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JP5056174B2 - 車両運転支援システム、運転支援装置、車両及び車両運転支援方法 - Google Patents

車両運転支援システム、運転支援装置、車両及び車両運転支援方法 Download PDF

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JP5056174B2 JP2007146048A JP2007146048A JP5056174B2 JP 5056174 B2 JP5056174 B2 JP 5056174B2 JP 2007146048 A JP2007146048 A JP 2007146048A JP 2007146048 A JP2007146048 A JP 2007146048A JP 5056174 B2 JP5056174 B2 JP 5056174B2
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Description

本発明は、車両の運転支援に関し、特に交差点で安全に車両を停止させ又は通過させる車両運転支援システム、該車両運転支援システムを構成する運転支援装置、該運転支援装置を搭載した車両及び車両運転支援方法に関する。
車両の安全運転支援には、走行中の車両を減速させて停止させる停止制御に関する技術、信号の切り替え時間を考慮したジレンマ制御に関する技術、車両の位置を検出する技術など多くの技術が適用されている。
例えば、交差点手前の停止線で車両を停止させるために、カメラから得られた画像に基づいて停止線を検出し、車両の速度又は加減速度の情報により車両の走行制御を行って停止線で車両を停止させる技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
また、交差点の上流に設置した通信装置から、その交差点の信号の切り替えタイミング情報及び交差点の停止線までの距離(あるいは停止線の位置情報)を車載装置で取得し、車両がジレンマゾーンに入っている場合に、ジレンマゾーンから脱出させるための限界走行速度を提供する安全速度提供方法が開示されている(特許文献3参照)。
一方、ナビゲーションで広く利用されている車両の位置を検出する方法として、自立航法、衛星航法、地図マッチング法、ハイブリッド航法などがある。自立航法は、距離センサ、方位センサ又は角速度センサなど用い、例えば、経緯度座標系を基にした直交座標系に対する車両の走行の方位角と単位時間当たりの走行距離に基づいて、逐次車両位置を算出するものであるが、道路との整合性は考慮されておらず、走行距離の増加に応じて車両位置の誤差が累積するという問題がある。
また、衛星航法は、GPS(Global Positioning System)を用いるものであり、検出される位置には、10〜20m程度の誤差を含む。GPSを用いるため、距離センサ、方位センサ又は角速度センサ等の車載のセンサは不要である。しかし、高架下の道路、建物に挟まれた道路、山道、街路樹等で覆われた道路では、所定数のGPS衛星から電波を受信することができず、検出精度が大きく劣化するという問題がある。
また、地図マッチング法は、自立航法による走行軌跡と道路地図との整合性(マッチング)を考慮して車両の位置を検出するものである。すなわち、自立航法による軌跡と、道路地図データとを比較して相関をとりながら、走行していると考えられる複数の道路候補の中から、最も確からしい道路を選定してゆく。そして、候補となる道路が1本に限定された時点で、自立航法により得られた車両の走行軌跡を道路に合致させる。しかし、限定した道路が間違っている場合、それ以降の位置検出が不能になるという問題がある。
また、ハイブリッド航法は、衛星航法と地図マッチング法とを組み合わせたものであり、自立航法と衛星航法の誤差を勘案しながら、合理的に車両の位置を推定し、走行している道路を特定するものである。ハイブリッド航法では、例えば、通常時には、地図マッチング法を用いて車両の位置を検出する。地図マッチング法で車両の位置が検出不能に陥った場合、衛星航法により車両の位置、方位を検出して車両の位置を推定し、道路地図データとの整合性を考慮して車両の位置を検出するものである。ハイブリッド航法を用いれば、特殊な場合を除けば、車両が走行している道路を間違う可能性は殆どなく、道路方向の位置精度も、平均的には10m程度の誤差範囲内であり、道路案内目的のナビゲーションという目的であれば、実用上殆ど問題ない精度レベルである。
特開2002−190100号公報 特開2006−151014号公報 特開2006−139707号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術では、車両が停止線に接近しない限り停止線を検出することができないため、停止線を検出できた時点では、車両は停止線付近に到達しており、車両を停止線で停止させるための時間的余裕が十分でない。この場合、車両を停止線で停止させるためには、大きな減速度で減速させる必要があり、後続車が存在する場合には、安全上問題がある。
また、特許文献3では、交差点の十分手前からジレンマ領域又はオプション領域を回避する走行制御又は情報提供を行う方法が開示されているものの、さらに安全かつ確実にジレンマ領域又はオプション領域を回避するように走行制御又は情報提供を行う方法が望まれていた。特に、交差点の交通流を円滑にするために、右折車(又は左折車)のみの通過を許可する青矢などの信号が設置されている場合、車両の走行状態は、交差点における車両の進行方向にも依存するため、このような交差点であっても、安全かつ確実に車両を交差点手前で停止させ、あるいは交差点を通過させて危険走行領域から脱出させる具体的な車両の制御方法が望まれていた。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、交差点での自車両の進行方向に依らず危険走行領域を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させる車両運転支援システム、該車両運転支援システムを構成する運転支援装置、該運転支援装置を搭載した車両及び車両運転支援方法を提供することを目的とする。
第1発明に係る車両運転支援システムは、交差点に設置された信号機の信号情報を送信する送信装置と、該送信装置が送信した信号情報を受信して車両の安全運転を支援する運転支援装置とを備える車両運転支援システムにおいて、前記運転支援装置は、交差点の右折用又は左折用の信号の存否情報を取得する存否情報取得手段と、前記交差点での自車両の進行方向を取得する進行方向取得手段と、前記右折用又は左折用の信号の存否情報及び前記自車両の進行方向に応じて、自車両の危険走行状態を特定する特定手段と、前記自車両の速度情報を取得する速度取得手段と、前記自車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、前記自車両と交差点との距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、自車両が前記特定手段で特定した危険走行状態にあるか否かを判定する判定手段と、該判定手段によって前記危険走行状態にあると判定した場合、前記自車両を加減速するための情報を出力する出力手段とを備え、前記特定手段は、右折用(又は左折用)の信号情報が存在する場合に、前記自車両が右折(又は左折)するときは、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点までに交差点に進入できる進入条件を満たさない状態であって、該進入条件近傍の状態を危険走行状態として特定するように構成してあることを特徴とする。
発明に係る車両運転支援システムは、第発明において、前記運転支援装置は、直進車両に対する黄信号開始時点での自車両前記交差点との距離、自車両の速度、黄信号時間及び右折のみ(又は左折のみ)可能な現示時間に基づいて、前記進入条件を算出する進入条件算出手段を備えることを特徴とする。
発明に係る車両運転支援システムは、第1発明又は明において、前記運転支援装置は、地図情報を記憶する記憶手段と、目標地点の指定を受け付ける受付手段と、前記地図情報に基づいて、前記目標地点までの走行経路を算出する走行経路算出手段とを備え、前記進行方向取得手段は、前記走行経路算出手段で算出した走行経路に基づいて、前記交差点での自車両の進行方向を取得するように構成してあることを特徴とする。
発明に係る車両運転支援システムは、第1発明又は明において、前記運転支援装置は、車線毎の通行区分情報を記憶する記憶手段と、自車両の走行車線を検出する検出手段とを備え、前記進行方向取得手段は、前記通行区分情報及び前記検出手段で検出した走行車線に基づいて、前記交差点での自車両の進行方向を取得するように構成してあることを特徴とする。
発明に係る車両運転支援システムは、第1発明乃至第発明のいずれか1つにおいて、前記運転支援装置は、前記出力手段で出力する情報に基づいて、自車両の加減速を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
発明に係る車両運転支援システムは、第1発明乃至第発明のいずれか1つにおいて、前記運転支援装置は、右折用(又は左折用)の信号情報が存在する場合に、自車両が右折(又は左折)するときに、前記判定手段で前記危険走行状態にあると判定した場合、直進車両に対する黄信号開始時点以降、前記自車両を直進車両に対する黄信号時間及び右折のみ(又は左折のみ)可能な現示時間に基づいた速度に制御する速度制御手段を備えることを特徴とする。
発明に係る車両運転支援システムは、第1発明乃至第発明のいずれか1つにおいて、前記運転支援装置は、自車両の進行方向の指示を受け付ける方向指示受付手段と、該方向指示受付手段で受け付けた進行方向が前記進行方向取得手段で取得した進行方向と異なる場合、前記出力手段で出力する情報の中止又は変更を制御する出力制御手段とを備えることを特徴とする。
発明に係る車両運転支援システムは、第1発明乃至第発明のいずれか1つにおいて、前記運転支援装置は、自車両が走行する車線の道路標示を取得する道路標示取得手段と、該道路標示取得手段で取得した道路標示に基づく進行方向が前記進行方向取得手段で取得した進行方向と異なる場合、前記出力手段で出力する情報の中止又は変更を制御する出力制御手段とを備えることを特徴とする。
発明に係る車両運転支援システムは、第1発明乃至第発明のいずれか1つにおいて、前記運転支援装置は、先行する右折車(又は左折車)の存否を検知する検知手段と、右折車(又は左折車)が存在する場合、前記出力手段で出力する情報の中止又は変更を制御する出力制御手段とを備えることを特徴とする。
10発明に係る車両運転支援システムは、第1発明乃至第発明のいずれか1つにおいて、前記出力手段で出力する情報に基づいて、自車両の加減速を報知する報知手段を備えることを特徴とする。
11発明に係る運転支援装置は、交差点に設置された信号機の信号情報を受信して車両の安全運転を支援する運転支援装置において、交差点の右折用又は左折用の信号の存否情報を取得する存否情報取得手段と、前記交差点での自車両の進行方向を取得する進行方向取得手段と、前記右折用又は左折用の信号の存否情報及び前記自車両の進行方向に応じて、自車両の危険走行状態を特定する特定手段と、前記自車両の速度情報を取得する速度取得手段と、前記自車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、前記自車両と交差点との距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、自車両が前記特定手段で特定した危険走行状態にあるか否かを判定する判定手段と、該判定手段によって前記危険走行状態にあると判定した場合、前記自車両を加減速するための情報を出力する出力手段とを備え、前記特定手段は、右折用(又は左折用)の信号情報が存在する場合に、前記自車両が右折(又は左折)するときは、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点までに交差点に進入できる進入条件を満たさない状態であって、該進入条件近傍の状態を危険走行状態として特定するように構成してあることを特徴とする。
12発明に係る車両は、前述の発明に係る運転支援装置を搭載したことを特徴とする。
13発明に係る車両運転支援方法は、交差点に設置された信号機の信号情報を運転支援装置で受信して車両の安全運転を支援する車両運転支援方法において、前記運転支援装置は、交差点の右折用又は左折用の信号の存否情報を取得し、前記交差点での自車両の進行方向を取得し、前記右折用又は左折用の信号の存否情報及び前記自車両の進行方向に応じて、自車両の危険走行状態を特定し、前記自車両の速度情報を取得し、前記自車両と交差点との距離に関する情報を取得し、前記自車両と交差点との距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、特定した危険走行状態に前記自車両があるか否かを判定し、前記危険走行状態にあると判定した場合、前記自車両を加減速するための情報を出力し、さらに、右折用(又は左折用)の信号情報が存在する場合に、前記自車両が右折(又は左折)するときは、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点までに交差点に進入できる進入条件を満たさない状態であって、該進入条件近傍の状態を危険走行状態として特定することを特徴とする。
第1発明、第11発明及び第13発明にあっては、運転支援装置は、交差点の右折用又は左折用の信号(例えば、青矢信号など)の存否情報及び交差点での自車両の進行方向を取得する。自車両の交差点での進行方向(例えば、直進、右折、左折など)の取得は種々の方法で実現できる。例えば、ナビゲーションシステムを用いて自車両の走行経路から求めること、車載カメラで道路標示を撮像して求めること、走行車線と走行区分などの情報から求めることができる。運転支援装置は、取得した青矢信号の存否及び自車両の進行方向に応じて、自車両の走行状態(例えば、危険走行状態、すなわち、車両の交差点までの距離と速度により決定される危険走行領域)を特定する。例えば、運転支援装置は、青矢信号がある交差点で自車両が右折(又は左折)する場合、その走行挙動に応じた危険走行状態を特定する。また、運転支援装置は、それ以外の場合(例えば、直進する場合)、その走行挙動に応じた危険走行状態を特定する。これにより、運転支援装置は、自車両の交差点における走行挙動に相応しい危険走行状態を特定することができる。
運転支援装置は、自車両の速度情報(速度)及び自車両と交差点との距離に関する情報を取得し、交差点までの距離を算出する。この場合、自車両と交差点との距離に関する情報は、自車両と交差点との距離でもよく、あるいは、自車両及び交差点の位置であってもよい。運転支援装置は、交差点までの距離、自車両の速度、及び信号情報に基づいて、特定した危険走行状態にあるか否かを判定する。例えば、青矢信号がある交差点で自車両が右折(又は左折)する場合、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点で交差点に進入できない状態のうち進入条件に近い状態にあるか否かを判定する。また、自車両が直進する場合、自車両が交差点の手前に停止するための停止条件及び交差点に進入するための進入条件により決定される危険走行状態にあるか否かを判定する。
運転支援装置は、危険走行状態にあると判定した場合、自車両を加減速するための情報を出力する。すなわち、運転支援装置は、危険走行状態を回避するために、例えば、車両を交差点に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速するための情報を提供(出力)し、あるいは、車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、車両を緩やかな加速度で加速するための情報を提供(出力)する。これにより、危険走行状態(危険走行領域)を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
また、運転支援装置は、右折用(又は左折用)の信号(例えば、青矢信号など)が存在する場合に、自車両が右折(又は左折)するときは、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点までに交差点に進入できる進入条件を満たさない状態であって、その進入条件近傍の状態を危険走行状態として特定する。例えば、右折用の青矢信号がある交差点において右折する場合、運転者は青矢信号が点灯している限り交差点を右折する傾向が強く、逆に交差点で停止する傾向は弱い。このとき、運転者は青矢信号が点灯している間に交差点を通過することができるか否かの判断が困難であり、交差点を通過することができない状態であっても、交差点を通過できると判断するおそれが高い。このため、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点までに交差点に進入できる進入条件を満たさない状態であって、その進入条件近傍の状態を危険走行状態として特定することで、運転者が陥り易い判断ミスを回避することができる。
発明にあっては、運転支援装置は、直進車両に対する黄信号開始時点での自車両の交差点までの距離、自車両の速度、黄信号時間及び右折のみ(又は左折のみ)可能な現示時間に基づいて、進入条件を算出する。例えば、進入条件Lは、黄信号開始時点での自車両の交差点までの距離をXy、自車両の速度をV、黄信号時間をTy、右折のみ可能な現示時間をTrgとすると、V(Ty+Trg)≧Xyで算出することができる。すなわち、V(Ty+Trg)<Xyとなる状態が進入条件Lを満たさない状態となる。進入条件Lを算出することにより、黄信号開始時点での自車両の状態が進入条件Lに近い危険走行状態にあるか否かの判定を精度良く行うことができる。
発明にあっては、運転支援装置は、受け付けた目標地点と地図情報に基づいて、目標地点までの走行経路を算出する。運転支援装置は、算出した走行経路に基づいて、交差点での自車両の進行方向を取得する。すなわち、運転支援装置は、交差点における走行経路に応じて、交差点を右折、直進又は左折するかの進行方向を取得する。これにより、自車両が交差点において危険走行状態にあるか否かを判定する際に、交差点の上流において予め自車両の交差点での進行方向を取得でき、進行方向に応じた危険走行状態の判定が可能となる。
発明にあっては、運転支援装置は、通行区分情報及び検出した走行車線に基づいて、交差点での自車両の進行方向を取得する。例えば、自車両の走行車線の検出は、車載カメラで道路標示を撮像して走行車線を検出する方法、GPS又は路車間通信等により走行車線を検出する方法などを用いることができる。運転支援装置は、交差点における走行経路に応じて、交差点を右折、直進又は左折するかの進行方向を取得する。これにより、自車両が交差点において危険走行状態にあるか否かを判定する際に、交差点の上流において予め自車両の交差点での進行方向を取得でき、進行方向に応じた危険走行状態の判定が可能となる。
発明にあっては、運転支援装置は、加減速するために出力する情報に基づいて、自車両の加減速を制御する。すなわち、運転支援装置は、危険走行状態を回避するために、例えば、自車両を交差点に停止させる場合には、自車両を緩やかな減速度で減速し、あるいは、自車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、自車両を緩やかな加速度で加速する。これにより、危険走行状態(危険走行領域)を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
発明にあっては、運転支援装置は、右折用(又は左折用)の信号(例えば、青矢信号など)が存在する場合に、自車両が右折(又は左折)するときに、自車両が危険走行状態にあると判定した場合、直進車両に対する黄信号開始時点以降、自車両を直進車両に対する黄信号時間及び右折のみ(又は左折のみ)可能な現示時間に基づいた速度に制御する。例えば、運転支援装置は、右折用の青矢信号で自車両が右折する場合において、自車両が危険走行状態にあると判定したときは、直進車両に対する黄信号開始時点以降、自車両の現在位置、直進車両に対する黄信号時間及び右折のみ可能な現示時間に基づいて算出した減速度で自車両を減速制御する。これにより、確実に交差点手前で自車両を停止させることができる。
発明にあっては、運転支援装置は、例えば、方向指示器で運転者が指示した進行方向が、予め取得した進行方向と異なる場合、出力する情報の中止又は変更を行う。例えば、自車両の交差点での進行方向が直進である場合、交差点の手前で運転者が右折の方向指示器を操作したときには、出力する情報を進行方向と操作内容とが異なることを付加した上で、交差点で右折する場合の危険走行状態に基づいた情報に変更するか、あるいは、情報の出力を停止する。これにより、自車両の交差点での進行方向に関して運転者の指示との相違がある場合、運転者による指示を優先させ、運転者に誤解を与えることを防止することができる。
発明にあっては、運転支援装置は、自車両が走行する車線の道路標示を取得し、取得した道路標示に基づく進行方向が、予め取得した進行方向と異なる場合、出力する情報の中止又は変更を行う。例えば、自車両の交差点での進行方向が直進である場合、交差点の手前で運転者が右折レーン(右折車専用の走行車線)を走行したときには、出力する情報を進行方向とレーンとが異なることを付加した上で、交差点で右折する場合の危険走行状態に基づいた情報に変更するか、あるいは、情報の出力を停止する。これにより、自車両の交差点での進行方向に関して運転者の指示との相違がある場合、運転者による指示を優先させ、運転者に誤解を与えることを防止することができる。
発明にあっては、運転支援装置は、先行する右折車又は左折車の存否を検知し、右折車又は左折車が存在する場合、出力する情報の中止又は変更を行う。例えば、自車両が交差点で右折する場合に、先行する右折車が信号待ちしているとき、運転者は右折車の後方に一旦停止して信号待ちをするので、危険走行領域に入る可能性は極めて少ない。また、自車両が交差点で左折する場合に、先行する左折車が歩行者の横断待ちしているとき、運転者は左折車の後方に一旦停止して左折待ちをするので、危険走行領域に入る可能性は極めて少ない。このため、このような場合には、情報の出力を中止するか、あるいは、単に走行注意を促す情報を出力すれば足りる。これにより、交差点の交通状況に応じた情報を出力することができる。
10発明にあっては、運転支援装置は、加減速するために出力する情報に基づいて、自車両の加減速を報知する。すなわち、運転支援装置は、危険走行状態を回避するために、例えば、自車両を交差点に停止させる場合には、自車両が緩やかな減速度で減速すること又は減速指示を運転者に報知し、あるいは、自車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、自車両が緩やかな加速度で加速すること又は加速指示を運転者に報知する。これにより、運転者に危険走行状態(危険走行領域)を回避することを確実に伝えることができ、運転者が不意な操作を行うことを防止できるとともに、運転者が指示に基づいて車両を操作することにより確実に危険走行状態を回避することができる。
12発明にあっては、車両は前述の運転支援装置を備えるため、車両の運転支援を行うことができる。
本発明にあっては、交差点における自車両の進行方向に依らず、危険走行状態(危険走行領域)を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させることができる。
以下、本発明を実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る車両運転支援システムの概要を示す模式図である。本発明に係る車両運転支援システムでは、信号機が設置された交差点手前に停止線を設けてあり、停止線から道路に沿って適長の離隔距離(例えば、200m)を有して路上装置21、22を設置してある。また、路上装置21の上流側(例えば、路上装置21から上流300m程度)に、光ビーコン10を設置している。
路上装置21、22は、例えば、超音波感知器、ICタグ、磁気ネール、光センサ等であり、電波、音波、光、磁気などをセンシングすることにより交信地点を特定することができるものである。路上装置21、22は、道路上に車載装置(運転支援装置)との交信領域を有する。車両が交信領域を通過する際に、車載装置は、路上装置21、22から交信領域を通過することを示す信号を受信する。なお、路上装置21、22は、車載装置との間で一方向通信を行うものでも双方向通信を行うものでもよい。また、路上装置21、22は、通信を目的としたものでなく、単に計測のための信号を発するだけでもよい。
光ビーコン10は、道路上に車載装置との通信領域を有する。車両が通信領域を通過する際に、車載装置は、光ビーコン10から所定の情報を受信する。所定の情報は、例えば、通信地点の位置情報、停止線の位置情報(例えば、停止線までの距離、停止線の絶対位置など)、路上装置21、22の位置情報(例えば、停止線から交信領域までの距離、交信領域の絶対位置など)、信号機の右折用又は左折用の青矢信号の存否情報、信号機の信号情報(例えば、黄信号開始時点、黄信号時間及び青矢信号の現示時間など)、先行車両の進行方向別の存否情報などである。なお、光ビーコン10に代えて、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)などを用いることもできる。
車両が交差点に向かって道路を走行する場合、車載装置は、光ビーコン10との通信により、所定の情報を取得する。例えば、車載装置は、この時点で停止線までの距離が、例えば、700mであることを確認することができる。また、車載装置は、車両が交差点に向かって道路をさらに走行し、車載装置が路上装置21と交信することにより、車載装置は、自車両の位置が停止線から400mの地点にあることを確認することができる。すなわち、車載装置は、停止線までの距離を補正することができる。また、車載装置が路上装置22と交信した場合も同様である。これにより、車載装置は、交差点の上流地点で、予め停止線までの距離を精度良く把握しておくことができる。
その後、車載装置は、予め取得した自車両の交差点での進行方向(例えば、直進、右折、左折など)、及び交差点の右折用又は左折用の信号の存否情報に基づいて、自車両の危険走行状態(車両の交差点までの距離と速度により決定される危険走行領域)を特定する。なお、一般的に右折用又は左折用の信号灯器には、青い矢印灯が用いられることが多いので、以降、右折用又は左折用の信号を青矢信号と表示する。例えば、運転支援装置は、青矢信号がある交差点で自車両が右折(又は左折)するか、あるいは、それ以外かに基づいて、その走行挙動に応じた危険走行状態を特定する。車載装置は、停止線(交差点)までの距離、自車両の速度、信号機の信号情報などに基づいて、自車両が危険走行状態(停止線までの距離と速度により決定される危険走行領域)にあるか否かを判定する。車載装置は、危険走行状態にあると判定した場合、危険走行状態を回避するために、例えば、車両を停止線に停止させる場合には、車両を緩やかな減速度で減速するための処理を行い、あるいは、車両を交差点に進入させる場合(交差点を通過させる場合)には、車両を緩やかな加速度で加速するための処理を行う。
図2は車載装置30の構成を示すブロック図である。車載装置30には、車両に搭載されたビデオカメラ40を接続してある。ビデオカメラ40は、例えば、車両のフロントグリル、前部バンパなどに配置され、車両前方の道路を撮像できるようにしてある。また、車載装置30には、車両の走行状態を制御するとともに、方向指示器の操作に応じた操作信号を出力する車両制御部50を接続してある。車載装置30が出力する減速制御信号に応じて、車両制御部50は、所要の加減速度で車両を加減速させる。また、車載装置30には、前方車両の存否、先行する右折車の存否及び後方車両の存否を検出するための超音波センサ60を接続してある。なお、超音波センサ60に代えて、ミリ波レーダ等他の車載センサを用いることもできる。
車載装置30は、各種の演算処理を行うCPUからなり、後述する制御周期を計時するための時計を内蔵する制御部31を備える。なお、制御部31は、専用のハードウエア回路で構成してもよく、又は予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行する構成であってもよい。制御部31には、内部バスを介して通信部32、測位部33、地図データベース34、表示部35、画像処理部36、操作部37、記憶部38、報知部39、経路算出部301などが接続されている。測位部33は、GPS(Global Positioning System)331、車速センサ332、ジャイロセンサ333、走行距離を計測する距離計334などを備えている。また、車載装置30は、専用装置のみならず、パーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話など、取り外して地上でも別の目的などに利用できる汎用の装置に上述の各部の機能を備えるようにして構成することもできる。
通信部32は、光ビーコン10との間で路車間通信を行う通信機能を有する。なお、通信部32は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRCなどの狭域通信に限定されるものではなく、例えば、中域通信としてUHF帯又はVHF帯等の無線LAN機能を備えるものでもよく、あるいは、広域通信として携帯電話、PHS、多重FM放送、インターネット通信などの通信機能を備えるものでもよい。また、通信部32は、路上装置21、22が送信する信号を受信する受信機能を備えている。
測位部33は、複数のGPS衛星からの電波をGPS331で受け取り、自車の位置を時々刻々測位する。また、測位部33は、GPS衛星からの電波が届かない場所、あるいはGPS331により測位される位置の誤差を小さくするため、車速センサ332、ジャイロセンサ333から出力される信号に基づいて自車位置を推定し、地図データベース34の道路データと照合することにより自車の位置をさらに精度良く測位する。経路算出部301は、運転者が指示した目的地点と自車の現在位置に基づいて、目的地点までの走行経路を算出する。これにより、自車が交差点に向かって走行する場合、交差点の十分手前の上流地点で予め自車の交差点での進行方向を取得することができる。なお、GPS331に加えて、DGPS(ディファレンシャルGPS)を搭載することもできる。DGPSは、予め位置が分かっている基準局から発信されるFM放送又は中波を受信し、GPSで算出した位置のずれを補正することができ、自車の位置の精度を向上させることができる。
表示部35は、フロントガラスディスプレイ又はヘッドアップディスプレイ、あるいは、カーナビゲーションシステム又は後方監視モニタなどの液晶表示パネルであって、運転者に所要の情報を表示する。
画像処理部36は、ビデオカメラ40で道路を撮像して得られた撮像画像に基づいて、走行車線に対応する進行方向を示す道路標示を撮像し、予め記憶した道路標示パターンと照合することにより、自車の進行方向を検出する。なお、地図データベース34に道路の車線毎の通行区分情報(右折、左折、直進など)を記憶しておくこともできる。
図3は進行方向を示す道路標示の例を示す説明図である。図3(a)では、一番右側の走行車線が右折又は直進用レーンであり、一番左側の走行車線が左折又は直進用レーンである場合を示す。図3(b)では、一番右側の走行車線が右折専用のレーンであり、一番左側の走行車線が左折専用のレーンある場合を示す。図3(a)の場合には、一番右側(又は左側)の走行車線を走行する場合に、自車が交差点で右折(又は左折)するのか、あるいは直進するのか確定することができないため、上述の経路算出部301での走行経路の算出による進行方向の特定を用いる。一方、図3(b)の場合には、上述の測位部33での走行経路の算出による進行方向の特定を用いる必要はないが、併用してもよい。
また、画像処理部36は、ビデオカメラ40で道路を撮像して得られた撮像画像に基づいて、停止線を検出するための処理を行う。以下、撮像画像に基づいて停止線の位置を検出する方法について説明する。
ビデオカメラ40のレンズ中心を原点として、道路座標系を(X、Y、Z)、カメラ座標系を(X’、Y’、Z’)とし、道路座標系は、道路の進行方向をY軸(前方向を正)、道路方向と垂直な道路面上の方向をX軸(前方に向かって右方向を正)、路面と垂直な方向をZ(上方を正)とする。また、カメラ座標系は、カメラレンズの光軸をY’軸、光軸に垂直であって水平方向の軸をX’軸、カメラの上方向をZ’軸とする。さらに、カメラ座標系の各軸の道路座標系の各軸に対する回転角を、それぞれθ(ピッチ角)、φ(ロール角)、ψ(ヨー角)とし、全て右ねじの進む方向を正(θ:水平面より上向きが正、φ:右回りが正、ψ:左回りが正)とする。この場合、道路座標系からカメラ座標系の変換式は、式(1)で表すことができる。
Figure 0005056174
変換行列の係数P11〜P33それぞれは、式(2)で表すことができる。また、撮像画像上の座標(x、y)は、レンズの焦点距離をFとすると、式(3)で表すことができる。
停止線の有無の判定は、撮像画像の各画素の画素値に基づいて、エッジ点を抽出し、抽出したエッジ点より得られるエッジ画像と停止線の形状とのパターンマッチングを行うことにより判定することができる。切り出された停止線が撮像画像のy軸と交わる点のy座標を求め(この場合x=0)、求めたy座標を式(3)に代入すれば、停止線までの距離を精度良く算出することができる。
操作部37は、各種操作パネルを備え、運転者と車載装置30とのユーザインタフェースとして機能する。例えば、操作部37は、運転者の操作により車載装置30の動作の開始又は停止の操作を受け付ける。
報知部39は、スピーカを備え、制御部31の制御のもと、運転者に警告する場合、警告の内容を音声で出力する。例えば、車両が危険走行領域にある場合、危険走行領域を回避すべく自動速度制御を行う(自動速度制御モードに入る)旨を出力する。また、車両を交差点に停止させるために減速させる場合、あるいは交差点に進入(通過)させるため加速させる場合、その旨を出力する。また、報知部39は、交差点での自車両の進行方向に応じて、自車両が危険走行領域内にある場合、その旨の情報提供を行う。例えば、「このままの速度で走行すると危険走行領域に入るので、速度をxxにしてください。」、「速度を上げて(又は下げて)ください。」、「速度をxxに変更してください。」、「この先の交差点で赤信号になるので、交差点手前で停止してください。」などの情報を出力する。
また、報知部39は、例えば、「右折する場合には」、「左折する場合には」、「直進する場合には」等の前置き情報を出力することにより、運転者は自車両の進行方向を確認することができ、制御部31で把握している進行方向と運転者が意図している進行方向とが異なる場合、運転者が急に進行方向を変更した場合などに誤解を生ずることを防止できる。
記憶部38は、通信部32を通じて受信された所定の情報を記憶する。また、記憶部38は、目的地点の情報、算出した経路情報などを記憶する。
制御部31は、交差点での青矢信号の存否及び自車の進行方向に応じて、自車の危険走行状態(車両の交差点までの距離と速度により決定される危険走行領域)を特定する。例えば、制御部31は、青矢信号がある交差点で自車が右折(又は左折)する場合、その走行挙動に応じた危険走行状態を特定する。また、制御部31は、それ以外の場合、すなわち、青矢信号がある交差点で自車両が右折又は左折する場合以外の場合(例えば、直進する場合)には、その走行挙動に応じた危険走行状態を特定する。
図4は交差点を直進する場合の危険走行領域を例示する説明図である。図中、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。危険走行領域(便宜上、直進用の危険走行領域という)は、車両が危険走行状態であることを車両の速度と停止線までの距離とにより表すことができる領域である。交差点を直進する場合、危険走行領域は、ジレンマ領域とオプション領域とを含む。ジレンマ領域は、車両が黄信号表示後に自車両の停止操作を開始しようとしても停止線(交差点)の手前に停止できず、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できない状態であり安全に停止又は進入できない状態である。また、オプション領域は、車両が黄信号表示後に自車両の停止操作を開始しようとして停止線の手前に停止でき、かつ黄信号の終了時点までに停止線に進入できる状態であり、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態である。
図3において、停止線を基準とした車両の現在位置をX、現在速度をV、黄信号開始となるまでの時間をt(0<t<信号周期)とする。黄信号開始時刻での車両の位置Xyは、車両の速度が変化しないとすれば(Vy=V)、式(4)で求められる。式(4)は、現在の車両の走行状態に基づいた判定条件Eである。
Figure 0005056174
一方、車両が停止線の手前で安全に停止し、信号待ちになる停止条件Cは、式(5)で求められる。ここで、gは、車両の標準減速度であり、αは黄信号になってから運転者がブレーキを踏むまでの時間遅れである。すなわち、停止条件Cは、黄信号開始時に車両が標準減速度で減速したならば、車両が停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線である。なお、標準減速度は、あくまで車両の速度変化を示すものであり、制動操作の操作内容又は操作のタイミンとは無関係である。標準減速度は、例えば、黄信号に変わって車両の制動を開始する場合など、停止判断時点から反射反応(0.5秒)より十分長い時間(例えば、2秒以上)を経過してから減速操作を行うときにみられる減速度を意味している。つまり、急ブレーキをかけずに余裕のある停止を目的とするときにみられる減速度を意味している。なお、運転支援装置が標準減速度での速度制御を実施するタイミングは、反射反応より十分長い時間、あるいは反射反応の時間に限らない。一般的には、標準減速度は、平地乾燥路面で、およそ2〜3m/s2 である。
車両が黄信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに会わない進入条件Lは、式(6)で求められる。ここで、Tyは黄信号時間である。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、その黄信号時間内(赤信号になる前)に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。
ジレンマ領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足しない領域であり、オプション領域は、式(5)及び式(6)の両者とも満足する領域である。なお、図中、危険走行領域の下側の領域は交差点停止領域であり、停止線手前に安全に停止することができる領域である。また、危険走行領域の上側の領域は交差点通過領域であり、安全に停止線に進入(通過)することができる領域である。
車載装置30は、車両が黄信号開始時点で危険走行領域(ジレンマ領域及びオプション領域)に突入する可能性がある場合、危険走行領域に陥らないように回避すべく、車両を加速又は減速する制御を所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)の経過の都度又は所定の距離(例えば、0.1〜25m)の走行の都度、繰り返し行う。制御周期の計時は、例えば、制御部31で行うことができる。例えば、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が停止条件Cに近い場合には、現時点の速度が点Pで特定される停止限界速度になるように緩やかな減速度による減速制御を行う。また、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が進入条件Lに近い場合には、現時点の速度が点Qで特定される進入限界速度になるように緩やかな加速度による加速制御を行う。
図5は右折(又は左折)用の青矢信号がある交差点で右折(又は左折)する場合の危険走行領域を例示する説明図である。図中、横軸は停止線からの距離を示し、縦軸は車両の速度を示す。後述するように、この場合の危険走行領域(便宜上、青矢右折用の危険走行領域という)は、進入条件Lを満たさない領域であって、進入条件Lの近傍の領域が危険走行領域となる。
右折用の青矢信号がある場合、車両は黄信号ではなく、右折用の青矢信号の終了時点までに交差点の停止線を通過すれば良いので、交差点を直進する車両に比べて、時間的余裕がある。この場合、車両が青矢信号の終了時点で停止線に進入し、信号待ちに合わない進入条件Lは、式(7)で求められる。
Figure 0005056174
ここで、Tyは黄信号時間、Trgは青矢信号時間である。すなわち、進入条件Lは、車両が走行中に黄信号になった場合、黄信号時間と青矢信号時間の合計時間内に停止線まで到達することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す直線である。なお、青矢信号時間には右折用の黄灯色時間を含むものでもよい。
また、交差点で右折する場合には、運転者は右折時に交差点中央で一旦停止又は低速度で走行することを前提としているので、交差点の手前で高速走行しない。従って、図4で示したジレンマ領域を考慮する必要はない。
例えば、式(5)において、g=3m/s、α=0.5sとし、式(7)において、Ty+Trg=7sとすると、式(5)、式(7)により、図5の点Rの状態は、V=39m/s、すなわち、140km/hとなる。また、交差点の手前で車両の速度が概ね10m/s程度であることを考慮すれば、ジレンマ領域を危険走行領域として考慮する必要はない。
また、運転者は、交差点で右折する場合、青矢信号が点灯している限り右折する傾向が強く、運転者の特性により車両が停止するのか又は進入するのかが異なる不安定な状態になることが極めて少なく、かつ車両の速度も小さいため、オプション領域が危険走行領域となる可能性は低い。すなわち、右折用(又は左折用)の青矢信号がある交差点で自車が右折(又は左折)する場合における危険走行領域は、図4で示すようなジレンマ領域又はオプション領域のいずれでもない。
交差点で右折する場合には、例えば、直進車両に対する黄信号開始時点から青矢信号の終了時点までの時間は、直進する場合に比べて、青矢信号の時間分だけ長いため、青矢信号の終了時点までに交差点を通過できるか否かの判断をすることが運転者にとって困難となる。上述のとおり、交差点で右折する場合、青矢信号が点灯している限り右折する傾向が強くなるため、交差点を通過することができない状態であっても、交差点を通過しようと判断する可能性が高くなり、赤信号で交差点に進入する事態、あるいは黄信号になっても直ちに減速せず、直前になって急ブレーキをかける事態となる。すなわち、この場合の危険走行領域は、進入条件Lを満たさない領域(すなわち、青矢信号の終了時点までに交差点に進入できない領域)であって、進入条件Lの近傍の領域となり、運転者の判断ミスを誘発し易い領域である。近傍の領域は、黄信号開始時点の車両の状態(位置Xy、速度Vy)を図5で示す座標系で表した場合、交差点停止領域(進入条件Lを含まず)であって進入条件Lで示す直線に近い領域である。この近いということは、例えば、進入条件Lで示す直線までの最短距離が所定の閾値より小さい領域であると定義することができる。この場合、閾値は、車両の状態(位置Xy、速度Vy)を示す座標に応じて異なる値を設定することもできる。
図5に示すように、黄信号開始時点での自車の状態(自車の位置Xy、速度Vy)が点Sである場合、危険走行状態にあると判定する。なお、図5では、危険走行領域を模式的に楕円状で領域として示しているが、これに限定されるものではなく、進入条件Lを示す直線を縦軸に沿って速度が小さくなる方向に移動させた直線と進入条件Lを示す直線とで囲まれる領域でもよい。また、自車の状態が危険走行領域内にあるか否かの判定は、予め危険走行領域を求めておき、自車の状態が領域内にあるか否かで判定してもよく、あるいは、自車の状態を示す変数X、Vで特定される点と進入条件Lとの距離の大小により判定することもできる。あるいは、座標切片の道のり、クラスタ分類などを用いて、進入条件Lからの乖離度を評価するための指標を用いることもできる。
次に車載装置30による危険走行領域回避の自動速度制御について説明する。図6乃至図10は車載装置30の処理手順を示すフローチャートである。以下、右折用の青矢信号の存否、右折の有無に基づいた説明を行うが、左折の場合も同様である。制御部31は、光ビーコン10との通信の有無を判定し(S11)、通信がない場合(S11でNO)、ステップS11の処理を続け、光ビーコン10との通信があるまで待機する。
光ビーコン10との通信があった場合(S11でYES)、制御部31は、光ビーコン10から通信地点、停止線及び路上装置の位置情報、青矢信号の存否情報並びに信号機の信号情報を受信する(S12)。なお、停止線から通信地点までの距離、停止線から路上装置までの距離を取得することもできる。
制御部31は、停止線までの距離を算出し(S13)、路上装置21、22から信号を受信したか否かを判定し(S14)、信号を受信した場合(S14でYES)、停止線までの距離を修正する(S15)。例えば、停止線から路上装置21、22との交信地点までの距離をLとすると、車両の位置を、停止線から距離Lにあると修正する。これにより、自車両が停止線に向かって走行するにつれて累積する距離誤差をリセットし、停止線までの距離の精度を向上させることができる。信号を受信していない場合(S14でNO)、制御部31は、ステップS15の処理を行うことなく、後述のステップS16の処理を行う。
制御部31は、自動運転開始タイミングであるか否かを判定する(S16)。自動運転開始タイミングは、停止線から所定の距離(例えば、200m)になった地点、黄信号に切り替わるまでの時間が所定の時間(例えば、5〜10秒)になった時点、最後の路上装置22との交信時点、あるいは光ビーコン10との通信時点など適宜設定できる。自動運転開始タイミングは、自車両の速度に応じて変化させることもできる。
自動運転開始タイミングでない場合(S16でNO)、制御部31は、ステップS13以降の処理を続ける。自動運転開始タイミングである場合(S16でYES)、制御部31は、右折用青矢信号の有無を判定し(S17)、右折用青矢信号がある場合(S17でYES)、運転者により指定された目的地点に基づいて予め算出した走行経路を参照、あるいは走行経路を算出する(S18)。これにより、制御部31は、自車両の交差点での進行方向を取得する。なお、走行経路によらずに、ビデオカメラ40で取得した道路標示、路車間通信等により取得した走行区分などを用いることもできる。これにより、自車両が交差点において危険走行状態にあるか否かを判定する際に、交差点の上流において予め自車両の交差点での進行方向を取得でき、進行方向に応じた危険走行状態の判定が可能となる。
制御部31は、取得した進行方向に基づいて、交差点で右折するか否かを判定し(S19)、右折する場合(S19でYES)、直進車両に対する黄信号開始時点の直前であるか否かを判定する(S20)。黄信号開始時点の直前でない場合(S20でNO)、制御部31は、ステップS20の処理を続け、黄信号開始時点の直前まで待機する。右折する場合、自車両が危険走行領域内にあるか否かの判定は、黄信号開始時点の直前でも十分間に合うからである。
黄信号開始時点の直前である場合(S20でYES)、制御部31は、先行右折車の有無を判定する(S21)。先行右折車がない場合(S21でNO)、制御部31は、青矢右折用の危険走行領域を算出する(S22)。制御部31は、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定し(S23)、自車両が危険走行領域内に突入する場合(S23でYES)、黄信号開始時点から所定時間経過したか否かを判定する(S24)。所定時間は、運転者が黄信号に切り替わったのを見てブレーキを踏むまでの時間遅れであり、例えば、0.5秒程度の値である。
所定時間経過していない場合(S24でNO)、制御部31は、ステップS24以降の処理を続け、所定時間経過まで待機する。所定時間経過した場合(S24でYES)、制御部31は、自動速度制御モードに入る旨を報知する(S25)。この場合、運転者に対して車両が減速することを報知するが、制御部31による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して減速の指示を与え、運転者がその指示に従って減速するように構成することもできる。制御部31は、緩やかな減速度で減速制御する(S26)。この場合、緩やかな減速度は、現在の自車両の速度、交差点までの距離、黄信号時間、青矢信号時間に基づいて算出することができる。これにより、確実に交差点手前で自車両を停止させることができる。
制御部31は、例えば、運転者が操作する方向指示器からの信号に基づいて、交差点の手前で運転者が指示した進行方向と予め取得した進行方向とが一致するか否かを判定し(S27)、進行方向が一致する場合(S27でYES)、撮像画像に基づいて、停止線を検出したか否かを判定する(S28)。停止線を検出していない場合(S28でNO)、制御部31は、ステップS26以降の処理を続ける。
停止線を検出した場合(S28でYES)、制御部31は、停止線までの距離を算出し、停止線までの距離を補正して微調整制御で速度を制御し(S29)、車両を停止させ(S30)、自動速度制御モードを解除し、その旨を報知し(S31)、処理を終了する。これにより、交差点で右折する場合、危険走行領域を回避して、車両を停止線に確実に停止させることができる。
また、進行方向が一致しない場合(S27でNO)、制御部31は、ステップS31の処理を行う。これにより、自車両の交差点での進行方向に関して運転者の指示との相違がある場合、運転者による指示を優先させ、運転者に誤解を与えることを防止することができる。
右折用の青矢信号がない場合(S17でNO)、あるいは、交差点で右折しない場合(S19でNO)、制御部31は、直進用の危険走行領域を算出し(S32)、自車両が危険走行領域内に突入するか否かを判定する(S33)。自車両が危険走行領域内に突入する場合(S33でYES)、制御部31は、加速制御の可否を判定する(S34)。
加速制御の可否の判定は、自車両を加速しても安全であるか否かを確認するものである。例えば、自車両を加速した場合の速度が所定速度(例えば、制限速度、制限速度に若干の余裕を上乗せした速度など)以下であることを必須条件とし、自車両の前方に他の車両(前方車両)が存在しないこと、自車両の後方に後続車両が存在すること、及び交差点の交差道路の交通が閑散であることを選択条件とし、必須条件及び少なくとも1つの選択条件を満たす場合に加速可能と判定することができる。
なお、前方車両とは、例えば、自車両の速度と超音波センサ60などから前方車両との相対速度を所定の周期で検出し、検出した相対速度に基づいて、所定の速度まで加速した場合に衝突する可能性があると判断できる範囲内に存在している車両を対象とする。交通が閑散であるか否かは、交通量が少ない場合であり、例えば、通常、青時間1分間あたりの交通量が20〜30台の地点の道路で、1分間あたりの交通量が15台より少ない場合など、地点毎の飽和流率も考慮して閑散であると判断する。
規制速度は、地図データベース34から取得してもよく、光ビーコン10などの外部から取得してもよい。また、自車両周辺の他の車両の状況は、超音波センサ60から取得することができ、交差点の交通情報は、外部の光ビーコン10又は後述する他の通信装置70などから取得することができる。なお、加速制御するか減速制御するかは、判定条件Eにより求められた黄信号開始時点の車両の状態(Xy、Vy)が進入条件Lに近いか、あるいは停止条件Cに近いかにより決定することができる。
加速制御ができない場合(S34でNO)、制御部31は、自動速度制御モードに入る旨を報知する(S35)。この場合、運転者に対して車両が減速することを報知するが、制御部31による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して減速の指示を与え、運転者がその指示に従って減速するように構成することもできる。制御部31は、目標速度、段階的目標速度を算出する(S36)。目標速度は、自車両を緩やかな減速度で減速させて危険走行領域から回避(脱出)させるために到達させる速度である。目標速度Vsは、以下のとおり算出することができる。まず、自車両がジレンマ領域に突入する可能性があると判定された場合、式(4)、式(5)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsを目標速度とする。目標速度Vsは、図4の点Pにおける速度として求められ、式(8)で表される。
Figure 0005056174
また、自車両がオプション領域に突入する可能性があると判定された場合、上述の式(4)及び式(6)において、XyとVを変数として解いて算出された速度Vsの下限値を目標速度とする。目標速度Vsは、式(9)で表される。
段階的目標速度Vrは、自車両の現時点の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、速度変化が大きいため、緩やかな減速を行うことができなくなる事態を防ぐため、自車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過の都度、算出する。
段階的目標速度Vrの算出は、減速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて大きい場合、その差分をn分割した値ΔV=(V−Vs)/nだけ減速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V−Δv=V−(V−Vs)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、自車両は、後続車両に対して減速を感じさせないように緩やかな減速度で減速することができるので、後続車両は、急ブレーキを踏み込むような事態を防止でき、安全性が向上する。
制御部31は、現時点の速度Vを、算出した目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな減速度で減速制御を行い(S37)、制御周期を経過したか否かを判定し(S38)、制御周期を経過していない場合(S38でNO)、ステップS38の処理を続け、制御周期が経過するまで減速制御を続ける。これにより、後続車両に対し、自車両の減速を感じさせないようにすることができる。
制御周期を経過した場合(S38でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S39)。例えば、危険走行領域がジレンマ領域である場合には、自車両の速度が停止条件Cで示される停止限界速度に到達したか否かにより判定する。危険走行領域の境界に到達していない場合(S39でNO)、制御部31は、ステップS36以降の処理を続ける。これにより、減速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな減速制御を実現することができる。
危険走行領域の境界に到達した場合(S39でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、停止限界速度で速度維持を行う(S40)。これにより、危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、自車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。これにより、後続車両が自車両に追突し、あるいは自車両を無理に追い越すという危険を防止することができる。
制御部31は、黄信号開始時点から所定時間経過したか否かを判定する(S41)。この場合、所定時間は、運転者が黄信号に切り替わったのを見てブレーキを踏むまでの時間遅れであり、例えば、0.5秒程度の値である。所定時間経過していない場合(S41でNO)、制御部31は、ステップS40以降の処理を続け、所定時間経過まで一定の速度で走行を続ける。
所定時間経過した場合(S41でYES)、制御部31は、標準減速度で減速制御する(S42)。標準減速度gは、例えば、3m/s2 とすることができる。これにより、停止線で停止することができる車両の速度と停止線までの距離の限界を示す曲線上を推移して、自車両の速度を減速させることができる。
制御部31は、運転者が指示した進行方向と予め取得した進行方向とが一致するか否かを判定し(S43)、進行方向が一致する場合(S43でYES)、撮像画像に基づいて、停止線を検出したか否かを判定する(S44)。停止線を検出していない場合(S44でNO)、制御部31は、ステップS42以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S44でYES)、制御部31は、停止線までの距離を算出し、停止線までの距離を補正して微調整制御で速度を制御する(S45)。制御部31は、車両を停止させ(S46)、自動速度制御モードを解除し、その旨を報知し(S47)、処理を終了する。微調整制御は、時々刻々停止線の位置を検出して停止線までの距離を算出し、停止線までの距離に基づいて速度を徐々に変更するものである。これにより、車両の速度を微調整することができ、車両を停止線に確実に停止させることができる。
進行方向が一致しない場合(S43でNO)、制御部31は、ステップS47の処理を行う。これにより、自車両の交差点での進行方向に関して運転者の指示との相違がある場合、運転者による指示を優先させ、運転者に誤解を与えることを防止することができる。
加速制御ができる場合(S34でYES)、制御部31は、自動速度制御モードに入る旨を報知する(S48)。この場合、運転者に対して車両が加速することを報知するが、制御部31による自動速度制御モードに入らずに、運転者に対して加速の指示を与え、運転者がその指示に従って加速するように構成することもできる。制御部31は、目標速度、段階的目標速度を算出する(S49)。目標速度は、自車両を緩やかな加速度で加速させて危険走行領域から回避(脱出)させるために到達させる速度である。目標速度の算出は次のように行うことができる。例えば、自車両がジレンマ領域に突入する可能性があると判定された場合、進入条件Lを満たす進入限界速度を目標速度とする。また、自車両がオプション領域に突入する可能性があると判定された場合、停止条件Cを満たす停止限界速度を目標速度とする。
段階的目標速度Vrは、自車両の現時点の速度と目標速度Vsとの差が大きい場合、速度変化が大きいため、緩やかな加速を行うことができなくなる事態を防ぐため、自車両の現時点の速度Vと目標速度Vsとの間の暫定目標値であり、所定時間(制御周期、例えば、0.05〜1秒)経過の都度、算出する。
段階的目標速度Vrの算出は、加速を行う場合に、制御周期の間における速度変化を小さくするように求めることができる。例えば、現時点の速度Vが、目標速度Vsに比べて小さい場合、その差分をn分割した値ΔV=(Vs−V)/nだけ加速させ、速度変化が微小になるように目標速度Vsに追従させることができる。この場合、段階的目標速度Vrは、Vr=V+Δv=V+(Vs−V)/nとなる。このようにして、Δvを調整することにより、自車両の加速を感じさせないように緩やかな加速度で自車両を加速することができる。
制御部31は、現時点の速度Vを算出した目標速度Vs又は段階的目標速度Vrに近づけるべく緩やかな加速度で加速制御を行い(S50)、制御周期を経過したか否かを判定し(S51)、制御周期を経過していない場合(S51でNO)、ステップS51の処理を続け、制御周期が経過するまで加速制御を続ける。
制御周期を経過した場合(S51でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達したか否かを判定する(S52)。例えば、危険走行領域がジレンマ領域である場合には、自車両の速度が進入条件Lで示される進入限界速度に到達したか否かにより判定する。危険走行領域の境界に到達していない場合(S52でNO)、制御部31は、ステップS49以降の処理を続ける。これにより、加速制御の処理は、制御周期の経過の都度行われるため、目標速度Vs、段階的目標速度Vrは徐々に変化し、滑らかな加速制御を実現することができる。
危険走行領域の境界に到達した場合(S52でYES)、制御部31は、危険走行領域の境界に到達した時点の速度、すなわち、進入限界速度で速度維持を行う(S53)。これにより、危険走行領域の境界に到達した後は速度を一定にすることにより、自車両の状態を危険走行領域の境界に維持させる走行が可能となる。
制御部31は、運転者が指示した進行方向と予め取得した進行方向とが一致するか否かを判定し(S54)、進行方向が一致する場合(S54でYES)、撮像画像に基づいて、停止線を検出したか否かを判定する(S55)。
停止線を検出していない場合(S55でNO)、制御部31は、ステップS53以降の処理を続ける。停止線を検出した場合(S55でYES)、制御部31は、停止線までの距離を補正し、黄信号の終了時点を考慮して速度を微調整し(S56)、停止線を通過したか否かを判定する(S57)。停止線を通過していない場合(S57でNO)、制御部31は、ステップS56以降の処理を続ける。停止線を通過した場合(S57でYES)、制御部31は、自動速度制御モードを解除し、その旨報知し(S58)、処理を終了する。進行方向が一致しない場合(S54でNO)、制御部31は、ステップS58の処理を行う。これにより、自車両の交差点での進行方向に関して運転者の指示との相違がある場合、運転者による指示を優先させ、運転者に誤解を与えることを防止することができる。
制御部31は、先行右折車がある場合(S21でYES)、処理を終了する。自車両が交差点で右折する場合に、先行する右折車が存在するとき、運転者は右折車の後方に一旦停止して信号待ちをするので、危険走行領域に入る可能性は極めて少ない。このため、このような場合には、情報の出力を中止するか、あるいは、単に走行注意を促す情報を出力すれば足りる。これにより、交差点の交通状況に応じた情報を出力することができる。
制御部31は、危険走行領域内に突入しない場合(S23でNO)、危険走行領域内に突入しない場合(S33でNO)、処理を終了する。
図11は青矢信号で右折する場合に危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。図中、上段は自車両の停止線までの距離と速度との関係を示し、下段は停止線までの距離と信号変化との関係を示す。停止線から200mの位置を過ぎ、直進車両に対する黄信号開始時点近くまでは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。運転者は、交差点を右折しようとするため、予め車両の速度を低速度にしている。黄信号開始時点直前において、車載装置30は、自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。
自車両が危険走行領域にあると判定した場合、この地点からは車載装置30による自動速度制御が行われ、危険走行領域を回避するとともに、所要の減速度で減速するための回避減速制御領域となる。黄信号開始時点以降は、自車両を緩やかな減速度で減速制御する。ビデオカメラ40により停止線を検出した場合、それ以降は、停止線までの距離を補正しつつ微調整制御で速度を制御する微調整領域となる。これにより、図中曲線pで示すように、停止線で安全かつ確実に自車両を停止させることができる。また、図中、破線で表示した直線は、回避減速制御を行わない場合の走行軌跡である。破線で示した直線は、青矢信号になってから減速して停止を試みるが、停止線で停止することができない。なお、危険走行領域から脱出するための回避減速制御は、上述の例に限定されるものではなく、種々の方法を取り得る。
図12は直進する場合に危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。図中、上段は自車両の停止線までの距離と速度との関係を示し、下段は停止線までの距離と信号変化との関係を示す。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置30は、自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
自車両が危険走行領域にあると判定した場合、この地点からは車載装置30による自動速度制御が行われ、まず危険走行領域を回避するための制御を行う回避制御領域となる。危険走行領域がジレンマ領域である場合、車載装置30は、自車両の速度が停止条件Cを満たす停止限界速度(目標速度)に到達するように緩やかな減速度で減速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。
自動速度制御のうち、黄信号開始時点以降は、自車両を標準減速度で減速制御する標準減速度制御領域である。すなわち、車載装置30は、黄信号開始時点(黄信号開始位置)から標準減速度で減速制御を行う。ビデオカメラ40により停止線を検出した場合、それ以降は、停止線までの距離を補正しつつ微調整制御で速度を制御する微調整領域となる。これにより、図中曲線pで示すように、停止線で安全かつ確実に自車両を停止させることができる。なお、図中、破線で表示した直線m、曲線nは、回避制御を行わない場合の走行軌跡である。直線mは、交差点をそのまま走行した場合の走行軌跡であり、黄信号の終了時点で停止線に到達しておらず、赤信号で交差点を通過することになる。また、曲線nは、黄信号になってから標準減速度で停止を試みるが、停止線で停止することができない。
危険走行領域から脱出するための回避制御は、上述の例に限定されるものではなく、種々の方法を取り得る。例えば、回避制御領域において、現在速度から一定の減速度で減速し、黄信号開始時刻で停止条件Cを満たすようにすることもできる。
図13は直進する場合に危険走行領域を回避して加速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。図中、上段は自車両の停止線までの距離と速度との関係を示し、下段は停止線までの距離と信号変化との関係を示す。停止線から200mの位置までは、運転者による手動運転を行う手動運転領域である。停止線から200mの位置において、車載装置30は、自車両が危険走行領域に突入するか否かを判定して自動運転制御を行う。なお、自動運転開始タイミングは、これに限定されるものではない。
自車両が危険走行領域にあると判定した場合、この地点からは車載装置30は、自動速度制御を行い、危険走行領域を回避する制御を行う回避制御領域となる。危険走行領域がジレンマ領域である場合、車載装置30は、自車両の速度が進入条件Lを満たす進入限界速度(目標速度)に到達するように緩やかな加速度で加速制御を行う。目標速度に到達した後は、その速度を維持し、黄信号開始時点まで一定の速度制御を行う。
黄信号開始時点以降も、速度を維持し一定の速度で停止線を通過する。なお、車載装置30は、ビデオカメラ40により停止線を検出した時点以降は、停止線までの距離を補正しつつ速度を微調整し、自車両が黄信号の終了時点で停止線を進入(通過)するように制御する。これにより、図中曲線pで示すように、黄信号の終了時点で安全かつ確実に自車両を、停止線を通過させることができる。なお、破線で表示した直線m、曲線nは、回避制御を行わない場合の走行軌跡である。直線mは、交差点をそのまま走行した場合の走行軌跡であり、黄信号の終了時点で停止線に到達しておらず、赤信号で交差点を通過することになる。また、曲線nは、黄信号になってから標準減速度で停止を試みるが、停止線で停止することができない。
図14は本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。図14に示すように、路上装置21、22を設置せずに、光ビーコン10のみを設置することもできる。この場合には、光ビーコン10を、停止線の上流側200m〜1000m程度の位置に設けることができる。また、この場合も、光ビーコン10に代えて、電波ビーコン、DSRCなどを用いることもできる。
図15は本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。車両位置検出システムの概要の他の例を示す模式図である。図15に示すように、光ビーコン10、路上装置21、22に加えて、通信装置70を設ける。通信装置70は、例えば、無線LANなどの中域通信機能を備え、信号情報を広い範囲に送信する。なお、通信装置70は、信号制御、交通情報収集、交通情報提供などの処理を行う装置などを利用することも可能である。また、通信装置70は、中域通信に限らず、FM放送、携帯電話、インターネット通信等の広域通信機能を備えた装置でもよい。
以上説明したように、本発明にあっては、交差点での自車両の進行方向に依らず危険走行領域を回避して交差点で安全に車両を停止させ又は通過させるための情報を出力するとともに車両を安全に停止又は通過させることができる。
上述の実施の形態において、危険走行領域を回避するため停止条件C、進入条件Lを用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、余裕をもって危険走行領域の回避を行えるように、危険走行領域を予め広めに設定しておくこともできる。例えば、黄信号時間Tyを意図的に小さくすることができる。また、黄信号開始時点又は黄信号の終了時点を見かけ上変更することで、危険走行領域を広く設定することもできる。また、目標速度として、危険走行領域の停止限界速度又は進入限界速度(境界線の速度)そのものを使用する代わりに、これらを基準として、例えば、限界速度に所定の定数を乗じる等して算出した数値を用いることもできる。さらに、上記の危険走行領域は、対象とする速度の範囲を、予め決めておいても良いし、ジレンマ領域だけを対象としたり、オプション領域だけを対象としたりしても良い。
上述の実施の形態では、自車両が危険走行領域に突入する可能性があると判断してからは、停止線に停止するまで、あるいは、停止線を通過するまで、自動速度制御モードとしているが、危険走行領域の境界線に到達した時点で自動速度制御モードを終了し、後は運転者による手動運転に切り替えることも可能である。
上述の実施の形態において、制御周期に代えて、制御周期の間に車両が移動する距離に相当する距離を車両が移動する都度、処理を繰り返すこともできる。なお、上述の例では説明を簡単にするために記していないが、回避制御で一旦目標速度に達して危険走行領域から外れた後、何らかの原因で再び、危険走行領域に入った場合には、再度目標速度を設定して回避制御を行う必要がある。
開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明に係る車両運転支援システムの概要を示す模式図である。 車載装置の構成を示すブロック図である。 進行方向を示す道路標示の例を示す説明図である。 交差点を直進する場合の危険走行領域を例示する説明図である。 右折(又は左折)用の青矢信号がある交差点で右折(又は左折)する場合の危険走行領域を例示する説明図である。 車載装置の処理手順を示すフローチャートである。 車載装置の処理手順を示すフローチャートである。 車載装置の処理手順を示すフローチャートである。 車載装置の処理手順を示すフローチャートである。 車載装置の処理手順を示すフローチャートである。 青矢信号で右折する場合に危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。 直進する場合に危険走行領域を回避して減速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。 直進する場合に危険走行領域を回避して加速制御する場合の走行軌跡の一例を示す説明図である。 本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。 本発明に係る車両運転支援システムの概要の他の例を示す模式図である。
符号の説明
10 光ビーコン
21、22 路上装置
30 車載装置
31 制御部
32 通信部
33 測位部
34 地図データベース
35 表示部
36 画像処理部
37 操作部
38 記憶部
39 報知部
301 経路算出部
40 ビデオカメラ
50 車両制御部
60 超音波センサ
70 通信装置

Claims (13)

  1. 交差点に設置された信号機の信号情報を送信する送信装置と、該送信装置が送信した信号情報を受信して車両の安全運転を支援する運転支援装置とを備える車両運転支援システムにおいて、
    前記運転支援装置は、
    交差点の右折用又は左折用の信号の存否情報を取得する存否情報取得手段と、
    前記交差点での自車両の進行方向を取得する進行方向取得手段と、
    前記右折用又は左折用の信号の存否情報及び前記自車両の進行方向に応じて、自車両の危険走行状態を特定する特定手段と、
    前記自車両の速度情報を取得する速度取得手段と、
    前記自車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、
    前記自車両と交差点との距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、自車両が前記特定手段で特定した危険走行状態にあるか否かを判定する判定手段と、
    該判定手段によって前記危険走行状態にあると判定した場合、前記自車両を加減速するための情報を出力する出力手段と
    を備え
    前記特定手段は、
    右折用(又は左折用)の信号情報が存在する場合に、前記自車両が右折(又は左折)するときは、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点までに交差点に進入できる進入条件を満たさない状態であって、該進入条件近傍の状態を危険走行状態として特定するように構成してあることを特徴とする車両運転支援システム。
  2. 前記運転支援装置は、
    直進車両に対する黄信号開始時点での自車両前記交差点との距離、自車両の速度、黄信号時間及び右折のみ(又は左折のみ)可能な現示時間に基づいて、前記進入条件を算出する進入条件算出手段を備えることを特徴とする請求項に記載の車両運転支援システム。
  3. 前記運転支援装置は、
    地図情報を記憶する記憶手段と、
    目標地点の指定を受け付ける受付手段と、
    前記地図情報に基づいて、前記目標地点までの走行経路を算出する走行経路算出手段と
    を備え、
    前記進行方向取得手段は、
    前記走行経路算出手段で算出した走行経路に基づいて、前記交差点での自車両の進行方向を取得するように構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の車両運転支援システム。
  4. 前記運転支援装置は、
    車線毎の通行区分情報を記憶する記憶手段と、
    自車両の走行車線を検出する検出手段と
    を備え、
    前記進行方向取得手段は、
    前記通行区分情報及び前記検出手段で検出した走行車線に基づいて、前記交差点での自車両の進行方向を取得するように構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の車両運転支援システム。
  5. 前記運転支援装置は、
    前記出力手段で出力する情報に基づいて、自車両の加減速を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の車両運転支援システム。
  6. 前記運転支援装置は、
    右折用(又は左折用)の信号情報が存在する場合に、自車両が右折(又は左折)するときに、前記判定手段で前記危険走行状態にあると判定した場合、直進車両に対する黄信号開始時点以降、前記自車両を直進車両に対する黄信号時間及び右折のみ(又は左折のみ)可能な現示時間に基づいた速度に制御する速度制御手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の車両運転支援システム。
  7. 前記運転支援装置は、
    自車両の進行方向の指示を受け付ける方向指示受付手段と、
    該方向指示受付手段で受け付けた進行方向が前記進行方向取得手段で取得した進行方向と異なる場合、前記出力手段で出力する情報の中止又は変更を制御する出力制御手段と
    を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の車両運転支援システム。
  8. 前記運転支援装置は、
    自車両が走行する車線の道路標示を取得する道路標示取得手段と、
    該道路標示取得手段で取得した道路標示に基づく進行方向が前記進行方向取得手段で取得した進行方向と異なる場合、前記出力手段で出力する情報の中止又は変更を制御する出力制御手段と
    を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の車両運転支援システム。
  9. 前記運転支援装置は、
    先行する右折車(又は左折車)の存否を検知する検知手段と、
    右折車(又は左折車)が存在する場合、前記出力手段で出力する情報の中止又は変更を制御する出力制御手段と
    を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の車両運転支援システム。
  10. 前記出力手段で出力する情報に基づいて、自車両の加減速を報知する報知手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の車両運転支援システム。
  11. 交差点に設置された信号機の信号情報を受信して車両の安全運転を支援する運転支援装置において、
    交差点の右折用又は左折用の信号の存否情報を取得する存否情報取得手段と、
    前記交差点での自車両の進行方向を取得する進行方向取得手段と、
    前記右折用又は左折用の信号の存否情報及び前記自車両の進行方向に応じて、自車両の危険走行状態を特定する特定手段と、
    前記自車両の速度情報を取得する速度取得手段と、
    前記自車両と交差点との距離に関する情報を取得する距離情報取得手段と、
    前記自車両と交差点との距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、自車両が前記特定手段で特定した危険走行状態にあるか否かを判定する判定手段と、
    該判定手段によって前記危険走行状態にあると判定した場合、前記自車両を加減速するための情報を出力する出力手段と
    を備え
    前記特定手段は、
    右折用(又は左折用)の信号情報が存在する場合に、前記自車両が右折(又は左折)するときは、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点までに交差点に進入できる進入条件を満たさない状態であって、該進入条件近傍の状態を危険走行状態として特定するように構成してあることを特徴とする運転支援装置。
  12. 請求項11に記載の運転支援装置を搭載したことを特徴とする車両。
  13. 交差点に設置された信号機の信号情報を運転支援装置で受信して車両の安全運転を支援する車両運転支援方法において、
    前記運転支援装置は、
    交差点の右折用又は左折用の信号の存否情報を取得し、
    前記交差点での自車両の進行方向を取得し、
    前記右折用又は左折用の信号の存否情報及び前記自車両の進行方向に応じて、自車両の危険走行状態を特定し、
    前記自車両の速度情報を取得し、
    前記自車両と交差点との距離に関する情報を取得し、
    前記自車両と交差点との距離、自車両の速度及び信号情報に基づいて、特定した危険走行状態に前記自車両があるか否かを判定し、
    前記危険走行状態にあると判定した場合、前記自車両を加減速するための情報を出力し、
    さらに、右折用(又は左折用)の信号情報が存在する場合に、前記自車両が右折(又は左折)するときは、右折のみ(又は左折のみ)可能な現示の終了時点までに交差点に進入できる進入条件を満たさない状態であって、該進入条件近傍の状態を危険走行状態として特定することを特徴とする車両運転支援方法。
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