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JP4908010B2 - 車両の動力断接用油圧回路 - Google Patents

車両の動力断接用油圧回路 Download PDF

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Description

この発明は、車輪駆動用の動力源として電動機を備えた車両の動力断接用油圧回路に関するものである。
車両の駆動システムとして、前輪と後輪の一方側をエンジン等の主駆動源によって駆動し、他方側に電動機による補助駆動源を設けたものが開発されている。
このような駆動システムを採用する車両として、通常走行時には主駆動源によって前後一方側の車輪を駆動し、悪路状態での発進時等に補助駆動源を作動させて他方の車輪に駆動力を伝達するものが知られている。この車両では、補助駆動源の駆動用電動機から車輪に動力を伝達する動力伝達機構に油圧クラッチ等の油圧式の断接装置が設けられ、車両の走行状態に応じて断接装置を適宜制御し得るようになっている。この車両の場合、例えば、電動機の駆動または回生が不要なときに、断接装置によって動力伝達を遮断することにより、電動機側の連れ回りによる動力損失を低減することができる。
また、このような車両に用いられる動力断接用油圧回路として、油圧発生源であるオイルポンプと断接装置とを接続する直通油路に、分岐油路を介して蓄圧装置(アキュムレータ)を接続し、オイルポンプの吐出オイルを蓄圧装置に高圧状態で蓄積して、その蓄積したオイルを用いることによってオイルポンプの動力損失を低減するようにしたものが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
この動力断接用油圧回路においては、直通油路上の分岐油路との接続部よりも上流側(オイルポンプ側)に、接続部側へのオイルの流入のみを許容する逆止弁を介装し、蓄圧装置の圧力が低下したときにのみオイルポンプを作動させるようになっている。
特開2003−54279号公報
しかし、この従来の動力断接用油圧回路の場合、蓄圧装置と断接装置側が常時連通する構造となっているため、長時間の車両停止等によって蓄圧装置内の圧力が大きく低下している場合に、オイルポンプの始動によって断接装置を直接作動させようとしても、オイルポンプの供給オイルが蓄圧装置側にも供給され、蓄圧装置の内圧の上昇を待たなければ断接装置の安定した作動を得ることが難しくなる。
そこでこの発明は、蓄圧装置内の圧力が低圧状態にある状況下においても、速やかに断接装置の圧力を昇圧できるようにして、断接装置の作動応答性の向上を図ることのできる車両の動力断接用油圧回路を提供しようとするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両の車輪を駆動する車輪駆動用電動機(例えば、後述の実施形態における電動機2)と、この車輪駆動用電動機の動力を車輪に伝達する動力伝達装置(例えば、後述の実施形態における遊星歯車式減速機12、差動装置13)と、この動力伝達装置に設けられて、前記車輪駆動用電動機と車輪の間の動力の断接を行う油圧式の断接装置(例えば、後述の実施形態における油圧クラッチ28)と、この断接装置で用いる油圧を作り出すオイルポンプ(例えば、後述の実施形態におけるオイルポンプ40)と、このオイルポンプで発生した油圧を蓄圧する蓄圧装置(例えば、後述の実施形態におけるアキュムレータ42)と、を備えた車両の動力断接用油圧回路(例えば、後述の実施形態における油圧回路39)であって、前記オイルポンプと前記断接装置とを連通する油路から分岐して前記蓄圧装置に接続される分岐通路(例えば、後述の実施形態における分岐油路60)に介装され、前記オイルポンプ及び前記断接装置と前記蓄圧装置との連通または遮断を切り換える切換弁(例えば、後述の実施形態における切換弁73)を備え、前記断接装置に供給される作動圧が、前記断接装置の通常作動圧の範囲内の設定低圧値(例えば、後述の実施形態における設定低圧値Pcl)に満たないときに、前記切換弁が前記オイルポンプ及び前記断接装置と、前記蓄圧装置との連通を遮断するようにした。
この発明の場合、断接装置に供給される作動圧が設定低圧値に満たないときには、オイルポンプ及び断接装置が切換弁によって蓄圧装置に対して遮断される。これにより、オイルポンプから吐出されたオイルは蓄圧装置側には流入せず、すべて断接装置に供給される。したがって、このとき蓄圧装置が蓄圧されるのを待つことなく、断接装置が速やかに昇圧される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記切換弁は、前記断接装置に供給される作動圧が、同断接装置の通常作動圧を超える設定高圧値(例えば、後述の実施形態における設定高圧値Pch)以上になったときに、前記断接装置の油圧をドレンさせるようにした。
この場合、断接装置に供給される作動圧が設定高圧値以上になると、断接装置の油圧が切換弁によってドレンされ、断接装置の設定高圧値を大幅に超える過剰な圧力上昇が未然に防止されることとなる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記断接装置の油圧導入部に油圧センサ(例えば、後述の実施形態における油圧センサ80)が設けられると共に、前記切換弁が電磁弁によって構成され、この切換弁が前記油圧センサの検出値に基づいて制御されるようにした。
この場合、断接装置の油圧導入部の油圧が油圧センサによって正確に検出され、この油圧センサの検出値に基づいて電磁弁から成る切換弁が流路を迅速に切り換えるようになる。したがって、断接装置の作動応答性がより向上する。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記切換弁は、前記断接装置に供給される作動圧が前記設定低圧値以上になった後、前記蓄圧装置の圧力が同断接装置を操作可能な圧力に達するまでの間、前記オイルポンプと断接装置の連通を遮断し、前記オイルポンプと蓄圧装置を連通させるようにした。
この場合、断接装置に供給される作動圧が設定低圧値に達しないときには、切換弁がオイルポンプと蓄圧装置の連通を遮断しており、この状態から前記作動圧が設定低圧値以上になると、前記蓄圧装置の圧力が規定の圧力に達するまでの間、切換弁がオイルポンプと断接装置の連通を遮断して、オイルポンプから蓄圧装置側に油圧を供給するようになる。これにより、蓄圧装置内の圧力が充分な圧力まで確実に昇圧されることとなり、この後に切換弁の作動によって蓄圧装置と断接装置が接続されたとしても、断接装置は蓄圧装置の圧力によって確実に保圧されるようになる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記オイルポンプは、電動オイルポンプによって構成され、前記断接装置に供給される作動圧、または、前記蓄圧装置に供給される作動圧が前記蓄圧装置の下限側の保圧閾値(例えば、後述の実施形態における保圧閾値AL)以下に低下すると、前記断接装置または蓄圧装置に油圧を供給し、前記断接装置に供給される作動圧、または、前記蓄圧装置に供給される作動圧が、前記下限側の保圧閾値よりも大きい同蓄圧装置の上限側の保圧閾値(例えば、後述の実施形態における保圧閾値AH)以上になると、前記断接装置または蓄圧装置に対する油圧供給を停止するようにした。
この場合、断接装置に供給される作動圧、または、前記蓄圧装置に供給される作動圧が蓄圧装置の上限側の保圧閾値以上になると、オイルポンプから断接装置や蓄圧装置への油圧供給が停止し、それによってオイルポンプの動力ロスが低減される。
この発明によれば、断接装置に供給される作動圧が設定低圧値に満たないときには、オイルポンプ及び断接装置が蓄圧装置に対し切換弁によって遮断されるため、蓄圧装置が蓄圧されるのを待つことなく断接装置を速やかに昇圧して、断接装置の作動応答性を確実に高めることができる。
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態は、図2に示す車両3の補助駆動用の駆動装置1内に設けられる油圧系にこの発明にかかる車両の動力断接用油圧回路39(図1参照。以下「油圧回路39」と呼ぶ。)を適用したものである。
最初に、図2示す車両の全体構成と図3,図4に示す駆動装置1について説明する。
図2に示す車両3は、内燃機関4と電動機5が直列に接続された駆動ユニット6を有するハイブリッド車であり、駆動ユニット6の動力がトランスミッション7を介して前輪Wf側に伝達される一方で、この駆動ユニット6と別に設けられた補助駆動用の駆動装置1の動力が後輪Wr側に伝達されるようになっている。駆動装置1は電動機2(車輪駆動用電動機)によって駆動されるようになっている。駆動ユニット6の電動機5と後輪Wr側駆動装置1の電動機2は、PDU8(パワードライブユニット)を介してバッテリ9に接続され、バッテリ9からの電力供給と、各電動機5,2からバッテリ9へのエネルギー回生がPDU8を介して行われるようになっている。
図3は、駆動装置1の全体の縦断面図を示すものであり、同図において、10A,10Bは、車両の後輪側の左右の車軸である。駆動装置1のハウジング11は、両車軸10A,10Bのほぼ中間位置から一方の車軸10Bの外周側を覆うように設けられ、車両3(図2参照)の後部下方に車軸10Bとともに支持固定されている。また、ハウジング11は全体が略円筒状に形成され、その内部には、車輪駆動用の電動機2と、この電動機2の駆動回転を減速する遊星歯車式減速機12と、この減速機12の出力を左右の車軸10A,10Bに分配する差動装置13が車軸10Bと同軸になるように収容配置されている。なお、この実施形態の場合、遊星歯車式減速機12や差動装置13等が駆動装置1内における動力伝達装置を構成している。
ハウジング11の右車輪側(図3中の右側)の端部内周には、電動機2のステータ14が固定設置され、このステータ14の内周側に環状のロータ15が回転可能に収容配置されている。ロータ15の内周部には車軸10Bの外周側を囲繞する円筒軸16が結合され、この円筒軸16が車軸10Bと同軸となるようにハウジング11の一方の端部壁17と中間壁18に軸受19を介して支持されている。また、円筒軸16の一端側の外周とハウジング11の端部壁17の間には、ロータ15の回転情報を電動機2の制御用コントローラ(図示せず)にフィードバックするためのレゾルバ20が設けられている。
また、遊星歯車式減速機12は、サンギヤ21と、このサンギヤ21に噛合される複数のプラネタリギヤ22と、これらのプラネタリギヤ22を支持するプラネタリキャリア23と、プラネタリギヤ22の外周側に噛合されるリングギヤ24とを備え、サンギヤ21から電動機2の駆動力が入力され、減速された駆動力がプラネタリキャリア23を通して出力されるようになっている。
サンギヤ21は、車軸10Bの外周側に同軸に配置されたスリーブ25の外周に一体に形成され、このスリーブ25の一端側が電動機2側の円筒軸16に一体回転可能に結合されている。また、プラネタリギヤ22は、サンギヤ21に直接噛合される大径の第1ギヤ26と、この第1ギヤ26よりも小径の第2ギヤ27を有し、これらの第1ギヤ26と第2ギヤ27が同軸にかつ軸方向にオフセットした状態で一体に形成されている。リングギヤ24は、ハウジング11内の第1ギヤ26の軸方向側方位置に回転可能に配置され、その内周面が小径の第2ギヤ27に噛合されている。リングギヤ24は後述する油圧クラッチ28(油圧式の断接装置)の回転ドラム29に一体回転可能に保持され、この回転ドラム29を介してハウジング11内に回転可能に支持されている。
一方、差動装置13は、内面側に回転可能なピニオン30,30が突設されたディファレンシャルケース31と、このディファレンシャルケース31内においてピニオン30,30に噛合される一対のサイドギヤ32a,32bを備え、これらの各サイドギヤ32a,32bが左右の車軸10A,10Bに夫々結合されている。ディファレンシャルケース31の外側面には、遊星歯車式減速機12の前述のプラネタリキャリア23が一体に延設されている。なお、ディファレンシャルケース31は軸受33を介してハウジング11の端部壁34と中間壁18に支持されている。
また、ハウジング11内の前記リングギヤ24と端部壁34の間には円筒状の空間部が確保され、その空間部内に油圧クラッチ28が配置されている。油圧クラッチ28は、ハウジング11の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35と、回転ドラム29の一端側外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36が軸方向に交互に配置され、これらのプレート35,36が環状のピストン37によって圧接及び解除操作されるようになっている。ピストン37は、ハウジング11の端部壁34に形成された環状のシリンダ室38に進退自在に収容されており、シリンダ室38への高圧オイルの導入によってピストン37を前進させ、シリンダ室38からオイルを排出することによってピストン37を後退させる。なお、油圧クラッチ28は図1に示す油圧回路39に接続されているが、この油圧回路39については後に詳述する。
この油圧クラッチ28の場合、固定プレート35がハウジング11に回転を係止される一方で、回転プレート36がリングギヤ24を一体に支持しているため、両プレート35,36がピストン37によって圧接されると、両プレート35,36間の摩擦係合によってリングギヤ24に制動力が作用し、その状態からピストン37による圧接が解除されると、リングギヤ24の自由な回転が許容される。
一方、ハウジング11の右車輪側の端部壁17の外側には、図3,図4に示すように油圧クラッチ28と電動機2の冷却部やハウジング11内の(動力伝達装置の)潤滑部にオイルを供給するためのオイルポンプ40と、このオイルポンプ40を駆動するためのポンプ駆動用電動機41と、油圧クラッチ28に供給するオイルを蓄圧状態で貯留するアキュムレータ42(蓄圧装置)が設けられている。これらは、一体ブロック状になってカバー43内に収容され、カバー43とともに端部壁17に固定されている。
ポンプ駆動用電動機41は、図4に拡大して示すように環状のロータ44を有するブラシレスモータが用いられ、ロータ44よりも一回り大きい環状のステータ45がブラケット46を介して端部壁17の外面に固定されると共に、ロータ44の内周面に固定されたスリーブ47が端部壁17とブラケット46に軸受48を介して支持されている。ロータ44とステータ45は、この状態において車軸10Bの外周側に同軸に配置されている。
オイルポンプ40は、外接形ギヤポンプが用いられ、ポンプ作用を成すギヤ49の対が電動機41の外周側に並列に並んで配置されている。そして、このオイルポンプ40の一方のギヤ49には、歯車伝達機構50を介して電動機41の回転が伝達されるようになっている。
また、アキュムレータ42は、軸方向に奥行きを持つ円環状の容積室51がカバー43の端部内周縁に一体に形成されている。この容積室51内には、環状のピストン52が進退自在に収容され、このピストン52が蓄圧用のスプリング53によって付勢されている。
以上の構成の駆動装置1によって後輪Wr側の車軸10A,10Bを駆動する場合には、オイルポンプ40の油圧を油圧クラッチ28に供給して同クラッチ28をオンにし、固定プレート35と回転プレート36を摩擦係合させることによってリングギヤ24をハウジング11に対して固定する。こうしてリングギヤ24が固定されると、遊星歯車式減速機12は減速比が固定され、サンギヤ21とプラネタリキャリア23の間でロスなく駆動力が伝達されるようになる。したがって、このとき電動機2の駆動力は、遊星歯車式減速機12によって設定減速比に減速され、差動装置13を通して車両左右の車軸10A,10Bに伝達される。
ここで、図1に示す油圧回路39について説明する。
油圧回路39は、オイルポンプ40から吐出されたオイルを、電磁弁から成るパイロット操作弁55と第1の切換弁56を介して低圧油路57とクラッチ側油路58に選択的に切り換えられるようになっており、低圧油路57は電動機2の冷却部と減速機12や差動装置13等の動力伝達装置の潤滑部にオイルを供給するためにハウジング11内の適宜位置に連通している。クラッチ側油路58の第1の切換弁56の近傍には逆止弁61が介装され、クラッチ側油路58から第1の切換弁56方向へのオイルの逆流が防止されている。
クラッチ側油路58は、第1の切換弁56を介してオイルポンプ40と油圧クラッチ28を接続する直通油路71と、この直通油路71の逆止弁61よりも油圧クラッチ28寄り位置から分岐してアキュムレータ42に接続される分岐油路60と、を備えて成り、直通油路71上の分岐油路60との接続部72と、油圧クラッチ28との間に電磁弁から成るクラッチ操作弁59が介装されると共に、分岐油路60に、接続部72とアキュムレータ42との連通と遮断を切り換える第2の切換弁73が介装されている。この第2の切換弁73はこの発明における切換弁を構成している。そして、分岐油路60の第2の切換弁73よりもアキュムレータ42側部位には、アキュムレータ42の圧力を検出するための油圧センサ62が設けられている。この油圧センサ62の検出信号はコントローラ110(ECU)に入力され、コントローラ110がこの検出信号と車速等の他の検出信号に基づいてパイロット操作弁55やオイルポンプ40を制御するようになっている。
第1の切換弁56は、オイルポンプ40と逆止弁61を結ぶポンプ油路111を低圧油路57に対して連通、遮断するスプール112と、このスプール112を図1中左側の位置に付勢するスプリング113とを備えている。スプール112の同図中左側の端面には、背圧通路114を介してポンプ油路111の圧力が常時作用し、同図中右側の端面にはパイロット通路115を介してパイロット操作弁55で作られた操作圧が作用するようになっている。
パイロット操作弁55は、コントローラ110によって制御される電磁三方弁で構成されており、そのソレノイドへの通電時(オン時)に、ポンプ油路111をパイロット通路115に接続して、スプール112の図中右側の端面にポンプ油路111の圧力を作用させる。このとき、スプール112の両側の端面には同圧が作用するため、スプール112はスプリング113の力によって図中左方向に移動し、低圧油路57を遮断してポンプ油路111をクラッチ側油路58にだけ接続する。また、パイロット操作弁55は、ソレノイドの通電停止時(オフ時)には、ポンプ油路111とパイロット通路115の接続を断つと同時にパイロット通路115をドレンポート116に接続し、スプール112の図中右側の端面に作用する圧力を開放する。このとき、スプール112は図中左側の端面に作用するポンプ油路111の圧力によって右方向に移動し、ポンプ油路111を低圧油路57に連通させる。
したがって、オイルポンプ40に対するクラッチ側油路58と低圧油路57の接続はパイロット操作弁55のオン・オフ操作によって制御される。
クラッチ操作弁59は、パイロット操作弁55と同様にコントローラ110によって制御される電磁三方弁で構成されており、そのソレノイドへの通電時に、直通油路71上の接続部72と油圧クラッチ28を連通し、アキュムレータ42若しくはオイルポンプ40から供給される油圧によって油圧クラッチ28を接続し、また、ソレノイドの通電停止時には、接続部72と油圧クラッチ28の接続を断ち油圧クラッチ28をドレンポート117に導通させることによって油圧クラッチ28を解放する。
また、オイルポンプ40を駆動するポンプ駆動用電動機41は、PDU8(図2参照)を介してバッテリ9(図2参照)から電力供給を受けるとともに、モータドライバ回路118を介してコントローラ110によって駆動制御される。
コントローラ110は、車両の図示しないメインコントローラからの指令を受けてポンプ駆動用電動機41の駆動を開始し、アキュムレータ42内の圧力Poilが油圧クラッチ28の断接操作が可能な保圧閾値の範囲内(AL≦Poil≦AH)に維持されるようにパイロット操作弁55とポンプ駆動用電動機41を制御するようになっている。ポンプ駆動用電動機41の運転モードは、図5に示すように、Hiモード、Lowモード、Iniモードの三つのモードがモータドライバ回路118に用意されており、コントローラ110からのモード切換指令によってこれらのモードが適宜切り換えられる。
ここで、各運転モードについて説明すると、Hiモードは、通常の運転状況でオイルポンプ40を高圧小流量で運転するときのモードであり、コントローラ110の電流指示に基づいてポンプ駆動用電動機41を高圧小流量制御する。
Lowモードは、通常の運転状況でオイルポンプ40を低圧大流量で運転するときのモードであり、コントローラ110の回転速度指示に基づいてポンプ駆動用電動機41を低圧大流量制御する。
Iniモードは、ポンプ駆動用電動機41の起動直後の運転状況でHiモード時よりも大電流を流して運転するときのモードであり、コントローラ110の電流指示に基づいてポンプ駆動用電動機41を高圧小流量制御する。
したがって、コントローラ110とモータドライバ回路118は、ポンプ駆動用電動機41に対してHiモードとIniモードでは高圧小流量制御で制御を行い、Lowモードでは低圧大流量制御で制御を行う。
IniモードとHiモードは、電流量が異なるものの基本的に同様の制御であるため、以下では、断りのない限りIniモード時の場合も含めてHiモードとして説明するものとする。
コントローラ110は、オイルポンプ40から吐出されたオイルを、クラッチ側油路58と低圧油路57のいずれに供給するかを選択する油路選択手段120と、この油路選択手段120の選択結果に応じてパイロット操作弁55のオン・オフとポンプ駆動用電動機41の制御モードの切り換えを制御する制御手段121と、を備えている。油路選択手段120は、分岐通路60にある油圧センサ62から圧力信号を受け、その信号を基にしてオイルを供給する油路を選択する。
具体的には、コントローラ110は、油圧センサ62の信号を通してアキュムレータ42内の圧力Poilを常時監視し、油路選択手段120は、圧力Poilが下限側の保圧閾値ALを下回っているときにクラッチ側油路58を選択し、圧力Poilが上限側の保圧閾値AHを上回っているときには低圧油路57を選択する。そして、油路選択手段120がクラッチ側油路58を選択したときには、パイロット操作弁55をオンにしてポンプ油路111をクラッチ側油路58にのみ接続し、逆に、低圧油路57を選択したときには、パイロット操作弁55をオフにしてポンプ油路111を低圧油路57側に接続する。後者の場合には、ポンプ駆動用電動機41の制御モードがLowモードに切り換えられるため、オイルポンプ40から供給されるオイルは低圧油路57側のみに供給される。
なお、この実施形態の場合、クラッチ側油路58に関して見れば、オイルポンプ40がHiモードで運転されているときにだけ同ポンプ40からオイルが供給され、オイルポンプ40がLowモードで運転されているときには、同ポンプ40からのオイル供給は断たれることとなる。
また、ポンプ駆動用電動機41の運転モードはコントローラ110によって図6のフローチャートに示すように制御される。
この制御では、ステップS100において、圧力センサ62の検出信号Poilを読み込み、つづく、ステップS101において、オイルポンプ40(ポンプ駆動用電動機41)の運転モードが現在Hiモードであるかどうかを判定する。このとき、Hiモードと判定したときにはステップS102に進み、Loモードと判定したときにはステップS103へと進む。
ステップS102においては、圧力センサ62の検出値Poilがアキュムレータ42の上限側の保圧閾値AHよりも大きいかどうかを判定し、検出値Poilが閾値AH以下であればそのまま処理を抜け、閾値AHよりも大きい場合には、ステップS104に進み、オイルポンプ40の運転モードをLoモードに切り換えた後に処理を抜ける。
また、ステップS103においては、圧力センサ62の検出値Poilがアキュムレータ42の下限側の保圧閾値ALよりも小さいかどうかを判定し、検出値Poilが閾値AL以上であればそのまま処理を抜け、閾値ALよりも小さい場合には、ステップS105に進み、オイルポンプ40の運転モードをHiモードに切り換えた後に処理を抜ける。
次に、クラッチ側油路58上の第2の切換弁73について説明する。
この第2の切換弁73は、分岐油路60の接続部72の近傍の油圧をパイロット圧として油圧操作される3位置3ポート弁で構成されている。
第2の切換弁73は、具体的には、接続部側ポート75とアキュムレータ側ポート76とドレンポート77とを有し、第1の作動位置で接続部側ポート75をアキュムレータ側ポート76とドレンポート77に対して遮断し、第2の作動位置で接続部側ポート75をアキュムレータ側ポート76に接続し、第3の作動位置で接続部側ポート75をドレンポート77に接続するようになっている。なお、図1中、74は、接続部72の近傍の圧力を導入するためのパイロット通路である。さらに、この第2の切換弁73は、パイロット圧が油圧クラッチ28の通常作動圧の範囲内の設定低圧値Pclに満たないときに第1の作動位置(図1中の左側の状態)をとり、パイロット圧が油圧クラッチ28の通常作動圧よりも高圧の設定高圧値Pch以上になったときに第3の作動位置(図1中の右側の状態)をとり、パイロット圧がこれらの二つの圧力条件から外れるときに第2の作動位置(図1中の中央の状態)をとるように設定されている。
油圧クラッチ28の接続時における第2の切換弁73の作動は以下のようになる。
通常の運転状況下においては、一度オイルポンプ40がHiモードで運転されると、オイルポンプ40の高圧がクラッチ側油路58に供給される(この後のオイルの戻りは逆止弁61によって阻止される。)ため、クラッチ側油路58の接続部72付近の圧力はほぼアキュムレータ42の保圧閾値の範囲(AL〜AH)の圧力となっている。このため、第2の切換弁73は中央の第2の作動位置をとり、接続部72とアキュムレータ42が連通した状態となっている。したがって、この状態からクラッチ操作弁59の操作によって接続部72と油圧クラッチ28が接続されると、アキュムレータ42と油圧クラッチ28が接続部72を介して相互に連通し、アキュムレータ42から油圧クラッチ28に油圧が供給される。
一方、長時間車両を停車した後にイグニッションスイッチをONにしたとき等には、それまでの間にアキュムレータ42を含む油圧回路39内の各部の圧力が完全に低下しているために、イグニッションスイッチの操作とともにオイルポンプ40が始動されても、クラッチ側油路58上の接続部72の圧力が設定低圧値Pclに達していない状況が起こり得る。この場合、第2の切換弁73は、図1中左側の第1の作動位置をとり、接続部72がアキュムレータ42と遮断された状態となる。このため、この状態からクラッチ操作弁59の操作によって接続部72と油圧クラッチ28が接続されると、オイルポンプ40の油圧が接続部72を通って専ら油圧クラッチ28に供給されるようになる。
したがって、このときオイルポンプ40の吐出流量が容量の大きいアキュムレータ42側にとられることがないため、動力接続に必要な油圧クラッチ28の締結圧が速やかに得られるようになる。
また、この種の油圧回路においては、油圧回路内の何らかの異常によって内部圧力が必要以上に上昇する可能性も考えなければならない。第2の切換弁73は、接続部72の圧力が設定高圧値Pchを越えると、図1中右側の第3の作動位置をとり、接続部72側の圧力をドレンポート77を通して外部に排出する。したがって、このとき第2の切換弁73は、油圧クラッチ28側の油圧の異常上昇を抑制することができる。
つづいて、図7に示す第2の実施形態について説明する。なお、以下で説明する第2,第3の実施形態においては、第1の実施形態と同一部分に同一符号を付し、重複する部分については説明を省略するものとする。
この実施形態の油圧回路139は、適用部位や全体的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であるが、直通油路71上のクラッチ操作弁59よりも油圧クラッチ28側部位(油圧クラッチ28の油圧導入部)に油圧センサ80が設けられ、第2の切換弁173が電磁弁によって構成されている。油圧センサ80の検出信号はコントローラ110に入力され、コントローラ110がこの入力信号を受けて第2の切換弁173を制御する。
この実施形態の場合、第1の実施形態と同様の基本的な作用や効果を得ることができるうえ、油圧クラッチ28の動力接続時における作動圧を油圧センサ80によって正確に検出し、その正確な検出値に基づいて切換弁173の流路を電磁力によって迅速に切り換えることができる。したがって、油圧クラッチ28の作動応答性をより高めることができる。
次に、図8,図9に示す第3の実施形態について説明する。
この実施形態の油圧回路239は、油圧クラッチ28の作動圧を検出する油圧センサ80が設けられている点や、第2の切換弁273が電磁弁によって構成されている点は第2の実施形態と同様であるが、第2の切換弁273のポート数と作動位置数が第2の実施形態と異なっている。
即ち、この実施形態の第2の切換弁273においては、第1,第2の実施形態と同様の接続部側ポート75,アキュムレータ側ポート76,ドレンポート77の他に、第2接続部側ポート78が設けられ、また、電磁操作によって選択し得る作動位置数が4つになっている。第2接続部側ポート78は、直通油路71の逆止弁61よりも上流側の第2接続部85に連通している。なお、この実施形態の場合、第2接続部側ポート78が他のポートと接続するときには、直通油路71上の実質的な接続部が接続部72から第2接続部85へと変更される。
具体的な作動位置は以下のようになっている。
〈第1の作動位置〉
接続部側ポート75,アキュムレータ側ポート76,ドレンポート77,第2接続部側ポート78をいずれに対しても相互に非接続にする(図9中の最も左側の位置)。
〈第2の作動位置〉
接続部側ポート75とドレンポート77を他のポートに対して非接続にし、アキュムレータ側ポート76を第2接続部側ポート78に接続する(図9中の左から2番目の位置)。
〈第3の作動位置〉
第2接続部側ポート78とドレンポート77を他のポートに対して非接続にし、接続部側ポート75とアキュムレータ側ポート76を相互に接続する(図9中の右から2番目の位置)。
〈第4の作動位置〉
アキュムレータ側ポート76と第2接続部側ポート78を他のポートに対して非接続にし、接続部側ポート75とドレンポート77を相互に接続する(図9中の最も右側の位置)。
以下、コントローラ110による第2の切換弁273の制御を図9のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS200、ステップS201において、油圧センサ62,80の検出信号Poil,Pclutを夫々読み込み、つづくステップS202において、油圧クラッチ28の圧力Pclutが設定低圧値Pcl未満であるかどうかを判定し、設定低圧値Pcl未満である場合には、ステップS203に進み、設定低圧値Pcl以上である場合には、ステップS204へと進む。
ステップS203に進んだ場合には、第1作動位置をとって接続部側ポート75を他のポートに対して遮断して処理を抜ける。このとき、接続部72はアキュムレータ42との接続が遮断される。
一方、ステップS204に進んだ場合には、油圧クラッチ28の圧力Pclutが設定高圧値Pch未満であるかどうかを判定し、設定高圧値Pch未満であるときには、ステップS205に進み、設定高圧値Pch以上のときには、ステップS206へと進む。
ステップS206に進んだ場合には、第4の作動位置をとって接続部側ポート75をドレンポート77に接続して処理を抜ける。このとき、接続部72の油圧はドレンポート77を通して排出される。
ステップS205に進んだ場合には、アキュムレータ42の圧力Poilが設定低圧値Pcl未満であるかどうかを判定し、設定低圧値Pcl未満のときには、ステップS207に進み、設定低圧値Pcl以上のときには、ステップS208に進む。
ステップS207に進んだ場合には、第2の作動位置をとって接続部側ポート75を他のポートと遮断すると同時に第2接続部側ポート78をアキュムレータ側ポート76に接続して処理を抜ける。このとき、第2接続部85の油圧はアキュムレータ42に直接供給される。
また、ステップS208に進んだ場合には、第3の作動位置をとって接続部側ポート75をアキュムレータ側ポート76に接続し、かつ、第2接続部側ポート78とドレンポート77を他のポートと遮断して処理を抜ける。このとき、油圧クラッチ28は、アキュムレータ42の圧力によって操作される。
この実施形態の場合、基本的な作用と効果は第2の実施形態と同様であるが、油圧クラッチ28の圧力Pclutが設定低圧値Pcl以上になった後に、アキュムレータ42の圧力Poilが油圧クラッチ28を操作可能な充分な圧力に達するまでの間、オイルポンプ40によってアキュムレータ42を確実に蓄圧することができる。したがって、この後に第2の切換弁274によってアキュムレータ42と油圧クラッチ28が接続されたときに、充分なアキュムレータ42の圧力でもって油圧クラッチ28を確実に保圧することができる。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の各実施形態においては、オイルポンプ40の運転モードを、図6に示すフローチャートのようにアキュムレータ42の圧力Poilを基にして制御しているが、第2,第3の実施形態のように油圧クラッチ28側に油圧センサ80を設置した場合には、油圧クラッチ28の動力接続時における運転モードを、油圧クラッチ28の圧力Pclutを基にして制御することも可能である。この場合の制御は、図6のフローチャート中の圧力Poilが圧力Pclutに置き換わったものとなる。
この発明の第1の実施形態を示すものであり、オイルポンプの油圧回路とポンプ駆動用電動機の制御系を併せて記載した概略構成図。 同実施形態の示す車両の概略構成図。 同実施形態を示すものであり、ポンプ駆動用電動機を採用した駆動装置の縦断面図。 同実施形態を示す図3の一部を拡大した断面図。 同実施形態を示すポンプ駆動用電動機の制御系の概略構成図。 同実施形態におけるオイルポンプの制御の流れを示すフローチャート。 この発明の第2の実施形態を示すものであり、オイルポンプの油圧回路とポンプ駆動用電動機の制御系を併せて記載した概略構成図。 この発明の第3の実施形態を示すものであり、オイルポンプの油圧回路とポンプ駆動用電動機の制御系を併せて記載した概略構成図。 同実施形態における第2の切換弁の制御の流れを示すフローチャート。
符号の説明
2…電動機(車輪駆動用電動機)
12…遊星歯車式減速機(動力伝達装置)
13…差動装置(動力伝達装置)
28…油圧クラッチ(油圧式の断接手段)
39,139,239…油圧回路(動力断接用油圧回路)
40…オイルポンプ
42…アキュムレータ(蓄圧装置)
60…分岐油路
71…直通油路
73,173,273…第2の切換弁(切換弁)
80…油圧センサ
Pcl…設定低圧値
Pch…設定高圧値
AL,AH…保圧閾値

Claims (5)

  1. 車両の車輪を駆動する車輪駆動用電動機と、
    この車輪駆動用電動機の動力を車輪に伝達する動力伝達装置と、
    この動力伝達装置に設けられて、前記車輪駆動用電動機と車輪の間の動力の断接を行う油圧式の断接装置と、
    この断接装置で用いる油圧を作り出すオイルポンプと、
    このオイルポンプで発生した油圧を蓄圧する蓄圧装置と、
    を備えた車両の動力断接用油圧回路であって、
    前記オイルポンプと前記断接装置とを連通する油路から分岐して前記蓄圧装置に接続される分岐通路に介装され、前記オイルポンプ及び前記断接装置と前記蓄圧装置との連通または遮断を切り換える切換弁を備え、
    前記断接装置に供給される作動圧が、前記断接装置の通常作動圧の範囲内の設定低圧値に満たないときに、前記切換弁が前記オイルポンプ及び前記断接装置と、前記蓄圧装置との連通を遮断することを特徴とする車両の動力断接用油圧回路。
  2. 前記切換弁は、前記断接装置に供給される作動圧が、同断接装置の通常作動圧を超える設定高圧値以上になったときに、前記断接装置の油圧をドレンさせることを特徴とする請求項1に記載の車両の動力断接用油圧回路。
  3. 前記断接装置の油圧導入部に油圧センサが設けられると共に、前記切換弁が電磁弁によって構成され、この切換弁が前記油圧センサの検出値に基づいて制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の動力断接用油圧回路。
  4. 前記切換弁は、前記断接装置に供給される作動圧が前記設定低圧値以上になった後、前記蓄圧装置の圧力が同断接装置を操作可能な圧力に達するまでの間、前記オイルポンプと断接装置の連通を遮断し、前記オイルポンプと蓄圧装置を連通させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両の動力断接用油圧回路。
  5. 前記オイルポンプは、電動オイルポンプによって構成され、
    前記断接装置に供給される作動圧、または、前記蓄圧装置に供給される作動圧が前記蓄圧装置の下限側の保圧閾値以下に低下すると、前記断接装置または蓄圧装置に油圧を供給し、
    前記断接装置に供給される作動圧、または、前記蓄圧装置に供給される作動圧が、前記下限側の保圧閾値よりも大きい同蓄圧装置の上限側の保圧閾値以上になると、前記断接装置または蓄圧装置に対する油圧供給を停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両の動力断接用油圧回路。

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