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JP4977870B2 - 製鋼方法 - Google Patents

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  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)
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Description

本発明は、同一の転炉型容器を用いて溶銑に対して脱燐処理と脱炭処理とを、これらの中間に排滓工程を挟んで連続して実施し、溶銑から溶鋼を製造する製鋼方法に関するものである。
従来の転炉法に代わって、溶銑段階で脱燐処理を行う溶銑予備処理法が広く行われるようになった。これは、溶銑は溶鋼に比べて温度が低く、また、脱燐反応は精錬温度が低いほど熱力学的に進行しやすく、従って、溶銑段階においては、より少ない量の脱燐用精錬剤で脱燐処理を行うことができるためである。
この溶銑予備処理では、一般的に、先ず、酸化鉄などの固体酸素源を溶銑に添加して脱珪処理を行い、この脱珪処理で発生したスラグを除去した後、次いで、CaO系媒溶剤などからなる脱燐用精錬剤及び酸素源を添加して脱燐処理を実施している。通常、脱燐用精錬剤としては生石灰などのCaO系媒溶剤が用いられ、酸素源としては固体酸素源(酸化鉄など)や気体酸素源(酸素ガスや酸素含有ガス)が用いられている。また、処理容器としては、トーピードカー、溶銑鍋(装入鍋)、転炉型容器などが用いられる。
従来、溶銑の脱燐処理では、CaO系媒溶剤の滓化促進のためにCaF2 (ホタル石)を添加することが広く行われている。しかし、近年、環境保護の観点からスラグからのフッ素溶出量の規制基準が強化される傾向にあり、このため、CaF2の使用量を削減した操業、或いはCaF2 を使用しない操業(これらの操業をまとめて「フッ素レス操業」と呼ぶ)が求められている。
因みにフッ素レス操業では、CaOの滓化を促進させて脱燐効率を維持することが重要であり、CaOを十分に滓化させるために、脱燐スラグの塩基度(=CaO/SiO2 )を比較的低くして操業するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。また、前述したように、脱燐処理は熱力学的には処理温度が低いほど有利であるので、脱燐効率を高めるべく処理温度を比較的低くした操業が行われている(例えば、特許文献2参照)。
ところで、溶銑予備処理法では溶銑の脱燐処理と脱炭処理とをそれぞれ別の処理容器で行うことから、処理容器への溶銑供給の都度に溶銑の温度が低下し、この温度低下により、溶銑から溶鋼を製造する精錬工程における鉄スクラップの配合量は低下する。そこで、溶銑予備処理法であっても鉄スクラップの配合量を増加させる方法の1つとして、同一の転炉型容器を用い、脱燐処理と脱炭処理とを、これらの中間に排滓工程(「中間排滓」とも呼ぶ)を挟んで連続して行う製鋼方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
この製鋼方法においても、脱燐処理に関しては、上記と同様にフッ素レス操業が求められている。また、脱燐処理後の中間排滓での排滓量が不充分であると、排滓されずに炉内に残留した脱燐スラグにより、後工程の脱炭処理で復燐が生じてしまう。これにより、脱炭処理工程でも実質的な脱燐精錬を行う必要が生じ、必然的に脱炭処理工程におけるスラグ量が多くなる。この結果、特に脱炭処理工程でMn系合金鉄を削減するべくMn鉱石を添加する場合に、Mn歩留まりが大幅に低下してしまうという大きな問題が発生する。
特開平11−269524号公報 特開平8−199219号公報 特開平5−247511号公報
上記のように、中間排滓を挟んで脱燐処理と脱炭処理とを連続して行い、溶銑から溶鋼を製造する製鋼方法においては、使用する脱燐用精錬剤がフッ素を含有しなくても溶銑の脱燐を効率良く実施することができると同時に、脱燐処理で生成する脱燐スラグの流動性を高め、中間排滓を十分に行う必要があるが、これらの問題を解決するための有効な手段は未だ提案されていないのが現状である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、同一の転炉型容器を用いて溶銑に対して脱燐処理工程と脱炭処理工程とを、これらの中間に排滓工程を挟んで連続して実施して溶銑から溶鋼を製造する製鋼方法において、脱燐用精錬剤にCaF2 などのフッ素源を配合しなくても脱燐反応を促進させて溶銑を効率的に脱燐処理することができると同時に、中間排滓を充分に行うことができ、その結果、脱炭処理工程でのMn歩留まりを十分に高めることが可能となる製鋼方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る製鋼方法は、転炉型容器に溶銑を装入し、該溶銑にCaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤と酸素源とを供給して脱燐処理を行った後、該脱燐処理で生成した脱燐スラグの少なくとも一部を転炉型容器から排出し、その後、引き続き転炉型容器内の溶銑に酸素源を供給して脱炭処理を行い、溶銑から溶鋼を製造する製鋼方法において、前記脱燐処理では、処理後に生成される脱燐スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2 )を2.5以下とするとともに、脱燐用精錬剤の一部として酸化チタン源または酸化チタン源及びAl23 源を使用することにより脱燐スラグの粘度を低下させ、且つ、脱燐処理後には、生成した脱燐スラグの60質量%以上を転炉型容器から排出することを特徴とするものである。
第2の発明に係る製鋼方法は、第1の発明において、前記脱燐スラグのTiO2 換算の酸化チタンの含有量とAl23 の含有量との合計値が3〜15質量%であることを特徴とするものである。
第3の発明に係る製鋼方法は、第1または第2の発明において、前記脱炭処理は、Mn鉱石を供給して行うことを特徴とするものである。
第4の発明に係る製鋼方法は、第1ないし第3の発明の何れかにおいて、前記脱燐スラグのフッ素含有量が0.2質量%以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、同一の転炉型容器を用いて脱燐処理と脱炭処理とを、これらの中間に排滓工程を挟んで連続して実施して溶銑から溶鋼を製造するに当たり、溶銑の脱燐処理の際に、CaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤に加えて、CaO系スラグの液相形成能力に優れる酸化チタンまたは/及びAl2 3 を含有する物質を脱燐用精錬剤の一部として併用するので、CaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤の滓化が促進されて脱燐反応が促進し、脱燐速度が向上する。そのため、CaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤の使用量を増加にすることなく、従来と同様の脱燐速度を維持することができる。
また、生成される脱燐スラグの塩基度を2.5以下とするので脱燐スラグ中に占める固相の割合が低く、その結果、脱燐スラグ自体の流動性が向上し、転炉型容器からの脱燐スラグの排出が円滑に行われる。また、酸化チタンはCaO系スラグの粘度を低下させる作用があり、従って、脱燐用精錬剤に酸化チタンを含有する物質を加えることで、脱燐スラグの流動性がより一層高まり、転炉型容器からの脱燐スラグの排出が円滑に行われ、引き続いて行われる脱炭処理においては、残留する脱燐スラグによる復燐もなく、効率良くMn鉱石の還元を行うことが可能となる。更に、CaO系媒溶剤と酸化チタンとからなる脱燐用精錬剤に、Al23 を含有する物質を加えた場合には、酸化チタン及びAl23 の両者の複合効果によって脱燐スラグの粘度低下が一層促進され、排滓が一段と円滑になる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に係る製鋼方法は、転炉型容器に溶銑を装入し、この溶銑にCaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤と酸素源とを供給して脱燐処理を行った後、この脱燐処理で生成した脱燐スラグの少なくとも一部を転炉型容器から排出し、その後、引き続き転炉型容器内の溶銑に酸素源を供給して脱炭処理を行い、溶銑から溶鋼を製造する製鋼方法であって、前記脱燐処理では、処理後に生成される脱燐スラグの塩基度を2.5以下とするとともに、脱燐用精錬剤の一部として酸化チタン源または/及びAl23 源を使用し、且つ、脱燐処理後には、生成した脱燐スラグの60質量%以上を転炉型容器から排出することを特徴とする。
ここで、上記脱燐処理工程及び脱炭処理工程では、必要に応じて溶銑に対して鉄源として鉄スクラップが装入される。尚、本発明におけるスラグの塩基度とは、スラグ中のCaO含有量とSiO2 含有量との比(質量%CaO/質量%SiO2 )である。
脱燐用精錬剤としてCaO系媒溶剤を用いた脱燐処理は、溶銑中の燐を酸素源によって酸化し、生成した燐酸化物(P25 )を、CaO系媒溶剤を主体とする溶融した脱燐用精錬剤中に取り込み、溶銑中の燐を除去するという方法で行われる。脱燐用精錬剤は、脱燐処理後、燐を含有する脱燐スラグを溶銑浴面上に生成する。尚、本発明では、脱燐用精錬剤が滓化して生成した、脱燐反応前または脱燐反応中のスラグを便宜的に「脱燐用スラグ」と称し、処理後に生成される脱燐スラグと区別している。
本発明の製鋼方法における脱燐処理では、処理後に生成される脱燐スラグの塩基度を2.5以下としているので、生成される脱燐用スラグの融点が相対的に低くなり、CaOの滓化が促進され、脱燐用精錬剤への燐酸化物の取り込みが円滑に行われる。つまり、脱燐反応が促進される。また、生成される脱燐スラグの塩基度を2.5以下としているので、脱燐スラグ中に占める固相の割合が低く、その結果、脱燐スラグ自体の流動性が向上し、転炉型容器からの脱燐スラグの排出が円滑になる。
処理後の脱燐スラグの塩基度が1.0未満であると、脱燐用スラグ中に占めるCaOの割合が低くなり、脱燐不良を招くので、1.0以上とすることが好ましい。一方、脱燐スラグの塩基度が2.5を超えると、脱燐スラグ中に占める固相の割合が高いために脱燐スラグの流動性が低下し、中間排滓を円滑に行うことができない。このような観点から脱燐処理後の脱燐スラグの塩基度は2.2以下がより一層好ましい。脱燐スラグの塩基度は、CaO系媒溶剤の添加量或いは組成を調整することにより所定の値に制御することができる。
また、本発明の製鋼方法における脱燐処理では、CaO系媒溶剤に加えて酸化チタン源または/及びAl23 源を脱燐用精錬剤として使用するので、CaO系媒溶剤の滓化が促進され、脱燐用精錬剤が滓化して生成される脱燐用スラグの脱燐能力が向上する。その結果、脱燐反応が更に促進されることで、より効率的な溶銑脱燐を行うことができる。即ち、酸化チタン及びAl23 はCaO系媒溶剤の滓化促進剤として機能するため、フッ素源を実質的に含まない若しくはフッ素源の配合量が少ない脱燐用精錬剤であっても、効率的な脱燐反応を可能とする。つまり、酸化チタン源及びAl23 源はCaO系媒溶剤においてフッ素源の代替として有効である。
また、酸化チタンは、CaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤から生成されるCaO系スラグの粘度を低下させる作用がある。一例として、図1に酸化チタンとしてTiO2 を添加した1350℃における脱燐スラグの粘度を示す。図1に示すように、本発明の対象とする塩基度の範囲において、TiO2成分の増加とともに粘度は低下している。つまり、脱燐用精錬剤の一部として酸化チタンを含有する物質を使用することで、脱燐スラグの流動性が高まり、中間排滓において、転炉型容器からの脱燐スラグの排出が円滑に行われ、後続する脱炭処理においては、残留する脱燐スラグによる復燐もなく、効率良くMn鉱石の還元を行うことが可能となる。Al23 を単独で添加した場合には、CaO系スラグの粘度を低くする効果はなく、逆に若干粘度を高める作用があるが、酸化チタンと併用することで、脱燐スラグの粘度をむしろ低下させる。つまり、酸化チタンにAl23 を加えることで、脱燐スラグの粘度は低下し、復燐を防止して効率良く脱燐処理することができる。
酸化チタンには、TiO、TiO2 、Ti23 、Ti35 の形態があるが、何れの形態のものでも酸化チタン源として使用可能である。酸化チタン源である酸化チタン含有物質としては、例えば、砂鉄、イルメナイト鉱石(チタン鉄鉱)、ルチル鉱石(金紅石)、酸化チタン含有鉄鉱石などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。また、これらのなかでも、砂鉄は一般に粒径1mm以下の微粒であり、転炉型容器内で迅速に溶融することから、特に好適である。また、砂鉄を脱燐用精錬剤に配合することにより、脱燐用精錬剤のT.Fe濃度を高めることもできるので、この点からも好ましい。砂鉄は、産地によって品位が異なるが、一般にTiO2を5〜8質量%程度含有し、高いものでは13質量%程度含有するものもある。一方、イルメナイト鉱石やルチル鉱石は、通常TiO2 を30質量%以上含有している。尚、T.Fe濃度とは脱燐用精錬剤やスラグなどに含まれる全ての鉄酸化物(FeO、Fe23 など)の鉄分の合計値である。
酸化チタン源である酸化チタン含有物質としては、TiO2 換算で3質量%以上の酸化チタンを含有する物質を用いることが好ましい。酸化チタン含有量がTiO2換算で3質量%未満の物質は、CaO系媒溶剤の滓化促進効果が得られにくく、効果を得ようとすると添加量が増えてスラグ量が増大し、Mn歩留まりの低下などの問題を招いてしまう。従って、何れにしても、酸化チタンが微量に含まれる程度の物質は、酸化チタン源(酸化チタン含有物質)としては不適である。
Al23 源としては、市販のカルシウムアルミネート系媒溶剤、アルミ灰、及びボーキサイトなどのAl23 含有鉱石などを使用することができる。また、造塊滓、二次精錬スラグなどの、Al23 を高濃度に含む製鋼工程の副産物も使用することができる。
酸化チタン源及びAl23 源の添加量としては、脱燐処理後の脱燐スラグ中のTiO2換算の酸化チタンの含有量とAl23 の含有量との合計値が15質量%以下となるようにすることが好ましい。含有量の合計値が15質量%を超えると、脱燐反応に必要なCaOを薄めてしまうことになり、脱燐能力を低下させてしまい好ましくない。通常の脱燐操業においては酸化チタン(但し、TiO2換算)及びAl23 は、脱燐スラグ中に合計で1.0〜2.5質量%程度は不可避的に含まれるが、3質量%未満ではCaO系媒溶剤の滓化促進効果が十分でない。このため、両者の合計値は3質量%以上とすることが好ましい。
脱燐用精錬剤として使用するCaO系媒溶剤としては、一般には生石灰が用いられるが、石灰石などの炭酸カルシウムやCaOを多く含有する使用済みスラグなどを用いてもよい。脱燐用精錬剤は、上置き装入、溶銑中へのインジェクション、上吹きランスを介して溶銑浴面に吹き付ける(「投射」とも呼ぶ)などの任意の方法により、溶銑に供給することができる。この場合、CaO系媒溶剤や酸化チタン源などを個別に供給してもよく、予めこれらを混合してから供給してもどちらでも構わない。また、酸素源としては気体酸素源(酸素ガスまたは酸素含有ガス)及び/または固体酸素源(例えば、鉄鉱石やミルスケールなどの酸化鉄)が用いられる。このうち気体酸素源については、上吹きランスによる上吹きや溶銑中へのインジェクション或いは底吹きなどの任意の方法により、また、固体酸素源については、上置き装入、溶銑中へのインジェクション、上吹きランスを通じた投射などの任意の方法により、それぞれに溶銑に供給することができる。但し、転炉型容器を用いて行う脱燐処理では、上吹きランスから酸素ガスの上吹きを行い、必要に応じて固体酸素源を上記の方法の何れかで供給するのが一般的である。また、脱燐を効果的に行うために溶銑を撹拌することが好ましく、この撹拌としては、一般に浸漬ランスや炉底に埋め込まれたノズルなどを利用したガス撹拌が行われる。
本発明の製鋼方法における脱燐処理では、環境保全の観点から、CaF2 などのフッ素源を実質的に含まない脱燐用精錬剤を用いるか或いはフッ素源の配合量の少ない脱燐用精錬剤を用いることによって、脱燐処理後の脱燐スラグのフッ素(F)濃度が0.2質量%以下となるようにすることが好ましい。本発明の製鋼方法における脱燐処理では、前述したように、そのような脱燐用精錬剤を用いても高い脱燐効率を得ることができる。ここで、脱燐用精錬剤がフッ素源を含まないとはフッ素源を実質的に含まないことを意味し、従って、例えば不可避的不純物などとして少量のフッ素源が含まれることは妨げない。
本発明の製鋼方法における脱燐処理では、後続する中間排滓工程における脱燐スラグの流出を促進するために、溶銑の処理終点温度を1250℃以上とすることが好ましい。また、この観点から、より望ましい処理終点温度は1300℃以上である。一方、処理終点温度が高すぎると脱燐に不利な温度条件となって溶銑の燐含有量が高くなり、これを補うためには後工程の脱炭処理工程において多量のスラグが必要になり、結果として、Mn歩留まりが大きく低下する。この観点から、好ましい処理終点温度は1400℃以下である。
また本発明の製鋼方法における脱燐処理では、脱燐スラグのT.Fe濃度を10質量%以上とすることが好ましい。脱燐スラグのT.Fe濃度を10質量%以上とすることにより、脱燐に不利な低塩基度処理による脱燐効率の低下を補うことができるからである。また、この観点から、より望ましいT.Fe濃度の下限は15質量%である。一方、脱燐スラグのT.Fe濃度が30質量%を超えると、脱燐スラグとともに排出される鉄分が多くなり、鉄歩留まりの低下が無視できなくなるので、好ましくない。以上の理由から本発明の製鋼方法における脱燐処理では、脱燐スラグのT.Fe濃度は10〜30質量%が好ましく、望ましくは15〜30質量%とする。
本発明の製鋼方法では、以上のような脱燐処理を行った後、脱燐スラグの排滓つまり中間排滓を行う。この中間排滓では、脱炭工程における復燐を防止するとともに、脱炭工程でのスラグ量を極力少なくすることを目的として、生成した脱燐スラグの60質量%以上を排滓(排滓率60%以上)する必要がある。また、より望ましくは排滓率を70%以上とすることが好ましい。
中間排滓は、通常、転炉型容器を横転することによって行うが、排滓の方法としては、脱燐スラグを自然に流出させる自然流滓、機械的手段で脱燐スラグを掻き出す機械排滓などの任意の方法を採ることができる。
中間排滓後、直ちに転炉型容器を正立させ、引き続き脱炭処理を行う。この脱炭処理では、溶鋼中Mn濃度を高めるためにMn鉱石を添加することが好ましい。脱炭処理は上吹き送酸、底吹き送酸などの常法にしたがって行えばよく、基本的にその処理条件は任意である。
本発明の製鋼方法においては、(1)上記のように脱燐処理工程において高い脱燐効率で脱燐がなされること、(2)中間排滓が十分に行われるために脱炭処理工程における脱燐負荷を小さくでき、このため脱炭処理での媒溶剤の添加量を少なくすることができることによって、脱炭処理終了後の脱炭スラグの量が少なく、このためMn歩留まりが非常に高くなる。また、中間排滓を十分に行うことにより、脱炭処理工程における脱燐スラグから溶銑への復燐が抑制され、脱燐処理工程において高い脱燐効率で脱燐されたことによる効果が担保される。
上述した観点から、脱炭処理では、特に脱炭処理後に生成される脱炭スラグ量を40kg/溶銑t以下とすることが好ましく、脱炭スラグの低減化によるMn歩留まり向上が期待できる。
また、脱燐処理工程と脱炭処理工程を異なる容器を用いて分離して行う方式では、脱燐処理終了後に溶銑を出湯し、次工程の脱炭処理を行う転炉に再装入するが、このとき、溶銑の移し替えに伴う熱ロスが発生し、この熱ロスは、脱炭処理時に多量のMn鉱石の還元を行うことの阻害要因となる。これに対して、本発明のように脱燐工程と脱炭工程とを中間排滓を介して連続的に行う方法では、溶銑に熱余裕があるため、これを脱炭工程でのMn鉱石の還元に利用することができ、多量のMn鉱石を添加してもこれを効率的に還元することができる。当然、鉄スクラップの溶解用熱源としても使用することができる。
また、脱炭処理工程では、上述したようにMn鉱石とともに必要最低限の媒溶剤(生石灰など)を添加して脱炭吹錬が行われる。この脱炭処理工程における脱燐の必要性は少なく、脱炭スラグの燐濃度は低いので、脱炭処理終了後に脱炭スラグを転炉型容器内に残し、次チャージの脱燐処理を行うことにより、脱燐能が高い脱炭スラグを脱燐処理工程における脱燐用精錬剤の一部として再利用することが可能となる。これにより、脱燐処理工程における脱燐用精錬剤の削減及び使用エネルギーの削減が可能となる。更には、その脱炭スラグは、Mn鉱石還元を行った後では、Mn酸化物を高濃度に含むMn源と見なすことができるので、溶銑脱燐時のMn歩留まりの向上にも寄与する。この場合、脱炭処理終了後に転炉型容器内に残す脱炭スラグの量は、次チャージの脱燐処理工程での脱燐用精錬剤の削減及びMn歩留まり向上の効果を有意に発揮させるために、生成した脱炭スラグの30質量%以上とすることが望ましい。
以上説明したように、本発明によれば、同一の転炉型容器を用いて脱燐処理と脱炭処理とを、これらの中間に排滓工程を挟んで連続して実施して溶銑から溶鋼を製造するに当たり、溶銑の脱燐処理の際に、CaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤に加えて、酸化チタンまたは/及びAl2 3 を含有する物質を脱燐用精錬剤の一部として併用するので、CaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤の滓化が促進されて脱燐反応が促進し、脱燐速度が向上する。
また、生成される脱燐スラグの塩基度を2.5以下とするので脱燐スラグ自体の流動性が向上し、また、酸化チタンはCaO系スラグの粘度を低下させる作用があり、従って、酸化チタンを含有する物質を添加することで、脱燐スラグの流動性がより一層高まり、転炉型容器からの脱燐スラグの排出が円滑に行われ、引き続いて行われる脱炭処理においては、残留する脱燐スラグによる復燐もなく、効率良くMn鉱石の還元を行うことが可能となる。
300トン容量の転炉型容器を用いて、予め脱珪処理された高炉溶銑に対して本発明を実施(本発明例1〜4)した。脱燐処理工程では、脱燐用精錬剤としてCaF2 などのフッ素源を含有しないCaO主体の生石灰を使用し、これに酸化チタン源として砂鉄(TiO2 含有量:7.5質量%)または高Ti鉱石(TiO2 含有量:20質量%)のどちらか1種を、脱燐用精錬剤の一部として加え、上置き装入した。そして、酸素源として、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。酸素ガスの送酸条件は15000〜23000Nm3 /hrとした。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm3 /溶銑tとした。脱燐処理後の脱燐率の目標は85%以上とした。脱燐スラグの塩基度制御は、生石灰添加量の調整によって行った。
脱燐処理工程終了後、脱燐スラグを排滓し、排滓後、直ちに脱炭処理を行った。脱燐スラグの排滓は、転炉型容器を倒炉し、炉口から脱燐スラグを流出させることで行った。また、脱炭処理工程では、上吹きランスからの送酸中に、Mn源としてMn鉱石を転炉型容器内に上置き投入した。Mn鉱石の投入量は、溶鋼トン当たりMn純分で4kgとなるようにした。
また、比較のために、脱燐用精錬剤の一部として、砂鉄の代わりにスケールを使用した操業(比較例1〜3)も実施した。比較例1〜3は、砂鉄の代わりにスケールを使用した以外は、本発明例1〜4の条件に合わせて実施した。
脱燐処理条件、脱燐処理後の脱燐スラグ中のTiO2 濃度、脱燐処理工程における脱燐率、中間排滓工程での排滓率及び脱炭処理工程におけるMn歩留りを表1に示す。尚、Mn歩留りは、「Mn歩留り(%)=[脱炭後溶鋼中Mn濃度(質量%)/(脱炭前溶銑中Mn濃度(質量%)+脱炭時投入Mn原単位(kg-Mn/t)/10)]×100」の式で算出した。
Figure 0004977870
表1に示すように、本発明例1〜4においては、脱燐処理工程における脱燐率は85%以上であり、排滓率は70%以上に達した。その結果、脱炭処理工程においては、装入燐濃度が低く、少量のスラグでの吹錬が可能となったことにより、Mn歩留りは45%を超える結果が得られた。
これに対して比較例1〜3においては、酸化チタン源を脱燐用精錬剤として加えなかったことにより、85%以上の脱燐率が得られず、更に、脱燐後の中間排滓における排滓率は40%以下にとどまった。その結果、脱炭処理工程においては、装入燐濃度が高く、スラグ量を少なくすることができなかったため、Mn歩留りは低位であった。
300トン容量の転炉型容器を用いて、予め脱珪処理された高炉溶銑に対して本発明を実施(本発明例5〜8)した。脱燐処理工程では、脱燐用精錬剤としてCaF2 などのフッ素源を含有しないCaO主体の生石灰を使用し、これに酸化チタン源として砂鉄(TiO2 含有量:7.5質量%)または高Ti鉱石(TiO2 含有量:20質量%)のどちらか1種を、脱燐用精錬剤の一部として加え、上吹きランスから酸素ガスとともに溶銑浴面に吹き付けて添加した。そして、酸素源として、酸素ガスを上吹きランスで供給するとともに、鉄鉱石を主体とした固体酸素源を上置き装入した。酸素ガスの送酸条件は15000〜23000Nm3 /hrとした。酸素原単位は、脱珪に必要な酸素を除いて12Nm3 /溶銑tとした。脱燐処理後の脱燐率の目標は85%以上とした。脱燐スラグの塩基度制御は、生石灰添加量の調整によって行った。
脱燐処理工程終了後、脱燐スラグを排滓し、排滓後、直ちに脱炭処理を行った。脱燐スラグの排滓は、転炉型容器を倒炉し、炉口から脱燐スラグを流出させることで行った。また、脱炭処理工程では、上吹きランスからの送酸中に、Mn源としてMn鉱石を転炉型容器内に上置き投入した。Mn鉱石の投入量は、溶鋼トン当たりMn純分で4kgとなるようにした。
また、比較のために、脱燐用精錬剤の一部として、砂鉄の代わりにスケールを使用した操業(比較例4〜6)も実施した。比較例4〜6は、砂鉄の代わりにスケールを使用した以外は、本発明例5〜8の条件に合わせて実施した。
脱燐処理条件、脱燐処理後の脱燐スラグ中のTiO2 濃度、脱燐処理工程における脱燐率、中間排滓工程での排滓率及び脱炭処理工程におけるMn歩留りを表2に示す。尚、Mn歩留りは、「Mn歩留り(%)=[脱炭後溶鋼中Mn濃度(質量%)/(脱炭前溶銑中Mn濃度(質量%)+脱炭時投入Mn原単位(kg-Mn/t)/10)]×100」の式で算出した。
Figure 0004977870
表2に示すように、本発明例5〜8においては、脱燐処理工程における脱燐率は88%以上であり、中間排滓率は75%以上に達した。その結果、脱炭処理工程においては、装入燐濃度が低く、少量のスラグでの吹錬が可能となったことにより、Mn歩留りは48%を超える結果が得られた。
これに対して比較例4〜6においては、酸化チタン源を脱燐用精錬剤として加えなかったことにより、85%以上の脱燐率が得られず、更に、脱燐後の中間排滓における排滓率は40%以下にとどまった。その結果、脱炭処理工程においては、装入燐濃度が高く、スラグ量を少なくすることができなかったため、Mn歩留りは低位であった。
酸化チタンとしてTiO2 を添加した1350℃における脱燐スラグの粘度を示す図である。

Claims (4)

  1. 転炉型容器に溶銑を装入し、該溶銑にCaO系媒溶剤を主体とする脱燐用精錬剤と酸素源とを供給して脱燐処理を行った後、該脱燐処理で生成した脱燐スラグの少なくとも一部を転炉型容器から排出し、その後、引き続き転炉型容器内の溶銑に酸素源を供給して脱炭処理を行い、溶銑から溶鋼を製造する製鋼方法において、
    前記脱燐処理では、処理後に生成される脱燐スラグの塩基度(質量%CaO/質量%SiO2 )を2.5以下とするとともに、脱燐用精錬剤の一部として酸化チタン源または酸化チタン源及びAl23 源を使用することにより脱燐スラグの粘度を低下させ、且つ、脱燐処理後には、生成した脱燐スラグの60質量%以上を転炉型容器から排出することを特徴とする製鋼方法。
  2. 前記脱燐スラグのTiO2 換算の酸化チタンの含有量とAl23の含有量との合計値が3〜15質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の製鋼方法。
  3. 前記脱炭処理は、Mn鉱石を供給して行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製鋼方法。
  4. 前記脱燐スラグのフッ素含有量が0.2質量%以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載の製鋼方法。
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