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JP5062875B2 - 水性ボールペン - Google Patents

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Description

本発明は、水性ボールペン用インキ組成物に関し、さらに詳細としては、金属、ガラス、プラスチック材料等の非浸透性面へも筆記できるインキ組成物及びそれを用いた水性ボールペンに関するものである。
従来より、金属、ガラス、プラスチック材料等の非浸透性面への筆記できるインキ組成物が従来技術として提案されている。
一般的な顔料を用いた水性インキ組成物を使用するボールペンとしては、特開2004−292552号公報「水性ボールペン用インキとこれを用いた水性ボールペン」、特開2003−291579号公報「布書き用ボールペン」がある。また、白色樹脂粒子を用いた水性インキ組成物を使用するボールペンとしては、特開2006−70236号公報「水性インキ組成物」が従来技術として知られている。
「特開2004−292552号公報」 「特開2003−291579号公報」 「特開2006−70236号公報」
しかし、特許文献1のように一般的に用いられる顔料は、比重が高いためインキ中で顔料沈降が起こり易いという問題があった。そのため、筆記不良や筆跡の濃淡が発生する可能性もあった。
また、特許文献2では、100〜30000mPa・s(25℃)とインキ粘度が高いために、筆記に際してボール表面に速やかにインキ膜が形成されず、布のような浸透面には筆記可能であるが、平滑な非浸透面上に良好な筆記ができないという問題があった。
さらに、特許文献3では、水溶性樹脂を用いてないため、白色樹脂粒子の分散性能が良好でなく、さらに、インキ消費量が500mg/100mと非常に多いため、筆跡の乾燥に時間がかかってしまう問題があった。
本発明の目的は、筆跡が良好で、インキ経時が安定で、かつ金属、ガラス、プラスチック材料等の非浸透性面への筆記できる水性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた水性ボールペンを提供することである。
「1.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持した金属からなるボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、インキ収容筒内に前記ボールペン用インキ組成物を直詰めした水性ボールペンにおいて、前記ボールペン用インキが、少なくとも界面活性剤、中空樹脂粒子、水中油滴型樹脂エマルジョン、水溶性樹脂からなり、インキ組成物の全量に対して、前記中空樹脂粒子、前記水中油滴型樹脂エマルジョン、前記水溶性樹脂の固形分比率が中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.5、かつ中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:1.0であり、前記界面活性剤が、HLBが10以下のアセチレングリコール系界面活性剤と、HLBが10以下のリン酸エステル系界面活性剤であるとともに、インキ消費量が250〜480mg/100mであることを特徴とする水性ボールペン。
2.前記中空樹脂粒子と前記水中油滴型樹脂エマルジョンと前記水溶性樹脂との組成中が、アクリル系樹脂であることを特徴とする第1項に記載の水性ボールペン
3.前記界面活性剤のHLBが10以下であり、インキ組成物の全量に対する含有量が0.1〜5.0質量%であることを特徴とする第1項または第2項に記載の水性ボールペン
4.20℃、におけるインキ粘度が、剪断速度380.0sec−1において5mPa・s以上、40mPa・s以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の水性ボールペン
5.前記ボールペン用インキ組成物に、蛍光顔料を含有することを特徴とする請求項1ないし4に記載の水性ボールペン。」である。
本発明は、少なくとも中空樹脂粒子、水中油滴型樹脂エマルジョン、水溶性樹脂からなるボールペン用インキ組成物において、インキ組成物の全量に対して、前記中空樹脂粒子、前記水中油滴型樹脂エマルジョン、前記水溶性樹脂の固形分比率が中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.5、かつ中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:1.0であることを特徴とすることで、筆跡が良好で、インキ経時が安定で、かつ金属、ガラス、プラスチック材料等の非浸透性面への筆記できる水性ボールペン用インキ組成物及びそれを用いた水性ボールペンを提供することができた。
本発明の特徴は、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョンかつ中空樹脂粒子:水溶性樹脂の固形分比率を特定にすることである。
本発明に用いられる中空樹脂粒子は、一般に用いられる顔料とは異なり、粒子内部に空隙を有し、かつ粒子の外殻は、ポリマーで架橋された中空状のポリマー層であり、前記粒子内部に空隙を有したものである。粒径が大きく、比重が高い酸化チタン等の顔料とは異なり、粒子内部を空隙にすることで、比重を低くできるため、沈降の発生を抑制できる。さらに、中空樹脂粒子の乾燥により粒子内部の水が消失して、空孔となりポリマー層と内部の空気により光散乱が起こらせることで、白色に見えることによって、顔料のような隠蔽効果を発揮することができる。
また、中空樹脂粒子の外殻のポリマー層はとしては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、架橋型スチレン−アクリル樹脂等のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、マレイン系樹脂などが挙げられる。また、上記中空樹脂粒子は、単独又は2種以上組み合わせて混合して使用してもよい。具体的には、アクリル系樹脂としては、MH5055、MH5055A(日本ゼオン(株)社製)、SX863(A)、SX864(B)、SX865(B)、SX866(A)、SX866(B)、SX8782(D)、AE865(JSR(株)社製)、ロイペークOP−62、同OP−84J、同OP−91、HP1055(ローム アンドハース ジャパン(株)社製)等や、それらを加工した中空樹脂粒子を用いたものが挙げられ、これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
本発明では、非浸透面上での筆跡定着性を向上させる目的で水溶性樹脂を採用する。着色材でも被膜形成性能はあるが、筆跡の擦過耐性を付与するには筆記面との密着性も鑑みた被膜形成剤の処方が必要となる。また、必須成分である中空樹脂粒子の分散を安定的に維持するためには、分散剤の採用も必要不可欠となる。この際に分散性能と定着性能を兼備していれば、粘度制限のあるインキ組成物を構築する上で最も効率的な処方となる。適用対象となる水溶性樹脂は、アクリル系樹脂が代表的な物質であって中空樹脂粒子の分散性能と乾燥後の定着性能を兼備した好適な水溶性樹脂である。水溶性樹脂は、分散性能、定着性能に着目して選定する必要がある。
そして、水溶性樹脂の配合量は多ければ多いほど筆跡定着性は良好となるが、適量以上に配合してしまうと定着膜が厚くなり、中空樹脂粒子が覆われ、光を遮ってしまい、中空樹脂粒子のポリマー層と内部の空気により光散乱が起こらなくなり、隠蔽効果が得られない。そのため、所望の隠蔽性を得るには、固形分比率が、中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:1.0以下であることが必要である。また、固形分比率が、中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01未満であると、非浸透面上で所望の筆跡定着性を得られず、さらにインキ中において中空樹脂粒子を分散させることができない。
そのため、中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:1.0であることすることが好適な範囲である。このように、中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:1.0と特定の固形分比率にすることが、本発明の特徴の一つである。さらに、より隠蔽性を出すようにすることと、よりインキ経時の安定性を考慮すると、中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:0.5以下の範囲にすることが好ましい。
また、水溶性樹脂として適用可能な樹脂は、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
具体的には、アクリル系樹脂としては、ジョンクリル52、同57、同60、同61J、同62同63、同67、同70、同354、同501、同586、同587、同678、同680、同682、同683、同690、同6610、HPD−71、同−96、同671、PDX−6102B等(ジョンソンポリマー(株)社製)、ポリビニルピロリドンとしては、PVP K−15、同−30、同−90、同−120等(アイエスピー・ジャパン(株)社製)が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
上記のように、水溶性樹脂によって、筆跡定着性は良好となるが、さらに強固な筆跡定着性を得るために、水中油滴型樹脂エマルションを併用する。
水中油滴型樹脂エマルジョンも水溶性樹脂と同様に、乾燥皮膜によって、筆跡定着性を向上させるとともに、筆跡の耐水性を向上させる。水中油滴型樹脂エマルジョンは、水溶性樹脂に比べ、乾燥皮膜形成速度が速く、筆記面との接着性が高いため、定着性の高い強固な筆跡が得られる。特に金属、ガラス、プラスチック材料等の非浸透面においては、定着性が強固である方が好ましいため、より好適である。水中油滴型樹脂エマルジョンとして適用可能な樹脂は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等等が挙げらる。
具体的には、アクリル系樹脂としては、AE311、AE318、AE337、AE343、AE866、AE883、AE945、AE8116(JSR(株)社製)、ジョンクリル734、同741、同775、同790、同840、同1535、同7001、同7100等(ジョンソンポリマー(株)社製)が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
水中油滴型樹脂エマルジョンの配合量は、水溶性樹脂と同様に、適量以上に配合してしまうと定着膜が厚くなり、中空樹脂粒子が覆われてしまい、光を遮ってしまい、隠ぺい効果が得られない。さらに、筆端部において強力な乾燥皮膜が形成されるため良好な筆記性能を実現することが困難となる。そのため、固形分比率が、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.5以下であることが必要である。また、固形分比率が、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01未満であると、良好な筆記性能定着性能が得られない。
そのため、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.5であることが好適な範囲である。このように、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.5と特定の固形分比率にすることが、本発明の特徴の一つである。さらに、より良好な筆記性能、インキの経時安定性を考慮すると、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.2未満の範囲にすることが好ましい。
これらのすべてを考慮して、中空樹脂粒子の分散性、インキの隠蔽性、筆跡定着性、筆記性能、筆跡耐水性において優れるものは、固形分比率が、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.5、かつ中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:1.0の範囲であり、さらに好ましくは、中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:0.5、かつ中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.2未満の範囲にすることが好ましい。
さらに、中空樹脂粒子、水中油滴型樹脂エマルジョン、水溶性樹脂に用いられる樹脂の種類としては、水との溶解安定性が良く、筆記後の筆跡定着性が強く、中空樹脂分散性能に優れるものとして、アクリル系樹脂を用いるのがより好ましい。さらに、経時安定性を考慮すれば、中空樹脂粒子、水中油滴型樹脂エマルジョン、水溶性樹脂が同一系樹脂であることがことが好ましいので、各樹脂の組成中に、アクリル系樹脂を用いていることが最も好ましい。
本発明に用いる界面活性剤は、アセチレングリコール系、リン酸エステル系、フッ素系、シリコーン系などが挙げられ、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
また、界面活性剤のHLBが10以下であると、親水性が低く、耐水性が強い。そのため、界面活性剤が乾燥後に、皮膜形成すると、耐水性の強い皮膜を形成することができる。また、HLB10を越えると、親水性があり、耐水性が劣ってしまう可能性がある。特に、非浸透面においては、耐水性が良好であることが望ましいので、HLB10以下であることが好ましい。
また、特に、アセチレングリコール系界面活性剤は、分子構造として炭素−炭素間の3重結合もあり、非常に安定したグリコール系の界面活性剤なので、経時安定性が良好である。また、分子量も小さく、表面張力を大きく下げる効果があるので、泡の発生も少ないため生産性においても良好であるため、アセチレングリコール系界面活性剤を用いるほうがより好ましい。
さらに、アセチレングリコール系界面活性剤は、インキの表面張力を小さくすることで、金属、ガラス、プラスチック材料等の非浸透面上への筆記が良好となる濡れ性向上剤としての効果もある。そのため、界面活性剤の中でも、耐水性、濡れ性向上剤を兼備したアセチレングリコール系を用いるのが最も好ましい。
具体的には、ダイノール604(HLB値:8)、サーフィノール104H(HLB値:4)、同104A(HLB値:4)、同104BC(HLB値:4)、同104DPM(HLB値:4)、同104PA(HLB値:4)、同104S(HLB値:4)、同420(HLB値:4)、同440(HLB値:8)、同SE(HLB値:6)、同SE−F(HLB値:6)、同61(HLB値:6)等(エアープロダクツ ジャパン(株)社製)、プライサーフA207H(HLB値:7)、同AL(HLB値:6)、同A208B(HLB値:7)、同A208S(HLB値:7)、同A208F(HLB値:9)、同A212E(HLB値:10)等(第一工業製薬株式会社)が挙げられ、これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
その他添加剤として、特に、金属からなるボールペンチップを筆端部に採用した場合の防錆効果や、潤滑効果を付与する目的でリン酸エステル系の界面活性剤を添加することが好ましい。
また、金属チップの腐敗を防止する目的でベンゾトリアゾール等の防錆剤を、pH調整を目的で、トリエタノールアミン等の有機アミンを、インキ中に水分を含むので、菌の繁殖によるインキの安定性劣化を防止するする目的で、1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の防菌剤を、所望により配合可能である。
また、着色材については、特に限定されるものではなく、染料及び/又は顔料を用いることができる。染料としては、従来から水性ボールペンに採用されている水溶性染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。また、顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられる。具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、可逆性熱変色顔料等が例示できる。また着色樹脂粒子や無色樹脂粒子を、顔料もしくは染料で着色したもの等も用いることもできる。これらの顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。
その中で、色調の鮮やかさを考慮すると、蛍光顔料がより好ましく、具体的には、LUMIKOL NKW−2100Eシリーズ、LUMIKOL NKW−3200Eシリーズ、LUMIKOL NKW−3900Eシリーズ、LUMIKOL NKW−6000Eシリーズ、LUMIKOL NKW−6200Eシリーズ、LUMIKOL NKW−C2100Eシリーズ、NKP−8300シリーズ、NKP−9200シリーズ、NKP−9500シリーズ、NKP−9600シリーズ、NKP−4000シリーズ、NKV−Sシリーズ、NKS−1000シリーズ、MPI−500シリーズ(日本蛍光化学(株)社製)が挙げられる。含有量は、経時安定性を考慮して、インキ組成物全量に対し、1質量%以上、30質量%以下が好ましい。
本発明に用いられる水性インキ組成物の粘度については、20℃において、剪断速度380.0sec−1において5mPa・s以下であると、筆跡に滲みが発生する可能性があり、さらに、筆跡乾燥性に影響を及ぼす可能性もある。また、インキ粘度40mPa・s以上であると、インキ消費量がやや少なめになる可能性があるため、金属、ガラス、プラスチック材料等の非浸透面において、インキが定着しずらくなり、筆跡が中抜けになってしまいう可能性がある。そのため、インキ粘度は20℃、剪断速度380.0sec−1において5mPa・s以上、40mPa・s以下であることが、より好ましい。
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1の水性インキ組成物は、中空樹脂粒子として、MH5055(日本ゼオン(株)社製)、水中油滴型樹脂エマルジョンとして、AE883(JSR(株)社製)、水溶性樹脂として、ジョンクリル57(ジョンソンポリマー(株)社製)、アセチレングリコール系界面活性剤として、ダイノール604(エアープロダクツ ジャパン(株)社製)、着色剤として、LUMIKOL NKW−6000EシリーズのNKW−6007E(日本蛍光化学(株)社製)、その他、防錆潤滑剤、防錆剤、pH調整、防菌剤を採用し、これを所定量秤量して、50℃加温しながら、ディスパー攪拌機を用いて撹拌させ、水性インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りであった。尚、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(CPE−42ローター)を用いて20℃の環境下で、剪断速度380.0sec−1(回転数100rpm)にてインキ粘度を測定したところ、12.0mPa・sであった。
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1
中空樹脂粒子(MH5055)(固形分:30%) 64.0質量%
水中油滴型樹脂エマルジョン(AE883)(固形分:55%) 15.0質量%
水溶性樹脂(ジョンクリル57)(固形分:55%) 10.0質量%
アセチレングリコール系界面活性剤(ダイノール604) 0.8質量%
着色剤(NKW−6007E)(固形分:34%) 8.0質量%
防錆潤滑剤(プライサーフ208F) 0.5質量%
防錆剤(ベンゾトリアゾール) 0.5質量%
pH調整(トリエタノールアミン) 1.0質量%
防菌剤(プロキセルXL−2S) 0.2質量%
実施例及び比較例のインキ粘度は、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(CPE-42ローター)を用いて20℃の環境下で、インキ粘度を測定した。また、本発明の水性インキ組成物は、ニュートニアンインキであるため、剪断速度が相違してもインキ粘度は、略同じ数値を示した。
実施例2〜16
表1、表2に示すように各成分を配合に変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜16の水性インキ組成物を得た。表1、表2に測定、評価結果を示す。
Figure 0005062875
Figure 0005062875
比較例1〜7
インキの配合を表3に示す通りとし、表3に測定、評価結果を示す。
Figure 0005062875
試験及び評価
中空樹脂粒子分散試験においては、実施例1〜16及び比較例1〜7で作製した水性インキ組成物を用いて、以下のような試験方法で評価を行った。
また、隠蔽性試験、筆跡定着性、筆跡耐水性、筆記性能においては、実施例1〜16及び比較例1〜7で作製した水性インキ組成物を、インキ収容筒の先端にボール径が0.5mmのボールを回転自在に抱持したボールペンチップをチップホルダーを介して具備したインキ収容筒内(ポリプロピレン製)に充填したボールペンと、筆記試験用紙としてコピー用紙(PPC用紙)と市販の透明アクリル板を用いて以下のような試験方法で評価を行った。
中空樹脂粒子分散試験:直径15mmの密開閉ガラス試験管に各試料を入れて、常温にて1か月放置後、適量採取し、顕微鏡で中空樹脂粒子の分散状態を観察した。
中空樹脂粒子が均一分散されたもの ・・・◎
中空樹脂粒子の沈降が発生したもの ・・・×
インキの隠蔽性試験:黒色上質紙面、及び黒色上質紙面上にアクリル板を敷き、そのアクリル板面上に筆記し、筆跡が見えるかを観測した。
下地の黒色を完全に隠蔽し、筆跡が良好に見えるもの ・・・◎
下地の黒色が若干透けて見えるが、実用上問題のないレベルで筆跡が見えるもの
・・・○
筆跡が視認できなかったもの ・・・×
筆跡定着性試験:紙面、及び透明アクリル板に筆記した筆跡が乾燥後に、指で擦過し、筆跡の定着状態を観察した。
紙面および、透明アクリル板面上の筆跡膜が剥がれないもの ・・・◎
紙面および、透明アクリル板面上の筆跡膜が剥がれるもの ・・・×
筆記試験:紙面、及び透明アクリル板面上に筆記した筆跡を観察した。
筆跡に滲み、カスレが出ないもの ・・・◎
筆跡に滲み、カスレが出るが、実用上問題ないもの ・・・○
筆跡に滲み、カスレがひどく出て、実用性に乏しいもの ・・・×
筆跡耐水性試験:紙面、及び透明アクリル板面上に筆記した筆跡が乾燥後に、水に10秒浸し、筆跡膜の状態を観察した。
筆跡膜が剥がれない ・・・◎
若干筆跡膜が剥がれるが、実用上問題のないレベルのもの・・・○
筆跡膜が剥がれる ・・・×
実施例1〜16では、中空樹脂粒子分散性、インキの隠蔽性、筆跡定着性、筆記試験、筆跡耐水性試験ともに良好もしくは、実用上問題のないレベルの性能が得られた。
さらに、表1、2の結果より、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.2未満の範囲では、カスレが発生せず、より筆跡が良好であり、中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:0.5以下の範囲では、インキの隠蔽性がより良好であった。また、界面活性剤として、HLB10以下を用いたものでは、耐水性がより向上し、インキ粘度が5mPa・s以上、40mPa・s以下では、より筆跡が良好であった。
表3の結果より、比較例1、2では、中空樹脂粒子に対して、水中油滴型樹脂エマルジョン又は水溶性樹脂の量が多いため、中空樹脂粒子を水中油滴型樹脂エマルジョン又は水溶性樹脂で覆ってしまい、所望の隠蔽性が得られなかった。比較例3、4では、水溶性樹脂が添加されていないため、中空樹脂粒子が十分に分散されなかった。比較例5、6では、水中油滴型樹脂エマルジョンが添加されていないため、筆跡が紙面および、透明アクリル板面上に定着しなかった。比較例7では、界面活性剤を添加しなかったため、所望の濡れ性が得られず、透明アクリル板面上に筆記してもインキをはじいてしまい、所望の筆跡にならなかった。
また、図示はしていないが、インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、本発明の水性ボールペン用インキ組成物をインキ収容筒内に直詰めした水性ボールペンとして使用する場合には、筆記用紙JIS P3201筆記用紙上に筆記角度65°、筆記荷重100gの条件にて、筆記速度4m/minの速度で、試験サンプル5本用いて、らせん筆記筆記試験を行い、その100mあたりのインキ消費量の平均値を、100mあたりのインキ消費量と定義すれば、100mあたりのインキ消費量については、250mg未満だと、インキ消費量が少ないので、所望の隠蔽性が得られず、480mg以上だとインキ消費量が多いので、筆跡に滲みの発生や、筆跡乾燥性に影響を及ぼす可能性もある。そのため、インキ消費量が250〜480mg/100mであることが、より好ましい。
また、インキの垂れ下がりを防止するため、ボールペンチップ先端に回転自在に抱持したボールを、コイルスプリングにより直接又は押圧体を介してチップ先端縁の内壁に押圧して、筆記時の押圧力によりチップ先端縁の内壁とボールに間隙を与えインキを流出させる弁機構を具備し、チップ先端の微少な間隙も非使用時に閉鎖することが好ましい。
本発明は、少なくとも界面活性剤、中空樹脂粒子、水中油滴型樹脂エマルジョン、水溶性樹脂からなるボールペン用インキ組成物において、中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョンと中空樹脂粒子:水溶性樹脂を特定の固形分比率にすることで、筆跡が良好で、インキ経時が安定で、かつ金属、ガラス、プラスチック材料等の非浸透性面へも筆記できる水性インキ組成物を提供することができる。そのため、キャップ式、ノック式等、筆記具用インキとして広く利用することができる。

Claims (5)

  1. インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持した金属からなるボールペンチップを直接又はチップホルダーを介して具備し、インキ収容筒内に前記ボールペン用インキ組成物を直詰めした水性ボールペンにおいて、前記ボールペン用インキが、少なくとも界面活性剤、中空樹脂粒子、水中油滴型樹脂エマルジョン、水溶性樹脂からなり、インキ組成物の全量に対して、前記中空樹脂粒子、前記水中油滴型樹脂エマルジョン、前記水溶性樹脂の固形分比率が中空樹脂粒子:水中油滴型樹脂エマルジョン=1.0:0.01〜1.0:0.5、かつ中空樹脂粒子:水溶性樹脂=1.0:0.01〜1.0:1.0であり、前記界面活性剤が、HLBが10以下のアセチレングリコール系界面活性剤と、HLBが10以下のリン酸エステル系界面活性剤であるとともに、インキ消費量が250〜480mg/100mであることを特徴とする水性ボールペン。
  2. 前記中空樹脂粒子と前記水中油滴型樹脂エマルジョンと前記水溶性樹脂が、アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の水性ボールペン
  3. 前記界面活性剤が、インキ組成物の全量に対する含有量が0.1〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の水性ボールペン
  4. 20℃、におけるインキ粘度が、剪断速度380.0sec−1において5mPa・s以上、40mPa・s以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の水性ボールペン
  5. 前記ボールペン用インキ組成物に、蛍光顔料を含有することを特徴とする請求項1ないし4に記載の水性ボールペン。
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