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JP5040105B2 - 記憶素子、メモリ - Google Patents

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Description

本発明は、強磁性層の磁化状態を情報として記憶する記憶層と、磁化の向きが固定された磁化固定層とから成り、膜面に垂直な方向に電流を流して、スピン偏極した電子を注入することにより記憶層の磁化の向きを変化させる記憶素子及びこの記憶素子を備えたメモリに係わり、不揮発メモリに適用して好適なものである。
コンピュータ等の情報機器では、ランダム・アクセス・メモリとして、動作が高速で、高密度なDRAMが広く使われている。
しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性メモリであるため、情報が消えない不揮発のメモリが望まれている。
そして、不揮発メモリの候補として、磁性体の磁化で情報を記録する磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)が注目され、開発が進められている(例えば非特許文献1参照)。
MRAMは、ほぼ直交する2種類のアドレス配線(ワード線、ビット線)にそれぞれ電流を流して、各アドレス配線から発生する電流磁場によって、アドレス配線の交点にある磁気記憶素子の磁性層の磁化を反転して情報の記録を行うものである。
また、情報の読出には、磁気記憶素子の記憶層の磁化の向きに応じて抵抗が変化する、いわゆる磁気抵抗効果(MR効果)を用いる。
一般的なMRAMの模式図(斜視図)を、図17に示す。
シリコン基板等の半導体基体110の素子分離層102により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域108、ソース領域107、並びにゲート電極101が、それぞれ形成されている。
また、ゲート電極101の上方には、図中前後方向に延びるワード線105が設けられている。
ドレイン領域108は、図中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域108には、配線109が接続されている。
そして、ワード線105と、上方に配置された、図中左右方向に延びるビット線106との間に、磁化の向きが反転する記憶層を有する磁気記憶素子103が配置されている。この磁気記憶素子103は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成される。
さらに、磁気記憶素子103は、水平方向のバイパス線111及び上下方向のコンタクト層104を介して、ソース領域107に電気的に接続されている。
ワード線105及びビット線106にそれぞれ電流を流すことにより、電流磁界を磁気記憶素子103に印加して、これにより磁気記憶素子103の記憶層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うことができる。
そして、MRAM等の磁気メモリにおいて、記録した情報を安定に保持するためには、情報を記録する磁性層(記憶層)が、一定の保磁力を有していることが必要である。
一方、記録された情報を書き換えるためには、アドレス配線にある程度の電流を流さなければならない。
ところが、MRAMを構成する素子の微細化に従い、アドレス配線も細くなるため、充分な電流が流せなくなってくる。
そこで、より少ない電流で磁化反転が可能な構成として、スピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリが注目されている(例えば、特許文献1参照)。
スピン注入による磁化反転とは、磁性体の中を通過してスピン偏極した電子を、他の磁性体に注入することにより、他の磁性体において磁化反転を起こさせるものである。
例えば、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)や磁気トンネル接合素子(MTJ素子)に対して、その膜面に垂直な方向に電流を流すことにより、これらの素子の少なくとも一部の磁性層の磁化の向きを反転させることができる。
そして、スピン注入による磁化反転は、素子が微細化されても、電流を増やさずに磁化反転を実現することができる利点を有している。
上述したスピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリの模式図を図15及び図16に示す。図15は斜視図、図16は断面図である。
シリコン基板等の半導体基体60の素子分離層52により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域58、ソース領域57、並びにゲート電極51が、それぞれ形成されている。このうち、ゲート電極51は、図15中前後方向に延びるワード線を兼ねている。
ドレイン領域58は、図15中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域58には、配線59が接続されている。
そして、ソース領域57と、上方に配置された、図15中左右方向に延びるビット線56との間に、スピン注入により磁化の向きが反転する記憶層を有する記憶素子53が配置されている。
この記憶素子53は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成される。図中61及び62は磁性層を示しており、2層の磁性層61,62のうち、一方の磁性層を磁化の向きが固定された磁化固定層として、他方の磁性層を磁化の向きが変化する磁化自由層即ち記憶層とする。
また、記憶素子53は、ビット線56と、ソース領域57とに、それぞれ上下のコンタクト層54を介して接続されている。これにより、記憶素子53に電流を流して、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させることができる。
このようなスピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリの場合、図17に示した一般的なMRAMと比較して、デバイス構造を単純化することができる、という特徴も有している。
また、スピン注入による磁化反転を利用することにより、外部磁界により磁化反転を行う一般的なMRAMと比較して、素子の微細化が進んでも、書き込みの電流が増大しないという利点がある。
ところで、MRAMの場合は、記憶素子とは別に書き込み配線(ワード線やビット線)を設けて、書き込み配線に電流を流して発生する電流磁界により、情報の書き込み(記録)を行っている。そのため、書き込み配線に、書き込みに必要となる電流量を充分に流すことができる。
一方、スピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリにおいては、記憶素子に流す電流によりスピン注入を行って、記憶層の磁化の向きを反転させる必要がある。
そして、このように記憶素子に直接電流を流して情報の書き込み(記録)を行うことから、書き込みを行うメモリセルを選択するために、記憶素子を選択トランジスタと接続してメモリセルを構成する。この場合、記憶素子に流れる電流は、選択トランジスタに流すことが可能な電流(選択トランジスタの飽和電流)の大きさに制限される。
このため、選択トランジスタの飽和電流以下の電流で書き込みを行う必要があり、スピン注入の効率を改善して、記憶素子に流す電流を低減する必要がある。
また、読み出し信号を大きくするためには、大きな磁気抵抗変化率を確保する必要があり、そのためには記憶層の両側に接している中間層をトンネル絶縁層(トンネルバリア層)とした記憶素子の構成にすることが効果的である。
このように中間層としてトンネル絶縁層を用いた場合には、トンネル絶縁層が絶縁破壊することを防ぐために、記憶素子に流す電流量に制限が生じる。この観点からも、スピン注入時の電流を抑制する必要がある。
従って、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させる構成の記憶素子では、スピン注入効率を改善して、必要とする電流を減らす必要がある。
日経エレクトロニクス 2001.2.12号(第164頁−171頁) 特開2003−17782号公報
通常、MTJ素子やGMR素子等の磁気抵抗効果素子によって記憶素子を構成する場合には、記憶層はトンネル絶縁層を介して磁化固定層に接続されるが、記憶層の磁化固定層とは反対の側には、記憶素子に電流を流すための電極層等の非磁性金属層が接続される。
ところが、スピン注入によって記憶層の磁化の向きが反転する際には、この電極層等の非磁性金属層にスピンカレントが流れて、その反作用として記憶層の磁化反転が抑制される、いわゆるスピンポンピング現象が起こる。
この結果、記憶層の磁化を反転させるために必要な電流が増大し、スピン注入効率が悪化するという問題点があった。
さらに、反転電流を減少させるためには、記憶層の素子サイズ及び飽和磁化をできる限り小さくすることが望ましい。
ところが、記憶層の素子サイズ及び飽和磁化を小さくすると、記憶素子の熱安定性が減少し、動作が不安定になるという問題点があった。
上述した問題の解決のために、本発明においては、スピンポンピング現象の発生を抑制することができると共に、充分な熱安定性を有する記憶素子、並びにこの記憶素子を有するメモリを提供するものである。
本発明の記憶素子は、情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有し、この記憶層に対して、トンネル絶縁層を介して磁化固定層が設けられ、積層方向に電流を流してスピン偏極した電子を注入することにより、記憶層の磁化の向きが変化して、記憶層に対して情報の記録が行われるものであって、記憶層が、非磁性層を介して積層された複数層の強磁性層から成り、記憶層を構成する強磁性層の主成分がCoFeBからなり、記憶層を構成する非磁性層がTi,Ta,Nb,Crのうち少なくとも一種の非磁性元素からなり、記憶層内の非磁性元素の含有量が1原子%以上20原子%以下であり、記憶層の磁化固定層とは反対側に、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層が設けられ、このスピンバリア層が、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成されているものである。
本発明のメモリは、情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有する記憶素子と、互いに交差する2種類の配線とを備え、記憶素子は上記本発明の記憶素子の構成であり、2種類の配線の交点付近かつ2種類の配線の間に記憶素子が配置され、これら2種類の配線を通じて記憶素子に積層方向の電流が流れ、スピン偏極した電子が注入されるものである。
上述の本発明の記憶素子の構成によれば、情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有し、この記憶層に対して、トンネル絶縁層を介して磁化固定層が設けられ、積層方向に電流を流してスピン偏極した電子を注入することにより、記憶層の磁化の向きが変化して、記憶層に対して情報の記録が行われるので、積層方向に電流を流してスピン偏極した電子を注入することによって情報の記録を行うことができる。
また、記憶層が、非磁性層を介して積層された複数層の強磁性層から成り、記憶層の磁化固定層とは反対側に、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層が設けられ、このスピンバリア層が、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成されていることにより、スピンバリア層によってスピンポンピング現象の発生を抑制することができる。これにより、記憶層の磁化を反転させるために必要な電流を低減し、スピン注入効率を向上させることが可能になる。
さらに、スピンバリア層を設けることにより、記憶層の熱安定性を向上させることができるため、記憶層に記録された情報を安定して保持することができる。
上述の本発明のメモリの構成によれば、情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有する記憶素子と、互いに交差する2種類の配線とを備え、記憶素子は上記本発明の記憶素子の構成であり、2種類の配線の交点付近かつ2種類の配線の間に記憶素子が配置され、これら2種類の配線を通じて記憶素子に積層方向の電流が流れ、スピン偏極した電子が注入されるものであることにより、2種類の配線を通じて記憶素子の積層方向に電流を流してスピン注入による情報の記録を行うことができる。
また、スピン注入により記憶素子の記憶層の磁化の向きを反転させるために必要な電流量(閾値電流)を低減することができる。
さらに、記憶素子の記憶層に記録された情報を安定して保持することができる。
上述の本発明によれば、スピン注入効率を向上することにより、情報の記録に必要な電流量を低減することができる。
これにより、メモリ全体の消費電力を低減することができる。
従って、従来にない低消費電力のメモリを実現することが可能になる。
また、記憶素子の記憶層が充分な熱安定性を有するため、記憶素子が情報の保持特性に優れている。
さらに、情報の記録に必要な電流量を低減することができることから、電流を流して情報を記録する動作領域を拡大することが可能となり、動作マージンを広く確保することが可能になる。
従って、安定して動作する、信頼性の高いメモリを実現することができる。
まず、本発明の具体的な実施の形態の説明に先立ち、本発明の概要について説明する。
本発明は、前述したスピン注入により、記憶素子の記憶層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うものである。記憶層は、強磁性層等の磁性体により構成され、情報を磁性体の磁化状態(磁化の向き)により保持するものである。
スピン注入により磁性層の磁化の向きを反転させる基本的な動作は、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)もしくは磁気トンネル接合素子(MTJ素子)から成る記憶素子に対して、その膜面に垂直な方向に、ある閾値(Ic)以上の電流を流すものである。このとき、電流の極性(向き)は、反転させる磁化の向きに依存する。
この閾値よりも絶対値が小さい電流を流した場合には、磁化反転を生じない。
また、本発明では、前述した選択トランジスタの飽和電流値を考慮して、記憶層と磁化固定層との間の非磁性の中間層として、絶縁体から成るトンネル絶縁層を用いて磁気トンネル接合(MTJ)素子を構成する。
トンネル絶縁層を用いて磁気トンネル接合(MTJ)素子を構成することにより、非磁性導電層を用いて巨大磁気抵抗効果(GMR)素子を構成した場合と比較して、磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができ、読み出し信号強度を大きくすることができる。
ところで、スピン注入によって、磁性層の磁化の向きを反転させるときに、必要となる電流の閾値Icは、現象論的に、下記数1により表される(例えば、F.J.Albert他著、Appl.Phys.Lett.,77,p.3809,2000年、等を参照)。
Figure 0005040105
記憶素子の動作のマージンを広く確保し、記憶素子を安定して動作させるためには、この電流の閾値Icを小さくすることが必要になる。
そして、各メモリセルの記憶素子の閾値Icのばらつきを抑制することが重要である。
電流の閾値Icを小さくすることにより、記憶素子及びメモリ全体の消費電力を低減することが可能になる。
また、電流の閾値Icを小さくすることにより、飽和電流値の小さい、即ちゲート幅の小さい選択トランジスタを使用することが可能になるため、メモリセルの微細化を図り、メモリの集積度を高めることができる。これにより、メモリの小型化や記憶容量の増大を図ることができる。
前述した式(1)において、実効的な磁気異方性H effectiveの項は、磁性層の膜面内方向のHと膜面に垂直な方向のHで構成され、膜面内に磁気異方性を持つCoFeやCoFeB等を用いた記憶層の場合には、膜面に垂直な方向のHが膜面内方向のHよりも大きく、膜面に垂直な方向のHがMs/2で表される。
この場合、式(1)の閾値Icは、次式(2)で表される。
Ic=k・Ms・V・(H+Ms/2)/g± (2)
ここで、H≪Msである。
上記式(2)より、電流の閾値Icを下げるには、記憶層の飽和磁化Msと体積Vを下げることが効果的であることがわかる。
さらに、記憶素子に記録された情報を保持するためには、記憶層の熱安定性の指標(パラメータ)Δを、ある一定値以上に制御することが必要である。一般に、この熱安定性の指標Δは、60以上、より好ましくは、70以上が必要であるといわれている。
この熱安定性の指標Δは、次式で表される。
Δ=Ms・V・H・(1/2kT) (3)
ここで、kはボルツマン定数、Tは温度である。
しかしながら、上記式(3)からわかるように、飽和磁化Msを下げると、熱安定性の指標Δが低下してしまう。
このため、電流の閾値Icを低減すると共に、飽和磁化Msの低下に伴う熱安定性の指標Δの低下を防ぐためには、異方性磁界Hを増やすことが必要である。
異方性磁界Hを増やすための対応としては、記憶素子の短軸寸法を小さくして、記憶素子のアスペクト比(長軸寸法/短軸寸法)を大きくとることや、記憶層の強磁性材料の異方性磁界Hを増やすことが挙げられる。
そして、メモリの高密度化を考慮すると、後者の対応、即ち記憶層の強磁性材料の異方性磁界Hを増やすことが望ましい。
そのためには、記憶層の全膜厚領域で強磁性材料本来の飽和磁化Msを持っており、かつ記憶層が薄い膜であることが望ましい。
ところで、前述したように、MTJ素子やGMR素子等の磁気抵抗効果素子によって記憶素子を構成する場合には、通常、記憶層の磁化固定層の反対側には、記憶素子に電流を流すための電極層等の非磁性金属層が接続されている。
このような非磁性金属層としては、下部電極層、上部電極層、下地金属層や、所謂キャップ層等が挙げられる。
このような非磁性金属層が記憶層と直接接していると、界面拡散により、非磁性金属層の構成元素が記憶層の強磁性体に拡散して、記憶層の強磁性体が本来持っている特性が劣化した、特性劣化領域を生じることがある。特に、上述した下部電極層、上部電極層、下地金属層や、所謂キャップ層等は、記憶層と比較して厚く(膜厚にして2倍〜数倍程度)形成しているため、拡散する非磁性金属元素の量が多くなっている。
このように記憶層に特性劣化領域を生じると、記憶層の磁性材料としての特性が損なわれて、MR比やH値等が劣化する。
そして、このようにMR比やH値等が劣化すると、記憶素子に記録された情報を読み出すことが難しくなったり、記憶層の熱安定性の指標Δが低下して、記憶素子が熱的に不安定になったりするため、記憶素子として望ましくない。
従って、記憶層と非磁性金属層との間の拡散による特性劣化領域が、記憶層内に生じていないことが望ましい。
種々の検討を行った結果、記憶層に対して、磁化固定層とは反対側に、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層を設けて、記憶層と非磁性金属層との間をスピンバリア層で隔てることにより、前述したスピンポンピング現象を抑制させて、スピン注入効率を向上させることが可能になると共に、上述の特性劣化領域の発生を抑制して、記憶層の強磁性体の本来の特性が発揮されることを見出した。
そこで、本発明においては、記憶層に対して、磁化固定層とは反対側に、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層を設けて、記憶素子を構成する。
また、本発明において、スピンバリア層は、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成する。
即ち、スピンバリア層を、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料、もしくは、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料を主成分として、少量の他の元素(例えば、金属元素等)が添加された材料、によって構成する。
このように、スピンバリア層が酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成されることにより、スピンバリア層が基本的に絶縁性となっている。
具体的には、例えば、マグネシウムやアルミニウム等の酸素や窒素との親和力が強い元素を用いた、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。
また、その他にも、SiO,Bi,MgF,ZnO,Ta,CaF,SrTiO,AlLaO,Al−N−O等の各種の材料を用いることもできる。
なお、記憶層と磁化固定層との間の中間層(トンネル絶縁層等)と同じ材料を使用して、スピンバリア層を形成してもよい。
このように、記憶層に対して、磁化固定層とは反対側に接するように、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層を設けることにより、前述したスピンポンピング現象を抑制させて、スピン注入効率を向上させることが可能になる。
さらに、基本的に絶縁性であるスピンバリア層によって、記憶層と非磁性金属層との間の拡散による特性劣化領域の発生を抑制することができるため、記憶層の強磁性体が本来持っている特性を発揮させることが可能になる。
これにより、特性劣化領域によるMR比の劣化を抑制して、読み出し出力を改善することができるので、例えば、スピン注入効率が極大値を示すような薄い記憶層を設定することも可能になる。即ち、MR比等の特性の劣化を伴わずに、スピン注入の効率を高めて、電流量の閾値Icを小さくすることができる。
また、特性劣化領域の発生を抑制できることから、その分、記憶層の膜厚を薄くすることが可能になる。
また、スピンバリア層を設けることにより、記憶層の上下両側がいずれも絶縁層(トンネル絶縁層とスピンバリア層)で挟まれるため、記憶層に対して金属−金属間の原子拡散が起こりにくくなり、上述した特性劣化領域の発生を抑制する作用効果の他にも、製造工程の条件(熱履歴等)や、内部応力の影響や、下層の表面状態に依存せず、記憶層を薄い膜厚に厳密に低御することが可能になり、上述の電流量の閾値Icを低減することが可能になる。
そして、ウェハ内に形成した多数の記憶素子において、電流量の閾値Icのばらつきを抑えることができる。
また、トンネル絶縁層の材料として、特に、酸化マグネシウム(MgO)を用いることにより、これまで一般的に用いられてきた酸化アルミニウムを用いた場合よりも、磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができる。
一般に、スピン注入効率はMR比に依存し、MR比が大きいほど、スピン注入効率が向上し、磁化反転電流密度を低減することができる。
従って、中間層であるトンネル絶縁層の材料として酸化マグネシウムを用いることにより、スピン注入による書き込み閾値電流を低減することができ、少ない電流で情報の書き込み(記録)を行うことができる。また、読み出し信号強度を大きくすることができる。
これにより、MR比(TMR比)を確保して、スピン注入による書き込み閾値電流を低減することができ、少ない電流で情報の書き込み(記録)を行うことができる。また、読み出し信号強度を大きくすることができる。
トンネル絶縁層を酸化マグネシウム(MgO)膜により形成する場合には、MgO膜が結晶化していて、001方向に結晶配向性を維持していることが望ましい。
トンネル絶縁層に酸化マグネシウムを用いた場合に、優れたMR特性を得るためには、一般に、アニール温度を300℃以上、望ましくは340℃〜380℃の高い温度とすることが要求される。これは、従来中間層に用いられている酸化アルミニウムの場合のアニール温度の範囲(250℃〜280℃)と比較して、高温になっている。
これは、酸化マグネシウムの適正な内部構造や結晶構造を形成するためには、高い温度が必要になるからであると考えられる。
このため、記憶素子の強磁性層にも、この高い温度のアニールに耐性を有するように、耐熱性のある強磁性材料を用いないと、優れたMR特性を得ることができないが、本発明によれば、スピンバリア層を設けることによって、記憶層を構成する強磁性層への拡散が抑制されて、記憶層の耐熱性が向上するので、340℃〜400℃のアニールにも記憶層の磁気特性が劣化することがなく耐えうるようになる。
これにより、記憶素子を備えたメモリを製造する際に、一般の半導体MOS形成プロセスを適用できるという利点を有し、本実施の形態の記憶素子を備えたメモリを、汎用メモリとして適用することが可能になる。
また、記憶素子に充分な書き込み電流を流すためには、トンネル絶縁層(トンネルバリア層)の面積抵抗値を小さくする必要がある。
トンネル絶縁層の面積抵抗値は、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させるために必要な電流密度を得る観点から、数十Ωμm程度以下に制御する必要がある。
そして、MgO膜から成るトンネル絶縁層では、面積抵抗値を上述の範囲とするために、MgO膜の膜厚を1.5nm以下に設定する必要がある。
記憶層と磁化固定層との間のトンネル絶縁層の材料には、酸化マグネシウムを用いる他にも、例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、SiO,Bi,MgF,CaF,SrTiO,AlLaO,Al−N−O等の各種の絶縁体、誘電体、半導体を用いて構成することもできる。
また、記憶層の磁化の向きを、小さい電流で容易に反転できるように、記憶素子を小さくすることが望ましい。好ましくは、記憶素子の面積を0.04μm以下とする。
記憶層は、通常、主として、Co,Fe,Ni,Gd等の強磁性材料から構成され、これら2種以上の合金を一つの層として、一層以上の積層状態で記憶層が形成される。
各強磁性層には、飽和磁化量等の磁気特性や、結晶構造(結晶質、微結晶構造、アモルファス構造)の制御のために合金元素が添加される。例えば、CoFe合金、CoFeB合金、Fe合金或いはNiFe合金を主成分として、Gd等の磁性元素や、他の元素として、B,C,N,Si,P,Al,Ta,Mo,Cr,Nb,Cu,Zr,W,V,Hf,Gd,Mn,Pdが1種或いは複数添加された材料を用いることができる。また、例えば、CoにZr,Hf,Nb,Ta,Tiから選ばれる1種類以上の元素を添加したアモルファス材料、CoMnSi,CoMnAlやCoCrFeAl等のホイスラー材料を用いることができる。
なお、記憶層を構成する強磁性層にCoFeB合金を用いる場合には、磁化量と軟磁気特性の確保の観点から、記憶層の強磁性成分であるCoとFeの合計の含有比率は、60原子%以上であることが好ましい。
CoとFeの合計の含有比率が60原子%以下になると、強磁性層としての飽和磁化量、及び保磁力が得られなくなってしまう。また、一般的にCoFeの比率はCo:Feが90:10から40:60の範囲にあるときに磁気異方性分散が適当に抑制された、良好な軟磁気特性を示す。
また、材料又は組成範囲の異なる複数の強磁性層を直接積層させて記憶層を構成することも可能である。また、強磁性層と軟磁性層とを積層させたり、軟磁性層を介して複数層の強磁性層を積層させたりすることも可能である。このように積層させた場合でも、本発明の効果が得られる。
さらに、本発明において、記憶層を、非磁性層を介して2層以上の強磁性層を積層した構成とすることにより、記憶層の飽和磁化Msを低減させることができ、これにより電流の閾値Icを低減することができる。
また、このように構成したときには、強磁性層の層間の相互作用の強さを調整することが可能になるため、記憶素子の寸法がサブミクロン以下になっても、磁化反転電流が大きくならないように抑制することが可能になるという効果が得られる。
この非磁性層の材料としては、好ましくはTi,Ta,Nb,Crが挙げられ、これらの元素単体又は合金を用いることができる。
なお、同様の効果が得られるものであれば、その他どのような非磁性元素を用いても良い。例えば、Ru,Os,Re,Ir,Au,Ag,Cu,Al,Bi,Si,B,C,Pd,Pt,Zr,Hf,W,Mo等も考えられる。
また、この非磁性層は、記憶層の強磁性体に拡散しにくい非磁性材料を用いるか、或いは、前述した電極層や下地層やキャップ層等と比較して、充分に薄い膜厚とすることによって、記憶層に前述した特性劣化領域が広く形成されない構成とすることが望ましい。
例えば、記憶層の強磁性層の主成分がCoFeBであり、非磁性層にTi,Ta,Nb,Crのうち少なくとも一種の非磁性元素を用いる場合には、好ましくは、記憶層全体に占める非磁性元素の含有量が1原子%以上20原子%以下となるように、非磁性層の膜厚を設定する。
含有量が少ない(非磁性層が薄い)と、飽和磁化を低減する効果が小さくなると共に、非磁性層上に強磁性層を良好な状態で成膜することが困難になる。
含有量が多い(非磁性層が厚い)と、飽和磁化は小さくなるが、記憶素子のMR比も小さくなるため読み出しが困難になる。また、製造時に特性劣化領域を生じ易くなる。
なお、非磁性層を介して2層以上の強磁性層を積層した構成とする代わりに、記憶層の強磁性体に非磁性元素を含有させる構成としても、同様に記憶層の飽和磁化Msを低減させることができ、これにより電流の閾値Icを低減することができる。
このような構成の記憶層は、例えば強磁性材料と非磁性元素とを含有するターゲットを使用したり、非磁性元素をコ・スパッタにより強磁性材料に混入させたりすることにより、形成することが可能である。
この場合の非磁性元素の含有量も、積層する場合と同様に設定する。
記憶層の強磁性体に非磁性元素を含有させる構成とした場合には、トンネル絶縁層と記憶層との界面付近にも非磁性元素が分布するため、これがMR比を下げる要因となる。
即ち、MR比の観点からすると、同じ含有量であれば、強磁性層と非磁性層との積層構造の方が有利である。
さらにまた、本発明において、前述した絶縁材料(酸化物、窒化物、フッ化物)から成るスピンバリア層に、非磁性金属元素が含有されている構成とすることにより、スピンバリア層の抵抗値を低減して、スピンバリア層を設けたことによる記憶素子の抵抗値の増大を抑えることができる。
このような構成のスピンバリア層は、例えば、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれた1種以上の材料から成る層(高抵抗層)と、非磁性金属層とを積層した後に、熱処理を行って、非磁性金属元素を高抵抗層へ拡散させることにより形成することができる。
スピンバリア層に含有させる非磁性金属元素としては、Ti,Ta,Zr,Hf,Nb,Cr,Mo,W,V,Cu等の遷移金属元素やAu,Pd,Pt等の貴金属が挙げられる。
Ti,Ta,Zr等の遷移金属元素の場合には、絶縁層と接することにより、高濃度酸素固溶体或いは窒素固溶体が形成され、絶縁層との混合が進行して、絶縁状態から導電状態に変化して不完全な絶縁層になり、抵抗値が低減される。
一方、AuやPt等の貴金属の場合には、絶縁層と金属層が各層のまま2相に分離した状態となり、絶縁物が金属相中に孤立した状態、或いは、穴の開いた絶縁層となり、抵抗上昇が抑制される。これら金属層の厚さは絶縁層と同等以上であれば問題ない。
非磁性金属層の厚さの上限については特にないが、製造工程の面で制限され、5nm程度で充分であると考えられる。
また、上述したように絶縁層と金属層とを積層して、熱処理により非磁性金属元素を拡散させる形成方法の代わりに、最初から、絶縁材料と非磁性金属材料とが混合した不完全な絶縁層を形成する方法も可能である。
この場合には、上述した絶縁層の材料と金属層の材料とを混合した材料を用いて、成膜を行う。
この場合のスピンバリア層の膜厚は、5nm程度で充分と考えられる。
スピンバリア層の抵抗値が非常に大きい(高い)場合には、記憶素子の抵抗値も大きく(高く)なるため、記憶素子に対して情報の記録や情報の読み出しを行う際に、大きい電圧を必要とすることになる。また、MTJ素子のトンネル磁気抵抗効果による抵抗値の変化が、記憶素子の抵抗値に対して相対的に小さくなるため、MR比が目減りして、情報の読み出しが難しくなる。
これに対して、上述のように非磁性金属元素を含有するスピンバリア層を構成した場合には、スピンバリア層を設けたことによる記憶素子の抵抗値の増大を抑えることができるため、記憶素子に対して情報の記録や情報の読み出しを行う際に、余分な電圧を必要とせず、MR比の目減りもない。
また、スピンバリア層により記憶素子の抵抗値が増大することが抑えられるため、スピンバリア層の膜厚は、トンネル絶縁層と同等の膜厚でもよく、トンネル絶縁層よりも厚くても問題ない。
MR比や記憶素子の特性を考慮すると、スピンバリア層の面積抵抗値が10Ωμm以下となるように、非磁性金属元素の含有量を設定することが好ましい。
ところで、記憶層の強磁性材料と、スピンバリア層の絶縁材料との組み合わせによっては、スピンバリア層に含まれる酸素原子等が記憶層へ拡散や混合されることにより、記憶層の磁気特性が変化する場合がある。
そこで、本発明において、さらに、記憶層とスピンバリア層との間に、非磁性金属層を設けることにより、スピンバリア層に含まれる酸素原子等の記憶層への拡散や混合等に起因する磁気特性の変化を抑制することができる。
このように記憶層とスピンバリア層との間に設ける非磁性金属層の材料としては、それ自体ではスピンポンピング効果の小さい非磁性金属、例えば、CuやTa等を用いることができる。また、これらの元素に限定されるものではなく、例えば、Al,Si,Ti,Zn,Zr,Nb,Mo,Hf,W,Ru等を使用することも考えられる。
この非磁性金属層も、記憶層の強磁性体に拡散しにくい非磁性材料を用いるか、或いは、前述した電極層や下地層やキャップ層等と比較して、充分に薄い膜厚とすることによって、記憶層に前述した特性劣化領域が広く形成されない構成とすることが望ましい。
このように記憶層とスピンバリア層との間に非磁性金属層を設ける構成は、記憶層とスピンバリア層とのいずれが上層であっても適用可能であるが、特にスピンバリア層の方が上層にある場合において、記憶層の後でスピンバリア層を形成することから、効果が大きいと考えられる。
本発明の記憶素子において、磁化固定層は、一方向の異方性を有していることが望ましく、記憶層は一軸異方性を有していることが望ましい。
また、磁化固定層及び記憶層の膜厚は、各々1nm〜40nm、及び1nm〜10nmであることが好ましい。
記憶素子のその他の構成は、スピン注入により情報を記録する記憶素子の従来公知の構成と同様とすることができる。
磁化固定層は、強磁性層のみにより、或いは反強磁性層と強磁性層の反強磁性結合を利用することにより、その磁化の向きが固定された構成とする。
また、磁化固定層は、単層の強磁性層から成る構成、或いは複数層の強磁性層が非磁性層を介して積層した積層フェリ構造とする。磁化固定層を積層フェリ構造としたときには、磁化固定層の外部磁界に対する感度を低下させることができるため、外部磁界による磁化固定層の不要な磁化変動を抑制して、記憶素子を安定して動作させることができる。さらに、各強磁性層の膜厚を調整することができ、磁化固定層からの漏洩磁界を抑えることができる。
積層フェリ構造の磁化固定層を構成する強磁性層の材料としては、Co,CoFe,CoFeB等を用いることができる。また、非磁性層の材料としては、Ru,Re,Ir,Os等を用いることができる。
反強磁性層の材料としては、FeMn合金、PtMn合金、PtCrMn合金、NiMn合金、IrMn合金、NiO,Fe等の磁性体を挙げることができる。
また、これらの磁性体に、Ag,Cu,Au,Al,Si,Bi,Ta,B,C,O,N,Pd,Pt,Zr,Hf,Ir,W,Mo,Nb等の非磁性元素を添加して、磁気特性を調整したり、その他の結晶構造や結晶性や物質の安定性等の各種物性を調整したりすることができる。
また、記憶素子の膜構成は、記憶層が磁化固定層の上側に配置される構成でも、下側に配置される構成でも全く問題はない。
なお、記憶素子の記憶層に記録された情報を読み出す方法としては、記憶素子の記憶層に薄い絶縁膜を介して、情報の基準となる磁性層を設けて、絶縁層を介して流れる強磁性トンネル電流によって読み出してもよいし、磁気抵抗効果により読み出してもよい。
続いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
本発明の一実施の形態として、メモリの概略構成図(斜視図)を図1に示す。
このメモリは、互いに直交する2種類のアドレス配線(例えばワード線とビット線)の交点付近に、磁化状態で情報を保持することができる記憶素子が配置されて成る。
即ち、シリコン基板等の半導体基体10の素子分離層2により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域8、ソース領域7、並びにゲート電極1が、それぞれ形成されている。このうち、ゲート電極1は、図中前後方向に延びる一方のアドレス配線(例えばワード線)を兼ねている。
ドレイン領域8は、図中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域8には、配線9が接続されている。
そして、ソース領域7と、上方に配置された、図中左右方向に延びる他方のアドレス配線(例えばビット線)6との間に、記憶素子3が配置されている。この記憶素子3は、スピン注入により磁化の向きが反転する強磁性層から成る記憶層を有する。
また、この記憶素子3は、2種類のアドレス配線1,6の交点付近に配置されている。
この記憶素子3は、ビット線6と、ソース領域7とに、それぞれ上下のコンタクト層4を介して接続されている。
これにより、2種類のアドレス配線1,6を通じて、記憶素子3に上下方向の電流を流して、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させることができる。
また、本実施の形態のメモリの記憶素子3の断面図を図2に示す。
図2に示すように、この記憶素子3は、スピン注入により磁化M1の向きが反転する記憶層17に対して、下層に磁化固定層31を設けている。
記憶層17と磁化固定層31との間には、トンネルバリア層(トンネル絶縁層)となる絶縁層16が設けられ、記憶層17と磁化固定層31とにより、MTJ素子が構成されている。
また、磁化固定層31の下には下地層11が形成され、最上層にはキャップ層19が形成されている。
さらに、磁化固定層31は、交換バイアス積層フェリ構造となっている。
具体的には、2層の強磁性層13,15が非磁性層14を介して積層されて反強磁性結合しており、強磁性層13の下に隣接して反強磁性層12が配置されて、磁化固定層31が構成されている。強磁性層13は、反強磁性層12により磁化M13の向きが固定される。
2層の強磁性層13,15が反強磁性結合していることにより、強磁性層13の磁化M13が右向き、強磁性層15の磁化M15が左向きとなっており、互いに反対向きになっている。
これにより、磁化固定層31の各強磁性層13,15から漏れる磁束が、互いに打ち消し合う。
記憶層17の材料としては、特に限定はないが、鉄、ニッケル、コバルトの1種もしくは2種以上からなる合金材料を用いることができる。さらにNb,Zr,Gd,Ta,Ti,Mo,Mn,Cu等の遷移金属元素やSi,B,C等の軽元素を含有させることもできる。また、例えばCoFe/NiFe/CoFeの積層膜といったように、材料が異なる複数の膜を直接(非磁性層を介さずに)積層して、記憶層17を構成してもよい。
磁化固定層31の強磁性層13,15の材料としては、特に限定はないが、鉄、ニッケル、コバルトの1種もしくは2種以上からなる合金材料を用いることができる。さらにNb,Zr,Gd,Ta,Ti,Mo,Mn,Cu等の遷移金属元素やSi,B,C等の軽元素を含有させることもできる。また、例えばCoFe/NiFe/CoFeの積層膜といったように、材料が異なる複数の膜を直接(非磁性層を介さずに)積層して、強磁性層13,15を構成してもよい。
磁化固定層31の積層フェリを構成する非磁性層14の材料としては、ルテニウム、銅、クロム、金、銀等が使用できる。
非磁性層14の膜厚は、材料によって変動するが、好ましくは、ほぼ0.5nmから2.5nmの範囲で使用する。
磁化固定層31の強磁性層13,15と記憶層17の膜厚は、適宜調整することが可能であり、1nm以上5nm以下が適当である。
本実施の形態においては、特に、記憶素子3の記憶層17に対して、磁化固定層31とは反対側、即ち記憶層17の上層に、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層18が設けられている。このスピンバリア層18は、記憶層17とキャップ層19との間に配置され、記憶層17と接している。
さらに、スピンバリア層18が、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成されている。
即ち、スピンバリア層18が、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料、もしくは、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料を主成分として、少量の他の元素(例えば、金属元素等)が添加された材料、によって構成されている。
このようにスピンバリア層18が設けられていることにより、スピン偏極された電子の拡散が抑制されると共に、キャップ層19から記憶層17への金属元素の拡散が抑制される。
さらに、本実施の形態において、中間層である絶縁層16を、酸化マグネシウム層とした場合には、磁気抵抗変化率(MR比)を高くすることができる。
このようにMR比を高くすることによっても、スピン注入の効率を向上して、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるために必要な電流密度を低減することができる。
本実施の形態の記憶素子3は、下地層11からキャップ層19までを真空装置内で連続的に形成して、その後エッチング等の加工により記憶素子3のパターンを形成することにより、製造することができる。
上述の本実施の形態によれば、記憶層17の磁化固定層31とは反対側に、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成された、スピンバリア層18が設けられているので、このスピンバリア層18によって、スピン偏極された電子の拡散が抑制される。これにより、記憶層17においてスピン蓄積が起こり、記憶層17の磁化M1の向きが反転する際のスピンポンピング現象が抑制される。
従って、スピンポンピング現象に起因する、スピン注入効率の悪化を防いで、スピン注入効率を向上させることが可能になる。
また、スピンバリア層18によって、キャップ層19から記憶層17への金属元素の拡散を抑制して、記憶層17の強磁性体が本来持っている特性を発揮させることができるため、記憶層17の熱安定性の指標Δを大きくすることが可能になる。これにより、記憶層17の熱安定性も向上する。
記憶層17の熱安定性が向上することにより、記憶素子3に対して電流を流して情報を記録する、動作領域を拡大することが可能になり、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
従って、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができる。
また、スピン注入効率を向上させることが可能になるため、スピン注入によって記憶層17の磁化M1の向きを反転させるために必要な電流量を低減することができる。
従って、記憶素子3を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
また、図2に示した記憶素子3を備え、図1に示した構成のメモリは、メモリを製造する際に、一般の半導体MOS形成プロセスを適用できるという利点を有している。
従って、本実施の形態のメモリを、汎用メモリとして適用することが可能になる。
特に、図2に示した記憶素子3は、スピンバリア層18により記憶層17の耐熱性が向上しているため、340℃〜400℃のアニールにも記憶層17の磁気特性が劣化することがなく、一般の半導体MOS形成プロセスを容易に適用することができる。
次に、本発明の他の実施の形態として、記憶素子の概略構成図(断面図)を図3に示す。
本実施の形態の記憶素子30は、スピン注入により磁化M1の向きが反転する記憶層17に対して、下層に磁化固定層31を設け、上層に磁化固定層32を設けている。即ち、記憶層17に対して、上下2つの磁化固定層31,32を設けた構成である。
上層の磁化固定層32は、単層の強磁性層20とその上の反強磁性層12のみを有する構成である。
そして、この反強磁性層12により、磁化固定層32の強磁性層20の磁化M20の向きが固定される。
また、上層の磁化固定層32の反強磁性層12の上に、キャップ層19が形成されている。
本実施の形態においては、特に、記憶素子30の記憶層17に対して、下層の磁化固定層31及びトンネル絶縁層16とは反対側、即ち記憶層17の上層に、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層18が設けられている。
さらに、スピンバリア層18が、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成されている。
このスピンバリア層18は、記憶層17と上層の磁化固定層32の強磁性層20との間に配置され、記憶層17と接している。
従って、記憶層17とスピンバリア層18と上層の磁化固定層32とにより、MTJ素子が構成されている。即ち、このMTJ素子では、スピンバリア層18が、記憶層17と磁化固定層32との間の中間層を兼ねている。
その他の構成は、図2に示した記憶素子3と同様であるので、同一符号を付して重複説明を省略する。
また、本実施の形態の記憶素子30を用いて、図1に示したメモリと同様の構成のメモリを構成することができる。
即ち、記憶素子30を2種類のアドレス配線の交点付近に配置してメモリを構成し、2種類のアドレス配線を通じて記憶素子30に上下方向(積層方向)の電流を流して、スピン注入により記憶層17の磁化M1の向きを反転させて、記憶素子30に情報の記録を行うことができる。
これにより、記憶素子30を備えたメモリを製造する際に、一般の半導体MOS形成プロセスを適用できるという利点を有し、本実施の形態の記憶素子30を備えたメモリを、汎用メモリとして適用することが可能になる。
さらに、本実施の形態において、中間層であるトンネル絶縁層16を、酸化マグネシウム層とした場合には、磁気抵抗変化率(MR比)を高くすることができる。
このようにMR比を高くすることによっても、スピン注入の効率を向上して、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるために必要な電流密度を低減することができる。
上述の本実施の形態によれば、記憶層17の下層の磁化固定層31及びトンネル絶縁層16とは反対側に、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成された、スピンバリア層18が設けられているので、先の実施の形態と同様に、記憶層17の磁化M1の向きが反転する際のスピンポンピング現象が抑制され、スピン注入効率を向上させることが可能になる。
また、先の実施の形態と同様に、記憶層17の熱安定性が向上するので、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
さらにまた、本実施の形態では、記憶層17に対して、下層側と上層側にトンネル絶縁層16やスピンバリア層18を介して、それぞれ磁化固定層31,32が設けられているため、この構成の作用によっても、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるために必要となる電流を低減することができる。
従って、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができ、記憶素子30を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
次に、本発明のさらに他の実施の形態として、記憶素子の概略構成図(断面図)を図4に示す。
本実施の形態の記憶素子40は、特に、2層の強磁性層17,22を、非磁性層21を介して積層することによって、記憶層33が構成されている。
この場合、非磁性層21の膜厚に応じて、記憶層33内の実効的な非磁性元素の含有量が決定される。
また、記憶層33の2層の強磁性層17,22において、強磁性層17の磁化M1Aと、強磁性層22の磁化M1Bとが同じ向き(平行な向き)になっており、2層の磁化M1A,M1Bを合わせて記憶層33の磁化M1となっている。
記憶層33の強磁性層17,22の材料としては、例えばCoFeBを使用することができる。
また、記憶層33内の非磁性層21の材料としては、好ましくは、Ti,Ta,Nb,Crのうち少なくとも一種からなる非磁性金属材料を用いる。
記憶層33内の非磁性層21は、記憶層33の強磁性体に拡散しにくい非磁性材料を用いるか、或いは、前述した電極層や下地層やキャップ層19等と比較して、充分に薄い膜厚とすることによって、記憶層33に前述した特性劣化領域が広く形成されない構成とすることが望ましい。
そして、例えば、記憶層33の強磁性層17,22の主成分がCoFeBであり、非磁性層21にTi,Ta,Nb,Crのうち少なくとも一種の非磁性元素を用いる場合には、好ましくは、記憶層33全体に占める非磁性元素の含有量が1原子%以上20原子%以下となるように、非磁性層21の膜厚を設定する。
その他の構成は、図2に示した先の実施の形態の記憶素子3と同様であるので、同一符号を付して重複説明を省略する。
磁化固定層31と記憶層33の強磁性層13,15,17,22の膜厚は、1nm以上5nm以下が適当である。
本実施の形態の記憶素子40は、下地層11からキャップ層19までを真空装置内で連続的に形成して、その後エッチング等の加工により記憶素子40のパターンを形成することにより、製造することができる。
また、本実施の形態の記憶素子40を用いて、図1に示したメモリと同様の構成のメモリを構成することができる。
即ち、記憶素子40を2種類のアドレス配線の交点付近に配置してメモリを構成し、2種類のアドレス配線を通じて記憶素子40に上下方向(積層方向)の電流を流して、スピン注入により記憶層33の磁化M1(M1A,M1B)の向きを反転させて、記憶素子40に情報の記録を行うことができる。
これにより、記憶素子40を備えたメモリを製造する際に、一般の半導体MOS形成プロセスを適用できるという利点を有し、本実施の形態の記憶素子40を備えたメモリを、汎用メモリとして適用することが可能になる。
上述の本実施の形態によれば、記憶層33の磁化固定層31とは反対側に、スピンバリア層18が設けられているので、図2に示した先の実施の形態の記憶素子3と同様に、記憶層33の磁化M1(M1A,M1B)の向きが反転する際のスピンポンピング現象が抑制され、スピン注入効率を向上させることが可能になる。
また、先の実施の形態と同様に、記憶層33の熱安定性を向上させることができるので、動作のマージンを広く確保し、記憶素子40を安定して動作させることができる。
さらに、本実施の形態によれば、記憶層33が、2層の強磁性層17,22を、非磁性層21を介して積層した構成であることにより、記憶層33の飽和磁化Msを低減させることができ、これによっても電流の閾値Icを低減することができる。
また、強磁性層17,22の層間の相互作用の強さを調整することが可能になるため、記憶素子40の寸法がサブミクロン以下になっても、電流の閾値Icが大きくならないように抑制することが可能になるという効果が得られる。
従って、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができ、記憶素子40を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
なお、上述の本実施の形態の記憶素子40において、強磁性層17,22の膜厚と非磁性層21の膜厚との関係によっては、強磁性層17の磁化M1Aと強磁性層22の磁化M1Bとが逆向き(反平行な向き)になって、2層17,22が交換結合する場合もある。
この場合でも、同様に、スピンバリア層18及び非磁性層21をそれぞれ設けた効果が得られる。
また、上述の本実施の形態では、非磁性層21を構成する非磁性元素として、Ti,Ta,Nb,Crを用いたが、同様の効果が得られるものであれば、その他どのような非磁性元素を用いても良い。
さらにまた、上述の本実施の形態のように非磁性層21を介して2層以上の強磁性層17,22を積層した構成とする代わりに、記憶層の強磁性体に非磁性元素を含有させる構成としても、同様に記憶層の飽和磁化Msを低減させることができ、これにより電流の閾値Icを低減することができる。
この場合の非磁性元素の含有量も、積層する場合と同様に設定することができる。
次に、本発明のさらに他の実施の形態として、記憶素子の概略構成を説明する。
本実施の形態では、図2に示した構造の記憶素子3において、さらに、スピンバリア層18を、酸化物、窒化物、フッ化物から成る材料に、非磁性金属元素を含有させた構成とする。
これにより、酸化物、窒化物、フッ化物のみによりスピンバリア層18を構成した場合と比較して、スピンバリア層18の抵抗値を低減することができる。
スピンバリア層18に含有させる非磁性金属元素としては、例えば、Ti,Ta,Zr,Hf,Nb,Cr,Mo,W,V,Cu,Au,Pd,Pt等の遷移金属元素や貴金属元素が挙げられる。
このように非磁性金属元素を含有するスピンバリア層18は、例えば次のように形成することができる。
図5に記憶素子3となる積層膜の断面図を示すように、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる絶縁材料から成る高抵抗層41と、非磁性金属層42とを積層させて、記憶素子層3となる積層膜43を形成する。
その後、熱処理によって、非磁性金属層42から高抵抗層41へ非磁性金属元素を拡散させて、非磁性金属元素によって抵抗値が低減されて、不完全な絶縁層となったスピンバリア層18を形成することができる。
そして、好ましくは、非磁性金属元素を含有するスピンバリア層18の面積抵抗値が、10Ωμm以下となるようにする。
スピンバリア層18の抵抗値が非磁性金属元素によって低減されているので、例えば、スピンバリア層18にトンネル絶縁層16と同じ絶縁材料を用いて、かつトンネル絶縁層16と同じ膜厚とした場合でも、トンネル絶縁層16と比較してスピンバリア層18を充分に低い抵抗値とすることができる。
これにより、スピンバリア層18を設けても、トンネル絶縁層16を有するMTJ素子における磁気抵抗効果による記憶素子3の抵抗値の変化を、問題なく検出することができるため、記憶素子3に記録された情報を読み出すことができる。
なお、非磁性金属元素を拡散させるための非磁性金属層42は、熱処理によって非磁性金属元素が高抵抗層41に拡散することにより、全てなくなる場合と、熱処理後も残る場合とがある。
熱処理後も非磁性金属層42が残る場合には、図2の記憶素子3の構成に対して、スピンバリア層18とキャップ層19との間に、非磁性金属層42が存在する構成となる。
この場合には、非磁性金属層42が、通常非磁性金属から構成されているキャップ層19と材料が同一又は類似していることになるので、非磁性金属層42をキャップ層19の一部として捉えることもできる。
また、非磁性金属層42の非磁性金属元素が、スピンバリア層18の下の記憶層17にまで拡散すると、前述した特性劣化領域が形成される虞がある。
このため、非磁性金属元素が記憶層17になるべく拡散しないように、熱処理等の条件を制御することが望ましい。そして、例えば、図5に示した積層膜43を形成する場合において、非磁性金属層42の膜厚をある程度以下に薄くする。
上述の本実施の形態によれば、図2に示した先の各実施の形態と同様に、スピンバリア層18によって、記憶層17の磁化M1の向きが反転する際のスピンポンピング現象が抑制され、スピン注入効率を向上させることが可能になる。
また、先の実施の形態と同様に、記憶層17の熱安定性を向上させることができるので、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
さらに、スピンバリア層18が非磁性金属元素を含有していることにより、スピンバリア層18の抵抗を低減することができるため、スピンバリア層18を設けたことによって記憶素子3全体の抵抗値が高くなり過ぎないように、抵抗値を抑えることができる。
これにより、記憶素子3に対して情報の記録や情報の読み出しを行う際に、余分な電圧を必要とせず、またMR比の目減りもない。
従って、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができ、記憶素子3を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
次に、本発明のさらに別の実施の形態として、記憶素子の概略構成図を図6に示す。
本実施の形態の記憶素子50は、特に、スピンバリア層18が記憶層17と直接接するのではなく、その間に非磁性金属層23を介して積層された構成である。
このように、記憶層17とスピンバリア層18との間に非磁性金属層23を設けたことにより、スピンバリア層18に含まれる酸素原子等の記憶層17への拡散や混合等に起因する磁気特性の変化を抑制することができる。
記憶層17とスピンバリア層18との間に設ける非磁性金属層23の材料としては、それ自体ではスピンポンピング効果の小さい非磁性金属、例えば、CuやTa等を用いることができる。また、例えば、Al,Si,Ti,Zn,Zr,Nb,Mo,Hf,W,Ru等を使用することも考えられる。
この非磁性金属層23も、記憶層17の強磁性体に拡散しにくい非磁性材料を用いるか、或いは、前述した電極層や下地層やキャップ層19等と比較して、充分に薄い膜厚とすることによって、記憶層17に前述した特性劣化領域が広く形成されない構成とすることが望ましい。
その他の構成は、図2に示した先の実施の形態の記憶素子3と同様であるので、同一符号を付して重複説明を省略する。
また、本実施の形態の記憶素子50を用いて、図1に示したメモリと同様の構成のメモリを構成することができる。
即ち、記憶素子50を2種類のアドレス配線の交点付近に配置してメモリを構成し、2種類のアドレス配線を通じて記憶素子50に上下方向(積層方向)の電流を流して、スピン注入により記憶層17の磁化M1の向きを反転させて、記憶素子50に情報の記録を行うことができる。
これにより、記憶素子50を備えたメモリを製造する際に、一般の半導体MOS形成プロセスを適用できるという利点を有し、本実施の形態の記憶素子50を備えたメモリを、汎用メモリとして適用することが可能になる。
上述の本実施の形態によれば、記憶層17の磁化固定層31とは反対側に、スピンバリア層18が設けられているので、先の各実施の形態の記憶素子3,30,40と同様に、記憶層17の磁化M1の向きが反転する際のスピンポンピング現象が抑制され、スピン注入効率を向上させることが可能になる。
また、先の実施の形態と同様に、記憶層17の熱安定性を向上させることができるので、動作のマージンを広く確保し、記憶素子50を安定して動作させることができる。
さらに、本実施の形態によれば、スピンバリア層18と記憶層17との間に非磁性金属層23が設けられていることにより、スピンバリア層18に含まれる酸素原子等の記憶層17への拡散や混合等に起因する記憶層17の磁気特性の変化を抑制することができる。
これにより、記憶層17を構成する強磁性材料が本来有する良好な磁気特性を保持することができ、これによっても、スピン注入効率を向上させることができる。
従って、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができ、記憶素子50を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
本発明では、上述の各実施の形態で示した記憶素子3,30,40,50の膜構成に限らず、様々な膜構成を採用することが可能である。
ここで、本発明の記憶素子の構成において、具体的に各層の材料や膜厚等を選定して、特性を調べた。
実際のメモリには、図1に示したように、記憶素子以外にもスイッチング用の半導体回路等が存在するが、ここでは、記憶層の磁化反転特性を調べる目的で、記憶素子のみを形成したウェハにより検討を行った。
<実験1>
(実施例)
厚さ0.575mmのシリコン基板上に、厚さ2μmの熱酸化膜を形成し、その上に図4に示した構成の記憶素子40を形成した。
具体的には、図4に示した構成の記憶素子40において、各層の材料及び膜厚を、下地層11を膜厚3nmのTa膜、反強磁性層12を膜厚30nmのPtMn膜、磁化固定層31を構成する強磁性層13を膜厚2.2nmのCoFe膜、強磁性層15を膜厚2nmのCoFeB膜、積層フェリ構造の磁化固定層31を構成する非磁性層14を膜厚0.8nmのRu膜、トンネル絶縁層16を膜厚0.8nmのMgO膜、記憶層33を構成する強磁性層17,22を膜厚1nmのCoFeB膜、非磁性層21、スピンバリア層18を膜厚0.8nmのMgO膜、キャップ層19を膜厚5nmのTa膜と選定した。
上記膜構成で、CoFeB膜の組成はCo48Fe32B20(原子%)、CoFe膜の組成はCo90Fe10(原子%)、PtMn膜の組成はPt38Mn62(原子%)とした。
MgO膜から成るトンネル絶縁層16及びスピンバリア層18以外の各層は、DCマグネトロンスパッタ法を用いて成膜した。
MgO膜から成るトンネル絶縁層16及びスピンバリア層18は、RFマグネトロンスパッタ法を用いて成膜した。
さらに、記憶素子40の各層を成膜した後に、磁場中熱処理炉で、10kOe・360℃・2時間の熱処理を行い、反強磁性層12のPtMn膜の規則化熱処理を行った。
次に、ワード線部分をフォトリソグラフィによってマスクした後に、ワード線以外の部分の積層膜に対してArプラズマにより選択エッチングを行うことにより、ワード線(下部電極)を形成した。この際に、ワード線部分以外は、基板の深さ5nmまでエッチングされた。
その後、電子ビーム描画装置により記憶素子40のパターンのマスクを形成し、積層膜に対して選択エッチングを行い、記憶素子40を形成した。記憶素子40部分以外は、反強磁性層12の深さ10nmまでエッチングされた。
なお、特性評価用の記憶素子には、磁化反転に必要なスピントルクを発生させるために、記憶素子に充分な電流を流す必要があるため、トンネル絶縁層の抵抗値を抑える必要がある。そこで、記憶素子40のパターンを、短軸90nm×長軸180nmの楕円形状として、記憶素子40の面積抵抗値(Ωμm)が20Ωμmとなるようにした。
次に、記憶素子40部分以外を、厚さ100nm程度のAlのスパッタリングによって絶縁した。
その後、フォトリソグラフィを用いて、上部電極となるビット線及び測定用のパッドを形成して、記憶素子40の試料を作製した。
そして、上述の製造方法により、記憶素子40において、非磁性層21の材料(非磁性元素)と、非磁性層21の膜厚とをそれぞれ変えた、記憶素子40の各試料を作製した。
非磁性層21の非磁性元素は、Ti,Ta,Nb,Crのいずれかとし、それぞれの非磁性元素について、非磁性層21の膜厚を、0.1nm,0.2nm,0.3nm,0.4nm,0.5nm,1.0nmの6通りとした試料を作製した。これらの膜厚は記憶層33全体のうち、非磁性元素の含有量(原子%)が3%,6%,8%,11%,13%,26%であることに相当する。
非磁性元素が4通りであり、膜厚が6通りであるので、合計24通りとなる。
また、他の実施例として、図2に示したように、非磁性層21を設けない記憶層17を有する記憶素子3についても、記憶層17の膜厚を2nmとして、同様の製造方法によって、試料を作製した。
(比較例)
さらに、比較例として、図7Aに断面図を示すように、図4に示した記憶素子40に対してスピンバリア層18を設けない構成の記憶素子について、非磁性層21の非磁性元素及び膜厚を実施例と同様に変えた24通りの試料を、同様の製造方法によって作製した。
また、他の比較例として、図7Bに断面図を示すように、図2に示した記憶素子3に対してスピンバリア層18を設けない構成の記憶素子についても、記憶層17の膜厚を2nmとして、同様の製造方法によって、記憶素子の試料を作製した。
(熱安定性の指標Δの測定)
まず、実施例及び比較例の各試料の記憶素子に対して、前述した熱安定性の指標Δの値を測定した。
このうち、記憶層33を構成する非磁性層21の非磁性元素をTiとし、非磁性層21の膜厚を0.2nmとした場合について、スピンバリア層18がある(図4の記憶素子40の)試料、並びに、スピンバリア層18のない(図7Aの記憶素子の)試料について、測定結果を比較して、図8に示す。
図8からわかるように、熱安定性の指標Δは、スピンバリア層18がない場合には48程度であるのに対して、スピンバリア層18がある場合には、71程度と増加している。これは、熱安定性が向上していることを意味しており、スピンバリア層18を設けることにより、記憶素子の熱安定性を向上させることができることを示している。通常、記憶素子に用いるためには、70以上の熱安定性の指標Δを有することが望ましい。
その他の非磁性元素や膜厚とした場合においても、同様の結果が得られた。
(TMR比の測定)
記憶素子の読み出し特性を評価する目的で、以下の方法により、TMR比の測定を行った。
記憶素子の長軸方向に10Hzの交流磁界を印加しながら、記憶素子に100mVの電圧を印加した状態で、抵抗値を測定した。
外部磁界により記憶層33の磁化M1の向きが反転すると、記憶素子の抵抗値が変化する。このとき、記憶層33の磁化M1の向きが、磁化固定層31の(記憶層33側の)強磁性層15の磁化M15の向きに対して、反平行のときの抵抗値をR(反平行)、平行のときの抵抗値をR(平行)としたとき、TMR比=[R(反平行)−R(平行)]/R(平行)と定義した。
実施例及び比較例の記憶素子の各試料に対して、それぞれTMR比を測定した。
TMR比の測定結果を、図9A〜図9Dに示す。図9AはTi層、図9BはTa層、図9CはNb層、図9DはCr層を、それぞれ非磁性層21として形成した場合についてまとめて、厚さ(膜厚)とTMR比の関係を示しており、さらに各図において、厚さ0nmとして、図2に示した記憶素子3及び図7Bに示した記憶素子の試料のTMR比を示している。各図において、○印はスピンバリア層18のない記憶素子(比較例)の試料を示し、●印はスピンバリア層18のある記憶素子(実施例)の試料を示している。
図9A〜図9Dからわかるように、非磁性元素の添加量が大きくなるにつれて、TMR比が減少する傾向がある。特に、非磁性層21の膜厚が1.0nmの場合には、TMR比が10%以下とほぼ消失しており、抵抗の違いにより磁化状態を読み出す、記録の読み出し動作が困難になるため、記憶素子として採用できない。
このことから、非磁性元素の添加量には上限があることがわかり、望ましい非磁性元素の添加量の上限は20原子%である。
また、同じ膜厚(添加量)で比較すると、いずれの非磁性元素でも、スピンバリア層18を設けた実施例の方が、スピンバリア層18のない比較例よりもTMR比が上回っていることがわかる。
(反転電流値の測定)
記憶素子の書き込み特性を評価する目的で、反転電流値の測定を行った。
記憶素子に10μsから100msのパルス幅の電流を流して、その後の記憶素子の抵抗値を測定した。記憶素子の抵抗値を測定する際には、温度を室温25℃として、ワード線の端子とビット線の端子にかかるバイアス電圧が10mVとなるように調節した。さらに、記憶素子に流す電流量を変化させて、この記憶層の磁化が反転する電流値を求めた。この電流値のパルス幅依存性をパルス幅1nsに外挿した値を、反転電流値とした。
そして、記憶素子間のばらつきを考慮するために、同一構成の記憶素子を20個程度作製して、反転電流値の測定を行い、その平均値をとった。さらに、反転電流値の平均値を記憶素子の膜面方向の断面積で割って、反転電流密度を求めた。
反転電流密度の測定結果を、図10A〜図10Dに示す。図10AはTi層、図10BはTa層、図10CはNb層、図10DはCr層を、それぞれ非磁性層21として形成した場合についてまとめて、厚さ(膜厚)とTMR比の関係を示しており、さらに各図において、厚さ0nmとして、図2に示した記憶素子3及び図7Bに示した記憶素子の試料のTMR比を示している。各図において、○印はスピンバリア層18のない記憶素子(比較例)の試料を示し、●印はスピンバリア層18のある記憶素子(実施例)の試料を示している。
図10A〜図10Dからわかるように、スピンバリア層18がない場合(比較例)も、スピンバリア層18がある場合(実施例)も、ある程度の厚さの非磁性層21を挿入して記憶層33を構成することにより、非磁性層21を挿入しない場合と比較して、反転電流密度を低減することができる。
これは、非磁性層21を挿入することにより、記憶層33の飽和磁化Msが減少したため、反転電流密度が低減されたからである、と推測される。
また、非磁性層21を挿入した構成では、スピンバリア層18がない場合(比較例)よりも、スピンバリア層18がある場合(実施例)の方が、いずれの膜厚においても、反転電流密度が小さくなっている。即ち、スピンバリア層18を設けた効果が現れている。
なお、非磁性層21の膜厚を1.0nmとした試料では、反転は確認されなかった。非磁性層21の膜厚を増やしていくに従って、反転電流密度が増大していき、ある程度膜厚が大きくなると無限大に収束して、反転しなくなると考えられる。
一方、スピンバリア層18がある実施例のうち、非磁性層21を挿入していない場合(図2の記憶素子3)には、反転電流密度が大きくなっている。
これは、スピンバリア層18を設けたことにより、スピン偏極した電子の通過がやや制限されると考えられる上に、記憶層17の膜厚が2nmで飽和磁化Msが大きくなっていて磁化M1の向きが反転しにくくなっているため、これらのバランスにより、反転電流密度が非常に大きくなっているものと考えられる。
なお、非磁性層21を挿入していない場合でも、スピンバリア層18を設けたことにより、前述したように、スピンポンピング現象を抑制して、スピン注入効率を向上させ、かつ熱安定性を向上させる効果は得られる。
従って、スピンバリア層18を設けて、かつ非磁性層21を挿入していない場合に、反転電流密度を低く抑えるためには、スピン偏極した電子の通過が抑制されず、また記憶層17の飽和磁化Msがあまり大きくならないように、スピンバリア層18の膜厚又は記憶層(強磁性層)17の膜厚を選定する必要がある。例えば、スピンバリア層18の膜厚又は記憶層(強磁性層)17の膜厚を、この実施例よりも薄くすることが考えられる。
以上の結果から、図4に示したように、記憶層33に対してスピンバリア層18を設けると共に、強磁性層17,22の間に非磁性層21を挿入して記憶層33を構成することにより、反転電流密度を低減することが可能であることが明らかになった。
このような効果を得るために必要となる、スピンバリア層18への非磁性元素の添加量は、1原子%以上であればよい。
なお、反転電流値の電流パルス幅依存性の傾きは、前述した記憶素子の熱安定性の指標Δに対応する。
反転電流値がパルス幅によって変化しない(傾きが小さい)ほど、熱安定性の指標Δの値が大きくなり、熱の擾乱に強いことを意味する。
<実験2>
厚さ0.725mmのシリコン基板上に、厚さ300nmの熱酸化膜を形成し、その上に図2に示した構成の記憶素子3を形成した。また、記憶素子3のスピンバリア層18を形成する際に、図5に示したように、高抵抗層41と非磁性金属層42とを積層した。
具体的には、図2に示した構成の記憶素子3において、各層の材料及び膜厚を、下地膜11を膜厚3nmのTa膜、反強磁性層12を膜厚20nmのPtMn膜、磁化固定層31を構成する強磁性層13を膜厚2nmのCoFe膜、強磁性層15を膜厚2.5nmのCoFeB膜、積層フェリ構造の磁化固定層31を構成する非磁性層14を膜厚0.8nmのRu膜、トンネル絶縁層16を膜厚0.9nmの酸化マグネシウム膜、記憶層17を膜厚2nmのCoFeB膜、スピンバリア層18となる膜を高抵抗層41の酸化マグネシウム膜と非磁性金属層42の膜厚5nmのTi膜との積層、キャップ層19を膜厚5nmのTa膜と選定した。また、下地膜11と反強磁性層12との間に図示しない膜厚100nmのCu膜(後述するワード線となるもの)を設けて、各層を形成した。
上記膜構成で、PtMn膜の組成はPt50Mn50(原子%)、CoFe膜の組成はCo90Fe10(原子%)として、CoFeB膜のCoとFeとBの比率は50:30:20とした。
酸化マグネシウム膜から成るトンネル絶縁層16及び高抵抗層41以外の各層は、DCマグネトロンスパッタ法を用いて成膜した。
酸化マグネシウム(MgO)膜から成るトンネル絶縁層16及び高抵抗層41は、RFマグネトロンスパッタ法を用いて成膜した。
さらに、記憶素子3の各層を成膜した後に、磁場中熱処理炉で、10kOe・360℃・2時間の熱処理を行い、反強磁性層12のPtMn膜の規則化熱処理を行うと共に、非磁性金属層42から高抵抗層41へ非磁性金属元素を拡散させてスピンバリア層18を形成した。
次に、ワード線部分をフォトリソグラフィによってマスクした後に、ワード線以外の部分の積層膜に対してArプラズマにより選択エッチングを行うことにより、ワード線(下部電極)を形成した。この際に、ワード線部分以外は、基板の深さ5nmまでエッチングされた。
その後、電子ビーム描画装置により記憶素子3のパターンのマスクを形成し、積層膜に対して選択エッチングを行い、記憶素子3を形成した。記憶素子3部分以外は、ワード線のCu層直上までエッチングした。
なお、特性評価用の記憶素子には、磁化反転に必要なスピントルクを発生させるために、記憶素子に充分な電流を流す必要があるため、トンネル絶縁層の抵抗値を抑える必要がある。そこで、記憶素子3のパターンを、短軸0.09μm×長軸0.18μmの楕円形状として、記憶素子3の面積抵抗値(Ωμm2)が20Ωμm2となるようにした。
次に、記憶素子3部分以外を、厚さ100nm程度のAlのスパッタリングによって絶縁した。
その後、フォトリソグラフィを用いて、上部電極となるビット線及び測定用のパッドを形成した。
このようにして、記憶素子3の試料を作製した。
そして、上述の製造方法により、スピンバリア層18となる高抵抗層41の酸化マグネシウム膜の膜厚を変えた各試料を作製した。即ち、スパッタ後の酸化マグネシウム膜の膜厚を0.5nm,0.7nm,0.9nm,1.1nm,1.3nmとして、それぞれ記憶素子3の各試料を作製した。
なお、記憶層17の飽和磁化Msと膜厚、並びに記憶素子3の面積により、熱安定性の指標Δは規定され、本実験条件においては、70程度の値が確保されている。
<実験3>
図2に示した構成の記憶素子3において、スピンバリア層18となる非磁性金属層42を膜厚5nmのTa膜とした他は、実験2の記憶素子3と同様にして、記憶素子3の試料を作製した。
そして、スピンバリア層18となる高抵抗層41の酸化マグネシウム膜の膜厚を変えた各試料を作製した。即ち、スパッタ後の酸化マグネシウム膜の膜厚を0.5nm,0.7nm,0.9nm,1.1nm,1.3nmとして、それぞれ記憶素子3の各試料を作製した。
<実験4>
図2に示した構成の記憶素子3において、スピンバリア層18となる非磁性金属層42を膜厚3nmのAu膜とした他は、実験2の記憶素子3と同様にして、記憶素子3の試料を作製した。
そして、スピンバリア層18となる高抵抗層41の酸化マグネシウム膜の膜厚を変えた各試料を作製した。即ち、スパッタ後の酸化マグネシウム膜厚を0.5nm,0.7nm,0.9nm,1.1nm,1.3nmとして、それぞれ記憶素子3の各試料を作製した。
<実験5>
図3に示した構成、即ち記憶層17の下層及び上層にそれぞれ磁化固定層31,32を設けたいわゆるDual構造の記憶素子30において、各層の材料及び膜厚を、下地膜11を膜厚3nmのTa膜、下層の磁化固定層31及び上層の磁化固定層32のそれぞれの反強磁性層12を膜厚20nmのPtMn膜、磁化固定層31を構成する強磁性層13を膜厚2nmのCoFe膜、強磁性層15を膜厚2.5nmのCoFeB膜、積層フェリ構造の磁化固定層31を構成する非磁性層14を膜厚0.8nmのRu膜、トンネル絶縁層16を膜厚0.9nmの酸化マグネシウム膜、記憶層17を膜厚2nmのCoFeB膜、スピンバリア層18となる膜を高抵抗層41の酸化マグネシウム膜と非磁性金属層42の膜厚5nmのTa膜、磁化固定層32の強磁性層20を膜厚2.5nmのCoFe膜、キャップ層19を膜厚5nmのTa膜と選定した。
その他の構成及び製造方法は、実験2の記憶素子3と同様にして、記憶素子30の試料を作製した。
そして、スピンバリア層18となる高抵抗層41の酸化マグネシウム膜の膜厚を変えた各試料を作製した。即ち、スパッタ後の酸化マグネシウム膜の膜厚を0.5nm,0.7nm,0.9nm,1.1nm,1.3nmとして、それぞれ記憶素子30の各試料を作製した。
これら実験2〜実験5で作製した記憶素子3,30の各試料に対して、それぞれ以下のようにして特性の評価を行った。
(TMR比の測定)
実験1と同様の測定方法により、各試料の記憶素子に対して、TMR比を測定した。
(反転電流値の測定)
記憶素子3,30の書き込み特性を評価する目的で、反転電流値の測定を行った。
なお、各記憶素子3,30の反転電流値のばらつきを考慮するために、同一構成の記憶素子3,30を20個程度作製して、反転電流値の測定を行い、その平均値をとった。
この反転電流値は、両極性(上向きと下向き)の電流についてそれぞれ測定した。
記憶層17の磁化M1の向きと、磁化固定層31の強磁性層15の磁化M15の向きとの関係は、ワード線からビット線に電流を流す場合には、平行状態から反平行状態に反転し、ビット線からワード線に電流を流す場合には、反平行状態から平行状態に反転する。
そして、ワード線からビット線に電流を流す場合の反転電流値をIc、ビット線からワード線に電流を流す場合の反転電流値をIcと定義した。
実験2〜実験5の各試料の記憶素子3,30に対して、TMR比を測定した結果を、図11A〜図11Dに示す。図11AはTi層、図11BはTa層、図11CはAu層を、それぞれ非磁性金属層42として形成した場合を示し、図11DはDual構造(図3の記憶素子30)でスピンバリア層18に用いられる非磁性金属層42をTa膜とした場合を示している。
また、実験2〜実験5の各試料の記憶素子3,30に対して、反転電流密度を測定した結果を、図12A〜図12Dに示す。図12AはTi層、図12BはTa層、図12CはAu層を、それぞれ非磁性金属層42として形成した場合を示し、図12DはDual構造(図3の記憶素子30)でスピンバリア層18に用いられる非磁性金属層42をTa膜とした場合を示している。
図11A〜図11Dからわかるように、TMR比は、スピンバリア層18を構成する熱処理前の高抵抗層41のMgO膜の膜厚に依存しており、膜厚が厚いときには、スピンバリア層18により素子抵抗値が上昇するため、その結果としてTMR比の低下が認められる。
各図中破線で示す100%のTMR比は、メモリとして、読み取り速度とマージンを得るために必要な値であり、反転電流密度を改善するためにTMR比が犠牲になったとしても、メモリとしての特性を維持できる範囲である。
従って、実験2〜実験5の各試料では、高抵抗層41のMgO膜の膜厚を、おおむね1.2nm以下とすることが望ましい。
図12A〜図12Dからわかるように、反転電流密度もやはり、スピンバリア層18を構成する熱処理前の高抵抗層41のMgO膜の膜厚に依存しているが、膜厚が薄いときには、スピンバリア層18を設けた効果が小さくなるため、その結果として反転電流密度が大きくなっている。
各図中破線で示す2.5MA/cmの反転電流密度は、スピン反転を利用したメモリとして実現可能とするために必要な値であり、反転電流密度を2.5MA/cm以下に小さくすることにより、スピン反転を利用したメモリを構成することができる。
従って、実験2〜実験5の各試料では、高抵抗層41のMgO膜の膜厚を、おおむね0.7nm以下とすることが望ましい。
そして、図11A〜図11Dの結果と合わせると、スピンバリア層18となる高抵抗層41のMgO膜の、望ましい膜厚の範囲は、0.7nm〜1.2nmとなる。
以上の結果から、非磁性元素が含有された絶縁材料(酸化マグネシウム等)から成るスピンバリア層18を設けることにより、メモリとしての読み出し動作に必要な100%以上のMR比を維持することができると共に、最も大きな課題である反転電流密度を飛躍的に低減することができ、例えば2.5MA/cm以下の小さい電流密度で情報の書き込みを行うことが可能な記憶素子3,30を作製することができる。
従って、これまでにない、低消費電力型のスピン注入を利用したメモリを実現することが可能になる。
<実験6>
(実施例)
表面に熱酸化膜を形成したシリコン基板上に、図6に示した構成の記憶素子50を形成した。
具体的には、図6に示した構成の記憶素子50において、各層の材料及び膜厚を、下地層11を膜厚20nmのTa膜、反強磁性層12を膜厚30nmのPtMn膜、積層フェリ構造の磁化固定層31を構成する強磁性層13を膜厚2.2nmのCoFe膜、非磁性層14を膜厚0.8nmのRu膜、強磁性層15を膜厚2nmのCoFeB膜、トンネル絶縁膜16を膜厚0.9nmのMgO膜、記憶層17を膜厚2.2nmのCoFeB膜、非磁性金属層23を膜厚0.2nmのCu膜、スピンバリア層18を膜厚0.8nmのMgO膜、キャップ層19を膜厚10nmのTa膜と選定した。
上記膜構成で、CoFeB膜の組成はCo48Fe32B20(原子%)、CoFe膜の組成はCo90Fe10(原子%)、PtMn膜の組成はPt38Mn62(原子%)とした。
これらの各層は、マグネトロンスパッタ法により成膜した。
さらに、記憶素子50の各層を成膜した後に、磁場中熱処理炉で、10kOe・340℃・2時間の熱処理を行い、反強磁性層12のPtMn膜の規則化熱処理を行った。
次に、フォトリソグラフィ、電子線描画、エッチング等の手法を用い、短軸110nm×長軸170nm程度の楕円形のパターンを有する記憶素子50の試料を作製した。
また、他の実施例として、図2に示したように、非磁性金属層(Cu膜)23を設けない記憶層17を有する記憶素子3についても、同様の製造方法によって、記憶素子3の試料を作製した。
(反転電流値の測定)
記憶素子の書き込み特性を評価する目的で、反転電流値の測定を行った。
反転電流の指標は、絶対温度0Kにおける反転電流密度を表すJc0とする。このJc0について説明する。一般に有限温度でスピン注入(スピントランスファ)による磁化反転を測定しようとすると、熱擾乱による磁化反転の効果が重畳するため、純粋なスピン注入の効果を切り分けることが困難である。例えば熱的に極めて不安定な磁性材料は磁化が反転しやすいが、これはスピン注入(スピントランスファ)による効果であるとは言い難く、かつこのような磁性材料は記憶保持の観点でメモリに使用することはできない。
絶対0Kに近い極低温での評価を行うことができれば、上述の熱擾乱による問題が解決される。このときの反転電流密度は、Jc0に近い値となり、熱擾乱の影響を含まないものである。
しかしながら、極低温での評価は測定上の困難を伴うため、外部磁場を併用することによって、Jc0を見積もった。
具体的には、以下の手順で測定と見積もりを行った。
記憶素子に一定の外部磁界を印加すると共に、積層膜の膜面に垂直な方向の電流を印加する。この状態で、電流の大きさを変化させると、ある閾値以上の電流量(反転電流)で記憶層の磁化の向きの反転(磁化反転)が起こる。この過程を外部磁界の大きさを変えて繰り返す。
そして、ある閾値以上の外部磁界を印加すると、電流を印加しなくても磁化反転が起こるようになる。これは通常のMRAMと同様の磁化反転である。
外部磁界を印加する理由は、熱擾乱に起因する反転を決めるところの、二つの安定なエネルギー状態を隔てるエネルギバリアの高さを操作するためである。
そして、外部磁界に対する反転電流の依存性を利用することにより、Jc0の大きさを知ることができる(例えば、Y.Higo et al.,Appl.Phys.Lett 87 082502(2005)参照)。
まず、非磁性金属層23の厚さを0.2nmとした実施例(図6の記憶素子50)の試料に対して、上述の手順で測定を行い、それぞれの外部磁界において、記憶層17の磁化M1の向きの反転が起こる閾値電流を求めた。
測定結果として、横軸に外部磁界、縦軸に電流をとって、記憶層17の磁化M1の向きの反転が起こる閾値電流をプロットして、図13に示す。なお、図13において、縦軸の右側に、印加した電流と記憶素子50の面積とから求められる電流密度を、併せて記載している。
図13より、外部磁界の大きさにより、閾値電流が変化していくことがわかる。また、ある程度の大きさの外部磁界を印加することにより、電流量がほぼ0でも磁化反転が起こっていることがわかる。
実施例の各々の記憶素子について、前述した手順により、それぞれ同じ条件で作製した記憶素子を20個程度作製して、前述した手順により閾値電流(反転電流)測定を行い、その平均値をとった。さらに、反転電流の平均値を記憶素子の膜面方向の断面積で割って、反転電流密度を求めた。
反転電流密度の測定結果を、図14に示す。
図14より、実施例のうち、記憶層17とスピンバリア層18とが直接堆積された図2の記憶素子3の構成では、反転電流密度の値が3.88MA/cmであった。
さらに、実施例のうち、記憶層17とスピンバリア層18との間に非磁性金属層23を設けた図6の記憶素子50の構成では、反転電流密度の値は2.59MA/cmであった。
以上の結果より、スピンバリア層18及び記憶層17の間に非磁性金属層23を設けることにより、反転電流密度を低減できることがわかる。
本発明では、上述の各実施の形態で示した記憶素子3,30,40,50の膜構成に限らず、様々な膜構成を採用することが可能である。
上述の各実施の形態では、記憶素子の磁化固定層31を交換バイアス積層フェリ構造としているが、磁化の固定が十分であるなら、単層の強磁性層でもよいし、反強磁性層/強磁性層の積層構造、或いは反強磁性層のない積層フェリ構造としても問題ない。
磁化固定層の各強磁性層は、単層に限らず、材料の異なる層を積層した積層膜であってもよい。
また、各層の積層順序を、上述の各実施の形態とは逆にして、記憶素子を構成してもかまわない。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
本発明の一実施の形態のメモリの概略構成図(斜視図)である。 図1の記憶素子の断面図である。 本発明の他の実施の形態の記憶素子の概略構成図である。 本発明のさらに他の実施の形態の記憶素子の概略構成図である。 本発明の別の実施の形態における、記憶素子となる積層膜の断面図である。 本発明のさらに別の実施の形態の記憶素子の概略構成図である。 A、B 本発明に対する比較例の記憶素子の断面図である。 実験1の実施例及び比較例の記憶素子の各試料の熱安定性の指標Δを示した図である。 A〜D 実験1の実施例及び比較例の記憶素子の試料における非磁性層の厚さとTMR比との関係を示した図である。 A〜D 実験1の実施例及び比較例の記憶素子の試料における非磁性層の厚さと反転電流密度との関係を示した図である。 A〜D 実験2〜実験5の記憶素子の試料におけるMgO膜の膜厚とTMR比との関係を示した図である。 A〜D 実験2〜実験5の記憶素子の試料におけるMgO膜の膜厚と反転電流密度との関係を示した図である。 実験6の非磁性金属層を設けた実施例の試料における、外部磁界と閾値電流(反転電流)との関係を示す図である。 実験6の記憶素子の試料における反転電流密度を示した図である。 スピン注入による磁化反転を利用したメモリの概略構成図(斜視図)である。 図15のメモリの断面図である。 従来のMRAMの構成を模式的に示した斜視図である。
符号の説明
3,30,40,50 記憶素子、11 下地層、12 反強磁性層、13,15,20,22 強磁性層、14,21 非磁性層、16 トンネル絶縁層、17 記憶層(強磁性層)、18 スピンバリア層、19 キャップ層、23,42 非磁性金属層、31,32 磁化固定層、33 記憶層、41 高抵抗層、43 積層膜

Claims (13)

  1. 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有し、
    前記記憶層に対して、トンネル絶縁層を介して、磁化固定層が設けられ、
    積層方向に電流を流して、スピン偏極した電子を注入することにより、前記記憶層の磁化の向きが変化して、前記記憶層に対して情報の記録が行われる記憶素子であって、
    前記記憶層が、非磁性層を介して積層された複数層の強磁性層から成り、
    前記記憶層を構成する強磁性層の主成分がCoFeBからなり、前記記憶層を構成する非磁性層がTi,Ta,Nb,Crのうち少なくとも一種の非磁性元素からなり、前記記憶層内の前記非磁性元素の含有量が1原子%以上20原子%以下であり、
    前記記憶層の前記磁化固定層とは反対側に、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層が設けられ、
    前記スピンバリア層が、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成されている
    記憶素子。
  2. 前記トンネル絶縁層が酸化マグネシウムから成る請求項1に記載の記憶素子。
  3. 前記トンネル絶縁層及び前記スピンバリア層が酸化マグネシウムから成る請求項1に記載の記憶素子。
  4. 前記スピンバリア層に、Ti,Ta,Zr,Hf,Nb,Cr,Mo,W,V,Cu,Au,Pd,Ptから選ばれる1種以上の非磁性金属元素が含有されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の記憶素子。
  5. 前記スピンバリア層が、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムから選ばれる材料から構成されている請求項4に記載の記憶素子。
  6. 前記非磁性金属元素が、前記スピンバリア層の一部又は全体に分布している請求項4又は請求項5に記載の記憶素子。
  7. 前記スピンバリア層の前記記憶層とは反対側に、前記非磁性金属元素からなる層が形成されている請求項4に記載の記憶素子。
  8. 前記スピンバリア層の面積抵抗が10Ωμm以下である請求項4〜請求項7のいずれか1項に記載の記憶素子。
  9. 前記記憶層の、前記トンネル絶縁層とは反対側において、Ta又はCuから成る非磁性金属層を介して前記スピンバリア層が設けられている請求項1に記載の記憶素子。
  10. 前記記憶層を構成する材料の主成分がCoFeBから成る請求項9に記載の記憶素子。
  11. 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有する記憶素子と、
    互いに交差する2種類の配線とを備え、
    前記記憶素子は、前記記憶層に対して、トンネル絶縁層を介して、磁化固定層が設けられ、積層方向に電流を流して、スピン偏極した電子を注入することにより、前記記憶層の磁化の向きが変化して、前記記憶層に対して情報の記録が行われるものであり、前記記憶層が、非磁性層を介して積層された複数層の強磁性層から成り、前記記憶層を構成する強磁性層の主成分がCoFeBからなり、前記記憶層を構成する非磁性層がTi,Ta,Nb,Crのうち少なくとも一種の非磁性元素からなり、前記記憶層内の前記非磁性元素の含有量が1原子%以上20原子%以下であり、前記記憶層の前記磁化固定層とは反対側に、スピン偏極した電子の拡散を抑制するスピンバリア層が設けられ、前記スピンバリア層が、酸化物、窒化物、フッ化物から選ばれる1種以上の材料から構成されており、
    前記2種類の配線の交点付近かつ前記2種類の配線の間に、前記記憶素子が配置され、前記2種類の配線を通じて、前記記憶素子に前記積層方向の電流が流れ、スピン偏極した電子が注入される
    メモリ。
  12. 前記記憶素子の前記スピンバリア層に、Ti,Ta,Zr,Hf,Nb,Cr,Mo,W,V,Cu,Au,Pd,Ptから選ばれる1種以上の非磁性金属元素が含有されている請求項11に記載のメモリ。
  13. 前記記憶素子は、前記記憶層の、前記トンネル絶縁層とは反対側において、Ta又はCuから成る非磁性金属層を介して前記スピンバリア層が設けられている請求項11に記載のメモリ。
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