JP4900788B2 - 杖 - Google Patents
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Description
前傾姿勢で歩行すると、通常の歩行におけるような大きな歩幅で、踵から接地する歩き方ではなく、歩幅が小さくなって、足裏全体が接地するような歩行となる。また、前傾姿勢のため、転倒の不安を感じるようになる。
また、高齢者に限らず、歩行の補助が必要な場合に用いられる日常の道具として古くから使われている杖についても、近年は、特に、歩行者が自己の体重を支えやすいように工夫した種々の杖が提案されている(特許文献1、2)。
すなわち、例えば、加齢が進んで、次第に歩行が困難になる過程には段階があり、その間に使用される杖が果たすべき役割も、そのような段階によって異なっている。
この段階では、歩行時に両足を運ぶ位置の前方で、杖による支えを必要とはするものの、歩行者の体重を本格的に支えるというよりは、歩行のリズムつかんで、左右の足運びを助けるために、保持した杖の接地部である石突きを、リズムよく突くことで、前傾とならずに歩行する助けとする段階がある。
このような段階では、上述の特許文献1、2の各構成の杖は、全く不向きである。
歩行障害の初期から中期への移行は、人によって異なるし、中期以降の段階から姿勢矯正などの成果により歩行障害の初期の段階に戻るという場合もある。
特に、高齢者の介護の過程や、障害者のリハビリなどにおいては、このような回復はおおいに歓迎されるべきことであることは言うまでもない。
しかしながら、従来、歩行障害の初期と中期を通して、また上記リハビリ中における使用に適した杖は検討されていないし、提供されてもいない。
これに対して、該第1把持部よりも上方で、前記本体のほぼ延長線上に延びる第2把持部が設けられている。すなわち、第2の把持部は、縦方向に延びているので、使用者は、手掌を横に向けて、第2の把持部に当てて、これを握るようにして、保持することになる。しかも、その保持位置は、第2の把持部が前記第1把持部よりも上方に設けられていることから、第1の把持部よりも高い位置で握ることなる。このため、体重をかけることには適していないが、肘を曲げた状態で前傾姿勢にならないようにしつつ、極端に遅くならないように歩行のリズムをとるために、縦方向にあまり大きな距離にならない範囲で腕を振りながら歩行することができる。しかも、前記本体のほぼ延長線上に延びているため、バランスが崩れることなく安定して歩行することができる。これにより、歩行障害の初期の時期に対応して、僅かな前傾による歩行時のバランスを、歩行のステップの前方にリズム良く杖をつくことで、補うことができる。
かくして、歩行障害の初期から中期に対応して使用することができる杖を提供することができる。
また、前記第1把持部を握って傾斜の低い方を前方に向けて歩行することにより、前記第1把持部をほぼ水平に保持すると、杖の前記接地部が僅かに前方を向くから、杖を前に出しやすく、前傾の度合いを矯正して、歩幅を広める効果が期待できる。
さらに、縦に延びる第2把持部を握って保持している状態で、上から体重をかけることがあっても、握った部分が下方に滑って位置がずれてくる場合に、前記湾曲部の始まる箇所で止まるので、保持位置が第2把持部から外れない。
上記構成によれば、使用者の身長や、前傾度合いに対応した各把持部の位置を調整して選ぶことができる。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1および図2において、杖20は、長い棒状の部材でなる本体25と、本体25の一端に設けられる接地部24と、該接地部24は反対の端部、すなわち、上端に配置され、使用者Uが把持するためのる把持部、すなわち杖20の把手部分23と、この把手部分23の一部であって、本体25の延びる方向とほぼ直交する方向に延びる第1把持部21と、該第1把持部21よりも上方に設けられ、本体25のほぼ延長線上に延びる第2把持部22とを備えている。
また、第2部材27は、第1部材26内にスライド式に伸縮移動するその移動位置において、固定されることで、本体25の長さを調整する調整手段、つまり杖20の長さ方向の長さ調整手段が形成されている。
調整孔28は、第1部材26の側面に、その長さ方向に沿って、等間隔に一列に形成された複数の貫通孔28a,28b,28c・・・・を有している。
止めピン29は、第2部材27の上端付近の側面から突出するピンであって、バネなどを用いて、常に突出するように付勢されているととともに、ピンに対して、その長さ方向に沿って、付勢手段に抗する力が加えられることで、該ピンが第2部材27内に入り込むようになっている。
また、使用者が手指にて、止めピンを上から押し込み、いずれかの貫通孔との係合を解除すると、ふたたび第2部材27は、第1部材26内を摺動することができる。これにより、杖20の長さが任意に調整される。
なお、パイプ体である第2部材27の上端には、パイプを塞ぐキャップ32が固定されており、これにより、第2部材27が第1部材26内を軸方向にスライドする際のガタツキや、本体25に斜めに負荷がかかった際の歪みを防止している。
グリップ部23は、図示されているような変形S字状の形態で、ほぼ中央部に本体25の延びる方向であるY方向とほぼ直交する第1の把持部21が形成されており、それより上端側には、外方、すなわち−X方向に向かって突出するよう湾曲した湾曲部33を介して、本体25の仮想の中心軸Cに沿って、該中心軸Cと同じ方向に延びる第2の把持部22が形成されている。ここで矢印に示すように、−Xの方向は杖を用いて歩行をする際の前方に対応している。
なお、本実施の形態では、このキャップ34の上端は平坦状にされているが、キャップ34の上端を手掌で把持できる程度の、グリップ部23と同等か僅かに大きな直径の略球体とすることで、杖20の上端に設けられた略球体部を、静止している際に安定して起立できるように握ったり、歩行時に軽く握って使用できるよう構成してもよい。
さらに、第1把持部21は、本体25の仮想の中心線Cの延びる方向と直交する方向Hに対して、角度θだけ傾斜して延びる形態とされている。つまり、水平な線Hに対して、第1把持部21は、前方側が僅かに低くなる前下がりの傾斜を示しており、その傾斜角θは、約10度程度である。
第1把持部21の後端からは、さらに外方に(後方に)突出しながら湾曲しており、上記湾曲部33を第1の湾曲部とすると、この後方に湾曲する湾曲部を第2の湾曲部30として、その端部が垂直にされて、本体25の第一部材26と溶接などにより接合されている。なお、グリップ部23のパイプを第一部材26と溶接するのではなく、第一部材26を延伸して湾曲させて形成してもよく、溶接ではなく嵌合やねじ止め等で固定してもよい。また、グリップ部23のパイプの湾曲を行いやすいよう、例えば第一把持部21の略中央で、上側と下側をそれぞれ湾曲させた異なるパイプを溶接等で一体にしてもよい。
そして、第1把持部21における頂点側の中央部Pに対して、第2把持部22の下端部Q(湾曲部33との接続部)が約11cm程度離れて形成されており、使用者が自らの体形に応じて長さ調整手段28を調整することで、各把持部21,22を握った際に適切な肘の角度となる構成とされている。
図1(a)は、歩行障害の程度が低い場合の使用例であり、図1(b)は歩行障害がより進んだ場合の使用例を示している。
歩行障害が生じる例として、高齢者の場合を説明すると、加齢により背筋を中心とした姿勢を保持するための筋肉の働きが衰えると、歩行時に、身体が次第に前傾状態となる。
この段階では、やや前傾姿勢で歩行し、通常の歩行におけるような大きな歩幅で、踵から接地する歩き方ではなく、歩幅が小さくなって、足裏全体が接地するような歩行となる。また、前傾姿勢になることから、主として前方への転倒の不安を感じるようになる。
このため、図1(a)に示すように、歩行の際に、支持を目的として、自己の前方に杖20を突いて歩くと、実際の安全はもとより、心理的にも安全感が得られる。
この場合、杖20においては、使用者Uが杖20を保持している保持位置は比較的高い。つまり、杖20では第2の把持部22が第1把持部21よりも上方に設けられていることから、第1の把持部21よりも高い位置で握ることなる。このため、体重をかけて、杖20で支えることにはあまり適していない。しかし、極端に遅い訳ではない歩行のリズムをとるために、縦方向に、あまり大きな距離にならない範囲で矢印に示すように、上下動させるように腕を振りながら歩行することができる。これにより、歩行により足を運ぶ箇所の前方に、リズム良く腕を振りながら杖20を突くことで、僅かな前傾による歩行時のバランスを、補うことができる。そして、第2把持部22は本体25のほぼ延長線上に延びているため、バランスが崩れることなく安定して歩行することができる。
すなわち、杖20にあっては、第1把持部21が杖20の本体25の延びる方向(図2の仮想の中心線C参照)とほぼ直交する方向に延びていることから、立った状態の使用者Uは、約150度程度肘が開いた状態、つまり殆ど肘を伸ばして、該第1把持部21を上から掴むように保持する。これにより、体重の一部あるいはかなりの体重をかけるようにして、歩行の際の支えとして使用することができる。
しかも、図2に示すように、第1の把持部21のほぼ中央部Pが、本体25の仮想の中心線Cと一致するか、その近傍となるようにされているので、図1(b)のように体重を預けるように歩行する際に、体重を杖20の軸線上に位置させることができ、適切に支持されることなる。
しかも、第1把持部21と第2把持部22が適切な距離だけ離間しているため、長さ調整手段28で調整しなくても、体調等に応じて握る位置を選択することもできる。
このように、本実施形態によれば、歩行障害の初期から中期に対応していずれの期間においても使用者が選択して使用することができる杖20を提供することができる。
すなわち、図3は第2の実施形態の杖のグリップ部23−1の概略平面図、図4はグリップ部23−1の概略側面図であり、その他の構成は第1の実施形態と同じである。また、第1の実施形態と同一の符合を付した箇所は共通する構成であるから、以下、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
そして、この仮想の中心(軸)線Cから外方に下降して傾斜しながら湾曲する第1の湾曲部41と、さらに下降して傾斜しながら、上記中心(軸)線Cに戻る第2の湾曲部42を備えており、所謂スパイラル状にグリップ部23−1が形成されている。
この第2の湾曲部42が、そのまま第1把持部21−1として使用することができる。
第2の実施形態は以上のように構成されており、第1の実施形態と同様に使用され、同様の作用効果を発揮できるが、グリップ部の縦方向の寸法が小さい利点を有している。
すなわち、図5は第3の実施形態の杖の分解図、図6はグリップ部の概略側面図である。図5および図6の実施形態において、第1の実施形態と同一の符合を付した箇所は共通する構成であるから、以下、重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
この実施形態では、グリップ部23−2は、第1の実施形態のグリップ部23よりもはるかにコンパクトでありながら、以下に説明する構成により、ほぼ同一の機能を発揮することができる。
第2装着部44の取付け孔の奥側には細い径の螺合孔があり、内周に雌ネジ部46が形成されている。
この状態で、グリップ23−2は、図2において、Y方向に延びており、本体25の仮想の中心(軸)線Cと同じ方向に長い形態である。したがって、第1の実施形態における第1把持部として使用することができる。
しかも、第2装着部44が形成された側のグリップ23−2の端部には、フランジ部44aが形成されているため、握った手が滑ってしまうことがない。
次いで、グリップ部23−2の向きを代えて、図5に示すようにほぼ水平とし、第1部材26の取付け部先端26bを第1装着部43の取付け孔に挿入して、上述したように取付けると、図5に示すような状態となる。
すなわち、グリップ部23−2は、杖本体25の仮想の中心(軸)線Cに対してほぼ直交するので、第1の実施形態における第2の把持部として使用することができる。
この時のグリップ部23−2の状態は、第1の実施の形態と同様に、仮想の中心線Cと直行する方向Hに対して前方側が僅かに低くなる前下がりの傾斜とされている。そして、第1装着部43の上部には、凹部43aが設けられていることで、手掌にフィットする。
ここで、本実施形態(他の実施形態にも適用することができる)の長さの調整手段28は、符合28−1として模式的に示すように、複数もしくは多数設ける貫通孔28d,28e,28eなどを繋げて無段階に調整できるようにしてもよい。これにより、よりきめ細かな長さ調整をすることができる。そして、本実施の形態では、第2装着部44に装着した状態から第1装着部43に装着した状態に切り替える際には、肘の角度が適切になるようこの調整手段28−1を操作すればよい。
また、本実施形態では、石突き24−2は、例えば合成ゴムやエラストマー製として、先端の広い接地面35から外径を細くした縮径部36を備えるようにしてもよい。これにより、杖20−1の起立角度が多少変化しても、縮径部36を曲折させることができ、接地面35を接地させたままとすることができる。
例えば、グリップ部は、第1把持部と第2把持部や、第1装着部と第2装着部が形成できれば、例えば手掌の形に対応した形状等、上述の各実施形態以外の形状とすることができる。同様に湾曲部33や41等の接続部は、曲面状ではなく例えばコ字状とする等、上述の各実施形態以外の形状とすることができる。杖の本体はさらに多段のテレスコピックとしてもよい。また、より杖に体重をかけて使用できるよう、キャップ34を着脱可能として、キャップ34の代わりに、腋下まで延伸されて当接することで、体重を支えられる所謂松葉杖となる腋下用部材をキャップ34に代えて装着できるよう構成してもよい。
上述の各実施形態における各構成は相互に組み合わせたり、必要により、その一部を省略したり、他の構成と入れ換えて、異なる構成の組み合わせのもとで実施されてもよい。
Claims (2)
- 長く延びる棒状部材の一端を接地させて使用する歩行用の杖であって、
前記棒状部材でなる本体と、
該本体の一端に設けられる接地部と、
前記本体を使用者が把持するための把持部と
を有しており、
前記把持部が、
前記本体の延びる方向とほぼ直交する方向に延びる第1把持部と、
該第1把持部よりも上方に設けられ、前記本体のほぼ延長線上に延びる第2把持部と
を備え、
使用者が前記第1把持部を使用状態で把持した際に前記第1把持部が、前記本体の延びる方向と直交する方向に対して、僅かに前下がりとなるよう傾斜して延びる形態とされているとともに、前記第1把持部のほぼ中央部は、前記本体の長さ方向に伸びる仮想の中心線とほぼ一致するようにされており、
前記第1把持部と第2把持部とを連結する部分には、使用者が前記第2把持部を使用状態で把持した際に外方に突出した湾曲部を有する
ことを特徴とする、杖。 - 前記本体はその長さを調整するための手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の杖。
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