JP4978827B2 - 固体電解コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、絶縁性材料の塗布による陽極部と陰極部の絶縁分離は、陽極基体に形成された多孔質層内への絶縁性材料の浸透にバラツキがあるため、なおも不十分であることを本発明者らは突き止めた。すなわち、陽極基体をモノマーを含む溶液に浸漬する工程および酸化剤を含む溶液に浸漬する工程を交互に繰り返し、陰極部を形成する過程において、モノマー溶液および酸化剤溶液が、陰極側から、陽極基体に形成された多孔質層内への絶縁性材料の浸透が不十分な欠陥箇所を通じて浸透し、固体電解質の形成が陽極近傍にまで到達することによって漏れ電流が増大するか、あるいは陽極に達することによってショートの原因となっていた。本発明者らは、絶縁分離に用いる絶縁性材料の塗布幅を広げることによって絶縁性を向上させることができることを見出しているが、所定のサイズの固体電解コンデンサが有効に活用できる誘電体面積が相対的に低下することから容量発現率が低下し好ましくなかった。
(1)高分子鎖間に架橋を有する自己ドープ型導電性高分子の先駆体となる自己ドープ型導電性高分子は、可溶性の導電性高分子であり低粘度の溶液であるため、エッチング処理を施され拡面化処理されて形成された微細孔内にも容易に浸透し誘電体皮膜を均一に被覆することができるため容量出現率が向上すること、
(2)上記高分子鎖間に架橋を有する自己ドープ型導電性高分子による弁作用金属の表面への被覆は等価直列抵抗が上昇することがないことから特に有効であること、
(3)さらに、この高分子による被覆膜は、高い硬度、耐水性、耐薬品性を有していることから誘電体皮膜に対する外部応力を緩和することができること、
(4)特に、固体電解質の形成後、集電のために形成されるペーストが導電性重合体の厚さの薄い部分において誘電体酸化皮膜層と直接接触することが防止でき漏れ電流の上昇を防止することができるだけでなく、耐熱性が高いことから鉛フリー対応の高温でのリフロー温度にも耐えうる有用な固体電解コンデンサを提供し得ること、
(5)また、本発明の被覆構造を有することにより微細孔を有しない弁金属表面に対しても、第二層目の固体電解質層形成の過程でモノマー溶液もしくは酸化剤溶液の吸液性および/または液保持性を高めることができ均一な重合膜形成を促進することができること、
(6)および、微細孔を有する弁作用金属における陽極と陰極とを絶縁分離するために形成されている絶縁性材料に隣接する陰極側の誘電体皮膜の少なくとも一部に、高分子鎖間に架橋を有する自己ドープ型導電性高分子を形成させることによって、容量の低下を伴うことなく、陽極と陰極を絶縁分離するために形成されている絶縁性材料の欠陥部分をなくし漏れ電流を低減できることを見出した。
2.自己ドープ型導電性高分子がスルホン酸基を含む前記1に記載の固体電解コンデンサ。
3.架橋がスルホン結合を介してされ、そのスルホン結合が高分子の繰返し単位の0.01〜90モル%含まれている自己ドープ型導電性高分子を含む前記2に記載の固体電解コンデンサ。
4.スルホン酸基を有する自己ドープ型導電性高分子であって、X線光電子分光法によるスルホン酸基の結合エネルギーより0.5〜2eV低い結合エネルギーの結合を介して高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を含む前記1〜3のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
5.スルホン酸基を有するイソチアナフテン骨格を含む自己ドープ型導電性高分子を含む前記1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
6.スルホン結合の架橋構造が、一般式(1)
7.スルホン結合の架橋構造が、一般式(2)
8.スルホン結合の架橋構造が、一般式(3)
9.自己ドープ型導電性高分子が、スルホン酸基を有する複素五員環骨格を含む自己ドープ型導電性高分子を含むことを特徴とする前記2〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
10.スルホン結合の架橋構造が、一般式(4)
11.スルホン結合の架橋構造が、一般式(5)
12.スルホン結合の架橋構造が、一般式(6)
13.金属表面に形成された誘電体皮膜上に、高分子鎖間架橋を有する自己ドープ型導電性高分子を含む第一の固体電解質層を有し、その上に第二の固体電解質層を有する前記1〜12のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
14.第一の固体電解質層が水不溶性である前記13に記載の固体電解コンデンサ。
15.金属が微細孔を有する弁作用金属である前記1〜14のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
16.微細孔を有する弁作用金属における陽極と陰極とを絶縁分離する絶縁材料を有し、これに隣接する陰極側の誘電体皮膜の少なくとも一部に、高分子鎖間架橋を有する自己ドープ型導電性高分子を含む第一の固体電解質層を有し、その上に第二の固体電解質層を有する前記15に記載の固体電解コンデンサ。
17.高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を含む固体電解質層の膜厚が1nm〜1000nmの範囲である前記1〜16のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
18.高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を含む固体電解質層の導電率が0.001〜100S/cmの範囲にある前記1〜17のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
19.高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を含む固体電解質層の鉛筆硬度がHB〜4Hの硬度を有する前記1〜18のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
20.一般式(7)
21.一般式(7)および/または一般式(8)
22.一般式(9)
23.一般式(10)
24.一般式(11)
25.微細孔を有する弁作用金属を一般式(7)および/または一般式(8)
26.一般式(7)および/または一般式(8)
27.一般式(7)および/または一般式(8)
28.一般式(9)
29.微細孔を有する弁作用金属を一般式(9)
30.微細孔を有する弁作用金属を一般式(9)
31.脱水縮合反応が、210℃以上350℃以下の範囲内の温度で加熱処理して行われる前記20〜22および前記25〜30のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
32.脱水縮合反応が、120〜250℃の温度で、10秒〜60分加熱処理することによって行われる前記23または前記24に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
33.誘電体皮膜層を有する弁作用金属を、高分子鎖間での架橋が可能な自己ドープ型導電性高分子を含む水溶液に浸漬したのち脱水縮合反応により硬化させ誘電体皮膜層を水不溶性の第一の固体電解質層で被覆する工程(工程1)、第二の固体電解質層を形成させるモノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を含む方法により、第二の固体電解質層を設けることを特徴とする前記1〜19のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
34.誘電体皮膜層を有する弁作用金属を、高分子鎖間での架橋が可能な自己ドープ型導電性高分子を含む水溶液に浸漬したのち脱水縮合反応により硬化させ誘電体皮膜層を水不溶性の第一の固体電解質層で被覆する工程(工程1)、第二の固体電解質層を形成させるモノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を複数回繰り返す方法により、第二の固体電解質層を設けることを特徴とする前記33に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
35.誘電体皮膜層を有する弁作用金属に高分子鎖間での架橋が可能な自己ドープ型導電性高分子を含む水溶液を塗布したのち脱水縮合反応により硬化させ誘電体皮膜層を水不溶性の第一の固体電解質層で被覆する工程(工程1)、第二の固体電解質層を形成させるモノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を複数回繰り返す方法により、第二の固体電解質層を設けることを特徴とする前記33に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
36.酸化剤が過硫酸塩である前記33〜35のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
37.酸化剤を含む溶液が有機微粒子を含む懸濁液である前記33〜36のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
38.有機微粒子の平均粒子径(D50)が、1〜20μmの範囲である前記37に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
39.有機微粒子が脂肪族スルホン酸化合物、芳香族スルホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、それらの塩、及びペプチド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である前記38に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
40.前記20〜39のいずれかに記載の製造方法で製造された固体電解コンデンサ。
本発明に使用する固体電解コンデンサは金属からなる陽極基体(以下、基板ともいう。)の表面に誘電体皮膜を有する。基板(1)表面の誘電体皮膜(2)は、通常、弁作用を有する金属の多孔質成形体を化成処理すること等により形成される。
本発明に使用できる弁作用を有する金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、珪素などの金属単体、またはこれらの合金である。また多孔質の形態については、圧延箔のエッチング物、微粉焼結体などの多孔質成形体の形態であればいずれでもよい。
本発明に用いられる高分子鎖間架橋を有する自己ドープ型導電性高分子は、スルホン酸基を含み、架橋がスルホン結合を介して形成され、そのスルホン結合が高分子の繰返し単位の0.01〜90モル%、好ましくは1〜90モル%含まれている自己ドープ型導電性高分子を含むことがより好ましい。
しかし、高温で加熱処理することにより、その物質自体が分解するため本来必要な性質である表面抵抗が著しく上昇することも知られていた。
架橋方法としては、どのような方法でも構わないが、架橋性のモノマーを使用して重合すると本来必要な水等の溶剤への溶解性が低下するので、溶液で塗膜した後に架橋する方法が好ましい。
水溶性イソチアナフテン骨格を含む自己ドープ型導電性高分子では、300℃で短時間(5分以内)の加熱により、一部のスルホン酸基が、別のイソチアナフテンのベンゼン環と縮合して架橋構造が生成し、電気的特性が低下せずに耐水性が増加する。
上記のようにイソチアナフテン骨格を含む自己ドープ型導電性高分子のポリマー鎖を架橋することにより、耐水性のみならず耐溶剤性にも優れたものになる。架橋方法は、基本的にはどのような方法でも構わないが、スルホン結合で架橋された化学構造を含有するポリイソチアナフテン型の自己ドープ型導電性高分子が耐熱性、耐水性のみならず耐溶剤性にも優れている。
好ましくは、一般式(1)
上記のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、スルフィド結合、スルフィニル結合、スルホニル結合、イミノ結合を有してもよい。これらのうち、例えば、アルキルエステル基の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ、ブチロイルオキシ等のアシルオキシ基、メトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシ等が挙げられる。
上記のR11〜R14は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のごとき炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキルまたはアリール基であってもよい。
B1もしくはB2の望ましい例としては、単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、アリーレン、ブタジエニレン、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、メチレンオキシエチレン、エチレンオキシエチレン等が挙げられる。
本発明の好ましい実施態様における自己ドープ型導電性高分子構成成分のうち一般式(1)で示される架橋構造部分は、高分子の繰り返し単位の1〜90モル%含まれていることが好ましく、20〜80モル%が特に好ましい。1モル%未満であると耐水性が低下する傾向があり、90モル%を超えると導電性が低下する傾向がある。
本発明に係る自己ドープ型導電性高分子は、ポリアニリン構造、ポリピロール構造、ポリチオフェン構造、ポリカルバゾール構造等であってもよい。
本発明の好ましい実施態様における自己ドープ型導電性高分子構成成分のうち一般式(1)で示される架橋構造部分以外の部分は、導電性が損なわれなければ、特に制限はないが、イソチアナフテン骨格を有することが好ましい。すなわち、一般式(7)で示される化学構造の構成成分および/または一般式(8)で示される化学構造の構成成分の(共)重合体であることが好ましい。更に、一般式(7)
イソチアナフテン構造を含む具体的なポリマーとしては、ポリ(イソチアナフテンスルホン酸)またはこれらの各種塩構造体および置換誘導体、ポリ(イソチアナフテンスルホン酸−co−イソチアナフテン)等の繰り返し単位を含む(共)重合体またはこれらの各種塩構造体および置換誘導体等を挙げることができる。
一般式(4)中、Xは−S−、−O−、または−N(−R15)−を表わし、R15は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を表わし、B1およびB2は、それぞれ独立して−(CH2)p−(O)q−(CH2)r−を表わし、pおよびrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表わす。
ここで、前記R15が表わす特に好ましいアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エトキシエチル、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、アセトニル、フェナシル等が挙げられ、アルケニル基の具体例としては、アリル、1−ブテニル等が挙げられる。
なお、本発明において、「繰り返し単位を含む(共)重合体」とは、必ずしもその単位を連続して含む(共)重合体に限定されず、π共役系主鎖に基づく所望の導電性が発現される限りにおいてランダムコポリマーのようにπ共役系主鎖に不規則、不連続に繰り返し単位を含む(共)重合体も含む。
また、式(1)〜(6)以外の具体例としては、ポリ(カルバゾール−N−アルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレン−オキシアルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−アルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−オキシアルカンスルホン酸)、ポリ(アニリンアルカンスルホン酸)、ポリ(アニリンチオアルカンスルホン酸)、ポリ(アニリン−N−アルカンスルホン酸)、またはこれらの置換誘導体、6−スルホナフト[2,3−c]チオフェン−1,3−ジイルで示される自己ドープ型導電性高分子のスルホン結合で架橋された構造を挙げることができる。
i)一般式(7)で示される化学構造の一例である5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルの重合体、および/またはそのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、
ii)一般式(7)で示される化学構造の一例である5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルを80モル%以上含有するランダムコポリマー、ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル−co−イソチアナフテン−1,3−ジイル)、および/またはそのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、
等が挙げられる。
i)一般式(10)で示される化学構造の一例である3−(2’−スルホエチル)チオフェン−2,5−ジイルの重合体、および/またはそのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、
ii)一般式(10)で示される化学構造の一例である3−(3’−スルホプロピル)チオフェン−2,5−ジイルの重合体、および/またはそのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、
等が挙げられる。
また、本発明における一般式(5)または一般式(6)で示されるチオフェン骨格を有する架橋された自己ドープ型導電性高分子は、一般式(10)で示される自己ドープ型導電性高分子のスルホン酸が分子間もしくは分子鎖間で脱水縮合反応することによって製造される。
本発明における高分子鎖間で架橋された自己ドープ型の導電性高分子は、XPSによる分析でスルホン結合に由来するピークが検出される導電体もしくは導電性組成物が好ましく、より好ましくは、強度比率=スルホン結合の存在に基づくピーク強度/スルホン酸を構成する硫黄原子の存在に基づくピーク強度、で示される強度比率が0.1〜10の範囲にある導電体もしくは導電性組成物である。強度比率としては0.5〜10の範囲が特に好ましい。
本発明における架橋構造のモル含有率は、XPSによる分析で得られた硫黄原子のS2p、スピン3/2の結合エネルギーに基づくピークの強度比率から算出することができる。すなわち、
[(スルホン結合の存在に基づくピーク強度)/{(スルホン結合の存在に基づくピーク強度)+(スルホン酸を構成する硫黄原子の存在に基づくピーク強度)}]×100
によって与えられる。
架橋構造の自己ドープ型導電性高分子を得るための加熱方法は、非架橋の一般式(7)、(8)または(10)の化学構造を有する自己ドープ型導電性高分子を基板上に塗布した後、ホットプレートで加熱する方法、基板全体をオーブンで加熱する方法があるが、熱伝導性が良く効率的に加熱ができるホットプレートを用いる方法が好ましい。
一方、一般式(5)で示されるチオフェン骨格を有する自己ドープ型導電性高分子は、比較的低温でスルホン架橋体となるため高分子フィルム、高分子繊維、高分子基板、高分子樹脂成型体の表面に被覆後、加熱処理することによって容易に帯電防止膜を形成させることができる。
一般式(2)で示されるイソチアナフテン骨格を有する自己ドープ型導電性高分子は、薄膜であっても非常に高い耐熱性を有する。すなわち、一般式(2)で示されるイソチアナフテン骨格を有する自己ドープ型導電性高分子の膜厚として好ましくは、1nm〜1000nmの範囲であるが、1nm〜100nmが特に好ましい。一般に薄膜を高温のもと空気中で加熱処理すると酸素酸化による劣化が非常に進行しやすいが、一般式(2)で示されるイソチアナフテン骨格を有する自己ドープ型導電性高分子薄膜では、1nm〜100nmの膜厚を有する薄膜であっても本発明の製造方法の加熱処理では顕著な導電性の低下は認められない。
前記高分子鎖間に架橋を有する自己ドープ型導電性高分子の先駆体となる自己ドープ型導電性高分子を塗布する幅は、通常、絶縁性材料の幅の0.1倍〜10倍の範囲内であって、0.1倍〜3倍がより好ましく、0.5倍〜2倍が特に好ましい。なお、前記幅は、前記絶縁性材料の反対側に隣接する陽極側に達しない限り、必ずしも一定の幅である必要はない。また、前記塗布方法は、周状に限られず、高分子鎖間に架橋を有する自己ドープ型導電性高分子の先駆体となる自己ドープ型導電性高分子の塗布される量が多い場合は、両面からの塗布であっても、実質、周状と同じ効果が得られる。
本発明における第二の固体電解質の形成方法は、弁作用金属多孔体基板を酸化剤溶液に浸漬した後乾燥して、酸化剤溶液濃度を基板上で徐々に高める工程を含む有機重合体モノマーの化学酸化重合を基本とする。本発明の化学酸化重合法では、モノマーを陽極基体の微細孔を有する誘電体皮膜上に付着させ、導電性重合体のドーパントとなり得る化合物の存在下、酸化的重合を生起させ、生じた重合体組成物を該固体電解質として誘電体表面上に形成させる。
モノマーの供給は、モノマーを含有する溶液に用いられる溶剤の種類、モノマー含有液の濃度、溶液温度、浸漬時間等によって制御することができる。
また、浸漬温度は、−10〜60℃が好ましく、0〜40℃が特に好ましい。−10℃未満では、溶剤が揮発するのに時間がかかり反応時間が長くなることがある。60℃を超えると、溶剤及びモノマーの揮発を無視することができず濃度管理が難しい。
モノマー含有液の濃度は特に限定されず、任意の濃度のものを用いることができるが、弁作用金属の微細孔内への含浸性が優れた3〜70質量%が好ましく、より好ましくは25〜45質量%で使用される。
重合時間は浸漬時のモノマーの付着量による。付着量はモノマー及び酸化剤含有液の濃度や粘度等で変わるので一概に規定できないが、一般に1回の付着量を少なくすると重合時間を短くすることができ、また1回の付着量を多くするとより長い重合時間が必要となる。本発明の方法では、一回の重合時間は10秒〜30分、好ましくは3〜15分とする。
工程3において用いられる酸化剤としては、水溶液系の酸化剤と有機溶剤系の酸化剤が挙げられる。本発明で好ましく使用される水溶液系の酸化剤としては、ペルオキソ二硫酸及びそのNa塩、K塩、NH4塩、硝酸セリウム(IV)、硝酸セリウム(IV)アンモニウム、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、塩化鉄(III)等が挙げられる。また、有機溶剤系の酸化剤としては、有機スルホン酸の第二鉄塩、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、p−トルエンスルホン酸鉄(III)等が挙げられる。
本発明の工程3において用いられる溶液の溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、または水あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水、アルコール類またはケトン類あるいはそれらの混合系が望ましい。
なお、酸化剤溶液の濃度は5〜50質量%が好ましく、また酸化剤溶液の温度は−15〜60℃が好ましい。
有機微粒子を溶解除去する過程で用いられる溶剤としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が用いられるが、水またはアルコール類、もしくはそれらの混合溶剤が好ましく、酸化剤をも溶解させる溶剤であれば、酸化剤の除去と同時に実施できることからより好ましい。
可溶性の有機微粒子としては、平均粒子径(D50)が0.1〜20μmの範囲であることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましい。可溶性の有機微粒子の平均粒子径(D50)が、20μmを超えると重合膜に形成される間隙が大きくなるため好ましくなく、0.1μm未満では、付着液の増量効果はなくなり水と同等になる。
可溶性の有機微粒子の具体例としては、脂肪族スルホン酸化合物、芳香族スルホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、ペプチド化合物、または/及びその塩等が挙げられ、芳香族スルホン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、ペプチド化合物が好ましく用いられる。
本発明による第二の固体電解質の好ましい形成工程の1つは、工程2、工程3の工程を1サイクルとして繰り返す方法である。前記サイクルは、1つの陽極基体に対して3回以上、好ましくは8〜30回繰り返すことによって、所望の固体電解質層を形成することができる。なお、工程2と工程3は逆順に行っても良い。
縮合環に窒素またはN−オキシドを任意に含んでいる化合物も使用でき、例えば、1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリンや、1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−4−オキシド、1,3−ジヒドロチエノ[3,4−b]キノキサリン−4,9−ジオキシド等を挙げることができる。
アニリン骨格を有するモノマーとしては、例えば、2−メチルアニリン、2−エチルアニリン、2−プロピルアニリン、2−ブチルアニリン、2−ペンチルアニリン、2−ヘキシルアニリン、2−ヘプチルアニリン、2−オクチルアニリン、2−ノニルアニリン、2−デシルアニリン、2−フルオロアニリン、2−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、2−シアノアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジエチルアニリン、2,3−ブチレンアニリン、2,3−メチレンジオキシアニリン、2,3−エチレンジオキシアニリン等の誘導体を挙げることができる。これらの化合物は、市販品または公知の方法で準備できる。
上記化合物群から選ばれる化合物の重合条件等には特に制限はなく、簡単な実験により予め好ましい条件を確認した上で容易に実施することができる。
また、上記モノマー群から選ばれる化合物を併用し、共重合体として固体電解質を形成させても良い。その時の重合性単量体の組成比などは重合条件等に依存するものであり、好ましい組成比、重合条件は簡単なテストにより確認できる。
例えば、EDTモノマー及び酸化剤を好ましくは溶液の形態において、前後して別々にまたは一緒に金属箔の酸化皮膜層に塗布して形成する方法等が利用できる(特許第3040113号公報、米国特許第6229689号公報)。
本発明の製造方法においては固体電解質形成後の洗浄用溶媒として、例えば、テトラヒドロフラン(THF)やジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、N−メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン等の非芳香族性の塩素系溶媒;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;蟻酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸;該有機酸の酸無水物(例、無水酢酸等)または水あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。好ましくは、水、アルコール類またはケトン類あるいはそれらの混合系が望ましい。
こうして形成された導電性重合体組成物層の上に、陰極リード端子との電気的接触を良くするために導電体層を設けることが好ましい。導電体層は例えば導電ペースト、メッキや蒸着、導電樹脂フィルムの貼付等により形成される。
かくして得られる固体電解コンデンサ素子は、通常、リード端子を接続して、例えば樹脂モールド、樹脂ケース、金属製の外装ケース、樹脂ディッピング等による外装を施すことにより、各種用途のコンデンサ製品とする。
また、本発明では、導電体層を形成した後に、これらを積層し、得られた積層体にリード端子を接続して封止して積層型の固体電解コンデンサとしてもよい。この場合、図2に示すように、リード部(この図に示す態様ではリードフレーム)7の両面にそれぞれ1のコンデンサ素子を積層してもよいし、複数の素子を導電ペースト等により接着してリード部の片面または両面に積層してもよい。
1)自己ドープ型導電性高分子化合物の合成:
一般式(7)におけるR1〜R3およびMが水素原子であり、B1が存在せずスルホン酸基が直接結合している自己ドープ型導電性高分子化合物、ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)は、特開平7−48436号公報で開示されている方法を参考にして合成した。
一般式(10)におけるB1がプロピレンおよびMが水素原子である自己ドープ型導電性高分子化合物、ポリ(3−(3’−スルホプロピル)チオフェン−2,5−ジイル)は、特開平2−189333号公報に記載の方法を参考にして合成した。
導電性組成物1:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の2質量%の水溶液100mLに1Nのアンモニア水を7.0g加えてpHを4.4に調整した。
導電性組成物2:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の3質量%の水溶液100mLに1Nのアンモニア水を10.5g加えてpHを4.3に調整した。
導電性組成物3:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の5質量%の水溶液100mLに1Nのアンモニア水を17.5g加えてpHを4.4に調整した。
導電性組成物4:
ポリ(3−(3’−スルホプロピル)チオフェン−2,5−ジイル)の1質量%の水溶液100mLに1Nのアンモニア水を3.1g加えpHを4.3に調整した。
導電性組成物5:
ポリ(3−(3’−スルホプロピル)チオフェン−2,5−ジイル)の3質量%の水溶液100mLに1Nのアンモニア水を9.3g加えてpHを4.0に調整した。
導電性組成物6:導電性組成物3の75mlと導電性組成物4の25mlを混合して調製した。
3)pH測定:
自己ドープ型の導電性高分子水溶液のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度計pH METER F−13((株)堀場製作所製)にて測定した。
導電性組成物を浸漬もしくは塗布したアルミニウム化成箔は、ISUZU SEISAKUSHO製のオーブン型式:ACS−Aに投入することによって加熱処理した。
5)X線光電子分光法(XPS):
XPSは、KRATOS社製のAXIS−Ultraを使用して測定した。
各種硫黄原子のピーク位置を特定するために、チオフェン環由来の硫黄原子の標準サンプルには、チオフェン3量体(ターチオフェン)を使用し、スルホン酸由来の硫黄原子の標準サンプルにはp−トルエンスルホン酸ナトリウムを使用し、スルホン結合由来の硫黄原子の標準サンプルにはフェニルスルホンを使用した(図3)。
6)耐水性および耐溶剤性の評価:
耐水性および耐溶剤性の評価は以下の通り実施した。
加熱後のアルミニウム化成箔を超純水、アセトン、N−メチルピロリジノン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルに投入し、1時間後に溶出の有無を確認した。
アルミニウム化成箔を短軸方向3.5mm×長軸方向11mmに切り出し、長軸方向を5mmと5mmの部分に区切るように、両面に幅1mmのポリイミド溶液を周状に塗布、乾燥させマスキングを作成した。この化成箔の3.5mm×5mmの一方(陰極形成部分)を、10質量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で3.8Vの電圧を印加して切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、前記部分を、導電性組成物1に5秒間含浸し、室温で5分間乾燥した。乾燥後のアルミニウム化成箔の微細孔を有する層の誘電体皮膜の表面をXPSにより測定して得られたS2pの結合エネルギーのスペクトルを図4中の破線で示した。引き続き300℃で15分間脱水縮合反応を行うことによって架橋反応を進行させ誘電体皮膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成した(工程1)。図4から求められた架橋構造のモル含有率は30%であった。本アルミニウム箔の被覆部分を純水に1時間浸漬したが自己ドープ型導電性高分子の溶出は認められなかった。また、加熱処理後のアルミニウム化成箔の微細孔を有する層の誘電体皮膜の表面をXPSにより測定して得られたS2pの結合エネルギーのスペクトルを図4に実線で示した。続いて3,4−エチレンジオキシチオフェンを溶解させた2.0mol/Lのイソプロピルアルコール(IPA)溶液に5秒間含浸し、これを室温で5分間乾燥し(工程2)、2−アントラキノンスルホン酸ナトリウム(D50=11μm;シスメックス(株)製マスターサイザーを用いて測定。)が0.07質量%となるように調整した1.5mol/Lの過硫酸アンモニウム水溶液に5秒間浸漬した。続いてこのアルミニウム箔を40℃の大気中で10分間放置して酸化的重合を行った(工程3)。引き続き、この箔を蒸留水に5秒間含浸させ、アルミニウム箔を取りだし、40℃の大気中で10分間放置することにより酸化的重合を行った。さらにこの浸漬工程及び重合工程を全体で22回となるようにして、導電性重合体の固体電解質層をアルミニウム箔の外表面に形成した。最終的に生成したポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を50℃温水中で洗浄し、その後100℃で30分乾燥を行い、固体電解質層を形成した。
次に、上記アルミニウム箔の導電性重合体組成物層を形成した部分にカーボンペーストと銀ペーストを付着させて上記アルミニウム箔を2枚積層し、陰極リード端子を接続した。また、導電性重合体組成物層の形成されていない部分には陽極リード端子を溶接により接続した。さらに、この素子をエポキシ樹脂で封止した後、125℃で定格電圧(2V)を印加して2時間エージングを行い、合計30個のコンデンサを完成させた。
これら30個のコンデンサ素子について、初期特性として120Hzにおける容量と損失係数(tanδ×100(%))、等価直列抵抗(ESR)、それに漏れ電流を測定した。なお、漏れ電流は定格電圧を印加して1分後に測定した。表1にこれらの測定値の平均値と、0.002CV以上の漏れ電流を不良品としたときの不良率を示した。ここで、漏れ電流の平均値は不良品を除いて計算した値である。
引き続き、良品20個を銅配線が施された基板上にソルダペーストを印刷しその上に当該良品コンデンサをマウントしリフロー炉(ピーク温度:250℃)に通すことによってハンダ付けを行った。本基板上にハンダ付けされたコンデンサについて120Hzにおける容量と損失係数(tanδ×100(%))、等価直列抵抗(ESR)、それに漏れ電流を測定した。なお、漏れ電流は定格電圧を印加して1分後に測定した。表2にこれらの測定値の平均値と、0.002CV以上の漏れ電流を不良品としたときの不良率を示した。ここで、漏れ電流の平均値は不良品を除いて計算した値である。
実施例1と同様にしてマスキングを形成したアルミニウム化成箔の3.5mm×5mmの一方(陰極形成部分)を、実施例1と同様にして切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、前記部分を導電性組成物1に5秒間含浸し、室温で5分間乾燥した後、300℃で15分間脱水縮合反応を行うことによって架橋反応を進行させ誘電体皮膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成した(工程1)。さらに、本操作をもう一度繰り返したこと以外には実施例1と同様にして固体電解質を形成した。
次に、再化成、カーボンペーストと銀ペーストの塗布、積層、陰極リード端子の接続、エポキシ樹脂で封止、エージング操作は実施例1と同様に行い、合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1および表2に示す。
実施例1と同様にしてマスキングを形成したアルミニウム化成箔の3.5mm×5mmの一方(陰極形成部分)を、実施例1と同様にして切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、前記部分を導電性組成物2に5秒間含浸し、室温で5分間乾燥した後、250℃で30分間脱水縮合反応を行うことによって架橋反応を進行させ誘電体皮膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成したこと以外には実施例1と同様にして合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1および表2に示す。
実施例1と同様にしてマスキングを形成したアルミニウム化成箔の3.5mm×5mmの一方(陰極形成部分)を、実施例1と同様にして切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、前記部分を導電性組成物3に5秒間含浸し、室温で5分間乾燥した後、250℃で30分間脱水縮合反応を行うことによって架橋反応を進行させ誘電体皮膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成したこと以外には実施例1と同様にして合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1および表2に示す。
実施例1と同様にしてマスキングを形成したアルミニウム化成箔の3.5mm×5mmの一方(陰極形成部分)を、実施例1と同様にして切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、前記部分を導電性組成物4に5秒間含浸し、室温で5分間乾燥した後、200℃で30分間脱水縮合反応を行うことによって架橋反応を進行させ誘電体皮膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成した(工程1)。さらに、本操作をもう一度繰り返したこと以外には実施例1と同様にして合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1および表2に示す。
実施例1と同様にしてマスキングを形成したアルミニウム化成箔の3.5mm×5mmの一方(陰極形成部分)を、実施例1と同様にして切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、前記部分を導電性組成物5に5秒間含浸し、室温で5分間乾燥した後、200℃30分間脱水縮合反応を行うことによって架橋反応を進行させ誘電体皮膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成したこと以外には実施例1と同様にして合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1および表2に示す。
実施例1と同様にしてマスキングを形成したアルミニウム化成箔の3.5mm×5mmの一方(陰極形成部分)を、実施例1と同様にして切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。次に、前記部分を導電性組成物6に5秒間含浸し、室温で5分間乾燥した後、250℃で30分間脱水縮合反応を行うことによって架橋反応を進行させ誘電体皮膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成したこと以外には実施例1と同様にして合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1および表2に示す。
実施例1と同様にして作成した誘電体酸化皮膜を形成したアルミニウム箔の3mm×4mmの部分を、導電性組成物1を塗布および脱水縮合反応を行う工程1を実施しないこと以外は、実施例1と同様にして合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1および表2に示す。
特開平7−196791号公報に記載の方法を参考にして合成したポリ(2−メトキシ−5−スルホ−1,4−イミノフェニレン)の5.0gに超純水95.0gを加え調製して導電性組成物を得た。
次に、再化成、カーボンペーストと銀ペーストの塗布、積層、陰極リード端子の接続、エポキシ樹脂で封止、エージング操作は実施例1と同様に行い、合計30個のコンデンサを完成させた。得られたコンデンサ素子について実施例1と同様に行った特性評価の結果を表1および表2に示す。
実施例1の工程1において、切り口化成したアルミニウム化成箔のマスキング部分に隣接した一方の3.5mm×5mmの部分(陰極形成部分)側に、シリンジ吐出にて導電性組成物1を1mmの幅で30mg塗布注入し、室温で5分間乾燥した。150℃で30分間乾燥した後、引き続き300℃で30分間脱水縮合反応を行なうことによって架橋反応を進行させ誘電体被膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成した。以下、実施例1と同様にして、合計30個のコンデンサを完成させた。これら30個のコンデンサ素子について実施例1と同様にして測定した初期特性およびリフロー特性をそれぞれ表3および表4に示した。
実施例1の工程1において、切り口化成したアルミニウム化成箔のマスキング部分に隣接した一方の3.5mm×5mmの部分(陰極形成部分)側に、シリンジ吐出にて導電性組成物2を1mmの幅で30mg塗布注入し、室温で5分間乾燥した。150℃で30分間乾燥した後、引き続き300℃で30分間脱水縮合反応を行なうことによって架橋反応を進行させ誘電体被膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成した。以下、実施例1と同様にして、合計30個のコンデンサを完成させた。これら30個のコンデンサ素子について実施例1と同様にして測定した初期特性およびリフロー特性をそれぞれ表3および表4に示した。
実施例1の工程1において、切り口化成したアルミニウム化成箔のマスキング部分に隣接した一方の3.5mm×5mmの部分(陰極形成部分)側に、シリンジ吐出にて導電性組成物5を1mmの幅で30mg塗布注入し、室温で5分間乾燥した。90℃で30分間乾燥した後、引き続き160℃で30分間脱水縮合反応を行なうことによって架橋反応を進行させ誘電体被膜の表面に高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を形成した。以下、実施例1と同様にして、合計30個のコンデンサを完成させた。これら30個のコンデンサ素子について実施例1と同様にして測定した初期特性およびリフロー特性をそれぞれ表3および表4に示した。
アルミニウム化成箔を短軸方向3.5mm×長軸方向11mmに切り出し、長軸方向を5mmと4.5mmの部分に区切るように、両面に幅1.5mmのポリイミド溶液を周状に塗布、乾燥させ、マスキングを作成した。この化成箔の3.5mm×4.5mmの部分(陰極形成部分)を、10質量%のアジピン酸アンモニウム水溶液で3.8Vの電圧を引火して切り口部分に化成し、誘電体酸化皮膜を形成した。以下、実施例1と同様にして、合計30個のコンデンサを完成させた。これら30個のコンデンサ素子について実施例1と同様にして測定した初期特性およびリフロー特性をそれぞれ表3および表4に示した。
2 誘電体(酸化皮膜)層
3 マスキング
4 半導体(固体電解質)層
5 導電体層
6,7 リード線
8 封止樹脂
9 固体電解コンデンサ
10 陽極形成部
11 絶縁性材料
12 塗布域
13 陰極形成部
Claims (31)
- 弁作用金属表面に形成された誘電体皮膜上に高分子鎖間架橋を有する自己ドープ型導電性高分子層を含み、前記導電性高分子層の導電性高分子がスルホン酸基を有するイソチアナフテン骨格を含む自己ドープ型導電性高分子を含み、前記高分子鎖間架橋がスルホン結合を介して形成されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
- 架橋がスルホン結合を介してされ、そのスルホン結合が高分子の繰返し単位の0.01〜90モル%含まれている自己ドープ型導電性高分子を含む請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- スルホン酸基を有する自己ドープ型導電性高分子であって、X線光電子分光法によるスルホン酸基の結合エネルギーより0.5〜2eV低い結合エネルギーの結合を介して高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を含む請求項1または2に記載の固体電解コンデンサ。
- スルホン結合の架橋構造が、一般式(1)
- スルホン結合の架橋構造が、一般式(2)
- 金属表面に形成された誘電体皮膜上に、高分子鎖間架橋を有する自己ドープ型導電性高分子を含む第一の固体電解質層を有し、その上に第二の固体電解質層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 第一の固体電解質層が水不溶性である請求項7に記載の固体電解コンデンサ。
- 金属が微細孔を有する弁作用金属である請求項1〜8のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 微細孔を有する弁作用金属における陽極と陰極とを絶縁分離する絶縁材料を有し、これに隣接する陰極側の誘電体皮膜の少なくとも一部に、高分子鎖間架橋を有する自己ドープ型導電性高分子を含む第一の固体電解質層を有し、その上に第二の固体電解質層を有する請求項9に記載の固体電解コンデンサ。
- 高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を含む固体電解質層の膜厚が1nm〜1000nmの範囲である請求項1〜10のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を含む固体電解質層の導電率が0.001〜100S/cmの範囲にある請求項1〜11のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 高分子鎖間が架橋している自己ドープ型導電性高分子を含む固体電解質層の鉛筆硬度がHB〜4Hの硬度を有する請求項1〜12のいずれかに記載の固体電解コンデンサ。
- 一般式(7)
- 一般式(7)および/または一般式(8)
- 脱水縮合反応が、250℃以上300℃以下の範囲内の温度で加熱処理して行われる請求項14〜22のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 誘電体皮膜層を有する弁作用金属を、高分子鎖間での架橋が可能な自己ドープ型導電性高分子を含む水溶液に浸漬したのち脱水縮合反応により硬化させ誘電体皮膜層を水不溶性の第一の固体電解質層で被覆する工程(工程1)、第二の固体電解質層を形成させるモノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を含む方法により、第二の固体電解質層を設けることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 誘電体皮膜層を有する弁作用金属を、高分子鎖間での架橋が可能な自己ドープ型導電性高分子を含む水溶液に浸漬したのち脱水縮合反応により硬化させ誘電体皮膜層を水不溶性の第一の固体電解質層で被覆する工程(工程1)、第二の固体電解質層を形成させるモノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を複数回繰り返す方法により、第二の固体電解質層を設けることを特徴とする請求項24に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 誘電体皮膜層を有する弁作用金属に高分子鎖間での架橋が可能な自己ドープ型導電性高分子を含む水溶液を塗布したのち脱水縮合反応により硬化させ誘電体皮膜層を水不溶性の第一の固体電解質層で被覆する工程(工程1)、第二の固体電解質層を形成させるモノマーを含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程2)、酸化剤を含む溶液に浸漬後乾燥する工程(工程3)を複数回繰り返す方法により、第二の固体電解質層を設けることを特徴とする請求項24に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 酸化剤が過硫酸塩である請求項24〜26のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 酸化剤を含む溶液が有機微粒子を含む懸濁液である請求項24〜27のいずれかに記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 有機微粒子の平均粒子径(D50)が、1〜20μmの範囲である請求項28に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 有機微粒子が脂肪族スルホン酸化合物、芳香族スルホン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、芳香族カルボン酸化合物、それらの塩、及びペプチド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項29に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 請求項14〜30のいずれかに記載の製造方法で製造された固体電解コンデンサ。
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