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JP5077194B2 - スクロール膨張機 - Google Patents

スクロール膨張機 Download PDF

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本発明は固定スクロールと旋回スクロールを噛み合わせて膨張室を形成し、その膨張室の容積変化により、吸入、膨張、吐出を行うスクロール膨張機に関するものである。
従来、この種のスクロール膨張機の構成と類似しているスクロール圧縮機を用いて背景技術を説明する。スクロール圧縮機の環状シール部材としては、環状シール部材の漏れを最小限にするための様々な工夫が盛り込まれていた(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のものでは、環状シール部材は、旋回スクロールの反ラップ側に対向した主軸受部材中央部の端面に設けた環状溝に嵌合装着しており、その環状シール部材は、合口部を有するリング状である。この合口部は、スクロール圧縮機の運転時に吐出圧力による高圧が作用することによって、合口部がスライドして環状溝の外周方向への密着性を増して、環状シール部材の漏れを防止する役割を果たしている。また、合口の切断面に対して垂直方向の隙間(図3の隙間D’)とシール部材の周方向の長さとの比を0.002〜0.005として幅規制することにより、スクロール圧縮機の性能を高めることができる。
特開平10−196560号公報
上記構成のスクロール圧縮機の性能向上理由について考察する。合口の切断面に対して垂直方向の隙間とシール部材の周方向の長さとの比を0.002〜0.005として幅規制する場合、シール部材からの潤滑油の漏れが吸入過程に流れ込み、圧縮過程でのシール効果を増して圧縮機の性能を高めていると予想される。しかしながら、スクロール膨張機に適応する場合には、シール部材からの潤滑油の漏れは吐出過程に流れ込むので、冷凍サイクル装置から見れば、作動流体中のオイル濃度を増大させて、蒸発器の熱交換性能を低下させる。また、スクロール膨張機単体として見ても、シール部材からの潤滑油の漏れは
、膨張過程でのシール効果を増すことはない。つまり、合口の隙間とシール部材の周方向の長さとの比の最適値は、圧縮機と膨張機では異なると予想される。更に、スクロール膨張機の潤滑油を圧縮機から過不足無く供給される構成にした場合、シール部材から潤滑油の漏れが多いと、圧縮機から膨張機へと潤滑油を通して熱が移動して、冷凍サイクル装置の放熱器の熱量を低下させるといった問題を有していた。
したがって本発明は、前記従来の課題を解決するもので、シール部材からの潤滑油の漏れを確実に防止して、高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明のスクロール膨張機は、 圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された作動流体を冷却する放熱器と、前記作動流体を蒸発させる蒸発器と、これらの間に前記作動流体を循環させる配管とを有する冷凍サイクル装置に用いられ、鏡板から渦巻きラップが立ち上がる固定スクロール及び旋回スクロールを噛み合わせて膨張室を形成し、前記旋回スクロールを自転規制機構による自転の規制のもとに旋回させたときに、前記膨張室が容積を変えながら移動することで、前記放熱器の出口から前記作動流体を吸入し、膨張させ、吐出して、前記蒸発器の入口へ送り出すスクロール膨張機であって、
前記旋回スクロールの反ラップ側と、これに対向した主軸受部材中央部の端面との間に、中心部と外周部とを仕切る環状なシール部材を配置し、前記中心部に高圧の前記作動流体あるいは高圧に保たれた潤滑油を供給し、且つ、前記シール部材に合口を設け、前記合口の隙間Dと前記シール部材の周方向の長さLとの比D/Lを0.007以下とし
前記シール部材の径方向の幅Tと前記シール部材の周方向の長さLとの比T/Lを0.015以上とし、
前記主軸受部材及び旋回スクロールを金属系材料で、シール部材を樹脂系材料で構成し、
前記シール部材の合口の隙間が、半径方向に対して角度αをもった直線部で構成され、
前記作動流体としての冷媒を二酸化炭素としたものである。
これによって、D/Lを0.007以下としているので、シール部材からの潤滑油の漏れを効果的に防いで、高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することができる。
本発明のスクロール膨張機によれば、旋回スクロールの反ラップ側と、これに対向した主軸受部材中央部の端面との間に、中心部と外周部とを仕切る環状なシール部材を配置し、中心部に高圧の作動流体あるいは高圧に保たれた潤滑油を供給し、且つ、シール部材に合口を設け、合口の隙間Dとシール部材の周方向の長さLとの比D/Lを0.007以下としているので、起動時から所定時間経過後の安定運転時においてシール部材からの潤滑油の漏れを効果的に防いで、高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することができる。
特に高圧・低膨張比冷媒である二酸化炭素冷媒を冷凍サイクルの膨張要素として用いた場合に、高効率を実現することができる。
発明は、旋回スクロールの反ラップ側と、これに対向した主軸受部材中央部の端面との間に、中心部と外周部とを仕切る環状なシール部材を配置し、中心部に高圧の作動流体あるいは高圧に保たれた潤滑油を供給し、且つ、シール部材に合口を設け、合口の隙間D
とシール部材の周方向の長さLとの比D/Lを0.007以下としたものである。本構成によれば、D/Lを0.007以下としているので、シール部材からの潤滑油の漏れを効果的に防いで、高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるスクロール膨張機の断面図、図4は同スクロール膨張機を備えた冷凍サイクル装置の回路構成図である。
図1および図4において、本実施の形態1のスクロール膨張機50では、クランク軸4の主軸部4aを軸支するように密閉容器1内に溶接や焼き嵌めなどにて固定した主軸受部材11と、この主軸受部材11上にボルト止めした固定スクロール12との間に、固定スクロール12と噛み合う旋回スクロール13を挟み込んで、スクロール式の膨張機構部2を構成している。そして、旋回スクロール13と主軸受部材11との間に、旋回スクロール13の自転を防止して円軌道運動するように案内するオルダムリングなどからなる、自転規制機構14を設けている。
上記構成において、クランク軸4の上端にある偏心軸部4bにて旋回スクロール13を偏心駆動することにより、旋回スクロール13を円軌道運動させる。これにより、固定スクロール12の固定ラップ12Xと旋回スクロール13の旋回ラップ13Xとの間に形成している膨張室15が中央から外周に移動するとともに、膨張室15の容積が大きくなる。その容積変化を利用して、密閉容器1外に通じた吸入パイプ16から固定スクロール12の中央部の吸入口17を経て吸入した作動流体(以下、冷媒)を膨張する。
そして、膨張して所定圧以下になった冷媒を固定スクロール12の外周側の吐出パイプ18から密閉容器1外に吐出させる。このように、スクロール式の膨張機構部2において、冷媒の吸入と膨張と吐出とが繰り返される。
また、クランク軸4の他端側は副軸受部材21によって支持され、クランク軸4の他端側の先端には容積型ポンプ25を備えている。潤滑油6は、潤滑油溜まり20から容積型ポンプ25はクランク軸4の軸方向の中心に設けられた給油経路(図示せず)を経て、主軸受部11a、偏心軸受部11bを潤滑および冷却した後、潤滑油戻し孔26を経て、再循環を行う。なお、旋回スクロール13の反ラップ側の旋回ボス部13aの先端面に、中心部13bと外周部13cとを仕切るシール部材5を設け、このシール部材5を主軸受部材11の旋回スクロール13の反ラップ側の旋回ボス部13aの先端面と対向する面に設けた溝30に嵌合装着している。
また、密閉容器1内は均圧管40を通して圧縮機7と連通しており、密閉容器1内の圧力は高圧に保たれている。同時に密閉容器1内の潤滑油溜まり20は圧縮機7の潤滑油溜まり(図示せず)と連通しており、潤滑油6は過不足なく圧縮機7と密閉容器1内に供給されるようになっている。
このとき、シール部材5は偏心軸受部11bに到達した潤滑油6の圧力と背圧室29の圧力とを仕切る役割を持っているので、シール部材5で仕切られた中心部13b側は高圧に保たれている。また、背圧室29は、吐出される冷媒と圧力的に連通しており低圧に保たれている。シール部材5から漏れた潤滑油6は、自転規制機構14を潤滑した後、吐出される冷媒とともに密閉容器1外へと吐出される。
図2は本実施の形態1のスクロール膨張機のシール部材を上面から見た平面図、図3は本実施の形態1のスクロール膨張機のシール部材の合口部を拡大した側面図である。図2及び図3に示されているように、本実施の形態1のスクロール膨張機50ではシール部材5に合口部5aが設けられている。また、シール部材5を溝30に嵌合装着したときの状態(運転前)で、合口部5aの隙間Dとシール部材の周方向の長さLとの比D/Lを0.007以下としている。
また図4に示すように、圧縮機7と、圧縮機7により圧縮された冷媒を冷却する放熱器8と、スクロール膨張機50と、スクロール膨張機50により膨張させた冷媒を蒸発させる蒸発器9と、これらの間に冷媒を循環させる配管10とを有する冷凍サイクル装置にあっては、放熱器8の出口からの冷媒を、スクロール膨張機50の吸入パイプ16を経て、膨張機構部2に吸入して膨張させ、吐出パイプ18を経て、蒸発器9の入口へ送り出すことになる。
このとき、冷凍サイクル装置に搭載されるスクロール膨張機50を考えると、シール部材5からの潤滑油6の漏れは吐出過程に流れ込むので、冷媒中のオイル濃度を増大させて、蒸発器の熱交換性能を低下させる。つまり、シール部材5からの潤滑油6の漏れは少ないほど良い。これは、シール部材5からの潤滑油6の漏れが、圧縮過程でのシール効果を増して性能を高めているスクロール圧縮機の場合とは異なる。
次に、合口部5aの隙間Dとシール部材5の周方向の長さLとの比D/Lを0.007以下とした理由について説明する。図5にD/Lが0.007より大きい場合とD/Lが0.007以下の場合における、冷凍サイクル装置起動時からの均圧管40の温度の実験データを示している。均圧管40の温度については、シール部材5からの漏れが多いと、圧縮機7からスクロール膨張機50へと潤滑油6を通して熱が移動することを示している。図5を見ても分かるように、起動初期においては、D/Lが0.007より大きい場合とD/Lが0.007以下の場合の両方において、圧縮機7からスクロール膨張機50へと潤滑油6が移動しているが、暫くすると、D/Lが0.007以下の場合のみ均圧管40の温度が低下している。この原因の定性的な考察として、合口部5aの隙間Dがある値よりも広いと、潤滑油6の漏れが多すぎて局部的に潤滑油6が不足し、その結果シール部材5の合口部5a付近に冷媒が噛みこんでシール性が低下すると考えられる。言い換えると、シール性の低下が原因で潤滑油6の漏れが増大し、更なる潤滑油6不足を招くという閾値が存在することを示している。
つまり、D/Lを0.007以下にすることによって、シール部材5からの潤滑油6の漏れを効果的に防いで、高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することができる。
なお、シール部材5の径方向の幅Tとシール部材5の周方向の長さLとの比T/Lを0.015以上とした場合には、旋回スクロール13の反ラップ側の旋回ボス部13aとシール部材5との接触面積を増やすことができるので、シール部材5からの潤滑油6の漏れをより効果的に防いで、より高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することができる。
なお、主軸受部材11及び旋回スクロール13を金属系材料で、シール部材5を樹脂系材料で構成した場合を考える。一般的に樹脂系材料は金属系材料に比べて熱膨張係数が大きいので、圧縮機7に用いる場合には、運転時の温度上昇を予測した上で、熱膨張差の分だけ合口隙間Dを大きく取る必要があったが、スクロール膨張機50の場合、放熱器により温度が低下した冷媒を吸入するので、運転時と組立時の温度差は圧縮機に比べて極めて
小さい。よって、シール性に優れた樹脂系材料をシール部材5として用い、機械的強度に優れた金属系材料を主軸受部材11及び旋回スクロール13として用いて、より高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することができる。また、シール部材5が旋回スクロール13に強く押し当てられても、シール部材5が柔軟に変形するので、カジリや異常磨耗を防いで、高い信頼性を確保したスクロール圧縮機を提供することができる。
なお、シール部材5の合口5aの隙間が、半径方向に対して角度αをもった直線部で構成した場合を考える。シール部材5は偏心軸受部11bに到達した潤滑油6の圧力と背圧室29の圧力とを仕切る役割を持っているので、シール部材5で仕切られた中心部13b側は高圧に保たれている。また、シール部材5で仕切られた外周部である背圧室29は、吐出される冷媒と圧力的に連通しており低圧に保たれている。つまり、シール部材5の内周側に作用する圧力によって、シール部材5は溝30の内周側の壁に押し付けられようとする。
図6は起動初期におけるシール部材に圧力差が作用したときの様子を示す模式図、図7は安定運転時におけるシール部材に圧力差が作用したときの様子を示す模式図である。図6において、シール部材5の内周側の突起部5bが外周側の突起部5cへと接するが、図7において、シール部材5に圧力差が作用しつづけた後では、シール部材5の内周側の突起部5bが外周側の突起部5cへと接する接点が外側にスライドする。図6及び図7を見ても分かるように、潤滑油6の漏れに寄与すると考えられる合口5aの面積は、図6に比べて図7の方が小さくなっているので、結果起動初期において潤滑油6の漏れは発生するが、安定運転時において漏れは抑えられることを示している。一方、角度αを調節することによって、シール部材5の内周側の突起部5bが外周側の突起部5cへと接する接点のスライド方向の長さを調節することができる。つまり、角度αを小さくすると、比較的起動初期から、潤滑油6の漏れを防ぐことができるので、より高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することができる。
また、角度αを大きくすると、起動初期及び暫くの間潤滑油6が漏れるので、起動初期及び暫くの間における膨張機構部の潤滑を良くして、より信頼性の高いスクロール膨張機を提供することができる。
なお、溝30を旋回スクロール13の反ラップ側の旋回ボス部13aの先端面に設けても、上記と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態1のスクロール膨張機では、二酸化炭素冷媒を作動流体としている。即ち、作動流体としての冷媒を、二酸化炭素とした場合には、二酸化炭素は、膨張機による動力回収効果が他の作動流体(例えば、フロン系冷媒)と比べて大きいので、高効率を実現するスクロール膨張機を用いれば、より高効率な特徴を有する冷凍サイクル装置を提供することができる。
以上のように、本発明にかかるスクロール膨張機は、旋回スクロールの反ラップ側と、これに対向した主軸受部材中央部の端面との間に、中心部と外周部とを仕切る環状なシール部材を配置し、中心部に高圧の作動流体あるいは高圧に保たれた潤滑油を供給し、且つ、シール部材に合口を設け、合口の隙間Dとシール部材の周方向の長さLとの比D/Lを0.007以下としているので、シール部材からの潤滑油の漏れを効果的に防いで、高効率な冷凍サイクル装置に用いるスクロール膨張機を提供することができる。従って、作動流体を冷媒と限ることなく、空気、ヘリウムを作動流体とするスクロール膨張機や、スクロール流体機械にも適用できる。
本発明の実施の形態1におけるスクロール膨張機の断面図 同スクロール膨張機のシール部材を上面から見た平面図 同スクロール膨張機のシール部材の合口部を拡大した側面図 同スクロール膨張機を備えた冷凍サイクル装置の回路構成図 同スクロール膨張機を備えた冷凍サイクル装置の起動時における均圧管温度を示す特性図 同スクロール膨張機の起動初期におけるシール部材に圧力差が作用したときの様子を示す模式図 同スクロール膨張機の安定運転時におけるシール部材に圧力差が作用したときの様子を示す模式図
1 密閉容器
2 膨張機構部
4 クランク軸
4a主軸部
4b偏心軸部
5 シール部材
5a 合口部
6 潤滑油
11 主軸受部材
11a 主軸受部
11b 偏心軸受部
12 固定スクロール
13 旋回スクロール
13a 旋回ボス部
13b 中心部
13c 外周部
14 自転規制機構
15 膨張室
16 吸入パイプ
17 吸入口
18 吐出パイプ
20 潤滑油溜まり
21 副軸受部材
25 容積型ポンプ
26 潤滑油戻し孔
29 背圧室
30 溝
40 均圧管
50 スクロール膨張機

Claims (1)

  1. 圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された作動流体を冷却する放熱器と、前記作動流体を蒸発させる蒸発器と、これらの間に前記作動流体を循環させる配管とを有する冷凍サイクル装置に用いられ、鏡板から渦巻きラップが立ち上がる固定スクロール及び旋回スクロールを噛み合わせて膨張室を形成し、前記旋回スクロールを自転規制機構による自転の規制のもとに旋回させたときに、前記膨張室が容積を変えながら移動することで、前記放熱器の出口から前記作動流体を吸入し、膨張させ、吐出して、前記蒸発器の入口へ送り出すスクロール膨張機であって、
    前記旋回スクロールの反ラップ側と、これに対向した主軸受部材中央部の端面との間に、中心部と外周部とを仕切る環状なシール部材を配置し、前記中心部に高圧の前記作動流体あるいは高圧に保たれた潤滑油を供給し、且つ、前記シール部材に合口を設け、前記合口の隙間Dと前記シール部材の周方向の長さLとの比D/Lを0.007以下とし
    前記シール部材の径方向の幅Tと前記シール部材の周方向の長さLとの比T/Lを0.015以上とし、
    前記主軸受部材及び旋回スクロールを金属系材料で、シール部材を樹脂系材料で構成し、
    前記シール部材の合口の隙間が、半径方向に対して角度αをもった直線部で構成され、
    前記作動流体としての冷媒を二酸化炭素としたことを特徴とするスクロール膨張機。
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