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JP5048282B2 - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は熱可塑性樹脂組成物の製造方法、特に膨潤性層状ケイ酸塩を熱可塑性樹脂中に良好に分散させることができ、剛性や靭性などの機械的特性を向上することができる熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂の機械的特性を向上させるために、層状ケイ酸塩を溶融した樹脂と混錬して分散させる、いわゆる溶融混錬法が一般的に行われている。
層状ケイ酸塩は樹脂との親和性に乏しく、樹脂マトリックス中に高分散させることは難しい。このため種々の工夫がなされており、例えば有機シラン化合物で表面処理した膨潤性層状ケイ酸塩粉末を熱可塑性樹脂と溶融混錬することが知られている(例えば特許文献1等)。
しかしながら、このようなシラン処理膨潤性層状ケイ酸塩粉末を溶融混錬しても、樹脂組成物中における分散性は十分とは言えず、さらなる改善が望まれていた。
特開2002−348414号公報
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的は層状ケイ酸塩を樹脂中に高度に分散可能であり、熱可塑性樹脂の機械的特性を改善することのできる熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討を行った結果、膨潤性層状ケイ酸塩を水中でシランカップリング剤により処理し、乾燥させずに含水状態のまま熱可塑性樹脂と溶融混錬することにより、膨潤性層状ケイ酸塩の分散性が向上し、機械的特性を改善できることを見出した。また、シランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩が水に加えて多価アルコールを含むことができることも判明し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、シランカップリング剤の脱水縮合反応が起こらない温度範囲で水中においてシランカップリング剤膨潤性層状ケイ酸塩を処理しその乾燥させずに含水状態のままのシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩を熱可塑性樹脂と溶融混錬することを特徴とする。
本発明の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の水含有率が20〜95質量%であることが好適である。
また、本発明の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩は多価アルコールを含むことができる
また、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の多価アルコール含有率は10〜30質量%であることが好適である。
また、本発明の方法において、シランカップリング剤による処理率が膨潤性層状ケイ酸塩の表面積の30〜100%であることが好適である。
また、シランカップリング剤が水溶性アミノシラン系カップリング剤であることが好適である。
また、熱可塑性樹脂樹脂がポリオレフィン系樹脂であることが好適である。
本発明によれば、分散性や剛性の改善された熱可塑性樹脂組成物が得られる。また、本発明の製造方法においては、シランカップリング剤処理の乾燥工程を経ずに溶融混錬に用いることが可能であるので、経済的に有利である。また、シランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩は、水に加えて多価アルコールも含有でき、水分を低減すれば粉末化も可能であり、ポリエステルやポリ乳酸などの水に弱い熱可塑性樹脂にも好適に使用できる。
本発明の製造方法においては、まず、水中で膨潤性層状ケイ酸塩にシランカップリング剤を接触させて表面処理する。シランカップリング剤は水中で加水分解され、膨潤性層状ケイ酸塩表面の反応性基(OH基)と水素結合等により吸着しその表面を被覆する。水中では膨潤性層状ケイ酸塩が単位層レベルにまで著しく膨潤することができるので、膨潤性層状ケイ酸塩のあらゆる表面においてシランカップリング剤が吸着可能となり、表面処理を均一且つ効率的に行うことができる。
本発明において用いる膨潤性層状ケイ酸塩は、水膨潤性のものであり、例えば、スメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族の粘土鉱物が好適に使用できる。これらは天然、合成であるを問わないが、そのアスペクト比が100以上の鱗片状のものが好ましい。合成粘土鉱物は高純度のものを得やすいという点で有利である。合成粘土鉱物としては、合成ナトリウムテトラシリシックマイカ、合成ナトリウムテニオライト等があるが、特にこれらに限定されるものではない。
シランカップリング剤は、一分子中に樹脂などの有機質と化学結合する有機官能基(ビニル基、アミノ基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基など)と、膨潤性層状ケイ酸塩などの無機質と化学結合する加水分解基(例えばアルコキシル基、ハロゲン等)とを有するシラン化合物であり、様々なシランカップリング剤が開発されている。
本発明においては、膨潤性層状ケイ酸塩が水膨潤性であり、水中で表面処理するので、水溶性シランカップリング剤が好適に使用でき、特に水溶性アミノシラン系カップリング剤が好適に使用できる。水溶性アミノシラン系カップリング剤としては、例えばN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
膨潤性層状ケイ酸塩のシランカップリング剤による表面処理は、水中で両者を接触させることにより行う。水中への添加順序は特に制限されないが、膨潤性層状ケイ酸塩を水中で膨潤させた後、シランカップリング剤を添加して表面処理を行うことが好ましい。シランカップリング剤は水に溶解してから添加してもよい。
処理温度は、シランカップリング剤の脱水縮合反応が起こらない温度範囲とすることができるが、通常10〜60℃、好ましくは20〜40℃である。
処理時間は原料の種類や濃度、処理温度などにより適宜設定可能であるが、通常10分〜5時間である。
なお、シランカップリング剤による処理の際には、水とともに、水に相溶性があり溶融混錬中に揮散し得るその他の溶媒、例えばメタノール、エタノールなどの低級アルコール、アセトンなどを特に問題のない限り併用することもできる。
膨潤性層状ケイ酸塩の水中における濃度は、10質量%以下、さらには5質量%以下が好適である。濃度が高すぎると膨潤が不十分となったり、攪拌が困難となって、シランカップリング剤による表面処理が不均一となることがある。また、濃度が低すぎると非効率的であるので、膨潤性層状ケイ酸塩の濃度は0.1質量%以上、さらには0.5質量%以上とすることが好ましい。
シランカップリング剤は、膨潤性層状ケイ酸塩の表面積の30〜100%、さらには40〜70%を被覆する量を使用することが好ましい。本発明においては、これをシランカップリング剤による処理率という。シランカップリング剤による処理率が低すぎると効果が十分に発揮されない。また、高くなりすぎてもそれに見合った効果の向上は期待できないので非経済的である。
なお、本発明において、膨潤性無機層状珪酸塩表面のシランカップリング剤による処理率は、以下のように規定される。
シランカップリング剤が吸着し得る膨潤性層状ケイ酸塩の表面は、交換性陽イオンと接する面である。本発明において膨潤性層状ケイ酸塩の表面積とは、このような面の総表面積をいう。
A(eq/g)の陽イオン交換容量(以下CEC)を持つ膨潤性層状ケイ酸塩が有する単位g当りの交換性陽イオン数(個/g)は、次の式1で表される[N:アボガドロ数6.02×1023]。
A×N ・・・(式1)
また、交換性陽イオン1個が占有する膨潤性層状ケイ酸塩の表面積は、その格子定数(a、b)及び一般式 X10(OH・F) における交換性陽イオン数xより下記式2で求められる。
(a×b)/2x ・・・(式2)
膨潤性層状ケイ酸塩結晶は交換性陽イオンを上下から挟んでいるので、交換性陽イオン1個が占有する膨潤性層状ケイ酸塩の表面積は実際には式2の2倍となり、下記式3で表される。
(a×b)/x ・・・(式3)
従って、CECがA(eq/g)の膨潤性層状ケイ酸塩1g当たりのシランカップリング剤が吸着し得る面の表面積Sは、次の式4で示される。
=A×N×(a×b)/x ・・・(式4)
シランカップリング剤の単位g当たりの被覆面積Sは公開されている。よって、膨潤性層状ケイ酸塩の表面積のシランカップリング剤による処理率Rは、処理に用いるシランカップリング剤の質量M(g)及び膨潤性層状ケイ酸塩の質量M(g)より下記式5で求められる。
R=(S×M)/(S×M)×100 ・・・(式5)
具体例を挙げると、CECが100meq/100gのNa型四ケイ素雲母が持つ単位g当りの交換性陽イオン数は、前記式1より次のように計算できる。
100meq/100g×6.02×1023
=1.0×10−3×6.02×1023=6.02×1020個/g
Na型四ケイ素雲母の格子定数はa=5.3Å、b=9.2Åであり、その一般式において交換性陽イオン数xは1であるので、交換性陽イオン1個が占めるNa型四ケイ素雲母の表面積は、前記式3より次のように計算できる。
5.3Å×9.2Å=4.88×10−19/個
従って、このNa型四ケイ素雲母1g当たりの表面積Sは、前記式4より次のように計算できる。
=6.02×1020個/g×4.88×10−19/個≒294m/g
信越化学(株)製のγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名KBM−903)はホームページ上に公開されている被覆面積は436m/gである。
よって、例えば上記Na型四ケイ素雲母37.5gを12.5gのKBM−903で処理したときの処理率Rは、前記式5より次のように算出できる。
(436m/g×12.5g)/(294m/g×37.5g)×100
=49.4%
このように、シランカップリング剤の使用量は、膨潤性層状ケイ酸塩の種類や量、あるいはシランカップリング剤の種類によって変化するが、通常、膨潤性層状ケイ酸塩1質量部に対して0.1〜1質量部、さらには0.2〜0.7質量部が使用できる。
このようにして膨潤性層状ケイ酸塩をシランカップリング剤で処理した後、乾燥させずに含水状態のままで熱可塑性樹脂と溶融する。これにより、膨潤性層状ケイ酸塩が熱可塑性樹脂中に微細に分散し、剛性や靭性の高い樹脂組成物を得ることができる。
シランカップリング剤処理後乾燥させると、熱可塑性樹脂への分散性が低く機械的特性が十分に改善されない。これは、乾燥時の加熱及び/又は脱水により、膨潤性層状ケイ酸塩表面とシランカップリング剤とが脱水縮合反応して強固に結合してしまい、層状ケイ酸塩の剥離や分散が阻害されるためと考えられる。
これに対して、本発明のシランカップリング剤による表面処理では、加水分解されたシランカップリング剤が膨潤性層状ケイ酸塩の表面に吸着している状態であり、このため、層状ケイ酸塩が樹脂との溶融混錬の過程で微細に分散しながらシランカップリング剤と脱水縮合反応するものと考えられる。また、膨潤性層状ケイ酸塩は水で膨潤している。よって、溶融混練時の加熱剪断による水の揮散とともに樹脂が侵入して層状ケイ酸塩の剥離が単位層レベルで進行し微細に分散し、それに伴って剥離した層状ケイ酸塩表面ではシランカップリング剤との反応を生じて強固な結合が形成され、その結果、層状ケイ酸塩の分散性や樹脂層状ケイ酸塩の機械的特性が向上するものと考えられる。
なお、膨潤性層状ケイ酸塩をシランカップリング剤で予め処理せずに、含水膨潤性層状ケイ酸塩とシランカップリング剤とを別々に熱可塑性樹脂に添加して溶融混錬しても、分散性や機械的特性の向上効果は十分でない。これは、別々に添加した場合には、膨潤性層状ケイ酸塩とシランカップリング剤とが均一に接触・反応することが困難であるためと考えられる。
本発明においては、シランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の含水率を20〜95質量%、さらには60〜90質量%とし、これを樹脂と溶融混錬することが好ましい。含水率が低くなると分散性が低下し、本発明の効果が十分に得られない。一方、含水率が高すぎると混錬中に水分の揮散が十分に行われず、樹脂の乾燥に時間を要することがある。
上記のような含水率範囲にあるシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩は、通常粘土状〜ペースト状を呈し、流動性はほとんどない。
また、溶融混錬に用いるシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩は、層間距離が大きいほど溶融混錬時の剥離が十分に進行するので、その層間距離が20Å以上であることが好ましい。層間距離(Å)はX線回折計(島津社製XRD−6100)を用いてプロファイルをとり、底面反射の距離(Å)により求めた。
シランカップリング剤処理後、水分を減量させる場合、その方法は特に制限されず、沈降、濾過、遠心、減圧、加圧など公知の方法を単独あるいは組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤処理により膨潤性層状ケイ酸塩は疎水的性質を帯びるので、フィルタープレスなどにより脱水可能である。加熱はシランカップリング剤の脱水縮合反応を生じるので、避ける方がよい。
また、溶融混錬に供するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩は、水に加えて、多価アルコールを含むことができる。多価アルコールは、例えば、水中でのシランカップリング剤の処理中や処理後に膨潤性層状ケイ酸塩に添加することができるが、本発明の効果に特に影響のない限り、添加方法はこれに限定されるものではない。
さらに、例えば、水と多価コールとを含有するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩から水の一部を除去すれば、シランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩を粉末化することができる。また、熱可塑性樹脂にはポリエステルやポリ乳酸など水に弱いものがあり、このような樹脂に対しては水の一部を除去して使用することが好適である。なお、このような粉末においても分散性や機械的性質の向上が認められるが、これはこの多価アルコールによって膨潤性層状ケイ酸塩の層間が広がっているためと考えられる。
なお、水を除去する場合には、脱水縮合反応を生じない低温の温度範囲で行うべきであり、例えば、20〜60℃、さらには20〜40℃で行うことが好ましい。また、凍結乾燥法などの加熱を伴わない方法も使用できる。
本発明に使用する多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、グリセロール等が挙げられる。
シランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩が多価アルコールを含む場合、多価アルコールの含有率は10〜30質量%であることが好適である。多価アルコール含有率が低くなると分散性が低下し、高すぎると樹脂組成物の剛性が低下し、本発明の効果が十分に得られない。
溶融混練に用いる装置は特に限定されず、例えば、汎用の二軸押出機、ディスク型押出機、ニーダー等を用いることができ、特殊な装置を用意する必要はない。溶融混錬温度は、熱可塑性樹脂の溶融温度以上であればよいが、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂では、通常100〜300℃、好ましくは150〜250℃である。
溶融混錬後、射出成形や押し出し成形など公知の方法により成形して樹脂組成物を得ることができる。また、混錬と成形を同時にあるいは連続して行うこともできる。樹脂組成物中に水分が残存している場合には、乾燥を行なうことができ、必要に応じて加熱してもよい。通常は溶融混錬中に水分は揮散するので、この場合は乾燥工程を省略することができる。
熱可塑性樹脂に対するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の配合比率は特に制限されないが、固形分として0.1〜100重量%、好ましくは1〜20重量%である。少なすぎると効果が十分発揮されず、過剰に配合すると層状ケイ酸塩の分散が不十分となったり、作業性が低下したり、添加に見合った効果が得られないことがある。
熱可塑性樹脂としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフェイド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド、塩素化ポリエチレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどが挙げられるが、好ましくはポリオレフィン系熱可塑性樹脂である。なお、これらは単独でもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、樹脂とシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩との相溶性を向上させるために酸変性樹脂を併用してもよい。本発明の樹脂組成物においては、酸変性樹脂が組成物中0.01〜20重量%とすることが好ましい。
酸変性樹脂とは、ベース樹脂を酸で変性してなる樹脂であり、このようなベース樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン酢酸−アクリル酸エチル共重合樹脂、ポリプロピレンなどである。
これらの中でもポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が好適である。酸変性ポリオレフィン樹脂中の主鎖となるポリオレフィンの分子量は、通常10×10〜100×10であることが好ましく、20×10〜80×10であることがより好ましい。これらのポリオレフィン樹脂を変性する酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、およびメタクリル酸などのカルボキシル基を含有する低分子量有機酸、スルホ基を含有する低分子量有機スルホン酸、ホスホン酸などのホスホ基を含有する低分子量有機酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上で変性したものを用いることができる。酸変性樹脂における酸付加量としては、酸変性樹脂中通常0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%である。
更に、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、顔料や染料、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、および帯電防止剤等の添加剤を添加することができる。
本発明の樹脂組成物は、ペレット、フィルム、シート、エンジニアリングプラスティックなど、用途に応じて種々の形態に成形できる。
以下、具体例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 表面処理膨潤性層状ケイ酸塩(含水)を用いたPP溶融混錬
膨潤性層状ケイ酸塩(Na四ケイ素雲母:トピー工業(株)NTS−5)37.5gを、室温にて3質量%濃度で水に膨潤させ、懸濁液を得た。
シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学(株)KBM−903)12.5gを水で3倍希釈し、1時間室温で静置して十分に加水分解させ、シランカップリング剤水溶液を得た。
層状ケイ酸塩懸濁液をスリーワンモーターで攪拌しながら、シランカップリング剤水溶液を添加し、さらに室温で3時間攪拌した。その後、懸濁液を吸引濾過により水分含量40質量%にまで絞り、シランカップリング剤で処理された膨潤性層状ケイ酸塩の含水ケーキ84gを得た。
これを、加圧ニーダーで溶融しているポリプロピレン[PPで示す]((株)サンアロマー、PM870A)865kgに投入し、195℃で溶融混錬後、室温にまで放冷し、樹脂組成物を得た。これをペレット状に砕き、射出成形により実施例1の試験片を作製した。具体的には、油圧式射出成形機(型締圧80T)により成形温度200℃、金型温度40℃、射出時間10sec、冷却時間25secの条件下でJIS K7139に基づいて多目的試験片金型を用いて試験片を射出成形にて作製し、試験に用いた。
実施例2 表面処理膨潤性層状ケイ酸塩(含多価アルコール)を用いたPP溶融混錬
実施例1と同様にして得た含水ケーキ84gに、80℃に加温して溶かした分子量1000のポリエチレングリコール(ライオン(株)PEG#1000)10gを加え十分に混ぜた後、60℃に設定した送風乾燥機中で24時間置いて水分を蒸発させた。
この乾燥物をコーヒーミルで粉砕し、得られた粉体60gを二軸押出機で溶融しているポリプロピレン((株)サンアロマー、PM870A)878gに投入し、195℃で溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
実施例3 表面処理膨潤性層状ケイ酸塩(含水)を用いたPC溶融混錬
実施例1と同様にして得られた含水ケーキ84gを、加圧ニーダーで溶融しているポリカーボネート[PCで示す](帝人化成(株)、パンライトL−1250)865kgに投入し、270℃で溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例1 表面処理膨潤性層状ケイ酸塩(乾燥粉末)を用いたPP混錬
実施例1と同様にして得られた含水ケーキの水分をさらに絞り、120℃で乾燥、粉砕して、シランカップリング剤で処理された膨潤性層状ケイ酸塩の乾燥粉末を得た。
この乾燥粉末を樹脂に投入して溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例2 膨潤性層状ケイ酸塩(含水)を用いたPP混錬
膨潤性層状ケイ酸塩(Na四ケイ素雲母:トピー工業(株)NTS−5)50gを室温にて3質量%濃度で水に膨潤させ、懸濁液を得た。懸濁液を吸引濾過により水分含量40質量%にまで絞り、膨潤性層状ケイ酸塩の含水ケーキを得た。
この含水ケーキを樹脂に投入して溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例3 膨潤性層状ケイ酸塩(含水)とカップリング剤とを別々に用いたPP混錬
膨潤性層状ケイ酸塩(Na四ケイ素雲母:トピー工業(株)NTS−5)37.5gを室温にて3質量%濃度で水に膨潤させ、懸濁液を得た。懸濁液を吸引濾過により水分含量40質量%にまで絞り、膨潤性層状ケイ酸塩の含水ケーキを得た。
シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリメトキシシラン:信越化学(株)KBM−903)12.5gに水9gを添加し、1時間室温で静置して十分に加水分解させて、シランカップリング剤水溶液を得た。
上記含水ケーキとシランカップリング剤水溶液とを別々に樹脂に投入して溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例4 PP樹脂のみによる溶融混錬
実施例1において、膨潤性層状ケイ酸塩、シランカップリング剤、水は投入せずにポリプロピレンのみを溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例5 表面処理膨潤性層状ケイ酸塩(乾燥粉末)を用いたPC溶融混錬
比較例1と同様にして得られたシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の乾燥粉末50gを、加圧ニーダーで溶融しているポリカーボネート865gに投入し、270℃で溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
比較例6 PC樹脂のみによる溶融混錬
実施例3において、膨潤性層状ケイ酸塩、シランカップリング剤、水は投入せずにポリカーボネートのみを溶融混錬し、実施例1と同様にして試験片を得た。
試験例1 溶融混錬時における膨潤性層状ケイ酸塩の状態
前記のようにして得られた試験片について、評価試験を行った。結果を表1〜2に示す。なお、試験方法は次の通りである。
(灰分)
組成物中に含まれる灰分(%)をJIS K 6228に従って測定した。
(剛性)
曲げ弾性率(MPa)をJIS K7171に従って測定した。
(分散性)
厚さ1mmに調製した試験片を光に透かして目視により層状ケイ酸塩の分散性を下記の基準で評価した。
○:凝集なく均質
△:部分的に凝集が見られる
×:凝集が確認できる
(IZOD衝撃強さ)
IZOD衝撃強さ(kJ/m)をJIS K 7110に従って測定した。
表1〜2のように、シランカップリング剤で処理した膨潤性層状ケイ酸塩を含水状態のまま熱可塑性樹脂に添加して溶融混錬した樹脂組成物(実施例1、実施例3)では、乾燥状態で添加混錬した樹脂組成物(比較例1、比較例5)に比べて分散性に優れ、剛性及び靭性が向上した。
一方、含水状態の膨潤性層状ケイ酸塩であっても、シランカップリング剤で処理していない場合(比較例2)や、シランカップリング剤と別々に投入した場合(比較例3)には、分散性や剛性、靭性は実施例1や比較例1よりも劣っていた。
また、シランカップリング剤処理した膨潤性層状ケイ酸塩に含まれる水を多価アルコールに置換した場合(実施例2)も、高い分散性・剛性・靭性を示した。なお、膨潤性層状ケイ酸塩と、多価アルコールと、シランカップリング剤とを別々に熱可塑性樹脂に添加して溶融混錬した場合には、実施例2よりも効果は劣っていた。
このような傾向は、何れの熱可塑性樹脂においても同様に認められた。
以上のことから、膨潤性層状ケイ酸塩をシランカップリング剤で予め処理し、処理された膨潤性層状ケイ酸塩を乾燥させずに含水状態のままで熱可塑性樹脂と溶融混錬することが好適であることが理解される。また、水を多価アルコールで置換することもできる。
また、これらの結果から、樹脂に投入する膨潤性層状ケイ酸塩の層間距離は20Å以上であることが好ましいことも示唆された。
Figure 0005048282
Figure 0005048282
試験例2 シランカップリング剤処理率
実施例1において、膨潤性層状ケイ酸塩とシランカップリング剤の量を変えて同様に試験片を作製し、試験を行った。
表3からわかるように、膨潤性層状ケイ酸塩に対するシランカップリング剤量が少なく処理率が小さいと十分な効果が得られない。また、シランカップリング剤を過剰に使用しても効果の顕著な向上は認められない。
以上のことから、シランカップリング剤による処理率は膨潤性無機層状珪酸塩の表面積の30〜100%、さらには40〜70%であることが好適である。
Figure 0005048282
試験例3 含水率
実施例1において、含水ケーキの含水率を変えて同様に試験片を作製し、試験を行った。
表4からわかるように、含水率が低いと十分な効果が得られない。また、含水率が高すぎると、分散が不十分となり、また、得られた樹脂組成物の乾燥にも時間がかかる。
以上のことから、含水率は20〜95質量%、さらには60〜90質量%とすることが好適である。
Figure 0005048282
試験例4 多価アルコール含有率
実施例2において、含水ケーキに添加する多価アルコール量を変えて同様に試験片を作製し、試験を行った。
表5からわかるように、多価アルコール含有率が低いと十分な効果が得られない。また、多価アルコール含有率が高すぎると、剛性が低下してしまう。
以上のことから、シランカップリング剤処理膨潤性無機層状珪酸塩の多価アルコール含有率は10〜30質量%、さらには15〜20質量%とすることが好適である。
Figure 0005048282

Claims (8)

  1. シランカップリング剤の脱水縮合反応が起こらない温度範囲で水中においてシランカップリング剤膨潤性層状ケイ酸塩を処理しその乾燥させずに含水状態のままのシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩を熱可塑性樹脂と溶融混錬することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  2. 請求項1記載の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の水含有率が20〜95質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩が多価アルコールを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  4. 請求項3記載の方法において、熱可塑性樹脂と溶融混錬するシランカップリング剤処理膨潤性層状ケイ酸塩の多価アルコール含有率が10〜30質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  5. 請求項1〜の何れかに記載の方法において、シランカップリング剤による処理率が膨潤性層状ケイ酸塩の表面積の30〜100%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜の何れかに記載の方法において、シランカップリング剤が水溶性アミノシラン系カップリング剤であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜の何れかに記載の方法において、熱可塑性樹脂樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の方法において、膨潤性層状ケイ酸塩が合成マイカ族粘土鉱物であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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