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JP4922003B2 - アンテナ装置及び無線装置 - Google Patents

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JP4922003B2 JP2007032410A JP2007032410A JP4922003B2 JP 4922003 B2 JP4922003 B2 JP 4922003B2 JP 2007032410 A JP2007032410 A JP 2007032410A JP 2007032410 A JP2007032410 A JP 2007032410A JP 4922003 B2 JP4922003 B2 JP 4922003B2
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Description

本発明はアンテナ装置及び無線装置に係り、特に磁性体を組み合わせて構成されるアンテナ装置及び無線装置に関する。
例えば携帯電話機のような小型の無線装置においては、実装スペースが限られることから、アンテナ又は回路の各部分の間の電磁的結合又は容量結合による干渉が問題になる場合がある。特にアンテナについては、放射効率の低下が問題になる場合がある。これらの問題に対して、磁性体を利用する解決策が検討されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照。)。
上記の特許文献1は、基板上の回路をシールドケースで囲むと共に該シールドケースからアンテナを引き出すようにした携帯無線装置の構成において、シールド効果を高めるための技術を記載している。その1つとして、シールドケースと基板の接地パターンの接続箇所のうち、シールドケース表面に誘起される高周波電流の向きに直交する向きに当る箇所の電気的接続をより確実にすることが挙げられている。他の1つとして、シールドケース表面に誘起される高周波電流の向きに磁化容易軸を有する磁性膜を積層して、電波の反射係数を高めることが挙げられている。
上記の特許文献2は、携帯電話端末で生じる近傍磁界の領域に異方性磁性体を設け、磁界を形成する磁力線の向きと異方性の向きを揃えることにより高周波磁界を異方性磁性体に吸収するという技術を記載している。その効果として、携帯電話端末使用時の局所電磁波比吸収率(SAR)を低減させることが挙げられている。
上記の特許文献3は、内蔵するL型アンテナに対向する回路基板上に磁性材料板を具備した移動通信端末を記載している。その効果として、回路基板のGND(接地)導体層表面の磁界強度及び誘導電流の発生を抑え、アンテナ指向性を安定させることが挙げられている。
特開2001−156484号公報(第2乃至4ページ、図1) 特開2003−198412号公報(第2乃至4ページ、図1) 特許第3713476号公報(第6、7ページ、図7)
無線装置の内蔵アンテナ(ここでは、無線装置の筐体内部に設けられ、又は筐体の内面若しくは外面にその一部として形成された素子からなるアンテナをいう。以降において同じ。)は、筐体の小型・低背化とアンテナの多共振・広帯域化という互いに相反しがちな要求に応えるため、折り曲げや分岐を含む複雑な形状をとるようになっている。このような形状のため、内蔵アンテナの放射効率が損なわれることがある。
例えばアンテナ素子が180度折り曲げられた場合には、折り曲げの前後の部分にそれぞれ分布するアンテナ電流が空間的に互いに逆を向くため、放射効率を損なうことがある。スペース効率を高める形状としてよく知られているメアンダ型素子の場合にも、隣り合う部分にそれぞれ分布するアンテナ電流が空間的に互いに逆を向くため、放射効率を損なうことがある。アンテナ素子が互いに平行な2の部分に分岐された場合には、平行する部分どうしの容量結合によりインピーダンス不整合を招くことがある。
上述した特許文献1に記載された従来の技術は、引き出し型のアンテナを用いる携帯無線装置において、シールドケースのインピーダンスを下げて高周波電流を流しやすくすることにより、シールドケースに囲まれた部分の回路への高周波電流の回り込みを抑えようとするものである。内蔵型のアンテナを用いる無線装置に対しては、アンテナと基板の位置関係が引き出し型アンテナの場合とは異なる等の理由により、このような技術を適用することが難しい場合がある。また、磁化容易軸の向きを定めて磁性膜を積層することから、磁化容易軸の向きが一意に決まらない場合には適用できないという問題がある。
上述した特許文献2に記載された従来の技術は、携帯電話端末(無線装置)の近傍磁界を吸収してSAR低減を図るものである。他方、無線装置の内蔵アンテナの放射効率を改善するためには、単に近傍磁界を吸収するだけでは足りず、所要の放射パターン及び利得を確保することができるように効率よく電磁界を放射させる必要がある。したがって、特許文献2の技術だけでは内蔵アンテナの放射効率改善の目的に十分ではないという問題がある。
上述した特許文献3に記載された従来の技術は、移動通信端末(無線装置)の内蔵アンテナにおいてアンテナ素子と接地導体層の間に磁性材料板を介在させることにより、接地回路に誘導される不平衡電流の影響を低減させるものである。しかし、無線装置の内蔵アンテナは上述したように複雑な形状をとるようになっている。そのため、特許文献3に係る従来技術が装置の薄型化に寄与しても、実装スペースの制約を緩和し、特に面積を小形化することは難しい場合がある。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、小型の無線装置において複雑な形状をとることのある内蔵アンテナに磁性体を組み合わせることにより、放射効率を改善することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、給電部に結合される一端を有し、折り返し部で折り返されて開放端に至るアンテナ素子であって、前記給電部に結合される前記一端と前記折り返し部との間の第1の部分と、前記折り返し部と前記開放端との間の第2の部分とが互いに略平行に形成され、且つ前記第1の部分が前記第2の部分より長い経路長を有して形成されているアンテナ素子と、面をなして形成されると共に、前記第1の部分に対して前記第2の部分を遮へいするように、前記形成された面が前記第1の部分及び前記第2の部分に略平行に、かつ、挟まれて設けられた磁性体とを備えたことを特徴とする。
本発明の無線装置は、基板と、給電部に結合される一端を有し、折り返し部で折り返されて開放端に至るアンテナ素子であって、前記給電部に結合される前記一端と前記折り返し部との間の第1の部分と、前記折り返し部と前記開放端との間の第2の部分とが互いに略平行に形成されると共に、前記第1の部分及び前記第2の部分がそれぞれ前記基板と略平行に配設され、且つ前記第1の部分が前記第2の部分より長い経路長を有して形成されているアンテナ素子と、前記基板と略平行な面をなして形成されると共に、前記第1の部分に対して前記第2の部分を遮へいするように、前記形成された面が前記第1の部分及び前記第2の部分に略平行に、かつ、挟まれて設けられた磁性体とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、小型の無線装置において複雑な形状をとることのある内蔵アンテナに磁性体を組み合わせることにより、放射効率を改善することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、以下の各図の間で共通の符号は、同一の構成を表すものとする。
以下、図1乃至図4を参照して、本発明の実施例1を説明する。図1は、本発明の実施例1に係るアンテナ装置の構成及び形状の概念を表す図である。図1に破線で表した無線装置1の給電部10に、実施例1に係るアンテナ装置11に含まれるアンテナ素子12が接続される。アンテナ素子12は、例えば無線装置1の実装スペースが制約されているために、折り返し箇所12aで図の下向きにほぼ180度折り返され、開放端12bに至る。
アンテナ素子12の給電部10に接続された一端と折り返し箇所12aの間の両向き矢印を付して表した部分を、第1部分12cという。アンテナ素子12の折り返し箇所12aと開放端12bの間の両向き矢印を付して表した部分を、第2部分12dという。第1部分12cと第2部分12dは、互いに略平行に形成されている。
第1部分12cと第2部分12dに挟まれて、面をなして形成された磁性体13が設けられる。磁性体13はアンテナ装置11に含まれ、その面が第1部分12c及び第2部分12dに対し略平行であるように配設される。なお図1では、第2部分12dのうち開放端12bを含む範囲が磁性体13の陰に隠れる状態を破線で表している。
アンテナ素子11が励振されたとき、第1部分12cと第2部分12dにそれぞれ分布するアンテナ電流は空間的に互いに逆を向き、電磁界の放射を相殺するように作用する。磁性体13を第1部分12cと第2部分12dの間に設けることにより、アイソレーション効果から第1部分12cに分布するアンテナ電流によって第2部分12dに作用する磁界と、第2部分12dに分布するアンテナ電流によって第1部分12cに作用する磁界が共に減殺される。その結果、上述した電磁界放射の相殺効果が弱められて、アンテナ装置11の放射効率が改善される。
第1部分12cに分布するアンテナ電流の振幅は、一般に給電部10に近い側において相対的に大きく、折り返し箇所12aに近い側において相対的に小さい。したがって、図1の上方に向けて放射パターンを形成するためには、第1部分12cの給電部10に近い側が開放端12bより上側に位置する図1のレイアウトが有利である。
図2は、図1に示したアンテナ装置11を変形したアンテナ装置11Aの構成及び形状の概念を表す図である。アンテナ装置11Aに含まれるアンテナ素子14は、図1に示したのと同じ無線装置1の給電部10に接続される。アンテナ素子14は、折り返し箇所14aで図の上向きにほぼ180度折り返され、開放端14bに至る。
アンテナ素子14の給電部10に接続された一端と折り返し箇所14aの間の両向き矢印を付して表した部分を、第1部分14cという。アンテナ素子14の折り返し箇所14aと開放端14bの間の両向き矢印を付して表した部分を、第2部分14dという。第1部分14cと第2部分14dは、互いに略平行に形成されている。
第1部分14cと第2部分14dの間に、図1に示したのと同じ磁性体13が設けられる。磁性体13はアンテナ装置11Aに含まれ、その面が第1部分14c及び第2部分14dに対し略平行であるように配設される。なお図2では、第1部分14cのうち途中の箇所が磁性体13の陰に隠れる状態を破線で表している。
アンテナ装置11Aのアンテナ装置11との相違はアンテナ素子14又はアンテナ素子12の折り返しの向きだけであるから、磁性体13を第1部分14c及び第2部分14dの間に設けることにより、アイソレーション効果からアンテナ装置11と同様に放射効率改善の効果が得られる。
第1部分14cの経路長が第2部分14dの経路長よりも長いとき、図2に示したように第1部分14cに対して第2部分14dを遮へいするように磁性体13を配設することができる。このようにすれば、実装上の都合で第1部分14cの給電部10に近い側が開放端14bより下側に位置せざるを得ない場合でも、磁性体13に遮られずに図2の上方に向かう放射パターンを形成することができる。
図3は、図1に示したアンテナ装置11の磁性体13を異方性のものに代えたアンテナ装置11Bの構成及び形状の概念を表す図である。アンテナ装置11Bには、図1に示したのと同じアンテナ素子12が含まれ、アンテナ素子12は図1に示したのと同じ無線装置1の給電部10に接続される。
アンテナ素子12の第1部分12cと第2部分12dの間に、面をなして形成された異方性磁性体15が設けられる。異方性磁性体15はアンテナ装置11Bに含まれ、その面が第1部分12c及び第2部分12dに対し略平行であるように配設される。
説明の便宜上、図3に示したように直交座標系を定義する。当該直交座標系のX軸は、アンテナ素子12の第1部分12c又は第2部分12dの向き及び異方性磁性体15のなす面に略平行とする。Y軸はX軸と直交し、異方性磁性体15のなす面に略平行とする。Z軸はX軸及びY軸と直交し、異方性磁性体15のなす面に略直交する。
異方性磁性体15は、ナノグラニュラー材又はナノコラムナー材等の異方性磁性材料からなり、Y軸と略平行(図3に示したブロック矢印の向き)に磁化困難軸を向けて配設されるものとする。その場合、図3に示した直交座標系における磁束密度と磁界の関係式は、異方性磁性体15の磁化困難軸(図3の場合Y軸)方向の比透磁率をμyとすると、概ね式1のように表される。
式1の左辺は、異方性磁性体15に磁界が印加されたときの磁束密度を、上記の直交座標系におけるベクトルとして表したものである。式1の右辺は、上記の直交座標系における行列として表される異方性磁性体15の比透磁率と、ベクトルとして表される磁界の積を表したものである。
Figure 0004922003
式1は、磁界が印加されたとき、磁化困難軸方向の磁界成分に対しては固有の透磁率が作用し、その他の方向の磁界成分に対しては透磁率が作用しない(自由空間の透磁率と同じである。)異方性磁性体の特性を表現したものである。
一般の(等方性の)磁性体材料の比透磁率の上限値は高い周波数におけるほど低下するという事実が、いわゆるスヌークの限界として知られている。例えば周波数1GHzにおいて、フェライト等の比透磁率の上限値は10以下である。
これに対して、異方性を有する磁性体材料は磁化困難軸方向に高い比透磁率を示すことが知られており、例えば周波数1GHzにおいて50程度の値をとることも期待できる。したがって、図3に示したように磁化困難軸をアンテナ素子12の第1部分12c及び第2部分12dに略直交するように(Y軸に平行に)向けて異方性磁性体15を配設することにより、第1部分12c及び第2部分12dの間でそれぞれに分布するアンテナ電流によって生じる磁界の相互作用は、より強く遮られる。その結果、アンテナ装置11Bの放射効率は図1に示したアンテナ装置11よりさらに改善される。
図4は、図2に示したアンテナ装置11Aの磁性体13を異方性のものに代えたアンテナ装置11Cの構成とそれらの位置関係を表す図である。アンテナ装置11Cは、図2に示したのと同じアンテナ素子14及び図3に示したのと同じ異方性磁性体15を有し、アンテナ素子14は図1に示したのと同じ無線装置1の給電部10に接続される。図4においても図3と同じ直交座標系を定義するものとし、異方性磁性体15はY軸と略平行(図4に示したブロック矢印の向き)に磁化困難軸を向けて配設されるものとする。
アンテナ装置11Cのアンテナ装置11Bとの相違はアンテナ素子14又はアンテナ素子12の折り返しの向きだけであるから、異方性磁性体15が磁化困難軸をY軸と平行に向けて第1部分14c及び第2部分14dの間に設けられることにより、アンテナ装置11Bと同様に放射効率改善の効果が得られる。
図4においても、第1部分14cの経路長が第2部分14dの経路長よりも長いとき、第1部分14cに対して第2部分14dを遮へいするように異方性磁性体15を配設することができる。このようにすれば、実装上の都合で第1部分14cの給電部10に近い側が開放端14bより下側に位置せざるを得ない場合でも、磁性体15に遮られずに図4の上方に向かう放射パターンを形成することができる。
図1又は図3において、第1部分12c及び第2部分12dが磁性体13又は異方性磁性体15を含む層構造の各図における上側の面及び下側の面にそれぞれめっき又は貼り付けされているとしてもよい。その場合折り返し部12aは、例えば当該層構造の上面と下面の間を電気的に接続するビアホールによって形成されてもよい。
図2又は図4において、第1部分14c及び第2部分14dが磁性体13又は異方性磁性体15を含む層構造の各図における上側の面及び下側の面にそれぞれめっき又は貼り付けされているとしてもよい。その場合折り返し部14aは、例えば当該層構造の上面と下面の間を電気的に接続するビアホールによって形成されてもよい。
本発明の実施例1によれば、無線装置の実装スペースの制約等のため内蔵アンテナ装置のアンテナ素子を折り返したとき、折り返し箇所前後の互いに平行なアンテナ素子の部分の間に磁性体を設けることにより、これらの部分にそれぞれ分布するアンテナ電流が空間的に互いに逆を向くために生じる放射効率の低下を抑えることができる。
以下、図5及び図6を参照して、本発明の実施例2を説明する。図5は、本発明の実施例2に係るアンテナ装置の構成及び形状の概念を表す図である。図5に破線で表した無線装置2の給電部20に、実施例2に係るアンテナ装置21に含まれるアンテナ素子22が接続される。アンテナ素子22は、例えば多共振化を目的として分岐箇所22aで分岐され、分岐後の一方は開放端22bに至り他方は開放端22cに至る。
アンテナ素子22の分岐箇所22aと開放端22bの間の両向き矢印を付して表した部分を、第1部分22dという。アンテナ素子22の分岐箇所22aと開放端22cの間の両向き矢印を付して表した部分を、第2部分22eという。第1部分22dと第2部分22eは、互いに略平行に形成されている。
第1部分22dと第2部分22eに挟まれて、実施例1で説明したのと同じ磁性体13が設けられる。磁性体13はアンテナ装置21に含まれ、その面が第1部分22d及び第2部分22eに対し略平行であるように配設される。なお図5では、第1部分22dのうち途中の箇所が磁性体13の陰に隠れる状態を破線で表している。
アンテナ装置21は、給電部20から開放端22bまでの経路長によって定まる共振周波数と、給電部20から開放端22cまでの経路長によって定まる共振周波数を有する。第1部分22dと第2部分22eの間隔が狭まってこれらの間に容量結合を生じると、低域側の共振周波数が高くなり、つまりアンテナ素子が大型化するのと等価になり、各共振周波数におけるインピーダンスが低下して不整合の原因となる場合がある。
磁性体13を第1部分22dと第2部分22eの間に設けることにより、実施例1で述べたのと同様にして第1部分22dと第2部分22eの電磁的な結合が弱まる。これは、上記の共振周波数のような高周波において、第1部分22dと第2部分22eの間隔が見かけ上広がるのと等価である。このため、第1部分22d及び第2部分22eの間の高周波における容量結合が弱まり、インピーダンスの低下が抑えられる。
給電部20から開放端22bまでの第1部分22dを含む経路長が、給電部20から開放端22cまでの第2部分22eを含む経路長よりも長いとすると、第1部分22dが相対的に低域側の周波数の共振に寄与し、第2部分22eが相対的に高域側の周波数の共振に寄与する。この場合、図5に示したように第1部分22dに対して第2部分22eを遮へいするように磁性体13を配設することができる。このようにすれば、高域側の周波数において問題なく図5の上方に向かう放射パターンを形成することができるだけでなく、低域側の周波数においても磁性体13に遮られずに図5の上方に向かう放射パターンを形成することができる。
図6は、図5に示したアンテナ装置21の磁性体13を異方性のものに代えたアンテナ装置21Aの構成及び形状の概念を表す図である。アンテナ装置21Aは、図5に示したのと同じアンテナ素子22を有し、図5に示したのと同じ無線装置2の給電部20に接続される。
アンテナ素子22の第1部分22dと第2部分22eの間に、実施例1で説明したのと同じ異方性磁性体15が設けられる。異方性磁性体15はアンテナ装置21Aに含まれ、その面が第1部分22d及び第2部分22eに対し略平行であるように配設される。
説明の便宜上、図6に示したように直交座標系を定義する。当該直交座標系のX軸は、アンテナ素子22の第1部分22d又は第2部分22eの向き及び異方性磁性体15のなす面に略平行とする。Y軸はX軸と直交し、異方性磁性体15のなす面に略平行とする。Z軸はX軸及びY軸と直交し、異方性磁性体25のなす面に略直交する。異方性磁性体15は、Y軸と略平行(図6に示したブロック矢印の向き)に磁化困難軸を向けて配設されるものとする。
そうすると、異方性磁性体15の磁化困難軸の向き(Y軸)に略直交する向き(X軸)の第1部分22d及び第2部分22eの間の電磁的結合は、図3を参照して説明したのと同じ理由により、図5の場合よりもさらに弱まる。すなわち、第1部分22d及び第2部分22eの見かけ上の間隔がさらに広がって、低域側の共振周波数が高くなることと、インピーダンスの低下がさらに抑えられる。
本発明の実施例2によれば、多共振化等のため内蔵アンテナ装置のアンテナ素子を分岐したとき、アンテナ素子の分岐後の平行する部分の間に磁性体を設けることにより、インピーダンスの低下を抑えることができる。
以下、図7を参照して、本発明の実施例3を説明する。図7は、本発明の実施例3に係るアンテナ装置の構成及び形状の概念を表す図である。図7に破線で表した無線装置3の給電部30に、実施例3に係るアンテナ装置31に含まれるアンテナ素子32が接続される。アンテナ素子32は、折り返し箇所32aで図の下向きにほぼ180度折り返され、接地端32bで無線装置3の接地回路に接続された折り返し型アンテナである。このような片側接地の折り返し型アンテナは、給電部30から接地端32bまでの全長が2分の1波長に相当する周波数で共振することが知られている。
アンテナ素子32の給電部30に接続された一端と折り返し箇所32aの間の両向き矢印を付して表した部分を、第1部分32cという。アンテナ素子32の折り返し箇所32aと接地端32bの間の両向き矢印を付して表した部分を、第2部分32dという。第1部分32cと第2部分32dは、互いに略平行に形成されている。
第1部分32cと第2部分32dに挟まれて、面をなして形成された磁性体33が設けられる。磁性体33はアンテナ装置31に含まれ、その面が第1部分32c及び第2部分32dに対し略平行であるように配設される。第1部分32c及び第2部分32dが、磁性体33を含む層構造の図6における上側の面及び下側の面にそれぞれめっき又は貼り付けされているとしてもよい。その場合折り返し部32aは、例えば当該層構造の上面と下面の間を電気的に接続するビアホールによって形成されてもよい。
なお磁性体33は、第1部分32cと第2部分32dをお互いに遮へいするように設けられていれば、必ずしも図7に示したように折り返し部32aを含む範囲までカバーすることは必要でない。
第1部分32cと第2部分32dの間に磁性体33を設けることにより、実施例2で述べたのと同様にして第1部分32c及び第2部分32dの間の高周波における容量結合が弱まり、低域側の共振周波数が高くなることと、インピーダンスの低下が抑えられる。
磁性体33を異方性のものに代え、磁化困難軸をアンテナ素子32の第1部分32c又は第2部分32dの向きに略直交するように向けて配設してもよい。その場合、実施例1又は実施例2で説明したのと同様に第1部分32c及び第2部分32dの間の結合がさらに弱まり、低域側の共振周波数が高くなることと、インピーダンスの低下をさらに抑えることができる。
本発明の実施例3によれば、片側接地の折り返し型アンテナ素子において、折り返し箇所前後の互いに平行なアンテナ素子の部分の間に磁性体を設けることにより、インピーダンスの低下を抑えることができる。
以下、図8乃至図14を参照して、本発明の実施例4を説明する。実施例4では、実施例2で説明したアンテナ装置21を含む無線装置2を、アンテナ装置21と筐体及び基板の組み合わせとしてスペース効率よく構成する例を説明する。図8は、実施例4に係る無線装置2の構成を表す斜視図である。
無線装置2は、第1部材25と第2部材26が図の上下の向きに係合してなる筐体と、その筐体に収容された基板27を有する。基板27には、実施例2で説明した給電部20が設けられる。
実施例2で図5を参照して説明したように、給電部20に接続されたアンテナ素子22は、第1部分22dと第2部分22eを有する。第1部分22dと第2部分22eに挟まれて、磁性体13が設けられる。アンテナ素子22及び磁性体13は、アンテナ装置21に含まれる。
第1部分22dは、例えば第1部材25の内面(筐体の内側を向く面)に板金やめっき等された導体パターンからなる。第2部分22eは、例えば第1部材25の外面(筐体の外側を向く面)にめっきされた導体パターンからなる。第2部分22eは、第1部材25の外面と内面の間を貫通する接続部材を介して第1部分22d及び給電部20に接続されている。
磁性体13は第1部材25の内面若しくは外面に、又は、第1部材25の内層として設けられる。この点について、図9乃至図11を参照して説明する。図9は、無線装置2の構成の第1例を、図8の一点鎖線“A−A”を通って基板27のなす面に略垂直な面における断面図として表したものである。図中の28は、第1部材25の外面と内面の間を貫通して第2部分22eを第1部分22d及び給電部20に接続する接続部材である。図9に表したその他の構成は、図8に同じ符号を付して表したものとそれぞれ同じである。
図9において、第1部分22d及び第2部分22eは、それぞれ第1部材25の内面及び外面にめっき等の方法により設けられる。磁性体13は、第1部材25の内面と第1部分22dに挟まれるように層をなして設けられる。
図10は、無線装置2の構成の第2例の図9と同様の断面図で、磁性体13が第1部材25の外面に位置する場合を表している。図10に表した各構成は、図9に同じ符号を付して表したものとそれぞれ同じである。図10において、第1部分22dは第1部材25の内面にめっき等の方法により設けられる。磁性体13は、第1部材25の外面に設けられる。第2部分22eは、磁性体13に重ねてめっき等の方法により設けられる。したがって、磁性体13が第1部材25の外面と第2部分22eに挟まれるように層をなして設けられた形になる。
図11は無線装置2の構成の第3例の図9と同様の断面図で、磁性体13が第1部材25の内層として設けられた場合を表している。図11に表した各構成は、図9に同じ符号を付して表したものとそれぞれ同じである。図11において、第1部分22d及び第2部分22eは、それぞれ第1部材25の内面及び外面にめっき等の方法により設けられる。磁性体13は、第1部材25の内層として設けられる。
図12は図9と同様の無線装置2の断面図で、第1部分22d、第2部分22e及び磁性体13を一体化して形成したアンテナ部材29を第1部材25の上面に取り付けた構成を表す。図11に表したその他の構成は、図9又は図10に同じ符号を付して表したものとそれぞれ同じである。図13は、アンテナ部材29の構成を表す断面図である。
図13の左側の図によれば、アンテナ部材29は、板状に形成された誘電体29aの上面に磁性体13と第2部分22eが層をなし、かつ、誘電体29aの下面に第1部分22dが層をなして形成される。
図13の中央の図によれば、アンテナ部材29は、板状に形成された誘電体29aの上面に第2部分22eが層をなすと共に磁性体13が誘電体29aの内層として設けられ、かつ、誘電体29aの下面に第1部分22dが層をなして形成される。
図13の右側の図によれば、アンテナ部材29は、板状に形成された誘電体29aの上面に第2部分22eが層をなし、かつ、誘電体29aの下面に磁性体13と第1部分22dが層をなして形成される。
図13の何れかの図に示すように形成されたアンテナ部材29を、図12に示すように第1部材25の上面に取り付けることにより、無線装置2を図9乃至図11の何れかの図に表したのと等価に構成することができる。
図14は図9と同様の無線装置2の断面図で、アンテナ部材29を第1部材25の下面に取り付けた構成を表す。このようにアンテナ部材29を取り付けても、無線装置2を図9乃至図11の何れかの図に表したのと等価に構成することができる。
図9等に断面図を示した無線装置2は、実施例2で説明したように各断面図の上方へ向けてアンテナ装置21の放射パターンを形成することが予定される。また、第1部分22dが相対的に低域側の周波数の共振に寄与し、第2部分22eが相対的に高域側の周波数の共振に寄与する。各断面図に示したように、第1部分22dに対して第2部分22eを遮へいするように磁性体13を配設することにより、低域側の周波数においても磁性体13に遮られずに上方に向かう放射パターンを形成することができる。
以上説明した実施例4において、磁性体13を実施例2と同じく異方性磁性体15に置き換え、その磁化困難軸がアンテナ素子22の第1部分22d又は第2部分22eの向きに略直交するように配設してもよい。
実施例1で説明した無線装置1についても、実施例4で説明したのと同様にして、アンテナ装置11と筐体及び基板を組み合せて構成することができる。その場合、図1乃至図4に示した折り返し箇所12a又は14aは、例えば筐体を構成する部材の内面と外面を貫通するビアホールにより形成することができる。
本発明の実施例4によれば、無線装置の筐体を構成する部材の表面にアンテナ素子及び磁性体を取り付けることにより、無線装置のスペース効率を改善することができるという、付加的な効果が得られる。
以下、図15及び図16を参照して、本発明の実施例5を説明する。図15は、本発明の実施例5に係る無線装置5の主要な部分の構成と形状を表す斜視図である。無線装置5は、図15に一部を示す基板50を有している。基板50には、給電部51が設けられている。無線装置5は、アンテナ部材52を有している。説明の便宜上、図15に示したように直交座標系を定義する。
アンテナ部材52は、アンテナ素子及び異方性磁性体を含むと共に面をなして形成されており、例えば実施例4で説明したアンテナ部材29のように板状の誘電体、異方性磁性体及びアンテナ素子用の導体層が積層されたものである。また、実施例4の前半で説明したように、無線装置5の筐体を構成する部材(その全体は図示せず。)の一部にアンテナ素子と異方性磁性体が取り付けられたものと考えてもよい。異方性磁性体とアンテナ素子の位置関係については、後述する図16による。
アンテナ部材52の図中の上側の面(上面)と図中の下側の面(下面)を行き来するように設けられた導体により、アンテナ素子53が少なくとも一部をメアンダ型にして形成される。アンテナ素子53の一端は、例えばスプリングコネクタ等の接続部材を介して給電部51に接続された給電端53aである。
アンテナ素子53は給電端53aに始まり、ビアホール53bを含むアンテナ部材52の複数のビアホールを経てアンテナ部材52の上面と下面の間を行き来しながら一部がメアンダ型に形成され、開放端53cに至る。図15では、アンテナ素子53の上面の部分を実線で、下面及びビアホールの部分を破線で、それぞれ表す。
図15で定義した直交座標系のX軸は、アンテナ部材52のなす面及びアンテナ素子53の給電端53aから開放端53cへの向きに略平行である。Y軸は、アンテナ部材52のなす面に平行であって、X軸に直交する。Z軸は、X軸とY軸に直交し、アンテナ部材52のなす面に略直交する。
アンテナ素子53のメアンダ型に形成された一部に対応するアンテナ部材52の少なくとも一部に、異方性磁性体54(図15には図示せず。)からなる層が設けられる。図16は、アンテナ素子53と異方性磁性体54との位置関係を表す図である。図16においては、異方性磁性体54を除くアンテナ部材52及び基板50の図示を省略する。図16では、図15と同じ直交座標系が定義される。
異方性磁性体54は、例えば図9乃至図11のいずれかに示したのと同様にして、アンテナ部材52に設けられる。異方性磁性体54の少なくとも一部は、図示したように磁化困難軸をX軸と略平行に向けて配設される。
アンテナ素子53が例えば4分の1波長モノポールアンテナとして動作する場合、Y軸に平行であってアンテナ部材52の上面に設けられた素子部分と、Y軸に平行であってアンテナ部材52の下面に設けられた素子部分には、空間的に互いに逆を向くアンテナ電流がそれぞれ分布する。これが、メアンダ型素子の放射効率を損なう原因となっていた。
実施例5では、上記の素子部分の間に磁化困難軸を略直交させて異方性磁性体54が設けられるから、実施例1等で述べたように上記の空間的に互いに逆を向くアンテナ電流の磁界を介した相互作用を減殺することができ、アンテナ素子53の放射効率を改善することができる。
本発明の実施例5によれば、アンテナ部材又は筐体用部材の上面と下面を利用して形成されたメアンダ型アンテナ素子に異方性磁性体を組み合わせることにより、放射効率を改善することができる。
以下、図17及び図18を参照して、本発明の実施例6を説明する。図17は、本発明の実施例6に係る無線装置6の主要な構成と形状を表す斜視図である。無線装置6は、図17に一部を示す基板60を有している。基板60には、給電部61が設けられている。無線装置6は、アンテナ部材62を有している。説明の便宜上、図17に示したように直交座標系を定義する。
アンテナ部材62は、アンテナ素子及び異方性磁性体を含むと共に面をなして形成されており、例えば実施例4で説明したアンテナ部材29のように板状の誘電体、異方性磁性体及びアンテナ素子用の導体層が積層されたものである。また、実施例4の前半で説明したように、無線装置6の筐体を構成する部材(その全体は図示せず。)の一部にアンテナ素子と異方性磁性体が取り付けられたものと考えてもよい。
アンテナ部材62の図中の下側の面(下面)に設けられた導体により、アンテナ素子63が形成される。アンテナ素子63の一端は、例えばスプリングコネクタ等の接続部材を介して給電部61に接続された給電端63aである。アンテナ素子63は、少なくとも一部をメアンダ型にしてアンテナ部材62の下面に設けられ開放端63bに至る。図17では、アンテナ素子63を破線で表す。
図17で定義した直交座標系のX軸は、アンテナ部材62のなす面及びアンテナ素子63の給電端63aから開放端63bへの向きに略平行である。Y軸は、アンテナ部材62のなす面に略平行であって、X軸に直交する。Z軸は、X軸とY軸に直交し、アンテナ部材62のなす面に略直交する。
アンテナ素子63のメアンダ型に形成された一部に対応するアンテナ部材62の少なくとも一部に、異方性磁性体64からなる層が設けられる。異方性磁性体64は、例えばアンテナ部材62の図中の上側の面(上面)に設けられる他のアンテナ素子(図示せず。)とアンテナ素子63を相互に遮へいする等の目的で設けられる。
アンテナ素子63は、例えば実施例4で説明した図9乃至図11のいずれかに示した第1部分22dと同様にして、アンテナ部材62に設けられる。すなわち、アンテナ素子63は異方性磁性体64のなす面の基板60に対向する側に設けられる。また、異方性磁性体64の少なくとも一部は、図示したように磁化困難軸をX軸と略平行に向けて配設される。
アンテナ素子63が例えば4分の1波長モノポールアンテナとして動作する場合、Y軸に略平行であって互いに隣り合うアンテナ素子63の部分どうしには、空間的に互いに逆を向くアンテナ電流が分布するため、これらの部分は相対的に放射への寄与が小さい。
一方、アンテナ素子63のうちX軸に略平行な部分どうしには空間的に同一方向のアンテナ電流が分布するため、これらの部分は相対的に放射への寄与が大きい。アンテナ素子63のX軸に略平行な部分に分布するアンテナ電流によって生じるY軸に略平行な向きの磁界は、磁性体64のY軸方向の比透磁率が小さいことから磁性体64によって大きく遮られることはない。すなわち、図17の上方へ向かう放射パターンを形成することができる。
図18は、図17に示したアンテナ部材62の上面に他のアンテナ素子65が設けられる一例を表す図である。アンテナ素子65は、アンテナ部材62の上面でX軸に略平行の向きに設けられる。アンテナ素子65は、アンテナ部材62の上面と下面を貫通するビアホール65aを介して給電端63aに接続される。図18に示したその他の構成は、すべて図17に示したものと同じである。
アンテナ素子63とアンテナ素子65は、合わせて1の分岐されたアンテナ素子と考えることができる。これに類似するものとして、例えば実施例4で説明した図9においては、アンテナ素子22の第1部分22dのうち磁性体13によってカバーされない範囲が図の上方へ向かう低域側の放射パターンの形成に寄与した。図18の場合には、アンテナ素子63のうち異方性磁性体64によってカバーされない範囲だけでなく、カバーされているがX軸に平行なメアンダ形状の一部も低域側の放射パターンの形成に寄与することができる。
本発明の実施例6によれば、アンテナ部材又は筐体用部材の基板に対向する面に形成されたメアンダ型アンテナ素子に異方性磁性体を組み合わせることにより、基板と反対向きの放射パターンを効果的に形成することができる。
以下、図19を参照して、本発明の実施例7を説明する。図19は、本発明の実施例7に係る無線装置7の主要な構成と形状を表す斜視図である。無線装置7は、図19に一部を示す基板70を有している。基板70には、給電部71が設けられている。無線装置7は、アンテナ部材72を有している。説明の便宜上、図19に示したように直交座標系を定義する。
アンテナ部材72は、アンテナ素子及び異方性磁性体を含むと共に面をなして形成されており、例えば実施例4で説明したアンテナ部材29のように板状の誘電体、異方性磁性体及びアンテナ素子用の導体層が積層されたものである。また、実施例4の前半で説明したように、無線装置7の筐体を構成する部材(その全体は図示せず。)の一部にアンテナ素子と異方性磁性体が取り付けられたものと考えてもよい。
アンテナ部材72の図中の上側の面(上面)に設けられた導体により、アンテナ素子73が形成される。アンテナ素子73の一端はビアホール73aを介して、アンテナ部材72の下面に位置する給電端73bに接続される。給電端73bは、例えばスプリングコネクタ等の接続部材を介して給電部71に接続される。アンテナ素子73は、少なくとも一部をメアンダ型にしてアンテナ部材72の上面に設けられ開放端73cに至る。図19では、アンテナ素子73を実線で表す。
図19で定義した直交座標系のX軸は、アンテナ部材72のなす面及びアンテナ素子73の給電端73bから開放端73cへの向きに略平行である。Y軸は、アンテナ部材72のなす面に略平行であって、X軸に直交する。Z軸は、X軸とY軸に直交し、アンテナ部材72のなす面に略直交する。
アンテナ素子73のメアンダ型に形成された一部に対応するアンテナ部材72の少なくとも一部に、異方性磁性体74からなる層が設けられる。アンテナ素子73は、例えば実施例4で説明した図9乃至図11のいずれかに示した第2部分22eと同様にして、アンテナ部材72に設けられる。すなわち、アンテナ素子73は異方性磁性体74のなす面の基板60に対向する側と反対の側に設けられる。また、異方性磁性体74の少なくとも一部は、図示したように磁化困難軸をY軸と略平行に向けて配設される。
アンテナ素子73が例えば4分の1波長モノポールアンテナとして動作する場合、Y軸に略平行であって互いに隣り合うアンテナ素子73の部分どうしには、空間的に互いに逆を向くアンテナ電流が分布するため、これらの部分は相対的に放射への寄与が小さい。
一方、アンテナ素子73のうちX軸に略平行な部分にはアンテナ電流が空間的に同一の向きで分布するため、これらの部分は相対的に放射への寄与が大きい。しかし、基板70の接地回路にこれとは逆向きの電流が分布すると、電磁界の放射を相殺するように作用することから放射効率の低下を招く。
上記の空間的に同一の向きで分布するアンテナ電流の向きに略直交するY軸の方向に磁化困難軸を持ち、高い比透磁率を示す磁性体74の作用により、アンテナ素子73のX軸に略平行な部分と基板70の接地回路の間の磁界による相互作用は減殺される。その結果、電磁界放射の相殺効果が弱められるので、アンテナ素子73の放射効率を改善することができる。
本発明の実施例7によれば、アンテナ部材又は筐体用部材の基板に対向する面と反対側の面に形成されたメアンダ型アンテナ素子に異方性磁性体を組み合わせることにより、基板に分布する電流の影響による放射効率低下を抑えることができる。
以下、図20を参照して、本発明の実施例8を説明する。実施例8は、上述した各実施例における異方性磁性体の構成に関するものである。
通常の高透磁率部材は、Fe、Co又はそれらの酸化物を成分とする金属又は合金から成り、電波の周波数が高くなると渦電流による伝送損失が顕著になるため基材部として使用することが困難になる。一方、フェライトに代表される酸化物の磁性体は高抵抗であるから渦電流による伝送損失は抑えられるが、共振周波数が数百MHzであるから高周波では共振による伝送損失が顕著になり基材部として使用することが困難になる。このため、基材部用の材料として、高周波数の電波に対しても使用できる伝送損失を極力抑えた絶縁性の高透磁率材料が求められている。
このような高透磁率材料を作製する試みとして、スパッタ法などの薄膜技術を用いて高透磁率ナノグラニュラー材料が作製されており、高周波域においても優れた特性を示すことが確認されている。
上述した実施例で説明した異方性磁性体として、このような高透磁率材料を用いることができる。このような高透磁率材料は、基材部と、その基材部上に形成された複合磁性膜を具備する。上記の複合磁性膜は、長手方向が前記基材部の表面に対して垂直方向に向いたFe、Co及びNiの少なくとも1つから選ばれる磁性金属又は磁性合金を含有して前記基材部に重ねて形成された複数の柱状体と、前記柱状体の間に形成された金属の酸化物、窒化物、炭化物及びフッ化物から選ばれる少なくとも1つの無機絶縁体とを有する。上記の複合磁性膜は、基材部の表面と平行な方向(面内方向)に磁気異方性を有する。
上記の高透磁率材料は、例えば図20に示すように基材部91を備えている。複合磁性膜92は、基材部91上に形成されている。基材部91は、例えばポリイミドのようなプラスチック、または酸化ケイ素、アルミナ、MgO、Si、ガラスのような無機材料から作られる。
複合磁性膜92は、基材部91上に長手方向が基材部91表面に対して垂直方向に向いた柱状体93を備える。この柱状体93は、Fe,Co及びNiの少なくとも1つから選ばれる磁性金属又は磁性合金を含有する。図20には、柱状体93の長手方向に対して垂直な断面が楕円形状を有する楕円柱体を例示する。複数の柱状体93の間には金属の酸化物、窒化物、炭化物及びフッ化物から選ばれる少なくとも1つの無機絶縁体94が形成されている。複合磁性膜92は、基材部91の表面と平行な表面内に磁気異方性を有する。
複合磁性膜92は、基材部91の表面と平行な表面の異方性磁界Hk1、基材部91の表面と平行で異方性磁界Hk1に対して直角方向の異方性磁界Hk2を有し、これらの異方性磁界の比(Hk2/Hk1)が1以上である磁気異方性を持つ。これらの異方性磁界Hk1、Hk2を図20に示す。
ここで、Hkは複合磁性膜の表面内に磁場を印加した際の、磁化曲線の第一象限(磁化>0、印加磁場>0)において、印加磁場に対する磁化の変化量が最も大きい磁場下での接線(ほぼ磁化が0になる時の接線)と最も変化量が小さい磁場下での接線(磁化が完全に飽和する時の接線)との交点における磁場である。
本発明の実施例8によれば、磁性金属または磁性合金からなる柱状体の体積百分率が高く、かつ、透磁率実部(μ’)と透磁率虚部(μ”)の比(μ’/μ”)が大きい複合磁性膜を備えた磁性材料、及びこの磁性材料を含むアンテナ基板を有するアンテナデバイスを提供することができる。
以上の各実施例の説明において、アンテナ装置又は無線装置の形状、構成等は例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまな変形が可能である。
本発明の実施例1に係るアンテナ装置の構成及び形状の概念を表す図。 実施例1に係るアンテナ装置の変形例の構成及び形状の概念を表す図。 実施例1に係るアンテナ装置に異方性磁性体を用いた場合の構成及び形状の概念を表す図。 実施例1に係るアンテナ装置の変形例に異方性磁性体を用いた場合の構成及び形状の概念を表す図。 本発明の実施例2に係るアンテナ装置の構成及び形状の概念を表す図。 実施例2に係るアンテナ装置に異方性磁性体を用いた場合の構成及び形状の概念を表す図。 本発明の実施例3に係るアンテナ装置の構成及び形状の概念を表す図。 本発明の実施例4に係る無線装置の構成を表す斜視図。 実施例4に係る無線装置の構成の第1例を表す断面図。 実施例4に係る無線装置の構成の第2例を表す断面図。 実施例4に係る無線装置の構成の第3例を表す断面図。 実施例4に係る無線装置にアンテナ部材を用いる第1例を表す断面図。 実施例4に係るアンテナ部材の構成の3例を表す断面図。 実施例4に係る無線装置にアンテナ部材を用いる第2例を表す断面図。 本発明の実施例5に係る無線装置の主要な部分の構成と形状を表す斜視図。 実施例5におけるアンテナ素子と異方性磁性体の位置関係を表す図。 本発明の実施例6に係る無線装置の主要な部分の構成と形状を表す斜視図。 実施例6に係る無線装置に付加的なアンテナ素子を設けた場合の斜視図。 本発明の実施例7に係る無線装置の主要な部分の構成と形状を表す斜視図。 本発明の実施例8に係る異方性磁性体の構成を表す図。
符号の説明
1、2、3、5、6、7 無線装置
10、20、30、51、61、71 給電部
11、11A、11B、11C、21、21A、31 アンテナ装置
12、14、22、32、53、63、65、73 アンテナ素子
12a、14a、32a 折り返し箇所
12b、14b、22b、22c、53c、63b、73c 開放端
12c、14c、22d、32c 第1部分
12d、14d、22e、32d 第2部分
13、33 磁性体
15、54、64、74 異方性磁性体
22a 分岐箇所
25 第1部材
26 第2部材
27、50、60、70 基板
28 接続部材
29、52、62、72 アンテナ部材
29a 誘電体
32b 接地箇所
53a、63a、73b 給電端
53b、65a、73a ビアホール
91 基材部
92 複合磁性膜
93 柱状体
94 無機絶縁体

Claims (12)

  1. 給電部に結合される一端を有し、折り返し部で折り返されて開放端に至るアンテナ素子であって、前記給電部に結合される前記一端と前記折り返し部との間の第1の部分と、前記折り返し部と前記開放端との間の第2の部分とが互いに略平行に形成され、且つ前記第1の部分が前記第2の部分より長い経路長を有して形成されているアンテナ素子と、
    面をなして形成されると共に、前記第1の部分に対して前記第2の部分を遮へいするように、前記形成された面が前記第1の部分及び前記第2の部分に略平行に、かつ、挟まれて設けられた磁性体とを備えたことを特徴とするアンテナ装置。
  2. 前記磁性体は異方性を有し、磁化困難軸が前記第1の部分又は前記第2の部分のアンテナ素子の向きに略直交するように配設されたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
  3. 基板と、
    給電部に結合される一端を有し、折り返し部で折り返されて開放端に至るアンテナ素子であって、前記給電部に結合される前記一端と前記折り返し部との間の第1の部分と、前記折り返し部と前記開放端との間の第2の部分とが互いに略平行に形成されると共に、前記第1の部分及び前記第2の部分がそれぞれ前記基板と略平行に配設され、且つ前記第1の部分が前記第2の部分より長い経路長を有して形成されているアンテナ素子と、
    前記基板と略平行な面をなして形成されると共に、前記第1の部分に対して前記第2の部分を遮へいするように、前記形成された面が前記第1の部分及び前記第2の部分に略平行に、かつ、挟まれて設けられた磁性体とを備えたことを特徴とする無線装置。
  4. 前記第1の部分が前記第2の部分よりも前記基板に近接して配設されたことを特徴とする請求項に記載の無線装置。
  5. 前記磁性体は異方性を有し、磁化困難軸が前記第1の部分又は前記第2の部分のアンテナ素子の向きに略直交するように配設されたことを特徴とする請求項3または4のいずれか1項に記載の無線装置。
  6. 基板と、
    互いに略平行に形成された第1の部分及び第2の部分を有し、前記第1の部分及び前記第2の部分はそれぞれ前記基板と略平行に配設されてなるアンテナ素子と、
    前記基板と略平行な面をなして形成されると共に、前記形成された面が前記第1の部分及び前記第2の部分に略平行に、かつ、挟まれて設けられた磁性体とを備え
    前記磁性体は異方性を有し、磁化困難軸が前記第1の部分又は前記第2の部分のアンテナ素子の向きに略直交するように配設され、
    前記磁性体は基材部及び前記基材部に重ねて形成された複合磁性膜を有してなり、前記複合磁性膜は、長手方向が前記基材部の表面に対して垂直方向に向いたFe、Co及びNiの少なくとも1つから選ばれる磁性金属又は磁性合金を含有して前記基材部に重ねて形成された複数の柱状体と、前記柱状体の間に形成された金属の酸化物、窒化物、炭化物及びフッ化物から選ばれる少なくとも1つの無機絶縁体とを有し、かつ、前記基材部の表面に平行な表面内の最小異方性磁界Hk1と前記基材部の表面と平行な表面の最大異方性磁界Hk2の比であるHk2/Hk1が1より大きいことを特徴とする無線装置。
  7. 前記アンテナ素子は前記第1の部分が前記第2の部分より長い経路長を有して形成され、前記磁性体は前記第1の部分に対して前記第2の部分を遮へいするように配設されたことを特徴とする請求項に記載の無線装置。
  8. 前記アンテナ素子は前記第1の部分が前記第2の部分より長い経路長を有して形成されると共に前記第2の部分よりも前記基板に近接して配設され、前記磁性体は前記第1の部分に対して前記第2の部分を遮へいするように配設されたことを特徴とする請求項に記載の無線装置。
  9. 基板と、
    少なくとも一部がメアンダ型に形成されたアンテナ素子と、
    前記基板と略平行な面をなして形成され、前記アンテナ素子が前記形成された面の少なくとも一方の側に設けられてなる異方性の磁性体とを
    備え
    前記磁性体は基材部及び前記基材部に重ねて形成された複合磁性膜を有してなり、前記複合磁性膜は、長手方向が前記基材部の表面に対して垂直方向に向いたFe、Co及びNiの少なくとも1つから選ばれる磁性金属又は磁性合金を含有して前記基材部に重ねて形成された複数の柱状体と、前記柱状体の間に形成された金属の酸化物、窒化物、炭化物及びフッ化物から選ばれる少なくとも1つの無機絶縁体とを有し、かつ、前記基材部の表面に平行な表面内の最小異方性磁界Hk1と前記基材部の表面と平行な表面の最大異方性磁界Hk2の比であるHk2/Hk1が1より大きいことを特徴とする無線装置。
  10. 前記アンテナ素子は、少なくとも一部が前記磁性体のなす面の一方の側に設けられた部分と他方の側に設けられた部分とが接続されることによりメアンダ型に形成され、
    前記磁性体は、少なくとも一部が磁化困難軸を前記アンテナ素子の一端から他端への向きと略平行にして配設されたことを特徴とする請求項に記載の無線装置。
  11. 前記アンテナ素子は前記磁性体のなす面の前記基板に対向する側に設けられ、
    前記磁性体は、少なくとも一部が磁化困難軸を前記アンテナ素子の一端から他端への向きと略平行にして配設されたことを特徴とする請求項に記載の無線装置。
  12. 前記アンテナ素子は前記磁性体のなす面の前記基板に対向する側と反対の側に設けられ、
    前記磁性体は、少なくとも一部が磁化困難軸を前記アンテナ素子の一端から他端への向きと略直交させるようにして配設されたことを特徴とする請求項に記載の無線装置。
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