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JP5086634B2 - カテキン類が添加された油脂の着色抑制方法 - Google Patents

カテキン類が添加された油脂の着色抑制方法 Download PDF

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JP5086634B2 JP2006354738A JP2006354738A JP5086634B2 JP 5086634 B2 JP5086634 B2 JP 5086634B2 JP 2006354738 A JP2006354738 A JP 2006354738A JP 2006354738 A JP2006354738 A JP 2006354738A JP 5086634 B2 JP5086634 B2 JP 5086634B2
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Description

本発明は、カテキン油性剤を使用することを特徴とするカテキン類が添加された油脂の着色抑制方法、カテキン油性剤、及び当該製剤を含有する油系組成物に関する。
油脂の酸化は異臭の発生や変質の原因となるだけでなく、酸化によって生成する過酸化脂質は人体に有害な影響を与えることが知られている。従って、このような弊害を防止するための優れた酸化防止剤が常に求められてきた。BHA(butylated hydroxyanisol)、BHT(butylated hydroxytoluene)等の合成酸化防止剤は、効果の高い酸化防止剤であるが、安全性の問題から消費者が天然物を好む傾向があるため、現在使用が控えられる傾向にある。
こうした背景から、天然の親油性酸化防止剤としてトコフェロールやローズマリー抽出物が広く利用されている。しかしながら、その効果は合成酸化防止剤に比べ不十分である上、価格も高いといった問題がある。
一方、茶ポリフェノールのカテキン類には極めて優れた抗酸化性が知られている(特許文献1及び2参照)。
しかしながら、茶ポリフェノールのカテキン類は水溶性であるため、そのままの形態では油系組成物に対して均一に分散させることができず、カテキン類が本来有する高い酸化防止効果を十分に発揮することができない。そこで、カテキン類の優れた抗酸化性を油系組成物中で利用するために、乳化剤等を用いてカテキン類を油溶化する技術が提案され、一部で利用されている。
例えば、カテキン類を油脂に分散させる方法として、親油性乳化剤を用いてカテキン類を乳化した油中水型乳化物の親油性抗酸化剤(特許文献3参照)あるいはポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル中水型乳化液と酵素分解レシチンを用いてカテキン類を油脂に可溶化させた抗酸化剤組成物(特許文献4参照)等が開示されている。
また、カテキン類含有製剤の油中における溶解安定性を高める手段として、油脂に難溶性の酸化防止剤を低級アルキルアルコールに溶解したものを有機酸モノグリセリドとポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルに溶解して得られた親油性酸化防止剤(特許文献5参照)や、茶抽出物を含有してなる固体相が油中に分散した油性組成物(特許文献6参照)が開示されている。
特開昭59−219384号公報 特開平01−268683号公報 特開昭63−135483号公報 特開平06−279758号公報 特開2001−131572号公報 特開2000−229118号公報
油脂中にカテキン類を均一に溶解させるための方法に関しては上記のようないくつかの手段が開示されている。しかしながら、これら手段は油脂中へカテキン類を溶解させるという目的についてはある程度達成するものの、従来に開示された油溶性製剤では、これを添加した油脂を高温加熱した場合にカテキン類の酸化に伴って油脂の着色が起こってしまう問題があった。本来、カテキン類のようなポリフェノール化合物は強い抗酸化性を示す一方で、自身は酸化を受けて構造的に不安定な状態となり、それらが重合や分解された結果、次第に褐色を呈するようになることが知られている。従って、高温油脂中での着色はカテキン類が抗酸化物質として機能した結果と考えられてきたが、実用的な面においては、着色された油脂の価値は低下し、ひいてはそのような油脂を使用して調理された食品等の価値を損なうものとなってしまうことが、従来の油性カテキン製剤の問題点として指摘されていた。
また、従来の油性カテキン製剤は、高速攪拌や高圧乳化等の特殊な処理を用いるにもかかわらず、油脂への溶解安定性が不十分で、添加した油脂を高温にした際に沈澱が発生することがあった。よって、このような状況下では油脂中におけるカテキン類の溶解安定性が乏しく、十分な抗酸化性が得られなかった。
したがって、本発明の目的は、上記の問題点を克服した、製剤の調製が簡便で、且つ製剤自体の安定性が高く、更に、油系組成物へ添加した際の溶解安定性及び抗酸化性に優れ、且つ、カテキン類を添加した油脂を高温加熱した際に生じるカテキン類が添加された油脂の着色抑制方法を提供することである。
本発明者らは、従来の製剤における着色の問題点について原因を検討したところ、製剤中におけるカテキン類の存在環境に起因してカテキン類の自己的な酸化が引き起こされているのではないかとの考えのもとに、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の乳化剤とカテキン類を混合した製剤中のカテキン類、乳化剤、水分の各配合量を一定の範囲にコントロールすることによって、加熱油脂中におけるカテキン類の優れた抗酸化活性を維持しながらも、従来の製剤と比較して遙かに着色度合いを減少させうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、請求項1記載の本発明は、カテキン類を添加した油脂を高温加熱する際に、次の成分(A):カテキン類、(B):グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(但し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを除く)、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセライドから選ばれるHLBが4以下となる乳化剤の少なくとも1種以上、及び(C):水、を含有し、さらに製剤中におけるこれらの含有重量が次の条件(イ)、(ロ)及び(ハ)を満たすものであって、
(イ)(B)/(A)=3.0以上、
(ロ)(B)=35.0重量%以上、
(ハ)(C)=10.0重量%未満、
当該製剤をブタノール:エタノール:水の容積比が5:4:1の混合溶媒に対して1.5重量%で添加溶解した際のpHが、無添加の当該混合溶媒のpHよりも酸性側となるカテキン油性剤を使用することを特徴とする高温加熱時のカテキン添加油脂の着色抑制方法(但し、HLBが2以下である乳化剤を含有するカテキン油性剤を使用する方法を除く)である。
請求項記載の本発明は、乳化剤がグリセリンモノオレートである請求項1記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法である。
請求項4記載の本発明は、カテキン油性剤が有機溶媒を10重量%以下含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法である。
請求項5記載の本発明は、カテキン油性剤がカテキン類の酸化防止効果を増加させる相乗剤を5重量%以下含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法である。
請求項6記載の本発明は、油脂が食用油脂である請求項1〜5の何れか1項に記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法である。
請求項7記載の本発明は、次の成分(A):カテキン類、(B):グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(但し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを除く)、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセライドから選ばれるHLBが4以下となる乳化剤の少なくとも1種以上、(C):水を含有し、さらに製剤中におけるこれらの含有重量が次の条件(イ)、(ロ)及び(ハ)を満たすカテキン油性剤であって、
(イ)(B)/(A)=3.0以上
(ロ)(B)=35.0重量%以上
(ハ)(C)=10.0重量%未満
当該製剤をブタノール:エタノール:水の容積比が5:4:1の混合溶媒に対して1.5重量%で添加溶解した際のpHが、無添加の当該混合溶媒のpHよりも酸性側となることを特徴とするカテキン油性剤(但し、HLBが2以下である乳化剤を含有するカテキン油性剤を除く)である。
請求項記載の本発明は、乳化剤がグリセリンモノオレートである請求項7記載のカテキン油性剤である。
請求項10記載の本発明は、カテキン類を有機溶媒に溶解し、次いでこのカテキン溶液に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(但し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを除く)、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセリドから選ばれるHLBが4以下となる乳化剤の少なくとも1種以上を最終的な製剤中の含有率として35.0重量%以上、カテキン類および乳化剤の含有重量比率[乳化剤/カテキン類]が3.0以上となるように添加、この時、実質的に水を添加せずに混合液を調製し、この混合溶液から有機溶媒を最終的な製剤中の含量として10重量%以下となるまで留去する製造方法により得られうる、ブタノール:エタノール:水の容積比が5:4:1の混合溶媒に対して1.5重量%で添加溶解した際のpHが、無添加の当該混合溶媒のpHよりも酸性側となるカテキン油性剤である。
請求項12記載の本発明は、請求項7〜10記載のカテキン油性剤を含有する油系組成物である。
本発明におけるカテキン添加油脂を高温加熱した際に生じる油脂の着色抑制方法は、添加対象物本来の形状に及ぼす影響が少なく、更に抗酸化力を低下させることなくカテキン類を油系組成物へ均一に溶解させることができる。また、本発明のカテキン油性剤はカテキン類を含有することから、酸化防止の他にも褪色防止や消臭効果等も期待することができる。さらに、本発明のカテキン油性剤は、従来のような高速攪拌や高圧乳化などを行うことなく、非常に簡便に調製することができる。また本発明は高温加熱時の油脂の着色を顕著に抑制するものであるが、常温保存時の着色に対しても従来品と同様に抑制することができる。
本発明におけるカテキン類を添加した油脂を高温加熱した際に生じる油脂の着色抑制方法は、特定の乳化剤を用いて、カテキン油性剤中のカテキン類、乳化剤、水の各配合量を一定の範囲にコントロールすることに特徴がある。
ここで、本発明における高温加熱とは、天ぷらやフライ、菓子などの揚げ物等を調理する際の油の加温状態を意味し、高温加熱時の具体的な油温度は、160℃以上、特に180℃以上220℃以下である。220℃を超えるとカテキン由来の焦げにより油が黒褐色化し外観を損ねてしまう恐れがある。
本発明のカテキン油性剤は、カテキン類を好ましくは25重量%以下、より好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは5〜15重量%含有する。カテキン類の含有量がこの範囲であると、カテキン油性剤の粘度が適度となるため製剤の調製が簡便となり好ましい。
本発明においてカテキン類とは、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)を意味し、これらは(+)‐体または(−)‐体のいずれであってもよい。カテキン類のうち、好ましいものは(−)‐EGCg、(−)‐EGC、(−)‐ECg、(−)‐EC、(−)‐GCg、(−)‐GC、(−)‐Cgおよび(+)‐Cである。本発明においてはこれらの総量をカテキン含量として表す。
本発明に用いられるカテキン類は、緑茶、烏龍茶、紅茶などの茶葉から常法に従って抽出される。一般的には、まず原料とする茶葉を数倍重量の溶媒にて抽出する。茶葉を抽出するための溶媒としては、例えば水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒、あるいはこれらの混合物などが用いられる。ここで、有機溶媒としてはメタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられるが、この中では熱水、エタノール、メタノールが好ましい。
上記の方法で得られる茶抽出物の形態は、液体、固体(粉末等を含む)の別を問わず、カテキン類を有効量含有する物であれば本発明に用いることができる。なお、上記抽出物自体も利用可能であるが、精製によってカテキン類以外の不純物、特に糖類やアミノ酸類は高温状況下ではアミノカルボニル反応等によって着色の原因となり得るため、これらは低減ないし除去されていることが好ましい。茶抽出物の精製方法については特に制限されないが、例えば茶葉を上記の溶媒で抽出して得られた抽出物を、互いに混和しない2種の溶媒を用いて分配する方法、溶媒に対する溶解度の差を利用して洗浄する方法、樹脂等の分離用担体に対する吸着性を利用した脱吸着処理方法等の公知手段を用いて不純物を低減ないし除去することでカテキン類の純度を高めることができる。このような精製手段により精製される高純度のカテキン類を含有する茶抽出物は水及びアルコール類に澄明に溶解できるものとなり、カテキン油性剤とする際の製造工程が容易となるだけでなく、製剤自体の澄明性及び溶解安定性が優れ、さらには、高温条件下に曝された際の着色をより効果的に抑制することができる。
また、本発明に用いるカテキン類は市販の茶抽出物、例えば三井農林(株)製「ポリフェノン」、太陽化学(株)製「サンフェノン」、(株)伊藤園製「テアフラン」などの商品群を例示することができ、これらを原料として精製処理しても良いが、その中でも、既に精製処理が施されている市販品として、三井農林(株)製「ポリフェノン70S」、「ポリフェノン70A」、太陽化学(株)製「サンフェノン100S」、(株)伊藤園製「テアフラン90S」を好適に使用することができる。
本発明のカテキン類は、日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載の酒石酸鉄を用いた比色定量法(酒石酸鉄試薬法)により測定可能であるが、茶ポリフェノールの組成を詳細に測定するためには、逆相高速液体クロマトグラフィーで測定することが好ましい。
本発明のカテキン油性剤は、本発明において使用する乳化剤、すなわち、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(但し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを除く)、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセリドから選ばれるHLBが4以下となる少なくとも1種以上の乳化剤を35.0重量%以上含有する。この時、乳化剤の含有量が規定値を下回ると分離が生じて製造が困難となる。
請求項1、7及び10にかかる本発明のカテキン油性剤に使用する乳化剤は、HLBが4以下であり、好ましくは2〜4である。この時、HLBが4を上回る乳化剤を配合したカテキン油性剤を油脂へ添加し高温加熱した場合、橙色乃至茶色の着色が生じてしまう。
さらに請求項1、7及び10にかかる本発明のカテキン油性剤に使用する乳化剤は、上記HLBの条件を備え、且つ、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセライドから選ばれるものである。具体的にはグリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、プロピレングリコールモノオレート、酢酸モノグリセライド、テトラグリセリンペンタステアリン酸エステル、テトラグリセリンペンタオレイン酸エステル及びデカグリセリンデカオレイン酸エステル等が挙げられる。本発明では、これら乳化剤の1種または2種以上を所望とする比率で混合し用いることができる。
請求項1、7及び10にかかる本発明のカテキン油性剤に使用する乳化剤は、上記したHLB等の条件を満たすものを適宜選択して用いれば良い。この時、グリセリンモノオレートが、油に対する分散性が優れる点、また世界的に食品添加物として一般的に用いられている点から特に好ましく選択され得る。
本発明に用いる乳化剤は市販品を用いてもよく、例えば、グリセリン脂肪酸エステルでは花王(株)製「エキセル」、プロピレングリコール脂肪酸エステルでは理研ビタミン(株)製「リケマール」、酢酸モノグリセライドでは理研ビタミン(株)製「ポエム」、およびポリグリセリン脂肪酸エステルでは阪本薬品工業(株)製「SYグリスター」などが挙げられる。
製剤中の乳化剤含量の測定方法は、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなど多くの方法が挙げられるが、一般的には、薄層クロマトグラフィーまたはカラムクロマトグラフィーにより、モノエステル、ジエステルを分取した後、トリメチルシリル化を行い、ガスクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーにより分析又は定量することができる。
本発明におけるカテキン油性剤中の(A):カテキン類と(B):乳化剤の含有重量比率(B)/(A)は、請求項1、7及び10にかかる本発明では、3.0以上で、好ましくは3.0〜4.0である。例えば、乳化剤がグリセリンモノオレートである場合には、上記比率(B)/(A)が3.0〜4.0であるのが好ましく、3.5〜4.0であるのがより好ましい。規定値を下回るとカテキン油性剤に分離が生じることがあり、これにより、該製剤を添加した油脂を高温加温した際、橙色乃至茶色の着色が生じる場合がある。
請求項1、7及び10にかかる本発明のカテキン油性剤は、ブタノール:エタノール:水の容積比が5:4:1の混合溶媒に対して本発明のカテキン油性剤を1.5重量%溶解した際のpHが、無添加の当該混合溶媒のpHよりも酸性側となるものである。pHが無添加時より塩基性になるカテキン油性剤を用いると、該カテキン製剤を添加した油脂を高温加熱した際に明らかな着色が生じる恐れがある。
本発明のカテキン油性剤は、水を10.0重量%未満、好ましくは5.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下、殊更に好ましくは0.1重量%以下含有し、最も好ましくは水が存在しない状態である。製剤中の水分含量は高温状況下における着色に大きく影響するため、本発明においては水分含量が少ない方が好ましい。本発明の油製剤は乳化剤とカテキン類が同一相内に固定化されていることに特徴があり、この系に水分が共存するとカテキン類の自由度が高まる結果、加熱状況下でカテキン類が構造的に不安定となる際に酸化重合を起こし、橙乃至茶色の着色がより起こりやすくなると想定されるため好ましくない。また、水分の含有量が10.0重量%以上では製剤の安定性が低下し分離や凝集物が生じることがあり、これも高温状況下で着色が生じる原因となる。このため本発明においては実質的に水分を添加せずにカテキン油性剤を調製するのが好ましい。
本発明のカテキン油性剤に含まれる水分量は、蒸留法、加熱乾燥法、減圧乾燥法及びカールフィッシャー法により測定可能であるが、詳細に測定するためには、カールフィッシャー法で測定することが好ましい。
本発明のカテキン油性剤にはカテキン類の酸化防止効果を増加させる相乗剤を添加することができる。相乗剤の使用量は特に制限されないが、カテキン油性剤の全量に対して好ましくは5重量%以下、より好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは1〜3重量%含有することができる。この範囲であると相乗剤が沈殿することなくカテキン類の酸化防止効果を増加させることができる。
本発明のカテキン油性剤の相乗剤として、例えばアスコルビン酸脂肪酸エステル、ウコン抽出物等を挙げることができる。特にウコン抽出物の成分であるクルクミン等を好適に用いることができる。クルクミン等を用いると、油脂の着色だけでなく、酸化油脂が発する刺激臭も抑制することができる。本発明においてはこれらの相乗剤を1種または2種以上を所望とする混合比で使用することができる。
本発明のカテキン油性剤は、請求項1、7及び10にかかる本発明のカテキン油性剤に使用する乳化剤の条件(グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセライドから選ばれるHLBが4以下となる乳化剤の少なくとも1種以上)を満たさない乳化剤を、1種または2種以上含有することができる。使用量は特に制限されず任意に設定できるが、例えば製剤の全量に対して0.01〜1重量%含有することができる。これにより、カテキン油性剤の安定性を20%程度上げることができる。
該乳化剤として、例えばグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、キラヤサポニン等が挙げられ、この中から適宜選択し、1種または2種以上混合して用いればよい。
次に、本発明のカテキン油性剤の製造方法について説明する。
まず、カテキン類を溶媒に溶解し、得られたカテキン溶液を上記した特定の乳化剤へ均一に混和させる。この際に使用する溶媒としては、例えば水、有機溶媒、含水有機溶媒、あるいはこれらの混合物などが挙げられるが、上記のとおり、水分の混在は加熱状況下における着色に大きな影響を及ぼすため、本発明においては、実質的に溶媒として水を用いずに、有機溶媒のみを用いるのが好ましい。ここで、「実質的に水を用いない」とは、有機溶媒中に僅かに存在する水分については許容の範囲であることを意味するものである。ここで用いられる有機溶媒としては、食品衛生上問題が少ない点で、エタノールを使用するのが特に好ましく、その含水率は5%以下が好ましく、1%以下であることがより好ましい。なお、カテキン類を溶媒に溶解する際には必要に応じて上記したクルクミン等の相乗剤を添加してもよく、これによって、カテキン類の酸化防止効果を増加させることができる。また、カテキン類を溶媒に溶解させる工程および/またはカテキン溶液を乳化剤に混和させる工程において、必要に応じて加温を行ってもよい。加温により、カテキン類を容易に溶解または混和させることができる。この時の加温条件は特に制限されないが、60〜70℃の温度で15〜30分間加温をおこなうと、カテキン類をほぼ完全に溶解および/または混和させることができるため好ましい。
次に、得られた混合溶液を濃縮し、有機溶媒を留去または減量する工程により本発明のカテキン油性剤を得ることができる。この濃縮工程においては、減圧下で行うと、蒸発温度を低下させ、効率的な濃縮ができるため製造時におけるカテキン類の劣化を抑制できるので好ましい。なお、その際の減圧度については高真空であることは要求されず、一般的なエバポレーター等で構わない。このような工程を経て得られたカテキン油性剤は、それ自体でも利用可能であるが、適宜油脂等で希釈して粘度を低下させると取り扱いの点で好適である。
本発明のカテキン油性剤は有機溶媒を10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下含有することができる。有機溶媒の含有量が10重量%を上回ると、油系組成物へ添加した際に濁りが生じることがあり、これにより添加した油脂を高温加熱した際、橙乃至茶色の着色が生じる場合がある。
本発明で使用できる有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、ヘキサンなどが挙げられ、このうち1種または2種以上を混合して使用することができる。これらの有機溶媒の中では、エタノールを使用するのが食品衛生上、問題が少ないので好ましい。また、このときの有機溶媒含量は、ガスクロマトグラフィーで詳細に測定することができる。
本発明によって得られたカテキン油性剤は、例えば、飲食品、化粧品、医薬部外品、飼料製品、工業製品などの油系組成物の酸化防止剤として任意の比率で使用することができる。本発明で得られたカテキン油性剤の油系組成物に対する添加量は、添加対象となる油系組成物の種類または形態により適宜設定すればよく、例えば油脂に対して添加する場合、好ましくは0.001〜10.0重量%、より好ましくは0.01〜1.0重量%添加することができる。
本発明を適用しうる油脂としては、食用油脂が好ましく、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ひまわり油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油などが挙げられる。特に、天ぷらやフライ、菓子などの揚げ物等に用いる揚げ油を選択すると、高温加熱した際の着色を効果的に抑制できるため好ましい。
本発明を適用しうる加工食品とは、上記油脂を含む食品であり、例えば、ちくわ、かまぼこ、魚肉ソーセージ、魚肉ハム等の水産練り製品や干物等の珍味類や海老などの生食水産品、また、せんべい、スナック、チューインガム、飴、キャンディー、グミ、チョコレート等の菓子類や、食用油、バター、マーガリン、ショートニング、チーズ、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂を多く含有する食品、飲料、栄養ドリンク剤、健康食品、治療食等などが挙げられる。
本発明を適用しうる化粧品としては、例えば、洗顔クリーム、洗顔フォーム、化粧水、美容液、乳液、パック、マッサージクリーム、モイスチャークリームなどの基礎化粧品、口紅、液体洗浄料、サンスクリーンクリームなどのボディ化粧品、シャンプー、リンス、ヘアトリートメントなどの頭髪用化粧品、ヘアトニック、スキャルプトリートメントなどの頭皮用化粧品、香水、オーデコロンなどの芳香化粧品などが挙げられる。
本発明を適用しうる医薬部外品としては、外皮消毒液、傷消毒保護液、軟膏剤、ビタミン含有保健剤、入浴剤、育毛剤、養毛剤、薬用化粧品、薬用歯磨き、洗口剤、口中清涼剤、制汗スプレーなどが挙げられる。
本発明を適用しうる飼料製品としては、例えば、乾燥緑色植物、動物飼料、魚肉、鯨肉、魚粉、配合飼料などが挙げられる。
本発明を適用しうる工業用品として、例えば、塗料、香料、消臭剤、光劣化剤、フィルター、繊維、不織物、ゴム、紙などが挙げられる。
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
〈カテキン類の含有量〉
油溶性カテキン製剤中のカテキン類含有量はHPLCを用いて下記の条件で測定した。
・装置 :アライアンスHPLC/PDAシステム
(日本ウォーターズ株式会社製)
・カラム :Capcell Pak、AG−120、4.6mmφ×250mm
(株式会社資生堂製)
・移動相 :アセトニトリル/酢酸エチル/0.05%リン酸水=12/0.6/90
(体積比)
・流速 :1mL/min
・検出 :UV280nm
・カラム温度:40℃
〈乳化剤の含有量〉
油溶性カテキン製剤中の乳化剤含有量は、すべて油相に含まれているので次式で算出した。
[乳化剤含量(重量%)]
=[得られた製剤の全量]/[溶媒及び水分を除く原料の仕込み量]×[乳化剤の仕込み量]
〈水分の測定方法〉
油溶性カテキン製剤中の水分量は、基準油脂試験法2.1.3.4−1996記載のカールフィッシャー法に基づいて測定を行った。
非着色性を可能にする親油性乳化剤の選定に関する試験
[サンプルの作製]
実施例1〜10及び比較例1〜18の作製
茶抽出物(ポリフェノン60A/カテキン類含有量60重量%:三井農林(株)製)0.1重量%をエタノール2.0重量%に溶解した茶抽出物のエタノール溶液を各種の親油性乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン)8.9重量%へ添加した。この時、融点が室温より高い乳化剤については、添加直後に完全溶解するまで60℃で加温した。その後、均一に混和させエバポレーターでエタノールを留去し、(A):カテキン類0.6重量%、(B):乳化剤89.0重量%、乳化剤とカテキン類の含有重量比率[乳化剤/カテキン類((B)/(A))]が148.3、(C):水分0.1重量%、エタノール10.0重量%の実施例1〜10及び比較例1〜18を得た。
なお、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルのHLBはGriffinの計算式によりいずれも2〜3とした。
[安定性評価]
上記方法によって得られた実施例1〜10及び比較例1〜18の安定性を目視により評価した。この時、目視による評価基準は、○:安定、△:やや安定、×:分離、として表した。
[結果]
結果を表1に示す。
なお、後記する試験例i(乳化剤の検定に関する試験)および試験例ii(各乳化剤と油中加熱試験における着色性との関係)においては、分離が生じた比較例12〜18を除き、実施例1〜10及び比較例1〜11を用いて試験をおこなった。
[試験例i;乳化剤の検定に関する試験]
実施例1〜10及び比較例1〜11を、ブタノール:エタノール:水の容積比が5:4:1の混合溶媒に1.5重量%溶解した後、pHメーターを用いてpHを測定した。
[試験例ii;各乳化剤と油中加熱試験における着色性との関係]
実施例1〜10及び比較例1〜11を用いて油中加熱試験を行った。
まず、組成物を菜種白絞油にそれぞれ0.5重量%添加後、スターラーを用いて15分間の攪拌混合を行い測定サンプルとした。この測定用サンプルを10g計量し、180℃に設定した高温槽で30分保温後、420nmの吸光度測定により着色性の評価を行った。
また、同時に目視による着色性評価も行った。この時、目視による着色性評価基準は、○:着色なし、△:わずかな着色、×:明らかな着色、として表した。
[結果]
試験例i及び試験例iiによる結果を表1に示す。これより、HLBが4以下で、且つpHが無添加時より酸性側となる実施例1〜9及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを用いた実施例10において油脂に対する着色抑制性が認められた。
この吸光度測定による着色性評価結果は目視による評価結果と一致していたため、吸光度測定による非着色性判断基準を420nmにおける吸光度0.3A以下とした。
配合バランスの影響
[サンプルの作製]
実施例11〜26及び比較例19〜24の作製
茶抽出物(ポリフェノン60A/カテキン類含有量60重量%:三井農林(株)製)を有機溶媒に溶解させた茶抽出物溶液を表2に記載の乳化剤に添加して均一に混和させた後、菜種白絞油(菜種白絞油:J‐オイルミルズ(株)製)で希釈し、エバポレーターで混合溶液から有機溶媒を留去させて実施例11〜26及び比較例19〜24を得た。
この時使用した乳化剤は、表1記載の乳化剤の他、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルである『CR−500』及び『CR−310』(共に阪本薬品工業(株)製)、またポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを主成分としショ糖脂肪酸エステルを含有する乳化製剤『E−50』(第一工業製薬(株)製)を使用した。
なお、製剤無添加時の希釈溶液のpHは7.57だった。
比較例25の作製
茶抽出物(ポリフェノン60A/カテキン類含有量60重量%:三井農林(株)製)10.0重量%を水10.0重量%に溶解し茶抽出物の水溶液20.0重量%を得た。これをグリセリン脂肪酸エステル(O−95R:花王(株)製)80.0重量%に加えTKホモミキサー(特殊機化工業(株)、回転速度:5000rpm、攪拌時間5分)で乳化し比較例25を得た。
[試験例iii;油脂分散性評価]
上記方法によって得た実施例11〜26及び比較例19〜25を菜種白絞油に0.5重量%添加後、保温機能のついたスターラーを用いて70℃、15分間の攪拌混合を行い測定サンプルとした。その後、分光光度計を用いて測定サンプルの660nmにおける吸光度(A)を測定し、この結果から組成物の油脂分散性を評価した。この時、660nmにおける吸光度の評価基準は、○:0.3A未満、△:0.3A以上0.4A以下、×:0.4Aを上回る、として表した。
[試験例iv;非着色性評価]
実施例11〜26及び比較例19〜25を菜種白絞油に0.05重量%添加後、保温機能のついたスターラーを用いて70℃、15分間の攪拌混合を行い測定サンプルとした。この測定サンプルを10g計量し、180℃に設定した高温槽で30分保温後、420nmにおける吸光度(A)を測定することにより組成物の非着色性を評価した。この時、420nmにおける吸光度の評価基準は試験例iiの結果より、○:0.1未満、△:0.1以上0.3以下、×:0.3を上回る、として表した。
なお、試験例iiiで行った油脂分散性評価および試験例ivで行った非着色性評価をあわせ、総合判定をおこなった。評価基準は、以下のとおりとする。
○:油脂分散性評価および非着色性評価が○又は△
×:油脂分散性評価および非着色性評価のどちらか一方が×、または、分離がみられたもの
[結果]
結果を表2に示す。なお、表2中の重量%はすべて製剤中の各成分配合含有量として示した。この結果から、本発明より得られた実施例11〜26は比較例に比べて油脂への分散性が高く、高温油脂へ添加した際の着色が抑制されていることを確認した。
抗酸化効果の比較
[サンプルの作製]
実施例27の作製
茶抽出物(ポリフェノン70A/カテキン類含有量80重量%:三井農林(株)製)8.5重量%とビタミンCパルミテート(三共ライフテック(株)製)2.3重量%をエタノール30.0重量%に溶解し茶抽出物のエタノール溶液14.2重量%を得た。これにプロピレングリコール脂肪酸エステル(PO-100V:理研ビタミン(株)製)84.3重量%を加えて均一に混和し、エバポレーターでエタノールを完全に留去させた後、菜種白絞油(菜種白絞油:J-オイルミルズ(株)製)4.9重量%で希釈して実施例27を得た。
実施例28の作製
茶抽出物(ポリフェノン70A/カテキン類含有量80重量%:三井農林(株)製)15.0重量%とビタミンCパルミテート(三共ライフテック(株)製)1.0重量%をエタノール30.0重量%に溶解したものに、ショ糖脂肪酸エステル(DKエステル F−90:第一工業製薬(株)製)とポリグリセリン脂肪酸エステル(O−50D:三菱化学フーズ(株)製)を添加、70℃で15分の加温を行い茶抽出物のエタノール溶液41.2重量%を得た。これを、60℃に保温したグリセリン脂肪酸エステル(O−95R:花王(株)製)30.0重量%とプロピレングリコール脂肪酸エステル(PO−100V:理研ビタミン(株)製)20.0重量%の混合液に加え60℃保温状態で均一に混和し、エバポレーターでエタノールを0.5重量%となるまで留去させた後、パーム油(パームエースN:不二製油(株)製)で希釈して実施例28を得た。
実施例29の作製
茶抽出物(ポリフェノン70A/カテキン類含有量80重量%:三井農林(株)製)15.0重量%とビタミンCパルミテート(三共ライフテック(株)製)1.0重量%及びクルクミン(和光純薬(株)製)3.0重量%をエタノール30.0重量%に溶解したものに、60℃に保温したグリセリン脂肪酸エステル(O−95R:花王(株)製)45.0重量%とプロピレングリコール脂肪酸エステル(PO−100V:理研ビタミン(株)製)5.0重量%の混合液に加え60℃保温状態で均一に混和し、エバポレーターでエタノールを0.5重量%となるまで留去させた後、パーム油(パームエースN:不二製油(株)製)で希釈して実施例29を得た。
比較例26の作製
茶抽出物(ポリフェノン70A/カテキン類含有量80重量%:三井農林(株)製)9.6重量%を水21.2重量%に溶解し茶抽出物の水溶液30.7重量%を得た。これをポリグリセリン脂肪酸エステル(CR−ED:阪本薬品工業(株)製)48.0重量%と菜種白絞油(J−オイルミルズ(株)製)21.2重量%を混合した油相に加えTKホモミキサー(特殊機化工業(株)、回転速度:5000rpm、攪拌時間5分)で乳化し比較例26を得た。
比較例27の作製
茶抽出物を変更した(ポリフェノン60A/カテキン類含有量60重量%:三井農林(株)製)他は比較例26と同様の方法で比較例27を得た。
[測定条件]
実施例27、28及び29、比較例26及び27を魚油に適量ずつ添加し、スターラーを用いて攪拌混合を行った。基準油脂分析方法2.5.1.2に記載されるCDM試験法に従い、これを測定セルに3gずつ入れ、90℃に設定したCDM試験器中に設置した。測定セル中に空気を20L/hで送り込み、CDM測定機で導電率を測定することによって油脂の酸化誘導時間を評価し、組成物のカテキン類含量当たりの抗酸化効果を比較検討した。
[結果]
実施例27〜29及び比較例26及び27の配合比率(重量%)を表3に、結果を図1に示す。なお、表3中の重量%はすべて製剤中の各成分配合含有量として示した。
カテキン類当たりの酸化誘導時間は本発明の方法で得られた実施例27、28及び29が比較例26及び27に対していずれの場合も高く、カテキン類を120ppm以上添加すると酸化誘導時間が比較例よりも約1.3倍ほど高くなった。特に、クルクミンを添加した実施例29においては、着色だけでなく酸化油脂が発する刺激臭も抑制されていた。また、アスコルビン酸パルミテートの添加によって製剤の透明度が増し、製剤の分散性が向上した上、製剤及び、添加区の安定性も向上していた。この結果より本発明で得られる油溶性カテキン製剤が少ない添加量で高い抗酸化効果を発揮することが確認された。
(マヨネーズ)
卵1個分の卵黄に、酢小さじ1杯と塩コショウを適量入れ混合した。次いでこれにサラダ油120mLをゆっくりと加えながら混合し、適量の砂糖と実施例28で調製したカテキン油性剤を0.08g加えて混合し、マヨネーズを得た。
(化粧用クリーム)
(1):油相
ステアリン酸 5重量%
セタノール 2重量%
スクワラン 5重量%
パルミチン酸セチル 4重量%
モノステアリン酸グリセリン 2重量%
ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル 2重量%
実施例28で得られたカテキン油性剤 1重量%

(2):水相
グリセリン 5重量%
pH調整剤 適量
防腐剤 適量
精製水を加えて全量を100重量%とした
上記(1)および(2)をそれぞれ80℃に加熱溶解し、撹拌しながら(2)を(1)に徐々に加えて乳化を行った。35℃まで冷却して、化粧用クリームを調製した。
本発明のカテキン油性剤を添加した油脂を高温加温した際に生じる着色を抑制する方法は、上記のとおり、食用油脂の他、飲食品、化粧品、医薬部外品、飼料製品、工業製品などに利用することができる。
実施例3における、抗酸化効果の比較を示すグラフである。

Claims (12)

  1. 次の成分(A):カテキン類、(B):グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(但し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを除く)、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセライドから選ばれるHLBが4以下となる乳化剤の少なくとも1種以上、及び(C):水、を含有し、さらに製剤中におけるこれらの含有重量が次の条件(イ)、(ロ)及び(ハ)を満たすものであって、
    (イ)(B)/(A)=3.0以上、
    (ロ)(B)=35.0重量%以上、
    (ハ)(C)=10.0重量%未満、
    当該製剤をブタノール:エタノール:水の容積比が5:4:1の混合溶媒に対して1.5重量%で添加溶解した際のpHが、無添加の当該混合溶媒のpHよりも酸性側となるカテキン油性剤を使用することを特徴とする高温加熱時のカテキン添加油脂の着色抑制方法(但し、HLBが2以下である乳化剤を含有するカテキン油性剤を使用する方法を除く)
  2. 乳化剤がグリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、プロピレングリコール−オレイン酸エステル、テトラグリセリンペンタオレイン酸エステル、テトラグリセリンペンタステアリン酸エステル、デカグリセリンデカステアリン酸エステル、及びデカグリセリンデカオレイン酸エステルである請求項1記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法。
  3. 乳化剤がグリセリンモノオレートである請求項1記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法。
  4. カテキン油性剤が有機溶媒を10重量%以下含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法。
  5. カテキン油性剤がカテキン類の酸化防止効果を増加させる相乗剤を5重量%以下含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法。
  6. 油脂が食用油脂である請求項1〜5の何れか1項に記載のカテキン添加油脂の着色抑制方法。
  7. 次の成分(A):カテキン類、(B):グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(但し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを除く)、プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセライドから選ばれるHLBが4以下となる乳化剤の少なくとも1種以上、(C):水を含有し、さらに製剤中におけるこれらの含有重量が次の条件(イ)、(ロ)及び(ハ)を満たすカテキン油性剤であって、
    (イ)(B)/(A)=3.0以上
    (ロ)(B)=35.0重量%以上
    (ハ)(C)=10.0重量%未満
    当該製剤をブタノール:エタノール:水の容積比が5:4:1の混合溶媒に対して1.5重量%で添加溶解した際のpHが、無添加の当該混合溶媒のpHよりも酸性側となることを特徴とするカテキン油性剤(但し、HLBが2以下である乳化剤を含有するカテキン油性剤を除く)
  8. 乳化剤がグリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、プロピレングリコール−オレイン酸エステル、テトラグリセリンペンタオレイン酸エステル、テトラグリセリンペンタステアリン酸エステル、デカグリセリンデカステアリン酸エステル、及びデカグリセリンデカオレイン酸エステルである請求項7記載のカテキン油性剤。
  9. 乳化剤がグリセリンモノオレートである請求項7記載のカテキン油性剤。
  10. カテキン類を有機溶媒に溶解し、次いでこのカテキン溶液に、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(但し、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを除く)プロピレングリコール脂肪酸エステル及び酢酸モノグリセリドから選ばれるHLBが4以下となる乳化剤(但し、HLBが2以下である乳化剤を除く)の少なくとも1種以上を最終的な製剤中の含有率として35.0重量%以上、カテキン類および乳化剤の含有重量比率[乳化剤/カテキン類]が3.0以上となるように添加し、実質的に水を添加せずに混合液を調製し、この混合溶液から有機溶媒を最終的な製剤中の含量として10重量%以下となるまで留去する製造方法により得られうる、ブタノール:エタノール:水の容積比が5:4:1の混合溶媒に対して1.5重量%で添加溶解した際のpHが、無添加の当該混合溶媒のpHよりも酸性側となるカテキン油性剤。
  11. 請求項10記載のカテキン油性剤の製造方法。
  12. 請求項7〜10記載のカテキン油性剤を含有する油系組成物。
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