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JP5072086B2 - 抵抗分地絡電流を検出する装置 - Google Patents

抵抗分地絡電流を検出する装置 Download PDF

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本件の発明は,電路の対地漏洩電流を検出し,その大きさと電路電圧からの位相のずれを基にして抵抗分地絡電流を検出する手段を備えた配線用遮断器や漏電遮断器あるいは漏電継電器のような装置に関する。
電路の対地漏洩電流に,電路の対地静電容量分や機器のノイズフィルターのキャパシタンス分を通じて流れる常時漏洩電流と,絶縁不良による抵抗分地絡電流が含まれることはよく知られている。
前記の常時漏洩電流は,対地静電容量分を通じて流れる電流であるから,対地電圧に対して90度位相が進み,絶縁不良による抵抗分地絡電流は対地電圧と同位相である。従って,電路電圧と対地漏洩電流の間には,常時漏洩電流と抵抗分地絡電流の大きさの比によって決まる位相差が生じる。
そこで,対地漏洩電流の大きさと,電路電圧との位相差を元にして絶縁不良による抵抗分地絡電流のみを分別する方法が知られている。
特開2005−140532 特開2006−71341
しかしながら,対地漏洩電流の電路電圧との位相差によっては,位相差の検出精度が抵抗分地絡電流の検出精度に大きく影響を与える。位相差の検出精度が同一でも地絡電流の計算結果に対する影響は,位相差が0度付近ではほとんどないのに対し,位相ズレが90度付近では相当に大きい。
従って,電路電圧に対する対地漏洩電流の位相差の角度範囲によっては,要求される精度で抵抗分地絡電流を検出できない場合がある。例えば,位相差の検出精度が±1度であり,1mAの抵抗分地絡電流を±10%の精度で検出しようとする場合,その精度を保証できるのは,位相差意外の他の検出誤差を無視した場合,常時漏洩電流の大きさが0mAから6.3mAまで,すなわち位相差の角度範囲は0度から81度までに限られる。
つまり位相の検出精度が抵抗分地絡電流の検出精度に影響を与えるが,誤差が出やすい90度に近い位相差での抵抗分地絡電流の検出精度を保証しようとすれば,極端に位相の検出精度の向上が必要で,そのためには装置のコストが高くなる。
そこで本件の発明は,電路の対地漏洩電流を検出し,その大きさと電路電圧との位相差を基にして抵抗地絡による漏洩電流の大きさを検出する手段を備えた配線用遮断器や漏電遮断器あるいは継電器のような装置において,要求される抵抗分地絡電流の検出精度を保証できる範囲に電路の常時漏洩電流の状態があるかどうかを容易に判定できるようにするとともに,実用的で経済的な装置を提供しようとするものである。
そのため請求項1の発明では,電路の対地漏洩電流を検出し,その大きさと電路電圧からの位相のずれを元にして抵抗分地絡電流を検出し,該抵抗分地絡電流が所定の大きさを超えたことを検知する手段を備えた装置において,前記抵抗分地絡電流と併せて常時漏洩電流を検出し,常時漏洩電流が抵抗分地絡電流の検知感度に応じて設定される値を超えている場合は警報を発する手段を備えたことを特徴とする抵抗分地絡電流を検出する装置を提供したものである。
請求項2の発明では,前記の抵抗分地絡電流を検出する装置は,抵抗分地絡電流が所定の大きさを超えている場合に警報を発する配線用遮断器または該警報が事前警報である漏電遮断器または漏電継電器であることを特徴とする請求項1の抵抗分地絡電流を検出する装置を提供したものである。
請求項3の発明では,前記の抵抗分地絡電流を検出する装置は,抵抗分地絡電流が所定の大きさを越えている場合に,回路を遮断するようにした漏電遮断器,あるいは出力を発生するようにした漏電継電器であることを特徴とする請求項1の抵抗分地絡電流を検出する装置を提供したものである。
本件の発明によれば,電路の対地漏洩電流を検出し,その大きさと電路電圧からの位相のずれを元にして抵抗分地絡電流を検出し,該抵抗分地絡電流が所定の大きさを超えたことを検知する手段を備えた装置において,前記抵抗分地絡電流と併せて常時漏洩電流を検出し,常時漏洩電流が抵抗分地絡電流の検知感度に応じて設定される値を超えている場合は警報を発する手段を備えたから,要求される抵抗分地絡電流の検出精度を保証できない範囲に電路の常時漏洩電流がある場合は,所定の抵抗分地絡電流を検知した場合いにその検知出力が要求精度にかなうかどうかを容易に判断できる。
また,そのような警報を発する手段を装置に備えることで,実用上差し支えない程度の位相ずれの検出精度を有する装置とすることができて装置のコストを抑えることが可能となる。
本件発明の第一の実施例を図1に示す。図1は,抵抗分地絡電流検出表示機能付の配線用遮断器10と該配線用遮断器10を電路に設置した場合の例である。図1において,1は変圧器で電路2,2’に電路電圧を供給し,低圧側巻線の2’側端子は3のように接地してある。なお便宜上電路は単相2線式として説明するが,単相3線式の電路あるいは三相3線式でΔ結線1極接地式の電路でも原理は同一で適用可能である。
1001と1002は開閉接点,1003は過電流検出素子で,電路の電流が所定の値を超えると過電流検出素子1003が電流の大きさに応じた時限で図示しない開閉機構に作用し,接点1001と1002を自動的に開離するように働く。1004は零相変流器で,電路2と2’の往復電流の差分を検出する。なお,零相変流器1004が検出する電流は,電路2の対地静電容量4に流れる常時漏洩電流Iocと絶縁不良による地絡抵抗5に流れる地絡漏洩電流Iorにより成る零相漏洩電流Ioである。
1005は零相変流器1004が検出する電流の入力回路で,過入力保護回路のほか必要に応じフィルター回路や増幅回路,移相回路などを含む。なお移相回路は,実際の零相電流と検出回路で扱う電流信号に位相差がある場合にその差を補正する目的に用いるが,演算回路1007に含ませてもよい。
一般的に電路の電圧には,本来の商用基本波に対し,変圧器1の非線形性や負荷電流波形による高調波や高周波を含んでいるが,地絡抵抗5を流れる電流はそれらの大きさに線形的に対応する。しかし対地静電容量4を流れる電流は,波形歪みの周波数に対してそのインピーダンスが変化するため周波数が高くなるにつれて相対的に大きくなる。従って,より正確に商用の基本周波数だけの地絡電流を検出しようとすれば,フィルターにより高調波・高周波成分を除去することが望ましい。
1006は電路電圧の入力回路で,電路との絶縁回路や1005と同様に過入力保護回路のほか必要に応じフィルター回路などを有する。
1007は演算回路で,電路電圧と零相電流の位相差を演算し,該位相差と零相電流の絶対的な大きさから抵抗分の地絡電流とコンデンサ分による常時漏洩電流を演算する。その様子を図2,図3を元に説明する。電路電圧はこの場合対地電圧に相当する。
図2において,6は電路電圧のベクトル,7は零相電流のベクトルである。零相電流7は,抵抗分地絡電流8と対地静電容量分による常時漏洩電流9の合成電流である。演算回路1007は電路電圧の0点と対地漏洩電流の0点のタイムラグなどから電路電圧ベクトル6と零相電流のベクトル7の位相差θを計算し,零相電流ベクトル7の絶対値に位相差θの余弦(cos)を掛けて抵抗分地絡電流8の大きさを算出する。また,常時漏洩電流は零相電流ベクトル7の絶対値に位相差θの正弦(sin)を掛けて算出する。あるいは,対地漏洩電流と抵抗分地絡電流から常時漏洩電流を算出してもよい。
図3は別の方法を示す。図3は電路電圧10と零相電流11の瞬時値同士を積算して抵抗分地絡電流12の大きさを算出する方法を示している。(a)は,電路電圧と零相電流の位相差がない場合の事例で,位相差がないので,瞬時値同士を掛け合わせた場合,値は0以上のプラス側の範囲で周波数が2倍の信号になり,平均値が抵抗分地絡電流の大きさに比例する。
(b)は電路電圧と零相電流の位相差が90度の事例で,瞬時値同士を掛け合わせた場合,値は平均値がゼロで周波数が2倍の信号になる。図3はいわゆる同期整流による方法と同じである。常時漏洩電流は,電路電圧を移相手段により90度位相を進め,(a)(b)と同じ方法により零相電流の瞬時値を積算して平均値をとってもよいし,零相漏洩電流と抵抗分地絡電流から算出してもよい。
ここで,電路電圧と漏洩電流の位相差の検出精度と抵抗分地絡電流の検出精度について図4で述べる。図4において電路電圧位相15に対し小さい位相差θ1の零相漏洩電流16があるとき,その位相差の検出誤差の範囲を±αとした場合,検出すべき抵抗分地絡電流17に対する誤差αの影響は±18となって17に対して相対的に小さい。しかし,電路電圧位相15に対し漏洩電流16’の位相差がθ2と大きい場合は,位相差の検出誤差の範囲が±αと同じでも,抵抗分地絡電流17’は小さく,誤差αの影響は±18’と大きくなるから17’に対して相対的に大きくなり,位相差の検出精度が同じであっても抵抗分地絡電流の検出精度は大きく変わる。
従って,検出しようとする抵抗分地絡電流の大きさと精度の要求によって,検出結果を保証できる電路電圧と漏洩電流の位相差,言い換えれば常時漏洩電流の大きさが制約されることになる。前述のとおり,位相差の検出精度が±1度の場合,抵抗分地絡電流17が1mAのときの検出精度18を17の10%の0.1mAに保証しようとすれば,1mAの抵抗分地絡電流に対し電路電圧と零相漏洩電流の位相差は81度以内であること,あるいは抵抗分地絡電流が1mAのとき零相漏洩電流の大きさは6.4mA以内でなければ要求に答えられないことになる。その場合の常時漏洩電流は6.3mA以内でなければならない。
図1において,1008は演算回路1007による抵抗分地絡電流の演算結果の出力手段であり,所定の値を演算結果が超えた場合に音声やランプで出力を発生したり接点で出力する。また1009は演算結果が要求される精度を満たしているかどうかを判定可能とする警報出力手段で,演算回路1007が演算した常時漏洩電流が抵抗分地絡電流の検知感度に応じて設定される値以下であるかどうかを判定して表示・出力する。表示出力は精度を保証できることを出力しても,保証できないことを出力してもいずれでもよい。
図1において,図示しない検知感度切替装置を付加することも可能である。その場合,所望の検知感度毎に対応して精度を保証しうる常時漏洩電流の値も切り替わるようにする。
図1による配線用遮断器10によれば,常時漏洩電流が,検知しようとする抵抗分地絡電流の大きさと要求精度に応じて設定される値以下かどうかにより,例えば設置初期時に要求の検出精度を保証できる電路かどうか,また,所定の抵抗分地絡電流検知時にその警報が精度的に保証できるものかどうかを簡単に判断できる。
また,前述の例に挙げた1mAの抵抗分地絡電流を±10%の精度で検出しようとした場合,位相差の検出誤差以外の誤差を無視できれば,位相差が45度では,位相差検出精度の許容値は±約5度であるが,位相差が85度では,必要な位相差の検出精度は±約0.5度であって位相差が90度に近づくほど位相差の検出精度への要求が厳しくなって装置コストが高くなる。しかし,一般的な電路において検知したい抵抗分地絡電流が流れている場合に位相差が45度以内の場合が多いということであれば,位相差の検出精度は±約5度の装置で充分であり,万一その位相差を超える場合には警報により精度を保証しえない状況であるということを知りえることで実用上は充分である。
図5と図6は,漏洩電流の大きさによって回路を遮断する漏電遮断器に抵抗分地絡電流警報機能を付加した場合の実施例であり,漏洩電流に対して段階的に動作する。図5の実施例における1001から1009は図1の実施例と同一の機能である。図において1010は図示しない開閉機構に作用し,接点1001と1002を開離するトリップ装置で,演算回路1007の判定結果で作動するようにしている。この場合,漏洩電流は対地漏洩電流としても抵抗分地絡電流としてもいずれでも可能である。図6の実施例は,トリップ装置1010を駆動するための漏洩電流検出回路1011を演算回路1007とは別に設けた例である。図5や図6の漏電遮断器は,緊急を要しない絶縁不良では抵抗分地絡電流の大きさが,例えば1mA以上あるかどうかを検知し,漏洩電流が30mAを超えるような感電等の緊急を要する事故である場合は電路を遮断するよう段階的に動作するものである。その際,遮断動作前の抵抗分地絡電流の検知の表示出力については検知が精度を保証し得る範囲で行われたかどうかを知り得る。
図5と図6において表示手段1008を省略し,演算回路1007が所定の抵抗分地絡電流を検知した場合,いきなりトリップコイル1010を駆動するようにも構成できる。この場合1009の表示に電気的なバックアップを持たせるか,あるいはメカ的なラッチ機構を用いれば,トリップコイル1010の駆動による回路の遮断についても,事後にその遮断が要求される検知精度の元に行われたかどうかを判断できる。また,常時漏洩電流が要求される検出精度を保証し得る範囲を超えている場合もトリップコイル1010を駆動させるようにすることが可能である。
図7は,回路を遮断する主回路接点を有しない漏電継電器である。図において1004から1009は図1のものと同じ構成である。但し,零相変流器は継電器のケーシング外に設置しても内蔵してもよい。また零相変流器は電路に設けるものでなく変圧器のB種接地線の対地漏洩電流を検出するようにしたものでもよい。1010’は継電器で,図5や図6の漏電遮断器が回路を遮断する代わりに,外部に接点出力する。あるいは,演算回路1007から信号が外部に出力されてもよい。このような漏電継電器では,1 010’の継電動作のほかに,事前の電路の抵抗分地絡電流を検知でき,また検知された抵抗分地絡電流が要求された精度によるものかどうかを一目で判別できる。
また,表示手段1008を省略し,継電器1010’は「0029」に記載のように抵抗分地絡電流が所定の値を越えた場合に動作するようにして,警報手段1009は,継電器作動時の常時漏洩電流が所定の範囲を超えていたことを示すようにしてもよい。
なお,以上の説明において,1008の表示手段は,抵抗分地絡電流の検知感度はひとつの場合で説明したが,段階的に複数設け,選択的に切替えるようにしてもよい。その場合,常時漏洩電流の上限値も検出したい抵抗分地絡電流に応じて切り替わるようにする必要がある。また演算回路1007で常時漏洩電流を演算しその値を表示するような手段を別途付加することも任意である。
配線用遮断器や漏電遮断器,継電器や計測器のほか,その他の機能を有する監視装置などに付加して用いることができる。
本件発明による抵抗分地絡電流警報機能付きの配線用遮断器の構成図 対地漏洩電流から抵抗分地絡電流を検出する方法の説明図 対地漏洩電流から抵抗分地絡電流を検出する方法の説明図 電圧と対地漏洩電流の位相差による検出誤差を説明する図 本件発明による抵抗分地絡電流警報機能付きの漏電遮断器の構成図 本件発明による抵抗分地絡電流警報機能付きの漏電遮断器の構成図 本件発明による抵抗分地絡電流警報機能付きの継電器の構成図
符号の説明
1・・・変圧器
2,2’・・・電路
3・・・接地
4・・・電路の対地静電容量
5・・・地絡抵抗
6・・・電圧ベクトル
7・・・対地漏洩電流ベクトル
8・・・抵抗分地絡電流ベクトル
9・・・常時漏洩電流ベクトル
10・・・電路電圧の単位波形
11,13・・・対地漏洩電流の波形
12,14・・・電路電圧の単位波形の瞬時値と対地漏洩電流の瞬時値の積算波形
15・・・電圧ベクトル
16,16’・・・対地漏洩電流ベクトル
17,17’・・・抵抗分地絡電流
18,18’・・・検出誤差
1001,1002・・・主回路接点
1003・・・過電流検出素子
1004・・・変流器
1005・・・波形整形回路
1006・・・波形整形回路
1007・・・演算回路
1008・・・表示手段
1009・・・警報手段
1010・・・トリップコイル
1010’・・・継電器
1011・・・漏電検知器

Claims (3)

  1. 電路の対地漏洩電流を検出し,その大きさと電路電圧からの位相のずれを元にして抵抗分地絡電流を検出し,該抵抗分地絡電流が所定の大きさを超えたことを検知する手段を備えた装置において,前記抵抗分地絡電流と併せて常時漏洩電流を検出し,常時漏洩電流が抵抗分地絡電流の検知感度に応じて設定される値を超えている場合は警報を発する手段を備えたことを特徴とする抵抗分地絡電流を検出する装置。
  2. 前記の抵抗分地絡電流を検出する装置は,抵抗分地絡電流が所定の大きさを超えている場合に警報を発する配線用遮断器または該警報が事前警報である漏電遮断器または漏電継電器であることを特徴とする請求項1の抵抗分地絡電流を検出する装置。
  3. 前記の抵抗分地絡電流を検出する装置は,抵抗分地絡電流が所定の大きさを越えている場合に,回路を遮断するようにした漏電遮断器,あるいは出力を発生するようにした漏電継電器であることを特徴とする請求項1の抵抗分地絡電流を検出する装置。
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