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JP4976311B2 - N−ビニル−2−ピロリドンの製造方法 - Google Patents

N−ビニル−2−ピロリドンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高純度N−ビニル−2−ピロリドンの安定的な製造方法に関する。
N−ビニル−2−ピロリドン(以下、「NVP」と略す)は、反応性希釈剤として有用であり、また、NVPの重合体は、生態適合性、安定性、親水性などの長所、利点があることから、医薬品、化粧品、粘接着剤、塗料、分散剤、インキ、電子部品、フォトレジスト材料などの種々の分野で幅広く用いられている。
これらの分野では不純物を除去する要求が強い。そのため、NVPを高純度にする方法が求められており、母液中の不純物の濃度を一定に保つように制御することが提案されている(例えば、特許文献1)。
また、結晶析出工程の段階数を減らして消費されるエネルギーの利用効率を高めつつ、極めて高純度のNVPを得る方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
特開2004−345994号公報 特開2004−345993号公報
特許文献1及び特許文献2では、第1の結晶化工程からの母液は第1の結晶化工程に戻して循環使用しているため、第1の結晶化工程に供されるNVPの純度は総じて低く、結果的に得られたNVPの純度も低くなりやすく、そのため結晶精製工程の負荷も高い。また、高純度のNVPを得るためには、精製工程に時間がかかり、生産効率の向上の点でも十分でない場合がある。
本発明者らは、前記課題を解決すべき鋭意検討を行った結果、第1の結晶化工程からの母液を第2の結晶化工程に送ることによって、第1の結晶化工程からは高純度のNVPを得ることができ、さらに生産効率が向上することを見出した。
また、特許文献1では、得られるNVPの品質が劣化しないように、晶析装置の入口における粗NVP液中の不純物濃度を一定に保つように制御することが好ましいとされているが、不純物濃度の詳細な制御内容については全く記載されていない。
不純物濃度の条件によっては、晶析装置内の伝熱面に結晶が析出して詰まりが発生する。そのため、運転を停止させなければならず、安定的にNVPを製造できない場合があることがわかった。
そこで、本発明者らは水分濃度に着目し、原料NVP液中の水分濃度を特定の範囲内で制御することによって、運転を停止させることなく、安定的に高純度のNVPを製造できることを見出した。
本発明によれば、少なくとも2以上の結晶化工程を有し、原料N−ビニル−2−ピロリドンを第1の結晶化工程に供給し、第1の結晶化工程からの母液を第2の結晶化工程に供給し、必要により結晶化工程からの結晶は発汗現象を利用した結晶精製工程に供給することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法を提供することができる。
本発明によれば、原料NVP液中の水分濃度を特定の範囲内に制御することによって、伝熱面に析出した結晶によって晶析装置を詰まることなく、安定的に高純度のNVPを製造することができる。
以下、本発明の実施の一形態について詳しく説明する。
本発明の第1の態様によれば、少なくとも2以上の結晶化工程を有し、第1の結晶化工程からの母液を第2の結晶化工程に供給し、必要により結晶化工程からの結晶は発汗現象を利用した結晶精製工程に供給することを特徴とするNVPの製造方法を提供することができる。
添付図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
図1はNVPを晶析により精製する一方法を示す説明図である。
図1において、NVPの精製は二つの晶析装置12,13と結晶精製装置14を組み合わせて行う。第1の結晶化工程には蒸留NVP11のみが供給され、第2の結晶化工程には回収母液が供給される。
原料NVPとしては、晶析装置12を用いる第1の結晶化工程では、蒸留NVP11を、晶析装置13を用いる第2の結晶化工程では、第1の結晶化工程からの母液と、第2の結晶化工程からの母液と、必要により、結晶精製装置14に用いた結晶精製工程からの母液と発汗液を混合し、水分濃度を調節して得る。原料NVPは、第1の結晶化工程で結晶とし、ろ過して得られた粗結晶を結晶精製工程で精製して製品15とする。第2の結晶化工程から得られた粗結晶を結晶精製工程に送り、同様に精製して製品15とする。
蒸留NVPは回収母液に比べて不純物量が少ないため、純度の高い結晶が得られる。よって、結晶精製工程に供給される結晶の純度は、回収母液が原料となっている結晶を供給している場合に比べて高いため、製品NVPの純度が向上する。また、結晶精製工程の負荷が低くなることから、生産量の増加にもつながる。
この方法において、不純物の濃度を調整するため、結晶精製工程から回収された母液と発汗液から、一部を廃棄する。すなわち、母液の不純物濃度が、通常、10%以下、好ましくは6%以下に制御する。
第1の態様における第1の結晶化工程、第2の結晶化工程及び精製工程は、連続的に運転することが可能である。各工程を別個独立に運転してもよいが、生産効率の点から連続運転することが望ましい。
次に、第1の態様における各工程について順次説明する。
(i)晶析装置の入口に供給される原料NVP
第1の態様において、供される原料NVPとしては、各種製造方法で合成された粗NVPが使用でき、例えば、2−ピロリドンをアセチレンでビニル化して得られた粗NVP;ブチロラクトンにエタノールアミンを作用させて1−(β−オキシエチル)−2−ピロリドンとし、水酸基を塩化チオニルで塩素に変え、脱水塩として得られた粗NVP;N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドンと無水酢酸との反応によって得られる酢酸エステル中間体を、脱酢酸して得られた粗NVP;およびN−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを触媒の存在下、気相で分子内脱水反応させて得られた粗NVP(「気相脱水反応」と略称する場合もある。)などが挙げられる。
NVPの融点は13.5℃である。
粗NVPは、不純物が少ない場合には、そのまま晶析用原料として用いてもよいが、不純物が多い場合には、分別蒸留などの公知の方法で精製した後に、晶析用原料として用いる。不純物としては、水、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンの分解生成物である2−ピロリドン、未反応原料であるN−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、重合体ポリマーなどが挙げられる。
通常、蒸留したNVPを晶析の原料として用いることができる。蒸留によって除去される不純物と晶析によって除去される不純物は必ずしも共通しないため、両者を組み合わせることにより純度をより高めることができる。純度は特に制限を受けないが、NVPの純度が約97%〜約99%の範囲にあることが好ましい。なお、99.95%を超える場合であっても、得られるNVPの純度よりも低ければ、問題なく使用することができる。NVPは公知の方法で蒸留することができる。例えば、特許文献1を参照のこと。
結晶化工程、ろ過工程、及び結晶精製工程などで発生するNVPを含む液を回収して、晶析の原料の一部としてもよい。該混合は、公知の攪拌機を用いて行う。蒸留したNVPとの混合比率は、特に制限されることなく、適宜調整する。
(ii)結晶化工程
晶析とは、液体のNVPを過冷却にして結晶として取り出すことができる方法であれば特に制限はない。晶析方法それ自体については公知の装置および方法を採用できる。晶析装置としては、例えば、強制循環型、多段晶析装置、運搬層型、分級層型、タービュレント型混合分級層、ダブルクリスタライザー、直接冷媒接触冷却晶析装置、凝集物生成方法などの連続晶析装置;タンク式晶析装置、スエンソン−ウォーカー晶析器、ホワード晶析器、ドラムフレーカーなどの冷却式晶析装置が挙げられる。
該晶析装置では、水、エチレングリコール水溶液などの冷媒を利用し、原料NVP液を結晶化させる。結晶化は、出口から排出される母液中のスラリー(析出した結晶を含む母液)濃度を所定濃度、例えば、5〜60%になるように、排出液の温度を調整(例えば、−20℃〜13.5℃)し、滞留時間を調整しながら連続的に処理することによって行うことが好ましい。この母液(晶析装置内の原料NVP)は、再度結晶化工程に回すことが可能である。
この際、原料NVP液および母液の中に安定剤を存在させて晶析を行ってもよい。安定剤としては、NVPの重合を防止できれば何ら制限はない。例えば、フェノール系酸化防止剤またはアミン系重合防止剤が挙げられる。これらの安定剤は単独でも又は複数を用いてもよい。なかでも、NVPの重合の防止能の点から、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、または2,6−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンが望ましい。安定剤の量は、NVPの重合が防止または低減できる量であれば、特に制限されない。NVPの質量を基準とし、通常、1.5質量%以下(ゼロを含まない)、好ましくは0.1ppm〜1.0質量%の範囲で安定剤が存在することが望ましい。
安定剤の添加方法は、安定剤を晶析装置の入口の原料NVP液または母液にそのまま添加してもよい。原料NVPに所定量の安定剤を溶解または分散させた状態または安定剤の存在下で晶析を行うことにより、NVPの重合の防止または低減ができ、それによって液またはスラリーの粘性の上昇を防止することができる。出口から排出されたスラリーは、次のろ過工程、さらには結晶精製工程に送ってもよい。
さらに、前記母液は運転が進むにつれて不純物が濃縮されるため、少なくとも一部を系外に排出する必要が出てくる場合も考えられる。このときの母液は廃棄してもよいが、製品ロスを削減するために、これらの母液を回収することが好ましい。これらの母液の回収時には前述の安定剤を添加しておくことができる。回収する方法としては、付加的な精製方法に供給すれば良く、具体的には、蒸留、ろ過、遠心分離、吸着、抽出精製などが挙げられる。
前記精製方法としては、公知の精製方法を採用することができ、蒸留精製としては単蒸留、連続多段蒸留、回分多段蒸留などの方法が挙げられる。ろ過精製としては、加圧ろ過、減圧ろ過、重力ろ過などの方法が挙げられる。遠心分離精製としては、遠心沈降や遠心ろ過などが挙げられる。吸着精製としては、活性炭、シリカゲル、アルミナ、モレキュラーシーブなどの吸着剤を用いた固定層吸着、移動層吸着、流動層吸着、攪拌層吸着などが挙げられる。抽出精製としては、回分抽出、多回抽出、半回分抽出、多重抽出などが挙げられる。
(iii)ろ過工程
ろ過は、得られた結晶相および液体残分相を分離できれば特に制限されることはない。通常、公知の連続式またはバッチ式のろ過方法を採用して行う。
(iv)結晶精製工程
結晶精製工程は使用に制限はないが、得られるNVPの純度を高めたいときに使用することが好ましい。結晶精製は、特に限定されないが発汗を利用する結晶の精製が好ましい。発汗とは、NVP結晶の一部を融解することにより、結晶の比較的不純物部分を融解させ、これにより結晶の精製がおこなわれれば何ら制限されるものではない。例えば、塔型精製装置(呉羽テクノエンジ株式会社製「KCP」)、流下液膜型装置(MWB)などを用いて行う。
第1の結晶化工程及び第2の結晶化工程からの結晶は、溶融させることなく、結晶のまま移送することが、エネルギー効率の面から好ましい。
この工程で発生した不純物を含む液は、第2以降の結晶化工程からの母液と混合して用いることができる。
さらに、本発明のその他の形態について詳しく説明する。
本発明の第2の態様に基づく方法は、高純度のNVPを安定的に製造する方法であって、晶析装置の入口における原料NVP液中の水分量を所定の範囲内に制御して行うことを特徴とする。ここで、その方法は、製造工程において少なくとも一度は結晶化工程を含み、その結晶化工程には、例えば、多段分別結晶法、単一または複数の動態的および静態的な晶析段階を含む方法、および晶析処理をした後に結晶精製する方法などが挙げられる。少なくとも第一の結晶化工程の入口で水分調整は必要だが、第二以降の結晶化工程では制御していてもよく、場合によっては制御しなくてもよい。
次に、晶析装置の入口に供給される原料NVP、結晶化工程、ろ過工程及び結晶精製工程について順次説明する。この方法は第1の態様に適用できることから、第1の態様と重複する部分の説明は省略する。特に、各工程の組み合わせ方及び水分調整の点が主な相違する点である。
(i')晶析装置の入口に供給される原料NVP
第2の態様で着目する物質は水であり、晶析装置の入口における原料NVP液中の水分濃度の値は、原料NVP液全体を基準とし、0.7質量%以上、10質量%以下が好ましく、さらに、0.8質量%以上、7質量%以下がより好ましく、特に、1質量%以上、5質量%以下が最も好ましい。
該水分濃度が0.7質量%未満の場合には、晶析装置内の伝熱面にNVPなどの結晶が付着して晶析装置が詰まり、運転の停止を余儀なくされる。一方、該水分濃度が10質量%を超える場合は、NVPの生産量が低下するため、工業的、及び経済的な観点から好ましくない。
晶析装置の入口における該水分濃度は、前記範囲内に収まるように制御する。その制御方法は、特に限定されないが、調整タンクを設置し、その中に粗NVPを導き、該水分濃度を測定し、測定結果に基づいて粗NVPを追加し、あるいは水分を追加することにより制御する方法や、該水分濃度を測定し、その結果に基づき、晶析装置の入口前の配管ラインなどに設けられたスタティックミキサーなどの装置を用いて、粗NVPを追加し、あるいは水分を追加することにより制御する方法が挙げられる。
晶析装置の入口における原料NVP液のpH値は、6.0以上、13.0以下が好ましく、さらに6.5以上、12.5以下がより好ましく、特に7.0以上、12.0以下の範囲が最も好ましい。pH値が前記範囲外のときには、NVPの生産量が低下するため、工業的、及び経済的な観点から好ましくない。
さらに、晶析装置の入口における原料NVP液は、凍らない範囲であれば特に制限されないが、その温度は、7.0℃以上、30.0℃以下が好ましく、さらに9.0℃以上、25.0℃以下がさらに好ましく、特に、11.0℃以上、20.0℃以下の範囲が最も好ましい。該温度が高すぎる場合には、NVPを結晶化させるために大きなエネルギーが必要となり、安定な生産に支障をきたすため、前記範囲内とすることが望ましい。
用いられる温度計としては、測温抵抗体を使用し、該温度計を設置してから1分後に示した値をその温度とする。場合によっては、熱伝対を使用することも可能である。
次に、添付図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
第1の態様において説明した図1に記載した方法にも、第2の態様を適用することができる。すなわち、少なくとも二つの晶析装置を用い、蒸留NVPを第1の晶析工程の原料とし、第1の晶析工程から回収したNVPと第2の晶析装置から回収したNVPを混合し、水分濃度を調節して原料とする。
図2はNVPを晶析により精製する別の方法を示す説明図である。
図2において、NVPの精製は晶析装置22を用いて行う。一つの晶析装置を用い、蒸留したNVP及び晶析工程から回収したNVPを混合し、水分濃度を調節する。すなわち、原料NVPは、蒸留NVP21と結晶化工程から回収された母液を混合し、水分濃度を調節して得る。原料NVPは晶析装置22を用いて精製し、ろ過して得られた結晶を製品25とする。
この方法において、不純物の濃度を調整するため、結晶化工程から回収された母液から、一部を廃棄する。すなわち、母液の不純物濃度が、通常、10%以下、好ましくは6%以下に制御する。この点については、図3の場合も、同様に行う。
図3はNVPを晶析により精製する他の方法を示す説明図である。
図3において、NVPの精製は晶析装置32と結晶精製装置34とを組み合わせて行う。結晶精製装置を組み合わせることにより、晶析装置単独の場合に比べて、より高純度のNVPが得られる。
一つの晶析装置と一つの結晶精製装置を用い、蒸留したNVP、晶析工程、必要により、結晶精製工程から回収したNVPを混合し、水分濃度を調節する。すなわち、原料NVPは、蒸留NVP31と、晶析装置32を用いた結晶化工程から得られた回収母液と、必要により、結晶精製装置34に用いた結晶精製工程から得られた母液と発汗液を混合した後、水分濃度を調節して得る。原料NVPは晶析装置32で処理し、ろ過して得られた粗結晶を結晶精製装置34で精製して製品35とする。
この方法において、不純物の濃度を調整するため、結晶精製工程から回収された母液と発汗液から、一部を廃棄する。
図4はNVPを晶析により精製するその他の方法を示す説明図である。
図4において、蒸留NVP41を晶析装置42を用いる晶析工程で結晶化を行い、得られた結晶を製品45とする。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。しかしながら、実施例は本発明を限定するものではない。
<晶析原料となる原料NVPの調整方法>
(実施例I)
結晶化工程に供給する原料となるNVPは、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを気相脱水反応した後、蒸留法で精製して得たものを用いる。得られた粗NVPの純度は、97.3125%、有機不純物量:21600ppmであった。有機不純物としては、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンの分解生成物である2−ピロリドン、未反応原料であるN−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、重合物などである。
(実施例II)
結晶化工程に供する原料NVPは、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドンを気相脱水反応した後、蒸留法で精製して得たものを用いる。蒸留NVPの純度は98.85〜98.40%、水分濃度は0.02〜0.03%の範囲にあった。
原料NVP及び実施例におけるNVPなどのNVP濃度についてはガスクロマトグラフィーで、水分濃度についてはカールフィッシャー法で、pHについてはpH計でそれぞれ測定する。
<ガスクロマトグラフィーによるNVP濃度の測定方法>
ガスクロマトグラフィー(カラム:SPELCO製;DB−1,キャリアガス:He,流量:17.2mL/min、温度:60−250℃)を用いて、NVPの濃度(純度と称する場合もある)を測定する。
<カールフィッシャーによる水分濃度の測定方法>
カールフィッシャー(METTLER製DL18型;メタノール溶媒)を用いて水分濃度を測定する。
<pHの測定方法>
50mLスクリュー管にpH6から7に調整した純水45gを秤量し、次いで該サンプルを5g秤量して混合し、該組成物の10質量%水溶液を作製する。1分以内にpH計にセットし、25℃で1分間、200rpmで攪拌後、2分間静置して、その時のpH値を読み取る。
pH計(HORIBA製作所製;F−12型、電極形式#6366−10D)
(実施例I−1)
粗NVPを横型多段冷却晶析装置1(第1の結晶化工程)に連続的に供給し、NVP結晶と母液を含むスラリーを得た。前記晶析装置1への粗NVP液の供給速度75kg/h、温度6.5℃、滞留時間が4時間の条件で操作した。
得られたスラリーをベルト状ろ過機でろ過した。得られたNVP結晶は純度99.1975%、有機不純物量は5150ppmであった。このときのNVP結晶発生速度は15kg/hであった。
ろ過後の結晶は、後述の第2の結晶化工程からの結晶と混合し、50kg/hの供給速度で連続的に塔型精製装置に供給した。その装置で、滞留時間が0.5時間、塔頂部において30〜50℃の温水で昇温させることによって、超高純度NVPを35kg/hの速度で得た。得られたNVPを分析した結果、純度99.9920%、有機不純物量50ppmであった。
第1の結晶化工程からのベルトろ過後の母液は、第2の結晶化工程からの母液と混合して横型多段冷却晶析装置2(第2の結晶化工程)に連続的に供給し、NVP結晶と母液を含むスラリーを得た。このときの母液の供給速度85kg/h、温度6.5℃、滞留時間が2.5時間の条件で操作した。得られたNVP結晶は純度98.9930%、有機不純物量7700ppmであった。このときのNVP結晶の発生速度は35kg/hであった。
前記晶析装置2からのスラリーをベルト状ろ過機でろ過した後の母液は、25kg/hの速度で前記晶析装置2に返送した。
(実施例I−2)
粗NVPをドラムフレーカー(第1の結晶化工程)に連続的に供給し、NVP結晶と母液を得た。ドラムフレーカーへの粗NVP液の供給速度75kg/h、温度6.5℃、ドラム表面積2m、滞留時間が2時間の条件で操作した。得られたNVP結晶は純度99.0995%、有機不純物量は6300ppmであった。このときのNVP結晶の発生速度は7.5kg/hであった。
前記結晶および後述の第2の結晶化工程からの結晶を混合し、50kg/hの供給速度で連続的に塔型精製装置に供給した。その装置で、滞留時間0.5時間、塔頂部において30〜50℃の温水で昇温させることによって、超高純度NVPを35kg/hで得た。得られたNVPを分析した結果、純度99.9910%、有機不純物50ppmであった。
ドラムフレーカーからの母液は第2の結晶化工程から返送される母液と混合し、横型多段冷却晶析装置(第2の結晶化工程)に連続的に供給してNVP結晶と母液を含むスラリーを得た。このときの母液の供給速度は102kg/h、温度6.5℃、滞留時間が3時間の条件で操作した。得られたNVP結晶は、純度98.9475%、有機不純物量は8400ppmであった。このときのNVP結晶の発生速度は、42.5kg/hであった。
前記晶析装置2からのスラリーをベルトろ過機でろ過した後の母液は、35kg/hの速度で前記晶析装置2に返送した。
(実施例I−3)
粗NVPを横型多段冷却晶析装置1(第1の結晶化工程)に連続的に供給し、NVP結晶と母液を含むスラリーを得た。前記晶析装置1への粗NVP液の供給速度75kg/h、温度6.5℃、滞留時間が4時間の条件で操作した。得られたスラリーをベルトろ過機でろ過した。得られたNVP結晶は、純度98.9995%、有機不純物量は6500ppmであった。このときのNVP結晶の発生速度は15kg/hであった。
ベルトろ過後の母液は第2の結晶化工程から返送された母液と混合し、横型多段冷却晶析装置2(第2の結晶化工程)に連続的に供給してNVP結晶と母液を含むスラリーを得た。このときの母液の供給速度は、85kg/h、温度6.5℃、滞留時間は2時間の条件で操作した。得られたNVPは、純度98.9040%、有機不純物量は7500ppmであった。このときのNVP結晶発生速度は、35kg/hであった。
ろ過後の母液は25kg/hの速度で第2の結晶化工程に返送し、ろ過後の結晶は35kg/hの速度で塔型精製装置に供給した。その装置で、滞留時間0.5時間、塔頂部において30〜50℃の温水で昇温させることによって、超高純度NVPを25kg/hで得た。得られたNVPを分析した結果、純度が99.9885%、有機不純物量が70ppmであった。
(実施例I−4)
粗NVPをタンク晶析槽(第1の結晶化工程)に連続的に供給し、NVP結晶と母液を含むスラリーを得た。タンク晶析槽への粗NVP液供給速度75kg/h、温度6.5℃、滞留時間が4時間の条件で操作した。次に、得られたスラリーを遠心分離機で結晶と母液に分離した。得られたNVP結晶は純度99.1755%、有機不純物量は5500ppmであった。このときのNVP結晶の発生速度は15kg/hであった。
分離後の母液は第2の結晶化工程から返送された母液と混合し、横型多段冷却晶析装置(第2の結晶化工程)に連続的に供給してNVP結晶と母液を含むスラリーを得た。このときの母液の供給速度は85kg/h、温度6.5℃、滞留時間は2時間の条件で操作した。得られたNVPの純度は98.194%、有機不純物量は7500ppmであった。このときのNVP結晶の発生速度は35kg/hであった。
第2の結晶化工程からのスラリーをベルトろ過機でろ過した後の母液は、25kg/hの速度で第2の結晶化工程に返送した。
一方、ろ過後の結晶は第1の結晶化工程からの結晶と混合し、50kg/hの速度で連続的に塔型精製装置に供給した。その装置で、滞留時間0.5時間、塔頂部において30〜50℃の温水で昇温させることによって、超高純度NVPを35kg/hで得た。得られたNVPを分析した結果、純度は99.9765%、有機不純物量は70ppmであった。
(比較例I−1)
粗NVPを横型多段冷却晶析装置(第1の結晶化工程)に連続的に供給し、NVP結晶と母液を含むスラリーとした。前記晶析装置への母液の供給速度は75kg/h、そのなかで、バージン品の粗NVPが10kg/h及び第1の結晶化工程からの回収母液が65kg/hであった。これらを混合して供給し、温度6.5℃、滞留時間が4時間の条件で操作した。このときのNVP結晶の発生速度は15kg/hであった。
次いで、前記スラリーを第1の結晶化工程から排出し、ベルトろ過機でろ過した。得られたNVPは純度97.3985%、有機不純物量は15450ppmであった。
ろ過後の結晶は連続的に塔型精製装置に供給し、滞留時間1時間で操作することによって、高純度NVPを10.5kg/hで得た。このときのNVPの純度は98.6795%、有機不純物量は8350ppmであった。
(比較例I−2)
横型多段冷却装置を並列し、第1の結晶化工程および第2の結晶化工程とした。粗NVPを各結晶化工程に連続的に供給し、NVP結晶と母液を含むスラリーとした。各結晶化工程への母液の供給速度は37.5kg/h、そのなかでバージン品の粗NVPが5kg/hおよび各結晶化工程からの回収母液を32.5kg/hとした。これらを混合して供給し、温度6.5℃、滞留時間が6時間の条件で操作した。このときのNVP結晶の発生速度はそれぞれ15kg/hであった。
次いで、前記スラリーを各結晶化工程から排出し、ベルトろ過機でろ過した。第1の結晶化工程から得られたNVPの純度は97.1825%、有機不純物量は16850ppm、第2の結晶化工程から得られたNVPの純度は97.2225%、有機不純物量は16550ppmであった。
各結晶化工程からのろ過後の結晶は混合し、連続的に塔型精製装置に供給した。滞留時間は1時間の条件で操作することによって、NVPを10.5kg/hで得た。このときのNVPの純度は98.3465%、有機不純物量は9650ppmであった。
実施例I−1〜4及び比較例1〜2の結果を表I−1に示す。
Figure 0004976311
各実施例における第1の結晶化工程から得られたNVPは、比較例に比べて、総じて高純度のものが得られた。同様に、第2の結晶化工程からのNVPの純度も、比較例2よりも、高いものであった。よって、第1の結晶化工程からの母液を第2の結晶化工程に供給することで、高純度のNVPが得られるという本発明の効果が実証された。
さらには、各結晶化工程から高純度のNVPが得られることで、発汗現象を利用した精製工程の効率が向上した。これは表I−1からわかるように、比較例に対し、滞留時間は半分であるにもかかわらず、同量のまたは2倍の結晶の発生速度で、比較例よりも、純度の高いNVPが精製されることが明らかである。
第1の結晶化工程からの母液を第2の結晶化工程に送ることによって、高純度のNVPを効率よく製造することができる。
(実施例II−1)
図4に記載の方法に従ってNVPの精製を行った。
水分濃度0.02質量%、純度98.80%の蒸留NVPに水分を添加して1.18質量%に調整した原料NVP(pH11.0、温度11.3℃)を供給速度75kg/hで横型多段冷却装置に連続的に供給し、温度6.5℃、滞留時間4時間で連続7日間の晶析精製を行った。その結果、晶析装置の伝熱面に結晶が付着することなく、連続運転が可能であり、晶析装置を停止することなく、純度99.98%以上のNVPが安定的に得られた。
(実施例II−2)
図2に記載の方法にしたがってNVPの精製を行った。
水分濃度0.02質量%、純度99.12%の蒸留NVPと水分濃度2.20質量%、純度98.54%の晶析装置からの回収NVPを質量比4:6で混合し、水分を添加して3.57質量%に調整した原料NVP(pH11.3、温度13.2℃)を使用した以外は、実施例II−1と同様にして晶析運転を行った。その結果、晶析装置の伝熱面に結晶が付着することなく、連続運転が可能であり、晶析装置を停止することなく、純度99.97%以上のNVPが安定的に得られた。
(実施例II−3)
図2の方法に従ってNVPの精製を行った。
水分濃度0.03質量%、純度99.24%の蒸留NVPと水分濃度1.80質量%、純度98.33%の晶析母液からの回収NVPを質量比4:6で混合し、水分を添加して8.89質量%に調整した原料NVP(pH11.0、温度10.1℃)を使用した以外は、実施例II−1と同様にして晶析運転を行った。このときNVPの品質を低下させないように晶析母液を2L/hで廃棄したため、水分を0.2L/hで追加し、水分濃度を一定に保つように操作した。その結果、晶析装置の伝熱面に結晶が付着することなく、連続運転が可能であり、晶析装置を停止することなく、純度99.95%以上のNVPが安定的に得られた。
(実施例II−4)
図3の方法に従ってNVPの精製を行った。
水分濃度0.03質量%、純度98.99%の蒸留NVPと水分濃度1.15質量%、純度98.08%の晶析母液からの回収NVPを質量比4:6で混合し、水分を添加して0.91質量%(pH10.8、温度12.2℃)に調整した原料NVPを供給速度75kg/hで横型多段冷却装置に連続的に供給し、温度6.5℃、滞留時間4時間で連続7日間の晶析精製を行った。このときNVPの品質を低下させないように晶析母液を4L/hで廃棄したため、水分を8時間おきに0.4Lずつ追加し、水分濃度を一定に保つように操作した。その結果、晶析装置の伝熱面に結晶が付着することなく、連続運転が可能であり、晶析装置を停止することなく、純度99.95%以上のNVPが安定的に得られた。得られたNVPは、発汗現象を利用した塔型精製装置に供給して更に精製したところ、純度99.99%以上のNVPを得ることができた。
(比較例II−1)
図2の方法に従ってNVPの精製を行った。
水分濃度0.02質量%、純度97.87%の蒸留NVPと水分濃度0.56質量%、純度98.33%の晶析母液からの回収NVPを質量比4:6で混合し、水分を添加しなかった原料NVP(pH10.3、温度11.9℃)を使用した以外は、実施例II−1と同様にして晶析運転を行った。その結果、運転開始から5時間後には晶析装置の伝熱面に結晶が付着し始め、生産量が徐々に低下し、23時間後には運転を停止しなければならなかった。
(比較例II−2)
図2の方法に従ってNVPの精製を行った。
水分濃度0.03質量%、純度99.43%の蒸留NVPと水分濃度0.69質量%、純度98.33%の晶析母液からの回収NVPを質量比4:6で混合した原料NVP(pH10.3、温度6.5℃)を使用した以外は、実施例II−1と同様にして晶析運転を行った。このときNVPの品質を低下させないように晶析母液を4L/hで廃棄したが、水分を添加しなかった。その結果、運転開始から3時間後には晶析装置の伝熱面に結晶が付着し始め、生産量が徐々に低下し、11時間後には運転を停止しなければならなかった。
(実施例II−5)
図2に記載の方法にしたがって、NVPの精製を行った。
蒸留精製により得られた水分濃度0.02%のNVPと横型多段冷却晶析装置から回収された水分濃度0.47%の母液を、およそ1:6(質量比)の割合で混合した液に水分を添加して、水分濃度1.75質量%、pH値11.7、温度13.0℃に調整した原料NVPを晶析装置に連続的に供給した。
原料供給速度を75kg/h、スラリー濃度を20%に調整し、温度7.0℃、滞留時間を4時間の条件で、晶析操作を行った。
7日間連続で運転した結果、晶析装置の伝熱面に結晶が付着することなく、純度99.98%以上のNVPを安定的に得ることができた。
前記した内容は発明の好ましい実施態様であり、種々の変更及び修正は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の範囲内においてなされると理解すべきである。
NVPを晶析により精製する一方法を示す説明図である。 NVPを晶析により精製する別の方法を示す説明図である。 NVPを晶析により精製する他の方法を示す説明図である。 NVPを晶析により精製するその他の方法を示す説明図である。
符号の説明
11 蒸留NVP、
12 晶析装置、
13 晶析装置、
14 結晶精製装置、
15 製品。

Claims (7)

  1. 少なくとも2以上の結晶化工程を有し、蒸留した原料N−ビニル−2−ピロリドンを第1の結晶化工程に供給し、第1の結晶化工程からの母液を第2の結晶化工程に供給し、結晶化工程からの結晶は発汗現象を利用した結晶精製工程に供給することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法。
  2. 第2の結晶化工程から母液を第2の結晶化工程に返送することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. N−ビニル−2−ピロリドンを晶析により精製する製造方法であって、晶析装置の入口における蒸留した原料N−ビニル−2−ピロリドン液中の水分濃度を、原料N−ビニル−2−ピロリドン液の総質量を基準とし、0.7質量%以上、10質量%以下に制御することを特徴とするN−ビニル−2−ピロリドンの製造方法。
  4. 前記原料N−ビニル−2−ピロリドン液のpH値は、6.0から13.0の範囲にあることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 前記原料N−ビニル−2−ピロリドン液の温度は、7.0℃から30.0℃の範囲にあることを特徴とする請求項3または4記載の製造方法。
  6. 前記原料N−ビニル−2−ピロリドンに、精製工程から回収したN−ビニル−2−ピロリドンを添加し、前記水分濃度の制御をすることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記水分濃度は、原料N−ビニル−2−ピロリドン液の総質量を基準とし、0.8質量%以上、7質量%以下の範囲にある請求項3〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
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