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JP5091041B2 - パワーステアリング装置、ピニオンシャフト、およびピニオンシャフトの製造方法 - Google Patents

パワーステアリング装置、ピニオンシャフト、およびピニオンシャフトの製造方法 Download PDF

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本発明は、運転者の操舵力をラックバーに伝達するピニオンシャフトおよびそれを用いたパワーステアリング装置に関する。
従来、特許文献1に開示されるパワーステアリング装置においては、ラックギヤとピニオンギヤの噛み合い面における歯の交差角度変化を許容するためピニオンギヤの歯筋方向にクラウニング(歯筋に沿って歯面を外側に凸形状とする加工)をつけていた。
また、ピニオンギヤの加工はホブを用いた切削により行われ、切削時にボブを適宜動かすことでクラウニング形状のピニオンギヤを形成する。なお、ピニオンギヤは鍛造によっても形成される。鍛造時にピニオンギヤを形成する金属材料が硬化するため、切削により形成した場合よりも鍛造のほうが歯面強度は高くなる。
特開2005−53327号公報
しかしながら鍛造によりピニオンギヤを形成する場合、鍛造の金型はカップ形状となるため金型の開口部から材料を押し込むため、形成後に金型を抜くためには金型の径は最深部から開口部に向かって拡大させる必要がある。そのため鍛造では歯面にクラウニングを付けることができなかった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、鍛造によってもクラウニング形状の歯面と同様の機能を持つ歯面を形成可能なピニオンシャフトおよびパワーステアリング装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明では、ピニオンシャフトは、歯の直角断面における歯厚が歯元から歯先に向かって漸減し、前記歯先を含む、前記歯元から任意の高さにおける前記歯厚が歯筋方向に沿って漸減または漸増し、噛み合い位置において、前記ピニオンシャフトの軸方向略中央部における前記歯厚が、前記ピニオンシャフトの軸方向根元部および軸方向先端部における前記歯厚よりも厚いこととした。


よって、鍛造によってもクラウニング形状の歯面を形成可能なピニオンシャフトおよびパワーステアリング装置を提供できる。
以下、本発明のピニオンシャフトおよびパワーステアリング装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
[パワーステアリング装置のシステム構成]
実施例1につき説明する。図1は、本願パワーステアリング装置を適用した電動パワーステアリング装置のシステム構成図である。なお、ラック&ピニオンを用いているものであれば他のパワーステアリング装置に用いてもよいし、パワーステアリング装置でなくとも、手動型のステアリング装置であってもよい。
電動パワーステアリング装置は、ステアリングホイールSW、トルクセンサTS、ステアリングシャフトSS、ラックバー1、パワーアシストユニット3、転舵輪7、及びコントロールユニット10を有する。
ステアリングホイールSWはステアリングシャフトSSを介してピニオンシャフト100に接続する。パワーアシストユニット3は車両上方からラックバー1の軸方向に離間して設けられており、モータ駆動によりピニオンシャフト100を介してラックバー1にアシストトルクを付与する。
パワーアシストユニット3は、コントロールユニット10によりモータMを駆動してラックバー1にアシストトルクを付与するパワーアシスト装置である。パワーアシストユニット3にはステアリングホイールSWと接続したトルクセンサTSが設けられている。
コントロールユニット10は、トルクセンサTSにより検出された操舵トルクに基づき、パワーアシストユニット3のモータMを駆動して転舵輪7と接続したラックバー1にアシストトルクを付与する。
[正面図]
図2は、パワーステアリング装置の正面図である。なお、説明のため図2においてはラックチューブ2のみ断面図を示し、ラックバー1の軸方向であってハウジング30と反対方向をx軸正方向と定義する。
ラックバー1はラックチューブ2に収容され、両端は図外の転舵輪に接続される。また、ラックチューブ2の背面にはハウジング30が設けられ、ハウジング30内には図外のステアリングホイールと接続するピニオンシャフト100が設けられている。ラックバー1はこのピニオンシャフト100と噛合って運転者の操舵力が伝達され、転舵が行われる。
[ハウジング内部の詳細]
図3は、ハウジング30におけるピニオンシャフト100の軸方向部分断面図である。なお、ラックバー1に対しピニオンシャフト100の反対方向をy軸正方向とする。
ハウジング30内部にはピニオンシャフト100、ラックリテーナ12、リテーナ支持部13が設けられている。ラックリテーナ12とピニオンシャフト100との間にはラックバー1が設けられてピニオンシャフト100と噛合う。
ラックリテーナ12は円柱の一端部を円筒状にくり貫いた形状であり、円筒側から見てコの字形に形成されている。このラックリテーナ12はバネ14を介してリテーナ支持部13に支持され、円弧状の摺接面12aにおいてラックバー1に当接してラックバー1をy軸負方向に付勢する。
ピニオンシャフト100の歯面111はインボリュート曲線によって形成され、ラックバー1の歯11が台形であっても、滑らかな噛み合いを実現するものである。また、ピニオンシャフト100は歯部110が設けられていない軸部100aと、歯部110が設けられる有効歯部100bから形成され、この軸部100aと有効歯部100bの間には、凹状の曲面である切り上がり部100cが形成される。
鍛造によって歯部110を形成する場合、ピニオンシャフト100の軸方向先端部102をカップ形状の金型に圧入することで歯部110を形成する際、金型の内部に完全に圧入される部分は高精度な歯部110が得られるが、金型の隅の部分(歯部110が形成される部分と形成されない部分との間)では歯部110の精度が不十分となる。
したがって金型の隅に相当する部分に凹状の曲面である切り上がり部100cを設け、歯部110と区別することで、ラックバー1とピニオンシャフト100との噛み合いを確保する。
[ピニオンシャフト]
図4はピニオンシャフト100の歯部110の模式図、図5は歯部110の拡大斜視図である。説明のため、図5でははす歯である歯部110を直線状に変換した図を示す。なお、図5ではピニオンシャフト100の軸方向根元部101から軸方向先端部102に向かう方向をξ軸正方向とし、歯先113の歯厚を一定とした比較例の歯を破線で示す。
また、図6は歯部110の軸方向根元部101、軸方向先端部102、および軸方向略中央部103の直角方向断面図である。軸方向根元部101および軸方向先端部102の噛み合い位置における歯厚はAであり、軸方向略中央部103の噛み合い位置における歯厚はCである。さらに、歯先113で形成される歯先円直径は、歯筋方向いずれの位置でも一定である。
歯部110ははす歯であるため歯筋が軸方向に対し回転しており、外側に凸のクラウニング加工を施された歯面111を有する。歯筋方向に沿って直角断面における歯厚は歯元112から歯先113に向かって漸減し、歯先113における歯厚は歯元112の歯厚よりも薄い。
また、ラックバー1との噛み合い中心線は太線で示される。この噛み合い中心線はピニオンシャフト100の軸方向略中央部103に向かうにつれて歯元112側に傾斜するとともに、歯元112側を凸として湾曲する。
したがって、歯先113から噛み合い中心線までの距離は、軸方向根元部101ではbであるが、軸方向先端部102ではBとなる(B>b)。また、噛み合い中心線における歯厚は軸方向略中央部103に向かって漸増し、軸方向略中央部103において最大値Cとなるとともに、軸方向両端部101,102において最小値Aとなる(C>A)。
このため歯面111は、噛み合い位置において軸方向略中央部103が外側に突出するクラウニング形状の歯と同等の機能を有し、ラックバー1とピニオンシャフト100の噛み合い面における歯の交差角度の誤差を吸収して良好な歯当たりが達成される。
また、通常のクラウニング形状の歯であれば、軸方向根元部101の歯厚よりも軸方向略中央部103の歯厚が大きくなるため、軸方向先端部102から金型を挿入して歯部110を形成することは不可能であるが、本実施例では歯部110の歯厚は軸方向根元部101から歯筋方向に沿って軸方向先端部102に向かって漸減する。そのため、未加工のピニオンシャフト100の先端から金型を挿入し、この金型を用いた鍛造により歯部110を形成することが可能となる。
なお、本実施例では歯部110の歯厚が軸方向根元部101から歯筋方向に沿って軸方向先端部102に向かって漸減しているが、歯部110と軸部110aを別体に形成し、歯部110を軸部100aに対し本実施例とは逆向きに取り付け、歯部110の歯厚が軸方向根元部101から歯筋方向に沿って軸方向先端部102に向かって漸増するように形成してもよい。
[実施例1の効果]
(1)(6)ピニオンシャフト100は、
歯部110の直角断面における歯厚は、歯元112から歯先113に向かって漸減し、
歯先113の歯厚は、軸方向先端部102に向かって漸減し、
噛み合い位置である軸方向略中央部103における歯厚Cは、ピニオンシャフト100の軸方向根元部101および軸方向先端部102における歯厚Aよりも厚いこととした。
これにより、鍛造によってもクラウニング形状の歯面と同様の機能を持つ歯面を形成可能なピニオンシャフトおよびパワーステアリング装置を提供することができる。
(2)(7)ピニオンシャフト100の歯面111は、外側に凸の円弧状曲面であって、
噛み合い位置における歯面111は、ピニオンシャフト100の軸方向根元部101および軸方向先端部102における歯面111よりも外側に凸であることとした。
これにより、軸方向先端部102に向かって歯厚が漸減するものであっても、クラウニング形状の歯と同様に噛み合い面における歯の交差角度の誤差を吸収して良好な歯当たりを得ることができる。
(4)(9)ピニオンシャフト100の歯面111は、インボリュート曲線であることとした。これにより、ラックバー1の歯11が台形であっても、滑らかな噛み合いを実現することができる。
(5)(10)ピニオンシャフト100は、軸部100aと有効歯部100bとから形成され、
軸部100aと有効歯部100bとの間に、凹状の曲面である切り上がり部100cが形成されることとした。
鍛造によって歯部110を形成する場合、ピニオンシャフト100の軸方向先端部102をカップ形状の金型に圧入することで歯部110を形成するが、金型の内部に完全に圧入される部分は高精度な歯部110が得られるが、金型の隅の部分(歯部110が形成される部分と形成されない部分との間)では歯部110の精度が不十分となる。
したがって金型の隅に相当する部分に凹状の曲面である切り上がり部100cを設け、歯部110と区別することで、高精度な歯部110において確実にラックバー1の歯11と噛み合わせることで、ラックバー1とピニオンシャフト100との噛み合いを確保することができる。
(11)金型に軸部材を挿入し、鍛造によってピニオンシャフト100の歯部110を形成することとした。これにより、上記(1)と同様の効果を得ることができる。
実施例2につき説明する。基本構成は実施例1と同様である。実施例1では歯先113で形成される歯先円直径は一定であったが、実施例2では軸方向先端部102に向かうほど歯部110の歯先円直径を漸減させる点で異なる。
図7は実施例2のハウジング30におけるピニオンシャフト100の軸方向部分断面図である。また、図8は実施例2におけるピニオンシャフト100の歯部110の模式図、図9は歯部110の拡大斜視図である。なお、図8、図9では歯先円直径が一定の実施例1における歯部110を一点鎖線で示し、図9ではξ軸方向で歯先113の厚さが一定の比較例における歯を破線で示す。
実施例1と同様、噛み合い中心線における歯厚は軸方向略中央部103に向かって漸増し、軸方向根元部101および先端部102ではA、軸方向略中央部103ではCである(C>A)。これにより鍛造によってもクラウニング形状の歯面と同様の機能を持つ歯面を形成可能なピニオンシャフト100を形成する。
歯先円直径は軸方向根元部101から軸方向先端部102に向かって漸減し、軸方向略中央部103に向かうにつれて歯元112側に傾斜してξ軸正方向側ほど歯丈は短くなる。また、実施例2においては軸方向根元部101における歯丈は実施例1および比較例よりもh高く、軸方向先端部102における歯丈は実施例1および比較例よりもh'低く設けられる。
また、実施例1と同様にラックバー1との噛み合い中心線は太線で示され、この噛み合い中心線はピニオンシャフト100の軸方向略中央部103に向かうにつれて歯元112側に傾斜するとともに、歯元112側を凸として湾曲する。
ここで、実施例2では歯先113も軸方向略中央部103に向かうにつれて歯元112側に傾斜しており、歯先113と噛み合い中心線は等間隔をもって設けられている。したがって、歯先113と噛み合い中心線との距離はξ軸方向に沿って一定の値Bをとり、軸方向略中央部103においても、歯先113と噛み合い中心線との距離は軸方向根元部101および軸方向先端部102と同様にBとなる。
このため、歯部110とラックバー1の歯11との噛み合い深さが一定の値Bとなる。実施例2では軸方向先端部102の歯丈が実施例1と比べh'だけ短くなるが、噛み合い深さが一定値Bであるため噛み合い位置が歯元112方向へ遷移し、軸方向略中央部103における歯厚が確保される。
[実施例2の効果]
(3)(8)ピニオンシャフト100の歯先円直径は、軸方向先端部102に向かって漸減することとした。これにより、実施例1の効果に加え、噛み合い深さが一定値Bであるため噛み合い位置が歯元112方向へ遷移させ、軸方向略中央部103における歯厚を確保することができる。
[他の実施例]
以上、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
本願ピニオンシャフトを適用した電動パワーステアリング装置のシステム構成図である。 パワーステアリング装置の正面図である。 ハウジングにおけるラックバー付近のピニオンシャフト方向部分断面図である。 ピニオンシャフトの歯の模式図である。 歯の拡大斜視図である。 歯の軸方向根元部、軸方向先端部、および軸方向略中央部の直角方向断面図である。 実施例2におけるピニオンシャフトの軸方向部分断面図である。 実実施例2におけるピニオンシャフトの歯の模式図である。 実施例2における歯の拡大斜視図である。
符号の説明
1 ラックバー
7 転舵輪
11 ラック歯
100 ピニオンシャフト
100a 軸部
100b 有効歯部
100c 切り上がり部
101 軸方向根元部
102 軸方向先端部
110 歯部
111 歯面
112 歯元
113 歯先
M モータ
SS ステアリングシャフト
SW ステアリングホイール

Claims (11)

  1. 運転者の操舵操作により回転するステアリングホイールおよびステアリングシャフトと、
    転舵輪に接続され、ラック歯を有するラックバーと、
    前記ステアリングシャフトに接続されるピニオンシャフトと、
    前記ステアリングシャフトまたは前記ピニオンシャフトに操舵アシスト力を付与するモータと
    を有するパワーステアリング装置において、
    前記ピニオンシャフトは、
    歯の直角断面における歯厚は、歯元から歯先に向かって漸減し、
    前記歯先を含む、前記歯元から任意の高さにおける前記歯厚は、歯筋方向に沿って漸減または漸増し、
    噛み合い位置において、前記ピニオンシャフトの軸方向略中央部における前記歯厚は、前記ピニオンシャフトの軸方向根元部および軸方向先端部における前記歯厚よりも厚いこと
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  2. 請求項1に記載のパワーステアリング装置において、
    前記ピニオンシャフトの歯面は、外側に凸の円弧状曲面であって、
    前記噛み合い位置における前記歯面は、前記ピニオンシャフトの軸方向根元部および軸方向先端部における前記歯面よりも外側に凸であること
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のパワーステアリング装置において、
    前記ピニオンシャフトの歯先円直径は、前記歯筋方向に沿って漸減または漸増すること
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のパワーステアリング装置において、
    前記ピニオンシャフトの歯面は、インボリュート曲線であること
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のパワーステアリング装置において、
    前記ピニオンシャフトは、軸部と有効歯部とから形成され、
    前記軸部と前記有効歯部との間に、凹状の曲面である切り上がり部が形成されること
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  6. ピニオンシャフトであって、
    歯の直角断面における歯厚は、歯元から歯先に向かって漸減し、
    前記歯先を含む、前記歯元から任意の高さにおける前記歯厚は、前記ピニオンシャフトの歯筋方向に沿って漸減または漸増し、
    噛み合い位置において、前記ピニオンシャフトの軸方向略中央部における前記歯厚は、前記ピニオンシャフトの軸方向根元部および軸方向先端部における前記歯厚よりも厚いこと
    を特徴とするピニオンシャフト。
  7. 請求項6に記載のピニオンシャフトにおいて、
    歯面は、外側に凸の円弧状曲面であって、
    前記噛み合い位置における前記歯面は、前記ピニオンシャフトの軸方向根元部および軸方向先端部における前記歯面よりも外側に凸であること
    を特徴とするピニオンシャフト。
  8. 請求項6または請求項7に記載のピニオンシャフトにおいて、
    歯先円直径は、前記軸方向先端部に向かって漸減すること
    を特徴とするピニオンシャフト。
  9. 請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載のピニオンシャフトにおいて、
    前記歯面は、インボリュート曲線であること
    を特徴とするピニオンシャフト。
  10. 請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載のピニオンシャフトは、
    軸部と有効歯部とから形成され、
    前記軸部と前記有効歯部との間に、凹状の曲面である切り上がり部が形成されること
    を特徴とするピニオンシャフト。
  11. ラックと噛み合うピニオンシャフトの製造方法であって、
    金型に軸部材を挿入し、鍛造によって前記ピニオンシャフトの歯を形成し、
    前記歯の直角断面における歯厚は、歯元から歯先に向かって漸減し、
    前記歯先を含む、前記歯元から任意の高さにおける前記歯厚は、前記ピニオンシャフトの歯筋方向に沿って漸減または漸増し、
    噛み合い位置において、前記ピニオンシャフトの軸方向略中央部における前記歯厚は、前記ピニオンシャフトの軸方向根元部および軸方向先端部における前記歯厚よりも厚いこと
    を特徴とするピニオンシャフトの製造方法。
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