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JP5052764B2 - 造核剤含有メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

造核剤含有メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、低密度のポリエチレン樹脂に造核剤を均一に混合分散して得られるポリエチレン樹脂組成物であって、機械的物性及び透明性が向上し、かつ結晶化温度が上昇したポリエチレン樹脂組成物及びその製造方法に関する。
ポリエチレン樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合で得られる直鎖状低密度ポリエチレン等があり、その特性に応じてフィルム、シート及び各種容器等に成形加工されて広く使用されている。しかしながら、ポリエチレン樹脂には、市場からさらに高度な要求が出されており、これらの要求に応えるために種々の改良がなされている。この改良方法の一つとして、造核剤を添加することによる成形サイクル性の向上、剛性や耐衝撃性等の機械物性の向上、及び透明性や光沢等の外観の向上が挙げられる。
ポリエチレン樹脂の中で、一般に、高密度のポリエチレン樹脂は結晶化温度が高いため冷却したとき早く固化し成形サイクル性は比較的良好で、剛性も高いが、透明性は著しく悪い。一方、低密度のポリエチレン樹脂は、透明性は比較的良好であるが剛性が小さく、結晶化温度が低いため冷却時の固化が遅く成形サイクル性は悪い。
現在ではメタロセン触媒を使用して製造されたエチレンとα−オレフィンの共重合体、即ちメタロセン直鎖状低密度ポリエチレンが広く使用されている。メタロセン触媒は分子レベルでの重合制御が可能であるため、従来に比べ、低分子量成分が少なく組成分布の均一なものが得られ、高透明、低融点で、耐衝撃性に優れ、密度がさらに小さな直鎖状低密度ポリエチレンを製造できる。このメタロセン直鎖状低密度ポリエチレンは、透明性が高く低温シール性が良好なためフィルムに加工され食品容器等に広く用いられているが、結晶化温度が低いため成形サイクル性は悪い。特に、小さな容器で個数が多い場合などには、その成形サイクル性は生産性、即ちコストに大きな影響を及ぼす。
上述したように、低密度のポリエチレンは、透明性及び低温シール性が良好である点を生かしてフィルムに成形されて使用されることが多いが、造核剤を添加して成形サイクル性を改善する、即ち、結晶化温度を上昇させようとする場合には造核剤の分散不良及び/またはポリエチレン樹脂の劣化に由来するブツが発生する恐れがあるため、造核剤を使用することは困難とされていた。
特許文献1には、リン酸エステル金属塩系造核剤を平均粒径で10μm以下、特に好ましくは0.5μm以下にまで粉砕することにより、ポリオレフィン、特にポリプロピレン中での前記リン酸エステル金属塩系造核剤の分散性を改善している例が開示されている。
特許文献2には、密度が0.940g/cm以上の高密度ポリエチレンに造核剤を添加、混合分散することにより、その成形サイクル性が向上し、かつ剛性、衝撃強度及び透明性に優れたポリエチレン樹脂組成物が開示されているが、密度が0.940g/cm未満では造核剤を添加すると剛性が低下するため使用できないとされている。このように造核剤を添加することにより成形サイクル性を向上させようとする場合、低密度のポリエチレン樹脂においてはその効果が不十分で、かつ剛性等の機械的物性を犠牲にしなければならなかった。
特開2004−83852号公報 特開平6−248123号公報
低密度のポリエチレンに造核剤を添加して成形サイクル性を改善させようとする場合、特にフィルム成形品では、造核剤の分散不良及び/またはポリエチレン樹脂の劣化に由来するブツが発生する恐れがあるため、これまで事実上造核剤を使用できなかった。
また、前記特許文献1に記載されているように、分散性向上のために造核剤の粒子を0.5μm以下にまで小さくするには、特殊な粉砕機を使用して長時間にわたって大きなエネルギーを加えなければならないうえ、低密度のポリエチレンではその造核剤添加の効果が実際には確認されていない。
さらに、前記特許文献2に記載されているように、低密度のポリエチレン樹脂においては、造核剤を添加することにより剛性等の機械的物性を損なうことなく結晶化温度の上昇、即ち成形サイクル性を向上させるのは、困難とされていた。
本発明は、前記課題を解決することを鑑みてなされたものであり、特定のメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に造核剤を均一に混合分散して得られるメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物の製造方法であって、剛性等の機械的物性及び透明性を向上させ、かつ結晶化温度を上昇させることにより、成形サイクル性が著しく向上したメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物の製造方法を提供することを目的としている。
前記課題を解決するため本発明のメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物の製造方法は、容器となるキャビティ中で、
密度が0 . 9 0 0 〜 0 . 9 2 5 g / c m 3 で、メルトマスフローレイト( M F R ) が1〜 1 0 0 g / 1 0 分であるメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に、
リン酸エステル金属塩系造核剤、ソルビトール系造核剤及びカルボン酸金属塩系造核剤から選ばれた少なくとも1種の造核剤をその濃度が0 .
0 1 〜 0 . 5 重量%となるように添加した配合物を、
前記キャビティ中において回転する回転混合撹拌子によって前記メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と前記造核剤とを混合撹拌するに際して、
前記メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と前記造核剤とが、前記キャビティ中で混合撹拌されて均一分散状態を形成するまでの間、
前記メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の軟化温度以下で、
前記回転混合撹拌子の先端周速を2 0 m / s e c 以上2 0 0 m / s e c 以下と制御し、
前記キャビティ中の物質の流れを層流とすることによって、
前記造核剤添加前より剛性及び透明性が向上し、かつ結晶化温度が3 〜21℃上昇している
ことを特徴としている。
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、低密度のポリエチレン樹脂であっても剛性等の機械的物性及び透明性が向上し、かつ結晶化温度が高くなる、即ち成形サイクル性が著しく向上しているため、その成形加工において大幅な生産性向上が達成できる。
用途としては、透明性が向上しフィルム状にしてもブツがないことから、低密度のポリエチレンが好適に使用される分野、例えば、フィルムに加工して食品包材、医薬包材などに好適に利用される。
本実施形態に係るポリエチレン樹脂組成物及びその製造方法について説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではない。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、密度が0.900〜0.925g/cm3で、メルトマスフローレイト(MFR)が1〜100g/10分であるポリエチレン樹脂に、造核剤0.01〜0.5重量%を添加し、混合分散して得られるポリエチレン樹脂組成物であって、機械的特性及び透明性が向上し、かつ結晶化温度が造核剤添加前より3℃以上上昇したポリエチレン樹脂組成物及びその製造方法を見出した。
本発明に用いるポリエチレン樹脂は、密度が0.900〜0.925g/cm3でMFRが1〜100g/10分のポリエチレン樹脂を用いる。この範囲の密度のポリエチレン樹脂は、融点が低く低温シール性に優れているためフィルム成形に好適であるが、結晶化温度が低いため成形サイクル性は悪い。また、MFRについては、1g/10分未満では流動性が悪く、成形性に劣り、100g/10分を超えると機械特性が劣る。
また、本発明で用いるポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン及びメタロセン直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。特に、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレンでは、造核剤添加による結晶化温度上昇の効果が高い。
エチレンと共重合させるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3から18個までのものが挙げられる。
本発明で用いる造核剤としては、リン酸エステル金属塩系造核剤、ソルビトール系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤及びこれらの混合物等、造核剤として周知の一般的に使用されているものが挙げられる。
リン酸エステル金属塩系造核剤としては、例えば、ナトリウム ビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム 2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
ソルビトール系造核剤としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール等が挙げられる。
カルボン酸金属塩系造核剤としては、例えば、リチウムベンゾエート、ナトリウムベンゾエート、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム等が挙げられる。
造核剤の添加量は、本発明のポリエチレン樹脂組成物に対して0 . 0 1 〜 0 . 5 重量% とし、直接、ポリエチレン樹脂に添加してもよいし、前もって造核剤マスターバッチを製造した後、これをポリエチレン樹脂に添加してもよい。造核剤の濃度が0
. 0 1 重量% 未満では結晶化温度の上昇が不十分で、0 . 5 重量% を超えると結晶化温度の上昇が頭打ちとなってコストアップになるため好ましくない。
本発明のポリエチレン樹脂組成物には、必要に応じて他の添加剤を含有してもよい。この添加剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、リン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、硫黄系抗酸化剤、脂肪族有機酸金属塩等の周知の一般に用いられている添加剤が挙げられる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物には、必要に応じて、さらにカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤;ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、ポリリン酸のメラミン塩化合物、フッ素樹脂又は金属酸化物等の難燃剤;炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系、金属石けん系等の滑剤;重金属不活性剤;ハイドロタルサイト;有機カルボン酸;染料顔料等の着色剤;ポリオレフィンパウダー等の加工助剤;フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト等の珪酸系添加剤;炭酸カルシウム等の添加剤を使用することができる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、ブツが殆どなく、低温シール性と成形サイクル性が良好なため、主としてフィルムに成形して食品包材等に用いられる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、ポリエチレン樹脂に造核剤及び必要に応じて前記添加剤を加え、混合分散して製造される。また、前もってポリエチレン樹脂に造核剤及び必要に応じて前記添加剤を加えて混合分散することにより高濃度の造核剤マスターバッチを製造し、これをポリエチレン樹脂に加え、混合分散しても製造できる。
本発明で用いるポリエチレン樹脂の粒径は、平均で10μm以上が好ましく、さらに好ましくは100μm以上である。粒径が10μm未満ではポリエチレン樹脂に十分な遠心力がかからないため混合分散に時間を要するなど、処理時間が長くなる結果、ポリエチレン樹脂組成物の特性劣化を招く。粒径はレーザー回折式の粒度分布測定器などの測定機を用いるほか、顕微鏡写真などを利用して測定できる。
本発明のポリエチレン樹脂組成物を製造するには、ポリエチレン樹脂に造核剤を混合分散させる際、均一分散状態を形成するまでの間、ポリエチレン樹脂の軟化温度以下で混合撹拌することにより、そのポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断され低分子量化された後に再結合させることを利用する。
本発明者らは、ポリエチレン樹脂に造核剤を混合分散するに際して、ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断され低分子量化された後に再結合させる状態を作ることにより、従来に比べポリエチレン樹脂中に造核剤をより均一に分散させることができ、かつ特性劣化の抑制に効果的であることを見出した。
軟化温度以下の低温で短時間に均一分散状態を得るには、ポリエチレン樹脂を一時的に低分子量化することを利用する。キャビティ中でポリエチレン樹脂と造核剤とを混合撹拌する際に、一方向に回転する回転混合撹拌子がポリエチレン樹脂に与える物理的衝撃力、及びこの回転混合撹拌子が作る層流によってポリエチレン樹脂に与えられる遠心力等により、ポリエチレン樹脂の一部の化学結合が切断されることで、ポリエチレン樹脂の少なくとも一部が撹拌前よりも一時的に低分子量体化される。この低分子量体は、一時的に低分子量体化される前のポリエチレン樹脂単独よりもポリエチレン樹脂及び造核剤を容易に拡散させ、短時間に混合撹拌物を均一分散状態へ導くことに寄与することができる。短時間に均一分散状態を得ることができるので長時間の撹拌に伴う衝撃力及び/または摩擦熱による特性劣化を防止できる。
ポリエチレン樹脂の低分子量化、及び低分子量化された後のポリエチレン樹脂の再結合を判定するためには、一例としてESRスペクトルなどのラジカル種発生・消滅の有無の検出、赤外線吸収スペクトルや核磁気共鳴スペクトルによる構造の同一性の判定、分子量変化が所定値以内であるという判定など各判定手段を用いることができる他、高分子の緩和時間なども挙げられる。
また、本発明で得られたポリエチレン樹脂組成物のポリエチレン樹脂の分子量が、所望の変化量内、例えば20%以内であることを判定するためには、分子量を測定するゲルパーミエーションクロマトグラフィー、光散乱法、遠心分離法、粘度測定法などが挙げられる。
なお、本発明では得られたポリエチレン樹脂組成物のポリエチレン樹脂の構造、特に一次構造が、混合前のポリエチレン樹脂のそれと比較し、変化のないことを判定するためには、赤外線吸収スペクトルや核磁気共鳴スペクトルなどが用いられる。
前記各判定基準を用いれば、ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態を形成する等、当業者であれば製造方法を設計することができる。
また、回転混合撹拌子の先端部周速を20m/sec以上200m/sec以下と制御し、キャビティ内の混合撹拌物の流れを層流とするとポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態を得られやすいことを見出すことができた。なお、層流とは粉体撹拌を含む概念であり、キャビティとして、円筒形状の内部空間が用いられる場合には、混合物質が同心円状に移動し、径方向にはほとんど移動しない状態で定義され、その状態は目視により確認することができる。
また、キャビティとして、円筒形状を成す容器の内部空間が用いられると、ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態は得られやすいことも見出すことができた。
回転混合撹拌子は、羽根状の形状を有するとポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態は得られやすいことも見出すことができた。これら条件を多く合わせるほど、望ましくは全部、合わせることによりポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態は得られやすい。
回転混合撹拌子の先端部周速が200m/secを超えると摩擦による発熱が激しくなり、ポリエチレン樹脂を熱劣化させる原因となる場合がある。熱劣化は、一時的にポリエチレン樹脂の化学結合が切断されて低分子量化させられた際に切断部位の再結合能を低下させる。通常は切断されたポリエチレン樹脂は、撹拌エネルギーの低下に伴い、再結合するが、熱劣化はこの低分子量化させられたポリエチレン樹脂の結合を妨げる傾向にあるので、低分子量化させられたポリエチレン樹脂が結合できない場合が多くなり、結合できない低分子量化させられたポリエチレン樹脂はポリエチレン樹脂及び/または生成したポリエチレン樹脂組成物などを攻撃して結合し、形成されたポリエチレン樹脂組成物の特性を劣化させる場合がある。回転混合撹拌子の先端部周速が20m/sec未満であると層流撹拌が得られず、ポリエチレン樹脂に十分な衝撃力及び遠心力が伝達できず、一時的に低分子量化されないので、当該物質が均一に拡散していない分散不良となってしまう場合がある。
混合撹拌状態は、層流状態下で行われている。乱流である場合に比べ層流であると遠心力や回転羽根との衝撃力による剪断力等を効率よく用いることができ、一時的に低分子量化させられたポリエチレン樹脂を生成することに有利である。遠心力や剪断力を効率よく用いることができるので、羽根の周速を最小限に抑えることができ、摩擦熱等による特性劣化を防止することができる。同心円状撹拌である層流については目視で当業者が判定することができる。
なお、摩擦熱等による特性劣化を抑制するために容器の内部及び/または撹拌羽根の内部に水などの冷媒を通して冷却することも有効である。
ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態を形成できる混合分散装置の一例を以下、図面に基づいて説明する。図1A、図1Bには、本実施形態に係る混合分散装置100の断面図が示される。図1Aは後述の回転軸体14の重力方向に対して垂直方向である回転軸方向を縦方向とし、重力方向面で切断した縦方向断面図、図1Bは回転軸方向に対して垂直面を横方向とし、重力方向面の垂直面で切断した、図1AのX−X’横方向断面図である。
混合分散装置100は、容器となるキャビティ10を取り囲んで形成する内壁面部材32とその内部に形成されるキャビティ10とで構成され、その内部のキャビティ10に粉体樹脂粒子と添加物が混入され、混合撹拌される混合撹拌チャンバ12を備えている。
混合撹拌チャンバ12は内壁面部材32が円筒形状を有し、それに取り囲まれるキャビティ10も円筒形状の内部空間を形成している。
キャビティ10は、底面となる横方向の断面は真円形状である円筒形状であり、底面の直径は198mm、高さは162mmである円筒形状の内部空間である。
内壁面部材32はキャビティ10と同様に横方向の断面は真円形状であり、その半径は99mmである。内壁面部材32の厚さは5mmである。内壁面部材32は、材料を“DUSA−RESIST”を用いたものであり、そのキャビティ10側の面は平滑面である。
混合撹拌チャンバ12には、横方向において、中心軸に設けられる回転軸体14が貫通して設けられている。回転軸体14は、円柱形状であり、キャビティ10外に対してその内部の回転軸体14は太い形状を有するが、キャビティ10外、その内部それぞれについては一様な太さを有している。この回転軸体14は図示しない回転軸を駆動させる回転軸駆動手段により、横方向に対して左回りに回転させられる回転機構である。回転軸体14の横方向の直径は123mmであり、混合撹拌チャンバ12内の縦方向の長さは162mmである。その材料はSUS316である。
回転軸体14には、キャビティ10内部に混入された粉体樹脂粒子と添加物とを回転軸体14が回転することにより混合撹拌する回転羽根18a、18b、18c、18dが回転撹拌子として4箇所に取り付けられている。
回転羽根18a、18b、18c、18dは、その全てが回転軸体14に向かって細くなる扇形形状を表面30に有している。この扇形形状はその表面30であり、より具体的には、二等辺三角形が二つ側面方向から併合される形状に擬似される四角形の形状である。
扇形形状の表面30は回転軸体14に取り付けられる部分では殆ど面積を有さない状態となる。一方側面28は厚みを持っており、回転羽根で同一の厚さを有しているので、回転羽根18a、18b、18c、18dは、回転軸体14と側面28のほとんど厚みのみの線状の当接面で取り付けられている。表面30および表面の反対面の面積は500mmであり、側面28の厚さはシャフト側が10mmであり、先端が2mmの傾斜がつけられている。
回転羽根18a、18b、18c、18dは、その全ての体積は同様である。また、側面形状および側面面積、表面形状および表面面積はその全てが同様である。回転羽根18a、18b、18c、18dを構成する材料はステンレス(ステライト溶射)などが挙げられる。表面30および表面の反対面、側面の表面形状は平滑面である。
回転羽根18a、18b、18c、18dのうちいずれの2つ以上の回転羽根は、縦方向に対して一致する位置に設けられずずらされた位置関係となっている。回転羽根18a、18b、18c、18dがずらされる距離は隣の羽根にまで等間隔の65mmとされている。
回転羽根18a、18b、18c、18dは、回転軸体14に取り付けられる相対的な、縦方向に対しての位置関係は全てずらされた位置にあり、回転羽根18a、18b、18c、18dのうちいずれの2つ以上の回転羽根は、縦方向に対して一致する位置に設けられていない。回転羽根18a、18b、18c、18dがずらされる距離は隣の羽根にまで等間隔とされている。
回転羽根18a、18b、18c、18dは、回転軸体14に取り付けられる相対的な、横方向に対しての位置関係は角度を180°ずらされた正反対の位置関係にある。回転羽根18a、18bは同方向にあり、回転羽根18c、18dは回転羽根18a、18bと正反対の位置関係にある。それぞれ同方向にある回転羽根は略一致した位置に配置されている。
回転羽根18a、18b、18c、18dは、回転軸体14と取り付けられる角度が回転軸体14に対して縦方向、横方向からずらされた斜め方向の位置に設けられている。横方向に対して同方向である回転羽根18aと18b、回転羽根18cと18dとはそれぞれ回転軸体14と取り付けられる角度が一致し、正反対の位置関係にある羽根同士は角度を90°ずらされて取り付けられている。
回転羽根18a、18b、18c、18dは、その内壁面部材32に最も近い先端部26と内壁面部材32との間に間隙を有している。間隙の大きさは回転羽根18a、18b、18c、18dの全てにおいて1mmである。回転中もこの間隙の大きさは一様とされている。なお、図1A中、掻き取り羽根36はキャビティ10の底面に沿って配置される。掻き取り羽根36は回転羽根の一部で、キャビティ内の端に存在する材料を内側に掻き取る。
回転軸体14が回転することで、回転羽根18a、18b、18c、18dによりキャビティ内部に混入されたポリエチレン樹脂と造核剤34とが重力方向に垂直撹拌される(図1A)。この垂直撹拌は、層流の同心円状撹拌となる層流状態で撹拌される(図1B)。図1Bでは、ポリエチレン樹脂と造核剤34とが円周に沿って真円形状を形成するように層流撹拌されている。
混合撹拌チャンバ12は、回転軸体14の回転軸方向に対して垂直な側面壁に取り付けられ、これを通じてポリエチレン樹脂および/または造核剤がキャビティ10に混入されるホッパー部16を有している。
ホッパー部16は、円錐形状の壁面部材からなるホッパー壁面部材24とこのホッパー壁面部材24が形成するホッパー貫通穴22から構成される。
ホッパー貫通穴22は、ポリエチレン樹脂および/または造核剤が投入されるホッパー口24から壁面貫通穴20へ向かって円錐形状にしぼむ貫通穴形状を有している。
壁面貫通穴20は、混合撹拌チャンバ12の側面壁であって、重力方向と反対方向の壁を貫通させた壁面貫通穴20である。この壁面貫通穴20にホッパー壁面部材24が接合されることでホッパー部16は混合撹拌チャンバ12に取り付けられる。
ポリエチレン樹脂および/または造核剤は、外部からホッパー口24へと投入される。投入されたポリエチレン樹脂および/または造核剤は、ホッパー貫通穴22を経て、最終的に壁面貫通穴20を通じて、キャビティ10中に混入される。
上記では、前記混合分散装置は、キャビティ内の撹拌方向が重力方向である横型として説明したが、撹拌方向が重力方向に垂直である縦型でも同様に使用できる。
次に、前記混合分散装置を用いて、ポリエチレン樹脂と造核剤を混合撹拌し、ポリエチレン樹脂組成物を形成する方法について説明する。
ポリエチレン樹脂と造核剤34をホッパー口24から投入して、キャビティ10内部へと混入する。混入後、ポリエチレン樹脂の軟化温度以下に設定し、回転軸体14を回転させる。回転軸体14の回転周速は、回転羽根18a、18b、18c、18dの先端の周速が20m/sec〜200m/secとなるように制御し、図1Bに示される層流撹拌とする。所望の分散状態を形成した後、ポリエチレン樹脂組成物は取り出される。
なお、造核剤は高濃度の造核剤マスターバッチとしてポリエチレン樹脂に混合分散できるが、その造核剤マスターバッチについても、上述の製造方法及び製造装置を用いることにより好適に製造することができる。
以下に実施例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
「ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態の判定手段」
ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態となる装置を設計するために、以下のESR(Electron Spin Resonance)分析、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)分析、IR(赤外線吸収スペクトル)分析を用いて設計した装置が所望の状態を形成できるか判定し、前記実施形態に係る装置を設計した。
<ESRによるラジカルの検出>
撹拌中と撹拌停止直後で2点を液体窒素中に一度に投入し、十分冷却した後試料管に封入し、日本電子社製ESR、FA200を用い、温度77K、掃引磁場320±7.5mT、磁場変調周波数100kHz、磁場変調幅0.2mT、時定数0.1、マイクロ波出力1mWにて測定し、撹拌中と撹拌停止直後の2点のスペクトルを比較した。
<GPCによる分子量変化の検出>
撹拌する前と撹拌後のポリエチレン樹脂の2点を0.02wt%の溶液に調製し、TOSOH製カラム、model TSK−GEL GMHHR−H(S)HとRI検出器、を備えた(株)センシュー科学製GPC装置、model SSC−7100を用い、流量1mL/min、温度140℃にて測定した。得られたクロマトグラムを標準ポリスチレン換算し、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)について撹拌する前と撹拌後のポリエチレン樹脂の分子量を求め、比較した。
<赤外線吸収スペクトルによる構造変化の検出>
撹拌する前の樹脂高分子と撹拌後の樹脂高分子の2点をパーキンエルマー社製FT−IR分光光度計を用いてSpectrum One法にて測定し、撹拌中と撹拌停止直後の2点のスペクトルを比較した。
「均一分散性及び機械的物性の評価」
<透明性>
製造されたポリエチレン樹脂組成物の厚さ1mmの試料を(株)東洋精機製作所製、直読ヘーズメータを用いJIS−K−7136−1に準じ測定し、Haze値により評価した。
<均一分散性>
製造されたポリエチレン樹脂組成物から厚さ50μmのインフレーションフイルムを作成し、面積100cm中のフィルムに存在する0.1mm以上のブツ個数を測定する。このブツはポリエチレン樹脂組成物において、造核剤の分散不良及び/またはポリエチレン樹脂の劣化に由来するブツである。その結果について、次の基準で均一分散性を評価した。
○:10個未満であり、均一分散性が十分である。
△:10個〜30個未満であり、均一分散性が若干劣りフィルムなどの薄物には不適当な場合がある。
×: 30個以上であり、均一分散性が良好であるとは言えない。
<ヤング率>
(株)インテスコ社製、201B型引張試験機を用い引張速度50mm/minでJIS 7721に準じて測定した。
「成形サイクル性の評価」
<結晶化温度>
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、1mgの材料を30℃から180℃まで20℃/分で昇温し、同温度で1分間保持した後、20℃/分で降温していったときの発熱開始の温度を結晶化温度とし、これを成形サイクル性評価の指標とした。
参考例1」
<製造方法>
密度0.922g/cmでMFR値(メルトマスフローレイト):5g/10分(JIS K−7210に準拠)、軟化温度100.2℃(JIS
K−7206に準拠)の低密度ポリエチレン(宇部ポリエチレン社製:F522N、3mm径ペレット)99.9重量%、ナトリウム 2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート(旭電化工業社製:アデカスタブNA−11)0.1重量%を、混合装置として前記実施形態に係わる混合分散装置を用い、先端周速27m/secにて34秒間室温で撹拌し、低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。
<ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態の観測>
図1に示したESRスペクトルから、撹拌中と停止直後のラジカル種の有無によりポリエチレン樹脂の主鎖の切断と再結合が確認された。すなわち、撹拌中にラジカル種に基づく吸収スペクトルが確認されたことから、ポリエチレン樹脂の主鎖が切断し、一時的に低分子量化されていることがわかる。停止直後にラジカル種に基づく吸収スペクトルが消失していることから殆ど一時的に低分子量化されたポリエチレン樹脂は再結合していることがわかる。
表1に本撹拌物の撹拌前後におけるGPC分析による樹脂高分子の分子量変化(数平均分子量:Mn、重量平均分子量:Mw)を示す。それより本撹拌では、分子量変化は20%以内であり、ほとんど分子量が変化していないことが分かった。これにより殆ど一時的に低分子量化されたポリエチレン樹脂は再結合していることがわかる。
図2に示した赤外線吸収スペクトルは、吸収ピークが撹拌前後でほぼ一致しており、撹拌前後での樹脂高分子の構造上の変化が無いことが確認された。
以上、図1及び2、表1からポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態を形成していることがわかり、本実施例および実施形態に係る混合分散装置は、ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態を形成できる混合分散装置であることが判定できた。
<均一分散性、機械的物性向上効果及び結晶化温度上昇の評価>
参考例1で得られたポリエチレン樹脂組成物の結晶化温度、透明性、均一分散性及びヤング率を表2にまとめた。元の低密度ポリエチレンのHaze値;92.6、ヤング率;110.6MPa、結晶化温度;92.9℃と比較して、得られたポリエチレン樹脂組成物はHaze値が小さくなって、ヤング率及び結晶化温度が上昇し、かつブツが殆ど見られないことから、造核剤が極めて均一にポリエチレン樹脂中に分散した結果、剛性などの機械的物性及び透明性が向上し、結晶化温度が大幅に上昇したことがわかる。表2の物性データから本実施例の製造装置は、製造されるポリエチレン樹脂組成物に均一な分散性を与えることによりポリエチレン樹脂の特性を改善することができる製造装置であることがわかる。また、本実施例の製造装置は前述の通り、ポリエチレン樹脂の少なくとも一部の化学結合が切断されて低分子量化された後に再結合される状態を形成することがわかっているから、この状態を形成することによって、製造されたポリエチレン樹脂組成物に均一な分散性を与えることができることがわかる。
参考例2〜9」
<製造方法>
表2に示すように、低密度ポリエチレンは参考例1と同じものを用い、造核剤の種類と濃度、攪拌時間及び周速を変化させた。それ以外は、参考例1と同じ混合分散装置を用い、同様の製造方法により低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。その物性を表2に示した。
「比較例1」
用いる材料は参考例3と同様で、ブラベンダーミキサー(東洋精機製作所製ラボプラストミル)を用いて全材料を投入後125℃、5分間、回転数60rpmで溶融混練して低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。
「比較例2」
用いる材料は参考例5と同様で、製造方法は比較例1と同様の方法よって低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。
<均一分散性、機械的物性向上及び結晶化温度上昇の評価>
参考例2〜9で得られた低密度ポリエチレン樹脂組成物は、表2で示すように元の低密度ポリエチレン樹脂に比べ、ヤング率が上昇しHaze値が小さくなり、ブツが殆ど見られず結晶化温度が上昇していることから造核剤が極めて均一に分散した結果、剛性などの機械的物性及び透明性が向上し、結晶化温度が上昇したことがわかる。また、所定の範囲内で造核剤の量、攪拌時間、周速を変化させても均一分散性を確保していることがわかる。
一方、比較例1及び2で得られた低密度ポリエチレン樹脂組成物は、結晶化温度は幾分上昇しているものの、Haze値が大きくは改善されず、ヤング率はわずかな上昇に留まり、ブツが多いことから用いたポリエチレン樹脂の特性が劣化し、分散性も悪いことがわかる。
<造核剤マスターバッチの製造>
密度0.917g/cmでMFR値:5g/10分、軟化温度100.2℃の低密度ポリエチレン(三井化学社製:ミラソン11P、3mm径ペレット)95重量%にナトリウム 2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート (旭電化工業社製:アデカスタブNA―11)5重量%を加えて、混合装置として前記実施形態に係わる混合分散装置を用い、先端周速27m/secにて28秒間室温で撹拌し、アデカスタブNA―11の造核剤マスターバッチを得た。
同様の方法で造核剤の種類を変えることにより、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール(新日本理化社製:ゲルオールMD)及び4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩(大日本インキ化学工業社製:AL−PTBBA)の造核剤マスターバッチを製造した。
参考例10」
<製造方法>
上記で製造したアデカスタブNA―11の造核剤マスターバッチ2重量%を、密度0.919g/cm3でMFR値:2g/10分、軟化温度117℃の直鎖状低密度ポリエチレン(出光石油化学社製:IDEMITSU−LL 0234H、3mm径ペレット)98重量%に加え、混合装置として前記実施形態に係わる混合分散装置を用い、先端周速27m/secにて44秒間室温で撹拌し、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。その物性を表3に示した。
参考例11〜17
<製造方法>
表3に示すように、参考例10と同じ直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を用い、造核剤マスターバッチの種類と濃度、攪拌時間及び周速を変化させた。それ以外は、参考例10と同様の製造方法により直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。その物性を表3に示した。
「比較例3」
参考例16と同様の材料を用いて表3に示す条件で撹拌し、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。
「比較例4」
参考例11と同様の材料を用いて表3に示す条件で撹拌し、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。
<均一分散性、機械的物性向上効果及び結晶化温度上昇の評価>
参考例10〜17で得られた直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物は、表3で示すように元の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に比べ、ヤング率が上昇しHaze値が小さくなり、ブツが殆ど見られず結晶化温度が上昇しているが、比較例3及び4のように所定範囲外の周速や、所定以上の撹拌温度にすると用いたポリエチレン樹脂が劣化し造核剤の均一分散性が損なわれる結果、ブツが多く、透明性及び機械的物性の改善効果がないか小さいことがわかる。
「実施例18」
<製造方法>
前記で製造したアデカスタブNA―11の造核剤マスターバッチ2重量%を、密度0.905g/cm3、MFR値:4g/10分、軟化温度83℃のメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学社製:エボリューSP0540、2.5mm径ペレット)98重量%に加え、混合装置として前記実施形態に係わる混合分散装置を用い、先端周速27m/secにて22秒間室温で撹拌し、メタロセン直鎖状ポリエチレン樹脂組成物を得た。その物性を表4に示した。
「実施例19〜27」
<製造方法>
表4に示すように、実施例18と同じメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を用い、造核剤マスターバッチの種類と濃度、攪拌時間及び周速を変化させた。それ以外は、実施例18と同様の製造方法によりメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。その物性を表4に示した。
「比較例5」
実施例20と同様の材料を用いて表4に示す条件で撹拌し、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。
「比較例6〜8」
材料は表4に示す材料を用い、ブラベンダーミキサー(東洋精機製作所製ラボプラストミル)を用いて全材料を投入後125℃、5分間、回転数60rpmで溶融混練してメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物を得た。
<均一分散性、特性劣化の抑制効果及び結晶化温度上昇の評価>
実施例18〜27で得られたメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物は、表4で示すように元のメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂に比べ、ヤング率が上昇しHaze値が小さくなり、ブツが殆ど見られず結晶化温度が上昇しているが、比較例5のように所定範囲外の周速にした場合、または比較例6〜8のように従来の方法で溶融混練した場合は、用いたメタロセン直鎖状ポリエチレン樹脂への造核剤の均一分散性及び/または特性が損なわれる結果、ブツが多く、透明性及び機械的物性の改善効果がないか小さいことがわかる。
透明性が向上しフィルム状にしてもブツがないことから、低密度のポリエチレンが好適に使用される分野、例えば、フィルムに加工して食品包材、医薬包材などに好適に利用できる。
本実施例に係るESRスペクトルである。 本実施形態に係る混合分散装置の断面図である。 本実施形態に係る混合分散装置の断面図である。 本実施例に係る赤外線吸収スペクトルである。
符号の説明
10 キャビティ
12 混合撹拌チャンバ
14 回転軸体
16 ホッパー部
18a 回転羽根
18b 回転羽根
18c 回転羽根
18d 回転羽根
20 壁面貫通穴
22 ホッパー貫通穴
24 ホッパー口
26 先端部
28 側面
30 表面
32 内壁面部材
34 ポリエチレン樹脂と造核剤
36 掻き取り羽根
100 混合分散装置

Claims (1)

  1. 容器となるキャビティ中で、
    密度が0 . 9 0 0 〜 0 . 9 2 5 g / c m 3 で、メルトマスフローレイト( M F R ) が1〜 1 0 0 g / 1 0 分であるメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
    リン酸エステル金属塩系造核剤、ソルビトール系造核剤及びカルボン酸金属塩系造核剤から選ばれた少なくとも1種の造核剤をその濃度が0 .
    0 1 〜 0 . 5 重量%となるように添加した配合物を、
    前記キャビティ中において回転する回転混合撹拌子によって前記メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と前記造核剤とを混合撹拌するに際して、
    前記メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と前記造核剤とが、前記キャビティ中で混合撹拌されて均一分散状態を形成するまでの間、
    前記メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の軟化温度以下で、
    前記回転混合撹拌子の先端周速を2 0 m / s e c 以上2 0 0 m / s e c 以下と制御し、
    前記キャビティ中の物質の流れを層流とすることによって、
    前記造核剤添加前より剛性及び透明性が向上し、かつ結晶化温度が3 〜21℃上昇していることを特徴とするメタロセン直鎖状低密度ポリエチレン樹脂組成物の製造方法。
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