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JP4996952B2 - 緩衝装置 - Google Patents

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JP4996952B2
JP4996952B2 JP2007078144A JP2007078144A JP4996952B2 JP 4996952 B2 JP4996952 B2 JP 4996952B2 JP 2007078144 A JP2007078144 A JP 2007078144A JP 2007078144 A JP2007078144 A JP 2007078144A JP 4996952 B2 JP4996952 B2 JP 4996952B2
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Description

本発明は、緩衝装置の改良に関する。
従来、この種緩衝装置にあっては、シリンダと、シリンダとシリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダ内を上室と下室に区画するピストンと、ピストンに設けられた上室と下室を連通する第一通路と、ピストンロッドの先端から側部に開通して上室と下室を連通する第二通路と、第二通路の途中に接続される圧力室を備えてピストンロッドの先端に取付けられたハウジングと、圧力室内に摺動自在に挿入され圧力室を一方室と他方室とに区画するフリーピストンと、フリーピストンを附勢するコイルバネとを備えて構成されている。すなわち、圧力室内の一方室は第二通路を介して下室内に連通されるとともに、圧力室内の他方室は第二通路を介して上室に連通されるようになっている。
ここで、緩衝装置の伸縮時における上室と下室との差圧をPとし、上室から流出する液体の流量をQとし、上記差圧Pと第一通路を通過する液体の流量Q1との関係である係数をC1とし、他方室内の圧力をP1とし、この圧力P1と上室から他方室に流入する液体の流量Q2との関係である係数をC2とし、一方室内の圧力をP2とし、この圧力P2と一方室から下室内に流出する液体の流量Q2との関係である係数をC3とし、フリーピストンの受圧面積である断面積をAとし、フリーピストンの圧力室に対する変位をXとし、コイルバネのバネ定数をKとして、流量Qに対する差圧Pの伝達関数を求めると、式(1)が得られる。なお、式(1)中、sはラプラス演算子を示している。
Figure 0004996952
さらに、上記式(1)で示された伝達関数中のラプラス演算子sにjωを代入して、周波数伝達関数G(jω)の絶対値を求めると、以下の式(2)が得られる。
Figure 0004996952
上記各式から理解できるように、この緩衝装置における流量Qに対する差圧Pの伝達関数の周波数特性は、低周波数域では伝達ゲインが大きくなり、高周波数域では伝達ゲインが小さくなる。
したがって、この緩衝装置では、低周波数の振動の入力に対しては大きな減衰力を発生し、他方、高周波数の振動の入力に対しては小さな減衰力を発生することができるので、車両が旋回中等の入力振動周波数が低い場面においては高い減衰力を確実に発生可能であるとともに車両が路面の凹凸を乗り越えるような入力振動周波数が高い場面においては低い減衰力を確実に発生させて、車両における乗り心地を向上させることができる(たとえば、特許文献1参照)。
特開2006−336816号公報(図2)
上述した緩衝装置は、車両における乗り心地を向上することができる点で有用ではあるが、以下の問題がある。
上記緩衝装置の構成では、高周波振動の入力があって低い減衰力を発生している状況で、緩衝装置を大振幅させるような入力がある場合、フリーピストンがストロークエンドまで変位して第二通路を介しての上室と下室との作動油の移動が断たれて、第一通路のみを介して上室と下室とを作動油が交流するようになる。
このようになると、緩衝装置は、もはや高周波振動の入力に対して低い減衰力の発生を維持できないため、大きな減衰力を発生するようになるが、フリーピストンがストロークエンドに達したときに急激に減衰力が変化して大きくなるので、車体には突き上げられるようなショックが発生し、このショックを搭乗者に知覚させて車両における乗り心地を損なうことになりかねない。
そこで、本発明は上記した不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、高周波入力時に減衰力の急激な変化を抑制でき車両における乗り心地を向上することが可能な緩衝装置を提供することである。
上記した目的を解決するため、本発明における課題解決手段は、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダ内を2つの作動室に区画する隔壁部材と、2つの作動室を連通する通路と、圧力室を形成するハウジングと、上記ハウジング内に摺動自在に挿入されて圧力室を一方側流路を介して一方の作動室に連通される一方室と他方側流路を介して他方の作動室に連通される他方室とに区画するフリーピストンと、フリーピストンの圧力室に対する変位を抑制する附勢力を発生するバネ要素とを備えた緩衝装置において、
上記フリーピストンが中立位置から所定位置を越えて変位すると開放されて上記他方の作動室を上記一方の作動室へ連通するバイパス路を設け、上記一方側流路は、上記一方の作動室を上記一方室へ連通する可変オリフィスと、上記ハウジングに形成されて上記一方の作動室と上記一方室とを連通する固定オリフィスとを有し、上記バイパス路は上記フリーピストンの変位によって上記可変オリフィスの流路面積の減少が開始されるタイミングで開放されるようにしたことを特徴とする緩衝装置。
本発明の緩衝装置によれば、高周波数で振幅が大きい振動が入力されても、発生減衰力を低く維持することができるので、車体に突き上げられるようなショックを発生させず、搭乗者に減衰力の変化によるショックを知覚させずにすみ、車両における乗り心地を向上することができ、特に、急激な減衰力変化によって車体が振動しボンネットが共振して異音が発生してしまう事態も防止でき、この点でも車両における乗り心地を向上することができる。
以下、本発明の緩衝装置を各図に基づいて説明する。図1は、一実施の形態における具体的な緩衝装置の縦断面図である。図2は、一実施の形態における緩衝装置のピストン部の拡大縦断面図である。図3は、一実施の形態の緩衝装置におけるフリーピストンの変位に対する一方側流路の流路面積の変化を示した図である。図4は、流量に対する圧力の周波数伝達関数のゲイン特性を示したボード線図である。図5は、減衰係数、位相と周波数との関係を示した図である。図6は、一実施の形態の変形例における緩衝装置の縦断面図である。
一実施の形態における緩衝装置Dは、図1および図2に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を2つの作動室である上室R1および下室R2に区画する隔壁部材たるピストン2と、一端がピストン2に連結されるピストンロッド15と、ピストン2に形成された上室R1および下室R2を連通する通路2a,2bと、ピストンロッド15の先端に固定されて圧力室R3を形成するハウジング4と、上記ハウジング4内に摺動自在に挿入されて圧力室R3を一方側流路5を介して一方の作動室たる下室R2に連通される一方室7と他方側流路6を介して他方の作動室たる上室R1に連通される他方室8とに区画するフリーピストン9と、フリーピストン9の圧力室R3に対する変位を抑制する附勢力を発生するバネ要素10と、上記フリーピストン9が中立位置にある場合には閉塞されるとともにフリーピストン9が所定位置を越えて変位すると開放されて他方の作動室たる上室R1を一方の作動室たる下室R2へ連通するバイパス路20とを備え、上室R1および下室R2さらには圧力室R3内には作動油等の液体が充満され、この緩衝装置Dの場合、シリンダ1内の図中下方には、シリンダ1の内周に摺接して下室R2と気体室Gとを区画する摺動隔壁30が設けられている。
また、この緩衝装置Dの場合、上記した一方側流路5は、フリーピストン9の外周に形成されて一方室7へ連通される環状溝9dと、ハウジング4に形成されてフリーピストン9が中立位置にあるときにフリーピストン9の環状溝9dに対向し当該環状溝9dを介して下室R2を一方室7へ連通する可変オリフィス11と、同じくハウジング4に形成されて下室R2と一方室7とを連通する固定オリフィス12とを備えて構成されている。
なお、シリンダ1の上端は、ピストンロッド15を摺動自在に軸支する図示しないヘッド部材で封止され、シリンダ1の下端もまた図示しないボトム部材によって封止されている。
以下、各部について詳細に説明すると、ピストンロッド15は、その図2中下端側に小径部15aが形成されるとともに、小径部15aの先端側には螺子部15bが形成されている。
そして、ピストンロッド15には、小径部15aの先端から開口しピストンロッド15の側部に抜ける他方側流路6が形成されている。なお、図示したところでは、この他方側流路6の途中には、抵抗となる弁要素図示はしないが、絞り等の減衰力発生要素を設けるようにしてもよい。
ピストン2は、環状に形成されるとともに、その内周側にピストンロッド15の小径部15aが挿入されている。また、このピストン2には、上室R1と下室R2とを連通する通路2a,2bが設けられ、通路2aの図中上端は減衰力発生要素である積層リーフバルブV1にて閉塞され、他方の通路2bの図中下端も減衰力発生要素である積層リーフバルブV2によって閉塞されている。
この積層リーフバルブV1,V2は、共に環状に形成され、内周側にはピストンロッド15の小径部15aが挿入され、積層リーフバルブV1,V2の撓み量をそれぞれ規制する環状のバルブストッパ16,17およびピストンロッド15に装着される環状のクッション31の下方への移動を規制するクッションストッパ32とともにピストン2に積層されている。
なお、クッションストッパ32は、ピストンロッド15に内設される他方側流路6を閉塞しないように、孔32aを備えている。
そして、積層リーフバルブV1は、緩衝装置Dの収縮時に下室R2と上室R1の差圧によって撓んで開弁し通路2aを開放して下室R2から上室R1へ移動する液体の流れに抵抗を与え、緩衝装置Dの伸長時には通路2aを閉塞するようになっており、他方の積層リーフバルブV2は、積層リーフバルブV1とは反対に緩衝装置Dの伸長時に通路2bを開放し、収縮時には通路2bを閉塞する。すなわち、積層リーフバルブV1は、緩衝装置Dの収縮時における圧側減衰力を発生する要素であり、他方の積層リーフバルブV2は、緩衝装置Dの伸長時における伸側減衰力を発生する要素である。このように、通路を一方通行とする場合には、緩衝装置Dのように、通路2a,2bを設けてそれぞれを緩衝装置Dの伸長時あるいは収縮時のみ液体が通過するように構成してもよく、また、通路が双方向流れを許容する場合には一つのみを設けるようにしてもよい。
そして、ピストンロッド15の螺子部15bには、上記バルブストッパ17の下方から圧力室R3を形成するハウジング4が螺着され、このハウジング4によって、上記したピストン2、積層リーフバルブV1,V2およびバルブストッパ16,17、クッションストッパ32がピストンロッド15に固定されている。このように、ハウジング4は、内部に圧力室R3を形成するだけでなく、ピストン2をピストンロッド15に固定する役割をも果たしている。なお、クッションストッパ32は、ピストンロッド15に溶接して設けることも可能であるが、このように、ハウジング4で固定することができるので緩衝装置Dの組立が容易となる利点がある。
このハウジング4について説明すると、ハウジング4は、ピストンロッド15の螺子部15bに螺合される鍔22付の内筒21と、上記鍔22の外周から延設される有底筒状の外筒23とを有してなり、この内筒21および外筒23で下室R2内に圧力室R3を画成している。
内筒21は、上述のように鍔22を備え、その内周には螺子部21aが形成され、この螺子部21aをピストンロッド15の螺子部15bに螺着することによって、ハウジング4をピストンロッド15の小径部15aに固定することが可能なようになっている。
そして、外筒23は、筒部24の図2中上端を内筒21の鍔22の外周側に加締めることによって内筒21と一体とされている。なお、内筒21と外筒23との一体化に際し、上記加締め加工以外にも溶接等の他の方法を採用することも可能である。また、外筒23の外周の断面形状を真円以外の形状、たとえば、一部を切欠いた形状や、六角形等の形状としておけば、ハウジング4をピストンロッド15の先端に螺着する作業が容易となる。
また、外筒23の底部25には、一方側流路5の一部を構成する固定オリフィス12が設けられている。なお、外筒23は、筒部24と底部25とが筒部24と底部25を別部材として構成してもよい。
そして、上記した内筒21および外筒23で形成される圧力室R3内には、フリーピストン9が摺動自在に挿入され、このフリーピストン9によって圧力室R3内は、他方側流路6によって上室R1に連通される他方室8と、固定オリフィス12によって下室R2に連通される一方室7とに連通されている。
このフリーピストン9は、有底筒状に形成されてその筒部9aを外筒23における筒部24の内周に摺接させており、また、底部9bには底部25の方向に突出する凸部9cを備えている。
さらに、このフリーピストン9に、フリーピストン9の圧力室R3に対する変位量に比例してその変位を抑制する附勢力を作用させるバネ要素10として、内筒21の鍔22とフリーピストン9の底部9b内側との間、および、外筒23の底部25とフリーピストン9の底部9b外側との間にそれぞれ、コイルバネ18,19を介装してあり、これらコイルバネ18,19によってフリーピストン9は圧力室R3内の所定の中立位置に位置決められた上で弾性支持されている。
コイルバネ18の図中下端は、フリーピストン9の筒部9aの最深部内周に嵌合されて半径方向に位置決められ、また、コイルバネ19の内周にフリーピストン9の凸部9cが挿通されることによって、著しい位置ずれが防止されており、これによって安定的にフリーピストン9に附勢力を作用させることが可能となり、また、フリーピストン9が外筒23に対し軸ぶれ等を起こして摺動抵抗が大きくなってしまうことが無いようになっている。
なお、フリーピストン9の筒部9aの内周は、その最深部に比較して拡径されており、これにより、コイルバネ18が圧縮されて巻線径が拡大した際にコイルバネ18の線材が筒部9aの内周に擦れることが無く、コンタミネーションの発生を防止している。
また、フリーピストン9は、筒部9aを外筒23の内周への摺接部としていることから、摺動部の軸方向長さの確保が容易で、これによっても、フリーピストン9の軸ぶれが抑制される。
そして、フリーピストン9には、その筒部9a外周に円周に沿って形成される環状溝9dが設けられ、さらに、フリーピストン9の肉厚内部を通り環状溝9dと一方室7とを連通する孔9eが設けられている。
また、外筒23における筒部24には、一方の作動室たる下室R2と外筒23内を連通する二つの可変オリフィス11,11が設けられており、この可変オリフィス11,11は、フリーピストン9がバネ要素10によって弾性支持されて中立位置にあるときには必ず上記環状溝9dに対向して一方室7と下室R2とを連通するとともに、フリーピストン9がストロークエンドまで変位する、すなわち、内筒21における鍔22の下面あるいは外筒23の筒部24の内周に設けた段部26に当接するまで変位するとフリーピストン9の筒部9aの外周に完全にオーバーラップされて閉塞されるようになっている。すなわち、この場合、一方側流路5は、環状溝9d、可変オリフィス11,11、孔9eおよび固定オリフィス12で構成されている。
なお、フリーピストン9の軸方向への移動は、内筒21の鍔22および外筒23の段部26によって制限され、鍔22はフリーピストン9のストローク範囲の上限を、段部26はフリーピストン9のストローク範囲の下限をそれぞれ決定している。
つまり、この緩衝装置Dの場合、フリーピストン9の外周に設けた環状溝9dが外筒23の筒部24に設けた可変オリフィス11,11に対向している状態では、可変オリフィス11,11によって下室R2と一方室7とが連通されるが、フリーピストン9は図2中上下方向のいずれかに変位して可変オリフィス11,11が外筒フリーピストン9の筒部9aの外周で閉塞され始めると、フリーピストン9の変位量の増加に伴って徐々に可変オリフィス11,11の流路面積が減少し、フリーピストン9がストロークエンドに達する以前に、可変オリフィス11,11が完全に筒部9aの外周に対向して閉塞され、一方側流路5における流路抵抗が最大となり一方室7が固定オリフィス12のみによって下室R2に連通されるようになっている。
したがって、フリーピストン9の変位に対する一方側流路5における流路面積は、図3の線Zに示すように、可変オリフィス11におけるフリーピストン9の外周で閉塞されていない部分の面積(図中破線)と、固定オリフィス12の開口面積(図中一点鎖線)を合算したものとなる。すなわち、フリーピストン9の中立位置からの所定量変位すると、その後の変位量の増加に対して、上記流路面積が漸減する。さらに、フリーピストン9がストロークエンド手前まで変位すると可変オリフィス11,11が完全に閉塞されるので、図3中左右端に可変オリフィス11,11が完全に閉塞される領域Y1,Y2が形成されて、この領域Y1,Y2では一方側流路5における流路面積が最小値をとるようになる。
他方、バイパス路20は、フリーピストン9が中立位置にある場合には閉塞されるとともにフリーピストン9が所定位置を越えて変位すると開放されて他方の作動室たる上室R1を一方の作動室たる下室R2へ連通するようになっている。
具体的には、バイパス路20は、外筒23の筒部24の図2中上方に設けた通孔27と、フリーピストン9の筒部9aに設けた一対の連通孔28,29とで構成されている。
このバイパス路20について、詳しく説明すると、通孔27は、外筒23の筒部24の内周に設けた環状溝27aに通じて、一方の作動室たる下室R2をハウジング4内に連通するようになっている。
さらに、連通孔28,29は、フリーピストン9の筒部9aの肉厚を貫通して常に他方室8に通じており、フリーピストン9が中立位置から上方に変位して上方側の所定位置まで変位すると、連通孔29が環状溝27aに対向して連通孔29と通孔27とで下室R2と他方室8とを連通し、この他方室8を経由して一方の作動室である下室R2と他方の作動室である上室R1とを連通するようになる。他方、フリーピストン9が中立位置から下方に変位して下方側の所定位置まで変位すると、連通孔28が環状溝27aに対向して連通孔28と通孔27とで下室R2と他方室8とを連通し、この他方室8を経由して一方の作動室である下室R2と他方の作動室である上室R1とを連通するようになる。このように、フリーピストン9は中立位置から上下の両方向に変位する事になり、バイパス路20もフリーピストン9の両側どちらへ変位しても最終的には開放される必要があるため、バイパス路20が開放されるタイミングとなるフリーピストン9の所定位置は、中立位置を基準として上方側および下方側の両側で設定されることになる。
そして、フリーピストン9の変位方向に寄らず、フリーピストン9が上下の所定位置を越えて変位するとストロークエンドまで、連通孔28あるいは連通孔29が環状溝27aに対向して一方の作動室である下室R2と他方の作動室である上室R1との連通状態を維持するようになっている。すなわち、この実施の形態の場合、バイパス路20は、上記通孔27と連通孔28,29とで構成されており、当該バイパス路20は、フリーピストン9が上下の所定位置を越えて変位するとストロークエンドまで下室R2と上室R1とを連通状態とするようになっている。
また、フリーピストン9が上下の所定位置に達してから完全に環状溝27aと連通孔28,29とが対向するまでは、その変位量に応じて徐々に環状溝27aと連通孔28,29との対向する面積が増加するようになっているため、フリーピストン9が所定位置を越えて変位してバイパス路20が開放され始めてから環状溝27aと連通孔28,29とが完全に対向してバイパス路20の流路面積が最大となるまで、バイパス路20はフリーピストン9の中立位置からの変位量に応じて流路面積を増大させるようになっている。
なお、この実施の形態の場合、バイパス路20が開放されるタイミングは、フリーピストン9の中立位置からの変位によって可変オリフィス11,11がフリーピストン9の筒部9aの外周で閉塞され始めて一方側流路5の流路面積が減少され始めるタイミングと同期するようになっており、フリーピストン9の上方側の所定位置は、フリーピストン9の環状溝9dの図2中下端が可変オリフィス11,11の図2中下端を上方側へ越える位置、つまり、フリーピストン9の中立位置からの変位量が所定量となる位置とされて、さらに、フリーピストン9の下方側の所定位置は、フリーピストン9の環状溝9dの図2中上端が可変オリフィス11,11の図2中上端を下方側へ越える位置、つまり、フリーピストン9の中立位置からの変位量が所定量となる位置とされている。
さらに、この場合、連通孔28,29における流路面積が可変オリフィス11,11と固定オリフィス12における流路面積と同じに設定され、フリーピストン9の変位によって可変オリフィス11,11が閉塞され始めてから完全に閉塞されるまでの間に、バイパス路20では環状溝27aと連通孔28,29とが対向し始めてから完全に対向して流路面積を増加させるようになっており、図3の線Xで示すように、フリーピストン9の変位に対する一方側流路5の流路面積の減少量に応じてバイパス路20側で流路面積を増大させ、最終的には、完全開放される一方側流路5の流路面積と同じ流路面積まで増加させるようになっている。
また、通孔27を直接連通孔28,29に対向させてバイパス路20を開放するようにしてもよいが、環状溝27aを設けて環状溝27aを介してバイパス路20を開放するようにしているので、通孔27と連通孔28,29の円周方向への位置ずれが生じても確実にバイパス路20を開放することが可能である。
なお、摺動隔壁30は、下室R2側に凹部を備えており、緩衝装置Dが最収縮した際には、上記ハウジング4の外筒23における底部25の先端が上記凹部に侵入することを許容しており、単筒型に構成される緩衝装置Dにピストンロッド15の先端にハウジング4を設けることによるストローク長さのロスが、上記底部25形状および摺動隔壁30の凹部によって緩和されることになる。
緩衝装置Dは以上のように構成されるが、続いて緩衝装置Dの作動について説明する。
(A)フリーピストン9における中立位置からの変位量がバイパス路20を開放しない範囲内である場合
この場合、フリーピストン9の変位量は一方側流路5の抵抗を変化させる所定量に達しないため、緩衝装置Dの減衰特性は、通路2a,2bの積層リーフバルブV1,V2が液体の流れに与える抵抗C1、他方側流路6が液体の流れに与える抵抗C2、一方側流路5における固定オリフィス12および可変オリフィス11,11が液体の流れに与える抵抗C3、フリーピストン9の受圧面積Aおよびバネ要素10のバネ定数K(この場合、コイルバネ18,19によって合成されるバネ定数)によって設定される。
すなわち、上記式(1)および式(2)における係数C1が通路2a,2bの積層リーフバルブV1,V2が液体の流れに与える抵抗で、係数C2が、他方側流路6が液体の流れに与える抵抗で、係数C3が一方側流路5における固定オリフィス12および可変オリフィス11,12が液体の流れに与える抵抗で決定されることになる。なお、この実施の形態の場合、式(1)、(2)において、差圧Pは上室R1と下室R2との差圧を示し、流量Qは上室R1から下室R2へ移動する流量を示し、流量Q1は通路2a,2bを通過する液体の流量を示し、流量Q2は上室R1から他方室8へ移動する液体の流量を示している。
そして、フリーピストン9における中立位置からの変位量が可変オリフィス11を閉塞し始めない範囲内である場合、緩衝装置Dの周波数伝達関数G(jω)の周波数Fに対するゲイン特性は、図4のボード線図に示したように、Fa=K/{2・π・A・(C1+C2+C3)}とFb=K/{2・π・A・(C2+C3)}の2つの折れ点周波数を持ち、また、F<Faの領域においては、伝達ゲインは略C1となり、Fa≦F≦Fbの領域においてはC1からC1・(C2+C3)/(C1+C2+C3)まで漸減するように変化し、F>Fbの領域においてはC1・(C2+C3)/(C1+C2+C3)となる。
そして、上記から得られた周波数伝達関数G(jω)のゲイン特性を減衰係数ζに換算するために、|G(jω)|にピストン2の受圧面積Bを2乗したものを乗じると、周波数Fに対する減衰力の変化である減衰特性、位相Φと周波数Fとの関係は、図5に示すがごとくとなる。なお、減衰特性は図4中実線で示し、位相Φは図5中破線で示してある。
この図5から明らかなように、この緩衝装置Dは、周波数Fが折れ点周波数Faより低いときには、高い減衰力を発生し、周波数Fが折れ点周波数Fbより高いときには、低い減衰力を発生し、周波数Fが折れ点周波数Fa以上折れ点周波数Fb以下のときには、徐々に減衰力が漸減するような減衰特性を持つことが理解できよう。
したがって、折れ点周波数Fa,Fbは、上記したところから、係数C1,C2,C3と、フリーピストン9の受圧面積である断面積Aと、バネ要素10のバネ定数Kによって設定でき、また、減衰係数ζは、上記係数C1,C2,C3とピストン2の受圧面積Bによって設定することができるのであり、この緩衝装置Dにあっては、上記各関係の係数C1,C2,C3、フリーピストン9の受圧面積Aおよびバネ要素10のバネ定数Kによって減衰特性が設定されることになる。
そして、この係数C1,C2,C3は、上述の各流路の抵抗によって決まる値であることから、周波数Fに対する減衰係数ζの変化量の調整、および、折れ点周波数Fa,Fbの調整も容易となる。
すなわち、この緩衝装置Dの減衰力の変化を入力振動周波数に依存させることができ、また、その調整も非常に容易となるのであり、この緩衝装置Dにあっては、速度の大小と入力振動周波数に依存した減衰特性を出力するので、車両が路面の凹凸を乗り越えるような入力振動周波数が高い場面においては従来緩衝装置よりも低い減衰力を確実に発生させることができ、また、車両が旋回中等の入力振動周波数が低い場面においては従来緩衝装置よりも高い減衰力を確実に発生できる。
さらに、バイパス路20が開放されない状況とは、緩衝装置Dに入力される振動の周波数および速度が低い状況であり、そのため、バネ要素10であるコイルバネ18,19によって附勢されたフリーピストン9の中立位置からの変位量も小さく、バイパス路20も開放されない。このような低周波数の振動に対しては、緩衝装置Dは、高い減衰力を発生して、車体のロールをしっかり抑制して車両の姿勢を安定させるように機能する。
また、その減衰特性の調整が容易であることから、規格の異なる種々車両へ緩衝装置Dを適用する際、手探りでその車両にマッチした減衰特性を実現するような煩雑な調整作業の必要が無く、その設計、チューニングも容易となる。
さらに、複数の折れ点周波数Fa,Fbのうち最小値を採る折れ点周波数Fa以外の折れ点周波数Fb値を車両のバネ下共振周波数の値以下に設定する場合には、緩衝装置Dは、バネ下共振周波数の振動が入力されると、必ず、低い減衰力を発生することになるので、車両における乗り心地を損なうことが無い。
そして、入力振動周波数Fが折れ点周波数Fbを超える領域では、減衰係数ζの位相遅れが無くなる傾向となり、振動入力に対して減衰力の発生が遅れることなく追随するので、この点でも車両における乗り心地を損なうことがない。
また、最小値の折れ点周波数Faの値を車両のバネ上共振周波数の値以上であってバネ下共振周波数の値以下に設定されるようにすることで、緩衝装置Dは、バネ上共振周波数の振動の入力に対して、確実に高い減衰力を発生することができ、車両の姿勢を安定させて、車両旋回時に、搭乗者に不安を感じさせることを防止でき、また、折れ点周波数Faより低い周波数領域では減衰係数ζの位相遅れが無くなる傾向となり、振動入力に対して減衰力の発生が遅れることなく追随するので、この点でも、搭乗者に違和感や不安を与えることがない。
(B)フリーピストン9の中立位置からの変位量がバイパス路20を開放する範囲内である場合の動作
転じて、フリーピストン9の中立位置からの変位量がバイパス路20を開放する変位量となる場合の緩衝装置Dの動作について説明する。
この場合、バイパス路20はフリーピストン9の変位量に応じて徐々に流路面積を増大させてフリーピストン9がストロークエンドに到達する直前に流路面積を最大とする。また、可変オリフィス11は、フリーピストン9の変位量に応じて徐々に流路面積を小さくし、フリーピストン9がストロークエンドに付近まで到達すると完全に閉塞され、一方側流路5は流路面積を固定オリフィス12の流路面積と同じくして最小とする。
ここで、フリーピストン9がストロークエンドまで変位するのは、一方室7もしくは他方室8への液体の流出入量が多い場合であり、具体的には、緩衝装置Dの振動の振幅が大きく周波数が高い場合である。
緩衝装置Dの振動周波数が比較的高い場合、緩衝装置Dは、フリーピストン9が可変オリフィス11を閉塞し始める位置へ変位するまでは、比較的低い減衰力を発生しているが、フリーピストン9が可変オリフィス11を閉塞し始める位置を越えて変位するようになると、徐々に一方側流路5の流路抵抗が徐々に大きくなっていくので、フリーピストン9のそれ以上のストロークエンド側への移動速度が減少される。
したがって、一方側流路5を介しての一方室7と下室R2との液体の移動量が減少し、緩衝装置Dに入力振動周波数に依存した減衰力を発生させ難くなって、振動周波数が高い場合、低い減衰力を発生していたところ減衰力が高くなってしまうことになりかねないが、この緩衝装置Dの場合、フリーピストン9が可変オリフィス11を閉塞し始める位置を越えて変位する場合には、バイパス路20を開放させるようになっており、バイパス路20が他方室8を介して一方の作動室たる下室R2と他方の作動室たる上室R1とを連通状態として、一方側流路5を介しての一方室7と下室R2との液体の移動量の減少による通路2a,2bを介しての液体の移動量の増加を抑制して、緩衝装置Dの発生減衰力の増加が阻止されることになる。
つまり、フリーピストン9がストロークエンドまで変位してしまうような高周波数で大振幅の振動が緩衝装置Dに対し入力されて、フリーピストン9がストロークエンドに達するような状況になる場合、一方側流路5を介しての液体の移動は減少し最終的には皆無となるが、代わりに通路2a,2bを迂回するバイパス路20が開放されて、緩衝装置Dの減衰力が急激に大きくなってしまう事態の発生を防止する。
すなわち、フリーピストン9がストロークエンドに達して圧力室R3内と下室R2との液体の移動ができなくなるときに急激に減衰力が増大してしまうことがなくなり、高周波数かつ大振幅の振動の入力に対して緩衝装置Dの発生減衰力を低く維持することができる。
さらに、フリーピストン9が圧力室R3における両端側のストロークエンドまで到る際に、バイパス路20が開放されるので、減衰力の増大を阻止する機能は、緩衝装置Dの伸圧の両行程で発揮される。
したがって、この緩衝装置Dにあっては、高周波数で振幅が大きい振動が入力されても、発生減衰力を低く維持することができるので、車体に突き上げられるようなショックを発生させず、搭乗者に減衰力の変化によるショックを知覚させずにすみ、車両における乗り心地を向上することができ、特に、急激な減衰力変化によって車体が振動しボンネットが共振して異音が発生してしまう事態も防止でき、この点でも車両における乗り心地を向上することができる。
さらに、上記したところでは、バイパス路が、ハウジング4とフリーピストン9に設けた通孔27と連通孔28,29によって形成されているので、もともと可動部材であるフリーピストン9を利用してバイパス路20を緩衝装置Dに設けることが安価且つ容易となる点で製造上有利であるとともに、緩衝装置Dをコンパクト化することができ車両への搭載性が向上して、緩衝装置Dを実用性に富むものとすることができるが、別途、バイパス路と、当該バイパス路の開閉を司るフリーピストン9に連動する可動部材とを設けることを妨げない。
ところで、フリーピストン9のストローク範囲を充分に長くすることでストロークエンドまでの到達を事実上不能として、高周波振動入力時における減衰力の増大を阻止することも可能であるが、フリーピストン9のストローク範囲を長くすると緩衝装置Dのピストンロッド15のストローク長がその分短くなるという新たな不具合が招来されることになる。これに対して、本発明の緩衝装置Dでは、フリーピストン9が所定位置まで変位するとバイパス路20を開放するようにしたので、ストローク長を損することなく高周波振動入力時における減衰力の増大を阻止することができる。
なお、上述したように、緩衝装置Dの発生減衰力が高周波振動入力時に高くなるのは、フリーピストン9が移動範囲限界まで変位してしまうためであり、バイパス路20は、高周波振動の入力時に減衰力が高くなってしまう事態を防止するために開放されればよいから、バイパス路20の開放は、フリーピストン9がストロークエンドに達するときを含めてそれ以前であればよい。
すなわち、バイパス路20が開放されるフリーピストン9の上側および下側の所定位置は、ストロークエンドとなる移動上限および移動下限を含んでそれ以前に設定されればよく、また、必ずしも、上記作用効果を奏するうえでは、一方側流路5の流路面積の減少に同期させてバイパス路20を開放させる必要は無いが、本実施の形態のように、フリーピストン9の変位に応じて一方側流路5の流路面積を徐々に減少させるのに対して、一方側流路5の流路面積の減少に同期させてバイパス路20を開放して一方側流路5の流路面積の減少量に応じて流路面積を増加させるようにしておくことによって、減少する一方側流路5を介しての一方室7と下室R2との液体の移動量をバイパス路20で肩代わりすることができ、フリーピストン9の変位量に対して緩衝装置Dの発生減衰力が殆ど変化させないようにすることができ、より一層車両における乗り心地を向上することが可能である。
ここで、バイパス路20が開放されるタイミングを一方側流路5の流路面積の減少に同期させずに、たとえば、可変オリフィス11,11の流路面積が減少され始めてからバイパス路20が開放されるように設定され、緩衝装置Dに作用する振動周波数がおける高い場合、一方側流路5の流路面積の減少は上記したC1・(C2+C3)/(C1+C2+C3)の伝達ゲイン中の係数C3の増加を意味し、バイパス路20が開放されるまではフリーピストン9の変位量の増加に伴って一方側流路5の流路面積が徐々に減少して緩衝装置Dの発生減衰力が滑らかではあるが徐々に大きくなることになる。その後、フリーピストン9の変位が増加してバイパス路20の開放されると、滑らかに大きくなった減衰力は速やかに低下することになる。つまり、バイパス路20が開放されるタイミングを一方側流路5の流路面積の減少に同期させることで、緩衝装置Dの発生減衰力の上昇を抑制して低い減衰力を維持することが可能となるのである。
なお、バイパス路20の開放の有無は別にして、フリーピストン9がストロークエンドに達する前に各可変オリフィス11,11が完全に閉塞されるように設定されているので、フリーピストン9がストロークエンドに達するような状況となっても、フリーピストン9が急激にストロークエンドまで変位してしまうようなことがなく、この点でも減衰力変化が急激となるようなことが無い。すなわち、フリーピストン9がストロークエンドに達しても可変オリフィス11,11のいずれかが開放された状態となってフリーピストン9の移動が急となって緩衝装置Dの発生減衰力の変化が大きくなる傾向となるが、このような不具合の発生が防止されるのである。さらに、図3に示したように、フリーピストン9の両側のストロークエンドの近傍からストロークエンドに到達する前に領域Y1,Y2において、可変オリフィス11,11が完全に閉塞されるようになっているから、可変オリフィス11,11の口径、開穿位置、環状溝9dの位置や幅に多少の寸法誤差があっても、確実に可変オリフィス11,11をストロークエンドで閉塞することが可能となるため、緩衝装置Dの減衰力変化が伸縮両行程で均一となるばかりでなく、製品毎にばらつきが生じる事を防止でき、さらには、狙い通りに減衰力変化をなだらかにできない等の不具合の発生を阻止することができる。
また、この緩衝装置Dにあっては、フリーピストン9がバネ要素10によって、フリーピストン9を中立位置に戻す附勢力が作用しているので、緩衝装置Dの伸縮動作の反転時に、バイパス路20が開放されたままとなってしまうことがなく、反転初期から応答性良く減衰力を発生させることができる。
なお、可変オリフィス11,11の数は一つでも、三つ以上としてもよく、一方側流路5の流路面積をフリーピストン9の中立位置からの変位の増加に伴って減少させるようにしておくことができれば、外筒23の筒部24に設ける位置についても任意である。
最後に、一実施の形態の変形例における緩衝装置D1について説明する。この緩衝装置D1にあっては、図6に示すように、緩衝装置Dとバイパス路40の構成が異なるのみで他の部位については異なることが無いので、この異なる部位について説明することとし、同じ部位については同じ符号を付するのみとしてその詳しい説明を省略する。
この緩衝装置D1では、図6に示すように、フリーピストン9が中立位置にある場合にフリーピストン9の筒部9aの外周で閉塞されるとともにフリーピストン9が一方側となる図6中下方へ所定位置まで変位すると一方の作動室たる下室R2を他方室8へ連通する通孔41が外筒23の筒部24に形成され、他方、フリーピストン9には、フリーピストン9の外周から開口しフリーピストン9が他方側となる図6中上方へ所定位置まで変位すると上記通孔41に対向して一方の作動室たる下室R2と他方室8とを連通する連通孔42が一つ設けられ、この通孔41と連通孔42とでバイパス路40が形成されている。
そして、このバイパス路40は、上記下一実施の形態における緩衝装置Dにおけるバイパス路20と同様、フリーピストン9が中立位置にある場合には閉塞されるとともにフリーピストン9が所定位置を越えて変位すると開放されて他方の作動室たる上室R1を一方の作動室たる下室R2へ連通するようになっている。
詳しくは、バイパス路40を構成する通孔41は、外筒23の筒部24の肉厚を貫通して、一方の作動室たる下室R2をハウジング4内に連通するようになっており、フリーピストン9が中立位置にある場合には、フリーピストン9の筒部9aの外周に対抗して閉塞される一方フリーピストン9が図6中下方へ変位して下側の所定位置まで到達すると、筒部9aの図6中上端が通孔41の上端より下方に位置するようになって通孔41を通じて下室R2と他方室8とが連通し、この他方室8を経由して一方の作動室である下室R2と他方の作動室である上室R1とを連通するようになる。
さらに、連通孔42は、フリーピストン9の筒部9aの肉厚を貫通してフリーピストン9の外周に設けた環状溝43と他方室8とを常に連通し、フリーピストン9が中立位置から図6中上方に変位して上方側の所定位置まで変位すると、環状溝43が通孔41に対向して連通孔42と通孔41とで下室R2と他方室8とを連通し、この他方室8を経由して一方の作動室である下室R2と他方の作動室である上室R1とを連通するようになる。
そして、フリーピストン9の変位方向に寄らず、フリーピストン9が上下の所定位置を越えて変位するとストロークエンドまで、通孔41のみが下室R2と上室R1とを連通し、あるいは、通孔41と環状溝43とが対向して下室R2と上室R1とを連通して、その連通状態を維持するようになっている。
また、フリーピストン9が上下の所定位置に達してから、筒部9aの上端が通孔41の下端より下方側になるか、環状溝43と通孔41とが完全に対向するまでは、その変位量に応じて徐々にバイパス路40の流路面積が増加するようになっているため、フリーピストン9が所定位置を越えて変位してバイパス路40が開放されるとフリーピストン9の変位量に応じて流路面積を増大させるようになっている。
なお、この実施の形態の場合にあっても、バイパス路40が開放されるタイミングは、フリーピストン9の中立位置からの変位によって可変オリフィス11,11がフリーピストン9の筒部9aの外周で閉塞され始めて一方側流路5の流路面積が減少され始めるタイミングと同期するようになっており、フリーピストン9の上方側の所定位置は、フリーピストン9の環状溝9dの図6中下端が可変オリフィス11,11の図6中下端を上方側へ越える位置、つまり、フリーピストン9の中立位置からの変位量が所定量となる位置とされて、さらに、フリーピストン9の下方側の所定位置は、フリーピストン9の環状溝9dの図6中上端が可変オリフィス11,11の図6中上端を下方側へ越える位置、つまり、フリーピストン9の中立位置からの変位量が所定量となる位置とされている。
さらに、この場合、通孔41における流路面積が可変オリフィス11,11と固定オリフィス12における流路面積と同じに設定され、フリーピストン9の変位によって可変オリフィス11,11が閉塞され始めてから完全に閉塞されるまでの間に、フリーピストン9の変位に対する一方側流路5の流路面積の減少量に応じてバイパス路40側で流路面積を増大させ、最終的には、完全開放される一方側流路5の流路面積と同じ流路面積まで増加させるようになっている。
したがって、一実施の形態と同様に、フリーピストン9がストロークエンドまで変位してしまうような高周波数で大振幅の振動が緩衝装置D1に対し入力されて、フリーピストン9がストロークエンドに達するような状況になる場合、一方側流路5を介しての液体の移動は減少し最終的には皆無となるが、代わりに通路2a,2bを迂回するバイパス路40が開放されて、緩衝装置D1の減衰力が急激に大きくなってしまう事態の発生を防止する。
すなわち、フリーピストン9がストロークエンドに達して圧力室R3内と下室R2との液体の移動ができなくなるときに急激に減衰力が増大してしまうことがなくなり、高周波振動の入力に対して緩衝装置D1の発生減衰力を低く維持することができる。
さらに、フリーピストン9が圧力室R3における両端側のストロークエンドまで到る際に、バイパス路40が開放されるので、減衰力の増大を阻止する機能は、緩衝装置Dの伸圧の両行程で発揮される。
したがって、この緩衝装置D1にあっても、高周波数で振幅が大きい振動が入力されても、発生減衰力を低く維持することができるので、車体に突き上げられるようなショックを発生させず、搭乗者に減衰力の変化によるショックを知覚させずにすみ、車両における乗り心地を向上することができ、特に、急激な減衰力変化によって車体が振動しボンネットが共振して異音が発生してしまう事態も防止でき、この点でも車両における乗り心地を向上することができ、その他上記の作用効果についても享受することが可能である。
そして、バイパス路40が、ハウジング4とフリーピストン9に設けた通孔41と連通孔42によって形成されているので、もともと可動部材であるフリーピストン9を利用してバイパス路40を緩衝装置D1に設けることが安価且つ容易となる点で製造上有利であるとともに、緩衝装置D1をコンパクト化することができ車両への搭載性が向上して、緩衝装置D1を実用性に富むものとすることができる。
また、この変形例における緩衝装置D1にあっては、ハウジング4側に設けられる通孔41がフリーピストン9が一方側となる図6中下方へ所定位置まで変位すると一方の作動室たる下室R2を他方室8へ連通するようになっているので、フリーピストン9に設けられる連通孔42を一つ設けるのみでバイパス路40を構成することができ、バイパス路40の構成が簡単となり、加工コストが低減される。さらに、連通孔42が一つですむ事からフリーピストン9の環状溝9dと外筒23の筒部24に設けられる通孔41との間の距離を一実施の形態に比較して長く設定することが可能であるので、下室R2と一方室7とが外筒23の筒部24の内周とフリーピストン9の外周との嵌合隙間を介しての連通を一実施の形態における緩衝装置D以上に阻止でき、外筒23やフリーピストン9の寸法のばらつきによる製品毎の緩衝装置D1における発生減衰力のばらつきを小さくすることができる。
なお、上記した各実施の形態においては、バイパス路20,40の最大流路面積と、可変オリフィス11と固定オリフィス12の最大流路面積を合算したものと同じに設定しているが、異なるように設定してもよく、その場合にも、上記作用効果が失われることはない。
また、各実施の形態における緩衝装置は、いわゆる単筒型の緩衝器として構成されているが、これをシリンダの外方にシリンダを覆うように形成される環状のリザーバを備えた複筒型の緩衝器として構成されてもよいし、また、シリンダの外方に全く別体のリザーバタンクを備えた緩衝器として構成とされてもよい。
さらに、各実施の形態では、圧力室がシリンダ内に形成されているが、シリンダ外に設けることも可能である。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
一実施の形態における具体的な緩衝装置の縦断面図である。 一実施の形態における緩衝装置のピストン部の拡大縦断面図である。 一実施の形態の緩衝装置におけるフリーピストンの変位に対する一方側流路の流路面積の変化を示した図である。 流量に対する圧力の周波数伝達関数のゲイン特性を示したボード線図である。 減衰係数、位相と周波数との関係を示した図である。 一実施の形態の変形例における緩衝装置のピストン部の拡大縦断面図である。
符号の説明
1 シリンダ
2 ピストン
2a,2b 通路
4 ハウジング
5 一方側流路
6 他方側流路
7 一方室
8 他方室
9 フリーピストン
9a フリーピストンにおける筒部
9b フリーピストンにおける底部
9c フリーピストンにおける凸部
9d フリーピストンにおける環状溝
9e フリーピストンにおける孔
10 バネ要素
11 可変オリフィス
12 固定オリフィス
15 ピストンロッド
15a ピストンロッドにおける小径部
15b ピストンロッドにおける螺子部
16,17 バルブストッパ
18,19 バネ要素たるコイルバネ
20,40 バイパス路
21 ハウジングにおける内筒
21a 内筒における螺子部
22 内筒における鍔
23 ハウジングにおける外筒
24 外筒における筒部
25 外筒における底部
26 外筒における段部
27,41 通孔
28,29,42 連通孔
43 フリーピストンにおける環状溝
30 摺動隔壁
D,D1 緩衝装置
G 気体室
R1 他方の作動室たる上室
R2 一方の作動室たる下室
R3 圧力室
V1,V2 積層リーフバルブ

Claims (10)

  1. シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されシリンダ内を2つの作動室に区画する隔壁部材と、2つの作動室を連通する通路と、圧力室を形成するハウジングと、上記ハウジング内に摺動自在に挿入されて圧力室を一方側流路を介して一方の作動室に連通される一方室と他方側流路を介して他方の作動室に連通される他方室とに区画するフリーピストンと、フリーピストンの圧力室に対する変位を抑制する附勢力を発生するバネ要素とを備えた緩衝装置において、
    上記フリーピストンが中立位置から所定位置を越えて変位すると開放されて上記他方の作動室を上記一方の作動室へ連通するバイパス路を設け、上記一方側流路は、上記一方の作動室を上記一方室へ連通する可変オリフィスと、上記ハウジングに形成されて上記一方の作動室と上記一方室とを連通する固定オリフィスとを有し、上記バイパス路は上記フリーピストンの変位によって上記可変オリフィスの流路面積の減少が開始されるタイミングで開放されるようにしたことを特徴とする緩衝装置。
  2. バイパス路は、他方室を経由して他方の作動室を一方の作動室へ連通することを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
  3. バイパス路は、フリーピストンの中立位置からの変位量に応じて流路面積を増大させることを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝装置。
  4. フリーピストンの外周に一方室へ連通される環状溝を形成し、上記可変オリフィスがハウジングに形成されてフリーピストンが中立位置にあるときに上記環状溝に対向しながら一方の作動室を上記一方室へ連通させ、バネ要素がフリーピストンの上下に配置した一対のコイルバネで構成し、これらコイルバネによってフリーピストンが圧力室内の所定の中立位置に位置決められている請求項1から3のいずれかに記載の緩衝装置。
  5. バイパス路は、フリーピストンの変位による上記可変オリフィスの流路面積の減少量に対応して流路面積を増加させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の緩衝装置。
  6. バイパス路は、ハウジングに形成されてフリーピストンが中立位置にある場合にフリーピストンの外周で閉塞される通孔と、それぞれフリーピストンの外周から開口しフリーピストンが所定位置まで変位すると上記通孔に対向して一方の作動室と他方室とを連通する一対の連通孔とを備えて構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の緩衝装置。
  7. バイパス路は、ハウジングに形成されてフリーピストンが中立位置にある場合にフリーピストンの外周で閉塞されるとともにフリーピストンが一方側へ所定位置まで変位すると一方の作動室を他方室へ連通する通孔と、フリーピストンの外周から開口しフリーピストンが他方側へ所定位置まで変位すると上記通孔に対向して一方の作動室と他方室とを連通する連通孔とを備えて構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の緩衝装置。
  8. ハウジングの内周に通孔に連通される環状溝を設けたことを特徴とする請求項6に記載の緩衝装置。
  9. フリーピストンの外周に連通孔に連通される環状溝を設けたことを特徴とする請求項7に記載の緩衝装置。
  10. ハウジングは、ピストンロッドに螺合されてピストンロッドに嵌合される隔壁部材を該ピストンロッドに固定する鍔付の内筒と、上記鍔の外周から延設される有底筒状の外筒とを備えて圧力室を形成し、圧力室内には外筒の内周に摺接するフリーピストンが挿入されてなり、可変オリフィスは外筒に形成されてなることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の緩衝装置。
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