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JP5059137B2 - 帯電防止性ドライラミネート用水性接着剤 - Google Patents

帯電防止性ドライラミネート用水性接着剤 Download PDF

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JP5059137B2 JP2010018369A JP2010018369A JP5059137B2 JP 5059137 B2 JP5059137 B2 JP 5059137B2 JP 2010018369 A JP2010018369 A JP 2010018369A JP 2010018369 A JP2010018369 A JP 2010018369A JP 5059137 B2 JP5059137 B2 JP 5059137B2
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Description

本発明は、湿度非依存的に、特に低湿時でも優れた帯電防止能を有し、且つラミネート強度及びヒートシール強度に優れるラミネートフィルムを提供可能な、ドライラミネート用の水性接着剤に関する。
ラミネートフィルムは、基材フィルムに異種のプラスチック等よりなるフィルムを貼り合わせた複合フィルムであり、ラミネート化の代表的な方法の1つとしては、基材フィルムに接着剤を塗工し、次いで接着剤の溶剤を蒸発乾燥させて除去した後に異種フィルムを加熱・圧着して貼り合わせる、ドライラミネート法がある。このドライラミネートフィルムは、材料の選択性や製品の品質にも優れることから広く利用されており、例えばスナック、米菓、ラーメン、かつお節削りパック等の食品用包装フィルム、各種の医薬品用包装フィルム、建築材料用の複合フィルム、或いは印刷又は情報記録用フィルム等で利用されている。
ドライラミネートフィルムに用いる接着剤は、有機溶剤を用いるものが主流である。しかし、この分野においても環境問題が重要視されるにつれ、水性ウレタン接着剤、水性アクリル系接着剤など種々の水性ドライラミネート用接着剤が提案されている。
アクリル系の水性ドライラミネート用接着剤としては、例えば、カルボン酸を含むアクリル系樹脂のエマルジョンと多官能エポキシ硬化剤とを含む2液型の接着剤(特許文献1)、特定の界面活性剤を乳化剤として使用することで、カルボニル基含有不飽和モノマーとヒドラジン化合物との架橋反応並びにカルボキシル基不飽和モノマーとエポキシ基含有不飽和モノマーとの架橋反応を可能として、ラミネート強度及び接着強度を向上させたアクリル系エマルジョン(特許文献2)、並びにアクリル系の水溶性樹脂を乳化剤としても機能させて、乳化剤無しで特許文献2の架橋機構と同様の機構により調製されるアクリル系のコア/シェル構造を有するポリマーのエマルジョン(特許文献3)などが提案されている。
特許文献3に記載するコア/シェル構造を有するポリマー粒子では、親水性基であるカルボニル基とカルボキシル基がシェル部分に存在するため、水中で粒子に安定性が付与される。また、コア部分とシェル部分に存在するカルボニル基が効果的にヒドラジン化合物と架橋反応して粒子間及び粒子−フィルム間の結合を可能にするため接着強度が大きくなるという特徴を有する。また、コア部分を形成するためのモノマーにエポキシ基を含有するモノマーを用いることで、シェル部分を形成するカルボキシル基を含有するモノマーと架橋反応を生じさせ、両部分の分離を防いでいる。
ところで、ラミネートフィルムは、上記のような用途において、摩擦により静電気が発生しフィルムが帯電するということが問題の一つとなっており、特に、食品や医薬等の用途においては、製品をラミネートフィルム中に真空パックする等ラミネートフィルムが低湿度環境で使用されるため低湿度での静電気の発生を防止することは重要な課題となっている。これに対して、ラミネートフィルムに帯電防止能を付与する手段としては、基材フィルム自体に帯電防止剤を含有させる方法、帯電防止剤を含むプライマー層を基材フィルムにコーティングする方法、ラミネート用接着剤に帯電防止剤を配合する方法が提案されている。
基材フィルムに帯電防止剤を含有させる方法としては、例えば、基材フィルムの原料であるポリエステルやポリエチレン等の熱可塑性樹脂に、有機スルホン酸塩基等のアニオン性化合物、4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物、又はポリアルキレングリコール等のノニオン性化合物を練りこむ方法がある。しかし、この方法では、フィルムを構成する樹脂の成分との混和性を確保するために低分子の帯電防止剤を使用する必要があり、その一方で、このような低分子の帯電防止剤が基材フィルム上にブリードするという問題がある。
また、基材フィルムに帯電防止剤を含有させる他の方法としては、基材フィルムの原料であるポリエステルやポリエチレン等の熱可塑性樹脂に、金属粉、カーボンブラック等の導電性フィラーを練りこむ方法がある。しかし、この方法では、導電性フィラーの混入により得られるフィルムが着色したり、その透明性が低下するという問題がある。また、導電フィラーの使用により、製品が高価格になるという問題もある。
帯電防止剤を含むプライマー層を基材フィルムにコーティングする方法としては、側鎖にカルボキシル基を持つと共に4級アンモニウム塩基をもつ架橋性共重合体を含む樹脂材料を基材フィルムにコーティングして帯電防止層を形成する方法が提案されている(特許文献4)。この方法では、帯電防止剤が高分子量化合物であるために、帯電防止剤がこれらのフィルムの表面にブリードするおそれはない。
しかし、この方法はプライマーを塗布する工程と、ドライラミネートフィルム用接着剤を塗布する工程の2工程が必要となるため、作業性が悪くやはり製品が高価格になるという問題がある。また、低湿時に帯電防止効果が落ちるという問題もある。
ドライラミネート用の接着剤に帯電防止剤を配合する方法としては、ノニオン系の帯電防止剤を1〜10%含有する接着剤を用いて基材フィルムに化粧フィルムを接着する方法が提案されている(特許文献5)。この方法では他の成分との混和性を考慮して低分子の帯電防止剤を用いるが、接着剤中に配合するため、フィルム中に帯電防止剤を配合する方法と異なり、基材フィルム及びそれに貼り合わされるフィルム上へのブリードの問題は生じない。しかし、十分な帯電防止効果を得るためには多量に帯電防止剤を配合する必要があり、このような多量の帯電防止剤は、可塑化効果による接着剤の接着強度の低下という問題を生じさせる。
また、側鎖にカルボキシル基を持つ水分散型ポリウレタン接着剤に帯電防止剤として低分子量の4級アンモニウムベタイン化合物と電解質金属を添加した主剤と、水分散イソシアネートからなる架橋剤とを含む接着剤を用いてラミネートフィルムを形成する方法が開示されている(特許文献6)。この方法では、形成したラミネートフィルムはウレタン樹脂を使用しているため接着強度は大きいが、製品コストが高くなるという問題がある。
この点、ウレタン樹脂に代え安価なアクリル系の樹脂を用いることも考えられるが、本発明者が検討したところによるとカチオン系化合物である4級アンモニウムベタイン化合物がアニオン系化合物であるアクリル系の樹脂と凝集又は分離を生じ易く、安定な系とすることは困難である。また、特許文献6に記載の方法で得られるラミネートフィルムは、低湿時に帯電防止効果が落ちるという問題もある。
一方、電子機器の表面に塗工して、電子機器の静電気に起因する問題を解消する制電性塗料用樹脂組成物として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、およびトリフルオロメタンスルホン酸リチウムから選択された化合物を少なくとも1種含む樹脂組成物が開示されている(特許文献7)。但し、この組成物は、ドライラミネート接着剤に関するものではなく、基材フィルム等に対する接着強度の改善は意図するところではない。また、低湿時における帯電防止効果については何ら教示されていない。
特開平09−217050 特開平11−315262 特開2000−119618 特許第2608383号 特開2002−059518 特開2005−036019 特開2003−41194
本発明は、このような従来の技術水準にあって、湿度非依存的に、特に低湿時でも優れた帯電防止性能を発揮でき、且つ良好なラミネート強度及びヒートシール強度を有するラミネートフィルムを安価で製造可能とする、ドライラミネート用水性接着剤を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため検討した結果、コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子であって、シェル部分にカルボキシル基が優位に存在するとともに、コア部分及びシェル部分の両方にカルボニル基が存在する共重合体粒子と、当該共重合体粒子のカルボニル基との架橋反応に寄与し得る多官能ヒドラジド化合物と、ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体、α,βエチレン性不飽和カルボン酸、及びこれらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られる水溶性共重合体、並びにアルカリ金属の有機塩を組み合わせる帯電防止成分と、コア/シェル構造のアクリル系共重合体及び帯電防止成分の1つである水溶性共重合体のカルボキシル基との架橋反応に寄与し得る、水溶性多官能エポキシ化合物とを含む組成の接着剤が、低湿時の帯電防止性能と良好なラミネート強度及びヒートシール強度とを兼ね備えるラミネートフィルムを提供し得ることを見出し、完成に至ったものである。
即ち、本発明は、
(A)α,βエチレン性不飽和カルボン酸、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体、及びこれらと重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られる水溶性共重合体をシェルとし、グリシジル基含有不飽和単量体、ジ(メタ)アクリレート化合物、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体、及びこれらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られる共重合体をコアとする、コア/シェル構造の粒子と、
(B)多官能ヒドラジド化合物と、
(C)ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体、α,βエチレン性不飽和カルボン酸、及びこれらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られる水溶性共重合体と、
(D)アルカリ金属の有機塩と、
(E)水可溶性多官能エポキシ化合物とを含む、帯電防止性ドライラミネート用水性接着剤を提供するものである。
ここで、本願明細書中では「接着剤」を、最終製品の他、その製造に用いる中間材料をも包含する意味で使用する。また、(A)から(E)の各成分は、必ずしも1つの組成物中に含有されている必要はなく、「接着剤」は、販売時には少なくとも1つの成分が他の成分と物理的に独立した存在であり、使用時に混合される態様のものも含む意味である。例えば、本発明の接着剤は、(A)〜(D)の成分を含む主剤と、(E)を含む硬化剤とで構成される2液型であってもよいし、(A)、(C)及び(D)の成分を含む主剤と、(B)及び(E)を含む硬化剤とで構成される2液型であってもよいし、(A)、(C)及び(D)の成分を含む主剤と、(B)及び(E)を含む硬化剤とで構成される2液型であってもよいし、(A)、(C)及び(D)の成分を含む主剤と、(B)と、(E)を含む硬化剤とで構成される3液型であってもよい。
また、本願明細書中で「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を包含する意味で用いる。
本発明のドライラミネート用接着剤では、コア/シェル構造を有するアクリル系共重合体粒子(A)が、親水性基であるカルボニル基とカルボキシル基とをシェル部分に有し、粒子表面はアニオン系の水溶性共重合体で覆われている。同様に、水溶性共重合体(C)は、親水性基であるカルボキシル基を有しており、やはり重合体全体がアニオン系の水溶性共重合体となっており、類似した組成及び極性となっている。このためこれらの成分は相互に混和性が良好である。
また、アルカリ金属の有機塩(D)は、そのアルカリ金属イオンが、水溶性共重合体(C)のポリアルキレングリコール基におけるエーテル酸素に配位した状態で存在し、アルカリ金属イオンで捕捉されたイオンがこのポリアルキレングリコール基を通じて移動して帯電防止能を発現する。これら成分の組合せは、湿度に依存せずに帯電防止能を発揮することを可能とし、水によるイオン導電機構を利用する4級塩を帯電防止成分として使用する接着剤より、低湿度での帯電防止能及び接着強度の点で優れる。
コア/シェル構造を有する共重合体粒子(A)のシェル部分に存在するカルボニル基は、多官能ヒドラジン化合物(B)との架橋反応に寄与し、粒子間及び粒子―フィルム間を架橋結合する。また、シェル部分のカルボニル基と共にコア部分のカルボニル基が架橋反応に寄与するため粒子内の樹脂間を架橋結合し粒子全体を高分子量化する。このため、水分が揮発した際に形成される塗膜の接着強度が大きくなる。
また、水溶性共重合体(C)及びコア/シェル構造の共重合体粒子(A)のシェル部分に存在するカルボキシル基は、硬化剤として用いられる多官能エポキシ化合物との架橋反応に寄与し、この架橋反応により、水溶性共重合体(C)が共重合体粒子(A)に結合される。このような水溶性共重合体(C)の共重合体粒子(A)への結合は、低湿時における優れた帯電防止効果を達成しながらも、水溶性共重合体(C)及びアルカリ金属の有機塩(D)といった帯電性防止能を付与する成分の混在による接着強度及びヒートシール強度の低減を回避し得ることが今回見出された。
また、水溶性共重合体(C)の共重合体粒子(A)への結合は、硬化膜からの帯電防止剤のブリードの問題も生じない。
本発明のドライラミネート用水性接着剤は、このような複雑な相互作用により、低湿時の帯電防止性能と良好な接着強度及びヒートシール強度とを同時に達成するものである。
上記の通り、本発明の帯電防止性ドライラミネート用水性接着剤は、(A)所定のコア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子と、(B)多官能ヒドラジド化合物と、(C)所定の水溶性共重合体と、(D)アルカリ金属の有機塩と、(E)水溶性多官能エポキシ化合物とを含むものである。以下、各成分について詳細に説明する。
(A)コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子
本発明の接着剤に含有される、コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子は、α,βエチレン性不飽和カルボン酸、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体、及びこれらと重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られる水溶性共重合体をシェルとし、グリシジル基含有不飽和単量体、ジ(メタ)アクリレート化合物、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体、及びこれらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られる共重合体をコアとする、共重合体粒子である。
コア/シェル構造の共重合体粒子は、特許文献4に記載する手順で調製することができ、例えば、上述のシェル部分を形成するための単量体を溶液重合して水溶性共重合体を得、残存する酸を中和後、水で希釈し、溶剤を除去した後、上述のコア部分を形成するための単量体を、シェル部分を構成する共重合体と共に乳化剤無しで重合してコア部分を構成する共重合体を合成することにより得ることができる。
シェル部分を形成する際に用いるα,βエチレン性不飽和カルボン酸は、水溶性共重合体(C)中のα,βエチレン性不飽和カルボン酸とともに水溶性多官能エポキシ化合物と多次元的に架橋反応して、水溶性共重合体(C)を共重合体粒子(A)に架橋結合させ、遊離の水溶性共重合体(C)の存在による接着強度の低下を防ぐことを主要な目的とする成分である。また、この成分は、得られる共重合体粒子に親水性を付与する役割も有する。また、この成分はシェル部分自体に乳化剤としての機能を付与してコア/シェル構造の粒子を形成することを可能にしている。
α,βエチレン性不飽和カルボン酸には、例えばα,βエチレン性不飽和モノカルボン酸類、α,βエチレン性不飽和ジカルボン酸類、α,βエチレン性不飽和カルボン酸無水物類等があり、これらは通常、3〜10の炭素数を有し、好ましくは3〜7の炭素数を有する。また、これらの単量体は、アルキル基(炭素数1〜3のものが好ましい)等の置換基を有するものであってもよい。
α,βエチレン性不飽和モノカルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−エチルアクリル酸、β−プロピルアクリル酸、アクリルアミドN−グリコール酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物(例えば、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等)が挙げられる。α,βエチレン性不飽和ジカルボン酸類としては、例えばイタコン酸、マレイン酸、フマル酸が挙げられる。α,βエチレン性不飽和カルボン酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。中でも、その他のα,βエチレン性不飽和単量体との共重合性が良好でシェル樹脂中にカルボン酸を均一に組み込ませることができる点でアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
α,βエチレン性不飽和カルボン酸単量体は、シェル部分の共重合体を構成する全モノマー中、3〜20質量%含有することが好ましく、5〜15質量%含有することがより好ましく、7〜12質量%含有することが特に好ましい。3質量%未満では、シェル部分における水溶性成分が不足し乳化安定性が低くなるため、安定な粒子を形成し難くなる。一方、20質量%を超えると粒子表面の酸性基の濃度が高くなり、基本的に疎水性である被接着フィルムに対する硬化膜の接着性が不十分となり易い。
シェル部分を形成する際に用いる非エステル系のカルボニル基含有不飽和単量体は、多官能ヒドラジン化合物(B)と架橋反応し、粒子間及び粒子―フィルム間を架橋結合すること、並びに粒子を構成する樹脂間を架橋結合して高分子化することを主要な目的とする成分である。
非エステル系のカルボニル基含有不飽和単量体としては、例えばアルデヒド基含有不飽和単量体、ケト基含有不飽和単量体等があり、これらは通常、3〜12の炭素数を有し、好ましくは4〜9の炭素数を有する。また、これらの単量体は、アルキル基(炭素数1〜4のものが好ましい)等の置換基を有するものであってもよい。
アルデヒド基含有不飽和単量体としては、例えば、アクロレイン、クロトンアルデヒド、ホルミルスチロール等を挙げることができ、ケト基含有不飽和基単量体としては、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等の4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン、ダイアセトンアクリルアマイド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のケト基含有(メタ)アクリル系不飽和単量体を挙げることができる。
これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて使用し得る。中でもダイアセトンアクリルアマイド、アセトアセトキシルエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系不飽和単量体がその他の不飽和単量体との共重合性が良いため好ましい。
非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体は、シェル部分の共重合体を形成する全モノマー中、1〜15質量%含有することが好ましく、2〜10質量%含有することがより好ましく、3〜7質量%含有することが特に好ましい。1質量%未満では、粒子間の凝集が生じ難くなり接着強度が不十分となり易い。一方、20質量%を超えると粒子表面のカルボニル基の濃度が高くなり、基本的に疎水性である被接着フィルムに対する硬化膜の接着性が不十分となり易い。
シェル部分を形成する際に用いるその他のα,βエチレン性不飽和単量体は、主に、接着剤の被接着フィルムに対する接着強度を向上させる成分である。その他のα,βエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、及びその他のビニル単量体等を挙げることができる。
アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜18のアルキルエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルエステルがより好ましい。具体的には、例えばメチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等を挙げることができる。
また、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜10のものが好ましく、アルキル基の炭素数が2〜4のものがより好ましい。具体的には、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート等を挙げることができる。
また、その他のビニル単量体としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリロニトリル又はメタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類等を挙げることができる。
これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用し得、中でもメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の炭素数1〜8のアルキル基とアクリル酸とのエステルがフィルムへの接着性が良好な点で好ましい。
このようなα,βエチレン性不飽和単量体は、接着剤の被接着フィルムに対する接着強度を向上させながら組成物中での共重合体粒子の安定性を確保する点から、シェル部分の共重合体を形成する全モノマー中、97〜65質量%含有することが好ましく、93〜75質量%含有することがより好ましく、90〜81質量%含有すること特に好ましい。
シェル成分の分子量を調整するために必要に応じて連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メルカプタン系化合物を用いることができる。例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、オクチルチオグリコール等のアルキルチオール;β−メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、等のメルカプト基含有アルコール;メルカプトコハク酸、メルカプト酢酸、チオグリコール酸等のメルカプトカルボン酸等が挙げられる。その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー(商品名ノフマーMSD:日本油脂(株)製)は臭気が少ないため好ましい。
これらの連鎖移動剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の使用量は、重合性不飽和単量体の総量に対して、0.1〜10.0重量%が好ましく、0.5〜5.0重量%がより好ましい。
上述の単量体を重合する際に使用できる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて使用し得る。
また、上述の単量体を重合する際に使用できる重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビス−(2−ブチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて使用し得る。
中和時に使用し得るアルカリ成分としては、例えばアンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ジブチルアミン、n−トリブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、モルホリン等を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて使用し得る。
コア部分を形成する際に用いるグリシジル基含有不飽和単量体は、シェル成分中の不飽和カルボン酸と架橋してコア−シェル間を結合し、粒子の安定性を保持することを主な目的として使用される。
グリシジル基含有不飽和単量体としては、コア成分を形成するその他の不飽和単量体と共重合性が良い点から、一般式CHR1=CRCOORO(式中、R、Rはそれぞれ独立してH若しくはCHであり、Rは、炭素数が1〜5のアルキレン基である)で表される脂肪族グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、β-メチルアクリル酸グリシジル、β-メチルメタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて使用し得るが、毒性が低い点でメタクリル酸グリシジルを使用するのが好ましい。
ジ(メタ)クリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物であれば特に制限はないが、粒子内に架橋構造を持ちつつ、架橋歪を緩和する点で、下記一般式
Figure 0005059137

の構造を持つジ(メタ)アクリレート化合物が好ましく、式中nが2〜10のジ(メタ)アクリレート化合物がより好ましく、式中nが3〜4のジ(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数8から33(好ましくは炭素数9から20、より好ましくは10から12)のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらジ(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で又は複数組合せて用いることができる。
コア部分を形成する際に用いる非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体は、シェル部分を形成する際に用いた単量体と同様なもので良く、前述したアルデヒド基含有不飽和単量体やケト基含有不飽和単量体を挙げることができる。
また、コア部分を形成する際に用いるα,βエチレン性不飽和単量体もシェル部分を形成する際に用いた単量体と同様なもので良く、前述したアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、及びその他のビニル単量体等を挙げることができる。
コア部分を形成するための上記モノマーを、シェル部分を構成する水溶性共重合体の存在下に重合して、コア/シェル構造を有する粒子を形成するが、この際には、固形分換算でシェル部分を構成する水溶性共重合体5〜30質量%と、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル等のグリシジル基含有不飽和単量体0.1〜5質量%と、ジ(メタ)アクリレート化合物0.1〜5質量%と、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体0.1〜10質量%と、これらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体94.8〜55質量%とを配合することが好ましく、シェル部分を構成する水溶性共重合体10〜25質量%と、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル等のグリシジル基含有不飽和単量体0.5〜3質量%と、ジ(メタ)アクリレート化合物1〜5質量%と、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体1〜5質量%と、これらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体85.5〜62質量%とを配合することがより好ましく、シェル部分を構成する水溶性共重合体15〜25質量%と、(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル等のグリシジル基含有不飽和単量体1〜3質量%と、ジ(メタ)アクリレート化合物1〜3質量%と、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体1〜3質量%と、これらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体70〜82質量%とを配合することが特に好ましい。
シェル部分を構成する水溶性共重合体が5質量%より少ないと乳化力が不足し易く生成する粒子が使用前に凝集する場合がある。一方、30質量%より多いと粒子表面のカルボン酸量が多くなり疎水性のフィルムとの接着強度が低下し易くなる。
また、グリシジル基含有不飽和単量体が0.1質量%より少ないとコア−シェル間の結合が不足して接着強度が低下し易くなる。一方、グリシジル基含有不飽和単量体が5質量%より多いと重合時に凝集物を発生し製造困難になることがある。
また、ジ(メタ)アクリレート化合物が0.1質量%より少ないと粒子の内部架橋不足により満足な接着強度が得難くなり、5質量%より多いと架橋密度が高くなり過ぎて、硬質化による接着強度の低下を招くことがある。また、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体が0.1質量%より少ないと多官能ヒドラジド化合物との架橋が不足して接着強度が不十分と成り易く、10質量%より多い場合には架橋密度が高くなり過ぎて、硬質化による接着強度の低下を生じることがある。
また、α,βエチレン性不飽和単量体が55質量%より少ないと相対的に極性の高いシェル成分が多くなるためフィルム界面での剥離を生じ易くなり、94.8質量%より多いと相対的に粒子の乳化機能が低下し粒子の安定性が低下し易くなる。
コア部分を形成する上記モノマーを重合する際に用いることができる重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウムなどのレドックス系の触媒を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用い得る。
また、コア部分を形成する上記モノマーを重合する際に用いることができる媒体としては、例えば、水を単独で又は5質量%以下の濃度でアルコール類を水に添加した水性溶媒を用いることが好ましい。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
なお、コア部分及びシェル部分を構成する共重合体は、適度な接着強度が得られる点で−30〜−10℃の間のガラス転移温度を有するものが好ましい。
(B)多官能ヒドラジド化合物
本発明の接着剤の主剤に含有させる多官能ヒドラジド化合物(B)は、アクリル系共重合体粒子(A)のカルボニル基と反応して、当該粒子の凝集に寄与する成分である。また、多官能ヒドラジド化合物(B)は、アクリル系共重合体粒子(A)のシェル部分及び水溶性共重合体(C)に存在するカルボキシル基と多官能エポキシ化合物(E)との架橋反応に対する反応促進剤としても寄与する。
本発明の接着剤に含有させる多官能ヒドラジド化合物(B)としては、例えばシュウ酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタミン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ヘキサデカン二酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;例えばトリメリット酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド等のトリヒドラジド類;或いは例えば、エチレンジアミンテトラヒドラジド、酢酸テトラヒドラジド等のテトラヒドラジド類を挙げることができ、これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用い得る。
本発明において、多官能ヒドラジド化合物は、前記コア部及びシェル部を構成する共重合体が有するカルボニル基の総量に対して、ヒドラジド基が0.1〜1モル当量となる量を含有させることが好ましく、0.2〜0.9モル当量となる量を含有させることがより好ましく、0.5〜0.8モル当量となる量を含有させることが特に好ましい。ヒドラジド基がカルボニル基に対して0.1モル当量未満の数となると多官能ヒドラジド化合物との架橋反応が不足するため接着強度が低下することがあり、ヒドラジド基がカルボニル基に対して1モル当量を超える数となると、遊離のヒドラジド化合物によるフィルムの黄変を生じ易くなる。
(C)水溶性共重合体
本発明の接着剤に含有される水溶性の共重合体は、上述の通り、ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体、α,βエチレン性不飽和カルボン酸、及びこれらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られるものである。
ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体は、後述するアルカリ金属の有機塩と協働して帯電防止能を付与する成分であり、一般式CHCR1COO(CO)(CO)m(式中、Rは、H若しくはCHであり、Rは、H若しくは炭素数1〜18、好ましくは1〜3のアルキル基であり、nは6〜18の整数であり、mは0〜2の整数である)で表されるものが好ましい。本発明においては、上記一般式中の繰り返し単位の数(n+m)が6から18であるものが好ましく、9から14であるものがより好ましい。(n+m)が6以下では、アルカリイオンをオキシエチレン基のマトリックス中に捕捉し難くなり十分な帯電防止効果を得られないことがある。また、得られる共重合体が軟質化し易く、接着剤の凝集力が不足し、十分なラミネート強度及びヒートシール強度を得られない場合がある。一方、(n+m)が18を越えると、水溶化し難くなり安定性が不十分に成り易い。
具体的には、例えば、上記繰り返し単位の数(n+m)が6から18、好ましくは9から14である、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレンポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用い得る。
中でも水溶化が容易なことと、フィルムへの接着性が良好なことから、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(好ましくは繰り返し単位の数(n+m)が6から18であり、より好ましくは繰り返し単位の数(n+m)が9から14である)が好ましい。
メトキシポリエチレングリコールアクリレートの市販品としては、AM−90G(n=9)、(新中村化学(株)製))等が挙げられる。
ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体は、水溶性共重合体(C)を形成する全成分中35質量%〜85質量%を占めることが好ましく、40質量%〜80質量%を占めることがより好ましく、50質量%〜70質量%を占めることが特に好ましい。ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体が水溶性共重合体を構成する全成分中35質量%未満では、十分な帯電防止能を得ることができない場合があり、特に、低湿度での帯電防止能に対する影響は大きい。
一方、ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体の量が水溶性共重合体(C)を形成する全成分中85質量%を越えると、水溶性共重合体中のオキシアルキレン基の濃度が高くなり、基本的に疎水性である被接着フィルムに対する硬化膜の接着性が不十分となり易い。また、帯電防止能は寧ろ低下する傾向にある。
α,βエチレン性不飽和カルボン酸は、得られる共重合体を水溶化すると共に、硬化塗膜の接着強度、ヒートシール強度を向上させるための成分である。即ち、得られる水溶性共重合体(C)は、この単量体に由来するカルボキシル基を有するため、合成後アルカリ化合物で中和することにより水性媒体中に安定して存在することができる。また、得られる水溶性共重合体は、前述の共重合体粒子(A)のシェル部分を構成する樹脂と組成的に類似したアニオン系の水溶性共重合体であるため当該共重合体粒子との混和性が向上し、この点からも得られる組成物の安定性が向上する。また、カルボキシル基が、水溶性多官能エポキシ化合物(E)と架橋反応するため、コア/シェル構造の共重合体粒子(A)との間で三次元的に架橋し、硬化塗膜の接着強度及びヒートシール強度を向上させる。
α,βエチレン性不飽和カルボン酸としては、前述した、コア/シェル構造の共重合体粒子(A)を形成する際に用いたものと同様のものを用いることができ、前述したα,βエチレン性不飽和モノカルボン酸類、α,βエチレン性不飽和ジカルボン酸類、α,βエチレン性不飽和カルボン酸無水物類等がある。
α,βエチレン性不飽和カルボン酸は、上述した特性を付与する点から、水溶性共重合体(C)を形成する全成分中2質量%から35質量%を占めることが好ましく、3質量%から30質量%を占めることがより好ましく、5質量%から25質量%を占めることがさらに好ましく、7質量%から20質量%を占めることが特に好ましい。2質量%未満では、得られる水溶性共重合体(C)の水溶性が低下し、接着剤の安定性が不十分となり易い。また、コア/シェル構造の共重合体粒子(A)に結合しない水溶性共重合体が増加して、硬化塗膜の接着強度及びヒートシール強度が低下し易くなる。一方、35質量%を超えると、得られる水溶性共重合体のカルボキシル基の濃度が高くなるため、やはり疎水性の被接着フィルムに対する接着強度及びヒートシール強度が低下し易い。
上記ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体及びα,βエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なその他のα,βエチレン性不飽和単量体としては、共重合体粒子(A)と水溶性共重合体(C)との混和性を向上させる点から、コア/シェル構造の共重合体粒子(A)を形成する際に用いたものと同様のものを用いることが好ましく、前述したアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、及びその他のビニル単量体等が挙げられる。
上述の単量体は、一種若しくは2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数が1〜8)がフィルムとの接着性が良好な点で好ましい。
水溶性共重合体(C)の製造方法について特に限定はなく、溶液重合、塊状重合、乳化重合等で製造することができる。また、得られた共重合体をアミン化合物等のアルカリ性化合物で中和後水希釈することにより水溶化することができる。また、有機溶媒中での共重合により水溶性共重合体(C)を製造する場合、有機溶媒中で上記単量体を重合し、アルカリ性化合物で中和し水希釈した後、有機溶剤を減圧留去して水性組成物を得ることが出来る。
共重合に用いられる有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等を挙げることができる。
また、重合に用いられる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、2,2’アゾビス(2−メチルプロピオン酸)等のアゾ系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系化合物を挙げることができる。
水溶性共重合体中のカルボキシル基を中和させる際の中和剤としては、アンモニア、アルカリ性を示すアンモニウム塩およびモノエチルアミン、モノエタノールアミンなどの一級アミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミンなどの二級アミン;トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンなどの三級アミン等のアミン化合物;及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属塩等が挙げられる。
水溶性共重合体の重量平均分子量は、硬化塗膜のラミネート強度及びヒートシール強度、並びに高分子化による粘度上昇を考慮して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるポリスチレン換算値で、5000から10万であることが好ましく、1万から4万であることが特に好ましい。
(D)アルカリ金属の有機塩
アルカリ金属の有機塩(D)は、イオン導電性を付与するための成分である。本発明においては、溶剤への溶解性及び有機成分との混和性の点から、アルカリ金属の無機塩ではなくアルカリ金属の有機塩を用いる。
有機塩の種類については特に制限はないが、イオン解離性が良好な点で、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、リチウム塩が特に好ましい。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリルム等の有機カルボン酸のアルカリ金属塩;リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸カリウム等の有機スルホン酸のアルカリ金属塩;含フッ素有機アニオン酸のアルカリ金属塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(NaCFSO)、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム(KCFSO)等のパーフルオロアルカン酸のアルカリ金属塩;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li(CFSON)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウム(Na(CFSON)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドカリウム(K(CFSON)等のビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド酸のアルカリ金属塩;トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム(Li(CFSOC)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドナトリウム(Na(CFSOC)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウム(K(CFSOC)等のトリス(トリフルオロアルカンスルホニル)メチド酸のアルカリ金属塩が挙げられる。
中でも、他の有機成分との混和性が良好な点から、含フッ素有機アニオン酸のアルカリ金属塩が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のパーフルオロアルカン酸のアルカリ金属塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等のビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド酸のアルカリ金属塩がより好ましく、帯電防止能が大きな点からトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが特に好ましい。これらは単独でまたは複数を組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属有機塩(D)は、水溶性共重合体(C)のポリアルキレングリコール基に由来する部分と協働して帯電防止能を発揮するため、両成分の比率は大きな帯電防止能を得る点で重要である。特にアルカリ金属の有機塩(D)が過剰に存在する場合には、低湿度での帯電防止能が低下し易く、ポリアルキレングリコール基に配位せずに存在するアルカリ金属有機塩が、ラミネート強度やヒートシール強度に悪影響を及ぼすこともある。このため、アルカリ金属有機塩(D)は、ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体100質量部に対して、20質量部から100質量部の割合で含有することが好ましく、40質量部から85質量部の割合で含有することがより好ましく、50質量部から70質量部の割合で含有することがさらに好ましく、55質量部から65質量部の割合で含有することが特に好ましい。
また、同様の点から、アルカリ金属有機塩(D)は、水溶性共重合体(C)100質量部に対して、15〜60質量%含有することが好ましく、20〜55質量%含有することがより好ましく、23〜50質量%含有することが更に好ましく、30〜40質量%含有することが特に好ましい。
本発明の接着剤は、所謂2液型又は3液型とすることが好ましく、この場合主剤は硬化剤と独立して調整することが好ましい。例えば、水溶性共重合体(C)をアルカリ金属の有機塩(D)と混合(例えば攪拌機を使用して、20〜50℃で10分〜30分攪拌)し、この混合物に、コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子(A)と多官能ヒドラジド化合物(B)とを含む水性組成物を混合(例えば、20〜50℃で10分〜30分攪拌)することで主剤を得ることができる。
コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子(A)及び多官能ヒドラジド化合物(B)の総質量に対する水溶性共重合体(C)及びアルカリ金属の有機塩(D)の総質量の比は、十分な帯電防止能と、十分なラミネート強度及びヒートシール強度を両立する観点から、固形分比((A)+(B):(C)+(D))で100:7〜40であることが好ましく、100:12〜32であることがより好ましく、100:18〜30であることが更に好ましく、100:22〜28であることが特に好ましい。
(E)硬化剤
本発明の接着剤に含有される硬化剤は、アクリル系共重合体粒子(A)のカルボキシル基と水溶性共重合体(C)のカルボキシル基の双方と架橋反応して両者を結合し、硬化塗膜の接着強度及びヒートシール強度の向上をもたらす成分である。硬化剤として使用できる化合物としては、例えばオキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イソシアネート基、又はエポキシ基を有する化合物がある。しかし、オキサゾリン基及びカルボジイミド基は反応性が低いためこれらを有する化合物では硬化時間が長くなる欠点がある。また、アジリジン基を有する化合物は良好な反応性を有するが、毒性が高く、イソシアネート基を有する化合物は水中での安定性に乏しい。これに対して、エポキシ基を有する化合物は低温での反応性が良好であり且つ水中での安定性も良好であるため、本発明で用いる硬化剤の硬化成分として最も好ましい。
もっとも、エポキシ基を有する化合物の水分散体として、ビスフェノールA型の芳香族系の多官能エポキシ化合物を乳化剤により水中に分散したものも知られているが、近年毒性が指摘されており、食品用途向けには使用が難しくなっている。このため、特に食品向けに用いられる硬化剤としては、水可溶性多官能エポキシ化合物を含むものが望ましい。
水可溶性多官能エポキシ化合物は、複数のエポキシ基を有し、アクリル系共重合体粒子(A)のカルボキシル基と水溶性共重合体(C)のカルボキシル基の双方と架橋反応して両者を結合することができ、自らは水中に溶解できるものであればよいが、得られる接着剤の使用において十分な架橋密度を得るためには、炭素数2〜50のものが好ましく、炭素数9〜33のものがより好ましい。
水可溶性多官能エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(好ましくは炭素数8〜50、より好ましくは、8〜14)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(好ましくは炭素数9〜40、より好ましくは、9〜15)、グリセロールポリグリシジルエーテル(炭素数16〜19、好ましくは炭素数19)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(好ましくは炭素数24〜44、より好ましくは、24〜33)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(炭素数12〜18、好ましくは、15〜18)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(炭素数10〜16、好ましくは炭素数13〜16)等の脂肪族水性多官能エポキシ化合物が挙げられる。中でも、グリセロールトリグリシジルエーテル、ポリグリセロールヘキサグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3以上のグリシジル基を有する脂肪族多官能エポキシ化合物は、架橋密度が高くなるため、接着強度、ヒートシール強度を向上させる点で好ましい。市販のポリグリシジルエーテルとしては、長瀬産業(株)製、デナコールEX−512、EX−612等が挙げられる。
硬化剤には、エポキシ化合物による硬化反応を促進させるために、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール等の三級アミン類、又はアジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド等のヒドラジン誘導体等を含んでもよい。このような硬化促進剤は、主剤及び/又は硬化剤に含有させてもよいし、塗工直前に主剤及び/又は硬化剤と混合して用いてもよい。
硬化促進剤の中では、アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物がフィルム着色を起こし難い点で好ましい。もっとも、本発明においては、主剤中にジヒドラジド化合物を含ませているので、通常は必要とせず、硬化速度が遅い場合に、使用時に追添して使用することが好ましい。
本発明において、水可溶性多官能エポキシ化合物(E)は、コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子(A)及び水溶性導電性共重合体(C)の総質量100質量部(固形分)に対して、1〜30質量部(固形分)含有することが好ましく、2〜20質量部含有することがより好ましく、3〜15質量部含有することが更に好ましく、3〜10質量部含有することが特に好ましい。水可溶性多官能エポキシ化合物(E)がアクリル系共重合体粒子(A)等100質量部(固形分)に対して1質量部未満(固形分)では、アクリル系共重合体粒子(A)同士の架橋やアクリル系共重合体粒子(A)と水溶性共重合体(C)との架橋が生じ難くなり、ラミネート強度及びヒートシール強度が不足し易くなる。一方、水可溶性多官能エポキシ化合物(E)がアクリル系共重合体粒子(A)等100質量部(固形分)に対して30質量部を超えると、未反応エポキシ化合物が残存し易くなり、これが接着剤の初期接着力を低下する原因となり易い。
このような本発明のアクリル系水性帯電防止性ドライラミネート用接着剤は、安価であり、水系であるため火災の危険、環境問題がない。また、ラミネート強度及びヒートシール強度に優れ、且つ湿度に依存しない優れた帯電防止性を有する。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定的に解釈されるものではない。
(合成例1A)
1.コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子とジヒドラジド化合物を含む水性組成物の製造
1−1.シェル部分を構成する共重合体を含む水性組成物の調製
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール20質量部を仕込み、窒素雰囲気中で80℃まで昇温し、コンデンサーの還流下で、エチルアクリレート79.0質量部、2−エチルヘキシルアクリレート6.0質量部、アクリル酸10.0質量部、ダイアセトンアクリルアミド5.0質量部、2−2’−アゾビス−(2−ブチルブチロニトリル)3.0質量部、メルカプトエタノール2.0質量部、及びα−スチレンダイマー0.50質量部の混合物を、滴下ロートを用いて90分かけて等速で滴下した。
滴下終了後240分後に70℃まで冷却し、28%アンモニア水を10質量部加え、次いでイオン交換水を66質量部加えて希釈した。希釈後、デカンターを設置し系内のIPAが1%以下になるまで減圧にてIPAを回収した。不揮発分が全体の32.4質量%になるようにイオン交換水を添加して調整した。
1−2.コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子とジヒドラジド化合物を含む水性組成物の調製
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を備えたフラスコに、上記のようにして調製した共重合体の水性組成物46.3質量部(固形分15.0質量部)と共に、イオン交換水94.0質量部、スチレン2.3質量部、n−ブチルアクリレート6.9質量部、チオ硫酸ソーダ0.35質量部、IPA3.1質量部を仕込み、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した後、過酸化水素水0.1質量部、イオン交換水0.1質量部を添加した。添加後、反応温度を80〜82℃に保ち、30分後からn−ブチルアクリレート55.1質量部、スチレン17.7質量部、メタクリル酸グリシジル1.0質量部、トリエチレングリコールジメタクリレート1.0質量部、ダイアセトンアクリルアマイド1.0質量部の混合物(M)と、イオン交換水55.7部、過酸化水素1.0部の混合物(C)とを別々に滴下ロートを用いて、ぞれぞれ、4時間(M)及び4.5時間(C)で等速に同時滴下した。滴下中反応温度は80〜85℃に保った。混合物(C)の滴下終了後30分と90分の時点で、それぞれt−ブチルハイドロパーオキサイド0.1質量部、チオ硫酸ソーダ0.1質量部及びイオン交換水0.1質量部を添加した。
添加終了後120分経過した時点で反応を終了し、40℃以下に冷却したところで、アジピン酸ジヒドラジド0.77質量部、イオン交換水 0.77部を添加後取り出し、固形分40.0質量%、粘度100mPa.s、pH7.2の水性組成物を得た。
(合成例1B〜合成例1E並びに合成比較例1A〜1E)
以下の表1に示す組成に変更した以外は、合成例1Aと同様にしてコア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子とジヒドラジド化合物を含む水性組成物の製造を得た。
Figure 0005059137
(合成例2A)水溶性共重合体とアルカリ金属の有機塩とを含む水性帯電防止性組成物の製造
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール60質量部を仕込み、窒素雰囲気中で82℃まで昇温し、コンデンサーの還流下で、メチルメタクリレート10質量部、ブチルアクリレート10質量部、メタクリル酸10質量部、2ヒドロキシエチルメタクリレート10質量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(繰り返し単位の数(N)=9、商品名:NKエステルAM−90G、新中村化学工業(株)製)60質量部、α−メチルスチレンダイマー0.6質量部、2−2’アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)2.4質量部、イソプロピルアルコール36質量部の混合液を等速で120分滴下した。滴下終了後120分経過した時点で、イソプロピルアルコール4.8質量部で滴下ラインを洗浄し、その後60分間同温を維持した。60分後2−2’アゾビス−(2、4−ジメチルバレロニトリル)0.9質量部、イソプロピルアルコール43.8質量部の混合液を等速で2時間滴下した。60分間同温で維持させた後70℃まで冷却し、次いで25%アンモニア水を9.6質量部加え、更にイオン交換水を47.7質量部加えて希釈した。
得られたポリエチレングリコール基を含む水溶性共重合体を30℃に冷却後、当該組成物100質量部(水溶性共重合体固形分換算値)にトリフルオロメタンスルホン酸リチウム36.9質量部を添加し、30分攪拌後イオン交換水330質量部を加えて希釈後取り出し、固形分20.7%、粘度10mPa..s pH7.2の水性帯電防止樹脂組成物を得た。水溶性共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量は15000であった。
なお、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムは、メトキシポリエチレングリコールアクリレート100質量部に対して、61質量部用いた。
(合成例2B〜2K並びに比較合成例2A〜2E)
単量体の種類及び量、並びにアルカリ金属の有機塩の種類及び量を、以下の表2及び3の通り変更した以外は、合成例2Aと同様にして水溶性導電性共重合体とアルカリ金属の有機塩とを含む水性帯電防止樹脂組成物を得た。
Figure 0005059137
Figure 0005059137
(実施例1A)ドライラミネート用水性接着剤の調製
合成例1Aで得られたコア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子とジヒドラジド化合物を含む水性組成物(固形分40質量%)を、攪拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコに、100質量部(固形分値)仕込んだ後、合成例2Aで得られた水性帯電防止樹脂組成物(固形分20%)を25質量部(固形分値)添加し、常温にて300回転/分で30分攪拌後、イオン交換水125質量部を加えて希釈後取出した。得られた樹脂組成物は、固形分25.0質量%、粘度10mPa.s、pH7.0であった。
上記で得られた樹脂組成物を主剤とし、塗工直前に、この主剤125質量部(固形分)に対して、硬化剤として、水溶性多官能エポキシ化合物(商品名:EX−512、ナガセケムテックス(株)製)4質量部(固形分)を添加混合し帯電防止性ドライラミネート用の水性接着剤を得た。
得られた水性帯電防止性ドライラミネート用接着剤組成物中のコア・シェル構造のアクリル系共重合体粒子(A)と水溶性共重合体(C)の総量と、水溶性多官能エポキシ化合物(E)の質量の比率は、固形分比で100:3.4である。
また、コア/シェル構造の粒子(A)及び多官能ヒドラジド化合物(B)の総質量(固形分換算値)と、水溶性共重合体(C)及びアルカリ金属の有機塩(D)の総質量(固形分換算値)の比は100:25.0 であった。
(実施例1B〜1E)
合成例1B〜1Eで合成したコア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子及びジヒドラジド化合物を含む水性組成物と、合成例2Aで合成した水溶性共重合体及びアルカリ金属の有機塩を含む水性帯電防止性組成物とを、下記の表4に示す固形分比率で混合した以外は実施例1と同様にして水性帯電防止性ドライラミネート用接着剤を得た。
Figure 0005059137
(実施例2A〜2K及び比較例2A〜2E)
合成例1Aで合成したコア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子及びジヒドラジド化合物を含む水性組成物と、合成例2A〜2K及び比較合成例2A〜2Eで合成した水溶性共重合体及びアルカリ金属の有機塩を含む水性帯電防止性組成物とを、下記の表5に示す固形分比率で混合した以外は実施例1Aと同様にして水性帯電防止性ドライラミネート用接着剤組成物を得た。
Figure 0005059137
(実施例3A〜3H及び比較例3A〜3C)
合成例1Aで合成したコア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子及びジヒドラジド化合物を含む水性組成物と、合成例2Aで合成した水溶性共重合体及びアルカリ金属の有機塩を含む水性帯電防止性組成物と、水溶性多官能エポキシ化合物(商品名:EX-512又はEX-614B、ナガセケムテックス(株)製)とを、下記の表6に示す固形分比率で混合した以外は実施例1Aと同様にして水性帯電防止性ドライラミネート用接着剤組成物を得た。
Figure 0005059137
(比較例3D)
合成例1で得られた樹脂組成物100質量部(固形分)に対して、帯電防止剤として、ノニオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(花王(株)製レオドールTW−L120)を1質量部(固形分)添加混合してドライラミネート用の水性帯電防止性接着剤を得た。
(比較例3E)
合成例1で得られた樹脂組成物100質量部(固形分)に対して、帯電防止剤として、ノニオン系界面活性剤である ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(花王(株)製レオドールTW−L120)10質量部(固形分)を添加混合しドライラミネート用の水性帯電防止性接着剤を得た。
<ラミネートフィルムの製造>
実施例及び比較例で得られた接着剤組成物を、バーコーターNo.8で、基材フィルムとして厚さ25μmの2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ(株)製OPP−1、25μm、以下「OPPフィルム」と省略することがある)、及び 厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製E−5100 12μm、以下、「PETフィルム」と省略することがある)のコロナ放電処理面に、それぞれ乾燥後の塗布量が2.0〜4.0g/mとなるように塗布し、80℃のオーブン中で1分間乾燥した。次に、各基材フィルム上の接着剤組成物を予め100℃に調温した熱風乾燥機で乾燥し、シーラントフィルムとして使用した厚さ25μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ(株)製 GHC 25μm、以下「CPPフィルム」と省略することがある)を各基材フィルムの塗工面上に置き、熱圧着ロールで圧着し、積層ラミネート物を製造した。
圧着の際熱圧着ロールの温度は60℃とし、圧力は5Kg/cm2 とした。圧着後40℃の恒温室内に24時間放置した後、各試験に供した。
<評価方法>
得られたラミネートフィルムについて、ラミネート強度、ヒートシール強度、摩擦帯電圧を以下の方法に基づいて評価した。
1.ラミネート強度測定
得られた各ラミネートフィルムを15mm幅に裁断してサンプルを作成し、このサンプルを温度20℃、相対湿度65%の雰囲気中で、島津製作所(株)製オートグラフAG−10TGを用いて速度300mm/minでT字剥離強度を測定した。
評価基準は以下の通りである。
◎:剥離強度が200g/15mm幅以上
○:剥離強度が100g/15mm幅以上、200g/15mm幅未満
△:剥離強度が50g/15mm幅以上、100g/15mm未満
×:薄利強度が50g未満
2.ヒートシールの強度測定:
得られた各ラミネートフィルムのシーラントフィルム面同士を向かい合わせ、150℃、1kgf/cm/秒の条件でヒートシールした。ヒートシール部分を15mm幅にカットした試料片をT字状に上記オートグラフにセットし、300mm/minの引っ張り速度で剥離した時の強度を測定した。
評価基準は以下の通りである。
◎:剥離強度が1200g/15mm幅以上
○:剥離強度が1000g/15mm幅以上、1200g/15mm幅未満
△:剥離強度が500g/15mm幅以上、1000g/15mm幅未満
×:剥離強度が500g/15mm幅未満
3.ラミネートフィルムの摩擦帯電圧
セルロース製の不織布(ベンコットM-3II、旭化成せんい(株)製)で50往復擦った後、シムコジャパン(株)製静電気測定器FMX-003を用いて帯電圧を測定した。測定は、以下の2つの条件で行なった。
1)〔測定条件=23℃、30%RH〕
2)〔測定条件=23℃、70%RH〕
評価基準は以下の通りである。
◎:摩擦帯電圧が0.1KV未満
○:摩擦帯電圧が0.1KV以上0.5KV未満
△:摩擦帯電圧が0.5KV以上1.0KV未満
×:摩擦帯電圧が1.0KV以上
<試験結果>
A. 実施例1B〜1E及び比較例1A〜1E(コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子を形成するモノマーの種類及び組成比とジヒドラジド化合物の組成比を変動した例)で得られた接着剤を用いたラミネートフィルムの試験結果を以下の表7及び8にまとめて示す。
Figure 0005059137
Figure 0005059137
B. 実施例2A〜2K及び比較例2A〜2E(水溶性共重合体を形成するモノマーの種類及び組成比とアルカリ金属の有機塩の種類及び組成比を変動した例)で得られた接着剤を用いたラミネートフィルムの試験結果を以下の表9及び10にまとめて示す。
Figure 0005059137
Figure 0005059137
C. 実施例3A〜3H及び比較例3A〜3C(コア/シェル構造のアクリル系共重合体粒子及びジヒドラジド化合物を含む水性組成物と、水溶性共重合体及びアルカリ金属の有機塩を含む水性帯電防止性組成物と、水溶性多官能エポキシ化合物との組成比を変動した例)で得られた接着剤を用いたラミネートフィルムの試験結果を以下の表11及び12にまとめて示す。
Figure 0005059137
Figure 0005059137

Claims (5)

  1. (A)α,βエチレン性不飽和カルボン酸、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体、及びこれらと重合可能なその他のα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られる水溶性共重合体をシェルとし、グリシジル基含有不飽和単量体、ジ(メタ)アクリレート化合物、非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体、及びこれらと共重合可能なα,βエチレン性不飽和単量体を重合して得られる共重合体をコアとする、コア/シェル構造の粒子と、
    (B)多官能ヒドラジド化合物と、
    (C)ポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体を35質量%〜85質量%、α,βエチレン性不飽和カルボン酸を2〜35質量%、及びこれらと共重合可能なその他のα,βエチレン性不飽和単量体を55〜5質量%重合して得られる、水溶性共重合体と、
    (D)アルカリ金属の有機塩と、
    (E)水可性多官能エポキシ化合物とを含み、
    該アルカリ金属の有機塩(D)を、該水溶性共重合体(C)中のポリアルキレングリコール基含有不飽和単量体に由来する部分100質量部に対して20〜100質量部の割合で含有し、
    該コア/シェル構造の粒子(A)及び該多官能ヒドラジド化合物(B)の合計100質量部(固形分換算値)に対して、該水溶性共重合体(C)及び該アルカリ金属の有機塩(D)を合計で7〜40質量部(固形分換算値)含有し、
    該コア/シェル構造の粒子(A)及び該水溶性共重合体(C)の合計100質量部(固形分換算値)に対して、前記水溶性多官能エポキシ化合物(E)を1〜30(固形分換算値)含有する、帯電防止性ドライラミネート用水性接着剤。
  2. 前記アルカリ金属の有機塩(D)が、有機カルボン酸のアルカリ金属塩、有機スルホン酸のアルカリ金属塩又は含フッ素有機アニオン酸のアルカリ金属塩である、請求項1に記載の帯電防止性ドライラミネート用水性接着剤。
  3. 前記含フッ素有機アニオン酸のアルカリ金属塩が、パーフルオロアルカン酸のアルカリ金属塩又はビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド酸のアルカリ金属塩である、請求項2に記載の帯電防止性ドライラミネート用水性接着剤。
  4. 前記非エステル系カルボニル基含有不飽和単量体のカルボニル基の総量に対して、ヒドラジド基0.1〜1.0モル当量の多官能ヒドラジド化合物を含む、請求項1から3の何れか1項に記載の接着剤。
  5. 請求項1〜4に記載の接着剤を用いてラミネートされた複合プラスチックフィルム。
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