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JP5064782B2 - インク及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インク及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録する画像形成方法に用いるインク及び該インクを用いたインクジェット記録装置に関する。さらに詳しくは、画像の高堅牢性を実現し得る顔料インクを上記方式の記録ヘッドから吐出させた場合における吐出安定性を飛躍的に向上させた、インクジェット記録用の顔料インク及び該インクを用いたインクジェット記録装置に関する。
従来より、インクジェット記録方法を用いた印刷には様々な方式が案出されている。例えば、特許文献1には、インクを熱エネルギーの作用によりインク滴として吐出させるインクジェット記録方法(所謂、バブルジェット(登録商標)方法)が記載されている。特に、この記録方法は、高密度マルチノズルが非常に簡単であるため、高画質の画像が高速でかつ非常に安いコストで得られ、また、特別なコート層などを有しない普通紙にも印刷できるという特長を有している。上記記録方法を詳しく説明すると、先ず、記録ヘッドのヒータが急速に加熱されることにより、ヒータ上の液体が気泡を発生して急激な体積の増大を起こす。次いで、この急激な体積の増大に基づく衝撃圧力によって、記録ヘッド部先端のノズルより液滴が吐出、飛翔して記録媒体に付着して印刷が行われる。
ここで、上記のようなインクジェット記録方法においては、通常は、染料を色材とした水性染料インクが用いられているが、最近では、顔料を色材とした水性顔料インクを用いる試みがなされている。その理由として、水性顔料インクによって記録された画像は、水性染料インクによる画像に比して、耐水性及び耐光性などの堅牢性に優れたものとなることが挙げられる。これに対し、例えば、特許文献2〜5に、インクジェット記録用インクに要求される、画像の記録品位、インクの吐出特性、保存安定性、耐目詰まり性及び定着性などの基本的な特性を満たす水性顔料インクが提案されている。
先述したように、バブルジェット(登録商標)方法は、ノズルの高密度化の可能性などに大きな特徴があり、インクジェット記録方法の中でも優れた方式の画像形成方法である。しかしながら、水性顔料インクを、バブルジェット(登録商標)のような方法で吐出させる場合には、記録ヘッドのヒータ表面で、インクが高熱に曝されることになるため、下記のような問題が生じる。上記した方式では、記録ヘッドのヒータ表面の高熱の影響で顔料インクに含まれる成分が変質して、加熱素子表面に付着物として堆積することが起こる。そして、この付着物が堆積するにつれて、記録ヘッドのヒータの熱伝達性能が経時的に悪くなり、インクの発泡に伴う衝撃圧力が低下して、吐出性能が劣化し、ひいては記録画像の品質を悪くすることが生じる。このため、顔料インクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させるインクジェット記録方式に好適なものとするためには、前記した基本的な特性に加え、上記の課題を解決したインクの提供が求められる。
特開昭54−51837号公報 特開平2−255875号公報 特開平4−334870号公報 特開平4−57859号公報 特開平4−57860号公報
したがって、本発明の目的は、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させる方式のインクジェット記録に用いた場合に、耐久においても良好な吐出特性を示し、耐水性及び耐光性などの堅牢性に優れた高品位画像を安定して与えることのできる顔料インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記の優れた効果を与えるインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成することができる。すなわち、本発明は、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクであって、少なくとも(a)顔料、(b)高分子分散剤、(c)液媒体、及び(d)下記一般式(1)で表わされるマロン酸誘導体のアルカリ金属塩を含有することを特徴とするインクである。
Figure 0005064782
(式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基のいずれかを表わし、Mはアルカリ金属を表わす。)
また、本発明の別の実施形態は、上記インクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴として吐出させ、記録媒体上に画像を記録するための手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
本発明のインクを用いて上記方式で画像を記録した場合には、以下の効果が得られる。つまり、インクに熱エネルギーを印加してオリフィスから水性顔料インク(以下、インクという)を吐出させるために設けられているヒータの表面への付着物を極めて有効に低減でき、吐出性能を安定化させることが可能となる。
本発明のインクを用いることで、このような吐出性能が極めて安定化する効果が得られる理由は明らかでないが、本発明者らは以下のように考えている。本発明者らの検討によれば、インク中に(d)成分を含有させることにより、下記(1)〜(3)に記載する事項が起こると推測され、このことが、上記効果を得る主な要因となったものと考えられる。
(1)上記(d)成分中のアルカリ金属は、樹脂(分散剤)の可溶化基であるカルボキシル基の会合を阻害し、該カルボキシル基の熱による酸無水物反応などの脱水反応を防ぐ。つまり、本発明のインクが、ヒータ表面で高温に曝されても、樹脂(分散剤)の可溶化基であるカルボキシル基が熱分解されないため、顔料の分散性が低下するのを防止できたものと考えられる。
(2)上記(d)成分のマロン酸部位は弱酸であり、アルカリ金属は強アルカリであるため、(d)成分を含む溶液(すなわち、インク)は緩衝作用を持つ。このため、急激な温度変化の際も弱アルカリ性となり、樹脂(分散剤)の溶解性を保つことができ、顔料の分散性が向上したものと考えられる。
(3)上記(d)成分の構造中のアルキル基が、樹脂(分散剤)及び顔料の疎水性部位と相互作用することにより、顔料の分散性が向上したものと考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録する際に、記録ヘッドからの吐出特性が、耐久においても安定した良好な状態に保たれる。また、同時に、耐水性及び耐光性などの堅牢性に優れた高品位画像の形成の実現が可能なインク及び該インクを用いたインクジェット記録装置を提供することができる。
次に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
先ず、本発明のインクについて説明する。該インクは、少なくとも(a)顔料、(b)分散剤、(c)液媒体、及び(d)後述する一般式(1)で表わされるマロン酸誘導体のアルカリ金属塩を構成成分として含む。本発明者らは、インクを熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴として吐出させるインクジェット記録方法において、顔料を色材としたインクの吐出の安定化方法について鋭意検討した。その結果、インクジェット記録方法に用いるインクとして、後述する(d)成分を含むインクを使用することで、非常に効果的に吐出性能を安定化させることができることを知見して本発明に至った。以下、本発明のインクの各構成成分について説明する。
<(d)マロン酸誘導体のアルカリ金属塩>
先ず、本発明のインクを特徴づける(d)成分について述べる。本発明で使用する(d)成分は、下記一般式(1)で表わされる通り、マロン酸誘導体のアルカリ金属塩である。
Figure 0005064782
(式中、Rはアルキル基を表わし、Mはアルカリ金属を表わす。)
このようなマロン酸誘導体のアルカリ金属塩としては、例えば、メチルマロン酸リチウム塩、メチルマロン酸ナトリウム塩、メチルマロン酸カリウム塩、メチルマロン酸ルビジウム塩、メチルマロン酸セシウム塩、
エチルマロン酸リチウム塩、エチルマロン酸ナトリウム塩、エチルマロン酸カリウム塩、エチルマロン酸ルビジウム塩、エチルマロン酸セシウム塩、
プロピルマロン酸リチウム塩、プロピルマロン酸ナトリウム塩、プロピルマロン酸カリウム塩、プロピルマロン酸ルビジウム塩、プロピルマロン酸セシウム塩、
ブチルマロン酸リチウム塩、ブチルマロン酸ナトリウム塩、ブチルマロン酸カリウム塩、ブチルマロン酸ルビジウム塩、ブチルマロン酸セシウム塩、
ペンチルマロン酸リチウム塩、ペンチルマロン酸ナトリウム塩、ペンチルマロン酸カリウム塩、ペンチルマロン酸ルビジウム塩、ペンチルマロン酸セシウム塩、
ヘキシルマロン酸リチウム塩、ヘキシルマロン酸ナトリウム塩、ヘキシルマロン酸カリウム塩、ヘキシルマロン酸ルビジウム塩、ヘキシルマロン酸セシウム塩などが挙げられる。
中でも、メチルマロン酸、エチルマロン酸及びブチルマロン酸のいずれかのアルカリ金属塩は、入手が容易であるため好ましい。特にブチルマロン酸のアルカリ金属塩は、樹脂(分散剤)や顔料との疎水性相互作用が強いため、より好ましい。また、カウンターイオンであるアルカリ金属としては、カリウムの場合に効果が高く、入手も容易であるので、特に好ましい。
上記に挙げたような(d)成分は、単独でも或いは2種類以上の混合物としても使用することができる。本発明のインク中における上記の(d)成分の含有量の総量は、インク全量に対して0.005から5質量%の範囲であることが好ましい。さらには、インク全量に対して0.05から1質量%の範囲であることが、より好ましい。(d)成分の含有量をこの範囲とすることで、本発明のインクは、より優れた吐出の安定効果を示し、また、記録ヘッドのノズル詰まりなどがより生じにくいインクとなる。
<(a)顔料>
次に、本発明のインクを構成する(a)成分である顔料について説明する。顔料としては、無機顔料や有機顔料など、あらゆる顔料を用いることができる。具体的には、下記に挙げるものを使用できる。しかし、これらに限定されるものではない。
カーボンブラック、
C.I.ピグメントイエロー−1、同−2、同−3、同−12、同−13、同−14、同−16、同−17、同−73、同−74、同−75、同−83、同−93、同−95、同−97、同−98、同−114、同−128、同−129、同−151、同−154、同−195、
C.I.ピグメントレッド−5、同−7、同−12、同−48(Ca)、同−48(Mn)、同−57(Ca)、同−57:1、同−57(Sr)、同−112、同−122、同−123、同−168、同−184、同−202、
C.I.ピグメントブルー−1、同−2、同−3、同−15:3、同−15:34、同−16、同−22、同−60、
C.I.ヴァットブルー−4、同−6など。
本発明のインクの色材として用いる上記に挙げたような顔料は、1種類で用いてもよいし、又は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、顔料の濃度は限定されないが、通常は、インク全量に対して0.1から20質量%の範囲から適宜に選択される。
<(b)分散剤>
次に、本発明のインクを構成する(b)成分である分散剤について説明する。上記に挙げたような顔料をインクの色材として使用する場合には、顔料をインク中で安定に分散させるために分散剤を使用する。前記したように本発明では、(d)成分であるマロン酸誘導体のアルカリ金属塩を用いることで、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させて記録を行った際の顔料の分散性の低下の抑制、さらには分散性を高めることを可能とする。分散剤としては、高分子分散剤や界面活性剤系分散剤などを用いることができるが、高分子分散剤(樹脂)を用いた場合に、より高い効果が得られる。勿論、複数のものを併用してもよい。
高分子分散剤としては、下記に示すような疎水性及び親水性を合わせ持つ重合体或いは共重合体に、無機或いは有機のアルカリ性化合物を添加して、重合体或いは共重合体の溶解性を高めたものを使用することが好ましい。高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物塩、スチレン−メタクリル酸共重合物塩、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合物塩、スチレン−マレイン酸共重合物塩、
アクリル酸エステル−マレイン酸共重合物塩、スチレン−メタクリルスルホン酸共重合物塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、
ポリビニルアルコールなどを使用することができる。これらの中でも、特に、重量平均分子量が1,000から30,000で、酸価が100から430の範囲のものが好ましい。
界面活性剤系分散剤としては、例えば、ラウリルベンゼンスルホン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、ラウリルベンゼンカルボン酸塩、ラウリルナフタレンスルホン酸塩、脂肪族アミン塩、及びポリエチレンオキサイド縮合物などが挙げられる。これらの分散剤の使用量は、顔料の質量:分散剤の質量=10:5から10:0.5の範囲とすることが好ましい。
<(c)液媒体>
次に、本発明のインクを構成する(c)成分である液媒体について説明する。液媒体としては、水を含むものを使用することが好ましく、特に、水と水溶性有機溶剤との混合媒体を用いることが好ましい。水は、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが望ましい。また、水の含有量としては、水性インク全量に対して、好ましくは35から96質量%の範囲である。水溶性有機溶剤は、インクの粘度を使用上好ましい適当な粘度に調整するためと、インクの乾燥速度を遅らせたり、色材の溶解性を高め、記録ヘッドのノズルの目詰まりを防止するなどの種々の目的で用いられる。インク中の水溶性有機溶剤の総含有量は、インク全量に対して、0.5から20質量%の範囲で使用することが好ましく、さらには、インク全量に対して、1から15質量%の範囲で含有させることがより好ましい。上記範囲とすることで、優れた吐出の安定効果を有し、また、記録ヘッドのノズル詰まりなどの生じにくいインクを得ることができる。
上記において使用する水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、
メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、
tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノールなどの炭素数1から5のアルキルアルコール類;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;
アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;
エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオールなどのアルキレン基が2から6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;
グリセリン;
トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン;
エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの低級アルキルエーテル類;
トリエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;
スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。
<添加剤>
さらに、本発明のインクには、上記した成分の他に、必要に応じて、従来公知の一般的な各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、防かび剤、防腐剤、酸化防止剤、消泡剤、界面活性剤や、尿素などのノズル乾燥防止剤などが挙げられ、これらを適宜に選択して添加することができる。
<インクの物性>
上記のような組成を有する本発明のインクは、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法に用いられる。このため、本発明のインクは、その物性が以下の範囲のものであることが好ましい。すなわち、25℃付近でのpHは、3から12であることが好ましく、より好ましくは4から10である。表面張力は、10から60mN/m(dyn/cm)であることが好ましく、より好ましくは15から50mN/m(dyn/cm)である。粘度は、1から30cps(mPa・s)であることが好ましく、より好ましくは1から10cps(mPa・s)である。
<インクジェット記録装置>
次に、本発明のインクジェット記録装置について説明する。本発明のインクジェット記録装置は、上記した本発明のインクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴として吐出させ、記録媒体上に画像を記録するための手段を有することを特徴とする。好適なものとしては、例えば、バブルジェット(登録商標)記録方式のインクジェット記録装置が挙げられる。しかし、本発明は、これに限定されず、本発明のインクを用い、かつ、上記の記録方式を採用した装置であればよく、また、その他は従来の装置と同様の構成のものでよい。
本発明で利用する記録方式の代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されているが、本発明の装置は、これらの基本的な原理を用いたものとすることが好ましい。この記録方式は、所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、下記のようにしてインク吐出が行われるため、特に応答性に優れたインク吐出が達成できるという利点がある。オンデマンド型の記録方式では、先ず、インクが保持されているシートや液路に対応して配置された電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することで、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめる。そして、該熱エネルギーによって記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させるので、結果的に、この駆動信号に一対一に対応してインク内の気泡を形成できる。そして、この気泡の成長・収縮により吐出用開口を介してインクを吐出させて、少なくとも一つのインク滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長・収縮が行われるので、特に応答性に優れたインク吐出が達成できる。この際のパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4,463,359号明細書、同第4,345,262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4,313,124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
本発明の記録装置を構成する記録ヘッドとしては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体を組み合わせた構成(直線状液流路又は直角液流路)のものが使用できる。その他、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4,558,333号明細書、米国特許第4,459,600号明細書に記載されている構成の記録ヘッドも本発明の記録装置に有効に利用できる。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通する吐出口を電気熱変換体の吐出部とする構成(特開昭59−123670号公報など)の記録ヘッドも、本発明の装置に有効に利用できる。
さらに、記録装置が記録できる記録媒体の最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、下記のようなものが適用できる。上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによって、その長さを満たした構成や、一体的に形成された一個の記録ヘッドとして構成されたものがあるが、いずれも本発明の記録装置に適用できる。このような記録ヘッドを有する記録装置では、前述した本発明の効果が一層有効に発揮される。
また、装置本体に装着されることで、該装置本体との電気的な接続や該装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドも、本発明の記録装置の記録ヘッドの構成として好適である。或いは、記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドも、本発明の記録装置の記録ヘッドの構成として有効である。
また、本発明のインクジェット記録装置においては、上記したような記録ヘッドに対しての、回復手段、予備的な補助手段などを付加した構造のものとすることが好ましい。このような構成の装置とすることで、本発明の効果を一層安定なものとできる。具体的な手段としては、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或いは吸引手段、電気熱変換体或いはこれとは別の加熱素子或いはこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードが挙げられる。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
<実施例1〜8>
[実施例1]
(顔料分散液1の調製)
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体
(酸価116、重量平均分子量3,700) 5部
・トリエタノールアミン 0.5部
・ジエチレングリコール 5部
・イオン交換水 69.5部
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂成分を完全に溶解させた。この溶液に、カーボンブラック「MA−100」(pH3.5;三菱化学(株)製)15部、2−プロパノール5部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理を行った。
・分散機:サンドグライダー
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積)
・粉砕時間:3時間
さらに、遠心分散処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して、固形分が20%である顔料分散液1を得た。
(実施例1のインクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを実施例1のインクとした。
・顔料分散液1 30部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・ブチルマロン酸カリウム 1部
・イオン交換水 49部
[実施例2]
(顔料分散液2の調製)
・スチレン−アクリル酸共重合体
(重量平均分子量:約7,000) 3.5部
・水酸化カリウム 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 65.5部
先ず、上記成分を容器の中に入れて混合し、ウォーターバスで70℃に加熱し、樹脂分を完全に溶解させた。次に、この溶液に、C.I.ピグメントイエロー93を24部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った後、顔料分散液1の作製の場合と同様の条件で分散処理を行った。さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を除去して、固形分が27.5%である顔料分散液2を得た。
(実施例2のインクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを実施例2のインクとした。
・顔料分散液2 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・ブチルマロン酸カリウム 1部
・イオン交換水 59部
[実施例3]
(顔料分散液3の調製)
・スチレン−アクリル酸共重合体
(重量平均分子量:約7,000) 3.5部
・水酸化カリウム 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 65.5部
先ず、上記成分を容器の中に入れて混合し、ウォーターバスで70℃に加熱し、樹脂分を完全に溶解させた。次に、この溶液に、C.I.ピグメントレッド122を24部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った後、顔料分散液1の作製の場合と同様の条件で分散処理を行った。さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を除去して、固形分が27.5%である顔料分散液3を得た。
(実施例3のインクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを実施例3のインクとした。
・顔料分散液3 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・ブチルマロン酸カリウム 1部
・イオン交換水 59部
[実施例4]
(顔料分散液4の調製)
・スチレン−アクリル酸共重合体
(重量平均分子量:約7,000) 3.5部
・水酸化カリウム 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 65.5部
先ず、上記成分を容器の中に入れて混合し、ウォーターバスで70℃に加熱し、樹脂分を完全に溶解させた。次に、この溶液に、C.I.ピグメントブルー15:3を24部、イソプロピルアルコールを1.0部加え、30分間プレミキシングを行った後、顔料分散液1の作製の場合と同様の条件で分散処理を行った。さらに、遠心分離処理(12,000rpm、20分間)を行い、粗大粒子を除去して、固形分が27.5%である顔料分散液4を得た。
(実施例4のインクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを実施例4のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・ブチルマロン酸カリウム 1部
・イオン交換水 59部
[実施例5]
(実施例5のインクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを実施例5のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・メチルマロン酸カリウム 1部
・イオン交換水 59部
[実施例6]
(実施例6のインクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを実施例6のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・ブチルマロン酸ナトリウム 1部
・イオン交換水 59部
[実施例7]
(実施例7のインクの調製)
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧濾過したものを実施例7のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・ブチルマロン酸セシウム 1部
・イオン交換水 59部
[実施例8]
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間攪拌し、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルター(富士フイルム(株)製)にて加圧ろ過したものを実施例8のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・ブチルマロン酸カリウム 0.5部
・イオン交換水 59.5部
<比較例1〜6>
実施例で調製した顔料分散液1〜4をそれぞれ用いて比較例のインクを調製した。
[比較例1]
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを比較例1のインクとした。
・顔料分散液1 30部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・イオン交換水 50部
[比較例2]
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを、比較例2のインクとした。
・顔料分散液2 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・イオン交換水 60部
[比較例3]
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを、比較例3のインクとした。
・顔料分散液3 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・イオン交換水 60部
[比較例4]
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを、比較例4のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・イオン交換水 60部
[比較例5]
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを、比較例5のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・マロン酸カリウム 1部
・イオン交換水 59部
[比較例6]
以下の各成分をビーカーにて混合し、25℃にて3時間撹拌した。この混合物をポアサイズ1.0μmのメンブランフィルター(富士フイルム(株)製)で加圧ろ過したものを比較例6のインクとした。
・顔料分散液4 20部
・ジエチレングリコール 10部
・グリセリン 10部
・ブチルマロン酸アンモニウム 1部
・イオン交換水 59部
上記で調製した実施例1〜8及び比較例1〜6のインクの主組成を表1に、まとめて示した。
Figure 0005064782
<評価>
上記の実施例1〜8及び比較例1〜6のインクについて、吐出速度及び吐出耐久性を評価した。
(吐出速度)
測定に際して、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッド(BC−02(キヤノン(株)製))を有するインクジェット記録装置を用いた。駆動条件を、駆動パルス幅4.4μs、駆動電圧24.6V、駆動周波数300ヘルツとし、各インクを搭載して、それぞれの吐出速度を測定した。得られた結果を下記の基準で評価し、表2に示した。
〈評価基準〉
A:液滴の吐出速度が10m/s以上12m/s以下。
B:液滴の吐出速度が8m/s以上10m/s未満。
C:液滴の吐出速度が6m/s以上8m/s未満。
D:液滴の吐出速度が6m/s未満。
(吐出耐久性)
耐久試験も、吐出速度を測定したと同じインクジェット記録装置を用いて行った。駆動条件は、駆動パルス幅4.4μs、駆動電圧24.6V、駆動周波数6250Hzとした。上記の条件で、各インクについて連続吐出を行い、下記の方法で吐出耐久性を試験した。記録ヘッドから吐出される1×106発分の液滴を容器に収集して、電子天秤で秤量した。具体的には、1×106発分の液滴の吐出前後における容器の重さを秤量し、増加量を求めて、その1×106発における平均の吐出液滴量(すなわち、1発分の量)を算出した。そして、連続吐出を1×108発まで行い、耐久試験の最終の1×106発分の液滴量から求めた平均の吐出液滴量を、耐久試験の当初の1×106発分の液滴量から求めた平均の吐出液滴量と比較し、下記の基準で評価した。得られた結果を表2に示した。
〈評価基準〉
A:9.9×107〜1×108発間の平均の吐出液滴量が0〜1×106発後の平均の吐出液滴量と比べて90%以上。
B:9.9×107〜1×108発間の平均の吐出液滴量が0〜1×106発後の平均の吐出液滴量と比べて90%未満70%以上。
C:9.9×107〜1×108発間の平均の吐出液滴量が0〜1×106発後の平均の吐出液滴量と比べて70%未満。
D:途中で吐出不能に陥った。
Figure 0005064782
以上の評価結果より、顔料を色材とするインク中に、前記した一般式(1)で示されるマロン酸誘導体のアルカリ金属塩を含有させることにより、耐久においても安定した良好な吐出特性を示すインクとなることが確認できた。また、マロン酸誘導体のアルカリ金属塩を示す前記一般式(1)中のRが、メチル基の場合よりもブチル基の場合の方が、より優れた効果が得られることが確認された。さらに、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩の場合よりも、カリウム塩或いはセシウム塩の場合の方が好ましいことが確認された。さらに、入手のし易さを考慮すると、前記一般式(1)で示されるものの中でも、マロン酸誘導体のカリウム塩を使用することが特に有効であることが確認できた。

Claims (6)

  1. 熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴を吐出させ、記録媒体上に画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクであって、
    少なくとも(a)顔料、(b)高分子分散剤、(c)液媒体、及び(d)下記一般式(1)で表わされるマロン酸誘導体のアルカリ金属塩を含有することを特徴とするインク。
    Figure 0005064782
    (式中、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基のいずれかを表わし、Mはアルカリ金属を表わす。)
  2. 前記一般式(1)中のMが、カリウムである請求項1に記載のインク。
  3. 前記(d)成分の含有量が、インク全量に対して0.005から5質量%である請求項1又は2に記載のインク。
  4. 前記(b)成分が、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物塩、スチレン−メタクリル酸共重合物塩、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合物塩、スチレン−マレイン酸共重合物塩、アクリル酸エステル−マレイン酸共重合物塩、スチレン−メタクリルスルホン酸共重合物塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、及びポリビニルアルコールのいずれかである請求項1から3のいずれか1項に記載のインク。
  5. 前記(b)成分の重量平均分子量が、1,000以上30,000以下である請求項1から4の何れか1項に記載のインク。
  6. 請求項1からのいずれか1項に記載のインクを、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインク滴として吐出させ、記録媒体上に画像を記録するための手段を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
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