次に図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に従う、車両の周辺監視装置の構成を示すブロック図である。該装置は、車両に搭載され、遠赤外線を検出可能な2つの赤外線カメラ1Rおよび1Lと、カメラ1Rおよび1Lによって得られる画像データに基づいて車両周辺の対象物を検出するための画像処理ユニット2と、該検出結果に基づいて音声で警報を発生するスピーカ3と、カメラ1Rまたは1Lによって得られる画像を表示すると共に、運転者に車両周辺の対象物を認識させるための表示を行うヘッドアップディスプレイ(以下、HUDと呼ぶ)4とを備えている。
この実施例では、図2に示すように、カメラ1Rおよび1Lは、車両10の前方を撮像するよう、車両10の前部に、車幅の中心を通る中心軸に対して対称な位置に配置されている。2つのカメラ1Rおよび1Lは、両者の光軸が互いに平行となり、両者の路面からの高さが等しくなるように車両に固定されている。赤外線カメラ1Rおよび1Lは、対象物の温度が高いほど、その出力信号のレベルが高くなる(すなわち、撮像画像における輝度が大きくなる)特性を有している。
画像処理ユニット2は、入力アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、デジタル化した画像信号を記憶する画像メモリ、各種演算処理を行う中央演算処理装置(CPU)、CPUが演算に際してデータを記憶するのに使用するRAM(ランダムアクセスメモリ)、CPUが実行するプログラムおよび用いるデータ(テーブル、マップを含む)を記憶するROM(リードオンリーメモリ)、スピーカ3に対する駆動信号およびHUD4に対する表示信号などを出力する出力回路を備えている。カメラ1Rおよび1Lの出力信号は、デジタル信号に変換されてCPUに入力されるよう構成されている。HUD4は、図2に示すように、車両10のフロントウィンドウの、運転者の前方位置に画面4aが表示されるように設けられている。こうして、運転者は、HUD4に表示される画面を視認することができる。
さらに、ナビゲーションユニット5が、画像処理ユニット2に接続されている。ナビゲーションユニット5は、たとえば人工衛星を利用して車両10の位置を測定するためのGPS信号を受信し、該GPS信号に基づいて、車両10の現在位置を検出する。ナビゲーションユニット5は、地図情報を記憶する地図情報記憶部7を備える。地図情報記憶部7は、任意の記憶装置(記録媒体やハードディスクドライブなど)に実現されることができる。ナビゲーションユニット5は、地図情報記憶部7に記憶された地図情報を読み出して、所定の表示装置(HUD4でもよい)の表示画面上に表示することができる。
この実施例では、地図情報記憶部7に記憶された地図情報において、検出すべき対象物が出没する可能性のある位置に、該出没する可能性があることを示す情報(以下、出没可能性情報)が設定されている。以下の実施例では、検出すべき対象物は、動物である。動物は、出没する場所が限定されていることが多く、予め予測しやすいという特徴がある。出没する可能性のある場所が予めわかれば、カメラによって撮像された対象物が動物かどうかを判定する処理を、その場所についてのみ行えばよい。こうすることにより、動物判定処理を実行する頻度が低減されるので、処理の負荷を低減させることができる。
ここで、動物の出没可能性情報について、図3を参照しながら説明する。図3(a)は、第1の実施例に従う、出没可能性情報を示す。地図情報において、動物が出没する可能性がある位置について、出没可能性があることを示すデータが関連づけられて記憶されており、この実施例では、該データとして出没フラグを用いている。たとえば、地図情報における各位置A1、A2、...について、値1を持つ出没フラグが設定されて記憶されており、これは、これらの位置A1、A2、...が、何らかの動物が出没する可能性のある位置であることを表している。したがって、地図情報を参照することにより、車両の現在位置が、動物の出没する可能性のある位置であるかどうかについて判断することができる。
出没する可能性があるかどうかについての情報は、任意のソース(源)から取得することができる。たとえば、道路には、図4に示すように、動物に関する標識が設置されている。図4の(a)は、鹿が出没する可能性のあることを示し、(b)は、牛が出没する可能性のあることを示し、(c)は、熊が出没する可能性のあることを示す標識である。これらの標識が設置されている位置について、図3(a)のように出没フラグを設定して地図情報に記憶することができる。
さらに、動物が過去に出没したという事実に関する情報、車両が動物と衝突したという事故に関する情報等を、任意の情報源(たとえば、何らかの機関からのニュース等)から取得して、図3(a)のように地図情報に予め登録することができる。
さらに、ユーザが、図3(a)のような情報を登録することができるようにしてもよい。たとえば、HUD4上に表示された地図情報上で、ユーザが、出没可能性のある位置を指定し、画像処理ユニット2は、該指定された位置について、出没フラグを設定して地図情報に記憶することができる。
好ましくは、図3(a)に示すように、各位置A1、A2、...について、各位置を含むよう所定区間が設定される。所定区間は、任意の範囲とすることができる。たとえば、位置A1に対する区間B1は、位置A1が存在する道路において、位置A1を中心として前後1キロメートル(合計2キロメートル)の区間とすることができる。代替的に、区間B1を、位置A1を中心として半径aキロメートル(aは、たとえば1キロメートル)のように設定してもよい。所定区間を設定することにより、動物の出没する可能性のある区間(地域)を、余裕をもって設定することができる。
このような所定区間が設定される場合には、地図情報の各区間B1、B2、...に対し、出没可能性を示す情報(この実施例では、出没フラグ)が設定されて記憶される。
図3(b)は、第2の実施例に従う出没可能性情報を示しており、動物の種類を示す情報が、出没可能性情報として各位置に関連づけられて地図情報に記憶される。たとえば、地図情報の位置A1について設定されている動物の種類は鹿であり、これは、地図情報の位置A1において鹿が出没する可能性があることを示す。動物は、種類ごとに形状が異なるので、このような動物の種類を設定することにより、その位置で起動すべき動物判定処理を的確に選択することができる。
何の種類の動物が出没する可能性があるかという情報については、図3(a)の所で述べたのと同様に、標識情報、何らかの情報源からの出没情報等から取得することができ、また、ユーザからの登録によって設定してもよい。たとえば、図4(a)の場合、標識は「鹿」を表しているので、この標識が設置されている位置については、「鹿」が動物の種類として登録されている。
なお、図3(b)の各位置A1、A2、...に代えて、図3(a)の所定区間B1、B2、...を用いてもよい。
図3(c)は、第3の実施例に従う出没可能性情報を示し、動物の種類だけでなく、その種類の動物の大きさを示す情報が、出没可能性情報として各位置に関連づけられて地図情報に記憶されている。たとえば、地図情報の位置A1について設定されている動物の種類は「鹿」であり、その大きさは、頭胴長が140センチメートルおよび肩高が95センチメートルである。これは、位置A1において、この大きさの鹿が出没する可能性があることを示す。
ここで、参考までに図5を参照すると、様々な「鹿」についての平均的な大きさが示されている。同じ「鹿」という種類でも、生息地域によってさらに細分化された種類の鹿が存在し(ニホンジカからワビチまでが、鹿である)、これらの鹿は、互いに大きさが異なっている。図3(c)の位置A1については、ニホンジカの大きさが登録されていることがわかる。
このように、どのような大きさのどのような種類の動物が出没する可能性があるかについて地図情報に設定することにより、どのような種類の動物の判定処理を行えばよいかだけでなく、どのような大きさの動物を判定すべきかを見極めることができる。
出没する可能性がある動物の大きさがどのくらいかという情報については、図3(a)および(b)の所で述べたのと同様に、標識情報、何らかの情報源からの出没情報等から取得することができ、また、ユーザからの登録によって設定してもよい。
なお、図3(c)の各位置A1、A2、...に代えて、図3(a)の所定区間B1、B2、...を用いてもよい。
上で述べたように、この実施例では、図3に示す出没可能性情報は、ナビゲーションユニット5の地図情報記憶部7の地図情報に予め記憶される。地図情報が、たとえば記憶媒体からの読み込みを介して更新される場合には、出没可能性情報も同じタイミングで更新されるようにしてもよい。また、ナビゲーションユニット5に、サーバ等の所定のコンピュータとの通信機能を搭載し、通信を介して配信された情報で地図情報を更新する場合には、出没可能性情報も同様に更新されることができる。代替的に、地図情報とは別個に図3のようなテーブルを記憶装置(メモリでもよいし、記憶媒体やハードディスクでもよい)に記憶するようにしてもよい。
また、ナビゲーションユニット5の通信機能を利用して、出没可能性情報をリアルタイムに取得するようにしてもよい。たとえば、車両は、所定のコンピュータ(サーバ等)と通信し、該サーバには、出没可能性情報が記憶されている。車両は、車両の現在位置をサーバに送信し、サーバは、該現在位置について出没可能性情報が設定されていれば、それを車両に知らせることができる。また、既存のVICSシステム等の交通情報を車両に提供するシステムを利用し、該交通情報の一貫として出没可能性情報を車両に送信するようにしてもよい。
さらに、地図情報への出没可能性情報の記憶と、リアルタイムによる出没可能性情報の取得とを組み合わせてもよい。たとえば、動物に関する標識および過去の出没情報に基づいて、地図情報に予め出没可能性情報を記憶し、地図情報には未だ記憶されていない新たな出没情報についてはリアルタイムに通信で取得するようにしてもよい。
図6は、この発明の一実施例に従う、画像処理ユニット2によって実行されるプロセスを示すフローチャートである。該プロセスは、所定の時間間隔で実行される。
ステップS11〜S13において、カメラ1Rおよび1Lの出力信号(すなわち、撮像画像のデータ)を入力として受け取り、これをA/D変換して、画像メモリに格納する。格納される画像データは、輝度情報を含んだグレースケール画像である。
ステップS14において、カメラ1Rで撮像された右画像を基準画像とし(代替的に、左画像を基準画像としてもよい)、その画像信号の2値化を行う。具体的には、予めシミュレーション等によって決定される輝度閾値ITHより明るい領域を「1」(白)とし、暗い領域を「0」(黒)とする処理を行う。この2値化処理により、所定の温度より高い対象物が、白領域として抽出される。
ステップS15において、2値化した画像データを、ランレングスデータに変換する。具体的には、2値化により白となった領域について、各画素行の該白領域(ラインと呼ぶ)の開始点(各ラインの左端の画素)の座標と、開始点から終了点(各ラインの右端の画素)までの長さ(画素数で表される)とで、ランレングスデータを表す。たとえば、y座標がy1である画素行における白領域が、(x1,y1)から(x3,y1)までのラインであるとすると、このラインは3画素からなるので、(x1,y1,3)というランレングスデータで表される。
ステップS16およびS17において、対象物のラベリングを行い、対象物を抽出する処理を行う。すなわち、ランレングスデータ化したラインのうち、y方向に重なる部分のあるラインを合わせて1つの対象物とみなし、これにラベルを付与する。こうして、1または複数の対象物が抽出される。
なお、以上の処理に加え、過去の複数の撮像画像について、同一対象物を追跡(トラッキング)すると共に、対象物への距離を、カメラ1Rおよび1Lの2枚の撮像画像に基づいて算出し、対象物が、車両の周辺の所定範囲に存在するかどうか、および該所定範囲に侵入するおそれがあるかどうかを判定するようにしてもよい。これらの処理の詳細は、たとえば特開2001−006096号公報に記載されている。
ステップS21〜S28は、こうして抽出された対象物が何であるかを判定する処理を示す。ステップS21において、対象物が人工構造物かどうかを判定する。人工構造物でないと判定されたならば(ステップS21がNo)、ステップS22において、対象物が歩行者かどうかを判定する。歩行者であると判定されたならば(ステップS22がYes)、対象物は警報の対象である警報対象物と判定される(ステップS27)。人工構造物であると判定されたならば(ステップS21がYes)、および歩行者でないと判定されたならば(ステップS22がNo)、ステップS23において、動物判定処理の要否判断処理を行う。これについては、図7〜図9を参照して後述される。
ステップS24において、ステップS23の結果を調べ、動物判定処理が必要ならば(ステップS24がYes)、ステップS25に進み、対象物が動物かどうかを判定する動物判定処理を実行する。ステップS26において、動物判定処理の結果を調べ、対象物が動物であると判定されたならば(ステップS26がYes)、対象物が警報対象物であると判定する(ステップS27)。対象物が警報対象物であると判定されたならば、運転者に対して警報を出力する。警報は、任意の形態で出力されることができ、HUD4の表示画面4a上に、対象物を強調表示(たとえば、対象物を枠で囲んで表示)してもよいし、スピーカ3を介して対象物が存在することを運転者に知らせてもよい。
他方、動物判定処理が必要とされなければ(ステップS24がNo)、および動物判定処理の結果が動物ではないと判定されたならば(ステップS26がNo)、対象物は警報対象物ではないと判定する(ステップS28)。
ここで、対象物が人工構造物かどうかを判定する処理、歩行者かどうかを判定する処理、および動物かどうかを判定する処理は、任意の適切な手法で実現されることができる。たとえば、人工構造物を判定する処理については、特開2007−310705号公報、特開2008−276787号公報等に記載されている。たとえば、歩行者かどうかを判定する処理は、特開2007−241740号公報、特開2007−334751号公報等に記載されている。たとえば、動物かどうかを判定する処理は、特開2007−310705号公報、特開2007−310706号公報等に記載されている。
図7は、第1の実施例に従う、ステップS23で実行される動物判定要否判断処理のフローを示す。第1の実施例では、図3(a)を参照して説明した出没可能性情報を用いる。したがって、地図情報には、何らかの動物が出没する可能性がある所定区間について出没フラグが設定されている。
ステップS31において、ナビゲーションユニット5を介して、車両の現在位置を取得する。ステップS32において、地図情報記憶部7に記憶された地図情報を参照し、図3(a)を参照して説明した出没フラグが設定されている所定区間内に、該現在位置が含まれるかどうかを判断する。該所定区間内に該現在位置が含まれるのであれば(ステップS32がYes)、該現在位置において何らかの動物が出没する可能性があることを示すので、ステップS33において、動物判定処理が必要であると判定する。車両の現在位置が該所定区間内でなければ(ステップS32がNo)、該現在位置において動物が出没する可能性はほぼ無いと考えることができるので、ステップS34において、動物判定処理は不要(否)と判定する。
図6を参照して説明したように、動物判定処理が必要と判定されたならば、ステップS24の判断がYesとなるので、ステップS25で動物判定処理を実行し、対象物が動物かどうかを判定する。他方、動物判定処理が不要と判定されたならば、ステップS24の判断はNoとなるので、動物判定処理を実行することなく、ステップS28に進む。
こうして、動物が出没する可能性がある区間として設定された所定区間を車両が走行している間のみ、動物判定処理を起動し、該所定区間以外を走行している間は、動物判定処理を起動しない。したがって、動物判定処理を常時起動する必要がないので、処理の負荷を低減することができる。また、動物が出没する可能性のある区間については動物判定処理を実行するので、動物が出没したならば、より確実にその動物を検出することができる。
なお、この実施例では、図3(a)を参照して説明した「所定区間」を用いている。前述したように、「所定区間」が設定されていなくてもよく、この場合、ステップS32において、車両の現在位置について出没フラグが設定されているかどうかを判断し、出没フラグが設定されていれば、動物判定処理が必要と判定し、出没フラグが設定されていなければ、動物判定処理が必要ではないと判定する。
また、図6を参照して述べた対象物の判定は、典型的には、画像処理ユニット2(図1)のCPUがメモリに予め記憶された対象物判定のプログラムを実行することにより実現される。したがって、「動物判定処理」は、より具体的には、プログラム中に記述された動物判定のアルゴリズムを示すが、このアルゴリズムのプログラムへの実装形態は、任意である。すなわち、動物判定のアルゴリズムを、他の歩行者判定等のアルゴリズムとは別のプログラムに実装してもよいし、他の歩行者判定等のプログラムの一部として実装してもよい。いずれの場合にも、「動物判定処理を実行する」とは、動物判定のアルゴリズム部分を実行するということであり、「動物判定処理を実行しない」とは、動物判定のアルゴリズム部分を実行しないということであり、このことは、以下の実施例にも同様に当てはまる。
図8は、第2の実施例に従う、ステップS23で実行される動物判定要否判断処理のフローを示す。第2の実施例では、図3(b)を参照して説明した出没可能性情報を用いる。したがって、地図情報には、動物が出没する可能性がある位置について、該出没する動物の種類が設定されている。また、第2の実施例では、動物の種類毎に、動物判定処理が用意されている。たとえば、「鹿」については、鹿用の動物判定処理(前述したように、アルゴリズムである)、「熊」については、熊用の動物判定処理、および「馬」については、馬用の動物判定処理が予め用意され、所定のプログラムに組み込まれてメモリに記憶されている。
ステップS41において、ナビゲーションユニット5を介して、車両の現在位置を取得する。ステップS42において、地図情報記憶部7に記憶された地図情報を参照し、該現在位置について、図3(b)を参照して説明した動物の種類に関する情報が設定されているかどうかを判断する。設定されていれば(ステップS42がYes)、該現在位置において該設定されている種類の動物が出没する可能性があることを示すので、ステップS43において、該設定されている種類の動物用に用意された動物判定処理を選択する。たとえば、現在位置について「鹿」という動物の種類が設定されていれば、鹿用に用意された動物判定処理を選択する。その後、ステップS44において、動物判定処理が必要であると判定する。他方、ステップS42において、現在位置について動物の種類に関する情報が設定されていなければ、現在位置において動物が出没する可能性はほぼ無いと考えることができるので、ステップS45において、動物判定処理が不要(否)と判定する。
図6を参照して説明したように、動物判定処理が必要と判定されたならば、ステップS24の判断がYesとなるので、ステップS25で、上記ステップS43で選択された動物判定処理(アルゴリズム)のみを実行し(したがって、選択されなかった種類の動物の動物判定処理(アルゴリズム)は実行されない)、対象物が動物かどうかを判定する。他方、動物判定処理が不要と判定されたならば、ステップS24の判断はNoとなるので、動物判定処理を実行することなく、ステップS28に進む。
なお、図3(b)において、前述したように「所定区間」が設定されている場合には、ステップS42において、ステップS41で取得した現在位置が、動物の種類に関する情報が設定されている所定区間内かどうかを判断し、所定区間内であると判定されたならばステップS43に進み、所定区間外であると判定されたならばステップS45に進むこととなる。
また、前述したように、「動物判定処理」は、より具体的には動物判定のアルゴリズムであるから、鹿用のアルゴリズム、熊用のアルゴリズム等があるが、これらのアルゴリズムのプログラムへの実装形態は、任意である。すなわち、鹿用のアルゴリズムを、熊用のアルゴリズムとは別のプログラムに実現してもよいし、1つのプログラムに、鹿用のアルゴリズムおよび熊用のアルゴリズムを含めてもよい。
図7を参照して述べた効果は、この第2の実施例にも同様にあてはまる。さらに、この実施例による効果を述べると、従来、撮像画像から抽出された対象物が動物かどうかを判定するのに、動物に共通の特徴が該対象物に存在するかどうかを調べることにより行っていた。たとえば、特開2007−310705号公報では、四足動物の胴部は一般に楕円形状をしているので、この楕円形状が対象物に存在するかどうかを調べている。
しかしながら、より良好な精度で対象物を判定するには、その対象物が何の動物なのかを特定するのが好ましい。そのため、上で述べたようにこの実施例では、動物の種類毎に動物判定処理が用意されており、各動物判定処理は、その種類の動物かどうかを決定するための処理ロジックを含むことができる。典型的には、動物は、種類毎にその形状が異なるので、或る種類の動物判定処理は、その種類の動物の形状が対象物に存在するかどうかを調べる処理ロジックを含む。たとえば、鹿用の動物判定処理は、撮像画像から、鹿に相当する大きさの形状を有する対象物を抽出し、周知の形状マッチング(パターンマッチング)を用いて、抽出した対象物と、予め用意され鹿を模したパターンとをマッチングさせて両者の類似度を算出し、類似度が高ければ、該対象物は鹿であると判定する。熊用の動物判定処理では、熊に相当する大きさの対象物が抽出され、形状マッチングでは熊を模したパターンが用いられる。たとえば特開2007―310706号公報には、このような手法を用いて鹿を判定することが記載されている。また、動物の種類によっては、その移動速度が異なることがあるので、移動速度を考慮した動物判定処理としてもよい。たとえば、鹿用の動物判定処理では、撮像画像内の対象物を時系列に追跡し、その移動速度が「鹿」の移動速度として設定された所定範囲内かどうかを判定することができる。
抽出された対象物に対し、予め用意されたすべての種類の動物の動物判定処理を実行すれば、該対象物がどの種類の動物かを判定することができる。しかしながら、このやり方では、動物の種類が多いほど処理の負荷が増大し、処理時間がかかる。この発明の第2の実施例に従えば、各位置(所定区間)について、出没する可能性のある種類の動物が予め予測されているので、この種類の動物用の動物判定のみを行えばよい。したがって、従来の手法に比べて、処理の負荷を軽減することができる。
図9は、第3の実施例に従う、ステップS23で実行される動物判定要否判断処理のフローを示す。第3の実施例では、図3(c)を参照して説明した出没可能性情報を用いる。したがって、動物が出没する可能性がある位置について、該出没する動物の種類およびその大きさが地図情報に設定されている。なお、この実施例では、後述するように、大きさに関する情報は必ずしも設定されていなくてもよい。また、第3の実施例では、第2の実施例と同様に、動物の種類毎に別個の動物判定処理(アルゴリズム)が用意されている。
ステップS51において、ナビゲーションユニット5を介して、車両の現在位置を取得する。ステップS52において、地図情報記憶部7に記憶された地図情報を参照し、該現在位置について、図3(c)を参照して説明した動物の種類に関する情報が設定されているかどうかを判断する。設定されていなければ(ステップS52がNo)、現在位置において動物が出没する可能性はほぼ無いと考えることができるので、ステップS56において、動物判定処理が必要ではないと判定する。設定されていれば(ステップS52がYes)、該現在位置において、その種類の動物が出没する可能性があることを示す。
ステップS53において、該現在位置について、大きさに関する情報が設定されているかどうかを判断する。大きさに関する情報が設定されていれば(ステップS53がYes)、ステップS54において、その大きさに関する情報に合わせて、動物判定処理内のパラメータを変更する。ステップS55において、動物判定処理は必要と判定する。
上記パラメータには、対象物が動物かどうかを判定するのに用いられる任意のパラメータが含まれる。たとえば、撮像画像から抽出された対象物が所定の大きさ(対象物に対する車両からの距離に応じて設定される)を有するかどうかについて判断されることがある。「所定の大きさ」を持つかどうかは閾値を用いて調べられるが、この閾値の値を、上記設定された大きさに関する情報に合わせて変更することができる。たとえば、鹿用の動物判定処理において、抽出された対象物が鹿の胴体かどうかを判断するのに、抽出された対象物が、鹿の頭胴長に相当する所定範囲(閾値)内にあるかどうかを判断することができる。この場合、車両の現在位置が位置A1であれば、該所定範囲を、位置A1についての大きさに関する情報(頭胴長が140センチメートル、肩高が95センチメートル)に合わせて、たとえば130〜150センチメートルを所定範囲に設定し、車両の現在位置が位置A2であれば、位置A2についての大きさに関する情報(頭胴長が255センチメートル、肩高が185センチメートル)に合わせて、たとえば245〜265センチメートルを所定範囲に設定する。このように、出没する可能性のある動物の大きさに従って閾値の大きさが適切に設定されるので、動物判定処理による判定精度を向上させることができる。
他方、ステップS53において、大きさに関する情報が設定されていなければ(ステップS53がNo)、動物判定処理を変更することなく(すなわち、ステップS54をスキップし)、ステップS55に進む。この場合、動物判定処理における閾値は、その種類の動物の取りうる大きさに適合するような値(初期値とすることができる)に設定される。たとえば、図5において、鹿の頭胴長の最小(ニホンジカ)は140センチメートルであり、最大(ヘラジカ)は255センチメートルであるので、上で述べたような鹿の胴部かどうかを判定するための所定範囲は、該最小および最大値を含むよう、たとえば130〜270センチメートルとすることができる。
図6を参照して説明したように、動物判定処理が必要と判定されたならば、ステップS24の判断がYesとなるので、ステップS25で、上記変更された動物判定処理を実行し、対象物が動物かどうかを判定する。他方、動物判定処理が必要ではないと判定されたならば、ステップS24の判断はNoとなるので、動物判定処理を実行することなく、ステップS28に進む。
なお、図3(c)において、前述したように所定区間が設定されている場合には、ステップS52において、ステップS41で取得した現在位置が、動物の種類に関する情報が設定されている所定区間内かどうかを判断し、所定区間内であると判定されたならばステップS53に進み、所定区間外であると判定されたならばステップS56に進む。
図8および図9を参照して述べた効果は、この第3の実施例にも同様にあてはまる。さらに、この第3の実施例によれば、出没する可能性のある動物の大きさに適合するよう動物判定処理を変更するので、動物の判定精度を向上させることができる。
なお、第3の実施例では、動物の種類毎に動物判定処理が用意されているが、これに限定されず、すべての動物に適用可能なように動物判定処理を用意し、この動物判定処理を、大きさに関する情報を用いて変更するようにしてもよい。この場合、地図情報の各位置について、動物の種類に関する情報の設定は必ずしも必要とされず、動物の大きさに関する情報を対応づけて記憶してもよい。したがって、ステップS52では、現在位置について、動物の大きさに関する情報が設定されているかどうかを判断し、設定されていればステップS54に進み、設定されていなければステップS56に進む。
第1〜第3の実施例の出没可能性情報のうち、任意のものを組み合わせてよい。たとえば、図3(a)〜(c)を組み合わせて、所定区間(または、位置)のそれぞれについて、出没フラグを設定すると共に、オプションとして、動物の種類および大きさに関する情報を設定する。車両が所定区間内を走行している間、該所定区間について、オプションとして動物の種類および大きさの両方が設定されていれば、該大きさに合わせて、該種類の動物用の動物判定処理を変更して実行し、オプションとして動物の種類に関する情報のみが設定されていれば、該種類の動物用の動物判定処理を起動し、出没フラグのみが設定されていれば、一般の動物判定処理(動物かどうかを判定する処理であり、たとえば特開2007−310705号に記載の処理)を実行する。
なお、上記の実施形態では、検出すべき対象物が動物である場合について説明した。動物は、一般に、出没する地域が限定されることが多いため、本願発明は、動物を判定する場合により有効である。しかしながら、検出すべき対象物は、動物に必ずしも限定されるものではない。たとえば、図6に示すように、歩行者判定処理は常時実行されるが、この歩行者判定処理に加え、子供をより良好な精度で判定するための処理を、たとえばスクールゾーンの標識が設けられている所定区間についてのみ実行するような場合にも、本願発明は適用可能である。
なお、本願発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、様々な変形形態が可能である。たとえば、上記実施形態では、撮像手段として赤外線カメラを使用したが、例えば通常の可視光線のみ検出可能な可視カメラを使用してもよい。しかしながら、赤外線カメラを用いることにより、対象物の抽出処理をより簡略化することができ、演算負荷を低減することができる。
また、上記の実施形態では、図1に示すように、2つの赤外線カメラを用いた構成となっているが、この発明は、1つの赤外線カメラまたは1つの可視カメラを用いて撮像された画像にも適用可能である。1つのカメラの場合、対象物までの距離値は、たとえばレーダなどを用いて検出するようにしてもよいし、該カメラの撮像画像において対象物が撮像された位置から対象物までの距離を推定するようにしてもよい。
以上のように、この発明の特定の実施形態について説明したが、本願発明は、これら実施形態に限定されるものではない。