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JP5068618B2 - 二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油及び二酸化炭素冷媒用冷凍機油 - Google Patents

二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油及び二酸化炭素冷媒用冷凍機油 Download PDF

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JP5068618B2
JP5068618B2 JP2007250001A JP2007250001A JP5068618B2 JP 5068618 B2 JP5068618 B2 JP 5068618B2 JP 2007250001 A JP2007250001 A JP 2007250001A JP 2007250001 A JP2007250001 A JP 2007250001A JP 5068618 B2 JP5068618 B2 JP 5068618B2
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裕司 下村
二郎 橋本
政隆 根岸
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Kao Corp
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Description

本発明は、二酸化炭素(炭酸ガス、CO)冷媒が用いられる冷凍空調機器に使用される冷凍機油及び該冷凍機油に使用される基油に関する。
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)及びHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。しかしながら、このようなHFC冷媒においても、地球温暖化能が高いなどの問題があり、これらのフロン系冷媒に代わる代替冷媒として自然系冷媒の使用が検討されている。中でも二酸化炭素冷媒はリサイクル性が高く、環境に対して影響が限られ安全性の点で優れている上、オイルや機械材料との適合性や入手性のなどの利点を有しており、従来から冷凍機などの冷媒として使用されてきたものである。また近年、開放型圧縮機あるいは密閉型電動圧縮機を用いたカーエアコン用の冷媒として、その適用が検討されている。
二酸化炭素冷媒用の冷凍機油としては、下記特許文献1に、エステル系基油を含有する冷凍機油が開示されている。
特開2000−104084号公報
しかし、上記従来のエステル系基油を用いた従来の冷凍機油の場合、二酸化炭素冷媒の共存下での潤滑性が必ずしも十分とはいえないため、二酸化炭素に対する相溶性は良好であるが、二酸化炭素の溶解時の粘度(以下、場合により「溶解粘度」という。)の低下が大きく、冷凍機器の潤滑に必要な粘度を十分に保持することができない。
なお、冷凍機油の潤滑性を維持する方法としては、基油の粘度を高くして油膜厚さを保持することが考えられるが、この方法では、高粘度基油を使用することによるハンドリング性の低下や攪拌効率の低下などが問題となる。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素冷媒と共に用いた場合に、安定性及び電気絶縁性に優れ、かつ冷媒との適度な相溶性を有し、さらに基油の粘度を増加せずとも十分な潤滑性を示す二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油及び二酸化炭素冷媒用冷凍機油を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために、まず、上記課題の中でも特に達成が困難であると考えられる二酸化炭素冷媒の共存下でのエステル系冷凍機油の潤滑性の改善について検討した。その結果、かかる潤滑性は単に基油を高粘度化したり溶解粘度の低下を抑制したりしただけでは必ずしも十分に改善されないこと、及び、カルボン酸と多価アルコールとのエステルにおけるカルボン酸組成が二酸化炭素冷媒の共存下での潤滑性についての重要な決定因子であることが判明した。そして、かかる知見に基づいて更に検討を重ねた結果、本発明者らは、特定のカルボン酸組成を有するカルボン酸とネオペンチルポリオールとのエステルと、ネオペンチルポリオール以外の特定のアルコールのエステルとを併用することによって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合が40〜100モル%であるカルボン酸とネオペンチルポリオールとの完全エステルである第1のエステルと、
下記(a)及び(b):
(a)ネオペンチルポリオール以外のアルコールとモノカルボン酸との完全エステル
(b)モノアルコールとジカルボン酸との完全エステル
からなる群から選ばれる1種以上の完全エステルである第2のエステルと、
を含有し、40℃における動粘度が80mm/s以上であることを特徴とする二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油(以下、「本発明の基油」ともいう。)を提供する。
本発明の基油においては、第1のエステルを構成するネオペンチルポリオールが2〜6個の水酸基を有することが好ましい。
また、第1のエステルを構成するカルボン酸に占める炭素数16〜18の脂肪酸の割合が40〜100モル%であることが好ましい。
また、13C−NMR分析法により得られる、第1のエステルを構成するカルボン酸の構成炭素に占める3級炭素の割合は2質量%以上であることが好ましい。
また、第1のエステルの40℃における動粘度は100mm/s以上であることが好ましい。
また、本発明は、上記本発明の二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油を含有することを特徴とする二酸化炭素冷媒用冷凍機油(以下、「本発明の冷凍機油」ともいう。)を提供する。
本発明の冷凍機油は、炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合が40〜100モル%であるカルボン酸とネオペンチルポリオールとの完全エステルである第1のエステルと、
上記(a)及び(b)からなる群より選ばれる1種以上の完全エステルである第2のエステルと、
を含有し、40℃における動粘度が80mm/s以上であることを特徴としてもよい。
以上の通り、本発明によれば、二酸化炭素冷媒と共に用いた場合に、安定性及び電気絶縁性に優れ、かつ冷媒との適度な相溶性を有し、さらに基油の粘度を増加せずとも十分な潤滑性を示す二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油及び二酸化炭素冷媒用冷凍機油を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の基油及び本発明の冷凍機油の物性、これらに含まれる第1及び第2のエステル、第1及び第2のエステル以外の基油及び添加剤の具体的態様及び好適態様並びにそれらの配合形態は共通する。そこで、以下では、特に断らない限り、本発明の冷凍機油についての説明は、本発明の冷凍機油を本発明の基油に置き換えてもそのまま成立する。
なお、本発明の冷凍機油は、本発明の基油を含有することで、本発明にかかるポリオールエステルを含有するが、本発明の冷凍機油が第1及び第2のエステル以外の成分を含有するものである場合には、予め当該成分を含有する本発明の基油を用いて本発明の冷凍機油を調製してもよく、あるいは、当該成分を本発明の基油とは別に添加して本発明の冷凍機油を調製してもよい。例えば、本発明の冷凍機油は第1及び第2のエステル以外の基油を含有する場合があるが、第1及び第2のエステル以外の基油は、予め本発明の基油に含有させておいてもよく、あるいは、本発明の冷凍機油の調製の際に本発明にかかる基油を含有しない基油(以下、便宜的に「第2の基油」ともいう。)として別途添加してもよい。同様に、本発明の冷凍機油は各種添加剤を含有することができるが、当該添加剤は、予め本発明の基油又は第2の基油に含有させておいてもよく、あるいは、本発明の冷凍機油の調製の際に本発明の基油又は第2の基油とは別に添加してもよい。さらに、本発明の基油及び本発明の冷凍機油において、本発明にかかるポリオールエステル以外の成分が、本発明の基油、第2の基油又は添加剤のいずれに由来するものであるかについては特に制限されない。
本発明の基油に含まれる第1のエステルは、炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合が40〜100モル%であるカルボン酸とネオペンチルポリオールとの完全エステルである。
第1のエステルを構成するカルボン酸(以下、「構成カルボン酸」という。)に占める炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合は40〜100モル%であり、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%である。炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合が40モル%未満の場合、二酸化炭素冷媒の共存下での潤滑性が不十分となる。
炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸としては、具体的には分岐鎖型テトラデカン酸、分岐鎖型ペンタデカン酸、分岐鎖型ヘキサデカン酸、分岐鎖型ヘプタデカン酸、分岐鎖型オクタデカン酸、分岐鎖型ノナデカン酸、分岐鎖型イコサン酸、分岐鎖型ヘンイコサン酸、分岐鎖型ドコサン酸が挙げられる。中でも、分岐鎖型のヘキサデカン酸及び分岐鎖型のオクタデカン酸が好ましい。
また、第1のエステルの構成カルボン酸は、炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合が上記条件を満たす限りにおいて、分岐鎖型脂肪酸のみを含むものであってもよく、あるいは分岐鎖型脂肪酸と直鎖型脂肪酸との混合物であってもよい。さらに、第1のエステルの構成脂肪酸は、炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸以外の分岐鎖型脂肪酸、更には芳香族モノカルボン酸等を含んでいてもよい。炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸以外の脂肪酸としては、例えば、炭素数6〜24の直鎖型脂肪酸、炭素数6〜13、23又は24の分岐鎖型脂肪酸が挙げられ、より具体的には、直鎖型又は分岐鎖型ヘキサン酸、直鎖型又は分岐鎖型ヘプタン酸、直鎖型又は分岐鎖型オクタン酸、直鎖型又は分岐鎖型ノナン酸、直鎖型又は分岐鎖型デカン酸、直鎖型又は分岐鎖型ウンデカン酸、直鎖型又は分岐鎖型ドデカン酸、直鎖型又は分岐鎖型トリデカン酸、直鎖型テトラデカン酸、直鎖型ペンタデカン酸、直鎖型ヘキサデカン酸、直鎖型ヘプタデカン酸、直鎖型オクタデカン酸、直鎖型ノナデカン酸、直鎖型イコサン酸、直鎖型ヘンイコサン酸、直鎖型ドコサン酸、直鎖型又は分岐鎖型トリコサン酸、直鎖型又は分岐鎖型テトラコサン酸等が挙げられる。本発明にかかるポリオールエステルの構成カルボン酸としては、1価カルボン酸であることが好ましい。
また、第1の構成エステルの構成カルボン酸の炭素数分布は、炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合が上記条件を満たす限りにおいて特に制限されないが、二酸化炭素冷媒の共存下での流動性及び潤滑性を好適に確保する観点から、炭素数16〜18の脂肪酸(直鎖型脂肪酸及び分岐鎖型脂肪酸の双方を含む。)の割合が40〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%、一層好ましくは80〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%、最も好ましくは95〜100モル%である。炭素数16〜18の脂肪酸の割合が40モル%未満の場合、二酸化炭素冷媒の共存下での潤滑性が低下する傾向にある。
さらに、第1のエステルにおいては、二酸化炭素冷媒の共存下での流動性及び潤滑性を好適に確保する観点から、構成カルボン酸に占める炭素数16〜18の分岐脂肪酸の割合が40〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは50〜100モル%、更に好ましくは60〜100モル%、一層好ましくは80〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%、最も好ましくは95〜100モル%である。
またさらに、第1のエステルにおいては、二酸化炭素冷媒の共存下での流動性及び潤滑性を好適に確保する観点から、構成カルボン酸に占める炭素数18の分岐脂肪酸の割合が50〜100モル%であることが好ましく、より好ましくは60〜100モル%、更に好ましくは70〜100モル%である。
第1のエステルにおいては、その構成カルボン酸の構成炭素に占める3級炭素の割合が5質量%以上であることが好ましく、2〜12質量%であることがより好ましく、2.5〜5質量%であることがさらに好ましい。上記3級炭素の割合は13C−NMR分析法により、全炭素の共鳴スペクトルの積分値に対する3級炭素の共鳴スペクトルの積分値の割合として求めることができる。
また、第1のエステルを構成するネオペンチルポリオールとしては、2〜6個の水酸基を有するネオペンチルポリオールが好ましく用いられる。2〜6個の水酸基を有するネオペンチルポリオールとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)が挙げられる。これらの中でもジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)が好ましく用いられる。
第1のエステルは、単一の構造のポリオールエステルの1種からなるものであっても良く、構造の異なる2種以上のポリオールエステルの混合物であっても良い。
また、第1のエステルは、1種のカルボン酸と1種の多価アルコールとの完全エステル、2種以上のカルボン酸と1種の多価アルコールとの完全エステル、1種のカルボン酸と2種以上の多価アルコールとの完全エステル、2種以上のカルボン酸と2種以上の多価アルコールとの完全エステルのいずれであってもよい。2種以上のカルボン酸を用いたポリオールエステル、特に完全エステル分子中に2種以上のカルボン酸を含んで構成される本発明にかかるポリオールエステルは、低温特性や冷媒との相溶性に優れる。
なお、第1のエステルはネオペンチルポリオールの全ての水酸基がエステル化された完全エステルであるが、本発明の基油及び本発明の冷凍機油は、第1及び第2のエステルによる優れた効果が損なわれない限りにおいて、分岐鎖型脂肪酸の割合が40〜100モル%であるカルボン酸とネオペンチルポリオールとの部分エステルを含有してもよい。ここで、部分エステルとは、ネオペンチルポリオールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っているポリオールエステルを意味する。前記の部分エステルは、第1のエステルを合成する際に副生成物としても存在する。合成して得られた本発明にかかるポリオールエステルの純度は、合成物の水酸基価で規定され、水酸基価が20mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以下がより好ましく、5mgKOH/g以下がさらに好ましい。
また、冷凍機油を構成した場合の動粘度をより確実に確保する観点から、第1のエステルの40℃における動粘度は、100mm/s以上であることが好ましく、120〜400mm/sであることがより好ましく、140〜300mm/sであることが更に好ましい。
また、本発明の基油に含まれる第2のエステルは、下記(a)及び(b)からなる群から選ばれる1種以上の完全エステルである。
(a)ネオペンチルポリオール以外のアルコールとモノカルボン酸との完全エステル
(b)モノアルコールとジカルボン酸との完全エステル。
上記(a)の完全エステルに関し、モノアルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどが挙げられる。中でも、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、n−デカノール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコールが好ましい。
また、ネオペンチルポリオール以外のアルコールのうち、ジオールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,3−ジメチロールペンタン、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。
また、ネオペンチルポリオール以外のアルコールのうち、トリオールとしては、具体的には、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、1,3,5−ペンタントリオール、トリメチロールノナンが挙げられる。
また、ネオペンチルポリオール以外のアルコールのうち、グリセリン類としては、具体的には、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜3量体)が挙げられる。
また、ネオペンチルポリオール以外のアルコールのうち、糖類としては、具体的には、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、シュクロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトースなどが挙げられる。
また、上記(a)の完全エステルに関し、モノカルボン酸の炭素数は制限されないが、炭素数2〜22のものが好ましく用いられる。具体的には、炭素数2〜12の直鎖型脂肪酸又は炭素数4〜22の分岐鎖型脂肪酸が挙げられ、特に、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸などの直鎖型又は分岐鎖型のものが挙げられる。さらに具体的には、吉草酸(n−ペンタン酸)、カプロン酸(n−ヘキサン酸)、エナント酸(n−ヘプタン酸)、カプリル酸(n−オクタン酸)、ペラルゴン酸(n−ノナン酸)、カプリン酸(n−デカン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、イソペンタン酸(3−メチルブタン酸)、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、などが好ましい。
また、上記(b)の完全エステルを構成するモノアルコールの具体例及び好ましい例は、上記(a)の完全エステルの説明において例示されたモノアルコールと同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。また、ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられ;脂環式ジカルボン酸としては、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘプタン環、シクロヘプテン環などのジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキサン環又はシクロヘキセン環を有するジカルボン酸が好ましい。具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸が挙げられ;芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。
第2のエステルは、単一の構造の完全エステルの1種からなるものであっても良く、構造の異なる2種以上の完全エステルの混合物であっても良い。
また、第2のエステルは、1種のカルボン酸と1種のヒドロキシ化合物との完全エステル、2種以上のカルボン酸と1種のヒドロキシ化合物との完全エステル、1種のカルボン酸と2種以上のヒドロキシ化合物との完全エステル、2種以上のカルボン酸と2種以上のヒドロキシ化合物との完全エステルのいずれであってもよい。2種以上のカルボン酸を用いた完全エステル、特に分子中に2種以上のカルボン酸を含んで構成される完全エステルは、低温特性や冷媒との相溶性に優れる。なお、ここでいう「カルボン酸」は脂肪酸及びジカルボン酸を包含するものであり、また、「ヒドロキシ化合物」は(a)モノアルコール、ネオペンチルポリオール以外のジオール、ネオペンチルポリオール以外のトリオール、グリセリン類及び糖類を包含するものである。
なお、第2のエステルはヒドロキシ化合物の全ての水酸基がエステル化された完全エステルであるが、第2のエステルを構成するヒドロキシ化合物が2価以上である場合又はカルボン酸がジカルボン酸である場合には、本発明の基油及び本発明の冷凍機油は、第1及び第2のエステルによる優れた効果が損なわれない限りにおいて、当該ヒドロキシ化合物の水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステル、あるいは、又はジカルボン酸のカルボキシル基の一方がエステル化されずにカルボキシル基のまま残っている部分エステルを意味する。前記の部分エステルは、第1のエステルを合成する際に副生成物としても存在する。第2のエステルを構成するヒドロキシ化合物が2価以上である場合、合成して得られた完全エステルの純度は、合成物の水酸基価で規定され、水酸基価が20mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以下がより好ましく、5mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、第2のエステルを構成するカルボン酸がジカルボン酸である場合、合成して得られた完全エステルの純度は酸価で規定され、冷凍機器の腐食を抑制する観点から、酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下であるのが望ましい。
第2のエステルの40℃における動粘度は、特に制限されないが、第1のエステルと共に本発明の基油を構成したときに、当該基油の40℃における動粘度が80mm/s以上となるように選定することが好ましい。
本発明の基油及び本発明の冷凍機油は、第1及び第2のエステルのみからなるものであってもよいが、第1及び第2のエステル以外の基油をさらに含有してもよい。第1及び第2のエステル以外の基油としては、鉱油、オレフィン重合体、ナフタレン化合物、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、並びに第1及び第2のエステル以外のエステル系基油、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどの酸素を含有する合成油を併用して用いても良い。酸素を含有する合成油としては、上記の中でもポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトンが好ましく用いられる。
本発明の冷凍機油において、第1及び第2のエステルの含有量は特に制限されないが、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学安定性、電気絶縁性等の各種性能により優れる点から、第1及び第2のエステルの含有量の合計は、冷凍機油全量基準で、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が一層好ましく、100質量%が特に好ましい。また、本発明の基油における第1及び第2のエステルの含有量は、当該基油を冷凍機油に用いた場合に第1及び第2のエステルの冷凍機油全量を基準とした含有量が上記条件を満たすように選定することが好ましい。
また、本発明の基油及び本発明の冷凍機油においては、第1のエステルの含有量M(単位:質量%)と第2のエステルの含有量M(質量%)との比M/Mが1/99〜99/1であることが好ましく、より好ましくは10:90〜99:1、更に好ましくは30:70〜99:1、特に好ましくは50:50〜99:1である。
また、本発明の冷凍機油は、本発明の基油を含有するものであり、該基油には第1及び第2のエステルが含まれるため添加剤未添加の状態でも好適に用いることができるが、必要に応じて各種添加剤を配合した形で使用することもできる。
本発明の冷凍機油の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸又は亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
具体的には例えば、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
チオリン酸エステルとしては、トリブチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、前記酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミンなどのアミンとの塩が挙げられる。
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
本発明の冷凍機油が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の冷凍機油は、その安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステル及びエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテル又はアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコール又はフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニル及びブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物及びエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物及びグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
本発明の冷凍機油が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
さらに、本発明の冷凍機油は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来より公知の冷凍機油添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
本発明の冷凍機油の40℃における動粘度は、好ましくは80〜1000mm/s、より好ましくは80〜500mm/s、最も好ましくは80〜400mm/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm/s、より好ましくは5〜50mm/sとすることができる。
また、本発明の冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは0.01TΩ・cm以上、より好ましくは0.1TΩ・cm以上、最も好ましくは1.0TΩ・cm以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、本発明において、体積抵抗率とは、JIS C 2101「電気絶縁油試験方法」に基づいて測定した25℃での値を意味する。
また、本発明の冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、油の安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
また、本発明の冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機又は配管に用いられている金属への腐食を防止するため、及び本発明の冷凍機油に含有されるエステル油の分解を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に基づいて測定した酸価を意味する。
また、本発明の冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本発明の冷凍機油の安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に基づいて測定した灰分の値を意味する。
本発明の冷凍機油は、二酸化炭素冷媒と共に用いられる場合にその優れた効果を発揮するものであるが、使用される冷媒は、二酸化炭素冷媒単独であってもよく、あるいは二酸化炭素冷媒と他の冷媒との混合冷媒であってもよい。他の冷媒としては、HFC冷媒、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル、アンモニア、炭化水素などが挙げられる。
HFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)などのHFC、又はこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mcf、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−227meなどが挙げられる。
また、炭化水素冷媒としては、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられる。具体的には炭素数1〜5、好ましくは1〜4のアルカン、シクロアルカン、アルケン又はこれらの混合物である。具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン又はこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの中でも、プロパン、ブタン、イソブタン又はこれらの混合物が好ましい。
二酸化炭素冷媒とHFC冷媒、含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル、アンモニアとの混合比は特に制限されないが、二酸化炭素冷媒と併用する冷媒の合計量は、二酸化炭素100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部である。好適な態様としては、二酸化炭素冷媒とハイドロフルオロカーボン及び/又は炭化水素とを、二酸化炭素100質量部に対してハイドロフルオロカーボンと炭化水素の合計量として好ましくは1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部を配合した混合冷媒が挙げられる。
本発明の冷凍機油は、通常、冷凍空調機器においては上述したような二酸化炭素を含有する冷媒と混合された冷凍機用流体組成物の形で存在している。この組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部である。
本発明の冷凍機油は、その優れた電気特性や低い吸湿性から、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するルームエアコン、パッケージエアコン及び冷蔵庫に好ましく用いられる。また、本発明の冷凍機油は、自動車用エアコンや除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本発明の冷凍機油は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[カルボン酸A、Bの組成]
以下の実施例で用いたカルボン酸A(イソステアリン酸873、油化産業 コグニス社製)及びカルボン酸B(PRISORINE 3501、ユニケマ社製)の酸組成を表1に示す。
Figure 0005068618
[実施例1〜15、比較例1、2、参考例1]
実施例1〜15、比較例1、2においては、それぞれ表2〜4に示すエステルIとエステルIIとからなる基油を調製した。また、参考例1においては、表4に示すエステルIからなる基油を調製した。なお、各実施例及び比較例におけるエステルI、IIはいずれも完全エステルである。得られた基油の40℃及び100℃における動粘度を表2〜4に併せて示す。
なお、表2〜4中、「エステルI」の「アルコール組成比」の欄の「PET」はペンタエリスリトールを、「DiPET」はジペンタエリスリトールを、それぞれ意味する。また、表2〜4中、「エステルI」及び「エステルII」の「カルボン酸組成」の欄においては、炭素数mの直鎖型脂肪酸をnCm酸、炭素数mの分岐鎖型脂肪酸をiCm酸として示している。例えば、「nC8酸」は炭素数8の直鎖型脂肪酸を意味し、「iC9酸」は炭素数9の分岐鎖型脂肪酸を意味する。また、同欄中、「2EH酸」は2−エチルヘキサン酸を意味する。また、表2〜4中、「エステルII」の「アルコール組成比」の欄においては、炭素数mの直鎖型アルコールをnCmアルコールとして示している。例えば、「nC4アルコール」は炭素数4の直鎖型アルコール(すなわちn−ブタノール)を意味する。また、同欄中、「2EHアルコール」は2−エチルヘキシルアルコールを意味する。
次に、実施例1〜15及び比較例1〜2及び参考例1で得られた各基油を冷凍機油として用い、以下に示す評価試験を実施した。
(冷媒相溶性)
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に基づいて、二酸化炭素冷媒2gに対して冷凍機油を2g配合し、二酸化炭素冷媒と冷凍機油とが0℃において相互に溶解しているかを観察し、「相溶」、「白濁」、「分離」として評価した。得られた結果を表2〜表4に示す。
(冷媒溶解粘度)
図1に示す装置は、粘度計1、圧力計2、熱電対3及び撹拌子4を備える圧力容器5(ステンレス製、内容積:200ml)と、圧力容器5内の温度を制御するための恒温槽6と、バルブを備えており流路7を介して圧力容器5と接続されたサンプリングボンベ8とを備えている。なお、サンプリングボンベ8と流路7とは脱着可能であり、サンプリングボンベ8は、測定に際し、真空脱気した後、あるいは二酸化炭素冷媒と冷凍機油との混合物を秤取した後でその重量を測定することが可能となっている。また、熱電対3及び恒温槽6はそれぞれ温度制御手段(図示せず)と電気的に接続されており、熱電対3から温度制御手段に試料油(又は二酸化炭素冷媒と冷凍機油との混合物)の温度に関するデータ信号が送られるとともに、温度制御手段から恒温槽6に制御信号が送られて、冷凍機油又は混合物の温度を制御することが可能となっている。さらに、粘度計1は情報処理装置(図示せず)と電気的に接続されており、圧力容器5内の液体の粘度に関する測定データが粘度計1から情報処理装置に送られて、所定の条件下での粘度を測定することが可能となっている。
本試験においては、先ず、圧力容器5内に冷凍機油100gを入れて容器内を真空脱気した後、二酸化炭素冷媒を導入し、二酸化炭素冷媒と冷凍機油との混合物を撹拌子4で攪拌しかつ冷媒を抜きながら40℃で5MPaになるよう調整した。安定させた後、二酸化炭素冷媒と冷凍機油との混合物の粘度を測定した。得られた40℃のおける冷媒溶解粘度の測定結果を表2〜4に示す。
(電気絶縁性(体積抵抗率))
JIS−C−2101「電気絶縁油試験方法」に基づいて、25℃における冷凍機油の体積抵抗率を測定した。得られた結果を表2〜4に示す。
(熱安定性(酸価))
オートクレーブ中に、冷凍機油90gと二酸化炭素冷媒10gと触媒(鉄、銅、アルミの各線)を封入した後、200℃に加熱して2週間保持した。2週間後の冷凍機油について酸価を測定した。得られた結果を表2〜4に示す。
(潤滑性(摩耗量))
ASTM D 2670“FALEXWEAR TEST”に基づいて、冷凍機油の温度100℃の条件下で、慣らし運転を150lb荷重の下に1分間行った。次いで、二酸化炭素冷媒10L/hを吹き込みながら、250lb荷重の下に2時間試験機を運転し、試験後のテストジャーナル(ピン)の摩耗量を測定した。得られた結果を表2〜4に示す。
Figure 0005068618
Figure 0005068618
Figure 0005068618
表2〜表4に示した結果から明らかなように、実施例1〜15の冷凍機油は、二酸化炭素冷媒と共に用いた場合に、潤滑性、冷媒相溶性、熱安定性、電気絶縁性及び動粘度の全ての性能がバランスよく優れていることがわかる。特に、実施例1〜8の冷凍機油は、40℃における冷媒溶解粘度が同程度である比較例の冷凍機油と比較して、二酸化炭素冷媒の共存下での潤滑性に優れていることがわかる。
実施例において使用した冷媒溶解粘度測定装置を示す概略構成図である。
符号の説明
1…粘度計、2…圧力計、3…熱電対、4…攪拌子、5…圧力容器、6…恒温槽、7…流路、8…サンプリングボンベ。

Claims (7)

  1. 炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合が40〜100モル%であるカルボン酸とネオペンチルポリオールとの完全エステルである第1のエステルと、
    下記(a)及び(b):
    (a)ネオペンチルポリオール以外のアルコールとモノカルボン酸との完全エステル
    (b)モノアルコールとジカルボン酸との完全エステル
    からなる群から選ばれる1種以上の完全エステルである第2のエステルと、
    を含有し、40℃における動粘度が80mm/s以上であることを特徴とする二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油。
  2. 前記第1のエステルを構成する前記ネオペンチルポリオールが2〜6個の水酸基を有することを特徴とする、請求項1に記載の二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油。
  3. 前記第1のエステルを構成する前記カルボン酸に占める炭素数16〜18の脂肪酸の割合が40〜100モル%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油。
  4. 13C−NMR分析法により得られる、前記第1のエステルを構成するカルボン酸の構成炭素に占める3級炭素の割合が2質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油。
  5. 前記第1のエステルの40℃における動粘度が100mm/s以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の二酸化炭素冷媒用冷凍機油用基油を含有することを特徴とする二酸化炭素冷媒用冷凍機油。
  7. 炭素数14〜22の分岐鎖型脂肪酸の割合が40〜100モル%であるカルボン酸とネオペンチルポリオールとの完全エステルである第1のエステルと、
    下記(a)及び(b):
    (a)ネオペンチルポリオール以外のアルコールとモノカルボン酸との完全エステル
    (b)モノアルコールとジカルボン酸との完全エステル
    からなる群より選ばれる1種以上の完全エステルである第2のエステルと、
    を含有し、40℃における動粘度が80mm/s以上であることを特徴とする二酸化炭素冷媒用冷凍機油。
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