分散液に仕上げた。また、一次粒子直径の平均値が20nmであるシリカ微粒子を2−ブタノンと、重量比1:9で混合し、室温、窒素雰囲気下で分散しながら、ヘキシルトリメトキシシランをシリカ微粒子1g当り1.5×10-4モル添加した。その後の工程を前記と同様に行い、表面がヘキシル基で修飾されたシリカ微粒子の10重量%分散液を作製した。
さらに、一次粒子直径の平均値が20nmであるシリカ微粒子を2−ブタノンと、重量比1:9で混合して室温で分散しただけの、シリカ微粒子の10重量%分散液を作製した。
この分散液のシリカ微粒子は、表面に存在する官能基の殆どは水酸基であり、炭化水素基または含フッ素有機基は付与されていない。
前記で作製したシリカ微粒子の分散液と、触媒層のバインダーとなるナフィオン117の5質量%溶液(アルドリッチ製)とを、超音波照射とスターラーによる撹拌を組み合わせて混合分散した。その際、シリカ微粒子の10重量%分散液に予め2−ブタノンを適宜加えて希釈しておくことにより、ナフィオン117溶液に混合させた。シリカ微粒子の量を変えた場合でも、シリカ微粒子分散液とナフィオン117溶液のミックス時の液量比(重量)が4:6の一定となるようにした。
白金担持カーボン(カーボン担体:VulcanXC72、白金質量比:50%、田中貴金属製)2.0gと純水4.0gの混合物を作製し、それに前記の触媒層バインダー/シリカ微粒子混合液26.6gを混合し、超音波照射とスターラーによる撹拌を組み合わせて60分間混合分散した。得られた分散物を補強材入りPTFEフィルム支持体(サンゴバン製)上に、白金塗布量が0.20mg/cm2となるように塗布し、室温で乾燥することにより触媒層塗布物を作製した。作製した触媒層塗布物は、後述の膜電極接合体の作製工程に使用するため、所定の大きさに打ち抜いた。
前述の(1)にて作製した電解質膜の両面に、前記(4)で得られた触媒層塗布物を塗布面が電解質膜に接するように張り合わせた。次いで、125℃、3MPa、10分間で熱圧着し、圧力をかけたまま降温した後、PTFEフィルム支持体を剥離した。これを0.5Mの硫酸中に室温で24時間浸漬して、室温で水洗することにより、膜電極接合体を作製した。表1のように、アノード極側、およびカソード極側に使用する触媒層の種類を変え、他は同様に行って、膜電極接合体の試料(101)〜(111)を作製した。
上記で得られた膜/電極接合体(101)〜(111)に電極と同サイズにカットしたE−TEK製ガス拡散電極(導電層)を積層し、エレクトロケム社製標準燃料電池試験セルにセットし、試験セルを燃料電池評価システム((株)エヌエフ回路設計ブロック製、As−510)に接続した。
アノード電極側に加湿した水素ガスを、カソード電極側に加湿した模擬大気を流し、電圧が安定するまで運転した。水素ガスおよび模擬大気ガスの供給背圧は2気圧とした。そして、アノード電極12とカソード電極13間に、負荷をかけて電流−電圧特性を記録した。
セル内の温湿度は、90℃100%RH、および90℃75%RHの2通りで特性試験を行った。表2に、各試料の、(1)90℃100%RHで電流密度1.0A/cm2における出力電圧、(2)90℃100%RHで電流密度1.25A/cm2における出力電圧、(3)90℃75%RHで電流密度1.0A/cm2における出力電圧を示す。
(1):90℃フル加湿でぼぼ最大の電力が得られる運転条件。
(2):90℃フル加湿であるが電流密度が高く、カソード電極側触媒層の水分過剰による出力低下を起こす運転条件。
(3):90℃で加湿が低湿度に振れた運転条件という位置付けの性能指標である。何れの場合においても、高い出力電圧を維持しているほど好ましい。
表2のデータより、カソード電極側触媒層に、表面に炭化水素基または含フッ素有機基を有するシリカ微粒子を含有させた触媒層を用いることにより、前記(1)のフル加湿下、および(3)の低加湿下の両方の加湿条件において優れた出力特性であった。また、水分過剰による出力低下を起し易い、前記(2)のフル加湿の高電流密度領域においては、比較例に対し、前記(2)の温湿度条件からの出力電圧の低下幅が小さく、高出力であることが確認された。
また、本発明の効果は、本発明で用いるシリカ微粒子の一次粒子直径への依存性が大きく、一次粒子の平均直径を50nm以下にした場合に顕著に発現し、その際、前記平均直径を小さくすることに伴い、低加湿条件での出力が特に増大することも明らかとなった。この傾向は、従来知見からは予測困難な結果であった。
11・・・電解質膜
12・・・アノード電極
12a・・・アノード極導電層
12b・・・アノード極触媒層
13・・・カソード電極
13a・・・カソード極導電層
13b・・・カソード極触媒層
14・・・ガスケット
15・・・アノード極ガス給排口
16・・・カソード極ガス給排口
17・・・集電体
Claims (6)
- 一対の電極と該電極間に設けられた電解質膜を有する膜電極接合体であって、前記電極の電解質膜に接する側にそれぞれ触媒層が設けられており、該触媒層の少なくとも一方が、表面に炭化水素基または含フッ素有機基を有するシリカ微粒子を含有し、該シリカ微粒子の一次粒子直径の平均値が50nm以下である、膜電極接合体。
- 前記のシリカ微粒子が、前記触媒層中に、0.6〜25重量%の範囲で含まれる、請求項1に記載の膜電極接合体。
- 前記含フッ素有機基が、2以上のフッ素原子を有する1価の有機基であって、炭素数が3〜16である、請求項1または2に記載の膜電極接合体。
- 前記含フッ素有機基が、ポリフルオロアルキル基、ポリフルオロオキサアルキル基、ポリフルオロチオキサアルキル基、またはこれらのいずれかの基と2価の炭化水素基とが結合した有機基である、請求項1または2に記載の膜電極接合体。
- 前記シリカ微粒子が含まれる触媒層が、カソード電極に設けられている請求項1〜4のいずれか1項の膜電極接合体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜電極接合体を有する燃料電池。
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