JP5083882B2 - アルミノリン酸トリエチルアミン化合物のへき開性層状結晶及びその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの結晶性アルミノリン酸塩類は、分子篩や触媒等として有用であることから、ナノレベルの結晶構造に着目し、新規な結晶構造を有する化合物の合成が種々試みられている。
J.Vac.Soc.Jpn.(真空)Vol.49,No.4,2006,205−212
1.下記の一般式(1)で表される、Al又はP原子に結合した水酸基を有するアルミノリン酸トリエチルアミン化合物のへき開性層状結晶:
AlPxOy(OH)z・[(C2H5)3N]u・(H2O)v (1)
式中、 x=1±0.1
y=4〜5
z=0.5〜2
u=0.1〜0.3
v=0〜0.01
である。
2.前記層状結晶が、FT−IRで3755±2cm−1に吸収ピークを有することを特徴とする1に記載の層状結晶。
3.前記層状結晶において、単位胞がa = b = 9.415±0.010 Å, c = 52.29±0.05 Å、α = β = 90°,γ = 120°の六方格子を組んでいることを特徴とする1又は2に記載の層状結晶。
4.前記層状結晶が粉末X線回折パターンにおいて、下記のピークを有するものであることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の層状結晶。
面間隔 d(Å)
26.4±0.2
13.10±0.04
8.17±0.01
8.07±0.01
4.739±0.005
4.079±0.004
3.501±0.003
3.002±0.002
本発明の層状結晶の典型的な粉末X線回折パターンとしては、後記の実施例1の表1に記載のピークを有するものが挙げられる。これらのピークの中で、層状結晶を特定するには上記のピークが好適に用いられる。
5.前記層状結晶を構成する各層の層厚が、30〜200nmであることを特徴とする1〜4のいずれかに記載の層状結晶。
6.Al源、P源、水及びトリエチルアミンを混合して、酸化物のモル比基準でつぎに示す組成の混合物を調製し、
P2O5/Al2O3=0.5〜1.5
H2O/Al2O3=100〜400
N(C2H5)3/Al2O3=1〜5
該混合物を150〜230℃に加熱して、層状結晶を得ることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の層状結晶の製造方法。
7.前記混合物を、得られる層状結晶がFT−IRで3755±2cm−1に吸収ピークを示すまで、加熱することを特徴とする6に記載の層状結晶の製造方法。
8.前記混合物を、得られる層状結晶が粉末X線回折パターンにおいて、下記のピークを有するものとなるまで加熱することを特徴とする6又は7に記載の層状結晶の製造方法。
面間隔 d(Å)
26.4±0.2
13.10±0.04
8.17±0.01
8.07±0.01
4.739±0.005
4.079±0.004
3.501±0.003
3.002±0.002
9.前記混合物のpHを3〜8として、加熱することを特徴とする6〜8のいずれかに記載の層状結晶の製造方法。
P2O5/Al2O3=0.5〜1.5
H2O/Al2O3=100〜400
N(C2H5)3/Al2O3=1〜5
該混合物を150〜230℃に加熱することによって、層状結晶を得るものである。
面間隔 d(Å)
26.4±0.2
13.10±0.04
8.17±0.01
8.07±0.01
4.739±0.005
4.079±0.004
3.501±0.003
3.002±0.002
原料に用いられるAl源、P源に特に制限はない。Al源としてはアルミニウムの水和物、水酸化物、メタル、アルコキシド、酸化物等を用いることができる。P源としてはリン酸、酸化リン、リン酸エステル等を用いることができる。Al源とP源の両者を混合した際に反応し易いものが好適に用いられ、Al源としては、アルミナゾル、ベーマイトや擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド等が好ましく、P源としては、オルトリン酸やポリリン酸等が好ましい。
(1)水溶液Aの調製
水(以下に記載する水溶液Bとモル比で2:1となるように,水の量を分ける)に、Al源の試薬を分散させて、撹拌する。
(2)水溶液Bの調製
水にP源の試薬を溶解し、撹拌する。つぎに、撹拌・氷冷下にてトリエチルアミンを滴下して混合する。
(3)水溶液Aに水溶液Bを撹拌しながらゆっくり滴下して、水溶液Cを得る。
(4)水溶液CのpHを50重量%の硫酸水溶液を用いて調整する。
(5)水溶液Cをフッ素樹脂内筒付オートクレーブに封入する。
(6)オートクレーブを電気炉に入れて、加熱・保持する。
(7)加熱終了後、オートクレーブを電気炉から取り出し、冷水で冷却する。
(8)冷却後、オートクレーブを開封し、合成された物質をろ過して取り出し、イオン交換水で洗浄する。
(9)最後に、例えば40℃にて12時間以上乾燥させる。
以下の例において、得られたアルミノリン酸トリエチルアミン化合物のへき開性層状結晶の構造及び性状は、次のようにして測定した。
(FT−IR)
Nicolet社製「Magna750」を使用して、測定分解能4cm-1にて400-4000cm-1の範囲を測定した。
(X線回折データ)
精密測定に関しては、BrukerAXS社製粉末X線回折測定装置「D8 ADVANCE with Vario 1」を用いてCuKα1線を線源として測定し、回折線の見られる2θの値からブラッグの式を用いて面間隔dを計算する。乾燥後のサンプルをそのまま測定に供して、2θの範囲として2〜50°程度を測定する。
一方、定性分析に関しては、マックサイエンス社製粉末X線回折測定装置「MXP-3TZ」を用いてCuKα1,2線を線源として用い、2〜25°程度の範囲を測定する。
(SEM観察)
日立社製「S-4800」を使用して、加速電圧1kVもしくは15kVで2次電子を観測した。また、組成分析を行うため、同SEM装置に付帯される堀場製作所社製エネルギー分散型X線分析装置「EMAX Energy」を利用した。
(NMR)
Bruker Bio-Spin社製「AVANCE 400WB」を使用して、 Magic angle spinning法を用い、シングルパルスシーケンス、試料回転速度5kHz、積算回数100回の測定条件で、27Al核及び31P核のNMRスペクトルを測定した。なお、27Al核及び31P核の化学シフト量の基準としてAl(H2O)6Cl3、及びH3PO4水溶液をそれぞれ用い、校正を行った。
(TG-DTA)
BrukerAXS社製の熱重量・熱示差(TG-DTA)分析装置「TG-DTA 2000SR」を用いて、乾燥空気100ml/分、昇温スピード10℃/分で室温から1000℃まで昇温させることにより、サンプル中の水の量、有機物の量を評価した。
(CHN分析)
CE Instruments社製「EA1110」を用いることにより、試料中に含まれる有機物由来のC, H, N元素の重量比を評価した。
Al源としてアルミナゾル水溶液(川研ファインケミカル社製、10wt%)80gを、水183gに分散させる。これを溶液Aとここでは呼ぶ。一方、P源としてオルトリン酸水溶液(和光純薬製、85wt%)18.6gを水91.3gに分散させ、更にトリエチルアミン[(C2H5)3N](東京化成製、99w%+)28.9gを氷冷、撹拌下で加える。これを溶液Bとここでは呼ぶ。溶液Bを溶液Aに撹拌下で加え、更に十分に撹拌することにより、以下のモル組成を有する混合水溶液Cを調製した。
P2O5/Al2O3=1.0
H2O/Al2O3=250
TEA/Al2O3=3.6
更にこの混合水溶液Cに約50wt%に希釈した硫酸水溶液(和光純薬製、99wt%+)を撹拌下で滴下することにより、pHを7に調整した。
この混合水溶液をテフロン(登録商標)内筒付オートクレーブに密封の上、170℃にて7日間加熱した。加熱終了後、オートクレーブは冷水により冷却し、反応生成物(目的サンプル)を含む水溶液を取り出し、純水の追加とデカンテーションを数回繰り返す。この洗浄操作に続き、ろ過及び40℃での乾燥を1日行うことにより、サンプルを分離回収した。
乾燥後のサンプルの粉末X線回折パターンを以下の条件で測定した。
装置: BrukerAXS社製D8 ADVANCE with Vario-1
測定方法: ガラスキャピラリーに封入した試料を用いる透過型デバイ-シェラー光学系
測定間隔: Δ2θ=0.00874°
測定範囲: 2θ=1.8−90°
結果を図1に示す。図中の挿入図は2θ = 10〜35°の縦軸強度を拡大したものである。また、図中の「|」で示したのは、粉末X線回折パターンの解析により得られた格子定数a = b = 9.4154(3) Å, c = 52.293(2) Å、α = β = 90°, γ= 120°において出現する回折ピークの位置を表しており、実際の回折ピーク位置と一致している。Braggの回折条件の式(2dsinθ=λCuKα1)を用いることにより、回折ピークの格子面間隔及びその相対強度は表1のようになり、既知アルミノリン酸塩化合物及びアミン系有機物を内包するこれらの化合物にこれらの回折ピークを示すものは存在しない。
vs: かなり強い
s: 強い
m: 中間
w: 弱い
vw: かなり弱い
実施例1で得られたサンプルの走査電子顕微鏡(SEM)像観察を行った。測定条件は下記の通りである。
装置: 日立社製 S-4800
組成分析付属装置:堀場製作所社製 EMAX Energy
SEM観察像を図2(a)〜(d)に示す。図2(a)に見られるように、六角形の板状物質が秩序だって積層した外形を有している。この像を拡大した場合、図2(b)のように板状構造が互いにずれずに結合している箇所が観察される。このことから、この物質は六角柱結晶が劈開するように板状化して得られたものである。板状物質の劈開部の厚みはおよそ200 nm程度である。劈開が進行すると図2(c)に見られるように完全はく離した六角形のシート状構造や、図2(d)のようなシートが集合した形態をとることもある。
更に、SEM装置に付帯されるエネルギー分散型X線蛍光分析装置により、サンプルに含まれるAl及びP原子の比を分析した。その結果、Al : P = 1 : 1±0.1という結果が得られた。
実施例1で得られたサンプルの中赤外領域の粉末拡散反射スペクトルを以下の条件で測定した。
装置: Nicolet社製Magna750
測定分解能: 4 cm-1
積算回数: 512回
測定範囲: 400−4000cm-1
結果を図3に示す。縦軸は拡散反射率であるため、拡散反射率が低いほど強い光吸収が存在することになる。3755±2cm-1に見られる光吸収は-OH基(水酸基)の伸縮振動によるものである。この-OH基はAlもしくはP原子に化学結合していると考えられる。このような3755±2 cm-1の伸縮振動を持つ-OH基含有アルミノリン酸化合物及びアミン系有機物を内包するこれらの化合物は過去に知られていない。
実施例1で得られたサンプルの熱重量・熱示差分析を以下の条件で行った。
装置: BrukerAXS社製 TG-DTA-2000SR
使用ガス及び流量: 乾燥空気、100ml/分
昇温スピード: 10℃/分
結果を図4に示す。実線が昇温に伴う重量減少比を表し、破線が熱特性(正方向:発熱、負方向:吸熱特性)を表す。室温からの温度上昇と共に緩やかな発熱量増大と重量減少があるが、発熱ピーク330℃近傍にて急激な重量減少が生じた。このことは、多孔性結晶で一般的に見られる吸着水の脱離による吸熱反応が無く、トリエチルアミンの燃焼による発熱のみが生じたことを意味する。故に、このサンプルでは殆ど吸着水を有さず、重量減少の主たる成分はトリエチルアミンであった。
更に、有機元素定量分析により、サンプルに含まれるCHN元素量を定量した。測定装置としてCE Instruments社製EA1110を用いた。その結果、サンプルに含まれるトリエチルアミン量は対Al原子比でTEA/Al = 0.2となった。
実施例1で得られたサンプルの27Al及び31P核スピンに対するMAS(Magic Angle Spinning)-NMR(核磁気共鳴)スペクトルを以下の条件で測定した。
装置: Bruker AVANCE 400WB
MAS周波数: 5 kHz
積算回数: 100回
標準試料: 27Al核: Al(H2O)6Cl3、31P核: H3PO4水溶液
得られた27Al及び31PのMAS-NMRスペクトルをそれぞれ図5(a)及び図5(b)に示す。
27AlのNMRスペクトルには多数のピークが-10〜60ppmの間に観測される。なお、*で記したピークはMASに伴うサイドバンドである。
このサンプルの製造法に関して、実施例1により調製したAl源、P源及びトリエチルアミンを含む混合溶液の加熱時間と得られるサンプルの量に関する実施例を示す。
実施例1と同様の手順により混合溶液を調製・加熱して目的とするサンプルを得る。ただし、アルミナゾル水溶液(川研ファインケミカル社製、10wt%)90gを、水205gに分散させる。一方、オルトリン酸水溶液(和光純薬製、85wt%)30.0g及びトリエチルアミン(東京化成製、99w%+)27.1gを水103gに分散させる。これにより得られる混合水溶液のモル比は以下のようになる。
P2O5/Al2O3=1.0
H2O/Al2O3=250
TEA/Al2O3=3.0
更に約50wt%に希釈した硫酸水溶液(和光純薬製、99wt%+)により、この混合水溶液のpHを3.6に調整の上、190℃にて1,2,3,6,10日間加熱を行い、実施例1と同様の方法でサンプルを回収した。
サンプルの粉末X線回折パターンを以下の条件で測定した。
装置: マックサイエンス社製MXP-3TZ
測定方法: 平板試料を用いる集中光学系(DS, SS: 可変スリットモード[試料照射面積一定], RS = 0.15mm)
使用X線波長: CuKα1,2
測定間隔: Δ2θ=0.012°
測定範囲: 2θ=1.4−16°
結果を図6に示す。加熱が1〜2日では既知のAFI型アルミノリン酸結晶によるX線回折ピーク(参考文献:T. Kodairaら、Microporous and Mesoporous Materials, 29 (1999) 329-337.)のみが現れる。3日以上の加熱にて、実施例1で示した目的とする物質の粉末XRDピークと同一の位置、相対強度のピーク(図中で▼にて記した。)が得られるようになる。10日間の加熱では、AFI型アルミノリン酸塩結晶相に由来するXRDピークは完全に消える。故に、加熱時間は3日以上、望ましくは10日以上である。
このサンプルの製造法に関して、実施例1により調製したAl源、P源及びトリエチルアミンを含む混合溶液の加熱温度と得られるサンプルとの相関に関する実施例を示す。
実施例1と同様の手順により混合溶液を調製・加熱して目的とするサンプルを得る。混合溶液を得る手順、原料重量は実施例1と同じである。故に得られる混合水溶液のモル比は以下のようになる。
P2O5/Al2O3=1.0
H2O/Al2O3=250
TEA/Al2O3=3.6
更に実施例1と同様の方法で、この混合水溶液のpHを7.0に調整の上、190,210℃にて3日間加熱を行い、実施例1と同様の方法でサンプルを回収した。サンプルの粉末X線回折パターンを実施例2と同一条件で測定した。
図7に結果を示す。加熱温度190,210℃共に実施例1で示したアルミノリン酸塩結晶を特徴づけるX線回折ピークが見られる。なお、「*」印で示したのは、AFI型アルミノリン酸塩結晶に由来するピークである。結論として、150〜230℃の範囲で合成が可能であるが、温度を除く他の合成パラメータが同一の場合、170〜190℃が最適である。
このサンプルの製造法に関して、実施例1により調製したAl源、P源及びトリエチルアミンを含む混合溶液のpHと得られるサンプルとの相関に関する実施例を示す。
実施例1と同様の手順により混合溶液を調製・加熱して目的とするサンプルを得る。混合溶液を得る手順、原料重量は実施例1と同じである。故に得られる混合水溶液のモル比は以下のようになる。
P2O5/Al2O3=1.0
H2O/Al2O3=250
TEA/Al2O3=3.6
更に実施例1と同様の方法で、この混合水溶液のpHを4.0, 5.0, 6.0, 7.0に調整の上、170℃にて7日間加熱を行い、実施例1と同様の方法でサンプルを回収した。サンプルの粉末X線回折パターンを実施例2と同一条件で測定した。
その結果を図8に示す。「▼」で記した回折ピークは目的とするアルミノリン酸結晶に由来するものである。pH=4.0〜5.0では「*」印で示したAFI結晶相が若干見られるが、pH=7.0では、完全にAFI結晶相に由来するXRDピークは存在しない。故に、混合溶液のpHとしては4〜8の範囲で目的の試料が得られる。試料の純度を高く、収量を多く、加熱時間を短くする目的に対しては、望ましくはpH=6.0〜7.0である。
このサンプルの製造法に関して、実施例1により調製したAl源、P源及びトリエチルアミンを含む混合溶液におけるトリエチルアミン量と得られるサンプルとの相関に関する実施例を示す。
実施例1と同様の手順により混合溶液を調製するが、原料のモル比は以下の通りに調製した。
P2O5/Al2O3=1.0
H2O/Al2O3=250
TEA/Al2O3=2.0, 2.5, 3.0
更に実施例1と同様の方法で、この混合水溶液のpHを4.0に調整の上、190℃にて7日間加熱を行い、加熱終了後実施例1と同様の方法でサンプルを回収した。サンプルの粉末X線回折パターンは実施例2と同一条件で測定した。
その結果を図9に示す。どのトリエチルアミン量でも目的とする結晶構造を有するアルミノリン酸塩結晶が得られた。故に実施例1におけるTEA/Al2O3=3.6比も含め、TEA/Al2O3=1-4の範囲で合成が可能である。
このサンプルの製造法に関して、実施例1により調製したAl源、P源及びトリエチルアミンを含む混合溶液における水の総量と得られるサンプルとの相関に関する実施例を示す。
実施例1と同様の手順により混合溶液を調製するが、原料のモル比は以下の通りに調製した。
P2O5/Al2O3=1.0
H2O/Al2O3=200
TEA/Al2O3=3.6
更に実施例1と同様の方法で、この混合水溶液のpHを4.0に調整の上、170℃にて10日間加熱を行い、加熱終了後実施例1と同様の方法でサンプルを回収した。サンプルの粉末X線回折パターンは実施例2と同一条件で測定した。
その結果を図10に示す。実施例1の場合と比較し、水の量を減らしても目的とする結晶構造を有するアルミノリン酸塩結晶が得られた。但し、”*”で記したAFI型構造を有するアルミノリン酸塩結晶の混入も若干見られる。故に実施例1におけるH2O/Al2O3=250比も含め、H2O/Al2O3=50-500の範囲で合成が可能である。しかし、水の量が増すと出発混合水溶液の単位体積から得られる目的物質の量が減り、一方、水の量を減らすと、目的のアルミノリン酸塩結晶が得られる温度、pHの範囲が狭まり、また加熱時間が伸びるため、望ましくは、H2O/Al2O3=200〜300で混合溶液を調製するのがよい。
試料を合成するAl源として、実施例1で示したアルミナゾルの他、擬ベーマイト[製品名:Catapal B, Sasol North America社製]、アルミニウムトリイソプロポキサイド(Al(OCH(CH3)2)3)[Aldrich社製]、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)[Merck社製]を用いた合成の実施例を示す。
実施例1と同様の手順により混合溶液を調製・加熱して目的とするサンプルを得る。得られる混合水溶液のモル比は以下のように統一した。
P2O5/Al2O3=1.0
H2O/Al2O3=250
TEA/Al2O3=3.6
なお、アルミニウムイソポロポキサイドを用いた場合は、加水分解により溶液Aにイソプロピルアルコールが含まれている。
更に実施例1と同様の方法で、この混合水溶液のpHを5.0に調整の上、190℃にて21日間加熱を行い、実施例1と同様の方法でサンプルを回収した。サンプルの粉末X線回折パターンを実施例2と同一条件で測定した。
結果を図11に示す。Al源としてAl(OH)3を用いた場合を除き、他は実施例1と同一の粉末XRDパターンを示すサンプルが得られた。Al(OH)3は水への溶解が起きにくく、目的のサンプルが得られなかった。故にAl源としては、均一に水に溶解・分解する試薬であれば、特に制限はない。
Claims (9)
- 下記の一般式(1)で表される、Al又はP原子に結合した水酸基を有するアルミノリン酸トリエチルアミン化合物のへき開性層状結晶:
AlPxOy(OH)z・[(C2H5)3N]u・(H2O)v (1)
式中、 x=1±0.1
y=4〜5
z=0.5〜2
u=0.1〜0.3
v=0〜0.01
である。 - 前記層状結晶が、FT−IRで3755±2cm−1に吸収ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の層状結晶。
- 前記層状結晶において、単位胞がa = b = 9.415±0.010 Å, c = 52.29±0.05 Å、α = β = 90°,γ = 120°の六方格子を組んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の層状結晶。
- 前記層状結晶が粉末X線回折パターンにおいて、下記のピークを有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の層状結晶。
面間隔 d(Å)
26.4±0.2
13.10±0.04
8.17±0.01
8.07±0.01
4.739±0.005
4.079±0.004
3.501±0.003
3.002±0.002 - 前記層状結晶を構成する各層の層厚が、30〜200nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の層状結晶。
- Al源、P源、水及びトリエチルアミンを混合して、酸化物のモル比基準でつぎに示す組成の混合物を調製し、
P2O5/Al2O3=0.5〜1.5
H2O/Al2O3=100〜400
N(C2H5)3/Al2O3=1〜5
該混合物を150〜230℃に加熱して、層状結晶を得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の層状結晶の製造方法。 - 前記混合物を、得られる層状結晶がFT−IRで3755±2cm−1に吸収ピークを示すまで、加熱することを特徴とする請求項6に記載の層状結晶の製造方法。
- 前記混合物を、得られる層状結晶が粉末X線回折パターンにおいて、下記のピークを有するものとなるまで加熱することを特徴とする請求項6又は7に記載の層状結晶の製造方法。
面間隔 d(Å)
26.4±0.2
13.10±0.04
8.17±0.01
8.07±0.01
4.739±0.005
4.079±0.004
3.501±0.003
3.002±0.002 - 前記混合物のpHを3〜8として、加熱することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の層状結晶の製造方法。
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