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JP4997255B2 - 細胞画像解析装置 - Google Patents

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Description

本発明は、動植物の細胞画像を画像処理することにより所定のデータ抽出を行う細胞画像解析装置に関する。
バイオテクノロジーや医薬品開発の分野では、動植物細胞や微生物などに対する様々薬品や薬などの物質の効果や影響、またはこれらの物質に対する動植物細胞や微生物等の反応を確認する作業が行われている。例えば神経細胞などの複雑な形態的特長を有する細胞を観察対象とする場合には、個々の細胞の位置を認識して、細胞の総数、個々の細胞の形態的特長量を、観察・記録し、データ化する作業が必要となる。
しかしながら、複雑な形態の細胞の総数を数える観察作業は研究者の目視観察に依存しており、観察結果が研究者間でばらついたり、顕微鏡画像を長時間観察することによる疲労により観察結果が変動するという問題があった。複雑な形態的な特徴を有する複数の細胞を個別に識別しそれらの特徴量を自動的に抽出する手段は実現されていない、あるいは、充分な精度を実現しえないというのが現状である。
特に、薬物のスクリーニングの場合、試料となる細胞の条件を様々に変える必要があるため、観察対象となる細胞の数が膨大になる。このため、取得した細胞の画像を自動的に認識する装置が強く必要とされている。
このため、分析に最適な被写体の撮像位置を検出する技術(特許文献1参照)や、細胞画像から正しく形状抽出を行うことができる技術(特許文献2参照)が開示されている。
細胞を使ったスクリーニングにおいては、細胞の画像から、個々の細胞を識別し、それら細胞の境界を決定し、個々の細胞の形状の特徴量を抽出し、薬剤による効果を定量化し比較する方法が一般的である(特許文献3参照)。
これら一連の細胞の画像解析で特に困難でありかつ重要である処理は、細胞の個々の識別である。細胞の識別を誤った場合、細胞の数自体が不正確なものとなる。この場合、統計的に処理された、それぞれの細胞の特徴量のデータの信頼性が失われる。これらの理由から、良い精度での画像処理が必要とされている。
一般に細胞の画像は、死んだ細胞の器官の残骸、撮像する以前に細胞に対して行う処理過程で入った細胞以外のゴミ、同様に気泡類、撮像装置の焦点が合わないために生じる部分的に境界の不明確な細胞、などを含む。これらのことが困難な一つの原因である。
解析処理プログラムを備えた画像解析装置の一つの長所は、直接人間による観察を自動化する点にあるが、前項のような画像に含まれる様々な困難な要素は、特に処理を自動化した場合に顕著になる。
また、撮像時の状態にも拠るが、細胞は、空間的な配置により、画像上重なって見えることが良くあり、これら細胞の重なりが、個々の細胞を認識・識別を困難にするもう一つの原因として挙げられる。
このように、細胞が重なっている場合には、細胞の境界が複雑に絡み合っているので、個々の細胞が画像上に占める領域を特定することは難しく、そのため、細胞の領域を特定し、個々の細胞を認識する手段は、精度の上からも現実的ではなくなる。
個々の細胞を認識する際の間違いとして上げられるものは、見落とし、と、数え過ぎである。
”見落とし”は本来細胞として認識すべきものを細胞として認識しないことであり、”数えすぎ”は細胞以外のものを細胞として認識してしまうことから生じる。
このうち見落としの例としては、画像上、2つ以上の細胞が重なって存在し、それら個々の細胞の境界の認識が困難である場合、これら複数の細胞を単一の細胞として識別してしまう、という状況が考えられる。
また、数えすぎとは、逆に本来以上に境界を認識しすぎてしまうために、細胞が重なっている領域内の細胞数を本来の数以上に見積もってしまう、ということが1つの例である。
さらに、画像は、しばしば細胞以外のゴミ等を含むが、これらを細胞として認識してしまうことから数えすぎがおこる。
特開2001−242085 特開2002−312761 特許公表2000−509827
本発明は、細胞の総数や個々の細胞の特徴量を精度良く抽出することができる細胞画像解析装置を提供することを目的とする。
本発明に係る細胞画像解析装置は、同一細胞の細胞膜と、少なくとも一つの細胞内器官とを異なる染色又は蛍光物質で発色させ、これらの画像をそれぞれ取得する細胞画像取得手段と、前記細胞画像取得手段で得られた前記細胞膜の画像と、前記細胞内器官の画像とに対して、細胞膜及び細胞内器官の領域をそれぞれ決定する領域決定手段と、前記領域決定手段で得られた前記細胞膜及び細胞内器官の領域から、それぞれの中心点を抽出する中心点抽出手段を具備する。前記中心点抽出手段は、前記細胞内器官の領域が前記細胞膜の領域に包含されるときに前記それぞれの中心点より細胞中心を判定する判定手段を具備する。
本発明に係る細胞画像解析方法は、同一細胞の細胞膜と、少なくとも一つの細胞内器官とを異なる染色又は蛍光物質で発色させ、これらの画像をそれぞれ取得する細胞画像取得ステップと、前記細胞画像取得手段で得られた前記細胞膜の画像と、前記細胞内器官の画像とに対して、細胞膜及び細胞内器官の領域をそれぞれ決定する領域決定ステップと、前記領域決定ステップで得られた前記細胞膜及び細胞内器官の領域から、それぞれの中心点を抽出する中心点抽出ステップを含む。前記中心点抽出ステップは、前記細胞内器官の領域が前記細胞膜の領域に包含されるときに前記それぞれの中心点より細胞中心を判定する判定ステップを含む。
本発明によれば、個々の複雑な形態的な特徴を有する細胞を正しく認識し、これら細胞の総数を正確に数え、さらに個々の細胞の特徴量を、細胞画像から自動的に抽出することができる。
本発明の一実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図。
本発明の一実施の形態に係る画像処理の全体の流れを示すフロー図。
本発明の一実施の形態に係る中心点判定(吟味)の流れを示すフロー図。
本発明の一実施の形態に係る単一画像から中心点を抽出する場合の流れを示すフロー図。
細胞が不規則な形状をとる場合を例にとって、細胞中心を決定する方法を説明するための図。
抽出された細胞境界を使って中心点を求める方法を説明するための図。
具体的な細胞中心の決定方法を説明するための図。
細胞核が細胞膜の外にはみ出ている場合の処理を説明するための図。
細胞中心判定部によって、細胞境界内に細胞中心が2つ存在する場合の判定方法を説明するための図。
異なる種類の細胞が複雑に重なりあっている場合を示す図。
細胞の3次元画像の取得方法について示す図。
3次元画像処理の効果を説明するための図。
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明を実施するための基本的な構成を図1を用いて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図であり、本実施の形態に係る細胞画像解析装置の基本構成として走査型共焦点光学顕微鏡を例示している。
光源20として、例えば波長488nmのアルゴンレーザを用いる。光源20から出射されたレーザ光はコリメートレンズ22によりビーム直径が拡大されて、平行光束に変換されてダイクロイックミラー25に導かれる。ダイクロイックミラー25に導かれたレーザ光は、ダイクロイックミラー25で反射されて、XYスキャナ30に入射し、XYスキャナ30でXY軸方向に走査される。XYスキャナ30を通ったレーザ光は、対物レンズ35に入射し、測定対象である溶液状の試料42に集光される。なお、ダイクロイックミラー25は光源20からのレーザ光の波長の光を反射し、光源20からのレーザ光の波長より長い波長の光を透過させる。また、XYスキャナ30としてガルバノミラーが通常用いられる。
試料42は、蛍光物質で標識されて、詳細は後述する顕微鏡の試料ステージ40上に載置されたマイクロプレート41上に置かれている。蛍光物質として、例えば、ローダミン・グリーン(RhG)が用いられる。試料42から発せられる蛍光は、対物レンズ35を再び通過し、XYスキャナ30を通ってダイクロイックミラー25を通過し、ミラー50で反射されてレンズ51に到達する。レンズ51で蛍光は集光されて、ピンホール52の開口部でフォーカスされた後に、光検出器55で受光される。光検出器55で受光された蛍光信号は光電流信号に変換され、画像処理部80に入力され、詳細は後述する信号処理、画像解析等の演算が行われて。モニタ上に試料の蛍光画像が抽出される。なお、光検出器55として通常CCD(Charge Coupled Device)カメラが用いられるが、CMOS(Complememtary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を用いても良い。
試料42を収容する容器として、例えば底面が透明に施された96穴のマイクロプレート41が用いられる。対物レンズ35の先端とマイクロプレート41の間は、液浸水で満たされている。マイクロプレート41は、試料ステージ40の上に保持される。試料ステージ40には、試料ステージ40が直交する2方向に移動可能なように、2個のステッピングモータ(図示しない)が取り付けられており、それぞれのステッピングモータは試料ステージコントローラ45に接続されている。試料ステージコントローラ45はコンピュータ10に接続されており、試料ステージ40を保持し、コンピュータ10からの指令により、ステッピングモータを駆動することによって試料ステージ40をX方向とY方向に移動させて、試料42面を適切な位置に配置する、
また、対物レンズ35をZ方向に移動させることにより、レーザ光のフォーカス位置をZ軸方向に沿って上下に移動させることができる。
なお、蛍光物質については、ローダミン・グリーンに限ることなく、光源の波長を対応させることができれば、例えば、TMR(Tetrame−hylrhodamine)、サイファイヴ(Cy5)、FITC(Fluorescein−isothiocyanate)、TOTO1、Acridine−Orange、Texas−Redなどを用いても良い。
光検出器55からの出力は画像処理部80に入力して、種々の画像処理が行われるが、画像処理部80は以下のような各処理部を備えている。まず、光検出器55からの出力(本明細書においては、特に断らない限り、「撮影画像」が出力されるものとする)に基づいて、細胞中心抽出処理部81は、画像中の個々の細胞について、その中心(以下、「細胞中心」と称する)となる点を検出する。細胞中心判定部82は、複数の画像間で細胞中心抽出処理部81で抽出された点を比較し、細胞中心として不適切と判断した点を除いた点を細胞中心として決定する。細胞境界抽出部83は、細胞中心判定部82で決定された細胞中心点を囲む境界を抽出する。特徴量抽出処理部84は、細胞境界抽出部83の結果に基づいて、個々の細胞の形態的特徴量を抽出する。細胞の総数抽出処理部85は、細胞中心抽出処理部81から特徴量抽出処理部84の結果を解析して画像に含まれる細胞の個数を抽出する。
なお、画像処理部80を構成するハードウェアとしては、例えば汎用コンピュータ或いはパーソナルコンピュータ等のようにコンピュータプログラムによって作動する汎用的な処理装置を用いることができる。また、画像処理部80は、コンピュータ10の一部であっても良い。本実施の形態では、上記のような処理装置に、画像処理部80として機能させるためのコンピュータプログラム、すなわち細胞中心抽出処理部81、細胞中心判定部82、細胞境界抽出部83、個々の細胞の特徴量抽出処理部84、細胞の総数抽出処理部85のそれぞれの機能を実現させるためのプログラムをインストールして細胞画像の処理装置を構成している。
上記のように構成された本発明の一実施の形態に係る細胞画像解析装置の動作を図2から図4のフロー図を参照して説明する。なお、図2は本発明の一実施の形態に係る画像処理の全体の流れを示すフロー図、図3は本発明の一実施の形態に係る中心点判定(吟味)の流れを示すフロー図、図4は本発明の一実施の形態に係る単一画像から中心点を抽出する場合の流れを示すフロー図である。
図2を参照して、本実施の形態に係る画像処理の全体の流れを説明する。まず、撮影の準備として、観察の対象となる各種条件下での試料42となる細胞を準備し、適当な染色を行って、発光させるための操作を細胞(以下、「試料」とも称する)に対して行う。これらの試料を試料ステージ40に設置して位置を固定する。これらの準備が終了したら、試料42の画像を光検出器55(例えばデジタルカメラ)により検出(撮像)する(ステップA1)。この場合において、試料42の位置を固定したまま、必要な回数(すなわち複数回)フィルターの変更を行って撮像条件の変更を行いながら試料を撮影する。さらに、マイクロプレート41を使って試料の位置を変更しながら試料42を撮像する。次に、各画像についてそれぞれの細胞の中心点(すなわち細胞中心)を抽出する(ステップA2)。そして、ステップA2で求めた細胞中心について、複数の画像間で照合することによって、細胞中心であるかどうかを吟味して、細胞中心を決定する(ステップA3)。次に、ステップA3で求めた細胞中心に基づいて各細胞の境界を抽出する(ステップA4)。そして、上記の解析結果に基づいて、各細胞の特徴量を抽出したり、細胞の総数を計数した結果を出力する(ステップA5)。
上記のように試料を撮像して特徴量の抽出などを行う場合において、まず異なる複数の染色方法で細胞を染色した場合について説明する。
細胞画像は、一般に、細胞内のたんぱく質や、細胞内の核を染色したり、蛍光たんぱく質を使いて、これらの操作により発色した光を顕微鏡などにより、拡大して撮像されることが多い。
特に複数種類の細胞が混在している試料においては、染色方法によって特定の種類の細胞のみ発光するように操作することができる。この性質を使って、観察したい細胞に対して、特徴的な染色方法あるいは発光の操作を行うことができる。
そして、異なる周波数帯の光を透過する複数のフィルターを用意して、細胞の同一の場所を、異なるフィルターを通して撮像することにより、同一の対象(細胞)に対して、異なる条件で撮像した複数の画像を取得することができる。
細胞中心の判定(吟味)処理の流れを、図3に示す。なお、図3において、図2と同じ部分には同じ符号を付している。上記のようにして複数の画像を撮像して、同一の細胞の試料であって、同じ位置の画像を複数の条件で撮像する(ステップA1)。次に、それぞれの画像中のそれぞれの細胞の細胞中心の候補を抽出する(ステップA2)。そして、細胞中心の候補として抽出した画像中の各点に対して、異なる画像中で最も近い点を対になるパートナー点として検出する(ステップB1)。なお、このパートナー点の検出は、他の画像の各点に対しても同様に検出する。次に、詳細は後述するように、細胞核領域が細胞膜領域に完全に含まれるかどうかを判断する(ステップB2)。そして、複数の画像中のパートナー点が一致することを条件として、複数の画像中のパートナー点が一致した点を細胞中心として決定する(ステップB3)。これにより、正しい細胞中心を抽出できる。
上記の処理において、ステップA2の各画像における中心点(の候補)の抽出処理を図4を参照して説明する。まず、撮像画像から細胞と他の物質(例えば溶媒)との境界を、画像処理によって、強調処理する(ステップC1)。次に、強調処理後の画像に対して二値化処理を行って、境界を検出する(ステップC2)。境界を検出したら、境界内の各点の座標(x、y)における特徴量を抽出して(ステップC3)、抽出した特徴量に対するしきい値を設定する(ステップC4)。そして、設定したしきい値に基づく特徴的な点を抽出するとともに(ステップC5)、その近傍点をまとめて(ステップC6)、中心点(の候補)を抽出する(ステップC7)。
図5を参照して、細胞が不規則な形状をとる場合を例にとって、細胞中心を決定する方法を説明する。図5において、(a)は、1つの細胞体すべてを染色した場合を示す図、(b)は細胞核のみを染色した場合の図である。また、(c)は、(a)と(b)とを重ね合わせた図であって、(d)は、(a)と(b)の重なった部分を細胞中心(★印で表記)として設定した図である。
まず、図5の(a)と(b)に示すような画像を得るために、画像を適当な値で2値化し、その0と1の境界を細胞体(或いは細胞核)の境界として設定する等の処理を行う。これにより、(a)に示すような細胞体境界や(b)に示すような細胞核境界が抽出される。なお、図5の細胞核画像は、二値化を行った細胞核の輪郭を表示しているが、通常、細胞核は円形もしくは楕円状である。しかし、複数の細胞が近接しているもしくは三次元上重なっている場合には、図に示すような、複雑な形状を示す。
次に、所定のアルゴリズムを使って、細胞体境界や細胞核の境界で囲まれた画像のそれぞれの中心点を抽出する。なお、この場合において、細胞体の画像のみを用いている場合には、抽出された境界が単一の細胞によるものであるか、複数の細胞によりできたものであるかは判断できない。例えば、細胞の中心点の候補は、図5の(a)及び(b)における細胞体画像や細胞核の中心のように推定される。そして、(a)と(b)を(c)に示すように重ね合わせて、(d)に示すような細胞中心を決定することができる。
ここで、中心点の求め方はいくつか考えられる。細胞核画像などの場合には、染色後の核の発光量は細胞核中心が最も高く核の周辺はこれらと比較してより少なく発光するという傾向がある。よって、細胞核の中心は、画像中の輝度が局所的に高くなる位置として求めることができる。
逆に細胞膜を染色する、あるいは、細胞中の特定たんぱく質を発光させるなどの方法で撮像された細胞画像は、必ずしも上記のような特徴を持つとは限らない。
これらの画像に対しては、抽出された細胞境界を使って中心点を求める方法が適していると考えられる。具体的には細胞境界の重心点を求めたり、あるいは、境界の幅に注目し、極大になる幅を求め、その中間点を中心点とするなどの方法がある。例えば、図6では、2つの細胞の一部が重なっているような場合を例にとっているが、この場合には、極大値は画像中で2つ得られるので、その極大値が両者とも長さlとして得られたのであれば、それらの中間点l/2の位置を細胞中心として推定或いは決定することができる。
図7を参照して、具体的な細胞中心の決定方法を説明する。図7においても、細胞体画像と細胞核画像の2つの画像を使った解析を例に取って説明する。まず、それぞれの画像に対して、細胞中心の候補となる点を抽出する。この時に、細胞体画像における細胞中心の候補として点a1、点a2、点a3の3点が抽出され、細胞核画像における細胞中心の候補として点b1、点b2、点b3の3点が抽出されたものとする。次に2つの画像を重ね合わせて、抽出した細胞中心の候補の最短距離となるパートナー点を他の画像の細胞中心の候補を参照して検出する。このとき、例えば、候補点a1を取り、この点ともっとも近い点を点b1、点b2、点b3の中から検出する。仮に最も近い点が点b2とすると、点a1のパートナー点は点b2となる。このように、点a1、点a2、点a3の各点に対するパートナー点を求め、同様に点b1、点b2、点b3の各点に対するパートナー点を求める。このように、細胞体画像上の各点に対して最も近い細胞核上の点をそれぞれの候補に対するパートナー点とし、細胞核画像上の各点に対して、細胞体画像上の中心点候補で最も近い点をそれぞれの候補に対するパートナー点とする。これにより、2つの画像の各点に対してパートナー点が求められるが、お互いのパートナー点の位置が一致するもののみを細胞中心として決定する。これにより正しい細胞中心が決定される。
なお、上記の方法によれば、試料中に含まれるゴミなどの細胞以外の物体を誤って細胞と認識する誤検出の確率を低減することができる。例えば、上記のような、細胞核と細胞体の画像を使った解析を例にとれば、ゴミなどの細胞以外の物体は核をもたないため、パートナー点の位置が一致することはなく、細胞ではないと判断することができる。
なお、上記の方法で決定した細胞中心に対して、さらに別の条件を満たすことが好ましい。例えば、細胞核は細胞内器官であるので、細胞核は常に細胞膜内に存在しなくてはならない。
しかしながら、図8に示すように、細胞中心を誤って決定してしまい、細胞核が細胞膜の外にはみ出ている場合が考えられる。このように、誤って決定された細胞中心を除外するために、各細胞中心に対して、核領域が細胞膜内領域に完全に含まれることを条件として追加することが好ましい(なお、図中☆印の部分が細胞核として決定された部分である)。
図9を参照して、上記のようにして検出された細胞中心から個々の細胞境界を検出する細胞境界抽出部83の動作を説明する。図9は、細胞中心判定部82によって、細胞境界内に細胞中心が2つ存在する場合の判定方法を説明するための図である。
複雑な形態を持ち、それぞれの個体により形状が著しく異なる細胞の場合、図9のような細胞体画像の境界からはこの画像中に含まれる細胞が1つなのか2つなのかを、従来では判断することはできないか、あるいは困難である。
本実施の形態では、異なる条件で試料の画像を取得し(図9の(a))、重ね合わせて(図9の(b))、細胞中心を決定している(図9の(c))。図9の(c)に示すように、細胞中心判定部82で検出した中心が2の場合には、細胞の数は2であるものと判定される。従って、この場合には、細胞を隔てる境界が存在すると推定することができる。よって、本実施の形態によって細胞中心が正しく求められている場合には、適当なアルゴリズムを使うことで、例えば図9の(c)に示すように、例えば破線部分を2つの細胞の境界に設定することにより、各細胞の境界を推定することができる。
図9に示す結果は、その周囲長や突起等の各細胞の形態的特徴量を抽出する場合、結果に重大な影響を与える。例えば細胞の周囲長、細胞の外節器官の有無などを特徴量として抽出する場合を考える。
図9の(a)の細胞体画像のみを使って細胞を1個として認識した場合には、細胞の周囲長は1つの細胞として算出されるので、2つの細胞分の周囲長となってしまう。このように、この場合における細胞の周囲長は、実際の周囲長の倍程度、すなわち2つ分の細胞の周囲長となり、これらの重なり状態が頻出する画像上では、平均周囲長を正確に見積もることができなくなる。
上記のように本実施の形態によれば、細胞の数などの誤認識による細胞の特徴量パラメタの精度も高くすることができる。
図10は、異なる種類の細胞が複雑に重なりあっている場合を示す図である。なお図10の(a)は細胞が重なり合った場合の例を示している。この画像に対し単純な二値化を行うと、図10の(b)に示すように、2つの細胞がほぼ重なっているため、この二値化画像から細胞の数が2つであることを認識するのは困難である。
このように細胞が重なりあっているような場合に対して、細胞の種類が異なる(例えば、細胞種1と細胞種2である)場合には、特定の細胞種のみ撮像することで、1種類の細胞の画像のみ取得することができる(図10の(c)参照)。なお、2つの細胞の種類を区別して染色あるいは発光させる手段がある場合には、本実施の形態に係る細胞解析装置を使うことで、重なった画像を個々の細胞ごとの画像に分割することができる。これにより、細胞の重なりに起因する画像の複雑さを減少することができ、細胞の数を正確に数えることができ、個々の細胞の形態的特徴をより良く抽出することができる。また、細胞の種類によって光学系のフィルターを変更して2つの画像を取得しても良い。
特に上記の方法で検出された細胞境界により、細胞の分類を高い精度で行うことができる。分類は、上記のように検出された周囲長などの形態的特徴量を使って行われる。精度良く検出された特徴量を使えば、細胞の分類の精度を上げることができる。
なお、上記の実施の形態では、細胞画像が2次元画像の場合を例にとって説明したが、図11に示すように、3次元画像を取得し、その3次元画像について画像解析を行うことにより、更に精度を上げることができる。例えば、図11の(a)に示すような細胞について高さ方向をZ軸として、Z軸に垂直な平面でZ軸の位置を変えながら細胞の断層像(2次元画像)を撮像する。これにより、図11の(b)に示すような、高さの異なる複数の2次元画像が得られる。これらの複数の2次元画像に基づいて、図11の(c)に示すような細胞の3次元画像を得ることができる。なお、複数の2次元画像の画像処理方法は、上記の実施の形態で説明した処理と同じ方法によって処理可能であり、これにより、各2次元画像における正確な細胞中心の決定などの処理を行うことができる。
この場合において、例えば、図12の(a)に示すような細胞があった場合に、例えば、矢視Bの2次元画像は、細胞核を含まない図12の(b)に示すような画像となり、矢視Cの2次元画像は、細胞核を含んだ図12の(c)に示すような画像になる。このように、2次元画像のみでは、例えば、図12の(c)に示すような細胞核を捉えられないために、細胞として計数できないようなものであっても、例えば、高さ方向(水平方向であってももちろんかまわない)を変化させて複数の細胞画像を撮像して、3次元画像を得ることによって、より正確な画像解析を行うことができる。
上記の各実施形態から下記の発明が抽出できる。なお、下記の各発明は単独で適用しても良いし、適宜組み合わせて適用しても良い。
本発明の一実施の形態に係る細胞画像解析装置は、複数の細胞に対して異なる染色で発色をさせる細胞染色手段と、前記複数の細胞を異なる条件で撮像して複数の画像を取得する細胞画像取得手段と、前記複数の画像中の各細胞に含まれる所定の要素を抽出する画像解析手段を具備することを特徴とする。ここで、前記細胞に含まれる要素は、細胞の境界、細胞体の中心、細胞核の中心、細胞の突起であることが好ましい。上記の細胞画像解析装置において、下記の実施態様が好ましい。
(1) 前記画像解析手段は、異なる2つ以上の画像のそれぞれに対して、前記複数の細胞の各細胞中心を推定する手段と、前記推定した細胞中心を前記複数の画像間で照合することによって、細胞中心を決定する手段を具備すること。
(2) 前記画像解析手段は、異なる2つ以上の画像のそれぞれに対して、異なる方法で前記複数の細胞の各細胞中心を推定する手段と、前記推定した細胞中心を前記複数の画像間で照合することによって、細胞中心を決定する手段を具備すること。
(3) 前記要素で細胞の個数を計数すること。
(4) 前記要素で個々の細胞の形状や、形態や、境界を推定すること。ここで、個々の細胞の形状・形態・境界を、各細胞の細胞中心を用いて決定すること
(5) 前記要素に基づいて細胞を分類すること。
(6) 前記細胞画像取得手段は少なくとも細胞核の画像を取得すること。
(7) 前記細胞画像取得手段は少なくとも細胞膜の画像を取得すること。
(8) 前記細胞中心を推定する手段は少なくとも細胞核の画像を用いて細胞中心を推定すること。
(9) 前記細胞中心を推定する手段は少なくとも細胞膜の画像を用いて細胞中心を推定すること。
(10) 前記細胞画像取得手段は平行かつ異なる平面の細胞の断層像を複数枚撮像する撮像手段と、前記複数の断層像から3次元像を構築する3次元構築手段とを具備し、
(11) 前記画像解析手段は前記平面の細胞の断層像に対して画像処理を行うこと。
本発明の他の実施の形態に係る細胞画像解析装置は、細胞膜と、少なくとも一つの細胞内器官とを異なる染色又は蛍光タンパクで発色させ、これらの画像をそれぞれ取得する細胞画像取得手段と、前記細胞画像取得手段で得られた前記細胞膜の画像と、前記細胞内器官の画像とに対して、細胞膜及び細胞内器官の領域をそれぞれ決定する領域決定手段と、前記細胞内器官の領域が前記細胞膜の領域に包含されるときに細胞として判定する判定手段とを具備することを特徴とする。本細胞画像解析装置において、前記細胞内器官は細胞核であることが好ましく、更には、前記細胞画像取得手段は平行かつ異なる平面の細胞の断層像を複数枚撮像する撮像手段と、前記複数の断層像から3次元像を構築する3次元構築手段とを具備し、前記領域決定手段は、前記3次元像に対して前記細胞膜及び前記細胞内器官の領域決定を行い、前記判定手段は、前記3次元像に対して細胞として判定することが好ましい。
本発明の更に他の実施の形態に係る細胞画像解析装置は、複数の細胞を異なる条件で撮像した複数の画像を用いて細胞を認識することを特徴とする。ここにおいて、前記異なる条件は染色方法又は発色条件或いはその両者であることが好ましい。また、前記染色方法は、細胞体内の特定たんぱく質の染色、核の染色、蛍光たんぱくを用いた遺伝子発現時の発色を用いることが好ましい。
本発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
また、例えば各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
10…コンピュータ
20…光源
22…コリメートレンズ
25…ダイクロイックミラー
30…XYスキャナ
35…対物レンズ
40…試料ステージ
41…マイクロプレート
42…試料
45…試料ステージコントローラ
50…ミラー
51…レンズ
52…ピンホール
55…光検出器
80…画像処理部
81…細胞中心抽出処理部
82…細胞中心判定部
83…細胞境界抽出部
84…特徴量抽出処理部
85…総数抽出処理部

Claims (6)

  1. 同一細胞の細胞膜と、少なくとも一つの細胞内器官とを異なる染色又は蛍光物質で発色させ、これらの画像をそれぞれ取得する細胞画像取得手段と、
    前記細胞画像取得手段で得られた前記細胞膜の画像と、前記細胞内器官の画像とに対して、細胞膜及び細胞内器官の領域をそれぞれ決定する領域決定手段と、
    前記領域決定手段で得られた前記細胞膜及び細胞内器官の領域から、それぞれの中心点を抽出する中心点抽出手段を具備し、
    前記中心点抽出手段が、前記細胞内器官の領域が前記細胞膜の領域に包含されるときに前記それぞれの中心点より細胞中心を判定する判定手段具備することを特徴とする細胞画像解析装置。
  2. 請求項1に記載の細胞画像解析装置において、前記細胞内器官は細胞核であることを特徴とする細胞画像解析装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の細胞画像解析装置において、
    前記細胞画像取得手段は平行かつ異なる平面の細胞の断層像を複数枚撮像する撮像手段と、前記複数の断層像から3次元像を構築する3次元構築手段とを具備し、
    前記領域決定手段は、前記3次元像に対して前記細胞膜及び前記細胞内器官の領域決定を行い、
    前記判定手段は、前記3次元像に対して細胞として判定することを特徴とする細胞画像解析装置。
  4. 同一細胞の細胞膜と、少なくとも一つの細胞内器官とを異なる染色又は蛍光物質で発色させ、これらの画像をそれぞれ取得する細胞画像取得ステップと、
    前記細胞画像取得手段で得られた前記細胞膜の画像と、前記細胞内器官の画像とに対して、細胞膜及び細胞内器官の領域をそれぞれ決定する領域決定ステップと、
    前記領域決定ステップで得られた前記細胞膜及び細胞内器官の領域から、それぞれの中心点を抽出する中心点抽出ステップを含み、
    前記中心点抽出ステップが、前記細胞内器官の領域が前記細胞膜の領域に包含されるときに前記それぞれの中心点より細胞中心を判定する判定ステップ含む細胞画像解析方法。
  5. 請求項4に記載の細胞画像解析方法において、前記細胞内器官は細胞核であることを特徴とする細胞画像解析方法。
  6. 請求項4又は請求項5に記載の細胞画像解析方法において、
    前記細胞画像取得ステップは平行かつ異なる平面の細胞の断層像を複数枚撮像する撮像ステップと、前記複数の断層像から3次元像を構築する3次元構築ステップとを含み、
    前記領域決定ステップは、前記3次元像に対して前記細胞膜及び前記細胞内器官の領域決定を行い、
    前記判定ステップは、前記3次元像に対して細胞として判定することを特徴とする細胞画像解析方法。
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