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JP5079225B2 - マグネシウムシリサイド粒を分散した状態で含むマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を製造する方法 - Google Patents

マグネシウムシリサイド粒を分散した状態で含むマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を製造する方法 Download PDF

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Description

本発明は、マグネシウムシリサイド粒を分散した状態で含むマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を製造する方法に関する。
マグネシウムは比重が低く、いわゆる軽合金の製造に広く使用されている。そして、このマグネシウムを基礎とした合金にマグネシウムシリサイド(MgSi)粒を分散状態で存在させることにより、マグネシウム合金の機械的性質が向上することが知られている。また、マグネシウムシリサイド粒の平均粒径が小さくなる程、上記機械的性質が向上し、マグネシウムシリサイド粒の平均粒径が10μm以下になると、非常に良好な機械的性質を有するマグネシウム合金が得られるようになる。
マグネシウムシリサイド粒は、例えば珪素が溶解したマグネシウムを凝固させるとマグネシウム金属中に形成される。一方、マグネシウムは融点が約651℃、また沸点が約1090℃である。そして、マグネシウムに珪素を10質量%添加すると、融点が約880℃まで高くなるが、沸点は1090℃からほとんど変わらず、このため液体状態で存在する温度範囲が非常に狭くなる。そして、液体状態での粘性が高いものとなる。このため、珪素が5〜10質量%溶解したマグネシウム溶湯は、通常の方法で鋳造等することが困難であり、また、たとえ鋳造等を行ったとしても溶湯の凝固速度が遅いものとなる。従って、内部に形成されるマグネシウムシリサイド粒の粒径が100μm以上に成長し、マグネシウム合金の機械的性質の飛躍的な向上は望めない。このことは、マグネシウム合金を半溶融状態で、そのまま射出成形した場合でも同様である。
このため、マグネシウム合金に微細なマグネシウムシリサイド(MgSi)粒を分散させるための種々の技術開発が行われてきた。
特許文献1には、鋳造法においてマグネシウム合金に10μm以下の径の微細なマグネシウムシリサイド粒を分散した状態で発生させる技術が開示されている。同文献に開示された技術は、予備成形体に珪素粒子を添加し、この予備形成体に溶解したマグネシウム合金を鋳込んで鋳造するとういものである。これにより珪素粒子とマグネシウム合金がin-situ反応(珪素粒子とマグネシウム合金が、その場で反応すること)し、微細なマグネシウムシリサイド粒が形成される。
特許文献2には、マグネシウム合金中にマグネシウムシリサイド粒を分散させる他の技術が開示されている。同文献に開示された技術は、各種金属粉末等を原料とし、原料粉末の粒度等の処理、圧縮成形、焼結等の過程を経て種々の材料を製造する、いわゆる粉末冶金法に適用されるものである。そして、同文献に開示された技術では、先ずマグネシウム及びアルミニウムを含む粉末と珪素粉末との混合粉末をボールミル等を使用して製造している。次に、この混合粉末を圧粉固化し、この後、圧粉固化した混合粉末の固化体を不活性雰囲気中で加熱する。この加熱により、マグネシウムと珪素との間に固相反応を起こし、マグネシウムシリサイドを生成している。更にこの固化体を温間塑性加工して緻密化させ、これにより粒径が1〜30μmのマグネシウムシリサイド粒をマグネシウム合金中に得るというものである。このように、マグネシウム等を溶解することなく微細なマグネシウムシリサイド粒を内部に分散させている。また、同文献では、アルミニウムを含まないマグネシウム合金中にマグネシウムシリサイド粒を生成する方法も開示されている。
特開2000−17352号公報 特開2004−225080号公報
特許文献1等に開示された鋳造法等による技術では、上述のように材料中に形成されるマグネシウムシリサイド粒を微細化するために、所定の微細化手段を別に施す必要があり、マグネシウム合金の製造が手間のかかるものとなる。また、溶湯の粘性等のため、製品の大きさや形状によっては、鋳造等することが困難になる場合がある。更に、溶湯の凝固の過程で析出する初晶等の影響により、合金組織が粗大となり、一定値以上の強度を得ることが困難になる。
特許文献2に開示された技術では、マグネシウム粒子と珪素粒子との間に固相反応させる必要がある。すなわち、マグネシウムシリサイドが分散したマグネシウム合金を製造するために、マグネシウムと珪素という少なくとも2種類の原料粉末を取り扱う必要がある。また各種原料粉末を均一に混合する必要も生じる。このように、同文献に開示された技術では、マグネシウム合金を製造する前段階の処理と扱いに手間がかかるものとなる。そして、通常固相反応によって珪素を完全にマグネシウムシリサイドに転化することは困難であり、数%〜数十%のSiが未反応の状態で残る場合もある。
更に、特許文献2に開示された技術では、マグネシウム、珪素等の原料粉末を混合するのにボールミル等を使用する必要がある。従って、上記原料粉末はいずれも略球形状にはならない。ここで、粉末冶金法において、原料となる粉末の粒度分布を調整等する、いわゆる粉末処理は、後の圧縮成型において良好な圧縮性を得る上で、非常に重要な処理である。しかし、粒子が不規則な形状を有していると、良好な圧縮性が得られない場合がある。また、粉末の分級や混合等に手間がかかる場合もある。
本発明の目的は、内部にその粒径が10μm以下の微細なマグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した略球形状のマグネシウム系金属粒子で構成される金属粉末を容易且つ安価に製造する方法を安価に提供することにある。
請求項1に記載の金属粉末を製造する方法は、内部に、平均粒子径が10μm以下のマグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した略球形状のマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を製造する方法において、貯留容器を不活性気体で置換し、前記金属粉末を製造するための原料を固体状態で前記貯留容器に装入し、当該原料を不活性気体雰囲気で加熱溶解し、これによりマグネシウムを90〜95質量%、珪素を5〜10質量%含む溶湯を、不活性気体雰囲気下において貯留容器に貯留し、該溶湯の凝固温度を超過し、且つ上記溶湯の沸騰温度未満である940℃〜960℃の範囲の一定温度に保持し、上記貯留容器の内部圧力を上昇させて、上記貯留容器の外部との差を0.4バール以上とし、上記貯留容器の前記溶湯を貯留する部位に設けられ、その開口径が1.0〜2.0mmの範囲である流出孔から上記溶湯を流出させ、上記流出孔から流出する上記溶湯に衝突気体を衝突させて、該溶湯を、平均粒径が40〜100μmの粒子状に飛散させつつ凝固させることを特徴とする。
請求項2に記載の金属粉末を製造する方法は、内部に、平均粒子径が10μm以下のマグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した略球形状のマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を製造する方法において、貯留容器を不活性気体で置換し、前記金属粉末を製造するための原料を固体状態で前記貯留容器に装入し、当該原料を不活性気体雰囲気で加熱溶解し、これによりマグネシウムを80〜94質量%、珪素を5〜10質量%、アルミニウムを1〜10質量%含む溶湯を、不活性気体雰囲気下において貯留容器に貯留し、該溶湯の凝固温度を超過し、且つ上記溶湯の沸騰温度未満である940℃〜960℃の範囲の一定温度に保持し、上記貯留容器の内部圧力を上昇させて、上記貯留容器の外部との差を0.4バール以上とし、上記貯留容器の上記溶湯を貯留する部位に設けられ、その開口径が1.0〜2.0mmの範囲である流出孔から上記溶湯を流出させ、上記流出孔から流出する上記溶湯に衝突気体を衝突させて、該溶湯を、平均粒径が40〜100μmの粒子状に飛散させつつ凝固させることを特徴とする。

請求項3に記載の金属粉末を製造する方法は、請求項1又は2の何れかに記載の方法であって、上記貯留容器に貯留された前記溶湯が攪拌されることを特徴とする。
請求項4に記載の金属粉末を製造する方法は、請求項1又は2の何れかに記載の方法であって、上記攪拌は、ガス吹き込みにより行われることを特徴とする。
請求項1に記載の方法の発明は、流出する溶湯に衝突気体を衝突させて金属粉末を製造する、いわゆる「アトマイズ法」を適用したものである。珪素を5〜10質量%含んだマグネシウムの溶湯は高い粘性を有するが、貯留容器の内部圧力を上昇させることによって、流出孔から溶湯が流出する。そして、衝突気体によって粒子状に飛散した溶湯が急冷、凝固することによって、内部に平均粒径が1〜10μmの微細なマグネシウムシリサイト粒がほぼ均一に分散したマグネシウム系金属粒子が得られる。従って、このマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を容易且つ安価に製造できる。
また、上記溶湯温度とすることにより、貯留容器内部の溶湯温度の制御範囲内での変動に対し、溶湯が沸騰しない範囲で粘性の変化を小さくできる。そして、流出孔の開口径を上記範囲とすることにより、上記粘性の変化、貯留容器内の制御範囲内での圧力変化に対し、溶湯の流出速度の変化が小さい、安定した状態で溶湯を流出させることができる。従って、衝突気体の衝突により粒子状に飛散する溶湯の大きさの変動を小さくできる。すなわち、マグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した、マグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を、粒子径のばらつきが少ない、安定した状態で製造することができる。
更に、内部圧力とする事により、通常ガスアトマイズ時に上昇させる内部圧力が0.3バール以下では流出しなかった溶湯を、流出可能とした。これにより、マグネシウムシリサイド粒がほぼ均一且つ微細に分散した、マグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を、粒子径のばらつきが少なく、安定した状態で製造することができる。
そして、金属粉末から金属材料を製造する粉末冶金法において、マグネシウムシリサイド粒が均一に分散したマグネシウム系金属材料を製造するのに、単一の金属粉末を扱えば良いことになる。従って、マグネシウム粉末や珪素粉末等の複数の原料粉末を扱い、また混合するという手間が省略される。更に、上記マグネシウム系金属粒子が略球形状を有しているため、金属粉末を加圧したときに、各粒子が密な状態で充填されやすくなる。従って、金属粉末の圧縮成型において、粒子が不規則な形状を有する場合と比較して良好な圧縮性を得ることができる。そして、圧縮成型した材料を焼結しさらに鍛造することによって、微細なマグネシウムシリサイド粒が均一に分散した、従って機械的性質に優れたマグネシウム系金属材料を製造することができる。
請求項に記載された方法は、請求項に記載の方法と同様、金属粉末の製造に「アトマイズ法」を適用したものである。そして、内部に平均粒径が1〜10μmの微細なマグネシウムシリサイト粒がほぼ均一に分散した平均粒径が40〜100μmのマグネシウム系金属粒子が得られる。そして、溶湯にアルミニウムを含めることにより、マグネシウム系金属材料の使用目的等に応じた機械的性質の調整が可能となる。そして、このマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を容易且つ安価に製造できる。
請求項3に記載された方法により、貯留容器に貯留された前記溶湯を均一に維持することが容易になる。
請求項4の発明は、請求項3に記載された攪拌を行う手段を具体的に限定したものである。
請求項に記載された高周波誘導電気炉を貯留容器として使用することにより、大量の溶湯を貯留容器内部に一定温度で保持することができる。従って、大量の金属粉末を連続的に製造することが可能になる。
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態にかかる金属粉末を構成するマグネシウム系金属粒子の内部状態を説明した図である。同図に示したマグネシウム系金属粒子10は、図中記号Aで表された平均粒子径が40〜100μmであり、その形状は略球形状である。そして、マグネシウム系金属粒子10の組成は、マグネシウムを90〜95質量%、珪素を5〜10質量%含んだものである。
このマグネシウム系金属粒子10は、マグネシウム系金属粒子10全体に広がったマグネシウム12とマグネシウム12中に分散状態で存在する微細なマグネシウムシリサイド粒14で実質的に形成されている。ここで、マグネシウムシリサイド粒14とは、マグネシウム系金属粒子10内に存在し、主にマグネシウムシリサイドで形成されたほぼ均一な組成を有する、粒状の固体を表す。また、マグネシウムシリサイド粒14はマグネシウムと珪素が反応したものでMgSiの化学式を有している。本実施の形態では、マグネシウムシリサイド粒14は、図中記号Bで表した平均粒径が1〜10μmの大きさとなっている。そして、マグネシウムシリサイド粒14の分散状態は、マグネシウム系金属粒子10内にほぼ均一なものとなっている。
上記構成を有するマグネシウム系金属粒子10からなる金属粉末は、この金属粉末を使用して、例えばいわゆる「粉末冶金法」により、マグネシウム系合金材料を製造するものである。そして、上記製造されたマグネシウム系合金材料は、微細なマグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した、従って機械的特性、例えば高温疲労強度が非常に優れたものとなる。
また、本実施の形態にかかる金属粉末を使用することにより、マグネシウムシリサイド粒が均一に分散したマグネシウム系金属材料を形成するのに、単一の金属粉末を扱えば良いことになる。従って、粉末冶金法においてマグネシウム粉末や珪素粉末等の複数の原料粉末を扱い、また均一に混合して金型等に充填するという手間が省略される。
更に、上記マグネシウム系金属粒子が略球形状を有しているため、金属粉末を加圧したときに、各粒子が密な状態で充填されやすくなる。従って、金属粉末の圧縮成型において、粒子が不規則な形状を有する場合と比較して良好な圧縮性を得ることができる。そして、圧縮成型した材料を焼結しさらに鍛造することによって、微細なマグネシウムシリサイド粒が均一に分散した、従って機械的性質に優れたマグネシウム系金属材料を製造することができる。
また、上記マグネシウム系金属粒子10の組成について、マグネシウムを80〜94質量%、珪素を5〜10%質量、アルミニウムを1〜10質量%有するものとしても良い。これにより、マグネシウムとアルミニウムの合金中にマグネシウムシリサイド粒14が均一に分散したマグネシウム系金属粒子10を得ることができる。そして、アルミニウム含有量を調整することにより、マグネシウム系金属材料の使用目的等に応じた機械的性質の調整が可能となる。また、この場合においても金属粉末の取り扱い性や、圧縮成型性等については、マグネシウムを90〜95質量%、珪素を5〜10質量%含んだ組成のものと同様の効果が得られる。
図2は、本発明にかかる金属粉末を製造する装置を説明した図である。同図に示した金属粉末を製造する装置20は、流出する溶湯に衝突気体を衝突させて溶湯を微粒子状に飛散させ、凝固させて金属粉末を製造する、いわゆる「アトマイズ法」に使用される装置を応用したものである。なお、「衝突気体」とは、流出する溶湯を飛散させるために、溶湯に向けて噴射する気体を意味する。この装置20を使用することにより、珪素を5〜10質量%含む上記溶湯を安定してアトマイズ化(atomize)し、例えば、図1に示した実施の形態にかかる金属粉末を安定して製造することができる。
図中、符号22は、溶湯32を貯留する貯留容器22である。貯留容器22の内部38は図示しない蓋が設けられ、密閉可能となっており、更に所定の範囲で任意の圧力に制御可能となっている。また、貯留容器22には温度計が設けられており、貯留された溶湯32の温度を測定できるようになっている。貯留容器22に貯留された溶湯32は、貯留容器22の周囲に設けられた高周波コイル26により、一定温度に加熱、保持される。貯留容器22の溶湯32を貯留する部位、本実施の形態では底部には、流出孔28が開口して設けられており、流出孔28から溶湯32が流出する。流出孔28には、図示しないヒーターが設けられており、任意の温度に加熱でき、従ってこの部位での溶湯の凝固が防止される。符号24はストッパー24であり、ストッパー24を上下させることにより、流出孔28が閉又は開状態となる。流出孔28の近傍には噴射器30が設けられており、噴射器30から衝突気体、例えばアルゴンガスを噴射し、流出孔28から流出する溶湯32に衝突気体を衝突させる。この衝突により、溶湯32を粒子状に飛散させつつ凝固させ、そして金属粉末34を得る。
なお、貯留容器22には、内部に貯留した溶湯を均一に攪拌する攪拌機構を設けても良い。攪拌機構は、例えば機械的攪拌手段の他、ガス吹き込みによる攪拌手段が例示される。また、貯留容器22及び高周波コイル26等は、いわゆる高周波誘導電気炉として構成することも可能である。高周波誘導電気炉は、一度に比較的大量の溶湯を一定温度に保持可能であり、従って、金属粉末の効率的な製造が可能となる。更に、貯留器22の全体質量を連続的に秤量する秤量器を備えても良い。これにより、貯留器22の質量変化から金属粉末製造過程における溶湯32の流出速度と溶湯32の残量を連続的に計算し正確に把握でき、種々の対応が可能となる。
図3(a)〜(c)は、図2に示した装置20を使用して、図1に示した実施の形態にかかる金属粉末を製造する手順を説明した図である。先ず、ストッパー24で流出孔28を閉じた状態とする。次に、貯留容器22内に固体状態のマグネシウムと珪素を所定の割合で混合した原料31を装入し、更に貯留容器22内部を不活性気体、例えばアルゴンガスで置換し、不活性気体雰囲気とする。そして、高周波コイル26により、貯留容器22において原料31を加熱溶解して溶湯32とし、必要に応じて溶湯32を均一に攪拌する。ここで溶湯32の組成は、マグネシウムを90〜95質量%、珪素を5〜10質量%有するものである。そして、貯留容器22において溶湯32の温度を測定しつつ、加熱状態を制御し、溶湯32を、その凝固温度を超過し、且つ沸騰温度未満の一定温度、例えば、約950℃に保持する(装入、保持工程、図3(a))。この装入、保持工程は、別の容器で溶湯32を製造し、これを貯留容器22に装入するようにしても良い。
次に、貯留容器22内部を昇圧可能な密閉状態とする。そして、貯留容器22内部圧力を貯留容器22の外部40の圧力よりも一定値以上に上昇させる。この上昇に伴い、流出孔28をヒーターで加熱する。更に、噴射器30からアルゴンガス(衝突気体)を噴射し、溶湯32の流出準備をする(昇圧、準備工程、図3(b))。
昇圧、準備工程終了後、ストッパー24を下げ、流出孔28を開の状態とし、流出孔28から溶湯32を流出させる。このように、貯留容器22の内部圧力を所定値にまで上昇させることによって、高い粘性を有する溶湯32を、流出孔28から流出させることができる。そして流出する溶湯32にアルゴンガスを衝突させて、溶湯32を、平均粒径が40〜100μmの粒子状に飛散させつつ凝固させ、金属粉末34を製造する(製造工程、図3(c))。金属粉末34を構成するマグネシウム系金属粒子は内部に1〜10μmの径を有するマグネシウムシリサイト粒が微細にそしてほぼ均一に分散した状態となる。すなわち本実施の形態にかかる方法により、図1に示したマグネシウム系金属粒子10が得られる。
一定量以上の金属粉末34を製造した後、ストッパー24で流出孔28を閉の状態とし、内部38の圧力を下げ、噴射器30からの噴射を止め、次の装入、保持工程を行う。このように、マグネシウムシリサイト粒が微細に分散したマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を容易且つ安価に製造できる。
ここで、貯留容器22内で保持する溶湯32の一定温度としては、940℃〜960℃、流出孔の開口径としては1.0〜2.0mmが例示できる。溶湯32を上記範囲とすることにより、貯留容器22内部の制御範囲内での温度変動に対し、溶湯が沸騰しない範囲で溶湯32の粘性の変化を小さくできる。そして、流出孔28の開口径を1.0〜2.0mmとすることにより、上記粘性の変化、更に貯留容器22内の制御範囲内での圧力変化に対し、流出速度の変化が小さい、安定した状態で溶湯32を流出させることができる。従って、衝突気体の衝突により粒子状に飛散する溶湯32の大きさの変動を小さくできる。すなわち、微細なマグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した、マグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を、粒子径のばらつきが少ない、安定した状態で製造することができる。
なお、図3に示した方法で使用する溶湯32について、マグネシウムを80〜94質量%、珪素を5〜10%質量、アルミニウムを1〜10質量%含むものを使用しても良い。これによっても、内部に平均粒径が1〜10μmの微細なマグネシウムシリサイト粒がほぼ均一に分散した平均粒径が40〜100μmのマグネシウム系金属粒子が得られる。そして、溶湯32にアルミニウムを含めることにより、マグネシウム系金属材料の使用目的等に応じた機械的性質の調整が可能となる。
なお、図3(c)に示した製造工程において、上述した秤量器で、溶湯32の流出速度、従って金属粉末34の製造速度を連続的に、例えば30秒毎に計算表示することも可能である。そして、この流出速度が所定範囲以上に急激に変化した時に上記製造工程を緊急停止する緊急停止工程を任意に設けても良い。
また、衝突気体の流量等を変更することにより、100μm以上の粒径、例えば200〜600μmの平均粒径を有するマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を製造することも可能である。この場合であっても、内部にマグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した状態となる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、図3に示した方法において、貯留容器22内で保持する溶湯32の一定温度を970℃としても良い。
次に、図1に示した実施の形態にかかる金属粉末を使用して、自動車用部品を製造する方法について説明する。本方法によれば、粉末冶金法により、上記金属粉末から自動車用部品を容易且つ迅速に製造することができる。
先ず、金属粉末を所定の粒度分布に処理する(粉末処理工程)。この処理は、例えば粉末の分級や、異なる平均粒径を有するマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末同士をブレンドすることによって行われる。次に、粉末処理工程で処理された金属粉末を金型内に充填して圧縮成形し、粉末成形体を形成する(圧縮成型工程)。この圧縮成型工程で、金属粉末を構成する粒子が塑性変形を起こし、そして粉末成形体を形成する。
次に、粉末成形体を、該粉末成形体の融点以下の温度で加熱し、上記粉末成形体を構成する粉末粒子相互間を結合させて、焼結体を形成する(焼結工程)。この工程において、材料の強度が向上し、更にち密化が図られる。焼結工程の後、焼結体を加熱して鍛造する(鍛造工程)。一般に焼結体は多孔質であるが、この鍛造工程により、焼結体に形成された空隙を無くし、靱性等を高めることができる。
このように、図1に示した実施の形態にかかる金属粉末を使用して、軽量で優れた機械的性質を有する自動車用部品を容易且つ安価に製造できる。従って、自動車の軽量化及び部品の取り扱いの容易化が図られる。
また、本実施の形態にかかる方法により、自動車のエンジンに使用されるピストンも製造可能である。本実施の形態にかかる方法で製造されたピストンは、約300℃での高温度疲労強度に対し、優れた機械的性質を有し、そして、軽量であるため、エンジンにかかる付加を軽くすることができる。
図2に示した装置20を使用し、図3に示した手順で金属粉末を製造した。流出孔28の開口径は1.5mmであった。図4は、本実施例の実施条件と結果を表にして表したものである。溶湯32(図4に示した表の材料の組成)は2種類について行った。同図に示すように、何れも貯留容器22の内圧(貯留容器22の外部40(図示しないアトマイズチャンバ)と内部38(図示しない溶解チャンバ)の圧力差)が0.3バール以下では、溶湯32の粘性のため、溶湯32が流出孔28から流出しなかった(表1の×印)。そして、内圧を0.4バール以上にまで昇圧した時に、溶湯32が流出孔28から流出した(表1の○印)。溶湯32の流出速度に従って、噴射器30から噴出するアルゴンガス(衝突気体)流量を適宜調整し、これにより金属粉末が安定して得られた。得られた金属粉末を構成するマグネシウム系金属粒子の平均粒径は約50μm、マグネシウムシリサイド粒の平均粒径は約5μmであった。
実施例1で製造した金属粉末を使用し、粉末冶金法により、粉末処理工程、圧縮成型工程、焼結工程、鍛造工程の各工程を経て、自動車のエンジンに使用されるピストンを製造した。製造したピストンは、300℃での高温疲労強度について、25±25MPa〜35±35MPaの範囲を確保するものであった。このように、上記金属粉末から自動車用部品を容易且つ安価に製造可能であった。
本発明の実施の形態にかかる金属粉末を構成するマグネシウム系金属粒子の内部状態を説明した図である。 本発明にかかる金属粉末を製造する装置を説明した図である。 図2に示した装置を使用して、図1に示した実施の形態にかかる金属粉末を製造する手順を説明した図である。(a)は、装入、保持工程、(b)は、昇圧、準備工程、(c)は、製造工程を説明した図である。 実施例の実施条件と結果を表形式にして表した図である。
10 マグネシウム系金属粒子
12 マグネシウム
14 マグネシウムシリサイド粒
20 装置
22 貯留容器
24 ストッパー
26 高周波コイル
28 流出孔
30 噴射器
32 溶湯
34 金属粉末

Claims (5)

  1. 内部に、平均粒子径が10μm以下のマグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した略球形状のマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を製造する方法において、
    貯留容器を不活性気体で置換し、前記金属粉末を製造するための原料を固体状態で前記貯留容器に装入し、当該原料を不活性気体雰囲気で加熱溶解し、これによりマグネシウムを90〜95質量%、珪素を5〜10質量%含む溶湯を、不活性気体雰囲気下において貯留容器に貯留し、該溶湯の凝固温度を超過し、且つ前記溶湯の沸騰温度未満である940℃〜960℃の範囲の一定温度に保持し、
    前記貯留容器の内部圧力を上昇させて、前記貯留容器の外部との差を0.4バール以上とし、
    前記貯留容器の前記溶湯を貯留する部位に設けられ、その開口径が1.0〜2.0mmの範囲である流出孔から前記溶湯を流出させ、
    前記流出孔から流出する前記溶湯に衝突気体を衝突させて、該溶湯を、平均粒径が40〜100μmの粒子状に飛散させつつ凝固させることを特徴とする金属粉末を製造する方法。
  2. 内部に、平均粒子径が10μm以下のマグネシウムシリサイド粒がほぼ均一に分散した略球形状のマグネシウム系金属粒子からなる金属粉末を製造する方法において、
    貯留容器を不活性気体で置換し、前記金属粉末を製造するための原料を固体状態で前記貯留容器に装入し、当該原料を不活性気体雰囲気で加熱溶解し、これによりマグネシウムを80〜94質量%、珪素を5〜10質量%、アルミニウムを1〜10質量%含む溶湯を、不活性気体雰囲気下において貯留容器に貯留し、該溶湯の凝固温度を超過し、且つ前記溶湯の沸騰温度未満である940℃〜960℃の範囲の一定温度に保持し、
    前記貯留容器の内部圧力を上昇させて、前記貯留容器の外部との差を0.4バール以上とし、
    前記貯留容器の前記溶湯を貯留する部位に設けられ、その開口径が1.0〜2.0mmの範囲である流出孔から前記溶湯を流出させ、
    前記流出孔から流出する前記溶湯に衝突気体を衝突させて、該溶湯を、平均粒径が40〜100μmの粒子状に飛散させつつ凝固させることを特徴とする金属粉末を製造する方法。
  3. 前記貯留容器に貯留された前記溶湯が攪拌されることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の方法。
  4. 前記攪拌は、ガス吹き込みにより行われることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記貯留容器が、高周波誘導電気炉であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属粉末を製造する方法。
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