JP5041238B2 - 低温岩盤貯槽 - Google Patents
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Description
但し、このような凍結式は貯蔵温度が極めて低いと岩盤に温度クラックが発生することが懸念されることから、貯蔵温度は−60℃〜−80°C程度が限界とされ、したがってDME(沸点−25℃)やLPG(沸点−42℃)のような比較的貯蔵温度が高い燃料の場合には好適に採用可能であるが、LNG(沸点−162℃)のような極低温流体には不適であるとされている。
そのため、凍結式の低温岩盤貯槽の施工に際しては、貯槽としての空洞を掘削するに先立ってその上方に大規模な注水トンネルや注水ボーリング孔を先行施工し、そこから空洞掘削領域の周囲岩盤に対して人工的な地下水涵養としての多量の注水を連続的に行うことによって周囲岩盤を常に飽和状態に維持しつつ空洞を掘削する必要があるとされ、そのために多大な手間とコストを要するものであった。
したがって、メンブレン式の低温岩盤貯槽の施工に際しては、通常の土中工事の場合と同様に周囲岩盤から地下水を排水して地下水位を低下させることにより、施工領域をドライとして空洞を掘削し覆工を施工する必要がある。そして、そのためには空洞を掘削するべき領域の下方に集水および排水のための大規模な排水トンネルや排水ボーリング孔を先行施工し、そこから地下水を多量に汲み上げて地下水位を低下させて空洞周囲をドライに維持する必要があり、そのような大規模な排水工法を実施するために多大な手間とコストを要するものである。しかも、そのような工法によっても岩盤状況によっては必ずしも充分にドライにできないことも想定され、その場合には覆工時に地下水圧が作用して施工性が良くないばかりか施工品質に悪影響が及ぶ懸念がある。
そのような凍結防止手法をメンブレン式の低温岩盤貯槽の周囲岩盤に対しても適用すれば凍結膨張による覆工に対する弊害を防止できると考えられるが、それを実現するための具体的かつ有効適切な手法は提案されていない。
また、前記空洞の周囲岩盤中に前記排水路網に通じる排水用ボーリング孔を設けることが考えられ、さらにその場合においては、前記排水用ボーリング孔の周囲岩盤中に透水性の高い破砕領域を形成することが好ましい。
また、周囲岩盤中の地下水は常に排水路網により集水されて速やかに排水されてしまうことから、貯槽完成後に覆工に対して過大な地下水圧が外圧として作用することもなく、この点においても覆工の構造力学的な信頼性を向上させることができる。
さらに、施工段階においても排水路網を通して周囲岩盤からの排水を行うことが可能であり、それにより従来一般のメンブレン式の貯槽を施工する場合のように大がかりな排水トンネルや排水ボーリング孔を設けて周囲岩盤全体をドライにするような必要がなく、したがって施工性を十分に改善することができて工期短縮、工費削減に大きく寄与できるものである。
また、周囲岩盤の透水性が低いために充分な地下水流が生じないような場合には、排水路網に通じる排水用ボーリング孔を周囲岩盤に形成したり、さらにその周囲に破砕領域を形成しておくことにより、周囲岩盤の透水性を高めて地下水流がより確実に生じるようにでき、それにより非凍結領域を確実に形成することができる。
本実施形態の低温岩盤貯槽は、岩盤に形成された略馬蹄形断面のトンネル状の空洞1の内面に、吹付コンクリート2、躯体コンクリート3、保冷材4、メンブレン材5を順次積層状態で形成してメンブレン式の覆工を形成することにより、LNGやLPG、DME等の低温流体の貯槽(タンク)として機能するものであるが、本実施形態の低温岩盤貯槽が従来一般のものと異なる点は、吹付コンクリート2中に周囲岩盤からの地下水を常に集水して排水するための排水路網6が埋設されている点にある。
そして、そのために本実施形態では、吹付コンクリート2中に排水路網6を埋設しておいて、周囲岩盤中の地下水をその排水路網6により積極的に集水して空洞1内に流入させて常に排水するようにしており、それにより空洞周囲の岩盤中には排水路網6に向かって流れるような地下水流fが自ずと生じるようになっている。
すなわち、空洞1の底面と周面には、空洞1の軸方向に沿う縦排水路6aおよび周方向に沿う横排水路6bとなる板状排水材がそれぞれ所定間隔で交差させた状態で配置されて、それらの全体で縦横の格子網としての排水路網6が形成されている。その排水路網6は空洞1の底面中央部に設けられた主排水溝7に接続されていて、その内部には有孔ヒューム管等の主排水管8が敷設されている。それら主排水溝7および主排水管8は坑口側に向かって下がり勾配としておいて自然流下による排水を行うと良い。
図3に示すように空洞1側からメンブレン材5、保冷材4、躯体コンクリート3、吹付コンクリート2を介して周囲岩盤に冷熱量Q1が伝熱されるとし、逆に周囲岩盤から空洞1側へは温熱量(本来の熱量)Q3が伝熱されると想定した場合、通常のように地下水が滞留している場合には 冷熱量Q1>温熱量Q3 となって岩盤の温度は漸次低下していき、いずれは凍結してしまうことになる。
しかし、本実施形態のように排水路網6を通して地下水を集水し排水することによって地下水流fを積極的に生じさせると、その地下水流fによって冷熱量Q1の一部Q2が排水路網6を通して系外に放熱されてしまい、その分、岩盤への冷熱の伝熱量が減少することになる。そして Q1−Q2=Q3 となる熱平衡が生じれば岩盤温度を一定温度に維持可能であって凍結温度以下になることを防止できるのである。
しかも、施工段階においても排水路網6を通しての周囲岩盤からの排水を行うことが可能であり、それにより従来一般のメンブレン式の貯槽を施工する場合のように大がかりな排水トンネルや排水ボーリング孔を設けて周囲岩盤全体をドライにするような必要がなく、したがって施工性を十分に改善することができて工期短縮、工費削減に大きく寄与できるものである。
たとえば、上記実施形態では排水路網6を扁平な矩形断面の縦排水路6aと横排水路6bとによる縦横の格子状に形成したが、それに限るものでもなく、空洞1の周囲全体からの集水と排水が可能であれば縦排水路6aのみあるいは横排水路6bのみを設けることでも良いし、逆にほぼ全面的にマット状の排水路網として設けることでも良い。
いずれにしても、立地条件としては地下水位が高くかつ岩盤の透水性がある程度大きいことが必要となるが、首都圏や大阪圏等の軟岩が分布する沿岸域はそのような立地条件に該当するので、本発明の低温岩盤貯槽はそれら大都市圏に設置するLNG貯蔵施設として最適であるといえる。
図4に示すものは、空洞1の上方に注水用井戸10を設けて地表から人工的に地下水涵養を行うものであり、これにより地下水位を高く維持して充分な地下水流fを生じるようにしたものである。
図5に示すものは、空洞1の周囲岩盤中に多数の排水用ボーリング孔11を排水路網6に通じるように設けるものであり、岩盤の透水性が充分ではない場合であってもそれら排水用ボーリング孔11を通して排水路網6に導かれるような透水経路が確保され、周囲岩盤に確実に地下水流fが生じるものである。
この場合においては、排水用ボーリング孔11の施工に際してその周囲岩盤中を破砕して透水性の高い破砕領域12を形成することがより好ましい。そのような破砕領域12は排水ボーリング孔11内に高水圧を載荷する水圧破砕法(ハイドロフラクチャリング)により効率的に施工することができる。
図6に示すものは、図4に示した注水用井戸10と図5に示した排水用ボーリング孔11および破砕領域12を備えたものであり、それらの全体により確実な地下水流を生じさせることができる。
2 吹付コンクリート
3 躯体コンクリート
4 保冷材
5 メンブレン材
6 排水路網
6a 縦排水路
6b 横排水路
7 主排水溝
8 主排水管
10 注水用井戸
11 排水用ボーリング孔
12 破砕領域
Claims (4)
- 岩盤を掘削して形成した空洞の表面に吹付コンクリート、躯体コンクリート、保冷材、メンブレン材からなる覆工を設けて、その内部空間を低温流体を貯蔵するための貯槽とするメンブレン式の低温岩盤貯槽であって、
前記吹付コンクリート中に、周囲岩盤から地下水を集水して排水するための排水路網を設けることにより、前記空洞の周囲岩盤中に前記排水路網に向かって流れる地下水流を生じさせて、該地下水流によって前記空洞の周囲岩盤の温度を凍結温度以上に維持して前記空洞の周囲に非凍結領域を形成可能としたことを特徴とする低温岩盤貯槽。 - 請求項1記載の低温岩盤貯槽であって、
前記空洞の上方に、地表から該空洞の周囲岩盤に対して注水することによって地下水を涵養するための注水用井戸を設けたことを特徴とする低温岩盤貯槽。 - 請求項1または2記載の低温岩盤貯槽であって、
前記空洞の周囲岩盤中に、前記排水路網に通じる排水用ボーリング孔を設けたことを特徴とする低温岩盤貯槽。 - 請求項3記載の低温岩盤貯槽であって、
前記排水用ボーリング孔の周囲岩盤中に、透水性の高い破砕領域を形成したことを特徴とする低温岩盤貯槽。
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