JP4996896B2 - 包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤 - Google Patents
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Description
上記ポリ乳酸の活用が期待される分野に接着剤がある。この接着剤の分野では、近年、環境保全及び製造時の安全衛生の観点から、水系エマルション接着剤が注目されており、用途も多岐化に亘り、性能もさらに高度なものが要求されている。
ポリ乳酸エマルションにあっては、特に包装フィルム用の接着剤への開発が期待されるが、ポリ乳酸エマルション接着剤は密着性に欠け、添加する乳化剤種によっては透明性を損なうなどの問題がある。
(1)特許文献1
耐水性及び熱接着性などを改善する目的で、ケン化度85.0%以上のPVA(ポリビニルアルコール)を乳化剤とする生分解性樹脂(ポリ乳酸を初めとする脂肪族ポリエステル系、アセチルセルロース系、化学変性デンプン系、ポリアミノ酸系などの樹脂)の水分散体が記載されている(請求項1、段落9)。
上記水分散体には必要に応じて、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体を増粘剤として含有できることが開示されている(段落29、31)。
ポリ乳酸などの生分解性樹脂と天然の粉体物質(麦皮、米ぬか、ふすまなど)を乳化剤で分散した生分解性樹脂エマルション型接着剤が開示されている(請求項1)。
上記乳化剤には、各種の界面活性剤や、PVA、PAM(ポリアクリルアミド)、結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる(段落14)。
尚、実施例1では、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトンをPVAで分散したエマルション型接着剤が開示されている(段落19)。
特定の粘度低下剤と生分解性ポリマー(ポリ乳酸、ポリリンゴ酸、ポリカプロラクトンなど;段落88)を含有させた水性分散液が開示されている(請求項1)。
これらは接着剤、インキ、塗料などに用いられ(段落13)、水性分散液にはセルロース、オリゴ糖、多糖類、修飾されたPVAなどを安定剤として含有できることが記載されている(請求項9、段落108)。
ポリ乳酸をアニオン性乳化剤とノニオン性乳化剤の共存下で分散させたポリ乳酸水性分散液が開示されている(請求項1)。
上記ノニオン性乳化剤には、PVA、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる(請求項6、段落14)。
また、分散液の安定性や皮膜の接着性を改良する目的で、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどを増粘剤として含有できることが記載されている(段落26、段落28)。
また、上記エマルション接着剤はエマルションの保存安定性が低かったり、密着性が不足する場合が少なくなく、この点からも実用性に乏しい。
このように、ポリ乳酸エマルションを包装フィルム用接着剤として活用しようとすれば、特に透明性を具備しながら、保存安定性や密着性を兼備させることは容易でないのが実情である。
本発明は、ポリ乳酸エマルションを使用して、透明性、密着性、並びに保存安定性に優れた包装フィルム用接着剤を開発することを技術的課題とする。
乳化剤が水溶性セルロース誘導体とアニオン性乳化剤であることを特徴とする包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤である。
即ち、ポリ乳酸に対して水溶性セルロース誘導体を乳化剤として単用すると良好な透明性を付与できる反面、保存安定性に問題があり、また、アニオン性乳化剤を単用すると密着性や保存安定性に問題が生じるが、これらを併用することで、優れた透明性を具備しながら、密着性や保存安定性にも優れた包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤を良好に製造できる。
また、ベースポリマーとして、ポリ乳酸にポリカプロラクトンなどの他種の生分解性樹脂を併用すると、エマルション接着剤の密着性をさらに向上できる(本発明5参照)。
尚、前記特許文献1〜4には、水溶性セルロース誘導体を乳化剤とするポリ乳酸エマルション又はエマルション接着剤の具体的な実施例は開示されていない。
本発明の接着剤は液体が何らかの化学変化で固体になって被着面に接着するものをいい、接着後に剥離すると基材と被着面の間でなき分かれを起こすため(接着剤が基材と被着面の両方に分離付着して、いわば凝集破壊的な現象を示すため)、接着後の剥離を前提せず、接着を主眼とするものである。
本発明のポリ乳酸は乳酸を重合して得られるポリエステル樹脂であれば特に制限されず使用できる。重合に用いられる乳酸はD−体、L−体を問わず、D−体とL−体の混合物であっても良い。なお、D−体とL−体の混合物を使用する場合には、D−体とL−体の使用割合は使用目的に応じて任意に決定できる。
また、上記ポリ乳酸は、ポリ乳酸のホモポリマーに限らず、コポリマー、ブレンドポリマーなどであっても良い。
上記コポリマーを形成する成分としては、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などに代表されるヒドロキシカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などに代表されるジカルボン酸、エチレングリコール、プロパンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、グリセリン、ソルビタン、ポリエチレングリコールなどに代表される多価アルコール、グリコリド、ε−カプロラクトン、δ−ブチロラクトンに代表されるラクトン類が挙げられる。
ポリ乳酸とブレンドするポリマーとしては、セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、再生セルロース、グリコーゲン、キチン、キトサン(修飾化工澱粉系樹脂)などが挙げられる。
ポリ乳酸の利用については、上述の範囲で使用することにより、樹脂の柔軟性を向上させるとともに、透明性を損なわず、経時的な物性低下の少ない、樹脂組成物を提供することができる。また、必要に応じて本発明で提示されるポリ乳酸を2種以上同時に使用しても良い。
本発明6に示すように、ポリ乳酸と他種の生分解性樹脂との混合割合は、固形分換算で、ポリ乳酸100重量部に対して生分解性樹脂5〜80重量部が適当であり、好ましくは30〜50重量部である。
上記水溶性セルロース誘導体は、主にセルロースの水酸基にヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルキル基が結合し、或は酢酸がエステル結合したセルロース誘導体などをいい、水溶性を確保するため、アルキル炭素数はC1〜C3程度が好ましい。
上記水溶性セルロース誘導体としては、本発明2に示すように、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースガムなどが好ましい。
上記セルロースガムは、ケン化されたセルロースにモノクロロ酢酸ナトリウムを反応させて作られた白色の粉末、或は粒状の半合成水溶性高分子セルロースをいう。
(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類
(2)ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムなどのアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル塩類
(3)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル塩類
(4)ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類
(5)モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸2ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩並びにその誘導体類
(6)アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどのアルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩並びにその誘導体類
本発明のエマルション接着剤においては、環境保全に資することを目的の一つとするため、アニオン性乳化剤のうちでも、生分解性の具備により環境負荷の小さなものが好ましい。具体的には、本発明3に示すように、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アクリル酸アミド・アクリル酸塩共重合体(例えば、アクリル酸アミド・アクリル酸ナトリウム共重合体)、アルキルスルホン酸金属塩、ポリオキシエチレン・スチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩より選択されたものが好ましい。
また、上記水溶性セルロース誘導体とアニオン性乳化剤のポリ乳酸に対する含有割合を示すと、本発明4に示すように、固形分換算で、ポリ乳酸100重量部に対して水溶性セルロース誘導体を0.1〜30重量部、アニオン性乳化剤を0.1〜30重量部の割合で夫々含有することが適当である。水溶性セルロース誘導体の好ましい割合は1〜5重量部、アニオン性乳化剤の好ましい割合は5〜10重量部である。
水溶性セルロース誘導体の含有量が0.1重量部より少ないと保存安定性を損ない(後述の比較例2参照)、30重量部を越えると増粘して乳化が困難になる。
また、アニオン性乳化剤の含有量が0.1重量部より少ないとエマルション化しないか、或は乳化粒子が微小にならず保存安定性を損ない(後述の比較例3参照)、30重量部を越えると密着性や保存安定性が低下する。
一方、水溶性セルロース誘導体とアニオン性乳化剤からなる乳化剤全体の割合は、固形分換算でポリ乳酸100重量部に対して0.1〜30重量部程度であり、いわば0.1〜30重量部の濃度内でセルロース誘導体とアニオン性乳化剤とがシェアを奪い合う形になる。
尚、使用する乳化剤全体での水溶性セルロース誘導体とアニオン性乳化剤の相互の含有比率は特に制限されない。
カチオン性乳化剤の使用も排除されないが、本発明で使用するアニオン性乳化剤の作用を低下させる恐れがあるため、その使用には注意を要する。
上記ノニオン系乳化剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーなどが挙げられる。
上記両性乳化剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの生成縮合物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物などが挙げられる。
上記合成高分子系乳化剤としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアマイド、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの重合性モノマーを2種以上重合させて得られる重合体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのアルカリ類で塩形成させて水に分散又は可溶化させた水分散性重合体などが挙げられる。
上記溶剤型乳化法は、粘着付与剤樹脂をメチレンクロライド等の塩素系炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、或は溶解可能な溶剤類などの有機溶剤に溶解させ、乳化剤と水を混合溶解した乳化水を予備混合して、粗粒子の水性エマルションを調製した後、各種ミキサー、コロイドミル、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機などを用いて微細乳化した後、常圧或は減圧下で加熱しながら上記有機溶剤を除去する方法である。
上記無溶剤乳化法は、常圧或は加圧下で溶融した粘着付与剤樹脂と乳化水を予備混合し、粗粒子の水性エマルションを調製した後、各種乳化分散機を用いて同様に微細乳化させる方法である。
また、上記転相乳化法は、常圧或は加圧下で粘着付与剤樹脂を加熱溶融した後、撹拌しながら乳化水を徐々に加えて先ず油中水型エマルションを形成させ、次いで水中油型エマルションに相反転させる方法であり、溶剤法或は無溶剤法いずれの方法でも可能である。
被着体としては、特に限定されず、例えば、SUS板、シート、フィルム、紙、各種繊維質素材からなる織布もしくは不織布等が用いられる。
上記シート、フィルム素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリ乳酸、乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸から誘導された乳酸系ポリマー、ポリブチレンサクシネート系ポリエステル、ポリカプロラクトン系樹脂、修飾澱粉系樹脂などを挙げることができる。
上記繊維質素材としては、例えば、麻、絹、綿、羊毛等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルナイロン、ポリプロピレン等の合成繊維を挙げることができる。織布としては、例えば、前記繊維質素材から作られた織物、編物等を挙げることができ、不織布としては、前記繊維質素材を化学的方法、機械的方法、又はそれらの組合せにより絡み合わせてウエッブとしたものが挙げられる。
本発明のポリ乳酸エマルション接着剤は、特に乾燥塗膜の透明性に優れるため、包装フィルム用の接着剤に好適であるが、その他にも、例えば、ラミネート用接着剤、製本用接着剤、紙加工用接着剤、木工用接着剤、電子・電気機器用接着剤、液晶表示素子(LCD)用接着剤、光学部品用接着剤、医療用接着剤などの一般の接着剤用途を初め、広い分野で利用できることはいうまでもない。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
下記の実施例1〜7のうち、実施例1〜4はアニオン性乳化剤の種類を固定し、水溶性セルロース誘導体の種類を変化させた例、実施例5〜6はベースポリマーとしてポリ乳酸と他種の生分解性樹脂を併用した例、実施例7は実施例1〜6で使用したアニオン性乳化剤の種類を変えた例である。
また、下記の比較例1〜6のうち、比較例1は乳化剤にPVAとアニオン性乳化剤を併用した例である。比較例2は乳化剤としてアニオン性乳化剤のみを単用し、水溶性セルロース誘導体を使用しないブランク例である。比較例3は水溶性セルロース誘導体のみを単用し、アニオン性乳化剤を使用しないブランク例である。比較例4は水溶性セルロース誘導体とノニオン性乳化剤を併用した例である。比較例5は水溶性セルロース誘導体とPVAを併用した例である。比較例6は水溶性セルロース誘導体と両性乳化剤を併用した例である。
先ず、あらかじめ225部の水に、ヒドロキシエチルセルロース(メトローズ60SH-50、信越化学社製)3.0部及びアニオン性乳化剤(ハイテノールNF-13、第一工業製薬社製)7.5部を固形分換算で溶解させて、乳化剤水溶液を調製した。
次いで、温度計、窒素導入管、撹拌機及び冷却管を備えた反応容器に、ポリ乳酸(バイロエコールBE-450、東洋紡製)150部をトルエン300部に溶解させ、上記乳化剤水溶液を加えて、45℃で30分間、攪拌混合して予備乳化を行った。
上記予備乳化物をマントンガウリン社製高圧乳化機によって300Kg/cm2の圧力で乳化して微細乳化物を得た。
この微細乳化物を130mmHgの条件下で加熱減圧蒸留してトルエンを除去した後、固形分を調整し、固形分45%、pH2.4、粒子径0.32μmのポリ乳酸エマルションを得た後、25%アンモニア水にてpHを7.0に調整した。
このポリ乳酸エマルションに増粘剤(プライマルASE-60、ロームアンドハースジャパン社製)を0.6部添加し、固形分を40%に調整して、ポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
尚、上記pH値は25℃での測定値であり、下記の実施例及び比較例においても同様である。また、上記アニオン性乳化剤として使用したハイテノールNF-13はポリオキシエチレン・スチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩であり、上記増粘剤として使用したプライマルASE-60はアクリルポリマーである。
上記実施例1のヒドロキシエチルセルロースをヒドロキシプロピルセルロース(メトローズ65SH-50、信越化学社製)に代えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
上記実施例1のヒドロキシエチルセルロースをヒドロキシメチルセルロース(メトローズ60SH-03、信越化学社製)に代えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
上記実施例1のヒドロキシエチルセルロースをカルボキシメチルセルロース(サンローズF10MC、日本製紙ケミカルズ社製製)に代えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
上記実施例1のポリ乳酸150部を、ポリ乳酸105部、ポリカプロラクトン(プラクセルH1P、ダイセル工業社製)45部に代えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
上記実施例1のポリ乳酸150部を、ポリ乳酸105部、ポリブチレンサクシネート(ビオノーレ1000、昭和高分子(株)製)45部に代えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
上記実施例1のアニオン性乳化剤をアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(ネオペレックスG-15、花王社製)に代えた以外は(含有量は7.5部(固形分換算)で同じ)、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
上記実施例1のヒドロキシエチルセルロースをポリビニルアルコール(ポバール405、クラレ社製)に代えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
上記実施例1のヒドロキシエチルセルロースを加えず、アニオン性乳化剤(ハイテノール NF-13、第一工業製薬社製)を7.5部加えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
上記実施例1のアニオン性乳化剤を加えず、ヒドロキシエチルセルロース(メトローズ60SH-50、信越化学社製)を30部加えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
尚、これに先立って、ヒドロキシエチルセルロースの添加量を10.5部とし、それ以外は上記と同じ条件でエマルション化を試みたが、高圧乳化機で乳化した段階で安定なエマルションは得られなかった。
上記実施例1のアニオン性乳化剤を7.5部加える代わりに、ノニオン性乳化剤(エマルゲン1108、花王社製)を30部添加した以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
尚、これに先立って、ノニオン性乳化剤の添加量を7.5部とし、それ以外は上記と同じ条件でエマルション化を試みたが、高圧乳化機で乳化した段階で安定なエマルションは得られなかった。
また、上記ノニオン性乳化剤はポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
上記実施例1のアニオン性乳化剤を加えず、ポリビニルアルコール(ポバール405、クラレ社製)を30部加えた以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
尚、これに先立って、ポリビニルアルコールの添加量を7.5部とし、それ以外は上記と同じ条件でエマルション化を試みたが、高圧乳化機で乳化した段階で安定なエマルションは得られなかった。
上記実施例1のアニオン性乳化剤を7.5部加える代わりに、両性乳化剤(アンヒトール20BS、花王社製)を15部添加した以外は、上記実施例1と同様に処理してポリ乳酸エマルション接着剤を得た。
尚、上記両性乳化剤はカルボキシベタイン型の両性界面活性剤である。
《エマルション接着剤の保存安定性試験例》
実施例1〜7及び比較例1〜6の各エマルション接着剤100gをマヨネーズ瓶に入れて密封し、セイフティーオーブン(SPHH-100、TABAI社製)により40℃、1週間の条件で、静置保存した。
次いで、1週間経過後のエマルション状態を目視観察して、次の基準で保存安定性の優劣を評価した。
○:エマルションに変化なく、相分離は認められなかった。
×:エマルションが水相とエマルション相に分離した。
実施例1〜7及び比較例1〜6で得られた各エマルション接着剤をガラス板にNo.32バーコータで塗工し、セイフティーオーブン(SPHH-100、TABAI社製)により80℃、5分間の条件で乾燥させ、室温で3日間静置した後、目視観察により次の基準で透明性の優劣を評価した。
○:透明を保持した。
×:白色に変じた。
上記実施例1〜7及び比較例1〜6の各エマルション接着剤を乾燥後の塗膜厚が25μmとなるように、丸型アプリケータ25μm(ベーカ式アプリケーター、太佑機材(株)社)を用いて自動塗工機(PI-1210、テスター産業社製)にてポリ乳酸フィルム(テラマック、ユニチカ(株)製)上に塗工し、セイフティーオーブン(SPHH-100、TABAI社製)により80℃、5分間の条件で乾燥させた。
続いて、ヒートシールテスター(TP−701−B、テスター産業社製)を用いて1kg/25mm×25mmの荷重、20秒間、90℃で乾燥させたシートとポリ乳酸フィルムを熱圧着させ、剥離強度試験用の試料(接着シート)を作成し、23℃の雰囲気下で1日静置した後、試験に供した。
JIS K6854-2に準拠して試験した。
即ち、引張り強度試験機(TE-503、テスター産業(株)製)を用いて、23℃、180°剥離の条件で、上記試料(接着シート)を剥離試験(N/25mm)に供した。
ちなみに、剥離強度が5.0N/25mm以上であれば、密着性に優れているものと判断される。
(1)透明性について
PVAとアニオン性乳化剤を併用した比較例1、水溶性セルロース誘導体とノニオン性乳化剤、或は両性乳化剤などを併用した比較例4〜6では、乾燥後すぐに白濁が生じて、3日経過時点では完全に白変していた。
これに対して、水溶性セルロース誘導体とアニオン性乳化剤を併用した実施例1〜7ではすべて3日経過時点でも透明性を保持していた。
アニオン性乳化剤のみを単用した比較例2、水溶性セルロース誘導体のみを単用した比較例3、或は比較例4や6では、1日経過した頃から相分離が始まり、1週間経過時点では完全に分離していた。
これに対して、実施例1〜7ではすべて1週間経過時点でもエマルションを良好に保持していた。
前述の通り、5.0N/25mmの前後を優劣のボーダーとすると、水溶性セルロース誘導体を単用した比較例3、水溶性セルロース誘導体とPVAを併用した比較例5、或はPVAとアニオン性乳化剤を併用した比較例1では実用レベルの密着性を示したが、他の比較例2、4、6では密着性は劣っていた。
これに対して、実施例1〜7の密着性はすべて実用レベルを保持していた。
アニオン性乳化剤のみを単用した比較例2ではエマルションの保存安定性が劣り、密着性が不足し、逆に、水溶性セルロース誘導体のみを乳化剤に単用した比較例3では、透明性と密着性の評価は良いが、エマルションの保存安定性に劣ることが分かる。
水溶性セルロース誘導体と組み合わせる相手方の乳化剤をノニオン性乳化剤にした比較例4では、密着性、透明性及びエマルションの保存安定性のすべてに劣り、同じく相手方を両性乳化剤とした比較例6も比較例4に準じ、同じく相手方をPVAとした比較例5では、密着性とエマルションの保存安定性は改善されるが、透明性に劣る。
また、ポリ乳酸エマルションを製造する際の、従来の代表的な乳化剤であるPVAをアニオン性乳化剤と併用した比較例1では、透明性に劣る。
これに対して、水溶性セルロース誘導体とアニオン性乳化剤を組み合わせた実施例1〜7では、密着性、透明性、エマルションの保存安定性の評価はすべて良好であった。
また、水溶性セルロース誘導体と組み合わせる相手方の乳化剤がノニオン性乳化剤や両性乳化剤などの場合には、密着性や透明性に劣ることに鑑みると(比較例4〜6参照)、エマルションの保存安定性、密着性、並びに透明性の三者を良好に改善するには、水溶性セルロース誘導体の相手方の乳化剤にアニオン性乳化剤を選択することの重要性が確認できた。
特に、従来では、ポリ乳酸エマルション接着剤は透明性に欠けることが大きな問題であり、従来の代表的な乳化剤であるPVAをアニオン性乳化剤と併用した比較例1でも同様の結果であったが、水溶性セルロース誘導体とアニオン性乳化剤を乳化剤に併用することで、ポリ乳酸エマルション接着剤に透明性を付与できることは本発明の顕著な特徴であり、従って、本発明の接着剤は包装フィルム用途に好適である。
Claims (6)
- ポリ乳酸を乳化剤により水中に分散したポリ乳酸エマルション接着剤において、
乳化剤が水溶性セルロース誘導体とアニオン性乳化剤であることを特徴とする包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤。 - 水溶性セルロース誘導体が、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースガムよりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤。
- アニオン性乳化剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アクリル酸アミド・アクリル酸塩共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、ポリオキシエチレン・スチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤。
- 固形分換算で、ポリ乳酸100重量部に対して水溶性セルロース誘導体を0.1〜30重量部、アニオン性乳化剤を0.1〜30重量部の割合で夫々含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤。
- ポリ乳酸に加えて、さらにポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、酢酸セルロースよりなる群から選ばれた生分解性樹脂を水中に分散することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤。
- 固形分換算で、ポリ乳酸100重量部に対して生分解性樹脂を5〜80重量部の割合で分散させることを特徴とする請求項5に記載の包装フィルム用ポリ乳酸エマルション接着剤。
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