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JP5071718B2 - 筒内噴射型内燃機関の制御装置 - Google Patents

筒内噴射型内燃機関の制御装置 Download PDF

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JP5071718B2 JP2008011534A JP2008011534A JP5071718B2 JP 5071718 B2 JP5071718 B2 JP 5071718B2 JP 2008011534 A JP2008011534 A JP 2008011534A JP 2008011534 A JP2008011534 A JP 2008011534A JP 5071718 B2 JP5071718 B2 JP 5071718B2
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Description

この発明は筒内噴射型内燃機関の制御装置に係り、特に、燃焼室内に直接燃料を供給する筒内噴射型内燃機関の燃焼を改善して排気ガス浄化性能および燃費性能を向上させ、冷機時における始動性能および冷機時における排気ガス浄化性能を向上させる筒内噴射型内燃機関の制御装置に関する。
内燃機関には、図7に示すように、燃費向上を目的とし、吸気バルブの閉時期をピストンの下死点(BDC)よりも遅くする(下死点を超える)ことで、膨張比(メカニカル圧縮比)が実圧縮比よりも大きくなるように設定された、いわゆるアトキンソンサイクルを採用しているものがある。このような内燃機関は、吸気バルブの閉時期をピストンの下死点(BDC)よりも遅くした結果として、吸気の吹き戻しが生じる。吸気の吹き戻しとは、吸気バルブの閉時期を下死点(BDC)よりも遅角側へ設定した場合に、ピストンの上昇によって燃焼室内の混合気が、吸気ポートヘ逆流する現象である。
このようなことから、吸気バルブの閉時期をピストンの下死点(BDC)よりも遅く設定した内燃機関には、吸気の吹き戻しに伴う逆流を規制するために、吸気管に逆止弁を設けたものがある。
特開平9−151737号公報
また、内燃機関には、燃焼室内に直接燃料を供給する筒内噴射型内燃機関がある。筒内噴射型内燃機関は、充填効率向上、耐ノック性向上等、出力向上に対し多くのメリットが存在する。
特開2000−120482号公報 特開2004−52551号公報 特開2004−19554号公報 特開2007−56787号公報 特開1996−177684号公報
ただし、筒内噴射型内燃機関は、燃料の霧化混合時間が充分にとれず、燃料を噴射してから混合気を形成するまでの時間的な余裕が無いことから、均質な混合気形成が難しく、吸気ポートに燃料を供給するポート噴射型内燃機関と比較して、部分負荷等の燃費、排気ガス浄化性能、冷機始動性が悪化する弊害を持つ。
ところで、現在の筒内噴射型内燃機関の噴射制御では、より均質な混合気を得るため、図7のAに示すように吸気行程の早い段階(吸気行程初期)に燃料噴射期間を設定し、吸気行程初期から燃料噴射を行うことで、混合気形成の時間を長く取るように制御している。ただし、燃料噴射を吸気行程初期に行う場合は、ピストンが上死点(TDC)に近い上昇した位置にあるため、燃料の噴霧がピストンの頂面と衝突しやすくなることから、スモーク性能の悪化が伴う問題がある。
そこで、現状の噴射制御では、燃料がピストンの頂面と衝突することによるスモーク発生を避けるため、混合気の均質性は多少犠牲にしても、図7のBに示すように燃料噴射期間を吸気行程初期から遅らせて設定し、スモーク性能が悪化しない時期まで噴射時期を遅角している。しかし、噴射時期を遅角した現状の噴射制御では、燃料噴射してから混合気形成の時間が減ることで、排気ガス浄化性能、燃費性能が犠牲となっている。
この発明は、燃焼室内に直接噴射された燃料の気化に要する時間を確保し、より均質な混合気を生成すること、燃焼室内に直接噴射された燃料の壁面付着を抑制し、スモークの発生を防止することなどを主たる目的とする。
特に、この発明は、分割された燃料噴射の最後の燃料噴射について、吸気バルブ遅閉じによる吸気吹き戻しを利用し、ポート噴射による混合気に近い均質な混合気を生成するように効率化を図るものである。
また、この発明は、デバイス増加による制御の複雑化を防止し、制御装置の負荷増大を防止して、制御精度を高めることを副次的な目的とする。
この発明は、内燃機関の燃焼室内に直接燃料を供給可能な燃料供給装置を備え、前記内燃機関の内部状態を含む様々な状態に応じて要求される燃料噴射量を前記燃料供給装置により供給するための燃料噴射期間を制御する制御装置を備え、所定の条件では前記燃料噴射期間の燃料噴射を複数回に分割して行うように制御する燃料噴射制御機能を備えた複数の気筒を有する筒内噴射型内燃機関の制御装置において、前記内燃機関に吸気バルブの開閉時期を変更する可変バルブ機構を設け、この可変バルブ機構による吸気バルブの開閉時期を人為操作およびエミッション条件を含む様々な条件に応じて進角および遅角するように制御する位相変更制御機能を前記制御装置に設ける一方、前記制御装置は、前記可変バルブ機構により変更される複数の気筒に対応する各々の吸気バルブが開放し始めてから閉じられるまでの1サイクルの開期間内に、主噴射期間C1と副噴射期間C2とから構成された分割噴射を終了できるように制御するとともに、前記吸気バルブの閉時期をピストンの下死点を超えて所定時間後となるように制御する際には、前記主噴射期間C1に行われる燃料噴射を、前記吸気バルブが開放し始める吸気行程の初期に開始する一方、前記副噴射期間C2に行われる燃料噴射を、前記吸気バルブの閉時期に対して所定時間前から閉時期直前まで行うことを特徴とする。
この発明の筒内噴射型内燃機関の制御装置は、下死点を超える吸気バルブの閉時期に対して所定時間前から閉時期直前まで燃料噴射期間の分割した最後の燃料噴射を行うことで、最後に噴射した少量の燃料を混合気として吸気ポート側に戻すことができる。
この発明の筒内噴射型内燃機関の制御装置は、少量の燃料を混合気として吸気ポート側に戻すことで、充分な蒸発時間を与えることができ、燃料の気化熱を最大限利用して吸気ポート内に予混合気を生成し、スモークの発生する可能性も減らすことができる。
この発明の筒内噴射型内燃機関の制御装置は、燃焼室内に臨む燃料噴射弁によって、噴射した燃料を吸気側に戻し、ポート噴射に近い混合気を生成することができる。
この発明の筒内噴射型内燃機関の制御装置は、吸気行程において燃料噴射を分割して行い、吸気バルブの閉時期によって生成される吸気吹き戻しを利用することで、あらかじめ吸気ポート内に予混合気を準備し、排気ガス浄化性能、燃費、冷機始動性能の向上を図るものである。
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
図1〜図6は、この発明の実施例を示すものである。図1は燃料噴射制御のフローチャート、図2はクランク角に対する噴射時期を示す図、図3は筒内噴射型内燃機関の制御装置のシステム構成図、図4は筒内噴射型内燃機関の拡大断面図、図5は可変バルブ機構のシステム構成図、図6はクランク角に対するバルブリフトを示す図である。
図4において、1は複数の気筒を有する筒内噴射型内燃機関(以下「内燃機関」と記す。)、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はシリンダヘッドカバー、5はピストン、6は燃焼室、7は吸気ポート、8は排気ポートである。車両に搭載される内燃機関1は、シリンダヘッド3に吸気カム軸9及び排気カム軸10を軸支し、これら吸気カム軸9の吸気カム11及び排気カム軸10の排気カム12で夫々駆動される吸気バルブ13及び排気バルブ14を設けている。吸気バルブ13及び排気バルブ14は、各気筒の燃焼室6に連通する吸気ポート7及び排気ポート8を夫々開閉する。吸気ポート7は、タンブル流Aを発生するように、ピストン5の頂面5aに対向させて燃焼室6に開口している。
内燃機関1は、図3に示すように、吸気装置15として、エアクリーナ16と吸気管17とスロットルボディ18とサージタンク19と吸気マニホルド20とを順次に接続し、吸気ポート7に連通する吸気通路21を設けている。スロットルボディ18の吸気通路21には、スロットルバルブ22を設けている。また、内燃機関1は、排気装置23として、排気マニホルド24と触媒コンバータ25と排気管26とを順次に接続し、排気ポート8に連通する排気通路27を設けている。
この内燃機関1には、過給機(ターボチャージャ)28を設けている。過給機28は、吸気管17の途中と排気マニホルド24及び触媒コンバータ25間とに過給機ケース29を配設し、過給機ケース29内の吸気通路21にコンプレッサ30を設け、過給機ケース29内の排気通路27にコンプレッサ30を駆動するタービン31を設けている。
前記内燃機関1は、タービン31を迂回して排気通路27を連通するバイパス通路32を設け、バイパス通路32を開閉するウエイストゲートバルブ33を設け、ウエイストゲートバルブ33を開閉動作するウエイストゲートアクチュエータ34を設けている。ウエイストゲートアクチュエータ34は、コンプレッサ30下流側の吸気通路21から導入される作動圧をウエイストゲート制御バルブ35で調整することにより動作され、ウエイストゲートバルブ33を開閉動作して過給圧を設定過給圧に制御する。
また、内燃機関1は、コンプレッサ30の上流側及び下流側の吸気通路21を連通するエアバイパス通路36を設け、エアパイパス通路36を開閉するエアバイパスバルブ37を設け、エアバイパスバルブ37を開閉動作するエアバイパスアクチュエータ38を設けている。エアバイパスアクチュエータ38は、コンプレッサ30下流側の吸気通路21から導入される作動圧をエアバイパス制御バルブ39で調整することにより動作され、スロットルバルブ22の急閉時にエアバイパスバルブ37を開放動作してコンプレッサ30のサージングを防止する。この内燃機関1は、コンプレッサ30とスロットルボディ18との間の吸気管17に、過給機28で過給された吸入空気を冷却するインタクーラ40を設けている。
この内燃機関1は、燃焼室6内に直接燃料を供給可能な燃料供給装置41として、燃料タンク42内に燃料を内燃機関1側に圧送する低圧側燃料ポンプである電磁式燃料ポンプ43を設け、この電磁式燃料ポンプ43にフィルタ44と圧力レギュレータ45と介して一端側を接続する低圧側燃料供給通路46を設けている。低圧側燃料供給通路46の他端側は、高圧側燃料ポンプである機械式燃料ポンプ47に接続している。機械式燃料ポンプ47は、シリンダヘッド3に取り付けられ、排気カム軸10の回転によって機械的に駆動され、低圧側燃料供給通路46からの燃料を高圧にして内燃機関1側に圧送する。機械式燃料ポンプ47には、燃料戻り通路48の一端側を接続している。燃料戻り通路48の他端側は、燃料タンク42内に開口している。
前記機械式燃料ポンプ47には、高圧側燃料供給通路49の一端側を接続している。高圧側燃料供給通路49の他端側は、デリバリパイプ50に接続している。デリバリパイプ50には、シリンダヘッド3に取り付けられた各気筒毎の燃料噴射弁51を接続している。燃料噴射弁51は、図4に示すように、燃焼室6に臨ませてシリンダヘッド3に取り付けられ、燃料を燃焼室6内に直接噴射する。燃料噴射弁51は、燃焼室6内のタンブル流Aに向かって燃料を噴射するように、ピストン5の頂面5aに対向させて取り付けている。したがって、この内燃機関1は、過給機付きで筒内噴射型の内燃機関である。
前記燃料タンク42には、図3に示すように、2ウェイチェックバルブ52を介してエバポ通路53の一端側を接続している。エバポ通路53は、他端側をキャニスタ54に接続している。キャニスタ54には、パージ通路55の一端側を接続している。パージ通路55は、他端側をスロットルバルブ22よりも下流側の吸気通路21に連通している。パージ通路55の途中には、パージ制御バルブ56を設けている。パージ制御バルブ56は、キャニスタ54に吸着した燃料蒸発ガスの内燃機関1への導入量(パージ量)を制御する。
この内燃機関1は、点火装置57として、シリンダヘッドカバー4に各気筒毎のイグニションコイル58を取り付けている。イグニションコイル58は、図4に示すように、各気筒の燃焼室6に臨ませた点火プラグ59に高電圧を供給し、飛び火させる。
この内燃機関1は、シリンダヘッドカバー4内にPCVバルブ60を介して一端側を連通するタンク側ブローバイガス通路61を設けている。タンク側ブローバイガス通路61は、他端側をサージタンク19の吸気通路21に連通している。また、この内燃機関1は、シリンダヘッドカバー4内に一端側を連通するクリーナ側ブローバイガス通路62を設けている。クリーナ側ブローバイガス通路62は、他端側をエアクリーナ16内に連通している。
また、この内燃機関1は、スロットルバルブ22を迂回して吸気通路21を連通するアイドル空気通路63を設けている。このアイドル空気通路63の途中には、吸気通路21をバイパスしてアイドル空気通路63を通るアイドル空気量を調整するアイドル空気量制御バルブ64を設けている。
さらに、この内燃機関1は、一端側が排気マニホルド24の排気通路27に連通するとともに他端側がサージタンク19の吸気通路21に連通するEGR通路65を設けている。このEGR通路65の途中には、吸気通路21に還流される排気ガス量(EGR量)を調整するEGR制御バルブ66を設けている。
この内燃機関1は、図5に示すように、吸気バルブ13の開閉時期を変更する可変バルブ機構67を設けている。内燃機関1は、クランク軸68の一端側に設けたクランクプロケット69と、吸気カム軸9の一端側に設けた吸気カムスプロケット70と、排気カム軸10の一端側に設けた排気カムスプロケット71とに、タイミングチェーン72を巻掛けて設けている。吸気カム軸9と排気カム軸10とは、タイミングチェーン72によりクランク軸68の回転に対して1/2に減速して回転される。また、内燃機関1には、クランク軸68により駆動されるオイルポンプ73を設けている。オイルポンプ73は、オイルパン74のオイルを汲み上げて油圧を発生する。オイルは、フィルタ75により濾過されて内燃機関1の各部に供給される。
前記可変バルブ機構67は、内燃機関1のクランク軸68により駆動されるオイルポンプ73の発生する油圧により動作する。可変バルブ機構67は、オイルポンプ73の発生する油圧を進角側油圧と遅角側油圧とに振り分けるように作動する油圧制御弁76を設けている。油圧制御弁76は、弁本体77にスプール弁体78を軸方向移動可能に保持している。スプール弁体78の一端側には、スプール弁体78を他端側に向かって押進するスプリング79を設けている。また、スプール弁体78の他端側には、磁力によりスプリング79の付勢力に抗してスプール弁体78を一端側に向かって押進するソレノイド80を設けている。
油圧制御弁76は、スプリング79とソレノイド80とによりスプール弁体78を軸方向移動させ、オイルポンプ73の発生する油圧を進角側油圧と遅角側油圧として進角側油路81と遅角側油路82とに振り分けて供給し、また、進角側油路81と遅角側油路82との油圧をオイルパン74に排出(ドレーン)する。
可変バルブ機構67は、油圧制御弁76の振り分ける進角側油圧と遅角側油圧とにより作動され、クランク軸68に対する吸気カム軸9の位相を変化させて、吸気バルブ13の開閉時期を変更する油圧アクチュエータ83を設けている。油圧アクチュエータ83は、ロータ84とハウジング85とからなる。ロータ84は、吸気カム軸9の一端側にロータ取付ボルト86により取付けている。ハウジング85は、ロータ84に相対回転可能に外装され、吸気カム軸9の一端側に相対回転可能に外装したハウジング保持部87にハウジング取付ボルト88により取付けている。ハウジング保持部87には、前記吸気カムスプロケット70を一体的に設けている。したがって、吸気カムスプロケット70は、ハウジング保持部87を介して吸気カム軸9の一端側に相対回転可能に外装している。
前記油圧アクチュエータ83は、ロータ84とハウジング85との間に、ロータ84とハウジング85との相対回転により拡張・縮小される複数の進角側油室89と遅角側油室90とを区画している。進角側油室89には、前記油圧制御弁76に一端側を連通した進角側油路81の他端側を連通している。遅角側油室90には、前記油圧制御弁76に一端側を連通した遅角側油路82の他端側を連通している。
油圧アクチュエータ83は、進角側油室89と遅角側油室90とのいずれか一方に油圧制御弁76から油圧を供給するとともにいずれか他方から油圧制御弁76を介して油圧を排出することにより、ロータ84とハウジング85とが相対回転し、クランク軸68に対する吸気カム軸9の位相を変化させる。
このように、可変バルブ機構67は、油圧制御弁76によりオイルポンプ73の発生する油圧を進角側油圧と遅角側油圧として振り分け、油圧アクチュエータ83によりクランク軸68に対する吸気カム軸9の位相を変化させて、吸気バルブ13の開閉時期を変更する。これにより、吸気バルブ13は、図6に示すように、最進角時から最遅角時までの間を可変角として開閉時期を変更され、最進角時に排気バルブ14との間に最大のバルブオーバーラップを生じる。
この内燃機関1には、図3に示すように、スロットルバルブ22のスロットル開度を検出するスロットル開度センサ91を設け、スロットルバルブ22下流側の吸気管圧力を検出する吸気圧センサ92を設け、吸気温度を検出する吸気温センサ93を設け、内燃機関1のエンジン回転数を検出し且つクランク位置を判別するためのクランク角を検出するクランク角センサ94を設け、内燃機関1の気筒を判別し且つ吸気カム軸9のカム位置を判別するためのカム角を検出するカム角センサ95を設け、燃料噴射弁51に供給される燃料圧力を検出する燃料圧力センサ96を設け、ノッキングを検出するノッキングセンサ97を設け、冷却水温度を検出する水温センサ98を設け、排気中の酸素濃度を検出するO2センサ99を設けている。
前記ウエイストゲート制御バルブ35とエアバイパス制御バルブ39と電磁式燃料ポンプ43と燃料噴射弁51とパージ制御バルブ56とイグニションコイル58とアイドル空気量制御バルブ64とEGR制御バルブ66と油圧制御弁76とスロットル開度センサ91と吸気圧センサ92と吸気温センサ93とクランク角センサ94とカム角センサ95と燃料圧力センサ96とノッキングセンサ97と水温センサ98とO2センサ99とは、内燃機関1の制御装置100を構成する制御手段101に接続している。制御手段101には、メインスイッチ102及びフューズ103を介してバッテリ104を接続している。なお、燃料噴射弁51は、駆動電圧を高くする燃料噴射弁駆動部105を介して制御手段101に接続している。
この内燃機関1の制御装置100は、各種センサ91〜99の検出信号を入力する制御手段101によって、内燃機関1の内部状態を含む様々な状態に応じて要求される燃料噴射量を燃料供給装置41により供給するための燃料噴射期間を制御する。制御手段101は、所定の条件では前記燃料噴射期間の燃料噴射を複数回に分割して行うように制御する燃料噴射制御機能を有している。燃料噴射制御機能は、制御手段101の燃料噴射制御手段106により実行される。
制御装置100は、可変バルブ機構67による吸気バルブ13の開閉時期を人為操作およびエミッション条件を含む様々な条件に応じて進角および遅角するように制御する位相変更制御機能を制御手段101に設けている。位相変更制御機能は、制御手段101の位相変更制御手段107により実行される。位相変更制御手段107は、図5に示すように、クランク位置とスロットル開度と冷却水温とカム位置と吸気管圧力とに基づいて目標進角量算出部108により目標進角量を算出するとともに実バルブタイミング算出部109により算出した実バルブタイミングをフィードバックし、吸気カム軸9のカム位置が目標進角量になるように油圧制御弁76のソレノイド80をデューティ制御する。
一方、前記制御装置100は、制御手段101の燃料噴射制御手段106及び位相変更制御手段107によって、各種センサ91〜99の検出信号に基づき、変更される吸気バルブ13の開期間に前記燃料噴射期間の燃料噴射を分割して行うように制御するとともに、吸気バルブ13の閉時期をピストン5の下死点を超えて所定時間後となるように制御する際には、前記燃料噴射期間の分割した最後の燃料噴射を吸気バルブ13の閉時期に対して所定時間前から閉時期直前まで行うように制御する。
前記制御装置100は、制御手段101によって、ピストン5の下死点を超えて所定時間後となる吸気バルブ13の閉時期と、エンジン回転数およびエンジン負荷を含む所定のエンジン運転条件とによって吸気吹き戻し期間を算出し、この吸気吹き戻し期間に基づいて前記燃料噴射期間の分割した最後の燃料噴射の噴射量を算出する。
また、前記制御装置100は、制御手段101によって、前記燃料噴射期間の分割した最後の燃料噴射の前に行う分割した先行の燃料噴射の噴射量を、前記分割した最後の燃料噴射の噴射量に基づいて算出する。
さらに、前記制御装置100は、制御手段101によって、前記燃料噴射期間の分割した最後の燃料噴射の噴射量を、吸気吹き戻し期間の所定割合にて設定し、前記分割した最後の燃料噴射の前に行う分割した先行の燃料噴射の噴射量を、前記燃料噴射期間の総燃料噴射量と前記分割した最後の燃料噴射の噴射量との差分に設定する。
次に、この実施例の作用を説明する。
内燃機関1の制御装置100は、可変バルブ機構67により変更される吸気バルブ13の開期間に、燃料噴射期間の燃料噴射を分割して行うように制御する。この実施例においては、図2に示すように、内燃機関1の内部状態を含む様々な状態に応じて要求される燃料噴射量を供給するための燃料噴射期間Cを、吸気行程において先行して燃料噴射を行う主噴射期間C1と、吸気行程において最後に燃料噴射を行う副噴射期間C2との2つに分割している。
制御装置100は、可変バルブ機構67により吸気バルブ13の閉時期をピストン5の下死点を超えて所定時間後となるように制御する際には、燃料噴射期間の分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射を吸気バルブ13の閉時期に対して所定時間前から閉時期直前まで行うように制御する。
内燃機関1の制御装置100は、図1に示すように、制御がスタートすると(S01)、エンジン回転数、エンジン負荷である吸気管圧力(あるいは、吸気量)等の内燃機関1の運転条件を示す各種センサ91〜99の出力を読み込み(S02)、要求される燃料噴射量を供給するための燃料噴射期間を算出する(S03)。
内燃機関1の運転条件により、予め設定した吸気バルブ閉時期マップから吸気バルブ13の閉時期を読み込んで設定し(S04)、この吸気バルブ13の閉時期とエンジン回転数、吸気管圧力(あるいは、吸気量)から吸気吹き戻し期間を算出する(S05)。なお、吸気吹き戻し期間は、吸気バルブ13の閉時期および内燃機関1の運転条件により予め設定しておいた吸気吹き戻し期間マップ等から読み込んで設定することもできる。
前記(S03)の計算結果である燃料噴射期間および前記(S05)の計算結果である吸気吹き戻し期間を読み込み(S06)、燃料噴射期間および吸気吹き戻し期間から主噴射期間および副噴射期間を算出する(S07)。
主噴射期間および副噴射期間は、
副噴射期間=吸気吹き戻し期間*kmap(kmap:副噴射期間補正係数)
主噴射期間=燃料噴射期間−副噴射期間
の式により算出する。
前記(S07)の計算結果である主噴射期間およびエンジン回転数、吸気管圧力(あるいは、吸気量)等の内燃機関1の運転条件を示す各種センサ91〜99の出力を読み込み(S08)、主噴射期間の吹き始め、吹き終わりを示す主噴射時期を算出する(S09)。なお、主噴射時期は、主噴射期間および内燃機関1の運転条件により予め設定しておいた主噴射時期マップ等から読み込んで設定することもできる。
前記(S07)の計算結果である副噴射時期、前記(S04)の設定である吸気バルブ13の閉時期およびエンジン回転数、吸気管圧力(あるいは、吸気量)等の内燃機関1の運転条件を示す各種センサ91〜99の出力を読み込み(S10)、副噴射期間の吹き始め、吹き終わりを示す副噴射時期を算出し(S11)、リターンする(S12)。
この内燃機関1の制御装置100は、図2に示すように、従来のスモークを抑制するための燃料噴射期間Bに対して、燃料噴射期間Cを吸気行程初期の主噴射期間C1および吸気行程後期の副噴射期間C2に分割して燃料噴射を行い、吸気バルブ閉時期によって生成される吸気吹き戻しを利用することで、あらかじめ吸気ポート7の内部に予混合気を準備し、排気ガス浄化性能、燃費、冷機始動性能の向上を図るものである。
吸気行程後期の副噴射期間C2における燃料噴射は、吸気バルブ13が閉じる寸前の、吸気バルブ13の開口すき間(面積)が小さく速度が速いタイミングで噴射することで、吸気吹き戻しに副噴射期間C2における燃料噴射による混合気をのせて吸気ポート7内で1サイクル保持し、その間にわたって予混合気を生成する。また、吸気行程後期の副噴射期間C2における燃料噴射は、吸気バルブ13の近傍に設けた燃料噴射弁51から、開いている吸気バルブ13の近傍に噴射するので、吸気吹き戻しに混合気をのせやすい。
吸気吹き戻しは、吸気バルブ閉時期およびエンジン回転数や吸気系の脈動に起因して発生するため、可変バルブ機構67により吸気バルブ13の閉時期を積極的に制御することで、吸気吹き戻し量をコントロールすることが可能である。内燃機関1の制御装置100は、この吸気吹き戻しが発生しているタイミングで副噴射期間C2の燃料噴射を行うことで、副噴射期間C2において噴射した燃料の多くが吸気ポート7ヘ逆流し、次のサイクルの吸気が始まるまでの間、ポート噴射と同じように吸気ポート7内で燃料が蒸発し、予混合気を形成するので、次のサイクルの吸気行程にて燃焼室内の混合気形成を助けることができる。
吸気行程初期の主噴射期間C1における燃料噴射は、一度に噴射する量が減ることで拡散し易くなり、蒸発混合が有利となる。また、吸気行程初期の主噴射期間C1における燃料噴射は、噴射された燃料が空気を貫徹する率が小さくなり、周壁など壁面への付着も少なくなる。吸気行程初期の主噴射期間C1における燃料噴射には、1サイクル前の吸気行程後期の副噴射期間C2における燃料噴射により吸気ポート7内に生成されて持ち越された混合気が、予混合気として加えられる。
この内燃機関1の制御装置100は、次のサイクルの吸気行程にて燃焼室内の混合気形成を助けることで、排気ガス浄化性能、燃費、冷機始動性能を向上させることができる。内燃機関1の制御装置100は、この予混合気を準備して次のサイクルの吸気行程へ混合気を供給することで、主噴射期間C1の燃料噴射における噴射量が減り、同じ噴射タイミングであっても多くの燃料を一度に噴射する場合と比較して、より良い混合気形成が可能となる。
これは、冷機始動時にも応用可能である。特に、冷機始動時は、噴射量がエンジン完暖状態と比較すると多くなることから、主噴射期間C1の噴霧と副噴射期間C2の噴霧とに分割し、混合気を形成することができれば、始動性、排気ガス浄化性能の向上することができる。
また、近年は、燃費性能向上のため、高膨張比システム(アトキンソンサイクル、ミラーサイクル等)を利用する内燃機関が増えている。このシステムは、吸気バルブ閉時期を大幅に遅くすることで実圧縮比を抑え、膨張比(メカニカル圧縮比)を高く取ることで燃費向上を狙ったシステムであるが、このようなシステムを採用した内燃機関においては、吸気吹き戻し量も通常の内燃機関に比べ多いことから、この発明の内燃機関1の制御装置100による制御を実施した際の効果である、排気ガス浄化性能、燃費、冷機始動性能の向上を高くすることができる。
このように、この内燃機関1の制御装置100は、図1で求められた吸気バルブ13の閉時期、主噴射期間および副噴射期間、主噴射時期および副噴射時期を用いて、図2に示すように、可変バルブ機構67により変更される吸気バルブ13の開期間に、要求される燃料噴射量となる燃料噴射期間Cの燃料噴射を先行の主噴射期間C1および最後の副噴射期間C2に分割して行うように制御する。この内燃機関1の制御装置100は、可変バルブ機構67により吸気バルブ13の閉時期をピストン5の下死点を超えて所定時間後となるように制御する際には、燃料噴射期間Cの分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射を、吸気バルブ13の閉時期に対して所定時間前から閉時期直前まで行うように制御する。
これにより、この内燃機関1の制御装置100は、下死点を超える吸気バルブ13の閉時期に対して所定時間前から閉時期直前まで燃料噴射期間Cの分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射を行うことで、最後に噴射した少量の燃料を混合気として吸気ポート7側に戻すことができる。
また、この内燃機関1の制御装置100は、少量の燃料を混合気として吸気ポート7側に戻すことで、充分な蒸発時間を与えることができ、燃料の気化熱を最大限利用して、スモークの発生する可能性も減らすことができる。
さらに、この内燃機関1の制御装置100は、燃焼室6内に臨む燃料噴射弁51によって噴射した燃料を吸気ポート7側に戻し、ポート噴射に近い混合気を生成することができる。
また、この制御装置100は、制御手段101によって、ピストン5の下死点を超えて所定時間後となる吸気バルブ13の閉時期と、エンジン回転数およびエンジン負荷を含む所定のエンジン運転条件とによって吸気吹き戻し期間を算出し、この吸気吹き戻し期間に基づいて前記燃料噴射期間Cの分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射の噴射量を算出するので、吹き戻し作用の大きさの基準となる吸気吹き戻し期間を算出することで、燃料噴射期間Cの分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射の噴射量の算出が最適となり、算出も速くなる。
さらに、制御装置100は、制御手段101によって、前記燃料噴射期間Cの分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射の前に行う分割した主噴射期間C1における先行の燃料噴射の噴射量を、前記分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射の噴射量に基づいて算出するので、燃料噴射期間Cの総燃料噴射量に対して過不足なく供給することができる。
さらにまた、制御装置100は、制御手段101によって、前記燃料噴射期間Cの分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射の噴射量を、吸気吹き戻し期間の所定割合にて設定するので、燃料噴射期間Cの分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射が行われる期間を、基準となる吸気吹き戻し期間の中でも効果の高い範囲とすることができ、また、燃料噴射期間Cの分割した主噴射期間C1における先行の燃料噴射の噴射量を燃料噴射期間Cの総燃料噴射量と分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射の噴射量との差分に設定することで、演算の負担も少なく、速く演算結果を得ることができる。
この発明の内燃機関1の制御装置100による作用・効果を、更に詳細に説明する。
筒内噴射型の内燃機関1は、燃焼室6内に燃料を直接噴射することにより、燃料の持つ気化潜熱が燃焼室6内の混合気の温度を下げ、充填効率を向上すると共に、耐ノック性能を向上することができる。筒内直接噴射は、圧縮比を高い値に設定することができ、高トルク、高出力化を可能とする。また、筒内直接噴射は、燃焼速度が速いため、EGR制御によって大量の排気ガスを導入しても安定した燃焼が可能となる。内燃機関1の制御装置100は、EGR制御を広い運転範囲に行うことで、NOxおよびポンピングロスを低減し、排気ガス浄化性能を向上し、低燃費とすることができる。
この内燃機関1の吸気バルブ13は、基本的に、開時期(開弁タイミング)から閉時期(閉弁タイミング)までの開き時間(開期間)がクランク角180度以上を有し、この開き時間が内燃機関1の吸気行程となる。この開き時間(開期間)は、可変バルブ機構67によって進角・遅角されることにより変化し、吸気行程はクランク角に対応した上死点(TDC、0度、±360度(その360度周期))および下死点(BDC、±180度(その360度周期))を跨いで変化する。
内燃機関1の吸気バルブ13の開閉時期を変更する可変バルブ機構67は、油圧制御弁76を介在させた油圧制御タイプであり、吸気カム軸9の位相をクランク軸68の基準位置に対して変更させるものである。なお、可変バルブ機構67は、上記油圧制御タイプ以外でも、電動モータを介在させた電動制御タイプ等を適用可能である。制御装置100には、この吸気バルブ13の開閉時期の位相を、人為操作およびエミッション条件を含む様々な運転条件に応じて進角および遅角するように変更制御する位相変更制御機能を設けている。
可変バルブ機構67は、吸気バルブ13の位相を遅角することによって、閉時期が下死点(BDC)を跨ぐことになり、実質的な圧縮行程は短くなる。つまり、実圧縮比が変化する。これは、位相が変化しない膨張行程との関係で、圧縮行程より膨張行程の方が長い高膨張比となり、内燃機関1の高効率化に寄与する。一方、可変バルブ機構67は、吸気バルブ13の位相を進角することによって、開時期が上死点(TDC)を跨ぐことになり、また、排気バルブ14の開期間とオーバーラップする期間が増大する。エンジン回転数によってこの位相変更制御を実施することは、動力性能(とくにトルク)の向上と低燃費と排気ガス有害成分低減を、運転領域全域にわたってバランスさせて成立するのに貢献することができる。
内燃機関1の制御装置100は、内燃機関1の内部状態を含む様々な状態に応じて要求される燃料噴射量となる燃料噴射期間Cの燃料噴射を、主噴射期間C1および副噴射期間C2に分割して行うように制御する。この燃料噴射期間Cを分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射は、吸気バルブ13の閉時期に対して所定時間前(例えば:数ms〜数十ms)から閉時期と同時ないし直前(例えば:0〜1ms未満)まで行う。副噴射期間C2における最後の燃料噴射は、同じクランク角度どうしであっても、エンジン回転数に依存して、所要時間が変わる。
この燃料噴射期間Cを分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射の噴射量は、次回(1サイクル後)の燃焼に使用されることになるので、次回の燃料噴射期間Cを分割した主噴射期間C1との総和が、均質燃焼となるようになる。燃料噴射期間Cを主噴射期間C1および副噴射期間C2に分割して行う制御は、部分負荷運転時や冷機始動時を主な適用域とする場合、急激な運転状態の変動ではないので、ずれの問題は少ない。また、燃料噴射期間Cを分割して行う制御は、後述するように各種補正を含むので、極微小なずれはなくすことができる。
燃料噴射期間Cを分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射は、ほぼ同じ噴射時期かつ同じ噴射期間のポート噴射を行った場合と同様にみなすことができる。燃料噴射期間Cを分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射を行う制御は、吸気ポート13に別な燃料噴射弁を設ける必要がないので、複雑な選択的な切替制御も必要なく、スペース的にもコスト的にも有利である。
上述実施例においては、燃料噴射期間Cを分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射による予混合の演算を常に行うことを示したが、予混合を行うモード(予混合モード)と予混合を行わないモード(非予混合モード)とを切り換える場合にも、そのまま適用できる。この場合は、主噴射期間C1および副噴射期間C2の各噴射期間を算出する際にモード移行を考慮して決定した後、実際の噴射を制御する噴射駆動回路に信号を出力すれば良い。
非予混合モードから予混合モードヘの遷移は、前回(1サイクル先)の燃料噴射において、予混合を目的とした副噴射期間C2における燃料噴射を行っていない場合、今回、通常の要求される燃料噴射量の総量(総燃料噴射量)を主噴射期間C1における燃料噴射にて行って、さらに、副噴射期間C2における燃料噴射をも行う。これにより、非予混合モードから予混合モードヘの遷移は、過不足なくモードを移行できる。次回は、総燃料噴射量から副噴射期間C2における燃料噴射量を差し引いたものが、主噴射期間C1における燃料噴射量となる。
予混合モードから非予混合モードヘの遷移は、今回、通常の燃料噴射量の総量から副噴射期間C2における燃料噴射量を差し引いた主噴射期間C1における燃料噴射を行った後、副噴射期間C2における燃料噴射を行わない。これによって、自然と非予混合モードに推移する。次回は、通常の燃料噴射量の総量を主噴射期間C1における燃料噴射にて行うか、あるいは、別な分割噴射を行う。
燃料噴射期間Cの分割で、主噴射期間C1と副噴射期間C2との配分は、内燃機関1の素性、すなわち、燃焼室6の形状(ピストン5の頂面5aやシリングヘッド3の構成面を含む)や吸気バルブ13・排気バルブ14の配置、吸気ポート7・排気ポート8の形状、燃料噴射弁51の配置等によっても異なるため、一律に決めることはできない。
図2に示すように、燃料噴射期間Cの分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射を始める時期は、下死点(BDC)を過ぎて所定期間経過してからとしている。ピストン5の往復運動が下降から上昇に反転した後の間もない時では、慣性で流れ込む吸気の流れを実質的に押し返すに至らない空走期間がある。また、吸気吹き戻しが始まる時でも、吸気バルブ13のリフト量が小さくなり、バルブ開口面積が小さい方が大きいときと比べて流速が大きくなり、急激に吸気吹き戻し流速が大きく成長する。その成長は、下死点(BDC)と上死点(TDC)との中間位置付近が、下死点(BDC)付近と比べてピストンスピードが速くなることから、中間位置付近に近づくにつれてガスヘの付勢力が大きく顕著となる。
これらを考慮して、制御装置100は、有効と考えられる吸気吹き戻し効果が得られる吸気吹き戻し期間を設定し、吸気吹き戻し期間の所定割合を係数にて求めて、副噴射期間C2(噴射時間)に設定している。副噴射期間C2の噴射開始時期は、吸気バルブ閉時期直前から副噴射期間C2(副噴射時間)前としている。この副噴射期間C2の噴射開始時期の設定は、流れが最も強く、吹き戻された混合気を吸気ポート7内の下流側、とくに、吸気バルブ13が当接するバルブ座周辺に滞留させるためである。
内燃機関1の運転状態で変化する吸気吹き戻しの量は、各パラメータを検証して、経験的に、管理できるようになる。多気筒を有する内燃機関1の場合、気筒どうしで次に吸気行程にあたる気筒、または、それ以降に吸気行程にあたる気筒による吸引による圧力勾配に基づいた流動の影響は、ばらつきに結びつくおそれがあるが、吸気ポート7や吸気マニホルド20の分岐管の長さを充分に長く採れば、影響を充分小さく抑制できる。スロットルバルブ22下流側の吸気通路21の内部の圧力、すなわち、吸気管圧力(過給機28がない場合は吸気負圧)を検知することでコントロールができる。
燃料噴射期間(総燃料噴射量)における始動後の通常噴射制御は、基本的に、燃料噴射時期を、カム角センサ96の信号を基に吸気行程の所定のタイミングとして、シーケンシヤル噴射を行う。総燃料噴射量に対応する燃料噴射時間は、吸気管圧力とエンジン回転数により基本噴射時間を決定し、この基本噴射時間に各センサからの信号による補正を加え、運転状態に応じた最適な燃料噴射時間を決定する。内燃機関1の運転条件より求める総燃料噴射量(=分割噴射の総和)は、様々な補正を含めたものとしている。
総燃料噴射量の補正は、吸気温の変化による空気密度の差を補正する吸気温補正、冷機時の冷却水温に応じて燃料噴射量を増量し、暖機が進むにつれ補正量を漸減する暖機補正、大気圧の変化によって生じる空燃比のずれを補正する大気圧補正、スロットル開度の変化に応じて燃料噴射時間を補正するスロットル開度補正、加速、減速状態を検出して、加速時は補正量を増加させることにより加速性能の向上を図り、減速時は補正量を減少させことにより排気ガス抑制及び燃費向上を図る加速増量減速減量補正、EGR導入時又はEGRカット時の空燃比の変化を補正するEGR補正、各運転域における目標空燃比からのずれを補正する空燃比(A/F)補正、排気ガス中の酸素濃度から空燃比を理論空燃比に保つよう補正するフィードバック補正、経年変化等でずれるベース空燃比を理論空燃比付近に保つよう補正する学習補正、燃料蒸発ガス導入時又はカット時の空燃比の変化を補正するパージ濃度補正、を含むものである。
始動時噴射制御の燃料噴射時期は、エンジン回転数がアイドリング回転数近傍の所定値以下の時、カム角センサ96の信号を基に吸気行程の所定のタイミングでシーケンシャル噴射を行う。始動時基本噴射時間は、冷却水温が低いほど噴射時間を長くして始動性を向上させる。
分割して噴射を行う燃料噴射期間の全てが吸気行程噴射となり、遅いタイミングでの噴射はないので、スモークは発生し難い。吸気行程末期に噴射を行っても、そのまま燃焼に使用しないようにしている。これらにより、混合気を均質にすることができる。
トータル的に同じ噴射量、同じ噴射期間であっても、噴射末尾の微量が、偏在した比較的大きな粒径の霧化状態となるか、充填された混合気の全体にわたって拡散した気化状態となるかによって、燃焼の安定度、火炎伝播は異なってくる。排気ガスの浄化性能は、向上する。同じ安定度ならば、噴射量は少なくて済むので、運転中の累積による省燃費効果は大きなものとなる。
分割して噴射を行う燃料噴射期間Cの副噴射期間C2における最後の燃料噴射をノック抑制噴射期間とする場合は、吸気バルブ13の閉時期から気化時間を遡るように考慮する。よって、この予混合を目的とした分割した副噴射期間C2における最後の燃料噴射において、混合気の冷却に寄与する部分があるか否かは、判別できる。吸気行程後期の燃料噴射であっても運転条件が異なるので、両者を分けて考えることができる。
この内燃機関1の制御装置100は、微粒化を促進させる燃料によって、均質な燃焼を実現し、動力性能と燃費性能の向上を両立させることができる。
この内燃機関1の制御装置100は、圧縮行程噴射がないので、燃料供給圧を高圧に高めたり、筒内に臨ませて設けた燃料噴射弁51に高圧耐性を与えたりしなくても、筒内噴射型システムを構築することが可能になる。燃料供給圧の低圧なシステムによって、シリンダヘッド3回りをコンパクトにできる。なお、噴射燃料の微粒化、噴射時間の短縮等で優れている高圧型のシステムにも適用できるのは当然である。
点火時期制御は、エンジン回転数が所定アイドル回転数以下のとき、BTDC(TDC前)の所定角度で点火する始動時制御モードと、点火時期の大幅な進角、遅角を行うと内燃機関1に悪影響を与えるため、BTDCの所定角度〜ATDC(TDC後)の所定角度間で制御する通常時制御モードとがある。アイドル時は、エンジン回転数により決定されるアイドル基本点火時期に冷却水温、吸気管圧力に応じた補正を加えて最適な制御を行う。アイドル時以外は、吸気管圧力とエンジン回転数により決定される基本点火時期に各種補正を加えて最適な制御を行う。
点火時期の始動時制御モードでは、エンジン回転数がアイドリング回転数近傍の所定値以下のとき、BTDC所定角度で点火する。
点火時期の補正は、冷却水温に応じて補正を行い、冷却水温が高い程遅角する水温補正、吸気温に応じて補正を行い、吸気温が高い程遅角する吸気温補正、通常より遅角側となるBTDCの所定角度〜ATDCの所定角度間のノックレベルをノックセンサ97により検出し、ノックレベルに応じた遅角を行うノック制御補正、一定条件下の加速時に遅角し、ノッキングを防止する加速時補正、を行う。
最適となる点火時期は、様々なパラメータによって様々に変化するが、基本的に、内燃機関1のエンジン回転数が高く増大するにつれて、低い場合と比べて進角側となる。このタイミング近傍において自己着火による異常燃焼、すなわちノッキングが起こらない状態としている。最適となる点火時期は、回転慣性やクランクオフセットを考慮して、最適な所に設定すればよい。本案の制御装置100は、ノック限界となる進角点火時期を高めることができる。このノック改善により、内燃機関1の高圧縮比化ができ、エンジン回転数やエンジン負荷に基づいた最適な点火時期の特性の選択範囲を広げ、進角特性を向上することができ、高性能な内燃機関1を実現できる。
この内燃機関1には、スロットルバルブ22をバイパスするように設けられたアイドル空気通路63にアイドル空気量制御バルブ64を設けている。このアイドル空気量制御バルブ64によるアイドル制御は、暖機状態やエアコン負荷などの運転条件に応じたアイドル空気通路63のアイドル空気量(バイパスエア量)を演算し、これに応じてアイドル空気量制御バルブ64のバルブ開度を制御することにより、アイドル回転速度を安定させる。アイドル空気量制御バルブ64のバルブ開度は、状況に応じて、次の各補正モードで制御する。
アイドル空気量の補正は、実アイドル回転数と目標アイドル回転数との差に応じて、アイドル空気量を補正するフィードバック補正、ジェネレータフィールドモニタ値と目標アイドル回転数に応じてアイドル空気量を一定量増量する電気負荷補正、始動後の冷却水温に応じてアイドル空気量を決定して、暖機状態に応じて補正量を漸減する始動直後補正、を行う。
エンジン回転数がアイドリング回転数近傍の所定値以下の時は、冷却水温に応じてバルブ開度を決定するアイドル空気量制御バルブ64の始動時制御モードにて制御する。なお、通常制御モードでは、エアコンスイッチ、シフトポジション、冷却水温の各状態により基本バルブ開度が定められており、それに上記補正を加えてアイドル空気量制御バルブ64のバルブ開度を決定する。
スロットルバルブ22の上流側に流量センサを設けている場合は、この流量センサを利用し、不確定要素となるEGR(吸気通路21への排気ガスの還流)を使用する場合に、EGRの流量を管理できれば、精度も得られる。
EGR制御は、エンジン回転数及び吸気管圧力の状態に応じてEGR制御バルブ66の目標開度を定めており、それに水温補正を加えて、EGR制御バルブ66のバルブ開度を最適に制御する。
内燃機関1は、過給機28による過給圧の付加有無に関わらず、吸気バルブ13の閉時期に依存してほぼ一定の割合の吸気吹き戻しが生じる。制御装置100は、それを管理することにより、予混合手段として利用することができる。吸気バルブ13の位相を遅角側に大きく変えることは、充填率を下げることにもなるので、過給機28を利用して充填率を上げることによって、出力を確保することが、車両の運転性確保の点で望ましい。
ガスの流れは、基本的に、圧力勾配や慣性によるところが大きい。温度勾配、成分の濃度勾配によっても流れが生じるが、自然拡散的な流れは弱くゆっくりとなる。ガスには、密度に関して平衡に保つ作用が常に働く。粗密の伝播は音となる。
なお、内燃機関1の燃料が水素ガス等の気体燃料である場合は、吸気吹き戻しの流れに分割した最後の燃料噴射がのり易くなる。
内燃機関1は、吸気吹き戻しにより、吸気マニホルド20内に大きな粗密が生じる。この筒内噴射型の内燃機関1を定常状態で運転することにより、吸気マニホルド20の管長やサージタンク19の容量を利用して粗密波を調整し、定在波を目標とするよう安定化すれば、充填率の変動も抑えられる。筒内噴射型の内燃機関1を定常状態と運転するのは、無段変速機(CVT等)を組み合わせることによって達成でき、その効果を得られる運転範囲をより広げることができる。
分割した燃料噴射期間Cの吸気行程初期に行う主噴射期間C1の燃料噴射は、上述実施例においては1つであるが、さらに複数に分割して行っても良い。
筒内に臨ませて設けた燃料噴射弁51のノズルを改良し、噴霧の分散を、指向させて所望の分布状態として、燃焼室6内に最適化するようにしても良い。
燃料噴射の補正には、始動直後に増量し、その後補正量を漸減することで、運転性を円滑にする始動直後増量補正、バッテリ電圧の低下による噴射時期の遅れを補正するため、バッテリ電圧の降下具合に応じて、燃料噴射弁51ヘの通電時間を長くする電圧補正、燃圧の変動による噴射量の増減を補正する燃圧補正、を含めても良い。
点火時期の補正には、アイドル時のエンジン回転数変動に応じて補正を行い、エンジン回転数が低下した場合は進角、上昇した場合は遅角するアイドル安定化補正、フューエルカットからの復帰時のエンジン回転数変動を減らす為補正を行うフューエルカット復帰補正、変速時に遅角することでエンジントルクを下げ変速ショックを抑制するトルクリダクション要求補正、を含めても良い。
スロットルバルブ22を、電子制御型スロットルバルブとしても良い。電子制御型スロットルバルブとすることによって、急激な変化を抑制したり、無駄な全負荷状態を減らしたりすれば、過渡応答が安定し、より安定した制御が可能となる。
内燃機関1の吸気行程では、吸気流速が速い方が燃料の霧化や新気との均質化する混合が進み易い。内燃機関1に、そのようなデバイスを設けても良い。例えば、エンジン回転数の低回転側では、バルブリフト量を変更して、流速を上げ、そのような均質化する混合を比較的短い時間で行うことが可能になる。また、タンブルやスワールを利用して、撹絆しながら流速を上げ、そのような均質化する混合を比較的短い時間で行うことが可能になる。早く均質混合を行って安定的に燃焼することができる範囲で、そのような技術を組み合わせても良い。
可変バルブ機構67は、2段ステージ、3段ステージといったマルチステージカムの選択的乗り換えによって構成しても良いし、可変バルブタイミング(VVT)機能だけでなく、可変バルブリフト(VVL)機能を併せ持つように構成しても良い。
燃料噴射制御手段106や位相変更制御手段107等の各制御装置は、CANやLINなどのLANによる通信によって構成しても良い。
この発明の筒内噴射型内燃機関の制御装置は、混合気の燃焼を改善して排気ガスおよび燃費性能を向上させ、冷機時における始動性能および冷機時における排気ガス浄化性能を向上させるものであり、吸気バルブの閉時期をピストンの下死点よりも遅く設定した内燃機関であって、燃焼室内に直接燃料を供給する内燃機関に適用することができる。
実施例を示す燃料噴射制御のフローチャートである。 実施例を示すクランク角に対する噴射時期を示す図である。 実施例を示す筒内噴射型内燃機関の制御装置のシステム構成図である。 実施例を示す筒内噴射型内燃機関の拡大断面図である。 実施例を示す可変バルブ機構のシステム構成図である。 実施例を示すクランク角に対するバルブリフトを示す図である。 従来例を示すクランク角に対する噴射時期を示す図である。
符号の説明
1 内燃機関(筒内噴射型内燃機関)
5 ピストン
6 燃焼室
7 吸気ポート
8 排気ポート
9 吸気カム軸
10 排気カム軸
13 吸気バルブ
14 排気バルブ
41 燃料供給装置
51 燃料噴射弁
67 可変バルブ機構
76 油圧制御弁
83 油圧アクチュエータ
100 制御装置
101 制御手段
106 燃料噴射制御手段
107 位相変更制御手段

Claims (4)

  1. 内燃機関の燃焼室内に直接燃料を供給可能な燃料供給装置を備え、前記内燃機関の内部状態を含む様々な状態に応じて要求される燃料噴射量を前記燃料供給装置により供給するための燃料噴射期間を制御する制御装置を備え、所定の条件では前記燃料噴射期間の燃料噴射を複数回に分割して行うように制御する燃料噴射制御機能を備えた複数の気筒を有する筒内噴射型内燃機関の制御装置において、前記内燃機関に吸気バルブの開閉時期を変更する可変バルブ機構を設け、この可変バルブ機構による吸気バルブの開閉時期を人為操作およびエミッション条件を含む様々な条件に応じて進角および遅角するように制御する位相変更制御機能を前記制御装置に設ける一方、前記制御装置は、前記可変バルブ機構により変更される複数の気筒に対応する各々の吸気バルブが開放し始めてから閉じられるまでの1サイクルの開期間内に、主噴射期間C1と副噴射期間C2とから構成された分割噴射を終了できるように制御するとともに、前記吸気バルブの閉時期をピストンの下死点を超えて所定時間後となるように制御する際には、前記主噴射期間C1に行われる燃料噴射を、前記吸気バルブが開放し始める吸気行程の初期に開始する一方、前記副噴射期間C2に行われる燃料噴射を、前記吸気バルブの閉時期に対して所定時間前から閉時期直前まで行うことを特徴とする筒内噴射型内燃機関の制御装置。
  2. 前記制御装置は、ピストンの下死点を超えて所定時間後となる吸気バルブの閉時期と、エンジン回転数およびエンジン負荷を含む所定のエンジン運転条件とによって吸気吹き戻し期間を算出し、この吸気吹き戻し期間に基づいて前記副噴射期間C2の燃料噴射の噴射量を算出することを特徴とする請求項1に記載の筒内噴射型内燃機関の制御装置。
  3. 前記制御装置は、前記副噴射期間C2の燃料噴射の前に行う前記主噴射期間C1の燃料噴射の噴射量を、前記副噴射期間C2の燃料噴射の噴射量に基づいて算出することを特徴とする請求項2に記載の筒内噴射型内燃機関の制御装置。
  4. 前記制御装置は、前記副噴射期間C2の燃料噴射の噴射量を、吸気吹き戻し期間の所定割合にて設定し、前記副噴射期間C2の燃料噴射の前に行う前記主噴射期間C1の燃料噴射の噴射量を、前記燃料噴射期間の総燃料噴射量と前記副噴射期間C2の燃料噴射の噴射量との差分に設定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の筒内噴射型内燃機関の制御装置。
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