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JP5046079B2 - 難燃性ポリ乳酸樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリ乳酸に難燃性を付与した、難燃性ポリ乳酸樹脂組成物に関する。
ポリエチレン、ポリプロピレン等の従来の汎用プラスチック類は、原料として化石燃料である石油を使用しており、焼却処分された場合には大気中の二酸化炭素を増大させる。このため、石油資源の枯渇や地球温暖化という問題を生じている。
このため、サトウキビ等のバイオマスから製造可能なポリ乳酸が注目を集めている。ポリ乳酸は、サトウキビ等の植物が光合成によって大気中の二酸化炭素を取り込んだ結果としてのでんぷん等をその原料としており、土壌中において微生物によって分解され、炭酸ガスや水となり大気に戻る。このため、大気中の二酸化炭素の増加にはつながらず、持続可能な循環型の社会の構築のためには、極めて好都合な材料である。しかも、ポリ乳酸は比較的安価であり、機械的強度が大きく、射出成形が可能で、透明性にも優れているため、成形品を製造するための生分解性プラスチックとして広く使用されている。
また、ポリ乳酸の欠点である脆さを克服するため、軟質系のポリブチレンサクシネート等の生分解性プラスチックを可塑剤としてブレンドし、耐衝撃性を向上させることも行われている。さらには、こうしたポリ乳酸樹脂組成物に、多官能イソシアネート化合物や多価フェノール化合物を架橋させて、柔軟性、耐衝撃性及び成形性を改良する技術が開発されている(特許文献1)。
しかし、ポリ乳酸の難燃化の技術については、未だに解決されない多くの問題が存在している。従来の汎用プラスチックにおいては、難燃化剤としてアンチモン塩化物やデカンブロマイド等の臭素化合物が用いられており、これらの難燃化剤を汎用プラスチックに少量添加するだけで、優れた難燃効果が得られる。しかしながら、ポリ乳酸は環境への配慮から選択される生分解性プラスチックであり、こうした有害物質を混入させたのでは、その環境適合性の材料としての性質を損ねてしまうことになる。また、これらの難燃化剤の使用は、近年、使用規制の対象となっており(EC95条に基づくRoHS指令等)、これらの難燃剤に替わる安全性に優れた難燃剤が求められている。
こうした安全性について考慮した難燃剤として、汎用プラスチックにおいては、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムからなる難燃剤が用いられている。さらに、生分解性プラスチックに、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを難燃剤として添加する技術も提案されている(たとえば、特許文献2参照。)。これらの難燃剤は、毒性の点では安全性が高い。
また、ポリ乳酸用の難燃剤も提案されている。例えば特許文献3には、ポリ乳酸を含む各種樹脂とシリコーン系難燃剤との組み合わせが開示されている。さらには、特許文献4には尿素、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム及びグアニジンがポリ乳酸系樹脂の難燃剤として有効であることが示されている。
特開2004−346241号公報 特開平8−252823号公報 特開2000−319532号公報 特開2004−27079号公報
しかし、上記特許文献1、2に記載されている水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムからなる難燃剤は、プラスチックに対してかなり多量に添加しないと、充分な難燃効果が得られない。このため、汎用性プラスチックに比べて脆くて耐衝撃性に劣るポリ乳酸に水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを難燃剤として添加した場合、さらに脆さが増し、耐衝撃性に劣るという問題が生ずる。また、成形時には流動性に欠けるため混練が困難となり、クラックが入り易くて成形が困難となる等の問題もある。そして、このことが、ポリ乳酸をエンジニアリングプラスチックとして汎用的に使用するための障害となっており、ポリ乳酸に適した難燃化剤の開発が希求されている。さらには、成形時にこれらの水酸化物は水を発生し、これによってポリ乳酸が加水分解をされて劣化するおそれがある。
また、上記特許文献3に記載されているポリ乳酸用の難燃化剤は、ポリ乳酸樹脂組成物の溶液中でシリコーン系難燃剤をゾルゲル法で作りつつ相溶させるという方法であるため、一般の難燃剤のように単なる混練法に比べて、極めて手間がかかり、製造コストが高騰化する。
さらに、上記特許文献4に記載されているポリ乳酸用の難燃化剤は、難燃性については効果があるが、耐衝撃性や可撓性については考慮されておらず、単なるポリ乳酸組成物に混練しただけでは、脆さが増し、耐衝撃性や可撓性に劣るという問題が生ずる。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、製造及び成形が容易であり、耐衝撃性及び可撓性に優れた難燃性ポリ乳酸樹脂組成物を提供することを解決すべき課題としている。
発明者らは、柔軟性、耐衝撃性及び成形性に優れたポリ乳酸系の樹脂組成物として、多官能イソシアネート化合物によってポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックとが架橋されたポリ乳酸樹脂組成物を選択し、これに難燃化剤を添加することを検討した。ところが、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを難燃剤として添加した場合には、難燃性を発現させるのに相当量(樹脂に対して50重量%以上)を添加するため、難燃剤自身が凝集して押出機の中で詰まってしまい成形不可能となってしまった。水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの添加量を減らせば成形は可能となるが、難燃効果が不十分となった。これに対し、難燃化剤としてポリリン酸アンモニウムを用いたところ、予想に反し、耐衝撃性や可撓性を低下させるどころか、かえって向上させるという驚くべき事実を発見し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸と、1分子中に複数のイソシアナート基を有する多官能イソシアナート化合物と、該イソシアナート基と化学結合可能な官能基を有する軟質生分解性プラスチックと、ポリリン酸アンモニウムとが混合されており、
該ポリ乳酸と該軟質生分解性プラスチックとの混合比率は質量比で95:5〜20:80であり、該ポリ乳酸と該軟質生分解性プラスチックの合計とポリリン酸アンモニウムとの混合比率は質量比で96:4〜80:20であることを特徴とする。
本発明の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物では、ポリ乳酸と多官能イソシアナート化合物と軟質生分解性プラスチックとが混合されているため、成形時に加熱されてポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックとが多官能イソシアナート化合物によって架橋され、互いの相分離が抑制される。その結果、異なる相間の界面での剥離現象が抑制され、耐衝撃性が改善される。
また、難燃剤としてポリリン酸アンモニウムが混合されているため、難燃性が発揮される。また、ポリリン酸アンモニウムの混合により、耐衝撃性が飛躍的に向上し、可撓性も向上する。従来の技術常識に反する耐衝撃性及び可撓性の向上の原因については必ずしも明確ではないが、多官能イソシアナート化合物による架橋効果によって衝撃性等の機械的強度が増強されたのに加え、ポリリン酸アンモニウムの粉末が均一に分散しているため、応力がポリリン酸アンモニウムの微粉末に均等に加わり、応力の分散がはかられているためであると推察される。
ポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックの合計とポリリン酸アンモニウムとの混合比率は質量比で96:4〜80:20であることが要件とされる。これよりもポリリン酸アンモニウムの含有量が少ないと、難燃効果が不充分となるおそれがある。また、これよりもポリリン酸アンモニウムの含有量が多いと、ポリリン酸アンモニウム同士が凝集して大きな2次粒子を形成し、耐衝撃性及び可撓性が低下する。
また、ポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックとの混合比は、質量比で95:5〜20:80の範囲であることが要件とされる。ポリ乳酸が95重量%より多いと耐衝撃性の改善が困難になり、反対に20重量% より少ないとポリ乳酸の特徴である高剛性が損なわれる。特に好ましいのは85:15〜70:30 の範囲である。
また、本発明において、イソシアナート基と化学結合可能な官能基を有する軟質生分解性プラスチックとは、土壌中で微生物により生分解可能な全てのエラストマーのうち、水酸基やカルボン酸基等のイソシアナート基と化学結合可能な官能基を有するもの全てを意味する。具体的には、澱粉、酢酸セルロース、(キトサン/セルロース/澱粉)重合系等の天然高分子由来の軟質生分解性プラスチックや、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)、ポリビニルアルコール等の合成高分子系の軟質生分解性プラスチックや、ポリ( ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)等の微生物産生系の軟質生分解性プラスチックが挙げられる。また、これらを混合して用いることもできる。
また、ポリ乳酸は、使用者が自ら合成してもよいが、入手のし易さから市販されているものを用いることも可能である。具体的には、Cargill−DOW社製のNatu re Works(登録商標) 、トヨタ自動車(株)製のU’z(登録商標)、(UCC 社製のTONE(登録商標) 、島津製作所( 株)製のラクティ(登録商標) 、ユニチカ( 株)製のテラマック(登録商標) 、三井化学(株)製のレイシア、カネボウ合繊社製ラクトロン(登録商標) 、三菱樹脂社製のエコロージュ(登録商標)、クラレ(株)社製のプラスターチ(登録商標)、東セロ(株)社製のパルグリーン(登録商標)等が挙げられる。
本発明における多官能イソシアナート化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、3−イソシアナートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート、2,6−ジイソシアナートヘキサン酸メチルエステル、2−イソシアナートエチル−2,6−ジイソシアナートカプロエート、3−イソシアナートプロピル−2,6−ジイソシアナートカプロエート等の脂肪族イソシアナート類、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナートと2,6−トリレンジイソシアナートとの混合イソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンイソシアナート、水素化ジェフェニルメタンジイソシアナート、ジフェニルメチルメタンジイソシアナート、1,3−フェニレンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート等の芳香族イソシアナート類、トリメチロールプロパンとトルイレンジイソシアナートとのアダクト体、トリメチロールプロパンと1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートとのアダクト体、等のトリイソシアナート類が挙げられる。これらの中の1種もしくは2種以上を用いることができる。
上記の多官能イソシアナートの中から、目的とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物の特性に応じて、適宜選択することができる。例えば、耐衝撃性に優れた難燃性ポリ乳酸樹脂組成物を目的とする場合には、電子吸引性基である芳香環がイソシアナートに隣接した構造の多官能イソシアナートを選択する。これにより、架橋部分の剛性が強化されるからである。また、生分解性に優れた難燃性ポリ乳酸樹脂組成物を目的とする場合には、微生物によって分解がし易い、芳香環を含有しない脂肪族系の多官能イソシアナート化合物を選択する。
また、1分子中に3つのイソシアナート基を有する2−イソシアナートエチル−2,6−ジイソシアナートカプロエートも好ましい。この多官能イソシアナートは分子中に3つの官能基を有するため、ポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックとの共鎖延長を生じる可能性が高くなり、架橋による機械的強度の向上の効果が高くなるからである。
多官能イソシアナート化合物は、ポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックの合計に対して0.1〜2.0重量% 含まれていることが好ましい。多官能イソシアナート化合物の添加量が0.1重量% 未満であると、多官能イソシアナートによる架橋効果が不十分となり、耐衝撃性及び可撓性の向上の効果を十分に得られない。また、多官能イソシアナート化合物の添加量が2.0重量%を超えると、過剰のイソシアナート基が分子間の架橋を惹起してゲル化分率の増加を招き、耐衝撃性及び可撓性が低下する。
ポリ乳酸及び軟質生分解性プラスチックは、両末端が水酸基を有するか、両末端がカルボン酸基を有するか、一端が水酸基で他端がカルボン酸基を有するテレケリック型構造となっているかのいずれかであることが好ましい。こうであれば、多官能イソシアナート化合物中のイソシアナート基がポリ乳酸や軟質生分解性プラスチックの末端水酸基あるいは末端カルボン酸基と反応し、ポリ乳酸どうしの架橋反応や、軟質生分解性プラスチックどうしの架橋反応や、ポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックとの架橋反応が生じて、難燃性ポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性や可撓性を向上させることができる。
また、軟質生分解性プラスチックはポリエステルエラストマーとすることができる。ポリエステルエラストマーは末端に水酸基やカルボン酸基を有しており、多官能イソシアナート化合物と容易に結合することができる。発明者らは、ポリエステルエラストマーとしてポリブチレンサクシネートを用いた場合、優れた耐衝撃性及び優れた可撓性が確実に得られることを確認している。
本発明に用いるポリ乳酸の分子量としては、重量平均分子量が50 ,000〜1000,000の範囲のものが好ましい。かかる範囲を下回るものでは機械的強度が弱くなり、それ以上の分子量のものは、加工性の劣るものとなってしまうためである。
本発明の難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸と、軟質生分解性プラスチックと、多官能イソシアナート化合物と、ポリリン酸アンモニウムとを加熱溶融混合することにより、製造することができる。加熱溶融混合の方法については特に限定されるものではないが、工業的には連続的に処理できる方法が好ましい。具体的には、例えば、上記の成分を所定の割合で混合したものを一軸スクリュー押出機や二軸混練押出機などで溶融し、直ちに成形して成形品とすることができる。また、上記の成分を所定の割合で混合したものを一旦ペレット化し、その後必要に応じて溶融成形してもよい。ペレット化してから成形する方法は、より均一な組成となるため、好適である。また、上記の成分を所定の割合で量り取り、溶剤によって均一に溶解してから溶媒を留去させてもよいが、多官能イソシアナート化合物には水分等との反応性の高いイソシアナート基を含有するため、水分を含まない溶媒を用いる必要がある。
押出機によって押出成形する場合の溶融押出温度としては、使用するポリ乳酸や軟質生分解性プラスチックの融点やそれらの混合比率を考慮して適宜選択すればよいが、一般的には150〜220℃ の範囲が好ましく、より好ましいのは180〜200℃ の範囲である。加熱溶融成形時の劣化や変質等を防ぐために、できるだけ短時間内に混合することが好ましい。具体的には時間は20分以内、好ましくは10分以内で押出成形することが好ましい。
また、多官能イソシアナート化合物は、ポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックとを加熱溶融混合した後に添加し、再度加熱溶融混合してもよいし、上記のように全ての成分を同時に加熱溶融混合してもよい。
本発明の難燃性ポリ乳酸系樹脂組成物には、発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて副次的な添加物を加えて様々な改質を行うことが可能である。副次的な添加物の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、抗菌剤、安定剤、静電剤、核形成材、各種フィラー等その他の類似のものが挙げられる。
以下、本発明をさらに具体化した実施例について比較例と比較しつつ説明する。
(実施例1〜3)
100°Cで4時間乾燥させたポリ乳酸(ユニチカ(株)製、テラマックTE4000)と、50°Cで24時間乾燥させたポリブチレンサクシネート(昭和高分子(株)製、ビオノーレ(登録商標)#1020)(以下「PBS」と略す)、2−イソシアナートエチル−2 ,6−ジイソシアナートカプロエート(協和発酵社製、LTI(登録商標))(以下「LTI」と略す)及びポリリン酸アンモニウム(クラリアントジャパン(株)製、PEKOFLAM(登録商標))を表1に示す割合で量り取る。
そして、これらの薬品を混合した後、中型二軸押出機(テクノベル(株)製、KZW15−30TGN)に投入して加熱溶融混練してペレット化した後に、射出成形機(住友重機械工業SE−18S)を用いて射出成形して長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を得た。加熱溶融における設定温度は、ホッパー側から先端側にかけて、4箇所で170°C、190°C、190°C、190°Cとした。
また、下記表2に示す組成の比較例1〜6を以下に示す方法で作製した。
(比較例1)
ポリ乳酸のみを上記と同様の方法によって射出成形し、比較例1の試験片を作製した。
(比較例2)
ポリ乳酸と水酸化アルミニウムを63:37の質量比で量り取り、これを実施例1と同様の方法で射出成形し、比較例2の試験片を作製した。
(比較例3)
PBSと水酸化アルミニウムを63:37の質量比で量り取り、これを実施例1と同様の方法で射出成形し、比較例3の試験片を作製した。
(比較例4)
ポリ乳酸とPBSとを90:10の質量比で加熱混練し、さらに、こうして得られたポリ乳酸樹脂組成物と水酸化マグネシウムを63:37の質量比で量り取り、これを実施例1と同様の方法で射出成形し、比較例4の試験片を作製した。
(比較例5)
ポリ乳酸とPBSとを90:10の質量比で加熱混練し、さらに、こうして得られたポリ乳酸樹脂組成物とポリリン酸アンモニウムを95:5の質量比で量り取り、これを実施例1と同様の方法で射出成形し、比較例5の試験片を作製した。
(比較例6)
ポリ乳酸とポリリン酸アンモニウムを95:5の質量比で量り取り、これを実施例1と同様の方法で射出成形し、比較例6の試験片を作製した。
<評価>
上記のようにして作製した実施例1〜3の試験片及び比較例1〜6の試験片について、UL規格に準じた燃焼試験、JISK7111に準拠したシャルピー衝撃試験及び可撓性試験を行った。
(燃焼試験)
実施例1〜3及び比較例1〜4の試験片について、難燃性試験を行った。試験方法は、UL94規格により行った。すなわち、図1に示すように、垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させる。燃焼が30秒以内に止まったならばさらに10秒間接炎させる。評価は以下に示すV-0、V-1及びV-2の3種類で行う。
V-0
いずれの接炎の後も、10秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が50秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる 燃焼する粒子を落下させる試料がない。
V-1
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が250秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる 燃焼する粒子を落下させる試料がない。
2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続ける試料がない。
V-2
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける試料がない。
5個の試料に対する 10回の接炎に対する総燃焼時間が
250秒を超えない。
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない。
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる 燃焼する粒子の落下が許容される 。
2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続ける試料がない 。
結 果
燃焼試験の結果を表2に示す。
表2に示すように、実施例2、3ではV-0が達成され、ポリリン酸アンモニウムの添加量が5%と少ない実施例1であっても、V-2が達成された。これと比較し、難燃剤が含まれていない比較例1や、難燃剤として水酸化アルミニウムを37%含有する比較例2、3や、難燃剤として水酸化マグネシウムを37%含有する比較例4においても、V-2すら達成されなかった。これらの結果から、本発明の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物は、少ない難燃剤の添加量で優れた難燃効果が得られることが分かった。
(シャルピー衝撃試験及び可撓性試験)
実施例1、比較例5及び比較例6について、JISK7111に準拠したシャルピー衝撃試験によって評価を行った(試験機はJTトーシ(株)製、ハンマーの質量による負荷W=1.38kgf、ハンマーの回転軸中心から重心までの距離R=0.327m。試験片はJISK7111に示される1号試験片(80×10×4 mm)でノッチは無し。打撃方向はエッジワイズ方向。試験前に23℃・50%RHの恒温室にて88時間以上状態調節した)。結果を表4に示す。
表4に示すように、ポリ乳酸にLTI及びPBSが添加された実施例1は、LTIが加えられていない比較例5並びにLTI及びPBSが加えられていない比較例6に比べて、耐衝撃性が格段に優れていることが分かった。
また、これら実施例1及び比較例5、6の試験片について、中央から180°に屈曲させ、さらに反対側へ180°屈曲させることを繰り返し行う可撓性試験を行った。その結果表5に示すように、比較例5では180°屈曲させる前に折れてしまい、比較例6では2〜3回の屈曲で折れてしまうのに対し、実施例1では3〜4回で折れる結果となり、可撓性に優れることが分かった。
(レーザ顕微鏡による観察)
実施例1及び実施例1とポリリン酸アンモニウムの添加量の異なる樹脂組成物を調製し、レーザ顕微鏡による破断面の観察を行った。その結果、図2に示すように、ポリリン酸アンモニウムの添加量が15%と多くなると、ポリリン酸アンモニウムどうしが凝集して大きな2次粒子となることが分かった。この2次凝集現象は、耐衝撃性及び可撓性の低下をもたらすことから、ポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックの合計とポリリン酸アンモニウムとの混合比率は質量比で96:4〜80:20程度が好適である。
この発明は、上記発明の実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
燃焼試験を行っているところの写真である。 実施例1及び実施例1とポリリン酸アンモニウムの添加量の異なる樹脂組成物の破断面のレーザ顕微鏡写真である。

Claims (6)

  1. ポリ乳酸と、1分子中に複数のイソシアナート基を有する多官能イソシアナート化合物と、該イソシアナート基と化学結合可能な官能基を有する軟質生分解性プラスチックと、ポリリン酸アンモニウムとが混合されており、
    該ポリ乳酸と該軟質生分解性プラスチックとの混合比率は質量比で95:5〜20:80であり、該ポリ乳酸と該軟質生分解性プラスチックの合計とポリリン酸アンモニウムとの混合比率は質量比で96:4〜80:20であることを特徴とする難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
  2. 多官能イソシアナート化合物は2−イソシアナートエチル−2 ,6−ジイソシアナートカプロエートであることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
  3. 多官能イソシアナート化合物は、ポリ乳酸と軟質生分解性プラスチックの合計に対して0.1〜2.0質量%含まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
  4. ポリ乳酸及び軟質生分解性プラスチックは、両末端が水酸基を有するか、両末端がカルボン酸基を有するか、一端が水酸基で他端がカルボン酸基を有するテレケリック型構造となっているかのいずれかであることを特徴とする請求項2又は3記載の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
  5. 軟質生分解性プラスチックは、ポリエステルエラストマーであることを特徴とする請求項4記載の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
  6. ポリエステルエラストマーはポリブチレンサクシネートであることを特徴とする請求項5記載の難燃性ポリ乳酸樹脂組成物。
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