JP5065303B2 - 安全タイヤ - Google Patents
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Description
この代表的なものとして、リムフランジの上端近傍からベルト層の端部に至る区域におけるカーカス層の内面側を、三日月状の補強ゴム層によって補強した構造の空気入りラジアルタイヤ(ランフラット・タイヤ)が提案され実用化されている。
一般に、パンクなどにより、タイヤの内圧が低下した場合での走行、所謂、ランフラット走行状態になると、タイヤのサイドウォール部分の変形が大きくなるにつれ、サイド補強層の変形も大きくなり、発熱が大きく、場合によっては200℃以上に達する。このような状態では、サイド補強層が破壊限界を超え、タイヤ故障に至ることがある。
しかしながら、これらの文献に記載されるサイド補強層を持つタイヤは、未だ十分なランフラット耐久性及び通常走行時の乗り心地性を満足するものではなく、また、硬軟2種のゴムを用いる場合には、ゴム層間の剛性段差が大きくなると、層間でのセパレーション故障が発生しやすくなる課題が生じているのが現状である。
この現象を検討した結果、これはランフラット走行の初期においては上記三日月状補強ゴム層の弾性機能が維持されているものの、走行距離が増加するに従ってゴムの内部発熱により補強ゴム層自体の熱劣化が起こり、補強ゴム層の弾性機能が低下することによって、最大歪振幅部の入力歪が増大し、サイド補強層が破壊限界を超え、クラックが発生することが判った。
そこで、上述した課題を解決するには、上記補強ゴム層の肉厚を全体的に厚くしてやれば、補強ゴム層の変形そのものを抑制することによって、上述した熱劣化に起因する補強ゴム層の弾性機能低下を阻止することができることとなる。
しかしながら、補強ゴム層の肉厚を全体的に厚くすると、通常の走行時における乗り心地は大幅に低下してしまうことになる。
すなわち、この補強ゴムの構成は、補強ゴム層の肉厚を全体的に厚くする必要がなく、肉厚の増加に起因する通常の走行時における乗り心地の悪化が解消すると共に、ランフラット走行時における耐久性を大幅に向上させることができるのである。
しかしながら、硬軟2層となるサイド補強ゴムを用いる場合は、上述の如く、そのゴム弾性率の違いから乗じる界面近傍の剛性段差により応力が集中し、界面部からクラックが発生する現象が生じることがあり、結果的に、より早期に故障に至ってしまう課題がある。
(1) 少なくとも、ビード部と、カーカス層と、トレッド部と、インナーライナー層と、三日月状の環状サイド補強ゴム層とを備えてなる安全タイヤであって、上記サイド補強ゴム層が、カーカス層側からインナーライナー層側にかけて、補強ゴム内の径方向のいかなる部分においても隣接する2mm層の100%伸張モジュラスの差が0.1〜1.0MPaの範囲で弾性率が徐々に減少していることを特徴とする安全タイヤ。
(2) 左右一対のビード部と、該ビード部の一方から他の一方へ繋がる少なくとも一枚のカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側に配設されたトレッド部と、該トレッド部の左右に配置された一対のサイドウォール部と、上記カーカス層の内側に位置するインナーライナー層と、サイドウォール部に相当する部分のカーカス層とインナーライナー層との間に位置する一対の三日月状の環状サイド補強ゴム層とを備えてなる安全タイヤであって、上記サイド補強ゴム層が、カーカス層側からインナーライナー層側にかけて、補強ゴム内の径方向のいかなる部分においても隣接する2mm層の100%伸張モジュラスの差が0.1〜1.0MPaの範囲で弾性率が徐々に減少していることを特徴とする安全タイヤ。
(3) 上記サイド補強ゴム層は、軸方向内側よりも高弾性なゴムであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の安全タイヤ。
(4) 上記サイド補強ゴム層は、軸方向外側の100%伸張モジュラスが6.0MPa以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の安全タイヤ。
(5) 上記サイド補強ゴム層は、軸方向内側の100%伸張モジュラスが12MPa以下で、かつ、軸方向外側よりも低弾性なゴムであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の安全タイヤ。
1 ビード部
2 カーカス層
3 補強ベルト
4 トレッド部
5 サイドウォール部
6 インナーライナー層
7 サイド補強ゴム層
図1は、本発明の実施形態の一例を示す安全タイヤの左半分の子午線による概略断面図である。なお、本発明は、この概略断面図に何ら限定されるものでない。
本実施形態の安全タイヤAは、図1に示すように、左右一対のビード部1と、該ビード部1の一方から他の一方へ繋がる少なくとも一枚のカーカス層2と、該カーカス層2のタイヤ半径方向外側に配設されたトレッド部3と、トレッドゴム層とカーカス層のクラウン領域の間に配置された補強ベルト4と、該トレッド部3の左右に配置された一対のサイドウォール部5と、上記カーカス層2の内側に位置するインナーライナー層6と、サイドウォール部に相当する部分のカーカスとインナーライナー層6との間に位置する一対の断面が三日月状の環状サイド補強ゴム層7とを備えたものである。
なお、本発明で規定する上記「カーカス層側2からインナーライナー層側7にかけて、補強ゴム7内の径方向のいかなる部分においても隣接する2mm層」とは、カーカス層側2からインナーライナー層側7にかけて、補強ゴム7内の径方向となる図1中X方向で(軸方向であるが)切ったものは、その径方向位置がサイド補強ゴム層7のどこで切っても隣接する2mm層」になるという意味であり、図2(a)に示すように、どの矢印においても2mm層となるという意味である。また、本発明で規定する「100%伸張モジュラス(M100)」は、ASTM D412に準拠する100%伸張モジュラス(M100)をいう。
上記隣接する2mm層の100%伸張モジュラス(M100)の差が1.0MPaを超える剛性段差があると、界面クラックが発生しやすくなり、一方、100%伸張モジュラス(M100)の差が0.1MPa未満であると、乗り心地性が悪化することとなる。
上記サイド補強ゴム層7の隣接する2mm層の弾性率を徐々に変化させる形態としては、好ましくは、隣接する2mm層度に一定(均等)の弾性率で変化させる形態が望ましい。また、サイド補強ゴム層7の最大厚さとしては、タイヤ種、タイヤサイズ等により異なるが、5〜20cmとすることが好ましく、更に好ましくは、5〜15cmとすることが望ましい。
また、軸方向内側の100%伸張モジュラスが12MPa以下で、好ましくは、3〜7MPaで、かつ、軸方向外側よりも低弾性なゴムである構成とすることが望ましい。
なお、本発明において、「軸方向内側」とは、図2(b)に示すように、軸方向最内層(インナーライナー層に隣接する補強ゴム部分)から2mm(図中Y)を意味し、「軸方向外側」とは、軸方向最外層から2mm(図中Z)を意味する。
上記実施形態において、安全タイヤを、図1に示すように、左右一対のビード部1と、該ビード部1の一方から他の一方へ繋がる少なくとも一枚のカーカス層2と、該カーカス層2のタイヤ半径方向外側に配設されたトレッド部3及び補強ベルト4と、該トレッド部3の左右に配置された一対のサイドウォール部5と、上記カーカス層2の内側に位置するインナーライナー層6と、サイドウォール部に相当する部分のカーカス層2とインナーライナー層6との間に位置する一対の断面が三日月状の環状サイド補強ゴム層7とを備えた安全タイヤの構造で説明したが、少なくとも、ビード部と、カーカス層と、トレッド部と、インナーライナー層と、三日月状の環状サイド補強ゴム層とを備えた安全タイヤであって、上記サイド補強ゴム層が、カーカス層側からインナーライナー層側にかけて、補強ゴム内の径方向のいかなる部分においても隣接する2mm層の100%伸張モジュラスの差が0.1〜1.0MPaの範囲で弾性率が徐々に減少する構成、好ましくは、均等に弾性率が減少する構成の安全タイヤであれば特に限定されず、例えば、カーカスがビードを巻いていないなどの構造の安全タイヤであってもよいものである。
下記方法により各ゴム組成物を調製し、各安全タイヤを作製した。
(ゴム組成物の調製)
天然ゴム30質量部、ブタジエンゴム(シス−1,4−ポリブタジエン)70質量部からなるゴム成分に対して、カーボンブラック(FEF)50質量部、プロセスオイル5.0質量部、亜鉛華4.5質量部、ステアリン酸1.0質量部、老化防止剤6C〔N−フェニル−N´−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン〕2.0質量部、加硫促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)3質量部、及び下記表1に示す種類と量の高温加硫促進剤とイオウからなるゴム組成物を調製した。
サイド補強ゴム層を異にする乗用車用タイヤ(タイヤサイズ215/45ZR17)を常法に従って製造した。サイド補強ゴム層の構造は、比較例1の従来のサイド補強ゴム層は、三日月状の一層からなる従来ゴムを用いた。比較例2は、硬軟2層のサイド補強ゴム層、実施例1では、加硫促進剤TOTと硫黄量を徐々に変量したゴム組成物を用いて、隣接する2mm層度に均等の弾性率で変化させた10層を積層していき三日月状の10層サイド補強ゴム層を調製した。また、実施例2及び3では、加硫促進剤TOTと硫黄量を徐々に変量したゴム組成物を用いて、隣接する2mm層度に均等の弾性率で変化させた20層又は8層を積層していき三日月状の20層又は8層のサイド補強ゴム層を調製した。なお、各サイド補強ゴム層の全体としての最大厚みは15mmとした。また、サイド補強ゴム層の100%モジュラス(M100)、隣接層間の100%モジュラス(M100)は、下記方法により測定した。
これらの結果を下記表1に示す。なお、全ての試験タイヤの内圧充填時耐久性は問題のないレベルであった。
ASTM D412に準拠して、サイド補強ゴム層のM100、隣接層間のM100を測定した。
各試作タイヤを常圧でリム組みし、内圧230kPaを封入してから38℃の室温中に24時間放置後、バルブのコアを抜き、内圧を大気圧として、荷重4.17kN(425kg)、速度89km/hr、室温38℃の条件でドラム走行テストを行った。この際の故障発生走行距離をランフラット耐久性とし、比較例1をコントロール(100)としたときの指数で表した。指数が大きい程ランフラット耐久性は良好である。
試作タイヤを乗用車に装着し、専門のドライバー2名により乗り心地製のフィーリングテストを行い、1〜10の段階の評点をつけその平均値を求めた。値が大きいほど乗り心地性は良好である。
Claims (5)
- 少なくとも、ビード部と、カーカス層と、トレッド部と、インナーライナー層と、三日月状の環状サイド補強ゴム層とを備えてなる安全タイヤであって、上記サイド補強ゴム層が、カーカス層側からインナーライナー層側にかけて、補強ゴム内の径方向のいかなる部分においても隣接する2mm層の100%伸張モジュラスの差が0.1〜1.0MPaの範囲で弾性率が徐々に減少していることを特徴とする安全タイヤ。
- 左右一対のビード部と、該ビード部の一方から他の一方へ繋がる少なくとも一枚のカーカス層と、該カーカス層のタイヤ半径方向外側に配設されたトレッド部と、該トレッド部の左右に配置された一対のサイドウォール部と、上記カーカス層の内側に位置するインナーライナー層と、サイドウォール部に相当する部分のカーカス層とインナーライナー層との間に位置する一対の三日月状の環状サイド補強ゴム層とを備えてなる安全タイヤであって、上記サイド補強ゴム層が、カーカス層側からインナーライナー層側にかけて、補強ゴム内の径方向のいかなる部分においても隣接する2mm層の100%伸張モジュラスの差が0.1〜1.0MPaの範囲で弾性率が徐々に減少していることを特徴とする安全タイヤ。
- 上記サイド補強ゴム層は、軸方向内側よりも高弾性なゴムであることを特徴とする請求項1又は2記載の安全タイヤ。
- 上記サイド補強ゴム層は、軸方向外側の100%伸張モジュラスが6.0MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の安全タイヤ。
- 上記サイド補強ゴム層は、軸方向内側の100%伸張モジュラスが12MPa以下で、かつ、軸方向外側よりも低弾性なゴムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の安全タイヤ。
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