JP5062334B2 - 圧力波過給機 - Google Patents
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Description
本発明は、ハウジング内に設けたロータのセル内に吸気と排気とを交互に導入し、セル内に導入した排気の圧力波を利用して過給を行う圧力波過給機に関する。
複数のセルを有するロータがハウジング内に回転自在に設けられ、各セル内に吸気と排気とを交互に導入し、導入した排気でセル内の吸気を加圧して内燃機関の過給を行う圧力波過給機が知られている。この圧力波過給機ではハウジング内に排気を導入するので、排気の熱でハウジングやロータが伸びる。そこで、熱膨張係数が小さいセラミック製のロータを備えた圧力波過給機が知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2が存在する。
圧力波過給機のロータとして、ハウジングに回転可能に支持される軸部から半径方向に延びる複数の隔壁を放射状に設けて軸部の周囲に軸線方向に貫通する複数の空間を形成し、さらに各空間をそれぞれ仕切り部材で内周側と外周側とに区分して複数のセルを設けたものが知られている。このようなロータにおいて各セルに排気が導入されると仕切り部材は内周側及び外周側の両方から加熱される。そのため、この仕切り部材はロータの他の部分よりも温度が高くなり、ロータの端面から突出するおそれがある。この場合、ロータとハウジングとの間のクリアランスが小さいと仕切り部材がハウジングと接触するおそれがある。一方、ロータとハウジングとの間のクリアランスの大きさを熱で膨張した仕切り部材がハウジングと接触しないように十分に確保した場合は、ロータとハウジングとの間に漏れる吸気及び排気の量が増加するため、過給効率が低下するおそれがある。
そこで、本発明は、過給効率の低下を抑制しつつロータとハウジングとの接触を抑制することが可能な圧力波過給機を提供することを目的とする。
本発明の第1の圧力波過給機は、ロータを軸線回りに回転可能に収容する収容室と、前記軸線方向に関する前記ロータの一方の端面に対向するように前記収容室に設けられ、内燃機関の排気通路と通じる排気導入ポート及び排気吐出ポートが開口している排気側壁面と、を有するハウジングを備えた圧力波過給機において、前記ロータは、前記ハウジングに前記軸線回りに回転可能に支持される軸部と、前記軸部から半径方向に延び、かつ前記ロータの前記一方の端面から他方の端面まで前記軸線方向に延びるように設けられた複数の隔壁部材と、互いに隣り合う隔壁部材の間の空間に設けられ、前記ロータの前記一方の端面から前記他方の端面まで延びて前記空間を内周側の内側セルと外周側の外側セルとに区分する仕切り部材と、を備え、前記排気側壁面には、前記軸線方向から見て前記ロータの回転時に前記仕切り部材が描く軌跡と重なるように形成され、かつ前記ロータから離れる方向に凹む溝部が設けられている。
本発明の第1の圧力波過給機では、ロータの回転時に仕切り部材が描く軌跡と重なるように、すなわち仕切り部材と対向するように溝部が排気側壁面に設けられている。そのため、溝部の幅を適切に設定することにより仕切り部材が熱膨張によってロータの一方の端面から突出してもその突出した部分が排気側壁面と接触することを抑制できる。また、このように溝部を設けることによりロータの一方の端面と排気側壁面との間のクリアランスの大きさを、熱膨張時に仕切り部材がロータから突出する長さを考慮することなく設定できる。そのため、ロータの一方の壁面と排気側壁面との間のクリアランスの大きさを低減できる。これによりハウジングとロータとの間に漏れる排気の量を低減できるので、過給効率が低下することを抑制できる。従って、この第1の圧力波過給機によれば、過給効率の低下を抑制しつつロータとハウジングとの接触を抑制できる。
本発明の第1の圧力波過給機の一形態において、前記溝部は、その幅が前記仕切り部材の半径方向に関する厚さ以上になるように前記排気側壁面に設けられていてもよい。このように溝部の幅を設定することにより、仕切り部材が排気側壁面と接触することをさらに確実に抑制できる。
本発明の第1の圧力波過給機の一形態において、前記ハウジングは、前記ロータの前記他方の端面に対向するように前記収容室に設けられ、かつ前記内燃機関の吸気通路と通じる吸気導入ポート及び吸気吐出ポートが開口している吸気側壁面をさらに有し、前記吸気側壁面には、前記軸線方向から見て前記ロータの回転時に前記仕切り部材が描く軌跡と重なるように形成され、かつ前記ロータから離れる方向に凹む吸気側溝部が設けられていてもよい。この形態によれば、熱膨張によって仕切り部材がロータの他方の壁面から突出してもその突出した部分が吸気側壁面と接触することを抑制できる。そのため、ロータとハウジングとの接触をさらに抑制できる。
この形態において、前記吸気側溝部は、その幅が前記仕切り部材の半径方向に関する厚さ以上になるように前記吸気側壁面に設けられていてもよい。このように溝部の幅を設定することにより、仕切り部材が吸気側壁面と接触することをさらに確実に抑制できる。
本発明の第2の圧力波過給機は、ロータを軸線回りに回転可能に収容する収容室と、前記軸線方向に関する前記ロータの一方の端面に対向するように前記収容室に設けられ、内燃機関の排気通路と通じる排気導入ポート及び排気吐出ポートが開口している排気側壁面と、を有するハウジングを備えた圧力波過給機において、前記ロータは、前記ハウジングに前記軸線回りに回転可能に支持される軸部と、前記軸部から半径方向に延び、かつ前記ロータの前記一方の端面から他方の端面まで前記軸線方向に延びるように設けられた複数の隔壁部材と、互いに隣り合う隔壁部材の間の空間に設けられ、前記空間を内周側の内側セルと外周側の外側セルとに区分する仕切り部材と、を備え、前記仕切り部材は、前記一方の端面側の端が前記一方の端面よりも前記排気側壁面から離れた位置に配置されるように前記ロータに設けられている。
本発明の第2の圧力波過給機によれば、仕切り部材の一方の端面側の端、すなわち排気側の端をロータの一方の端面よりも排気側壁面から離れた位置に配置したので、熱膨張によって仕切り部材が軸線方向に伸びても仕切り部材がロータの一方の端面から突出することを抑制できる。そのため、仕切り部材が排気側壁面と接触することを抑制できる。また、仕切り部材の一方の端面側の端の位置を適切に設定することにより、熱膨張によって仕切り部材が軸線方向に伸びても仕切り部材がロータの一方の端面から突出することを防止できる。そのため、ロータの一方の壁面と排気側壁面との間のクリアランスの大きさを低減できる。これによりハウジングとロータとの間に漏れる排気の量を低減できるので、過給効率が低下することを抑制できる。従って、過給効率の低下を抑制しつつロータとハウジングとの接触を抑制できる。
本発明の第2の圧力波過給機の一形態において、前記ハウジングは、前記ロータの前記他方の端面に対向するように前記収容室に設けられ、かつ前記内燃機関の吸気通路と通じる吸気導入ポート及び吸気吐出ポートが開口している吸気側壁面をさらに有し、前記仕切り部材は、前記他方の端面側の端が前記他方の端面よりも前記吸気側壁面から離れた位置に配置されるように設けられていてもよい。この場合、熱膨張によって仕切り部材が軸線方向に伸びても仕切り部材がロータの他方の端面から突出することを抑制できる。これにより仕切り部材がロータの他方の端面から突出することを抑制できるので、ロータとハウジングとの接触をさらに抑制することができる。
(第1の形態)
図1は、本発明の第1の形態に係る圧力波過給機が組み込まれた内燃機関を示している。この内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に走行用動力源として搭載されるものであり、複数(図1では4つ)の気筒2aを有する機関本体2を備えている。各気筒2aには、それぞれ吸気通路3及び排気通路4が接続されている。この図に示したように吸気通路3には、吸気の流れ方向上流側から順に吸気を濾過するためのエアクリーナ5と、圧力波過給機10の吸気側端部10aと、吸気を冷却するためのインタークーラ6と、吸気量を調整するためのスロットルバルブ7とが設けられている。排気通路4には、排気の流れ方向上流側から順に圧力波過給機10の排気側端部10bと、排気を浄化するための排気浄化装置8が設けられている。
図1は、本発明の第1の形態に係る圧力波過給機が組み込まれた内燃機関を示している。この内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)1は、車両に走行用動力源として搭載されるものであり、複数(図1では4つ)の気筒2aを有する機関本体2を備えている。各気筒2aには、それぞれ吸気通路3及び排気通路4が接続されている。この図に示したように吸気通路3には、吸気の流れ方向上流側から順に吸気を濾過するためのエアクリーナ5と、圧力波過給機10の吸気側端部10aと、吸気を冷却するためのインタークーラ6と、吸気量を調整するためのスロットルバルブ7とが設けられている。排気通路4には、排気の流れ方向上流側から順に圧力波過給機10の排気側端部10bと、排気を浄化するための排気浄化装置8が設けられている。
図2は、圧力波過給機10を拡大して示している。圧力波過給機10は、ハウジング11と、ロータ12とを備えている。ハウジング11の内部には軸線Ax方向に延びる中空円筒状の収容室13が設けられており、ロータ12はその収容室13内に軸線Ax回りに回転可能に収容されている。ハウジング11は、ロータハウジング14と、ロータハウジング14の一端に取り付けられて吸気側端部10aとなる吸気側アタッチメント15と、ロータハウジング14の他端に取り付けられて排気側端部10bとなる排気側アタッチメント16とを備えている。ロータハウジング14にはその一端から他端まで軸線Ax方向に貫通する中空円筒状の空間14aが設けられており、その空間14aの両端を吸気側アタッチメント15及び排気側アタッチメント16で塞ぐことにより収容室13が形成される。吸気側アタッチメント15には、吸気導入ポート17及び吸気吐出ポート18が設けられている。吸気導入ポート17は収容室13内と吸気通路3のうち圧力波過給機10よりも吸気の流方向上流側の区間とを接続し、吸気吐出ポート18は収容室13内と吸気通路3のうち圧力波過給機10よりも吸気の流れ方向下流側の区間とを接続している。排気側アタッチメント16には、排気導入ポート19及び排気吐出ポート20が設けられている。排気導入ポート19は収容室13内と排気通路4のうち圧力波過給機10よりも排気の流れ方向上流側の区間とを接続し、排気吐出ポート20は収容室13内と排気通路4のうち圧力波過給機10よりも排気の流れ方向下流側の区間とを接続している。
圧力波過給機10は、軸線Ax回りに回転可能なようにハウジング11に支持されたシャフト21を備えている。シャフト21は、軸線Ax上に配置されている。ロータ12は、シャフト21の一端に一体に回転するように取り付けられている。シャフト21の他端は、電動モータ22の出力軸と連結されている。そのため、ロータ12は電動モータ22にて回転駆動される。
図3は、図2のIII−III線におけるロータ12の断面を示している。また、図4は図2のIV−IV線における圧力波過給機10の断面を示し、図5は図2のV−V線における圧力波過給機10の断面を示している。図3に示すようにロータ12は、シャフト21と連結される軸部23と、ロータ12の外周面となる円筒状の外筒24とを備えている。軸部23と外筒24とは同軸に設けられている。軸部23と外筒24との間には軸部23から半径方向に延びる複数の隔壁25が全周に亘って設けられている。これら複数の隔壁25は、周方向に所定の間隔で並ぶように設けられている。また、これら複数の隔壁25は、ロータ12の一端12aから他端12bまで軸線Ax方向に延びるように設けられている。この図に示すように互いに隣り合う隔壁25の間の空間には、それぞれ仕切り部材26が設けられている。仕切り部材26は、隔壁25の間の空間を内周側の内側セル27と外周側の外側セル28とに区切るように設けられている。仕切り部材26も隔壁25と同様にロータ12の一端12aから他端12bまで軸線Ax方向に延びるように設けられている。この図に示すように各仕切り部材26は、ロータ12を軸線Ax方向から見たときに軸線Axを中心とした同一円周上に並ぶように設けられている。すなわち、各仕切り部材26は、軸線Axを中心とした円筒を形成するように設けられている。このように複数の隔壁25及び仕切り部材26を設けることにより、軸線Ax方向に貫通する複数のセル27、28がロータ12に設けられる。
図4に示すように排気側アタッチメント16は、ロータ12の一方の端面12aと対向する排気側壁面16aを備えている。この図に示したように排気側壁面16aには、排気導入ポート19及び排気吐出ポート20が開口している。また、排気側壁面16aには、ロータ12から軸線Ax方向に離れる方向に凹む溝部としての排気側溝部29が設けられている。この排気側溝部29は、軸線Ax方向から見てロータ12の回転時に仕切り部材26が描く軌跡Trと重なるように形成されている。すなわち、排気側溝部29は、仕切り部材26と対向するように形成されている。図6は、図4のVI−VI線における圧力波過給機10の断面を示している。なお、この図はロータ12の各部が排気の熱で軸線Ax方向に伸びていないときの圧力波過給機10を示している。この図に示すように排気側溝部29は、その幅W1が仕切り部材26の半径方向の厚さt以上になるように設けられている。排気側溝部29の深さd1は、エンジン1が全負荷で運転されているとき、すなわち排気の温度が最も高いときに生じる仕切り部材26の軸線Ax方向の熱伸びの大きさに応じて設定されている。例えば、エンジン1が全負荷で運転されているときに仕切り部材26が軸線Ax方向に0.4mm程度伸びる場合は、排気側溝部29の深さd1には0.5mmが設定される。
図5に示すように吸気側アタッチメント15は、ロータ12の他方の端面12bと対向する吸気側壁面15aを備えている。この図に示したように吸気側壁面15aには、吸気導入ポート17及び吸気吐出ポート18が開口している。また、吸気側壁面15aにも排気側壁面16aと同様に、ロータ12から軸線Ax方向に離れる方向に凹む吸気側溝部30が設けられている。この吸気側溝部30は、軸線Ax方向から見てロータ12の回転時に仕切り部材26が描く軌跡Trと重なるように形成されている。すなわち、吸気側溝部30も排気側溝部29と同様に仕切り部材26と対向するように形成されている。この吸気側溝部30の幅W2は、仕切り部材26の半径方向の厚さt以上になるように設けられている。また、吸気側溝部30の深さは、エンジン1が全負荷で運転されているときに生じる仕切り部材26の軸線Ax方向の熱伸びの大きさに応じて設定されている。
周知のように圧力波過給機10は、ロータ12を回転させて排気通路4から各セル27、28内に排気を導入し、その排気の圧力波を利用して各セル27、28内の吸気を加圧する。そして、加圧した吸気を気筒2aに送ることによってエンジン1の過給を行う。このように圧力波過給機10では各セル27、28内に排気を導入するので、軸部23、外筒24、隔壁25、及び仕切り部材26は排気によって加熱される。このうち軸部23は外周側のみが排気と接し、外筒24は内周側のみが排気と接する。そのため、これら軸部23及び外筒24では内周側と外周側との間で温度差が生じ、温度の低い側に熱が移動する。隔壁25は軸部23及び外筒24と繋がっているので、熱は軸部23及び外筒24に移動する。そのため、これら軸部23、外筒24、及び隔壁25は、それぞれ熱膨張によって軸線Ax方向に略同様に伸びる。これらに対して仕切り部材26は、内周側及び外周側の両側が排気と接し、かつ隔壁25としか繋がっていない。そのため、ロータ12の他の部分と比較して仕切り部材26からは外部に熱が移動し難い。従って、仕切り部材26はロータ12の他の部分よりも温度が高くなり、それらの間に温度差が生じる。この場合、仕切り部材26の軸線Ax方向の熱伸びが他の部分の軸線Ax方向の熱伸びよりも大きくなり、仕切り部材26がロータ12の一方の端面12aから軸線Ax方向に突出する。
第1の形態の圧力波過給機10では、排気側壁面16aに排気側溝部29を設けたので、このように仕切り部材26が一方の端面12aから突出してもその仕切り部材26が排気側壁面16aに接触することを抑制できる。また、吸気側壁面15aには吸気側溝部30が設けられているので、熱膨張により仕切り部材26がロータ12の他方の端面12aから突出しても仕切り部材26が吸気側壁面15aに接触することを抑制できる。
次に図7及び図8を参照してロータ12の一方の端面12aと排気側壁面16aとの間のクリアランスCの大きさを設定する方法について説明する。なお、図7は、この圧力波過給機10においてエンジン1が全負荷で運転されているときのロータ12の一方の端面12aと排気側壁面16aとを示している。図8は、排気側溝部29が無い圧力波過給機においてエンジン1が全負荷で運転されているときのロータ12の一方の端面12aと排気側壁面16aとを示している。ロータ12の一方の壁面12aと排気側壁面16aとの間のクリアランス(以下、単にクリアランスと称する。)Cの大きさは、エンジン1の全負荷運転時にロータ12がハウジング11と接触しないように設定される。そのため、図8に示すように排気側溝部29が無い場合は仕切り部材26がロータ12の端面12aから突出する部分Pを考慮してクリアランスCの大きさを設定する必要がある。この場合、エンジン1が部分負荷で運転されているときにはクリアランスCがさらに大きくなるので、ハウジング11とロータ12との間に漏れる排気の量が増加して過給効率が低下する。
これに対して第1の形態の圧力波過給機10では排気側溝部29を備えているので、図7に示すように突出部分Pを考慮することなくクリアランスCの大きさを設定できる。そのため、この図に示すようにエンジン1の全負荷運転時にクリアランスCが設けられ、かつこのときのクリアランスCが最小になるようにクリアランスCの大きさを設定できる。そのため、排気側溝部29が無い場合と比較してクリアランスCの大きさを低減できる。この場合、エンジン1が部分負荷で運転されているときのクリアランスCも小さくできるので、ハウジング11とロータ12との間に漏れる排気の量を低減できる。そのため、過給効率の低下を抑制できる。なお、説明は省略するがこの圧力波過給機10では、吸気側壁面15aに吸気側溝部30が設けられているので、同様の理由によりロータ12の他方の壁面12bと吸気側壁面15aとの間のクリアランスの大きさも低減できる。
この圧力波過給機10では、図6に矢印F1で示したように排気側溝部29を介して半径方向に並ぶ内側セル27と外側セル28との間で排気が移動する。しかしながら、これら半径方向に並んだセル27、28に導入された排気は排気通路4から同じタイミングで導入されたものである。そのため、これらのセル27、28の間で排気が移動しても吸気の加圧への影響は殆ど無く、過給効率は低下しない。これらのセル27、28の間では吸気側においても吸気側溝部30を介して吸気が移動するが、排気側と同様の理由により過給効率は低下しない。一方、図3に矢印F2で示すように周方向に隣り合うセル間で排気又は吸気が移動することは抑制できる。周方向に隣り合うセルでは、排気又は吸気が導入されたタイミングが異なるため、これらの間で排気又は吸気が移動すると過給効率が低下する。本発明の圧力波過給機10ではこのような排気の移動を抑制できるので、過給効率の低下を抑制できる。
以上に説明したように、第1の形態の圧力波過給機10によれば、排気側溝部29及び吸気側溝部30を備えているので、過給効率の低下を抑制しつつロータ12とハウジング11との接触を抑制できる。
排気側溝部29の幅W1及び吸気側溝部30の幅W2には、ロータ12の回転時の振動を考慮して仕切り部材26の厚さtより大きい値を設定してもよい。この場合、ロータ12が振動してもロータ12がハウジング11に接触することを抑制できる。
なお、この形態の圧力波過給機10において、吸気側溝部30は無くてもよい。ロータ12の吸気側の部分には吸気通路3から吸気が導入されるので、仕切り部材26の吸気側の部分はこの吸気によって冷却される。そのため、吸気側への仕切り部材26の熱伸びは、排気側への熱伸びよりも小さい。従って、吸気側溝部30を省略できる。この場合、吸気側溝部30を加工する作業を省略できるので、製造コストを低減できる。
(第2の形態)
次に図9、図10を参照して本発明の第2の形態に係る圧力波過給機10について説明する。図9は、この形態に係る圧力波過給機10の一部を拡大して示している。図10は、この形態の圧力波過給機10の排気側壁面16aを示している。この形態では、ロータ12、排気側壁面16a、及び吸気側壁面15aのみが第1の形態と異なり、それ以外の部分は第1の形態と同じである。そのため、この形態において上述した第1の形態と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
次に図9、図10を参照して本発明の第2の形態に係る圧力波過給機10について説明する。図9は、この形態に係る圧力波過給機10の一部を拡大して示している。図10は、この形態の圧力波過給機10の排気側壁面16aを示している。この形態では、ロータ12、排気側壁面16a、及び吸気側壁面15aのみが第1の形態と異なり、それ以外の部分は第1の形態と同じである。そのため、この形態において上述した第1の形態と共通の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図9は、第1の形態の図6に対応する図であり、ロータ12の一方の端面12aの周囲を拡大して示している。すなわち、この図はロータ12の各部が排気の熱で軸線Ax方向に伸びていないときの圧力波過給機10を示している。この図に示したようにこの形態では、仕切り部材26はその一方の端面側の端26aが一方の端面12aよりも排気側壁面16aから軸線Ax方向に離れた位置に配置されるようにロータ12に設けられている。すなわち、仕切り部材26の一方の端面側の端26aは、一方の端面12aよりも引っ込んだ位置に設けられている。この一方の端面側の端26aと一方の端面12aとの間の距離Lは、エンジン1が全負荷で運転されているときに生じる仕切り部材26の軸線Ax方向の熱伸びの大きさに応じて設定されている。例えば、距離Lは、エンジン1が全負荷で運転しているときに一方の端面側の端26aが一方の端面12aと面一になるように設定される。また、図示は省略したが仕切り部材26の他方の端面側の端も同様に他方の端面12bよりも吸気側壁面15aから離れた位置に設けられている。そして、この他方の他面側の端と他方の端面12bとの間の距離も、仕切り部材26の軸線Ax方向の熱伸びの大きさに応じて設定されている。
また、この形態では、この図及び図10に示すように排気側壁面16aには排気側溝部29が設けられていない。図示は省略したが同様に吸気側壁面15aにも吸気側溝部30が設けられていない。
この形態では、図9に示したように仕切り部材26の一方の端面側の端26aを一方の端面12aよりも排気側壁面16aから離れた位置に配置したので、エンジン1の全負荷運転時に仕切り部材26が排気側端面16aに接触することを抑制できる。同様に、仕切り部材26の他方の端面側の端も他方の端面12bより吸気側壁面15aから離れた位置に配置したので、エンジン1の全負荷運転時に仕切り部材26が吸気側壁面15aに接触することを抑制できる。
また、この形態では、エンジン1が全負荷で運転されても仕切り部材26の両端はロータ12の端面12a、12bから突出しないので、エンジン1の全負荷運転時におけるロータ12の各端面12a、12bとハウジング11との間のクリアランスの大きさを低減できる。また、これによりエンジン1が部分負荷で運転されているときのロータ12とハウジング11との間のクリアランスの大きさも低減できる。そのため、ハウジング11とロータ12との間に漏れる吸気及び排気の量をそれぞれ低減できる。従って、過給効率が低下することを抑制できる。
なお、この形態の圧力波過給機10では、仕切り部材26の他方の端面側すなわち吸気側の端は仕切り部材26が熱伸びしていない状態においてロータ12の他方の端面12aと面一になるように設けられてもよい。上述したように仕切り部材26の吸気側の部分は吸気によって冷却されるので、軸線Ax方向への熱伸びが小さい。そのため、このように仕切り部材26の他方の端面側の端とロータ12の他方の端面12aとを面一にしてもロータ12がハウジング11に接触することを抑制できる。
本発明は、上述した各形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本発明の圧力波過給機に設けられるロータは、隔壁間が2層に区分されたロータに限定されない。例えば、隔壁間に2つ以上の仕切り部材が設けられて隔壁間が半径方向に3層以上に区分されたロータでもよい。この場合、ハウジングの排気側壁面には、軸線方向から見てロータの回転時に各仕切り部材が描く軌跡と重なる部分にそれぞれ排気側溝部が設けられる。また、隣り合う隔壁間で仕切り部材が半径方向に交互にずれた位置に設けられたロータでもよいし、一部の隔壁間にのみ仕切り部材が設けられたロータでもよい。これらの場合においてもロータの回転時に仕切り部材が描く軌跡と重なるように排気側壁面に排気側溝部を設ければよい。吸気側溝部に関してもこれら排気側溝部と同様に吸気側壁面に設ければよい。
上述した各形態では、電動モータにてロータを回転駆動させたが、駆動源は電動モータに限定されない。例えば、内燃機関のクランク軸の回転を利用してロータを回転駆動してもよい。この場合は、クランク軸とロータとの間の動力伝達経路中に変速機構を設け、これによりロータの回転数を変更してもよい。
Claims (6)
- ロータを軸線回りに回転可能に収容する収容室と、前記軸線方向に関する前記ロータの一方の端面に対向するように前記収容室に設けられ、内燃機関の排気通路と通じる排気導入ポート及び排気吐出ポートが開口している排気側壁面と、を有するハウジングを備えた圧力波過給機において、
前記ロータは、前記ハウジングに前記軸線回りに回転可能に支持される軸部と、前記軸部から半径方向に延び、かつ前記ロータの前記一方の端面から他方の端面まで前記軸線方向に延びるように設けられた複数の隔壁部材と、互いに隣り合う隔壁部材の間の空間に設けられ、前記ロータの前記一方の端面から前記他方の端面まで延びて前記空間を内周側の内側セルと外周側の外側セルとに区分する仕切り部材と、を備え、
前記排気側壁面には、前記軸線方向から見て前記ロータの回転時に前記仕切り部材が描く軌跡と重なるように形成され、かつ前記ロータから離れる方向に凹む溝部が設けられている圧力波過給機。 - 前記溝部は、その幅が前記仕切り部材の半径方向に関する厚さ以上になるように前記排気側壁面に設けられている請求項1に記載の圧力波過給機。
- 前記ハウジングは、前記ロータの前記他方の端面に対向するように前記収容室に設けられ、かつ前記内燃機関の吸気通路と通じる吸気導入ポート及び吸気吐出ポートが開口している吸気側壁面をさらに有し、
前記吸気側壁面には、前記軸線方向から見て前記ロータの回転時に前記仕切り部材が描く軌跡と重なるように形成され、かつ前記ロータから離れる方向に凹む吸気側溝部が設けられている請求項1又は2に記載の圧力波過給機。 - 前記吸気側溝部は、その幅が前記仕切り部材の半径方向に関する厚さ以上になるように前記吸気側壁面に設けられている請求項3に記載の圧力波過給機。
- ロータを軸線回りに回転可能に収容する収容室と、前記軸線方向に関する前記ロータの一方の端面に対向するように前記収容室に設けられ、内燃機関の排気通路と通じる排気導入ポート及び排気吐出ポートが開口している排気側壁面と、を有するハウジングを備えた圧力波過給機において、
前記ロータは、前記ハウジングに前記軸線回りに回転可能に支持される軸部と、前記軸部から半径方向に延び、かつ前記ロータの前記一方の端面から他方の端面まで前記軸線方向に延びるように設けられた複数の隔壁部材と、互いに隣り合う隔壁部材の間の空間に設けられ、前記空間を内周側の内側セルと外周側の外側セルとに区分する仕切り部材と、を備え、
前記仕切り部材は、前記一方の端面側の端が前記一方の端面よりも前記排気側壁面から離れた位置に配置されるように前記ロータに設けられている圧力波過給機。 - 前記ハウジングは、前記ロータの前記他方の端面に対向するように前記収容室に設けられ、かつ前記内燃機関の吸気通路と通じる吸気導入ポート及び吸気吐出ポートが開口している吸気側壁面をさらに有し、
前記仕切り部材は、前記他方の端面側の端が前記他方の端面よりも前記吸気側壁面から離れた位置に配置されるように設けられている請求項5に記載の圧力波過給機。
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