JP5082171B2 - ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶表示材料として有用なネマチック液晶組成物及び、これを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置(LCD)は、電卓のディスプレイとして登場して以来、コンピューターの開発と歩みを同じくして、TN-LCD(捻れネマチック液晶表示装置)から、STN-LCDへと表示容量の拡大に対応してきた。STN-LCDは、シェファー(Scheffer)等[SID '85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID '86 Digest, 122頁(1986年)]によって開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高情報処理用の表示に広く普及しはじめている。最近、STN-LCDでの応答特性を改善する目的でアクティブアドレッシング駆動方式が提案されている。(Proc.12th International Display Research Conference p.503 1992年) この様な液晶材料として、弾性定数比K33/K11が1.5前後、誘電率異方性△εや粘性が比較的小さいことと併せて、特に複屈折率△nが大きいものが要求されている。また、カラーフィルター層を用いないでカラー表示ができる方法として、液晶と位相差板の複屈折性を利用した新規反射型カラー液晶表示方式が提案されている。(テレビジョン学会技術報告 vol.14 No10.p.51 1990年) この様な液晶材料として、光の波長の違いによってより大きな位相差が現れるものがよいことから、特に複屈折率△nが大きいものが要求されており、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物の提案がなされている。また、携帯用端末表示(Personal Digital Assistance)ではより広い温度域で良好な表示特性が要求されている。この様な液晶材料として粘性が低く、駆動電圧が低くなおかつ広い温度範囲に対して物性値が一定を保持することや、あるいは種々の時分割に対応した周波数範囲で駆動電圧が変動しないことが要求されている。しかし、表示素子に組み込んだときの応答速度やコントラストなどはまだ十分とは言えず、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物の提案がなされている。
【0003】
上述のようなTN-LCDやSTN-LCDの重要な特性改善課題の一つにコントラストの向上がある。LCDの急速な用途拡大に伴い、室内で使用されるだけでなく、コンピューターの携帯端末ディスプレイ、車載用計器、屋外使用計測機のディスプレイのように、温度条件の過酷な屋外で使用されることが増加してきた。そのため、LCDが置かれる環境の温度変化による表示コントラストの低下、低温における応答速度の低下による表示品位の悪化が問題になってきている。
【0004】
周囲の温度変化によるLCD表示品位の低下の原因は、様々な要因が上げられるが、ネマチック液晶の弾性定数・誘電率などの温度変化と添加したカイラル物質の固有ピッチの温度変化に起因する閾値電圧Vthの温度変化を押されるため、カイラル物質の固有ピッチの温度変化を制御することにより、閾値電圧の温度依存性を改善する提案(特開昭55-38869号公報)は既に知られており、母体液晶とカイラル物質の組み合わせにより、その効果が変化する事や、カイラル量を増やすことにより、レスポンス等の表示特性に悪影響を及ぼすことが問題になっていた。
【0005】
本発明の必須成分である一般式(I)で表される化合物に関わる技術は、特開平9-151373号や特開平10-60441号公報で報告されている。しかしながら、これらの技術によれば、複屈折率の大きい液晶材料が示されているものの、閾値電圧の温度依存性の改善により広い温度範囲で高いコントラスト比を達成した特性は報告されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、大きなΔn、幅広いネマチック液晶温度範囲、特に低温でのネマチック温度範囲の拡大、閾値電圧の温度依存性の改善による広い温度範囲で高いコントラスト比、高速レスポンスを有する液晶組成物を提供することにあり、また、この液晶組成物を使用した電気光学特性を改善した液晶表示素子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、種々の液晶化合物を用いた液晶組成物を検討した結果、以下の液晶組成物を見いだした。
【0008】
第1成分として、一般式(I−a)
【0009】
【化6】
(式中、R 8 は炭素原子数2〜8のアルキル基、アルコキシル基又はアルケニル基を表し、Y 17 〜Y 19 はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上を含有し、第2成分として、一般式(II)
【0010】
【化8】
(式中、R2は炭素原子数2〜8のアルキル基、アルコキシル基又はアルケニル基を表し、R3は炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシル基又はアルケニル基を表し、Y7はそれぞれ独立的に水素原子、フッ素原子又は−CH3を表す。)で表され化合物を1種又は2種以上を含有し、第3成分として、一般式(III)
【0011】
【化8】
(式中、R4は炭素原子数2〜8のアルキル基、アルコキシル基又はアルケニル基を表し、R5 は炭素原子数1〜8のアルキル基、アルコキシル基又はアルケニル基を表し、Y8、Y9は水素原子を表し、Y10は水素原子、フッ素原子又は−CH3を表し、Z1は単結合、−COO−または−C2H4−を表す。)で表される化合物を1種又は2種以上を含有し、第4成分として、一般式(IV−a)
【0012】
【化9】
(式中、R 9 は炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、Y 20 、Y 21 はそれぞれ水素原子を表し、Y 22 、Y 23 はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表すが、そのうち少なくとも1つ以上はフッ素原子を表し、nは0を表す。)で表される1種もしくは2種以上の化合物を含有し、なおかつネマチック相−等方性液体相転移温度(TN−I)が85℃以上であり、結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(T→N)が−10℃以下であり、屈折率の異方性(Δn)が0.15〜0.33の範囲であることを特徴とする液晶組成物が上記課題の解決に有効であることを見いだした。
【0013】
一般式(I)、(II)から成る液晶組成物では、高いΔnを有するものの、必ずしも十分に高いTN-Iとは言えず、閾値電圧の温度依存性が良好なものとは言えなかった。また、一般式(I)、(III)から成る液晶組成物では、高いΔnを有するものの必ずしも十分に低いT→ Nとは言えず、閾値電圧の温度依存性が良好なものとは言えなかった。また、一般式(I)、(IV)および(V)から成る液晶組成物では、Δnが必ずしも高いとは言えなかった。さらには、一般式(II)、(III)、(IV)および(V)から成る液晶組成物では、必ずしも広いネマチック温度範囲とは言えず、必ずしも十分な応答速度とは言えず、また閾値電圧の温度依存性が良好なものとは言えなかった。しかしながら、本発明では、0.15〜0.33と大きなΔnにもかかわらず、TN-Iが80℃以上、T→ Nは-10℃以下と幅広いネマチック温度範囲を有し、閾値電圧の温度依存性が小さく、高速応答性を有することを特徴とする液晶組成物を提供するものである。
【0014】
さらに、本発明のネマチック液晶組成物は、捩れネマチック(TN)液晶表示素子、超捩れネマチック(STN)液晶表示素子に用いることができ、本発明はこのような液晶表示素子をも提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一例について説明する。
【0016】
本発明において、第1成分として一般式(I)で表される化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、1種〜10種が好ましく、1〜5種がさらに好ましい。一般式(I)で表される化合物は、Y1〜Y6はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表し少なくとも1つ以上はフッ素原子を表すが、Y1かY3のどちらか少なくとも一方がフッ素原子であることが好ましく、一般式(I-a)
【0017】
【化11】
で表される化合物がより好ましい。式中、R8は炭素原子数2〜8のアルキル基、アルコキシル基又はアルケニル基を表すが、炭素原子数2〜8のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、Y17〜Y19はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子であることが好ましい。一般式(I)および(I-a)の化合物の含有率が5〜40質量%の範囲であるが、5〜35質量%の範囲が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。第2成分として一般式(II)から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有するが、3種以上が好ましく、3種〜20種がさらに好ましく、4種〜15種が特に好ましい。一般式(II)の化合物の含有率が5〜70質量%の範囲であるが、10〜70質量%が好ましく、15〜65質量%の範囲であることがより好ましい。第3成分として、一般式(III)から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有するが、2種以上が好ましく、2種〜15種がさらに好ましく、3種〜10種が特に好ましい。Y8〜Y10はそれぞれ独立的に水素原子、フッ素原子又は−CH3を表すが、Y8、Y9は水素原子又はフッ素原子であることが好ましく、Y10は水素原子又は-CH3が好ましい。一般式(III)の化合物の含有率が5〜70質量%の範囲であるが、10〜60質量%が好ましく、15〜50質量%の範囲であることがより好ましい。第4成分として、一般式(IV)、(V)から選ばれる化合物を1種もしくは2種以上を含有するが、2種以上が好ましく、2種〜20種がさらに好ましく、3種〜15種が特に好ましく、その中に一般式(V)の化合物を少なくとも1種以上含むことがより好ましく、一般式(IV)および(V)からそれぞれ少なくとも1種以上含むことがさらに好ましい。R6、R7はそれぞれ独立的に炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数3〜8のアルケニルオキシ基、または炭素原子数1〜8のアルコキシル基で置換された炭素原子数1〜12のアルキル基を表すが、それぞれ独立的に炭素原子数1〜8のアルキル基またはアルコキシル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基であることが好ましく、それぞれ独立的に炭素原子数1〜8のアルキル基また炭素原子数2〜8のアルケニル基であることがより好ましい。Y11〜Y14はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表し少なくとも1つ以上はフッ素原子を表すが、少なくともY13がフッ素原子であることが好ましい。Z2は単結合又は-COO-を表すが、-COO-である一般式(IV-a)で表される化合物であることが好ましい。低い電圧で駆動させることを重視する場合、lおよびmは0であることが好ましく、広いネマチック温度域を重視する場合は、lおよびmは1であることが好ましい。一般式(IV)、(IV-a)および(V)の化合物の含有率が5〜40質量%の範囲であるが、5〜35質量%が好ましく、10〜30質量%の範囲であることがより好ましい。この液晶組成物はネマチック相上限温度が85℃以上であることを特徴とするが、90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(T→ N)が-10℃以下であることを特徴とするが、-15℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下が特に好ましい。Δnは0.15〜0.33の範囲であることを特徴とするが、0.18〜0.22が好ましく、0.20〜0.33が特に好ましい。
【0018】
本発明の液晶組成物は、上記の化合物以外に、通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有していてもよい。
【0019】
上記ネマチック液晶組成物はTN-LCD、STN-LCD、OCB-LCD、高分子分散型液晶表示素子、フェーズチェンジ型コレステリック液晶表示素子に有用であるが、TN-LCDおよびSTN-LCDに特に有用である。また、透過型あるいは反射型の液晶表示素子に用いることができる。
【0020】
本発明のTN液晶表示素子は目的に応じて、ねじり角を80°〜130°の範囲で選択することができ、85°〜115°が好ましい。本発明のSTN液晶表示素子は目的に応じて、ねじり角を180°〜270°の範囲で選択することができ、180°〜260°が好ましい。
【0021】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0022】
実施例中、測定した特性は以下の通りである。
η :20℃での粘度(mPa・s)
τ :TN-LCDに注入したときの25℃におけるレスポンス(msec)
(立ち上がり時間と立ち下がり時間の平均値)
dV/dT:閾値電圧の温度依存性(mV/℃)
dV/dT = (Vth(-20℃)−Vth(25℃))/(25−(-25))あるいは
dV/dT = (Vth(50℃)−Vth(25℃))/(50−25)
TN-LCD表示素子の作成は以下のように行った。ネマチック液晶組成物にカイラル物質「C-15」(メルク社製)を1質量%添加して混合液晶を調製し、セル厚が8.3μmのTN-LCD表示用セルに注入した。
【0023】
化合物記載に下記の略号を使用する。
側鎖
-n 数字 :-CnH2n+1 (アルキル側鎖は数字、代表するときはRとする。)
-On :-OCnH2n+1
-ndm :-(Cn-1H2(n-1)-CH=CH-(CH2)mH)
ndm- :CnH2n+1-CH=CH-(CH2)m-1-
連結基
-VO- :-COO- -T- :-C≡C-
置換基
-CN :-C≡N
環
Ph :1,4-フェニレン基 Ph1:3-フルオロ-1,4-フェニレン基
Ph2:2-メチル-1,4-フェニレン基 Cy :1,4-シクロヘキシレン基
Ma :ピリミジン-2,5-ジイル基
【0024】
(実施例1、比較例1及び比較例2)
ネマチック液晶組成物No.1を調製し、この組成物の諸特性を測定した結果を比較例1及び比較例2と共に表1に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例1において、一般式(I)の化合物である3-Ph-Ph1-Ph-CNを使用した液晶組成物No.1を作製した。その結果、一般式(I)の化合物である3-Ph-Ph1-Ph-CNを使用していない比較例1と比べると、閾値電圧の温度依存性dV/dTは、低温領域(-20〜25℃)においても、高温領域(25〜50℃)においても改善されていることがわかる。特に、低温領域では比較例1と比べ1/2以下になっており低温領域でのVthの上昇が大幅に抑えられている。このことから、低温領域で、室温と同一の駆動電圧を印加した場合、Vthの上昇の小さい液晶組成物No.1の方がはるかにコントラストが高いことがわかる。また、低温でのネマチック温度範囲が拡大しており、ネマチック液晶温度範囲の拡大効果がわかる。さらに、粘度ηの低減がはかられ、レスポンスτも改善されていることがわかる。一般式(III)で表される化合物を一切使用していない比較例2では、TN-Iが約70℃、T→ Nが-5℃とネマチック温度範囲が大幅に狭まっている。室温での粘度は低減されているが、T→ Nが上昇しているため、低温での応答速度が逆に遅くなっている。閾値電圧の温度依存性dV/dTも大幅に大きくなり、この場合、低温領域では室温と同一の駆動電圧を印加すると閾値電圧が上昇しているため、ほとんど表示できなかった。
【0027】
【発明の効果】
本発明のネマチック液晶組成物は、高Δn、低粘度の液晶組成物であり、高速応答性を有する液晶組成物であり、更には閾値電圧の温度依存性を良好にし、広い温度域で高いコントラスト特性を達成することを可能としたものである。液晶表示素子にこのような液晶組成物を使用した場合、広い温度範囲で高いコントラスト比、高速レスポンスを有するの液晶表示素子(TN-LCD、STN-LCD)を提供することができる。
Claims (6)
- 第1成分として、一般式(I−a)
- 一般式(I−a)の化合物を1種又は2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%の範囲であり、かつ一般式(II)の化合物を1種又は2種以上を含有し、その含有率が5〜70質量%の範囲であり、かつ一般式(III)の化合物を1種又は2種以上を含有し、その含有率が5〜70質量%の範囲であり、なおかつ一般式(IV−a)の化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の液晶組成物。
- 第1成分として、一般式(I−a)の化合物を1種又は2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%の範囲であり、第2成分として、一般式(II)の化合物を1種又は2種以上を含有し、その含有率が5〜70質量%の範囲であり、第3成分として、一般式(III)の化合物を1種又は2種以上を含有し、その含有率が5〜70質量%の範囲で、第4成分として、一般式(IV−a)の化合物を1種もしくは2種以上を含有し、その含有率が5〜40質量%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いた液晶表示素子。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いた、ねじれ角が80°〜130°であることを特徴とする捩れネマチック(TN)液晶表示素子。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶組成物を用いた、ねじれ角が180°〜270°であることを特徴とする超捩れネマチック(STN)液晶表示素子。
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