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JP5069343B2 - 炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー及びその製造方法 - Google Patents

炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、基板、絶縁層、絶縁層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、これらのソース電極とドレイン電極との間に設けられる、中間部が切れた形態のチャネル、及び中間部の切れたチャネルを中心にその上部を覆っている、検出対象物質が固定される検出領域を有するバイオセンサー及びその製造方法、並びに該バイオセンサーによってバイオ物質を検出する方法に関する。特に、本発明は、電界効果を用いる炭素ナノチューブトランジスタを用いてバイオ物質を検出する時、伝導性物質で構成された検出領域にレセプターを固定させて検出対象物質と選択的に結合させることで接触抵抗が変わり、これによってソース電極からドレイン電極へ流れる電流の移動量が変わることを用いて標的バイオ物質を検出するバイオセンサー及びその製造方法、並びに該バイオセンサーを用いて標的バイオ物質を検出する方法に関する。
一般に、バイオセンサーとは、「測定対象物から情報を得る時、生物学的要素を用いたり生物学的体系を摸倣したりして、色、蛍光、電気的信号などのように認識可能な信号に変換させるシステム」のことを意味する。バイオセンサーは、測定対象物質、センサーに固定した生物学的要素、信号変換器の種類によって様々な形態にすることができ、その信号変換方法には、電気化学(electrochemical)、熱(thermal)、光学(optical)、力学的(mechanical)方法などを含む様々な物理化学的手法が用いられている。
バイオセンサーは、測定対象物質、センサーに固定した生物学的要素、信号変換器の種類によって様々なものがある。最初のバイオセンサーとしては、1962年クラーク(Clark)がブドウ糖測定を目的に透析膜を用いて製作したグルコース(Glucose)センサーが知られており、初期には、酵素を信号変換素子に固定して製作したものが大部分であったが、最近では、分子生物学の急速な発達に伴って単一クローン抗体や抗体−酵素結合体などを用いて製作したセンサーが開発されて使われている。また、大量の遺伝情報を超高速で処理するためのDNAチップ及びたんぱく質チップのようなチップセンサーに対する開発研究も活発に進んでおり、分子生物学技術、ナノ技術及び情報通信技術が融合した先端センサーの開発に多くの努力が集中されている。
バイオチップ(biochip)は、ガラス、シリコン、あるいはナイロンなどの材質からなる小さい基板上に、DNA、たんぱく質などの生体分子(biomolecule)を固定化させておいたものであり、ここで、DNAを固定化させておいたものをDNAチップ、たんぱく質を固定化させておいたものをたんぱく質チップ(protein chip)と称する。また、バイオチップは、マイクロアレイチップ(microarray chip)とマイクロフルイディックスチップ(microfluidics chip)とに大別される。マイクロアレイチップは、数千または数万個以上のDNAやたんぱく質などを一定の間隔で配列して付着させ、分析対象物質を処理してその結合様相を分析できるバイオチップで、その代表には、DNAチップ、たんぱく質チップなどがある。マイクロフルイディックスチップは、ラボオンチップ(Lab-on-a-chip)とも呼ばれるもので、微量の分析対象物質を注入して、チップに固定化している各種生体分子プローブまたはセンサーと反応する様相を分析できるバイオチップである。DNAチップは、固定化させるプローブの種類によって、オリゴヌクレオチドチップ(oligonucleotide chip)、cDNAチップ及びPNAチップなどに分類することができる。オリゴヌクレオチドチップ技術は、大規模の遺伝的多様性を調べうる新しい方法であって、支持体における極めて小さい空間の正確な位置に多数の合成オリゴヌクレオチドを付着して、ごく少ない量の標的塩基配列と混成化反応をすることで、同時に多くの遺伝子を検索することができる。このようなオリゴヌクレオチドチップは、薬剤耐性検索診断、突然変異検索、単一ヌクレオチド多型(single nucleotide polymorphism:SNP)、疾病診断または遺伝子型決定(genotyping)に大きく寄与すると期待される。
バイオセンサーの応用分野は、主に、下記の6つに分類することができる。
(1)臨床診断/医療分野:全体バイオセンサー市場の90%程度を占めている。血糖測定用グルコースセンサーが大部分であるが、POCT(point-of-care testing)への需要が急増していることから、乳酸、コレステロール、尿素などの様々な生体物質を測定できるバイオセンサーの占有率が高まると予想される。
(2)環境:環境ホルモン、廃水のBOD、重金属、農薬などのような環境関連物質を検出する。ダイオキシンのような各種の環境ホルモンに選択性を有し、低い濃度まで感知できるセンサーに対する研究が多角的に進められている。
(3)食品:残留農薬、抗生剤、病原菌、重金属のような有害物質の検出に使われるもので、食品安全性検査に適用されている。
(4)軍事向け:サリン、炭疽菌のような大量殺傷用の生化学武器を感知することができる。生物学的武器に対応するためには、迅速な測定時間及びフィールドでの使用のために小型化が必須である。
(5)産業向け:発酵工程で微生物の成長条件を制御したり、化学/石油化学、製薬、食品工程などで発生する特定化学物質をモニタリングすることができる。
(6)研究向け:生体物質同士の結合に対する速度論的な分析、単一分子の挙動測定が可能である。
電界効果トランジスタは、ゲートに入力される電圧信号を、ソース電極またはドレイン電極から出力される電流信号に変換する素子である。電界効果とは、ある半導体に電界をかかった時、半導体中のキャリア(自由電子または正孔)が、印加された電界によって、(+)側には(−)キャリア、すなわち、電子が集まり、(−)側には(+)キャリア、すなわち、正孔が集まることで、電気を流すことのできる導電性チャネルを形成する現象のことをいう。
ソース電極とドレイン電極との間に電圧を加えると、チャネルに存在する荷電粒子が、ソース電極及びドレイン電極の間を電界方向に沿って移動し、ソース電極またはドレイン電極から電流信号として出力される。この時、出力される電流信号の強度は、荷電粒子の密度に比例する。絶縁体を通じてチャネルの上方、側面または下方などに設置したゲートに電圧を加えると、チャネルに存在する荷電粒子の密度が変化し、これを用いてゲート電圧を変換させることによって電流信号を変化させることができる。
炭素ナノチューブは、銅と同じ程度の優れた電気伝導性、ダイアモンドと同じ程度の優れた熱伝導性、1/6重量であって、鋼鉄より100倍も優れた強度及び破壊に対する高いストレインを奏することができる。1991年に日本のIijima博士により発見された炭素ナノチューブは、準1次元的な量子構造によって特異な様々な量子力学的現象が観測されたが、それらの直径が数〜数十ナノメートル(nm)と極めて小さく、縦横比が大きく、中空であるという特徴を有する。このような炭素ナノチューブの非常に独特な1次元炭素構造によって優れた機械的、熱的、電気的性質を示し、次世代新素材物質として評価されている。この炭素ナノチューブは、様々な特長の中でも、機械的物性に優れていると同時に、電気伝導性及び熱伝導性が高いという点から、産業全般にわたって電界効果トランジスタ、平板表示素子、電子素子などへの応用が研究されており、バイオセンサーに応用しようとする試みも増加しつつある。
特に、トランジスタ素子への応用について説明すると、1998年にオランダのデルフト大学の研究員らは、炭素ナノチューブを用いて常温で作動するトランジスタを実現した(非特許文献1)。この結果によれば、物理的・電気的性質に優れた炭素ナノチューブベースの電子素子を用いる場合、既存のシリコンベースの電子素子に比べて動作速度が約100倍も速く、高集積度が可能であり、電力の損失量も少ないことが明らかになった。このような結果は、将来の炭素ナノチューブベースの電子素子への応用可能性を示した最初の例といえる。
それ以来、2009年まで、炭素ナノチューブに基づく様々なナノ素子の応用は、世界の多くの研究機関で研究が進められており、それについての数多くの論文や特許などが発表されている実情である。米国のハーバード大学のグループの研究員らは、2009年に、電界効果トランジスタ型バイオセンサーのうち、炭素ナノチューブをチャネルに用いてバイオ物質の表面電荷の変化を高感度で測定した結果を紹介した(非特許文献2)。その後、技術の発達に伴い、酵素反応によって表面における大きい電荷の変化を測定し、以降、たんぱく質−たんぱく質結合の微細な表面電荷の変化を測定したし、最近では、たんぱく質の接近による表面場の変化を測定するレベルに至った。2005年には、大韓民国の忠南大学校と化学研究院の研究陣らが共同で、炭素ナノチューブ電界効果トランジスタ(CNT−FET)を用いたバイオセンサーの概念を紹介した。これは、炭素ナノチューブの表面にCDI−Tween20をリンカーとしてDNAアプタマー(aptamer)を付着し、アプタマー自体の負電荷が標的物質と結合した時、負電荷が消えながら炭素ナノチューブを通じた電気伝導度が減少する特徴を利用するもので、特定ターゲット分子を10nMレベルで測定し、高性能のCNT−FETバイオセンサーを実現した(非特許文献3)。このような研究は引き続き行われ、炭素ナノチューブ表面と検出に必要なバイオ物質との結合距離が近いほど感度の増加が得られるという事実を発表し、CNT−FETセンサーを用いて1.8nMのIgE検出に成功するに至り、産業的応用可能性を増大させた(非特許文献4)。
特許文献1は、標的分子がプローブに混成化すると、標的分子に付着された炭素ナノチューブによって伝導度が増加して、容易に標的分子の混成化を検出することができるということに関するもので、上端電極、底電極及びこれら電極の間に設けられる絶縁層からなるバイオチップを開示している。
特許文献2は、不導体基板上にナノメートル径の炭素ナノチューブを成長させた後、標的バイオ分子と結合する様々なレセプターの正味電荷(net charge)と反対の極性の電荷を炭素ナノチューブにかけて、それぞれのレセプターを任意にチップ上の一定の位置に固定させることによって、従来のマイクロ(10−6)レベルのアレイ技術から進化し、ナノ(10−9)レベルで所望のパターンに配列したり高集積化させたりすることができる特許で、基板と、該基板上に配列された複数の炭素ナノチューブと、を含み、該炭素ナノチューブに電場を印加することによって、標的バイオ分子と結合するレセプターを、所望の位置の炭素ナノチューブ上に選択的に付着させることを特徴とするナノアレイタイプのバイオ分子検出センサーを開示している。
また、特許文献3は、基板と、この基板に形成されたソース電極及びドレイン電極と、該ソース電極及びドレイン電極間の電流通路となるチャネルと、を含む電界効果トランジスタを用いて検出対象物質を検出するためのセンサーであって、この電界効果トランジスタが、当該検出対象物質と選択的に相互作用をする特定物質を固定させるための相互作用感知ゲートと、この相互作用を当該電界効果トランジスタの特性の変化として検出するために電圧が印加されるゲートと、を有することを特徴とする発明を開示している。
しかしながら、これまでの多くの研究・努力にもかかわらず、炭素ナノチューブを用いたバイオセンサーの応用において、検出物質が1nM以下のような低濃度を有する場合についての研究結果は未だ発表されていない現状である。
大韓民国公開特許第2007−53545号 大韓民国登録特許第10−455284号 大韓民国公開特許第2007−22165号
Sander J. Tans等、Nature 1998, 393, 49 Charles M. Liber等、Science, 2001, 293, 1289 Hye-Mi So等、J. AM. Chem. Soc., 2005, 34, 11906 Kenzo Maehashi等、Anal. Chem., 2007, 79, 782
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、検出対象物質の濃度が1nM以下であるバイオ物質(biomolecules)の検出に用いて好適なバイオセンサーを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記のような特性を有するバイオセンサーの製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記のような特性を有するバイオセンサーを用いて標的バイオ物質を検出する方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、電界効果を用いる炭素ナノチューブトランジスタを用いてバイオ物質を検出する時、伝導性物質で構成された検出領域にレセプターを固定させ、該レセプターと検出対象物質とを選択的に結合させることによって接触抵抗が変わり、これによってソース電極からドレイン電極へ流れる電流の移動量が変わる点を用いて標的バイオ物質を検出するバイオセンサーを開示する。
特に、本発明は、基板、絶縁層、絶縁層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、該ソース電極及びドレイン電極の間に設けられる、中間部が切れた形態のチャネル、及び中間部の切れたチャンネルを中心に上部を覆っている、検出対象物質が固定される検出領域を有するバイオセンサーに関する。
本発明のバイオセンサーによると、より広いショットキー接触面積を有することができるため、様々なコンテンツのバイオ物質を1nM以下の低濃度でも高感度で検出することが可能になる。
本発明の実施例による炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサーの概略的な模式図で、使用様相を示している。 本発明の実施例による炭素ナノチューブ電界効果トランジスタベースのバイオ物質検出センサーの製造方法を概略的に示す模式図である。 (a)は、図2で製造された素子において、検出物質が形成される金(Au)層と電極とを繋ぐ炭素ナノチューブがネットワークの構造で形成されたAFMイメージと断面の高さを示すイメージであり、(b)は、ネットワーク炭素ナノチューブのSEMイメージであり、(c)は、製造される素子の炭素ナノチューブが、ラングミュアーブロジェット法を用いて整列され、方向性を有するフィルム形態で形成されたSEMイメージである。 本発明の実施例によって製造された素子において、ネットワーク構造の炭素ナノチューブチャネルに流れる電流が、印加したゲート電圧によって変わる様子を示すグラフである。 (a)は、テフロン(登録商標)セルを用いて本発明の実施例によって行うたんぱく質検出方法を概略的に示す図であり、(b)は、牛血清アルブミンたんぱく質で保護された素子上に固定されたプローブ物質であるビオチンと互いに特異的結合を形成する標的たんぱく質であるストラプトアビジンたんぱく質との結合を示す模式図である。 ビオチンとストラプトアビジンによる特異的な認識反応に対する素子のコンダクタンスの降下を示すグラフであって、(a)は、ビオチン分子と特異的反応性を有しない牛血清アルブミンたんぱく質を素子に適用した時、電気的信号の変化がないことを示しており、(b)〜(e)はそれぞれ異なる濃度で、特異的反応を形成するストラプトアビジンたんぱく質を反応させた時、最低1pMの濃度でもコンダクタンスの降下が現れたことを示すグラフである。
本発明のバイオセンサーに使用される基板は、特に限定されないが、シリコン、ガラス、溶融シリカ、石英、プラスチック、ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane:PDMS)などのような各種の不導体性ポリマー及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる。
上記絶縁層は、電気的絶縁材料からなることができ、この電気的絶縁材料は、例えば、シリコンジオキシド(SiO2)、シリコンナイトライド(Si3N4)、テフロン(Teflon(登録商標))、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むことができる。この絶縁層は、チャネルの下部、上部及び側部のいずれかの部分に形成することができる。
ソース電極及びドレイン電極は、金、銀、チタン、及び白金などで構成される。
中間部が切れた形態のチャネルは、炭素ナノチューブであり、半導体の性質を有することが好ましい。
本発明において、検出対象物質(target protein)が固定される検出領域は、金属層及び半導体層からなる。ここで、金属層は、特に限定されないが、金(Au)、チタン(Ti)、白金(Pt)、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、及びニッケル(Ni)及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれることができる。また、半導体層は、特に限定されないが、pまたはnドープのシリコン(Si)、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウム/砒素(GaAs)、ガリウム/窒素(GaN)、インジウム/リン(InP)などからなる群より選ばれる。本発明において、この領域はゲート電極の役割を果たす。
上記バイオセンサーは、検出領域に固定されるレセプターを備えて、バイオ物質(biomolecules)を検出する。レセプターは、検出対象物質と特異的結合により相互作用できる物質のことを指す。検出領域に固定されたレセプターに検出対象物質が特異的に結合して相互作用をすることで電極の仕事関数が変化し、結果として炭素ナノチューブと検出領域との接触抵抗を変化させることとなる。この接触抵抗の変化は、電流の流れに影響を与え、これを用いて検出対象物質の検出がなされる。
相互作用感知ゲート上には数多くの特定物質を固定化させることができる。特定物質が固定化された相互作用感知ゲートは、その機能性物質と相互作用する物質を検出するバイオセンサーに好適に使用することができる。また、検出されるシグナルの増幅や特定を目的として、特定物質と相互作用した物質とさらに相互作用する物質を、酵素または電気化学的反応や発光反応を有する物質、荷電を有する高分子及び粒子などで標識することも可能であり、これらは、イムノアッセイやインターカレーターなどを用いたDNA解析の領域では標識化測定法として広く使われている方法である。
特定物質と検出対象物質との「相互作用」は、特に限定されないが、通常、共有結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合及び静電力による結合のうち、少なくとも一つから生じる分子間に作用する力による作用のことを意味する。ただし、本明細書でいう「相互作用」は、非常に広義で解釈しなければならず、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。共有結合は、配位結合、双極子結合を含む。また、静電力による結合は、静電結合の他に、電気的反発も含む。また、上記作用の結果として生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含まれる。
相互作用の具体例には、抗原と抗体間の結合及び解離、たんぱく質レセプターとリガンド間の結合及び解離、接着分子と相手分子間の結合及び解離、酵素と基質間の結合及び解離、アポ酵素と補酵素間の結合及び解離、核酸とそれに結合するたんぱく質間の結合及び解離、核酸と核酸間の結合及び解離、情報伝達系におけるたんぱく質同士間の結合及び解離、糖たんぱく質とたんぱく質間の結合及び解離、または糖鎖とたんぱく質間の結合及び解離、細胞及び生体組織とたんぱく質間の結合及び解離、細胞及び生体組織と低分子化合物間の結合及び解離、イオンとイオン感応性物質間の相互作用などがあるが、これらに限定されることはない。例えば、イムノグロブリンまたはその派生物であるF(ab')2、Fab'、Fab、レセプターや酵素とその派生物、核酸、天然または人工のペプチド、人工ポリマー、糖質、脂質、無機物質または有機配位子、ウイルス、細胞、薬品などを挙げることができる。
上記のレセプター(receptors)は、標的バイオ物質と結合してこれを検出できるプローブの役割を果たす生物学的物質であり、核酸(DNA、RNA、PNA、LNA及びその混成体)、たんぱく質(酵素、基質、抗原、抗体、リガンド、アプタマー等)、ウイルス及び感染性疾病などからなる群より選ばれる。好ましくは、疾病に関連するたんぱく質である。
本発明の一具現例によれば、炭素ナノチューブにレセプターを付着させる直前後に、炭素ナノチューブとレセプターとの付着力を増加させる結合補助剤を処理することができる。このような結合補助剤は、炭素ナノチューブに印加した電場を解除した後にも、炭素ナノチューブとレセプターとの結合を維持させる機能を果たす。
このような結合補助剤は、好ましくは、カーボン基末端にアルデヒド(aldehyde)、アミン(amine)あるいはイミン(imine)などの官能基が付いている化学物質;SiO、Siなどの単分子層(monolayer);ニトロセルロース(nitrocellulose)などの膜(membrane);または、ポリアクリルアミドゲル(polyacrylamide gel)、PDMSなどの重合体(polymer)であることを特徴とする。
本発明の一具現例によれば、ソース電極と検出領域間、及びドレイン電極と検出領域間に、疏水性材料であるテフロン(登録商標)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリコンジオキシド(SiO2)、シリコンナイトライド(Si3N4)を配置し、好ましくは、テフロン(登録商標)を配置して、ターゲットバイオ物質がソース電極及びドレイン電極と接触することを遮断させる。
このように構成された本発明の電界効果トランジスタは、後述の実施例から確認されるように、1nM以下の低濃度のバイオ物質を検出することができる。これは、ショットキー接触面積が広がることによるショットキーバリア(barrier)効果と化合物のゲーティング効果(chemical gating effect)によるものと推定される。すなわち、検出対象物質が位置するAu層の両端のCNTと(ショットキーバリア形成)電極が形成される部分の電極層との接触部位の接触抵抗及び約1mmの長さを有するショットキーバリアは、既存の構造に比べてより増大した形態となり、このように増大したショットキーバリア及びケミカルゲーティング効果によって、バイオ物質が高感度で検出されるものと考えられる。
ショットキーバリア及びケミカルゲーティング効果について簡略に説明すると、次の通りである。ショットキーバリア(Schottky barrier)は、金属と半導体との接触面における整流特性のポテンシャルバリアを意味する。p−n接触との差異点は、接触電圧が相対的に低いという点と金属の枯渇領域が減少したという点である。全ての金属と半導体との接触がショットキーバリアを形成するわけではないが、本発明では、炭素ナノチューブがp形の半導体的な性質を帯びており、この炭素ナノチューブが金属と接触する時に接触面でショットキーバリアが形成され、Au島(Au island)でバイオ物質を検出する時、ショットキーバリアが変化して電気的な信号が増加または減少し、これと共にケミカルゲーティング効果が付加されることからバイオ物質が検出されるものと推定される。ショットキーバリアは、半導体の種類及び金属と半導体との相対的な仕事関数差によって、オーム接触と整流接触とに分類される。
(1) ΦM>ΦS(n型半導体):整流接触
(2) ΦM<ΦS(n型半導体):オーム接触
(3) ΦM>ΦS(p型半導体):オーム接触
(4) ΦM<ΦS(p型半導体):整流接触
ケミカルゲーティング効果(Chemical gating effect)とは、化学物質を用いて電界効果トランジスタで利用する電界効果を摸写した方法であり、基体または表面に電荷を持つ分子や物質などを利用する。例えば、炭素ナノチューブで製作した素子をNHに露出させた時、NHが炭素ナノチューブに吸着されながら電子を提供すると、既存のキャリアである正孔の数が減少し、同時に価電子帯がフェルミレベルから低減するため、伝導度が減少する。これと類似に、生体分子の場合、表面に特定の電荷を帯びた状態で炭素ナノチューブに接近すると、炭素ナノチューブの伝導度に変化が生じる。
本発明による炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタの製造方法は、次の通りである。
基板を用意する段階;基板上に絶縁層を形成する段階;絶縁層上に炭素ナノチューブを中間部が切れる形態で蒸着する段階;ソース電極及びドレイン電極を形成するために伝導性物質を蒸着する段階;中間部の切れたチャンネルを中心に上部を覆っている、検出対象物質が固定される検出領域を、金属及び半導体性物質で蒸着する段階:及び、それぞれ電荷が印加されうるように伝導性ナノワイヤー(nanowires)を介して電源に連結する段階からなる。
他の具現例として、検出領域を形成した後、テフロン(登録商標)を検出領域とソース電極及びドレイン電極との間に設置し、テフロン(登録商標)の疏水性を用いて、検出されるターゲットバイオ物質がソース電極及びドレイン電極と接触することを遮断することができる。
炭素ナノチューブの蒸着においては、ネットワーク形態またはラングミュアーブロジェットフィルムの形態で蒸着する。炭素ナノチューブは、化学気相蒸着法(CVD)、レーザーアブレーション法(laser ablation)、または電気放電法(arc-discharge)によって成長させたり、または、炭素ナノチューブペーストを基板上にコーティングしたりして形成させ、電気泳動法(electrophoresis)、またはフィルタ法(filtering method)を用いて蒸着させる。この炭素ナノチューブは、単一壁ナノチューブ、二重壁ナノチューブ、または多重壁ナノチューブまたは束状ナノチューブを含むことができる。炭素ナノチューブは、フィルタ法によって形成されたネットワーク構造の形態あるいはラングミュアーブロジェット法を用いた、整列度に優れており且つ方向性を有するフィルムとすることができる。
炭素ナノチューブにおける切れている中間部は、10〜2000μmとし、好ましくは、1000〜1500μmとする。本発明者等による実験から、この範囲の長さで、本発明のバイオセンサーが最良の感度を示すことが確認された。
ソース電極と検出領域間の距離及びドレイン電極及び検出領域間の距離は、0.5〜2.0mmとし、ショットキー接触面積を広く形成する。このようにショットキー接触面積を広くすることによって、本発明の素子は、ケミカルゲーティング効果とともに、高感度でバイオ物質を検出できる効果を奏すると推定される。
ソース電極及びドレイン電極への金属の蒸着は、物理気相蒸着法(PVD)、電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)または熱蒸発法(thermal evaporation)によって行うことができ、好ましくは、熱蒸発法を用いて行う。
これらの電極に使用する金属は、上記の通りであり、好ましくは、金(Au)またはチタン(Ti)を使用する。
上記のような特性を有するバイオセンサーの検出領域に、検出対象物質と特異的に結合して相互作用しうるレセプターを含めると、相互作用によって電極の仕事関数が変化し、これによって、炭素ナノチューブと検出領域との接触抵抗が変化することとなる。この接触抵抗の変化は電流の流れに影響を及ぼし、これを用いて検出対象物質を検出することができる。
上記検出領域へのレセプターの固定は、物理的、化学的結合によって行われることができ、例えば、レセプターのチオール基を、金で構成された検出領域に固定することができる。
以下、本発明の好適な実施例を、添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのもので、本発明の内容を限定するためのものではない。
本発明の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタを、下記のように製作した。
基板としてシリコンウエハーを用意し、ここにシリコン酸化膜を蒸着して絶縁層を形成した。この絶縁層上に、炭素ナノチューブを中間が1500μm切れるようにして蒸着した。炭素ナノチューブは、ラングミュアーブロジェット(Langmuir-blodgett)フィルム形態で形成し、単一壁ナノチューブを使用した。また、炭素ナノチューブは、化学気相蒸着法を用いて成長させた。ソース電極及びドレイン電極を形成するために金を蒸着した。中間部の切れた炭素ナノチューブを中心に上部を覆っている、検出対象物質が固定される検出領域を形成するために金を蒸着した。この時、検出領域を形成する金とソース電極及びドレイン電極との距離は1mmとした。最後に、それぞれ、電荷が印加されうるように伝導性ナノワイヤー(nanowires)を介して電源に連結した。
図1は、本発明の実施例によって製造されたバイオセンサーの概略的な模式図である。図1には、検出領域に固定されるレセプターの他、このレセプターと特異的に結合できるバイオ物質を示した。図2は、SiO/Si基板上に、単一壁炭素ナノチューブをチャネルの通路として使用し、電極と検出物質が固定化される中間部の切れた炭素ナノチューブの間に金を蒸着する、本発明のバイオセンサーの概略的な製作模式図である。図3の(a)は、図2によって製作された素子において、検出物質が付着される金(Au)層と電極とを繋ぐ炭素ナノチューブがネットワークの構造で形成された原子力顕微鏡(Atomic Force Microscopy:AFM)イメージとその断面の高さを示す図であり、図3の(b)は、ネットワーク炭素ナノチューブのSEMイメージである。図3の(c)は、製造される素子の炭素ナノチューブが、ラングミュアーブロジェット法によって整列され、方向性を有するフィルム形態で形成されたSEMイメージである。図4は、本発明の実施例である図2で製作されたネットワーク炭素ナノチューブからなる素子のチャネルに流れる電流が、印加したゲート電圧によって変わることを示すグラフであり、炭素ナノチューブ電界効果トランジスタの金属−半導体のI−V特性を示している。
上記のように製作された本発明のバイオセンサーを用いて標的バイオ物質を検出する方法について説明すると、下記の通りである。
図5の(a)は、テフロン(登録商標)セルを用いて検出領域とソース電極及びドレイン電極とを遮断した本発明によるバイオセンサーを用いて電流の変化を測定するための準備図である。図5の(b)は、牛血清アルブミン(Bovine serum albumin:BSA)たんぱく質で保護された素子上に固定されたプローブ物質であるビオチンと互いに特異的結合を形成する標的たんぱく質のストラプトアビジンたんぱく質との結合を示す模式図である。
図5の(a)及び(b)で、炭素ナノチューブベースの電界効果トランジスタにテフロン(登録商標)セルを設置した後、ソースとドレイン電極との間に0.1Vのバイアス電圧(Vds)を印加するとともに、リン酸緩衝溶液(PBS、10mM、pH=7.4)とそれぞれ異なるたんぱく質溶液を充填しながら、当該素子の電流変化を測定した。
図6は、図5の(a)の構造体を用いたアビジンによるビオチンの特異的な認識反応に対する相互作用の機作に対して、実時間でコンダクタンスの降下を示すグラフである。図6の(a)は、ビオチン分子と特異的反応性をしない牛血清アルブミンたんぱく質を素子に適用した時に、電気的信号に変化がないことを示し、図6の(b)〜(e)では、それぞれ様々な濃度でビオチンと特異的反応を形成するストラプトアビジンたんぱく質を反応させた時に、最低1pMの濃度でもコンダクタンスの降下が現れている。
上記の通り、バイオ物質の検出センサーを製造するために、ソース電極とドレイン電極との間に金(Au)層が存在し、これら二つの金属層間のチャネルを連結する物質として中間部の切れた炭素ナノチューブが形成されている構造体は、より増大したショットキー接触領域(Schottky contact area)を備えるとともに半導体性の炭素ナノチューブが相対的に多く存在するので、金属−半導体ナノチューブ間のショットキー接触領域とそれらの接触抵抗及びナノチューブ間の接触抵抗を用いて1nM以下の低濃度のバイオ物質を検出することができる。
以上では本発明の好適な実施例が説明されてきたが、これは例示的なものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者には、それらの実施例と均等な他の実施例が可能であるということが理解できる。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められるべきである。
本発明のバイオセンサーによると、より広いショットキー接触面積を有することができるため、様々なコンテンツのバイオ物質を1nM以下の低濃度でも高感度で検出することが可能になる。
1 基板(Si)
2 基板(SiO2
3 ソース電極(Au)
4 ドレイン電極(Au)
5 炭素ナノチューブ二次元構造体
6 バイオ物質検出領域の金(Au)

Claims (13)

  1. バイオ物質を検出するための炭素ナノチューブ/電界効果トランジスタベースのバイオセンサーであって、該バイオセンサーは、基板、絶縁層、絶縁層上に形成されたソース電極とドレイン電極、該ソース電極とドレイン電極との間に配置される、中間部が切れた形態のチャネル、及び中間部の切れたチャンネルを中心に上部を覆っている、レセプターが固定される検出領域を備え、該中間部が切れた形態のチャネルは炭素ナノチューブからなり、該炭素ナノチューブにおける切れている中間部の長さは、10〜2000μmであり、該検出領域は金属または半導体性物質からなることを特徴とする、バイオセンサー。
  2. 前記ソース電極と検出領域との間、及びドレイン電極と検出領域との間に、疏水性材料であるテフロン(登録商標)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリコンジオキシド(SiO2)、シリコンナイトライド(Si3N4)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー。
  3. 前記疏水性材料は、テフロン(登録商標)であることを特徴とする、請求項2に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー。
  4. 前記炭素ナノチューブは、化学気相蒸着法(CVD)、レーザーアブレーション法(laser ablation)、電気放電法(arc-discharge)、炭素ナノチューブペースト(CNT paste)、電気泳動法(electrophoresis)、またはフィルタ法(filtering method)を用いたネットワークまたはラングミュアーブロジェット(Langmuir-Blodgett)法を用いて形成されるフィルムであることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー。
  5. 前記バイオ物質は、核酸(DNA、RNA、PNA、LNA及びその混成体)、たんぱく質(酵素、基質、抗原、抗体、リガンド及びアプタマー)及びウイルスからなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー。
  6. 前記バイオ物質は、疾病に関連するたんぱく質であることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー。
  7. 炭素ナノチューブもしくは検出領域にレセプターを付着する前・後に、炭素ナノチューブもしくは検出領域とレセプターとの付着力を増加させる結合補助剤を処理することを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー。
  8. 検出領域とソース電極間の距離、及び検出領域とドレイン電極間の距離をそれぞれ0.5〜2.0mmとすることを特徴とする、請求項1または2に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサー。
  9. 基板を用意する段階と、
    基板上に絶縁層を形成する段階と、
    絶縁層上に炭素ナノチューブを中間部が切れる形態で蒸着する段階と、
    ソース電極及びドレイン電極を形成するために金属を蒸着する段階と、
    中間部の切れたチャンネルを中心に上部を覆っている、レセプターが固定される検出領域を金属及び半導体性物質で蒸着する段階と、
    それぞれソース電極とドレイン電極に電荷が印加されるように伝導性ナノワイヤー(nanowires)を介して電源に連結する段階と、
    からなる、炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサーの製造方法。
  10. 疏水性材料であるテフロン(登録商標)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリコンジオキシド(SiO2)、シリコンナイトライド(Si3N4)を、検出領域とソース電極及びドレイン電極との間に設置して、検出されるターゲットバイオ物質がソース電極及びドレイン電極と接触することを遮断することを特徴とする、請求項9に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサーの製造方法。
  11. 前記疏水性材料は、テフロン(登録商標)であることを特徴とする、請求項10に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサーの製造方法。
  12. ソース電極及びドレイン電極への金属の蒸着は、物理気相蒸着法(PVD)、電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)または熱蒸発法(thermal evaporation)により行われることを特徴とする、請求項9または10に記載の炭素ナノチューブ−電界効果トランジスタベースのバイオセンサーの製造方法。
  13. 請求項1乃至8のいずれか1項によるバイオセンサーを用いてバイオ物質を検出する方法。
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