本発明は、光源からの光束を用いて被照明面を照明する照明光学系に関し、特に該照明光学系からの光によって液晶パネル等の光変調素子を照明して画像を投射する画像投射装置に好適な照明光学系に関するものである。
上記のような画像投射装置では、明るく高いコントラストを有する画像を投射できること、および投射画像が全体に渡ってほぼ均一な明るさを有することが重要である。
このような画像投射装置において、光源からの光の利用効率を高めようとすると、一般に光束の角度分布が大きくなる傾向がある。このため、光学系内に角度特性の敏感な光学素子、特に光軸に対して傾いたダイクロイック膜や偏光分離膜を有する光学素子を配置した場合に、明るさむら(色むら)やコントラストの低下など、画質の劣化が発生する。
このような画質劣化を防止するために、光学素子における角度分布に敏感な方向においては光束の角度分布を小さくし、角度分布に鈍感な方向においては光束の角度分布を大きくした非対称な光学系が提案されている。
例えば、特許文献1には、光学インテグレータとして1次元方向にシリンドリカルレンズセルが配列されたシリンドリカルレンズアレイを用いた光学系が開示されている。この光学系では、ダイクロイックミラーなどの角度敏感度の高い光学素子による光束の折り曲げ方向に対してケーラー照明を用いることで、色むらを低減している。
また、特許文献2には、薄膜光学素子の角度敏感度の高い方向において、瞳位置に絞りを配置することで、光束の一断面方向での角度分布を小さくし、コントラストの改善を図っている。
特開平06−75200号公報(段落0017〜0018、図1等)
特開2004−45907号公報(段落0012〜0013、図1等)
しかしながら、特許文献1にて開示された光学系では、シリンドリカルレンズアレイが屈折力を持たない断面(ケーラー照明断面)においては重畳的な照明をしていないため、液晶パネル面での照度分布にむらが生じやすい。したがって、不均一な照明分布の中から比較的フラットな分布の領域のみをパネル照明に使用しなければなければならず、光の利用効率が低い。
また、該特許文献1にて開示された光学系では、光源から液晶パネルの直前に配置された集光レンズ(フィールドレンズ)までの光束は角度分布が小さいため、光源から集光レンズまでの間に配置されたダイクロイックミラーでの画質劣化は低減されている。しかし、液晶パネルの直前で集光レンズによって光束を収束させるため、液晶パネルや該液晶パネルよりも後方に配置されたダイクロイックミラーなどの角度敏感度の高い光学素子による画質劣化が避けられない。
さらに、重畳的な照明を行っていない断面では、光源の変動(アークジャンプ、劣化等)によって光源が輝度むらを持ったときに、液晶パネル上での照度分布も変動し、投射画像上に明るさむらとなって現れてしまう。
また、特許文献2にて開示された光学系では、直交する2断面で重畳的な照明しているため、光源の影響は受けにくいが、絞りによって光束を制限しているため、光の利用効率が大幅に低下する。
また、特許文献2には、絞りに代えて、レンズアレイと液晶パネルとの間の光学系の主点位置を2断面間で異ならせることにより、該2断面における角度分布を互いに異ならせる旨の記載がある。しかし、特許文献2の実施例に記載されたコリメータレンズの主点を変える方法では、液晶パネル面での照明領域の境界が不鮮明になり、明るさ低下や照度むらを生じる。しかも、照明光学系のパネル側でのテレセントリック条件、すなわち射出瞳がパネル面に対して十分に遠方であるとの条件が崩れてしまうため、コントラストの低下や色むらなどを生じてしまう。
本発明は、特定断面での光束の角度分布を小さくしながらも、被照明面上での明るさがほぼ均一で、光源の輝度むらの影響を受けにくく、かつ光の利用効率が高い照明光学系およびこれを備えた画像投射装置を提供することを目的の1つとする。
本発明の一側面としての照明光学系は、第1の断面において、光源からの光束を圧縮した後に複数の第1の光束に分割し、該複数の第1の光束を被照明面上で重畳する照明光学系である。そして、光源からの光束を圧縮する光学系は、光源側から順に配置された、正の屈折力を有する第1の光学素子および負の屈折力を有する第1のレンズアレイを含むアフォーカル系であり、光源からの光束を分割する光学系は、光源側から順に配置され、それぞれ複数の偏芯したレンズセルを有する第1のレンズアレイおよび第2のレンズアレイであり、第1の光束を重畳する光学系は、光源側から順に配置された、負の屈折力を有する第2のレンズアレイおよび正の屈折力を有する第2の光学素子を含み、前記第1および第2のレンズアレイは、互いに同符号の屈折力を有し、さらに第1および第2のレンズアレイにおけるレンズセルが形成された面が互いに同じ方向を向いていることを特徴とする。
本発明によれば、少なくとも第1の断面での光束の角度分布が小さく、被照明面をほぼ均一に照明でき、かつ光の利用効率が高い照明光学系を実現することができる。そして、該照明光学系を用いて画像投射装置の光学系を構成することにより、明るく、むらがなく、かつコントラストが高い画像を投射することができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1および図2には、本発明の実施例1である照明光学系の構成を図示している。該照明光学系は、光学ブロック10を介して被照明面に配置された光変調素子としての反射型液晶パネル(但し、透過型であってもよい)11を照明する。本実施例の照明光学系は、該液晶パネル11によって画像変調された光束を投射して画像を表示するプロジェクタに用いられる。
本実施例では、照明光学系の光軸(例えば、液晶パネル11の中心からコンデンサーレンズ8の中心を通ってランプに向かう軸線によって定義される)をZ軸とし、該Z軸に平行な方向を光軸方向とする。
図1は、Z軸を含み、かつZ軸に対して直交する2つの面であるYZ面とXZ面のうち、液晶パネル11のパネル面において入射光束の角度分布が広い方の断面であるYZ面(第2の断面)での光学構成を示す。このYZ面は、液晶パネル11の長辺が延びる方向に平行な断面である。また、図2には、パネル面において入射光束の角度分布が狭い方の断面であるXZ面(第1の断面)での光学構成を示す。このXZ面は、液晶パネル11の短辺が延びる方向に平行な断面である。
これらの図には、照明光学系の基本的な構成部品のみ示していないが、実際には、光源からの無偏光光を直線偏光光に変換する偏光変換素子、光路を折り曲げるミラー、熱線カットフィルタおよび偏光板等の各種光学素子も配置される。
図1に示すYZ面において、高圧水銀放電管等の発光管1から射出した光束は、放物面リフレクタ2によって平行光束に変換された射出される。発光管1およびリフレクタ2により光源ランプが構成される。
ランプからの平行光束は、図3にその斜視図を示す第3シリンドリカルレンズアレイ3によって複数の光束に分割され、各分割光束は集光される。各分割光束は、第4シリンドリカルレンズアレイ4の入射面の位置又はその近傍に向けて集光され、ここに2次光源像を形成する。
本実施例における第3シリンドリカルレンズアレイ3の作用によって形成された2次光源像の様子を図4に示す。図4は光軸方向に対して直交する面での2次光源像の強度分布を示している。図4において、YZ面は、図中に一点鎖線で示した面となる。YZ面において、2次光源像が形成される領域の幅をW1とする。
この2次光源像が形成される位置での光源像形成領域の幅W1は、YZ面と平行な様々な断面で光源像形成領域を切ったときに得られる該領域の幅のうち最大のもの又はYZ面で切ったときに得られる幅とする。
第3および第4シリンドリカルレンズアレイ3,4は、YZ面と平行な方向においてのみ屈折力を有するため、YZ面に直交するXZ面においては光束に実質的に影響を与えない。
一方、XZ面において圧縮光学系の一部を構成する正レンズ5と、第1シリンドリカルレンズアレイ6、第2シリンドリカルレンズアレイ7およびシリンドリカルレンズ9とは、YZ面においては屈折力を有していない。したがって、第4シリンドリカルレンズアレイ4を射出した分割光束は、YZ面においてはこれらの光学素子の影響をうけずにコンデンサーレンズ8によって集光される。なお、圧縮光学系としては、平行光束の光束径を狭めつつ平行光束として射出するアフォーカル光学系であることが望ましく、本実施例でもアフォーカル圧縮光学系を用いる。これについては後述する。
図1において、コンデンサーレンズ8から射出した複数の分割光束は、光学ブロック10を介して反射型液晶パネル11上で互いに重ね合わされる。これにより、YZ面において、反射型液晶パネル11に対する複数の分割光束による重畳的な照明がなされる。
ここで、光学ブロック10は、いわゆる色分解合成光学系を示す。色分解光学系10は、照明光学系の光軸方向に対して傾いて配置された光学膜面(多層膜面)を備えた光学素子が配置される。例えば、偏光分離膜面を備えた偏光ビームスプリッタや、ダイクロイック膜面を備えたダイクロイックミラーおよびダイクロイックプリズムである。光軸方向に対する光学膜面の傾きは45度に設定されるのが一般的であり、42〜48度の範囲に設定される場合が多い。
偏光ビームスプリッタ(偏光分離膜)は、可視光領域内の少なくとも一部の波長域(例えば、10nm以上の幅を有する波長域)の光に対して偏光方向による分離特性を有する。一般的には、特定の角度で入射する光のうち第1の偏光方向の光を80%以上反射し、第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を80%以上透過する。
図2に示すXZ面においては、ランプから平行光束として射出された光束は、第3および第4シリンドリカルレンズアレイ3,4の影響を受けずに、アフォーカル圧縮光学系の一部である正レンズ5を介して、第1シリンドリカルレンズアレイ6に到達する。図6には、第1シリンドリカルレンズアレイ6の斜視図を示す。
図6に示すように、第1シリンドリカルレンズアレイ6の片面は、XZ面内でのみ凹形状を有する凹面上に複数のシリンドリカルレンズセル6aが形成されたような形状を有する。すなわち、この第1シリンドリカルレンズアレイ6は、負レンズの機能とレンズアレイとしての機能(光束分割機能)とを併せ持つ光学素子である。この複数のシリンドリカルレンズセル6aが形成された側の面を第1シリンドリカルレンズアレイ6のレンズセル形成面という。
ここで、「負レンズの機能」とは、このシリンドリカルレンズアレイの各レンズセルの中心に入射する光束に対して負レンズと同じ特性を示すという意味である。別の言い方をすれば、各レンズセルの中心に対して、各レンズセルの曲率の中心(各レンズセルの光軸)が外側(照明光学系の光軸に対して外側)にシフトするように、シリンドリカルレンズアレイを構成している。このように構成すれば、各レンズセルの中心に入射する光に対して、シリンドリカルレンズアレイは負レンズとして機能する。
また、シリンドリカルレンズアレイの各レンズセルは、入射光を部分光束に分割する機能(光束分割機能)を持たせるために、正の屈折力を有している。
図7には、第1シリンドリカルレンズアレイ6の側面図を示す。第1シリンドリカルレンズアレイ6は、各シリンドリカルレンズセル6aの中心6bから該レンズセル6aの頂点6cを偏芯させることで、全体として負レンズの役割を果たしている。
アフォーカル圧縮光学系は、光源側から順に、正レンズ5と、第1シリンドリカルレンズアレイ6とで構成されている。ランプからの平行光束は、このアフォーカル圧縮光学系によって圧縮されるとともに、第1シリンドリカルレンズアレイ6によって複数の光束に分割される。各分割光束は、第2シリンドリカルレンズアレイ7の入射面の位置又はその近傍に向けて集光され、ここに2次光源像を形成する。
図5には、本実施例における第1シリンドリカルレンズアレイ6の作用によって形成された2次光源像の様子を示す。図5は光軸方向に対して直交する面での2次光源像の強度分布を示している。図5において、XZ面は、図中に一点鎖線で示した面となる。XZ面において、2次光源像が形成される領域の幅をW2とする。
図4と図5を比較すれば分かるように、YZ面での光源像形成領域の幅W1に比べてXZ面での光源像形成領域の幅W2が狭い。このW1とW2の大小関係(比)がそのまま偏光ビームスプリッタでの角度分布の大小関係(比)となる。このため、
W2<W1
好ましくは、
・ 1<W2/W1<0.8 …(1)
という条件を満足することが望ましい。
この条件式(1)において、W2/W1が上限値を上回ると、コントラストを高めるなどの効果が十分に得られない。また、W2/W1が下限値を下回ると、第1シリンドリカルレンズアレイ6の任意のレンズセル6aで分割集光される光束が第2シリンドリカルレンズアレイ7の対応するレンズセルに入射せず、対応しないレンズセルに入射する割合が増えてしまう。この対応するレンズセルに入射しなかった光束は、被照明面での有効領域(液晶パネルでの光変調領域)から外れた位置に到達するため、照明光束として有効な光束とならない。そして、被照明面の有効領域に到達しない光束の割合が増えると、投射画像の明るさが大幅に減少してしまう。このように条件式(1)の下限値を下回ると、光の利用効率が低下するため、好ましくない。
ここで、W1とW2はそれぞれ、第4シリンドリカルレンズアレイ4に入射する光束のYZ面における光束径、および第2シリンドリカルレンズアレイ7に入射する光束のXZ面における光束径としてもよい。
第2シリンドリカルレンズアレイ7から射出した分割光束は、シリンドリカルレンズ9によって集光され、偏光ビームスプリッタ等を含む色分解光学系10を経て、反射型液晶パネル11上で重ね合わされる。これにより、XZ面において、反射型液晶パネル11に対する複数の分割光束による重畳的な照明がなされる。
第2シリンドリカルレンズアレイ7は、図6および図7に示した第1シリンドリカルレンズアレイ6と同様に、その片面において、XZ面内でのみ凹形状を有する凹面上に複数のシリンドリカルレンズセル(図9の7a参照)が配列されたような形状を有する。該第2シリンドリカルレンズアレイ7も、各シリンドリカルレンズセルの中心から該レンズセルの頂点を偏芯させることで、全体として負レンズの役割を果たしている。すなわち、第2シリンドリカルレンズアレイ7も、負レンズの機能とレンズアレイとしての機能とを併せ持つ光学素子である。この複数のシリンドリカルレンズセルが形成された側の面を第2シリンドリカルレンズアレイ7のレンズセル形成面という。
第2シリンドリカルレンズアレイ7の負レンズ作用と、正レンズであるシリンドリカルレンズ9とにより、レトロフォーカスタイプの重畳光学系が構成される。重畳光学系をレトロフォーカスタイプとすることで、バックフォーカスが長くなり、色分解光学系10が配置しやすくなる。
なお、本実施例では、コンデンサーレンズ8はXZ面では屈折力を有していないため、光束に実質的に影響を与えない。但し、コンデンサーレンズ8を球面レンズとし、該コンデンサーレンズ8を含めて重畳光学系を構成してもよい。
本実施例では、第1および第2シリンドリカルレンズアレイ6,7のレンズセル形成面はともに被照明面側、すなわち液晶パネル11側を向いている。以下、図8〜10を用いて、この技術的理由について詳しく説明する。
図8には、従来のレンズアレイを用いた照明光学系の概略図を示す。レンズアレイA51およびレンズアレイB52で光束を分割し、これら分割光束をコンデンサーレンズ53で重畳して液晶パネル54を照明する。この場合、レンズアレイA53の各レンズセルが、照明光束を液晶パネル上54に重ね合わせるように作用している。
ここで、レンズアレイA53のセルピッチをa、コンデンサーレンズ53の焦点距離をf、レンズアレイA53とレンズセルB54の対応レンズセル面間の距離をd、液晶パネル54の大きさ(高さ)をBとすると、
B=a×(f/d) …(2)
の関係式がほぼ成り立つ。
この式(2)から、レンズセル面間距離dが長くなれば照明領域が狭くなり、短くなれば照明領域が広くなることが分かる。
本実施例の図6に示す形状を有し、負レンズの機能を併せ持つ第1および第2シリンドリカルレンズアレイ6,7では、シリンドリカルレンズアレイの中心から見て外側のレンズセルほど厚みが増加する。このような形状の
レンズアレイで光束分割を行う場合、図9に示すように、第1および第2シリンドリカルレンズアレイ6,7のレンズセル形成面を同じ方向に向けた方がよい。これは、第1および第2シリンドリカルレンズアレイ6,7における複数の対応レンズセルにおいて、レンズセル面間距離dの差を小さくすることができるからである。
図10に示すように、両シリンドリカルレンズアレイのレンズセル形成面が互いに反対方向を向いている場合は、複数の対応レンズセルにおけるレンズセル面間距離dの差が大きくなる。このため、中心のレンズセルに比べて、外側のレンズセルが形成する照明領域が狭くなり、液晶パネル上での全照明領域の大きさが不足したり、外側のレンズセルが形成する照明領域が広くなることによる光量の低下を招いたりしてしまう。
以上の構成により、図1および図2に示すように、照明光学系のうち屈折力を有する最後の光学素子を通過した後の照明光束の角度分布を、XZ面においてYZ面よりも狭めている。
反射型液晶パネル11の前に配置されている色分解光学系10に含まれる偏光ビームスプリッタは、XZ面において入射光束の一部の光路を折り曲げている。一般的な誘電体多層膜を偏光分離膜として有する偏光ビームスプリッタは、ブリュースター角におけるP偏光とS偏光に対する反射率の違いを利用して偏光分離を行う。このため、ブリュースター角から外れた光線ほど偏光分離が不十分になる。つまり、広い角度分布を持った照明光束を偏光分離膜に入射させると、透過すべき偏光光を反射したり、反射すべき偏光光を透過したりしてしまう。これにより、所望の偏光光とは異なる偏光光(漏れ光)が液晶パネル等に入射してしまい、画像のコントラストを低下させる。
なお、このように、入射光束の角度分布が広いと偏光分離等の所望の作用が十分に得られない断面を、本実施例では角度分布に対して敏感な断面という。また、入射光束の角度分布が広くても所望の作用が十分に得られる断面を、角度分布に対して鈍感な断面という。
これに対し、本実施例では、光束の角度分布に対して敏感な断面(XZ面)における角度分布を、角度分布に対して鈍感な断面(YZ面)における角度分布よりも小さくしている。このため、光束の角度分布に敏感な断面における漏れ光の発生量を抑え、この結果、高いコントラストの画像を得ることができる。しかも、光の利用効率も高い。
なお、本実施例では、第2断面においてはランプからの光束の径を圧縮せず、第1断面において光束径を圧縮することにより、第1および第2断面で光源像形成領域の幅を異ならせた。しかし、本発明はこのような構成に限られない。例えば、第1断面と第2断面の両方において光束径を圧縮してもよい。また、一方の断面において光束径を圧縮し、他方の断面において光束径を拡大してもよい。さらに、第1および第2断面の両方において光束径を拡大してもよい。また、放物面リフレクタ2に代えて楕円リフレクタを用いることにより、光束径の圧縮を行ってもよい。すなわち、光源像形成領域の幅が第1断面と第2断面とで互いに異なり、かつ光束の角度分布により敏感な断面での光源像形成領域の幅が角度分布により鈍感な断面における光源像形成領域の幅に対して小さくなる構成であれば、どのような構成を用いてもよい。
また、プロジェクタでは、光の利用効率を上げるために偏光変換素子(偏光ビームスプリッタをアレイ状に構成した素子)を、レンズアレイの近くに配置する場合がある。本実施例では、図示していないが、第4シリンドリカルレンズアレイ4の後側又は第2シリンドリカルレンズアレイ7の後側に配置することが望ましい。特に圧縮後の光束が通る第2シリンドリカルレンズアレイ7の後側に偏光変換素子を配置した場合は、従来に比べて偏光変換素子を小型化することができる。これにより、光学系全体およびプロジェクタの小型化やコストダウンを図ることができる。
なお、本実施例では、第1および第2シリンドリカルレンズアレイ6,7のレンズセル形成面をともに被照明面側に向けた場合について説明したが、これらをともに光源側に向けてもよい。
また、本実施例では、各断面(XZ面、YZ面)ごとに、その断面内でパワーを有するシリンドリカルレンズアレイを2つずつ設けた場合について説明したが、3つ以上設けてもよい。
図11には、本発明の実施例2である照明光学系を示す。実施例1で説明した一対のレンズアレイのレンズセル面を同一方向に向ける構成は、実施例1のように第1断面と第2断面とで光学系の構成が異なる場合だけでなく、第1断面と第2断面とで光学系の構成が同じ場合にも有効である。すなわち、図11に示す光学系の構成は、第1断面と第2断面とで共通である。
発光管21から射出した光束は、楕円面リフレクタ22によって集束する光束となって射出される。発光管21とリフレクタ22により光源ランプが構成される。
ランプからの光束は、第1レンズアレイ23によって中心光束が平行に進む複数の光束に分割され、各分割光束は第2レンズアレイ24の入射面又はその近傍に向かって集光される。第1および第2レンズアレイ23,24のそれぞれの片面は、第1および第2断面において凹形状を有する凹面上に複数のレンズセル23a,24aが形成されたような形状を有する。各レンズアレイにおいて、レンズセルは2次元方向に配置されている。第1レンズアレイ23から射出した各分割光束は、第2レンズアレイ24の入射面又はその近傍に2次光源像を形成する。
本実施例では、楕円リフレクタ22と第1レンズアレイ23の負レンズの機能によって圧縮光学系が構成されている。これにより、ランプから第1および第2レンズアレイ23,24までの部分の小型化が図られている。
第2レンズアレイ24から射出した複数の分割光束は、コンデンサーレンズ25によって集光され、偏光ビームスプリッタ等を含む色分解光学系26を経て重畳的に反射型液晶パネル27を照明する。
第2レンズアレイ24も、前述したように第1レンズアレイ23と同様の形状を有し、負レンズの機能とレンズアレイの機能とを併せ持つ。
本実施例では、第2レンズアレイ24の負レンズの機能とコンデンサーレンズ25の正レンズとしての機能とにより、レトロフォーカスタイプの重畳光学系が構成されている。実施例1と同様に、重畳光学系をレトロフォーカスタイプにすることで、バックフォーカスが長くなり、色分解光学系26が配置しやすくなる。
また、第1および第2レンズアレイ23,24のレンズアレイ形成面を同一方向に向けることで、実施例1と同様に、複数の対応レンズセルにおけるレンズセル面間距離の差を小さくすることができ、照明領域での明るさの均一化と明るさの向上を図っている。
なお、本実施例においては、第1および第2レンズアレイ23,24に負レンズの機能を持たせたが、本発明はこれに限らない。例えば、両レンズアレイの片面を、凸面上に複数のレンズセルが配置された形状とし、該レンズアレイに正レンズの機能を持たせてもよい。この場合、例えば、楕円リフレクタと第1レンズアレイとにより正、正の屈折力構成の圧縮光学系を構成し、第2レンズアレイがコンデンサーレンズの正屈折力のすべて又は一部を受け持つ構成を採ることができる。
図12には、上記実施例1で説明した照明光学系を用いた液晶プロジェクタ(画像投射装置)の構成を示している。図12は、実施例1でいうXZ面を含む断面での構成を示している。
同図において、41は連続スペクトルで白色光を発光する発光管、42は発光管41からの光を所定の方向に集光するリフレクタである。発光管41とリフレクタ42により光源ランプ40が構成される。
100は実施例1で説明した照明光学系である。
58は青(B:430〜495nm)と赤(R:590〜650nm)の波長領域の光を反射し、緑(G:505〜580nm)の波長領域の光を透過するダイクロイックミラーである。59は透明基板に偏光素子を貼り付けたG用の入射側偏光板であり、S偏光光のみを透過する。60は多層膜により構成された偏光分離面においてP偏光光を透過し、S偏光光を反射する第1偏光ビームスプリッタである。
61R,61G,61Bはそれぞれ、入射した光を反射するとともに画像変調する光変調素子(若しくは画像形成素子)としての赤用反射型液晶パネル、緑用反射型液晶パネルおよび青用反射型液晶パネルである。62R,62G,62Bはそれぞれ、赤用1/4波長板、緑用1/4波長板および青用1/4波長板である。
64は透明基板に偏光素子を貼り付けたRB用入射側偏光板であり、S偏光のみを透過する。
65はB光の偏光方向を90度変換し、R光の偏光方向は変換しない第1の色選択性位相差板である。66は偏光分離面においてP偏光を透過し、S偏光を反射する第2偏光ビームスプリッタである。67はR光の偏光方向を90度変換し、B光の偏光方向は変換しない第2の色選択性位相差板である。
68はRB用の射出側偏光板(偏光素子)であり、S偏光のみを透過する。69は偏光分離面においてP偏光を透過し、S偏光を反射する第3の偏光ビームスプリッタである。
以上のダイクロイックミラー58から第3の偏光ビームスプリッタ69までの光学素子により、色分解合成光学系200が構成される。
70は投射レンズであり、上記照明光学系100、色分解合成光学系200および投射レンズ70により画像表示光学系が構成される。
次に、照明光学系100を通過した後の光学的な作用を説明する。まず、Gの光路について説明する。
ダイクロイックミラー58を透過したGの光は入射側偏光板59に入射する。G光はダイクロイックミラー58によって分解された後もS偏光となっている。そして、G光は、入射側偏光板59から射出した後、第1の偏光ビームスプリッタ60に対してS偏光として入射し、その偏光分離面で反射され、G用反射型液晶パネル61Gへと至る。
該プロジェクタの液晶駆動回路250には、パーソナルコンピュータ、DVDプレーヤ、テレビチューナ等の画像供給装置300が接続されている。液晶駆動回路250は、画像供給装置300から入力された画像(映像)情報に基づいて各反射型液晶パネルを駆動し、これらに各色用の原画を形成させる。これにより、各反射型液晶パネルに入射した光は、反射されるとともに原画に応じて変調(画像変調)される。
画像変調されたG光のうちS偏光成分は、再び第1の偏光ビームスプリッタ60の偏光分離面で反射し、光源側に戻されて投射光から除去される。一方、画像変調されたG光のうちP偏光成分は、第1の偏光ビームスプリッタ60の偏光分離面を透過し、投射光として第3の偏光ビームスプリッタ69に向かう。このとき、すべての偏光成分をS偏光に変換した状態(黒を表示した状態)において、第1の偏光ビームスプリッタ60とG用反射型液晶パネル61Gとの間に設けられた1/4波長板62Gの遅相軸を所定の方向に調整する。これにより、第1の偏光ビームスプリッタ60とG用反射型液晶パネル61Gで発生する偏光状態の乱れの影響を小さく抑えることができる。
第1の偏光ビームスプリッタ60から射出したG光は、第3の偏光ビームスプリッタ69に対してP偏光として入射し、第3の偏光ビームスプリッタ69の偏光分離面を透過して投射レンズ70へと至る。
一方、ダイクロイックミラー58を反射したRとBの光は、入射側偏光板64に入射する。RとBの光はダイクロイックミラー58によって分解された後もS偏光となっている。そして、R光とB光は、入射側偏光板64から射出した後、第1の色選択性位相差板65に入射する。第1の色選択性位相差板65は、B光のみ偏光方向を90度回転する作用を持っており、これによりBの光はP偏光として、R光はS偏光として第2の偏光ビームスプリッタ66に入射する。S偏光として第2の偏光ビームスプリッタ66に入射したR光は、第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射され、R用反射型液晶パネル61Rへと至る。
また、P偏光として第2の偏光ビームスプリッタ66に入射したB光は、第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過してB用反射型液晶パネル61Bへと至る。
R用反射型液晶パネル61Rに入射したR光は画像変調されて反射される。画像変調されたR光のうちS偏光成分は、再び第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射されて光源側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたR光のうちP偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過して投射光として第2の色選択性位相板67に向かう。
また、B用反射型液晶パネル61Bに入射したB光は画像変調されて反射される。画像変調されたB光のうちP偏光成分は、再び第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過して光源側に戻され、投射光から除去される。一方、画像変調されたB光のうちS偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射して投射光として第2の色選択性位相板67に向かう。
このとき、第2の偏光ビームスプリッタ66とR用およびB用反射型液晶パネル61R,61Bの間に設けられた1/4波長板62R,62Bの遅相軸を調整することにより、Gの場合と同じようにR,Bそれぞれの黒の表示の調整を行うことができる。
こうして1つの光束に合成され、第2の偏光ビームスプリッタ66から射出したR光とB光のうちR光は、第2の色選択性位相板67によってその偏光方向が90度回転されてS偏光成分となる。さらに、R光は、射出側偏光板68で検光されて第3の偏光ビームスプリッタ69に入射する。また、Bの光はS偏光のまま第2の色選択性位相板67をそのまま透過し、さらに射出側偏光板68で検光されて第3の偏光ビームスプリッタ69に入射する。尚、射出側偏光板68で検光されることにより、RとBの投射光は、第2の偏光ビームスプリッタ66とR用およびB用反射型液晶パネル61R,61B、1/4波長板62R、62Bを通ることによって生じた無効な成分をカットされた光となる。
そして、第3の偏光ビームスプリッタ69に入射したRとBの投射光は第3の偏光ビームスプリッタ69の偏光分離面で反射し、G光と合成されて投射レンズ70に至る。
合成されたR,G,Bの投射光(カラー画像)は、投射レンズ70によってスクリーンなどの被投射面に拡大投射される。
以上説明した光路は反射型液晶パネルが白表示の場合である為、以下に反射型液晶パネルが黒表示の場合での光路を説明する。
まず、Gの光路について説明する。ダイクロイックミラー58を透過したG光のS偏光光は、入射側偏光板59に入射し、その後、第1の偏光ビームスプリッタ60に入射して偏光分離面で反射され、G用反射型液晶パネル61Gへと至る。しかし、反射型液晶パネル61Gが黒表示状態であるため、G光は画像変調されないまま反射される。従って、反射型液晶パネル61Gで反射された後もG光はS偏光光のままである。このため、再び第1の偏光ビームスプリッタ60の偏光分離面で反射し、入射側偏光板59を透過して光源側に戻され、投射光から除去される。
次に、RとBの光路について説明する。ダイクロイックミラー58で反射したRとBの光のS偏光光は、入射側偏光板64に入射する。そして、R光とB光は、入射側偏光板64から射出した後、第1の色選択性位相差板65に入射する。第1の色選択性位相差板65は、B光のみ偏光方向を90度回転する作用を持っており、これによりB光はP偏光として、R光はS偏光として第2の偏光ビームスプリッタ66に入射する。
S偏光として第2の偏光ビームスプリッタ66に入射したR光は、第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射され、R用反射型液晶パネル61Rへと至る。また、P偏光として第2の偏光ビームスプリッタ66に入射したB光は、第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過してB用反射型液晶パネル61Bへと至る。ここで、R用反射型液晶パネル61Rは黒表示状態であるため、R用反射型液晶パネル61Rに入射したR光は画像変調されないまま反射される。従って、R用反射型液晶パネル61Rで反射された後もR光はS偏光光のままである。このため、再び第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面で反射し、入射側偏光板64を通過して光源側に戻され、投射光から除去される。これにより、黒表示が行われる。
一方、B用の反射型液晶パネル61Bに入射したB光は、B用反射型液晶パネル61Bが黒表示状態であるため、画像変調されないまま反射される。従って、B用反射型液晶パネル61Bで反射された後も、B光はP偏光光のままである。このため、再び第2の偏光ビームスプリッタ66の偏光分離面を透過し、第1の色選択性位相差板65によりS偏光に変換され、入射側偏光板64を透過して光源側に戻されて投射光から除去される。
本実施例においては、色分解合成系200において、波長選択性位相差板を用いたが、これをなくしてもよい。この場合、色分解合成系200内に配置された偏光ビームスプリッタが、可視領域内の特定の波長領域に対して偏光ビームスプリッタとして機能し、他の波長領域に対しては偏光方向に関わらず透過又は反射する特性を有する偏光分離膜を持つ構成とすればよい。
また、色分解合成系200と投射レンズ70との間に1/4位相差板を配置して、投射レンズ70内のレンズ面で反射されて戻ってきた光が再反射されて、再びスクリーン方向に戻るのを防ぐようにしてもよい。
さらに、本実施例では、液晶パネルを3枚用いた場合について説明したが、本発明においては、1枚、2枚又は4枚以上を用いてもよい。
本発明の実施例1である照明光学系の構成(第2断面)を示す図。
実施例1の照明光学系の構成(第1断面)を示す図。
実施例1の照明光学系のシリンドリカルレンズアレイを示す図。
実施例1のシリンドリカルレンズアレイによる光源像形成領域を示す図。
実施例1におけるシリンドリカルレンズアレイによる光源像形成領域を示す図。
実施例1におけるシリンドリカルレンズアレイの斜視図。
実施例1におけるシリンドリカルレンズアレイの側面図。
レンズアレイを用いた一般的な照明光学系の概略図。
レンズアレイの向きが同じ方向である場合の効果を示す図。
レンズアレイの向きが逆方向である場合の欠点を示す図。
本発明の実施例である照明光学系の構成(第1,2断面)を示す図。
本発明の実施例3であるプロジェクタの構成を示す図。
符号の説明
1、21、41 発光管
2、22、42 リフレクタ
3 第3シリンドリカルレンズアレイ
4 第4シリンドリカルレンズアレイ
5 正レンズ
6 第1シリンドリカルレンズアレイ
7 第2シリンドリカルレンズアレイ
8 コンデンサーレンズ
9 シリンドリカルレンズ
10、26、200 色分解合成光学系
11、27、61R、61G、61B 反射型液晶パネル
23 第1のレンズアレイ
24 第2のレンズアレイ
25 コンデンサーレンズ
100 照明光学系