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JP4923345B2 - コーティング組成物、その塗膜、反射防止膜、及び、反射防止フィルム - Google Patents

コーティング組成物、その塗膜、反射防止膜、及び、反射防止フィルム Download PDF

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JP4923345B2
JP4923345B2 JP2001214449A JP2001214449A JP4923345B2 JP 4923345 B2 JP4923345 B2 JP 4923345B2 JP 2001214449 A JP2001214449 A JP 2001214449A JP 2001214449 A JP2001214449 A JP 2001214449A JP 4923345 B2 JP4923345 B2 JP 4923345B2
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oxide fine
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散性、分散安定性、塗工適性に優れるコーティング組成物、及び、当該コーティング組成物を用いて形成した耐候性、特に紫外線の影響による劣化が実使用上問題無いレベルにまで低減された塗膜、及び、当該塗膜を利用した機能性膜に関する。
【0002】
代表的には、LCDやCRT等の表示面を被覆する反射防止膜を構成する層、特に、中〜高屈折率層を形成するのに適したコーティング組成物、帯電防止層や透明導電層などの導電性透明薄膜を形成するのに適したコーティング組成物、或いは、高い屈折率及び/又は導電性を有する透明ハードコート層を形成するのに適したコーティング組成物に関する。
【0003】
さらには、これらのコーティング組成物を用いて形成した塗膜の層を有する反射防止膜、帯電防止膜、透明導電膜などの機能性膜、及び、これらの機能性膜を適用した反射防止フィルム、帯電防止フィルム、透明導電フィルムにも関する。
【0004】
【従来の技術】
液晶ディスプレー(LCD)や陰極管表示装置(CRT)等の画像表示装置の表示面は、その視認性を高めるために、蛍光燈などの外部光源から照射された光線の反射が少ないことが求められる。
【0005】
透明な物体の表面を屈折率の小さい透明皮膜で被覆することにより反射率が小さくなる現象が従来から知られており、このような現象を利用した反射防止膜を画像表示装置の表示面に設けて視認性を向上させることが可能である。反射防止膜は、表示面の上に屈折率の小さい低屈折率層を設けた単層構成、または、反射防止効果を更に良好にするために表示面の上に中〜高屈折率層を1乃至複数層設け、中〜高屈折率層の上に最表面の屈折率を小さくするための低屈折率層を設けた多層構成を有する。
【0006】
また、表示面に埃などが付着して視認性が低下するのを防ぐために、表示面に比較的弱い導電性を有する帯電防止膜を設ける場合がある。帯電防止膜は、表示面に反射防止膜と共に設けたり、反射防止膜の一層として設けたり、又は、前記反射防止膜を必要としない表示面に帯電防止膜のみ設けたりするが、いずれの場合も表示面の視認性を確保するために透明性が要求される。
【0007】
さらに、表面が柔らかく傷つき易いプラスチックの上に上記の反射防止膜や帯電防止膜を設ける場合には、基材上に下地としてハードコート層を形成し、当該ハードコート層を介して反射防止膜や帯電防止膜を設けることが望ましいが、この場合にはハードコート層にも透明性が要求される。
【0008】
また、液晶表示装置などには透明電極として比較的導電性の大きい透明導電膜が組み込まれる。
【0009】
このような反射防止膜に含まれる各層、或いは、透明導電膜等として利用される導電性透明薄膜を形成する方法は、一般に気相法と塗布法に大別され、気相法には真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的方法と、CVD法等の化学的方法とがあり、塗布法にはロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、スプレー法、浸漬法、及び、スクリーン印刷法等がある。
【0010】
気相法による場合には、高機能且つ高品質な透明薄膜を形成することが可能だが、高真空系での精密な雰囲気の制御が必要であり、また、特殊な加熱装置又はイオン発生加速装置が必要であり、そのために製造装置が複雑で大型化するために必然的に製造コストが高くなるという問題がある。また、気相法による場合には、透明薄膜を大面積化したり或いは複雑な形状を持つフィルム等の表面に透明薄膜を均一な膜厚に形成することが困難である。
【0011】
一方、塗布法のうちスプレー法による場合には、塗工液の利用効率が悪く、成膜条件の制御が困難である等の問題がある。ロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、浸漬法及びスクリーン印刷法等による場合には、成膜原料の利用効率が良く、大量生産や設備コスト面での有利さがあるが、一般的に、塗布法により得られる透明薄膜は、気相法により得られるものと比較して機能及び品質が劣るという問題点がある。
【0012】
近年、優れた品質を有する高屈折率層及び中屈折率層の薄膜を形成し得る塗布法として、有機物からなるバインダーの溶液中に酸化チタンや酸化スズ等の高屈折率微粒子や高屈折率で且つ導電性を有する微粒子を分散させた塗工液を基板上に塗布し、塗膜を形成する方法が提案されている。
【0013】
中〜高屈折率層を形成する塗膜は可視光領域において透明であることが必須であるため、高屈折率微粒子としては一次粒子径が可視光線の波長以下である所謂超微粒子を使用すると共に、当該高屈折率微粒子を塗工液中及び塗膜中に均一に分散する必要がある。しかしながら一般に、微粒子の粒子径を小さくしていくと、微粒子の表面積が大きくなり、粒子間の凝集力が増大する。そして、塗工液の固形成分が凝集すると、得られる塗膜のヘイズが悪化する。従って、高屈折率層及び中屈折率層の薄膜を形成する塗工液には、ヘイズの小さい均一な塗膜を形成するために十分な分散性を有することが求められる。また、塗工液には、長期間に渡って容易に保存できるように十分な分散安定性を有することが求められる。
【0014】
超微粒子の凝集という問題は、当該超微粒子に対して良好な分散性を示す分散剤を使用することにより解決することができる。分散剤は、凝集する微粒子間に浸透しながら微粒子表面に吸着し、分散処理の過程で凝集状態をほぐしながら溶剤中への均一分散化を可能とする。しかしながら、超微粒子は表面積が増大しているので、これを塗工液中に均一に分散させ、長期保存に耐え得るほどに安定化させるためには大量の分散剤が必要になる。塗工液に大量の分散剤を配合すると、当該塗工液を用いて形成した塗膜にも分散剤が多量に存在することとなり、分散剤がバインダー成分の硬化を妨げ、塗膜の強度を極端に低下させる。
【0015】
さらに、塗工液には、大量生産の観点から大面積薄膜を容易に形成できるように、塗工時に均一に薄く塗布することができ、且つ、乾燥むらが生じないように塗工適性が求められる。
【0016】
また、金属酸化物微粒子の粒子径が小さくなって表面積が増大したものは、光触媒活性が強調されるため、数μmの粒子径では光触媒活性を示さないジルコニア微粒子などでさえ超微粒子サイズとして塗膜中に大量に分散させた場合には、太陽光などの紫外線が含まれる環境に放置すると、バインダーとして用いるポリマーの劣化を引き起こし、それに伴い所望の透明性や屈折率や導電性を大きく変化させ、数日間放置しただけで薄膜の性能が大きく損なわれるおそれがある。従って、透明性を確保しつつ、屈折率及び/又は導電性を所望の値に調節するために、塗工液中に配合される金属酸化物超微粒子の光触媒活性を阻止する必要がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、塗膜に所定の屈折率や導電性などの何らかの機能を付与するために配合される微粒子の分散性、分散安定性に優れ、小さいヘイズと実使用に耐え得る膜強度を保持しながら、微粒子の光触媒活性による塗膜の経時劣化を極端に抑えた塗膜を形成し得る保存性の良いコーティング組成物を提供することにある。
【0018】
また、本発明の第二の目的は、分散性、分散安定性と共に、塗工適性にも優れ大面積薄膜を形成し得るコーティング組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の第三の目的は、上記第一又は第二の目的を達成し得るコーティング組成物を用いて、何らかの機能を有する透明薄膜、特に、低屈折率層や中乃至高屈折率層や高屈折率ハードコート層などの反射防止膜に含まれる層を形成したり、或いは、帯電防止膜や帯電防止性ハードコート層や透明電極膜などの導電性透明薄膜を形成するのに好適な塗膜を提供することにある。
【0020】
本発明の第四の目的は、画像表示装置の表示面に好適に適用される反射防止膜や帯電防止膜やハードコート膜、及び、画像表示装置の画素駆動素子として好適に用いられる透明導電膜を提供することにある。
【0021】
本発明の第五の目的は、そのような反射防止膜、帯電防止膜、ハードコート膜、透明導電膜を利用した反射防止フィルム、帯電防止フィルム、ハードコートフィルム、透明導電フィルムを提供することにある。
【0022】
本発明は、これらの目的のうち少なくともひとつを解決するものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明に係るコーティング組成物は、少なくとも、(1)0.01〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有するチタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)よりなる群から選ばれる無機酸化物微粒子、(2)0.005〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有し、且つ、BET法による比表面積が10〜70m2/gの範囲にある酸化亜鉛微粒子、(3)バインダー成分、(4)アニオン性の極性基を有する分散剤、及び、(5)有機溶剤、からなり、前記無機酸化物微粒子10重量部に対して、前記酸化亜鉛微粒子を0.1〜5重量部の割合で含有することを特徴とする。
【0024】
本発明のコーティング組成物には、0.01〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有する、いわゆる超微粒子サイズの無機酸化物微粒子を配合するので、当該コーティング組成物を用いて形成する塗膜に、当該塗膜の透明性を損なうこと無く、無機酸化物微粒子の物性に起因する何らかの機能、例えば、所定の値に調節された屈折率や、導電性を付与することができる。
【0025】
超微粒子サイズの無機酸化物微粒子は、有機溶剤中で凝集しやすいが、本発明のコーティング組成物は、無機酸化物微粒子との親和性の高いアニオン性極性基を有する分散剤を配合されているので、分散性、分散安定性に優れ、小さいヘイズと実使用に耐え得る膜強度を有する塗膜を形成することができる。
【0026】
また、超微粒子サイズの無機酸化物微粒子は顕著な光触媒活性を示すので、当該無機酸化物微粒子を含有する塗膜は劣化しやすいが、本発明のコーティング組成物は、0.005〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有し、且つ、BET法による比表面積が10〜70m2/gの範囲にある酸化亜鉛微粒子を配合することによって無機酸化物微粒子の光触媒活性を強力に抑制しているので、塗膜の耐候性を向上させることができる。
【0027】
また、本発明のコーティング組成物は、無機酸化物微粒子の分散安定性にも優れていることから、ポットライフも長い。さらに、本発明のコーティング組成物は塗工適性にも優れ、均一な大面積薄膜を容易に形成することができる。
【0028】
前記無機酸化物微粒子の表面の少なくとも一部が、光触媒活性を低下又は消失させるアルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)よりなる群から選ばれる無機化合物により被覆されていることが好ましい。本発明のコーティング組成物は、無機酸化物超微粒子の光触媒活性を抑制するために、酸化亜鉛微粒子を組み合わせて用いるが、それに加えて、無機酸化物微粒子の表面を、光触媒活性を低下又は消失させる無機化合物により被覆すると光触媒活性をさらに強力に抑制することができ、塗膜の耐光性が向上するので好ましい。
【0029】
また、前記無機酸化物微粒子の表面の少なくとも一部が、有機溶剤中での分散性を高めるために有機カルボン酸、シランカップリング剤、及び、チタネートカップリング剤よりなる群から選ばれる有機化合物又は有機金属化合物により被覆されていることが好ましい。本発明に係るコーティング組成物には、無機酸化物微粒子を分散させるためにアニオン性の極性基を有する分散剤を配合するが、無機酸化物微粒子を、当該無機酸化物微粒子との親和性が大きい有機カルボン酸、シランカップリング剤、及び、チタネートカップリング剤よりなる群から選ばれる有機化合物又は有機金属化合物で表面処理して疎水性を付与することにより、塗工液中での無機酸化物微粒子の分散性を、さらに向上させることができる。
【0030】
アニオン性の極性基を有する前記の分散剤としては、エチレンオキサイド鎖の骨格を有する主鎖にアニオン性の極性基からなる側鎖又はアニオン性の極性基を有する側鎖が結合した分子構造を有し、数平均分子量が2,000から20,000の化合物が好適に用いられる。
【0031】
バインダー成分としては、塗工後に露光硬化可能な電離放射線硬化性のバインダー成分を用いるのが好ましい
【0032】
バインダー成分は、分子中に水酸基を有するものが特に好ましい。バインダー成分が分子中に水酸基を有する場合には、無機酸化物微粒子の分散性を向上させ、また、分散剤の使用量を減らす効果もあることに加えて、水素結合によりハードコート層や低屈折率層などの隣接層に対する密着性を向上させることが可能となる。
【0039】
本発明に係る塗膜は、本発明に係る上記コーティング組成物を被塗工体の表面に塗布し、必要に応じて硬化させることにより得られる。硬化後の塗膜は、0.01〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有するチタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)よりなる群から選ばれる無機酸化物微粒子、0.005〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有し、且つ、BET法による比表面積が10〜70m/gの範囲にある酸化亜鉛微粒子、及び、アニオン性の極性基を有する分散剤が、バインダー中に均一に混合されてなるものである。
【0040】
この塗膜は、透明性が高く、ヘーズが小さく、且つ、無機酸化物微粒子の配合量をコントロールして機能、性能を調節できるので、さまざまな機能性透明薄膜として利用できる。代表的には、反射防止膜の低屈折率層や中乃至高屈折率層や高屈折率ハードコート層のような光学薄膜や、帯電防止膜や帯電防止性ハードコート層や透明電極膜などの導電性透明薄膜を形成するのに好適に利用できる。
【0041】
本発明によれば、膜厚が0.05〜10μmの塗膜を形成した時に、屈折率を1.55〜2.30の範囲に調節することが可能である。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下において本発明を詳しく説明する。先ず、本発明に係るコーティング組成物について説明する。本発明に係るコーティング組成物は、少なくとも下記の必須成分:
(1)0.01〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有する無機酸化物微粒子、
(2)0.005〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有し、且つ、BET法による比表面積が10〜70m2/gの範囲にある酸化亜鉛(ZnO)微粒子、
(3)バインダー成分、
(4)アニオン性の極性基を有する分散剤、及び、
(5)有機溶剤、
からなる塗工材料であり、必要に応じて、その他の成分を含んでいることもある。
【0045】
上記必須成分のうち0.01〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有する無機酸化物微粒子は、本発明に係るコーティング組成物を用いて形成する塗膜に、当該塗膜の透明性を損なうこと無く、無機酸化物微粒子の物性に起因する何らかの機能、例えば、所定の値に調節された屈折率や、導電性を付与するために配合される。無機酸化物微粒子としては、塗膜に付与したい機能を考慮して適切なものが選択される。
【0046】
反射防止膜の中屈折率層、高屈折率層又は高屈折率ハードコート層を形成したい場合には、屈折率が比較的高い無機酸化物微粒子をコーティング組成物に配合して所定の屈折率に調節する。屈折率が高い無機酸化物としては、例えば、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化亜鉛、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)などを用いることができる。
【0047】
高屈折率を有する無機酸化物のうちでも酸化チタンは、特に屈折率が高く且つ透明性も高いので、屈折率を調節するための成分として適している。酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型があるが、本発明においてはアナターゼ型やアモルファス型と比べて屈折率の高いルチル型の酸化チタンを用いるのが好ましい。
【0048】
また、反射防止膜の低屈折率層を形成したい場合には、屈折率が比較的低い無機酸化物微粒子をコーティング組成物に配合して所定の屈折率に調節する。屈折率が低い無機酸化物としては、例えば、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、二酸化ケイ素などを用いることができる。
【0049】
なお、本発明のコーティング組成物中に無機酸化物微粒子と共に配合される酸化亜鉛微粒子は屈折率が比較的高いので、屈折率の低い無機酸化物微粒子を組み合わせて屈折率を低くするよりも、屈折率の高い無機酸化物微粒子を組み合わせて屈折率を高くするほうが容易である。従って、本発明のコーティング組成物及び当該コーティング組成物から形成される塗膜は、屈折率の低い無機酸化物微粒子を用いて低屈折率層を形成するよりも、どちらかというと、屈折率の高い無機酸化物微粒子を用いて中屈折率層、高屈折率層又は高屈折率ハードコート層を形成するのに適している。
【0050】
また、帯電防止膜、帯電防止膜としての機能を有するハードコート層、又は、透明導電膜等として利用できる導電性透明薄膜を形成したい場合には、導電性が比較的大きい無機酸化物微粒子をコーティング組成物に配合して所定の導電率に調節する。導電性が大きい無機酸化物としては、例えば、酸化錫、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、及び、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)などを用いることができる。
【0051】
特に上記例示の導電性無機酸化物は、比較的大きい導電性と共に比較的高い屈折率も有するので、これらを用いる場合には透明薄膜に高い屈折率と共に導電性を付与することができ、帯電防止膜としての機能を有する中乃至高屈折率層、及び、帯電防止膜としての機能を有する高屈折率ハードコート層を形成することも可能である。
【0052】
無機酸化物微粒子は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その場合には、主となる機能が異なる無機酸化物微粒子同士を組み合わせることにより、複数の機能をバランスよく備えた透明薄膜を形成することができる。例えば、屈折率は極めて大きいが導電性の小さいルチル型酸化チタン微粒子と、導電性は極めて大きいが屈折率はルチル型酸化チタンよりも小さい上記の導電性無機酸化物を組み合わせて、所定の屈折率と良好な帯電防止性能を兼ね備えた高屈折率層を形成することが可能である。
【0053】
無機酸化物は、塗膜の透明性を低下させないために、いわゆる超微粒子サイズのものを用いる。ここで、「超微粒子」とは、一般的にサブミクロンオーダーの粒子のことであり、一般的に「微粒子」と呼ばれている数μmから数100μmの粒径を有する粒子よりも粒径の小さいものを意味している。すなわち本発明において無機酸化物微粒子は、一次粒子径が0.01μm以上であり、且つ、0.1μm以下、好ましくは0.03μm以下のものを用いる。平均粒子径が0.01μm未満のものは、コーティング組成物中に均一に分散させることが困難であり、ひいては、無機酸化物超微粒子を均一に分散させた塗膜が得られなくなる。また、平均粒子径が0.1μm超のものは、塗膜の透明性を損なうので好ましくない。無機酸化物微粒子の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により得られる二次電子放出のイメージ写真から目視計測してもよいし、動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により機械計測してもよい。
【0054】
無機酸化物微粒子の一次粒子径が上記範囲内であれば、その粒子形状が球状であっても針状であっても、その他どのような形状であっても本発明に用いることができる。
【0055】
無機酸化物微粒子の表面の少なくとも一部が、光触媒活性を低下又は消失させる無機化合物により被覆されていることが好ましい。本発明のコーティング組成物は、無機酸化物超微粒子の光触媒活性を抑制するために、後述する酸化亜鉛微粒子を組み合わせて用いるが、それに加えて、無機酸化物微粒子の表面を、光触媒活性を低下又は消失させる無機化合物により被覆すると光触媒活性をさらに強力に抑制することができ、塗膜の耐光性が向上するので好ましい。
【0056】
無機酸化物微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する無機化合物としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物や、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等の導電性複合金属酸化物などを例示することができ、これらの中から1種単独で又は2種以上の組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記した材料又は他の材料の中から、被覆すべき無機酸化物微粒子との比較において光触媒活性の低い無機化合物を選択して用いる。無機酸化物微粒子は、自己の光触媒活性よりも弱い光触媒活性を有する無機化合物により光線から遮断されることになり、光触媒活性が抑制される。
【0058】
塗膜の屈折率を高い又は低い値に調節するために無機酸化物微粒子を用いる場合には、無機酸化物微粒子に合わせて出来るだけ屈折率の高い又は低い無機化合物を用いるのが好ましい。
【0059】
導電性を有しない無機酸化物微粒子に、上記したような導電性複合金属酸化物を被覆することによって、無機酸化物微粒子に導電性を付与することが可能である。例えば、反射防止膜の高屈折率層を形成するために、無機酸化物微粒子として屈折率は高いが導電性を有しない酸化チタン微粒子を用いる場合には、当該酸化チタン微粒子の表面を上記したような導電性複合金属酸化物で被覆して導電性を付与することによって、帯電防止機能を有する高屈折率層が得られる。
【0060】
無機酸化物微粒子の表面を無機化合物により被覆するには、無機酸化物微粒子を水に分散させた分散液中に、被覆させたい無機化合物の塩、或いは、加水分解により被覆させたい無機化合物を生じ得る有機金属化合物を添加し、pH及び/又は温度条件を変えることで、無機酸化物微粒子の表面に所望の無機化合物を物理化学的に吸着させる。
【0061】
無機化合物で被覆した無機酸化物微粒子は、市販品にも存在しており、例えば、アルミナで被覆した酸化チタンとしては石原産業のTTO51(A)や、テイカ株式会社のMT−500シリーズを入手することができる。
【0062】
また、無機酸化物微粒子の表面の少なくとも一部が、有機溶剤中での分散性を高めるために有機化合物又は有機金属化合物により被覆されていることが好ましい。本発明に係るコーティング組成物には、無機酸化物微粒子を分散させるためにアニオン性の極性基を有する分散剤を配合するが、無機酸化物微粒子を有機化合物又は有機金属化合物で表面処理して疎水性を付与することにより、塗工液中での無機酸化物微粒子の分散性を、さらに向上させることができる
【0063】
なお、無機酸化物微粒子の表面は、光触媒活性を低下又は消失させるための無機化合物、又は、分散性を向上させるための有機化合物及び/又は有機金属化合物のいずれかだけで被覆されていてもよいし、無機化合物と有機化合物及び/又は有機金属化合物との両方で被覆されていてもよい。
【0064】
前記有機化合物としては、カルボキシル基、リン酸基、又は、水酸基を有するものを用いることができ、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性リン酸トリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート等を例示することができる。
【0065】
また、前記有機金属化合物としては、シランカップリング剤及び/又はチタネートカップリング剤を用いることができる。
【0066】
シランカップリング剤としては、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を例示することができる。
【0067】
チタネートカップリング剤としては、具体的には、味の素(株)より市販されている、製品名プレンアクトKR−TTS、KR−46B、KR−55、KR−41B、KR−38S、KR−138S、KR−238S、338X、KR−44、KR−9SA、KR−ET等が例示でき、更に、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラsec−ブトキシチタン、テトラtert−ブトキシチタン等の金属アルコキシドも使用することができる。
【0068】
無機酸化物微粒子を表面処理する有機化合物及び/又は有機金属化合物としては、特にカップリング剤、及び有機カルボン酸を用いるのが好ましい。また、後述するケトン系溶剤を用いてコーティング組成物を調製する場合には、カップリング剤、及び、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸の中から1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いるのが好ましく、十分な分散性が得られる。
【0069】
無機酸化物微粒子の表面を有機化合物及び/又は有機金属化合物により被覆して疎水性を付与するには、前記有機化合物及び/又は有機金属化合物を有機溶剤中に溶解させておき、この溶液中に、無機化合物表面処理を未だ施していないか或いはすでに施した無機酸化物微粒子を分散させた後に有機溶剤を完全に蒸発除去することにより、被覆できる。
【0070】
無機化合物及び有機化合物の両方を用いて被覆した無機酸化物微粒子は、市販品にも存在しており、例えば、アルミナ及びステアリン酸で被覆した酸化チタンとしてはTTO51(C)の商品名で石原産業から入手することができる。
【0071】
本発明に係るコーティング組成物の必須成分のうち、0.005〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有し、且つ、BET法による比表面積が10〜70m2/gの範囲にある酸化亜鉛微粒子は、無機酸化物微粒子の光触媒活性を抑制するために用いられる。
【0072】
超微粒子サイズの無機酸化物は顕著な光触媒活性を示し、数μm程度の粒子径では光触媒活性を示さないジルコニアですら超微粒子サイズになると光触媒活性を示すようになる。本発明のコーティング組成物を用いて塗膜を形成し、紫外線を含有する光線、例えば通常の太陽光を照射した時に無機酸化物微粒子の光触媒活性が顕著に表れると、塗膜を形成しているバインダー間の化学結合が切れて塗膜強度が低下したり、塗膜が黄変して透明度、ヘイズが悪化するなど、塗膜が劣化しやすい。
【0073】
これに対して、塗工液中に無機酸化物超微粒子と共に、0.005〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有し、且つ、BET法による比表面積が10〜70m2/gの範囲にある酸化亜鉛(ZnO)微粒子を配合すると、塗膜の透明性を損なうこと無く無機酸化物微粒子の光触媒活性を低下又は消失させることができ、塗膜の耐候性を向上させることができる。
【0074】
酸化亜鉛微粒子が無機酸化物微粒子の光触媒活性を抑制できる理由は明らかでないが、おそらくは、酸化亜鉛微粒子が他の無機酸化物微粒子と比べて紫外線の吸収波長帯域が広いことから、酸化亜鉛微粒子の紫外線吸収と他の無機酸化物微粒子の紫外線吸収とが競合し、無機酸化物微粒子の紫外線吸収量が大幅に少なくなる結果として無機酸化物微粒子の光触媒活性を阻害すると共に、酸化亜鉛微粒子自体は上記した粒子径及び比表面積の範囲では光触媒活性を発現しないために、コーティング組成物及び当該コーティング組成物から形成される塗膜全体としては光触媒活性が低下するためであると推測される。
【0075】
無機酸化物微粒子の紫外線吸収と競合する材料としては、紫外線吸収剤(UV吸収剤)を用いることも考えられる。しかしながら、UV吸収剤は有機化合物であり、紫外線照射により徐々に分解して効果が減弱していく。すなわち、UV吸収剤の紫外線吸収効果には寿命がある。そのため、仮に、無機酸化物微粒子を含有するコーティング組成物にUV吸収剤を配合するとしても、塗膜形成後の初期に耐候性を発現するだけであり、長期に渡る耐候性を得ることは出来ない。また、UV吸収剤は、本発明におけるような無機酸化物微粒子を含有するコーティング組成物に対しては大量に用いないと充分な耐候性を得ることが出来ないので、塗膜の物性に悪影響を与えたり、UV吸収剤から生じる多量の分解物により塗膜の黄変を引き起こすおそれもある。
【0076】
特に、バインダー成分として電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、UV吸収剤は、塗膜を硬化させるための露光工程において光重合開始剤から発生させたラジカルを消費してしまう。この現象は、塗膜の硬化反応を阻害して露光エネルギーの浪費及び塗膜の硬化不足を招くと共に、UV吸収剤自体が塗膜形成の途中で分解し、塗膜形成後の耐候性に寄与できないという問題を招く。
【0077】
これに対して酸化亜鉛微粒子は、詳しい理由は明らかでないが、無機酸化物微粒子の光触媒活性は抑制するが、バインダー成分として電離放射線硬化性樹脂を用いる場合であっても、塗膜を硬化させるための露光工程において光重合開始剤から発生させたラジカルを消費することはなく、硬化反応の妨げにならない。従って、本発明における酸化亜鉛微粒子の作用は、コーティング組成物のバインダー成分として電離放射線硬化性樹脂を配合する場合に、特に有利である。
【0078】
酸化亜鉛微粒子は、塗膜の透明性を低下させないために、無機酸化物微粒子と同様、いわゆる超微粒子サイズのものを用いる。具体的には、酸化亜鉛微粒子の一次粒子径を0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上で、且つ、0.1μm以下、好ましくは0.05μm以下とする。平均粒子径が0.005μm未満のものは、コーティング組成物中に均一に分散させることが困難であり、ひいては、酸化亜鉛超微粒子を均一に分散させた塗膜が得られなくなる。また、平均粒子径が0.1μm超のものは、塗膜の透明性を損なうので好ましくない。
【0079】
また、酸化亜鉛微粒子も他の無機酸化物微粒子ほどではないが、粒子サイズが非常に小さくなって比表面積が大きくなるとマイルドながら光触媒活性を発現する。そこで本発明においては、酸化亜鉛微粒子が光触媒活性を発現しないように、一次粒子径の割には比表面積が比較的小さい酸化亜鉛微粒子を用いる。具体的には、一次粒子径が0.005〜0.1μmであると同時に、BET法による比表面積が10m2/g以上、好ましくは30m2/g以上で、且つ、70m2/g以下、好ましくは60m2/g以下の酸化亜鉛微粒子を用いる。BET法による比表面積が70m2/gを超えると、酸化亜鉛微粒子がマイルドながら光触媒活性を発現するおそれや、酸化亜鉛微粒子が凝集しやすくなるという問題がある。
【0080】
バインダー成分は、本発明に係るコーティング組成物に成膜性や、基材や隣接する層に対する密着性を付与するために、必須成分として配合される。バインダー成分としては、それ自体は重合反応性のない樹脂のみから構成されるような単に乾燥固化するバインダー成分を用いてもよい。そのようなバインダー成分としては、光学薄膜を形成するために従来から用いられている非重合反応性の透明樹脂、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリスチロール、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等を挙げることができる。
【0081】
しかしながら、塗工膜に十分な強度、耐久性、密着性を付与するためには、本発明に係るコーティング組成物を被塗工体の表面に塗布し、必要に応じて乾燥させた後、何らかの化学反応によって重合、好ましくは架橋して硬化するものを用いるのが好ましい。そのような重合反応性のバインダー成分としては、例えば、(メタ)アクリレート系のモノマー、オリゴマー、ポリマーのように可視光線、紫外線、電子線等により硬化させることができる光硬化性の又は電離放射線硬化性のバインダー成分や、エポキシ樹脂のような熱硬化性のバインダー成分を用いることができる。
【0082】
以下においては、特に、本発明において酸化亜鉛微粒子の利点が最も生かされる電離放射線硬化性のバインダー成分について詳しく説明する。
【0083】
電離放射線硬化性のバインダー成分は、コーティング組成物中において重合していないモノマー又はオリゴマーの状態で存在しているので、コーティング組成物の塗工適性に優れ、均一な大面積薄膜を形成しやすい。また、塗膜中のバインダー成分を塗工後に重合、硬化させることにより十分な塗膜強度が得られる。
【0084】
電離放射線硬化性のバインダー成分としては、紫外線や電子線のような電離放射線の照射により直接、又は開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じる官能基を有するモノマー又はオリゴマーを用いることができる。本発明においては、主に、エチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを用いることができ、必要に応じて光開始剤が組み合わせられる。しかしながら、その他の電離放射線硬化性のバインダー成分を用いることも可能であり、例えば、エチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性のポリマーや、エポキシ基含有化合物のような光カチオン重合性のモノマーやオリゴマーを用いてもよい。光カチオン重合性のバインダー成分には、必要に応じて光カチオン開始剤が組み合わせて用いられる。バインダー成分の分子間で架橋結合が生じるように、バインダー成分であるモノマー又はオリゴマーは、重合性官能基を2個以上有する多官能性のバインダー成分であることが好ましい。
【0085】
エチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーとしては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレート、カルボキシポリカプロラクトンアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等のジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート誘導体やジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、或いは、これらのラジカル重合性モノマーが重合したオリゴマーを例示することができる。
【0087】
バインダー成分は、分子中に水酸基を有するものが特に好ましい。バインダー成分が分子中に水酸基を有する場合には、無機酸化物微粒子の分散性を向上させたり、前記分散剤の使用量を減らす効果があることに加えて、水素結合によりハードコート層、低屈折率層、透明電極層などの隣接層に対する密着性を向上させることが可能となる。
【0088】
例えば、分子中に水酸基を有するバインダー成分を配合した本発明のコーティング組成物を用いて中〜高屈折率層を形成する場合には、いわゆるウエットコーティング法により塗工液から形成したハードコート層や低屈折率層やその他の光透過層に対しても、また、蒸着法等のいわゆるドライコーティング法により形成した低屈折率層やその他の光透過層に対しても優れた密着性が得られる。
【0089】
低屈折率層としては、ドライ法である蒸着法又はウエット法であるゾルゲル反応により酸化ケイ素(SiOx)膜を形成する場合がある。酸化ケイ素膜はシラノール基を含有しており水素結合を形成し得るが、このような水素結合形成基を含有する膜に対して、分子中に水酸基を有するバインダー成分は特に密着性を飛躍的に向上させる効果が大きい。
【0090】
従来は、ウエット法により形成された中〜高屈折率層の上に酸化ケイ素膜を蒸着により形成する場合には十分な密着性が得られず、酸化ケイ素蒸着膜が剥離し易かったのに対して、分子中に水酸基を有するバインダー成分を配合したコーティング組成物を用いて中〜高屈折率層を形成する場合には、当該中〜高屈折率層の上に酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を密着性よく形成することができるので、非常に有用である。
【0091】
また、帯電防止の目的で反射防止膜中にITO蒸着膜やATO蒸着膜などの透明導電層を設け、当該透明導電層上にハードコート層を形成する場合がある。このような場合にも分子中に水酸基を有するバインダー成分を配合したコーティング組成物を用いることにより、高屈折率ハードコート層を密着性よく形成することができ、非常に有用である。
【0092】
子中に水酸基を有するバインダー成分としては、ペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートまたはジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートであって分子中に水酸基を残したバインダー成分を用いることができる。すなわち、そのようなバインダー成分は、一分子のペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールに2分子以上の(メタ)アクリル酸がエステル結合しているが、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの分子中にもともとある水酸基の一部はエステル化されないまま残っているものであり、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレートを例示することができる。ペンタエリスリトール多官能アクリレート及びジペンタエリスリトール多官能アクリレートは、一分子中にエチレン性二重結合を2個以上有するので、重合時に架橋反応を起こし、高い塗膜強度が得られる。
【0093】
ラジカル重合を開始させる光開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物などが用いられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等を例示できる。これらのうちでも、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンは、少量でも電離放射線の照射による重合反応を開始し促進するので、本発明において好ましく用いられる。これらは、いずれか一方を単独で、又は、両方を組み合わせて用いることができる。これらは市販品にも存在し、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンはイルガキュアー 184(Irgacure 184)の商品名で日本チバガイギーから入手できる。
【0094】
アニオン性の極性基を有する分散剤は、無機酸化物微粒子に対して親和性の高いアニオン性の極性基を有しており、本発明に係るコーティング組成物に無機酸化物微粒子に対する分散性を付与するために配合される。アニオン性の極性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、水酸基などが該当する。
【0095】
アニオン性の極性基を有する分散剤としては、具体的には、ビックケミー・ジャパン社がディスパービックの商品名で供給する製品群、すなわち、Disperbyk-111, Disperbyk-110, Disperbyk-116, Disperbyk-140, Disperbyk-161, Disperbyk-162, Disperbyk-163, Disperbyk-164, Disperbyk-170, Disperbyk-171, Disperbyk-174, Disperbyk-180, Disperbyk-182等を例示することができる。
【0096】
これらのうちでも、エチレンオキサイド鎖の骨格を有する主鎖に上記したようなアニオン性の極性基からなる側鎖又はアニオン性の極性基を有する側鎖が結合した分子構造を有し、数平均分子量が2,000から20,000の化合物を用いると、特に良好な分散性が得られ好ましい。数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定することができる。このような条件に合うものとして、上記ディスパービックシリーズの中ではディスパービック163(Disperbyk 163)がある。
【0097】
本発明のコーティング組成物の固形成分を溶解分散するための有機溶剤は特に制限されず、種々のもの、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;或いはこれらの混合物を用いることができる。
【0098】
本発明においては、ケトン系の有機溶剤を用いるのが好ましい。本発明に係るコーティング組成物をケトン系溶剤を用いて調製すると、基材表面に容易に薄く均一に塗布することができ、且つ、塗工後において溶剤の蒸発速度が適度で乾燥むらを起こし難いので、均一な薄さの大面積塗膜を容易に得ることができる。
【0099】
反射防止膜の支持層であるハードコート層にアンチグレア層としての機能を付与するために当該ハードコート層の表面を微細凹凸に形成し、その上に本発明に係るコーティング組成物を塗布して中屈折率層又は高屈折率層を形成する場合がある。本発明に係るコーティング組成物をケトン系溶剤を用いて調製すると、このような微細凹凸の表面にも均一に塗工することができ、塗工むらを防止できる。
【0100】
ケトン系溶剤としては、1種のケトンからなる単独溶剤、2種以上のケトンからなる混合溶剤、及び、1種又は2種以上のケトンと共に他の溶剤を含有しケトン溶剤としての性質を失っていないものを用いることができる。好ましくは、溶剤の70重量%以上、特に80重量%以上を1種又は2種以上のケトンで占められているケトン系溶剤が用いられる。
【0101】
有機溶剤としてケトン系溶剤を用い、無機酸化物微粒子の表面を上記したような有機化合物及び/又は有機金属化合物で被覆することにより、特に塗工適性に優れたコーティング組成物が得られ、均一な大面積薄膜を容易に形成できるようになる。この場合でも、アニオン性の極性基を有する分散剤として上記したようなエチレンオキサイド系の分散剤、すなわち、エチレンオキサイド鎖の骨格を有する主鎖にアニオン性の極性基からなる側鎖又はアニオン性の極性基を有する側鎖が結合した分子構造を有し、数平均分子量が2,000から20,000の化合物を用いると、さらに好ましい。或いは、バインダー成分として、ペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートまたはジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートであって分子中に水酸基を残したバインダー成分を用いるのも効果的である。
【0102】
本発明に係るコーティング組成物は、必須成分として、無機酸化物微粒子、酸化亜鉛微粒子、バインダー成分、アニオン性の極性基を有する分散剤、および、有機溶剤を含有するが、さらに必要に応じて、その他の成分を配合してもよい。例えば、電離放射線硬化性のバインダー成分を用いる場合には重合開始剤を含有することができる。また、必要に応じて、紫外線遮蔽剤、紫外線吸収剤、表面調整剤(レベリング剤)、酸化ジルコニウム、アンチモンでドープした酸化スズ(ATO)などを用いることができる。
【0103】
上記コーティング組成物を用いて高屈折率ハードコート層を形成する場合には、コーティング組成物に有機系微粒子などを配合して塗布することにより、高屈折率ハードコート層の表面を微細凹凸にしてアンチグレア層としての機能を付与することができる。ここで、微細凹凸を形成するための有機系微粒子として、具体的にはSEM観察による平均粒子径が0.5〜10.0μm程度のスチレンビーズ、アクリルビーズ、及び、スチレン/アクリル共重合体ビーズを用いることができる。
【0104】
無機酸化物微粒子と酸化亜鉛微粒子の配合割合は適宜調節可能であるが、一般的には、無機酸化物微粒子10重量部に対して、酸化亜鉛微粒子を0.1〜5重量部の割合で配合する。酸化亜鉛微粒子の配合量が少なすぎると無機酸化物微粒子の光触媒活性を抑制する効果が不充分となり、一方、酸化亜鉛微粒子の配合量が多すぎると、光触媒活性の抑制効果が頭打ちになるだけでなく、塗膜物性を損なう原因になる。
【0105】
酸化亜鉛微粒子以外の各成分の配合割合も適宜調節可能であるが、一般的には、無機酸化物微粒子10重量部に対して、前記酸化亜鉛微粒子を0.1〜5重量部、バインダー成分を4〜20重量部、及び、アニオン性の極性基を有する分散剤を4〜10重量部の割合で配合する。ただし、バインダー成分として分子中に水酸基を有するものを用いる場合には、当該バインダー成分が分散助剤として作用するので、アニオン性極性基を有する分散剤の使用量を大幅に減らすことができる。分散剤はバインダーとしては機能しないので、分散剤の配合割合を減らすことによって塗膜強度の向上を図ることができる。
【0106】
具体的には、無機酸化物微粒子10重量部に対して、酸化亜鉛微粒子を0.1〜5重量部、分子中に水酸基を有するバインダー成分を4〜20重量部、及び、アニオン性の極性基を有する分散剤を2〜4重量部の割合で配合することができる。この配合割合は、低屈折率層、中〜高屈折率層、帯電防止層、透明電極膜などの比較的薄い塗膜を形成するためのコーティング組成物として好適であり、必須成分である酸化亜鉛微粒子の屈折率が比較的高いことから、比較的高い屈折率が要求される中〜高屈折率層、又は、屈折率を問題としない帯電防止層や透明導電層を形成するのに特に好適である。
【0108】
光重合開始剤を用いる場合には、バインダー成分100重量部に対して、光重合開始剤を通常は3〜8重量部の割合で配合する。
【0109】
また、有機溶剤の量は、各成分を均一に溶解、分散することができ、調製後の保存時に凝集を来たさず、且つ、塗工時に希薄すぎない濃度となるように適宜調節する。この条件が満たされる範囲内で溶剤の使用量を少なくして高濃度のコーティング組成物を調製し、容量をとらない状態で保存し、使用時に必要分を取り出して塗工作業に適した濃度に希釈するのが好ましい。本発明においては、固形分と有機溶剤の合計量を100重量部とした時に、必須成分及びその他の成分を含む全固形分0.5〜50重量部に対して、有機溶剤を50〜95.5重量部、さらに好ましくは、全固形分10〜30重量部に対して、有機溶剤を70〜90重量部の割合で用いることにより、特に分散安定性に優れ、長期保存に適したコーティング組成物が得られる。
【0110】
上記各成分を用いて本発明に係るコーティング組成物を調製するには、塗工液の一般的な調製法に従って分散処理すればよい。例えば、各必須成分及び各所望成分を任意の順序で混合し、得られた混合物にビーズ等の媒体を投入し、ペイントシェーカーやビーズミル等で適切に分散処理することにより、コーティング組成物が得られる。
【0111】
こうして得られたコーティング組成物は、必須成分として、所定の一次粒子径を有する無機酸化物微粒子と、所定の一次粒子径と共に所定の比表面積を有する酸化亜鉛微粒子と、バインダー成分と、アニオン性の極性基を有する分散剤を有機溶剤中に溶解、分散してなるものであり、特に、無機酸化物微粒子は、当該無機酸化物微粒子の光触媒活性が酸化亜鉛微粒子の作用により非常に低いレベルにまで抑制されていると共に、アニオン性の極性基を有する分散剤の作用により、コーティング組成物中に均一に分散されている。
【0112】
本発明に係るコーティング組成物は、酸化亜鉛微粒子を配合することにより耐候性に優れ、黄変や膜強度の低下などの経時劣化を引き起こしにくい塗膜を形成することができる。無機酸化物微粒子の表面が無機化合物により被覆されている場合には、当該無機化合物による光触媒活性阻止作用が、酸化亜鉛微粒子による光触媒活性阻止作用と協調することにより、さらに耐候性が向上する。
【0113】
本発明に係るコーティング組成物は、アニオン性の極性基を有する分散剤を配合することにより、無機酸化物微粒子の優れた分散性及び分散安定性を有しており、ヘイズが非常に小さい塗膜を形成することができる。無機酸化物微粒子の表面が有機化合物及び/又は有機金属化合物により被覆されている場合には、当該有機化合物及び/又は有機金属化合物による分散作用が、アニオン性の極性基を有する分散剤による分散作用と協調することにより、さらに無機酸化物微粒子の分散性及び分散安定性が向上する。
【0114】
すなわち、本発明に係るコーティング組成物中の無機酸化物微粒子の配合量をコントロールして、当該コーティング組成物を基材等の被塗工体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて硬化させることによって、無機酸化物微粒子の物性に起因する何らかの機能が付加され、透明性が高く、ヘイズが小さく、且つ、耐候性に優れた塗膜が得られる。
【0115】
従って、本発明に係るコーティング組成物は、高い透明性が要求される光学薄膜を形成するのに適しており、例えば、反射防止膜を構成する1又は2以上の層を形成するのに用いることができる。特に、本発明に係るコーティング組成物に高屈折率を有する無機酸化物微粒子を配合する場合には、反射防止膜の中屈折率層、高屈折率層又は高屈折率ハードコート層を形成するのに適している。また、本発明に係るコーティング組成物に、導電性の高い無機酸化物微粒子を配合する場合には、透明性の高い導電性透明薄膜が得られ、反射防止膜等の光学薄膜に設ける帯電防止膜や、液晶表示装置の画素駆動素子に設ける透明電極膜などを形成するのに適している。
【0116】
また、本発明に係るコーティング組成物は、長期間に渡る分散安定性にも優れているのでポットライフが長く、長期間保存した後に使用する場合でも透明性が高く且つヘイズの小さい塗膜を形成することができる。
【0117】
さらに、本発明に係るコーティング組成物は、塗工適性に優れ、被塗工体の表面に、容易に薄く広く且つ均一に塗布することができ、均一な大面積薄膜を形成できる。特に、ケトン系溶剤を用いると蒸発速度が適度で、塗膜の乾燥むらが生じ難いので、均一な大面積薄膜を特に形成しやすい。
【0118】
上記したような本発明のコーティング組成物を基材等の被塗工体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電離放射線の照射などの化学反応工程により硬化させることによって、実質的に無色透明でヘイズの小さい塗膜を形成することができる。
【0119】
本発明のコーティング組成物を塗布する支持体は特に制限されない。好ましい基材としては、例えば、ガラス板; トリアセテートセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルホン、アクリル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテル;トリメチルペンテン;ポリエーテルケトン;(メタ)アクリロニトリル等の各種樹脂で形成したフィルム等を例示することができる。基材の厚さは、通常25μm〜1000μm程度であり、好ましくは50μm〜190μmである。
【0120】
コーティング組成物は、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の各種方法で基材上に塗布することができる。
【0121】
本発明に係るコーティング組成物を基材等の被塗工体の表面に所望の塗工量で塗布した後、通常は、オーブン等の加熱手段で加熱乾燥し、その後、必要に応じて紫外線や電子線等の電離放射線を放射する等の適切な方法により硬化させることにより塗膜が形成される。
【0122】
次に、本発明に係る塗膜について説明する。本発明に係る塗膜は、0.01〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有する無機酸化物微粒子、0.005〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有し、且つ、BET法による比表面積が10〜70m2/gの範囲にある酸化亜鉛微粒子、及び、アニオン性の極性基を有する分散剤が、バインダー中に均一に混合されてなるものであるが、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
【0123】
本発明により得られる塗膜は、反射防止膜を構成する1又は2以上の層として好適に利用することができ、特に、酸化チタン等の屈折率が高い無機酸化物微粒子を配合して屈折率を調節する場合には、中〜高屈折率層を形成するのに適している。本発明によれば、膜厚が0.05〜0.2μmの塗膜を形成した時に、屈折率を1.55〜2.30の範囲に調節し、且つ、JIS−K7361−1の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値を、前記基材だけのヘイズ値と変わらないか又は前記基材だけのヘイズ値との差が1%以内に抑制することが可能である。
【0124】
また、本発明により得られた塗膜を膜厚が0.2〜3.0μmの範囲で調整した場合は、反射防止膜のような高度な透明性が必要とされるハードコート層として使用することができる。特に、酸化チタンなどの屈折率が高い無機酸化物超微粒子を配合して屈折率を1.55〜2.30の範囲で調節した場合、反射防止性能を有するために必要とされる積層数の簡略化を図ることが可能となる。このことは例えば、反射防止性能を得るために通常、ハードコート層の上に高屈折率層/低屈折率層という層構成の薄膜を作るべきところを、ハードコート層の屈折率を上げることで低屈折率層のみで同様の反射防止性能が得られるため、製造工程の簡略化などが可能となる。本発明によれば、膜厚が0.2〜3.0μmの時に、屈折率を1.55〜2.30の範囲に調節し、且つ、JIS−K7361−1に規定されるヘイズ値を、前記基材だけのヘイズ値と変わらないか又は前記基材だけのヘイズ値との差が10%以内に抑制することが可能である。
【0125】
また、本発明により得られる塗膜は、高屈折率ハードコート層を形成するのにも適している。本発明によれば、酸化チタン等の屈折率が高い無機酸化物微粒子を配合して屈折率を調節することにより、膜厚が0.2〜10μmの塗膜を形成した時に、屈折率を1.55〜2.30の範囲に調節し、且つ、JIS−K7361−1に規定されるヘイズ値を前記基材だけのヘイズ値と変わらないか又は前記基材だけのヘイズ値との差が10%以内に抑制し、且つ、JIS−K5600−5−4に規定される鉛筆硬度が2H以上となるように物性を調節することが可能であり、高屈折率ハードコート層を形成できる。
【0126】
また、本発明により得られる塗膜は、反射防止膜に設けられる帯電防止層や、液晶表示装置の画素駆動素子に設けられる透明導電層などの導電性透明薄膜としても好適に利用することができる。本発明によれば、膜厚が0.05〜0.2μmの時に、JIS−K7361−1の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値が、前記基材だけのヘイズ値と変わらないか又は前記基材だけのヘイズ値との差が1%以内である導電性透明薄膜が得られる。また、本発明によれば、膜厚が0.2〜3.0μmの時に、JIS−K7361−1に規定されるヘイズ値が前記基材だけのヘイズ値と変わらないか又は前記基材だけのヘイズ値との差が10%以内である導電性透明薄膜が得られる。本発明により得られる塗膜を帯電防止層などの導電性透明薄膜として反射防止膜に付加する場合、本発明により得られる塗膜は単なる導電性透明薄膜として反射防止膜に付加することができるだけでなく、反射防止膜を構成する低、中又は高屈折率層としても機能する層として付加しても良い。本発明により得られる塗膜を単なる導電性透明薄膜として反射防止膜に付加する場合には、反射防止膜を支持する基材フィルムの反射防止膜を設けたのと同じ側、又は、その反対側のどちら側に導電性透明薄膜を設けても良い。
【0127】
さらに本発明によれば、膜厚が0.2〜10μmの時に、JIS−K7361−1に規定されるヘイズ値が前記基材だけのヘイズ値と変わらないか又は前記基材だけのヘイズ値との差が10%以内であり、且つ、JIS−K5600−5−4に規定される鉛筆硬度が2H以上である導電性透明薄膜が得られる。この導電性透明薄膜は、透明性に優れると共に硬度が高いので、透明性が要求される皮膜の下地を構成する帯電防止性ハードコート層として好適である。
【0128】
次に、本発明に係る塗膜を適用した機能性膜の具体例について説明する。先ず、本発明に係る塗膜を適用した反射防止膜について説明する。本発明に係る塗膜は、光透過性を有し且つ互いに屈折率の異なる層(光透過層)を二層以上積層してなる多層型反射防止膜のうちの一層を形成するのに用いることができる。本発明に係る塗膜は、主として中乃至高屈折率層として用いられるが、高屈折率ハードコート層や低屈折率層や帯電防止層として用いることもできる。なお、多層型反射防止膜の中で最も屈折率の高い層を高屈折率層と称し、最も屈折率の低い層を低屈折率層と称し、それ以外の中間的な屈折率を有する層を中屈折率層と称する。
【0129】
また、反射防止膜で被覆する面、例えば画像表示装置の表示面に、本発明に係る塗膜をただ一層設けただけでも、被覆面自体の屈折率と本発明に係る塗膜の屈折率のバランスが丁度良い場合には反射防止効果が得られる。従って、本発明に係る塗膜は、単層の反射防止膜としても有効に機能する場合がある。
【0130】
本発明に係る塗膜は、特に、液晶表示装置(LCD)や陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置の表示面を被覆する多層型反射防止膜の少なくとも一層、特に中乃至高屈折率層を形成するのに好適に用いられる。
【0131】
図1は、本発明に係る塗膜を光透過層として含んだ多層型反射防止膜により表示面を被覆した液晶表示装置の一例(101)の断面を模式的に示したものである。液晶表示装置101は、表示面側のガラス基板1の一面にRGBの画素部2(2R、2G、2B)とブラックマトリックス層3を形成してなるカラーフィルター4を準備し、当該カラーフィルターの画素部2上に透明電極層5を設け、バックライト側のガラス基板6の一面に透明電極層7を設け、バックライト側のガラス基板とカラーフィルターとを、透明電極層5、7同士が向き合うようにして所定のギャップを空けて対向させ、周囲をシール材8で接着し、ギャップに液晶Lを封入し、背面側のガラス基板6の外面に配向膜9を形成し、表示面側のガラス基板1の外面に偏光フィルム10を貼り付け、後方にバックライトユニット11を配置したものである。なお、上記透明電極層5、7も、本発明に係る塗膜により構成することが可能である。
【0132】
図2は、表示面側のガラス基板1の外面に貼り付けた偏光フィルム10の断面を模式的に示したものである。表示面側の偏光フィルム10は、ポリビニルアルコール(PVA)等からなる偏光素子12の両面をトリアセチルセルロース(TAC)等からなる保護フィルム13、14で被覆し、その裏面側に接着剤層15を設け、その鑑賞側にハードコート層16と多層型反射防止膜17を順次形成したものであり、接着剤層15を介して表示面側のガラス基板1に貼着されている。
【0133】
ここで、液晶表示装置等のように内部から射出する光を拡散させて眩しさを低減させるために、ハードコート層16は、当該ハードコート層の表面を凹凸形状に形成したり或いは当該ハードコート層の内部に無機や有機のフィラーを分散させてハードコート層内部で光を散乱させる機能を持たせた防眩層(アンチグレア層)としてもよい。
【0134】
多層型反射防止膜17の部分は、バックライト側から鑑賞側に向かって中屈折率層18、高屈折率層19、低屈折率層20が順次積層された3層構造を有している。多層型反射防止膜17は、高屈折率層19と低屈折率層20が順次積層された2層構造であってもよい。なお、ハードコート層16の表面が凹凸形状に形成される場合には、その上に形成される多層型反射防止膜17も図示のように凹凸形状となる。
【0135】
低屈折率層20は、本発明に係る塗膜に屈折率の低い無機酸化物微粒子を配合することにより形成しても良いが、その他の方法として、シリカやフッ化マグネシウム等の無機物、フッ素系樹脂等を含有する塗工液から得られる屈折率1.46以下の塗膜や、シリカやフッ化マグネシウムなどを化学蒸着法(CVD)や物理蒸着法(PVD)などの蒸着法を用いた蒸着膜とすることができる。また、中屈折率層18及び高屈折率層19は、本発明に係る塗膜に酸化チタンのような屈折率の高い無機酸化物微粒子を配合することにより形成することができ、中屈折率層18には屈折率1.46〜1.80の範囲の光透過層、高屈折率層19には屈折率1.65以上の光透過層が使用される。
【0136】
この反射防止膜の作用により、外部光源から照射された光の反射率が低減するので、景色や蛍光燈の映り込みが少なくなり、表示の視認性が向上する。また、外光がディスプレイ表面に映り込んだり、眩しく光ったりする状態であるのを、ハードコート層16の凹凸による光散乱効果によって外光の反射光が軽減し、表示の視認性がさらに向上する。
【0137】
液晶表示装置101の場合には、偏光素子12と保護フィルム13、14からなる積層体に本発明に係るコーティング組成物を塗布して屈折率を1.46〜1.80の範囲で調節した中屈折率層18と屈折率を1.65以上に調節した高屈折率層19を形成し、さらに低屈折率層20を設けることができる。そして、反射防止膜17を含む偏光フィルム10を接着剤層15を介して鑑賞側のガラス基板1上に貼着することができる。
【0138】
これに対し、CRTの表示面には配向板を貼着しないので、反射防止膜を直接設ける必要がある。しかしながら、CRTの表示面に本発明に係るコーティング組成物を塗布するのは煩雑な作業である。このような場合には、本発明に係る塗膜を含んでいる反射防止フィルムを作製し、それを表示面に貼着すれば反射防止膜が形成されるので、表示面に本発明に係るコーティング組成物を塗布しなくて済む。
【0139】
光透過性を有する基材フィルムの一面側又は両面に、光透過性を有し且つ互いに屈折率が異なる光透過層を二層以上積層してなり、当該光透過層のうちの少なくとも一つを本発明に係る塗膜で形成することにより、反射防止フィルムが得られる。基材フィルム及び光透過層は、反射防止フィルムの材料として使用できる程度の光透過性を有する必要があり、できるだけ透明に近いものが好ましい。
【0140】
図3は、本発明に係る塗膜を含んだ反射防止フィルムの一例(102)の断面を模式的に示したものである。反射防止フィルム102は、光透過性を有する基材フィルム21の一面側に、本発明に係るコーティング組成物を塗布して高屈折率層22を形成し、さらに当該高屈折率層の上に低屈折率層23を設けたものである。この例では、互いに屈折率の異なる光透過層は高屈折率層と低屈折率層の二層だけだが、光透過層を三層以上設けてもよい。その場合には、高屈折率層だけでなく中屈折率層も、本発明に係るコーティング組成物を塗布して形成することができる。
【0141】
反射防止膜以外に本発明に係る塗膜を適用し得る具体例としては、透明導電フィルムがある。図4は、本発明に係る塗膜を含んだ透明導電フィルムの一例(103)の断面を模式的に示したものである。透明導電フィルム103は、光透過性を有する基材フィルム21の一面側に、本発明に係るコーティング組成物を塗布して導電性透明薄膜25を形成したものであり、導電性透明薄膜の導電率が比較的小さい場合には帯電防止フィルムとして利用することができ、導電率が比較的大きい場合には、透明電極膜のような透明導電膜として利用することができる。導電性透明薄膜を設けたい場所に本発明に係るコーティング組成物を直接塗布することができない場合には、このような透明導電フィルム103を作成し、必要な場所に貼付又は設置することにより、導電性透明薄膜の機能を発揮させることができる。
【0142】
さらに図4の透明導電フィルム103において、基材フィルム21の一面側に導電性の無機酸化物微粒子を含有する本発明のコーティング組成物を比較的厚く塗布して、帯電防止機能を有するハードコート層を形成することにより、ハードコートフィルムを得ることも可能である。
【0143】
【実施例】
(実施例1)
(1)コーティング組成物の調製
ルチル型酸化チタンとして、酸化チタン含量が79〜85%で、Al23およびステアリン酸で表面処理し、一次粒径0.01〜0.03μmで、比表面積が50〜60m2/gで、吸油量が24〜30g/100gで、表面が撥水性のルチル型酸化チタン(TTO51(C)、石原産業社製)を用意した。酸化亜鉛微粒子として、平均粒子径が0.031μmで、BET法による比表面積が35m2/gの酸化亜鉛(シーアイ化成(株)製ZnO)を用意した。電離放射線硬化性バインダー成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET30、日本化薬社製)を用意した。アニオン性の極性基を有する分散剤としては、顔料に親和性のあるブロック共重合体(ディスパービック 163、ビックケミー・ジャパン社製)を用意した。光開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュアー 184、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)を用意した。有機溶剤としては、メチルイソブチルケトンを用意した。
【0144】
ルチル型酸化チタン、酸化亜鉛、ペンタエリスリトールトリアクリレート、分散剤(ディスパービック 163)、および、メチルイソブチルケトンをマヨネーズ瓶に入れ、混合物の約4倍量のジルコニアビーズ(φ0.3mm)を媒体に用いてペイントシェーカーで10時間振とうした後に、光開始剤(イルガキュアー 184)を加えて下記組成のコーティング組成物を得た。
【0145】
<コーティング組成物の組成>
・ルチル型酸化チタン(Al23およびステアリン酸による表面処理品、一次粒径0.01〜0.03μm)(TTO51(C)、石原産業(株)製):10重量部
・酸化亜鉛(平均粒子径0.031μm、BET法による比表面積35m2/g)(シーアイ化成(株)製ZnO)):0.5重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET30、日本化薬(株)製):4重量部
・アニオン性基含有分散剤(ディスパービック163、ビックケミー・ジャパン(株)製):2重量部
・光開始剤(イルガキュアー184、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製):0.2重量部
・メチルイソブチルケトン:37重量部
(2)塗膜の作成及び物性評価
(a) 塗膜1の形成
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(FT−T80UZ、富士写真フィルム(株)製)上に厚さ3μmのペンタエリスリトールトリアクリレート硬化膜を形成した後、調製直後のコーティング組成物をバーコーター#2で塗工し、60℃で1分間加熱乾燥した後、500mJのUV照射によって硬化させ、硬化後膜厚が0.1μmの透明膜を形成した。
【0146】
この透明膜について、下記試験により膜強度、蒸着膜密着性、及び耐光性を評価した。
【0147】
(膜強度)
スチールウールの#0000番を用い200g〜1kg荷重で膜表面を20回擦った時のヘイズの変化により膜強度を評価した。
【0148】
(蒸着膜との密着性)
以下の条件でPVD法により膜厚84.7μmのシリカ蒸着膜を形成し、得られた蒸着膜について以下のセロハンテープ碁盤目剥離試験を行った
<PVD法条件>
・熱蒸着用ターゲット:一酸化ケイ素(純度99.9%)
・出力:電流値0.4A、電圧480V
・真空チャンバー内の真空度:0.13Pa
・アルゴン流量:38.8sccm
・酸素流量:5sccm
・蒸着速度:8.47nm/分
<セロハンテープ碁盤目剥離試験の条件>
塗膜表面にカッターで縦10本×横10本の傷を直交させて付け、100個の碁盤目状の桝目を設けた。その上からセロハンテープを強く密着させた後、一気に引き剥がし、膜面に残った桝目の数を数えた。
【0149】
(耐光性)
塗膜をスガ試験機(株)製の耐光性試験機「紫外線フェードメーター」を用いてカーボンアークランプ下、湿度60%で200時間照射し、この照射前後に550nmでの反射率カーブを測定した。反射カーブは、株式会社島津製作所製の分光光度計UV−3100PCを用い、入射角と反射角を15度に調節した時の値を測定した。
【0150】
(試験結果)
各試験の結果を第1表に示す。この透明膜は、膜強度試験において1kg荷重で傷が全くつかないことを確認した。また、この透明膜は、セロハンテープ碁盤目剥離試験においてシリカ膜は全く剥離せず、蒸着膜に対して良好な密着性を示した。さらに、この透明膜は、耐光性試験の照射前後において反射率カーブに変化は全く見られなかった。
【0151】
(2) 塗膜2の形成
また、ヘイズ及び屈折率の測定用に、厚さ50μmの表面未処理PET基材(東レ(株)製ルミナーT60)上に、調製直後のコーティング組成物をバーコーター#2で塗工し、60℃で1分間加熱乾燥した後、500mJのUV照射によって硬化させ、硬化後膜厚が0.1μmの透明膜を形成した。
【0152】
また、コーティング組成物を室温で30日間放置して沈殿の発生状況を観察し、さらに放置後のコーティング組成物を用いて、上記と同様に厚さ50μmの表面未処理PET基材(東レ(株)製ルミナーT60)上に硬化後膜厚が0.1μmの透明膜を形成した。
【0153】
調製直後および室温放置後のコーティング組成物それぞれから形成した硬化後膜厚が0.1μmの透明膜について、下記方法でヘイズと屈折率を測定した。
(ヘイズ)
ヘイズは、濁度計NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0154】
(屈折率)
硬化後の塗膜の屈折率は、分光エリプソメーター(UVSEL、ジョバン−イーボン社製)を用い、ヘリウムレーザー光の波長633nmでの屈折率を測定した。
【0155】
(試験結果)
各試験の結果を第2表に示す。実施例1において調製したコーティング組成物を用いたところ、塗膜のヘイズは0(ゼロ)、屈折率は1.83であり、ヘイズおよび屈折率が良好な透明膜が得られた。また、実施例1のコーティング組成物は、室温放置後も分散性に優れ、調製直後と同様にヘイズおよび屈折率が良好な透明膜が得られた。
【0156】
(比較例1)
実施例1において、酸化亜鉛粒子を用いなかったこと以外は実施例1と同様に行ってコーティング組成物を調製し、塗膜1及び塗膜2を作成し、物性を評価した。試験結果を第1表及び第2表に示す。比較例1のコーティング組成物により作成した塗膜は、膜強度、蒸着膜密着性、ヘイズ、及び屈折率は良好であった。しかし、耐光性は、実施例1と同様の条件で反射率は照射前と比べて照射後には5%程度低波長側に移動した。
【0157】
【表1】
Figure 0004923345
【0158】
【表2】
Figure 0004923345
【0159】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明に係るコーティング組成物は、塗膜に所定の屈折率や導電性などの何らかの機能を付与するために配合される無機酸化物微粒子の分散性、分散安定性に優れ、小さいヘイズと実使用に耐え得る膜強度を保持しながら、微粒子の光触媒活性による塗膜の経時劣化を極端に抑えた耐候性の高い塗膜を形成することができる。
【0160】
また、本発明に係るコーティング組成物は、塗工適性に優れ、均一な大面積の薄膜を容易に形成することができ、屈折率が調節されたヘイズの小さい機能性透明薄膜を低コストで大量生産するのに適している。
【0161】
また、本発明に係る塗膜は、本発明に係る上記コーティング組成物を用いて形成されるものである。この塗膜は、透明性が高く、ヘイズが小さく、且つ、無機酸化物微粒子の配合量をコントロールして機能、性能を調節できるので、さまざまな機能性透明薄膜として利用できる。代表的には、反射防止膜の低屈折率層や中乃至高屈折率層や高屈折率ハードコート層のような光学薄膜や、帯電防止膜や帯電防止性ハードコート層や透明電極膜などの導電性透明薄膜を形成するのに好適に利用できる。
【0162】
さらに、本発明に係る塗膜のバインダーが水素結合形成基を有する場合には、隣接層、その中でも特に蒸着層との密着性が特に優れている。
【0163】
そして、本発明に係る塗膜を含んでいる反射防止膜は、液晶表示装置やCRT等の表示面に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る塗膜を含んだ多層型反射防止膜により表示面を被覆した液晶表示装置の一例であり、その断面を模式的に示した図である。
【図2】本発明に係る塗膜を含んだ多層型反射防止膜を設けた配向板の一例であり、その断面を模式的に示した図である。
【図3】本発明に係る塗膜を含んだ反射防止フィルムの一例であり、その断面を模式的に示した図である。
【図4】本発明に係る塗膜を含んだ透明導電フィルムの一例であり、その断面を模式的に示した図である。
【符号の説明】
101…液晶表示装置
102…反射防止フィルム
1…表示面側のガラス基板
2…画素部
3…ブラックマトリックス層
4…カラーフィルター
5、7…透明電極層
6…背面側のガラス基板
8…シール材
9…配向膜
10…偏光フィルム
11…バックライトユニット
12…偏光素子
13、14…保護フィルム
15…接着剤層
16…ハードコート層
17…多層型反射防止膜
18…中屈折率層
19…高屈折率層
20…低屈折率層
21…基材フィルム
22…高屈折率層
23…低屈折率層
25…導電性透明薄膜

Claims (11)

  1. 少なくとも、(1)0.01〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有するチタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化セリウム、酸化アンチモン、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)よりなる群から選ばれる無機酸化物微粒子、
    (2)0.005〜0.1μmの範囲の一次粒子径を有し、且つ、BET法による比表面積が10〜70m2/gの範囲にある酸化亜鉛微粒子、
    (3)バインダー成分、
    (4)アニオン性の極性基を有する分散剤、及び、
    (5)有機溶剤、
    からなり、
    前記無機酸化物微粒子10重量部に対して、前記酸化亜鉛微粒子を0.1〜5重量部の割合で含有することを特徴とする、コーティング組成物。
  2. 前記無機酸化物微粒子の表面の少なくとも一部が、光触媒活性を低下又は消失させるアルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、亜鉛をドープした酸化インジウム(IZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)よりなる群から選ばれる無機化合物により被覆されていることを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
  3. 前記無機酸化物微粒子の表面の少なくとも一部が、有機カルボン酸、シランカップリング剤、及び、チタネートカップリング剤よりなる群から選ばれる有機化合物及び/又は有機金属化合物により被覆されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
  4. 前記分散剤は、エチレンオキサイド鎖の骨格を有する主鎖にアニオン性の極性基からなる側鎖又はアニオン性の極性基を有する側鎖が結合した分子構造を有し、数平均分子量が2,000から20,000の化合物であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
  5. 前記バインダー成分は、電離放射線硬化性のバインダー成分であり、分子中に水酸基を有するバインダー成分であることを特徴とする、請求項4に記載のコーティング組成物。
  6. 分子中に水酸基を有する前記バインダー成分が、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及び、ジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれる一又は二以上の成分であることを特徴とする、請求項5に記載のコーティング組成物。
  7. 前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコーティング組成物を被塗工体の表面に塗布することにより得られ、膜厚が0.05〜10μmの時に、屈折率が1.55〜2.30であることを特徴とする、塗膜。
  8. 光透過性を有する基材フィルムの少なくとも一面側に、光透過性を有し且つ互いに屈折率が異なる光透過層を二層以上積層してなり、前記光透過層のうちの少なくとも一つが前記請求項7に記載の塗膜であることを特徴とする、反射防止フィルム。
  9. 光透過性を有する基材フィルムの少なくとも一面側に、前記請求項7に記載の塗膜からなるハードコート層を介して1又は2以上の光透過層を積層してなることを特徴とする、反射防止フィルム。
  10. 光透過性を有する基材フィルムの少なくとも一面側に、1又は2以上の光透過層を積層してなる反射防止膜を設けると共に、前記基材フィルムの反射防止膜を設けた側又はその反対側に前記請求項7に記載の塗膜からなる導電性透明薄膜の層を設けてなることを特徴とする、反射防止フィルム。
  11. 前記請求項8乃至10のいずれか1項に記載の反射防止フィルムを設けた液晶表示装置。
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