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JP4969414B2 - 顔料インク用インクジェット記録媒体 - Google Patents

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JP4969414B2 JP2007287589A JP2007287589A JP4969414B2 JP 4969414 B2 JP4969414 B2 JP 4969414B2 JP 2007287589 A JP2007287589 A JP 2007287589A JP 2007287589 A JP2007287589 A JP 2007287589A JP 4969414 B2 JP4969414 B2 JP 4969414B2
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Description

本発明は、顔料インクを用いて記録を行なう顔料インク用インクジェット記録媒体に関する。
近年の情報技術産業の急速な発展に伴ない、種々の情報処理システムが開発されると共に、各々の情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も実用化されている。これらの中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録材料に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から広く利用されるようになっている。そして、インクジェット記録方法を利用した記録では、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきている。
インクジェット記録用の記録材料は一般に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)ドット径が適正で均一であること(滲みのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)画像部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)白色度が高いこと、(9)保存安定性が高いこと(長期保存で黄変着色や画像の滲みのないこと)、(10)変形しにくく寸法安定性が良好であること(低カールであること)、(11)ハード走行性が良好なこと等の特性を持つことが求められている。
上記に鑑み、近年ではインクを受容する層が多孔質構造を有する記録材料が実用化されている。これによれば、速乾性に優れ、高い光沢が得られるとされている。ところが、記録画像に対する品質は常に高いものが求められる傾向にあり、速乾性や光沢以外にも、脆性が小さく、写像性、色合いや彩り等の点でブロンジングなどの発生がないことが重要である。
上記に関連して、インク受理層上にカルナバロウ等の熱可塑性樹脂からなる表面層を形成し、インクジェット記録方式により顔料インクを付着して画像形成する記録媒体に関する開示があり(例えば、特許文献1参照)、顔料インクでのブロンズ現象を防止できるとされている。
また、耐水性を持たせるために、インクジェット用シートの表面に、ガラス転移温度(Tg)の異なる2種類のエマルジョン樹脂を混合して塗布、乾燥して表面層を設けることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
上記以外には、水性媒体中、アルコール性水酸基を含有する水溶性高分子の存在下に単量体を重合して得られた重合体からなる有機顔料を含有するインクジェット記録媒体に関する開示があり(例えば、特許文献3参照)、高い光沢、印字濃度、表面強度が得られるとされている。
特開2001−205918号公報 特開2000−318306号公報 特開2005−262619号公報
しかし、上記したカルナバロウ等の熱可塑性樹脂からなる表面層をインク受理層上に設けた記録媒体のように、単に熱可塑性樹脂からなる表面層を設けるのみではむしろ、樹脂膜で覆われることになり、インク吸収性、脆性を確保することはできない。
また、上記のカルナバロウのようなラテックスに高Tgのラテックスを混合する等、Tgの異なる2種類のエマルジョン樹脂を混合することで、インク吸収性を改善し得るが、顔料インクを用いた画像のブロンジングを抑制するには熱定着が不可欠である。
本発明は、上記に鑑みされたものであり、インク吸収性、光沢性及び写像性に優れると共に、顔料インクを用いた記録後のインク受容層でのブロンジングの発生及び脆性が抑制されたインクジェット記録媒体を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
本発明は、製造時の乾燥過程での乾燥風温度を基準にこれより高いTgのラテックスと低いTgのラテックスとを併用し、その少なくとも一方をポリビニルアルコール(PVA)等の水溶性高分子存在下でモノマーを重合させたPVAグラフトラテックス等の含PVAラテックスで構成すると、付与された顔料インク、特にこれに含まれる高沸点溶剤の作用を受けてラテックス中の粒子のPVA(好ましくは粒子にグラフト結合するPVAグラフト鎖の部位)が可塑化されて、記録後の平滑性を高め、インク吸収性を損なうことなく、脆性を小さく抑える皮膜の形成が可能になるとの知見を、かかる知見に基づいて達成されたものである。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 支持体上に、該支持体側から順に、気相法シリカ及び水溶性バインダーを含む第1のインク受容層と、支持体上に付与された後の乾燥時の乾燥風温度Tより高いガラス転移温度Tを有する第1のラテックス、及び前記乾燥風温度Tより低いガラス転移温度Tを有する第2のラテックスを含む第2のインク受容層とを有し、前記第1のラテックス及び前記第2のラテックスの少なくとも一方は、ポリビニルアルコールを含む水溶性高分子の存在下で単量体を重合させて得られた含PVAラテックスである顔料インク用インクジェット記録媒体である。
<2> 前記第1のラテックスのガラス転移温度Tは、前記乾燥風温度T+30℃以上であり、前記第2のラテックスのガラス転移温度Tは、前記乾燥風温度T−30℃以下であることを特徴とする前記<1>に記載の顔料インク用インクジェット記録媒体である。
<3> 前記含PVAラテックスは、ポリビニルアルコール(PVA)が単量体の重合体にグラフト重合したPVAグラフト鎖を有することを特徴とする前記<1>又は前記<2>に記載の顔料インク用インクジェット記録媒体である。
<4> 前記第2のラテックスは、前記含PVAラテックスであることを特徴とする前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の顔料インク用インクジェット記録媒体である。
本発明によれば、インク吸収性、光沢性及び写像性に優れると共に、顔料インクを用いた記録後のインク受容層でのブロンジングの発生及び脆性が抑制されたインクジェット記録媒体を提供することができる。
以下、本発明のインクジェット記録媒体について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に、該支持体側から順に、気相法シリカ及び水溶性バインダーを含む第1のインク受容層と、支持体上に付与された後の乾燥時の乾燥風温度Tより高いガラス転移温度Tを有する第1のラテックス、及び前記乾燥風温度Tより低いガラス転移温度Tを有する第2のラテックスを含む第2のインク受容層とが少なくとも設けられており、前記第2のインク受容層に含有される第1のラテックス及び/又は第2のラテックスとして、ポリビニルアルコールを含む水溶性高分子の存在下で単量体を重合させて得られた含PVAラテックスを用いて構成したものである。
本発明においては、第1のインク受容層上に設けられた第2のインク受容層の乾燥過程における乾燥風温度を基準に、この温度より高いTgのラテックスと低いTgのラテックスとを併用することで、乾燥過程においてラテックスの一方を軟化し他方は軟化を抑えて残存させるので、インク吸収性に優れた多孔質膜が得られ、これに加えてこれらラテックスの1種として、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子存在下で単量体を重合させて得られる含PVAラテックスを用いることで、顔料インクが与えられた際に顔料インク中の高沸点溶剤によりラテックス中の粒子のPVAが可塑化されて、記録後に、顔料色材上に平滑性のあるラテックスの被膜が得られ、付与された顔料凹凸は緩和されるので、高い光沢及び写像性が得られ、脆性も抑えられる。さらに、インク吸収性を良好に保ちつつ、記録後のインク受容層でのブロンジングの発生が抑制される。ブロンジングの発生が抑制されるメカニズムは明らかではないが、屈折率の高い顔料(特にシアン顔料によく使用される銅フタロシアニン顔料等)が保持されるインク受容層上に屈折率の低いラテックスを用いた皮膜が存在することにより、インク受容層での補色反射が抑制され、ブロンジングの発生が抑制されると推定される。
ここで、「写像性」とは、像の歪み程度に基づく像鮮明性をさし、光沢感を表す尺度である。写像性は、光学くしを用いて周波数毎に定量化されるものであり、光沢度が高くても像にゆがみやひずみがある場合には、必ずしも高い光沢感は得られない。この尺度が大きい値を示すと光沢に寄与するものであるが、本発明においては、写像性は、ある特定周波数域の光学くし(例えば2.0mmの光学くし)を用いたときの特性であってもよいし、主たる周波数域を含む低周波から高周波に至る周波数の光学くしでの値(像鮮明度)の総和、つまり像鮮明性の全体を表す特性であってもよい。後者が好ましく、後者では観察者が良好と感ずる光沢感を持つ写真風合いの画像が得られる。
写像性を前記像鮮明度の総和で表す場合、光学くしが0.125mm,0.25mm,0.5mm,1.0mm,及び2.0mmであるときの各値(像鮮明度)の合計を100以上とすることが好ましい。写像性を上記のように広範な周波数域における複数値の総和として捉えたときには、該総和が100未満であると、観察者が写真風合いがあると感ずる光沢感までは得ることはできない。
写像性の総和は、高いほど望ましいが、好ましくは150以上であり、より好ましくは180以上である。
写像性は、写像性測定器ICM−1(スガ試験機(株)製)により、JIS H 8686−2に規定された写像性試験方法に基づいて、特定周波数域による場合は例えば2.0mmの光学くしでの値[%]であり、総和の場合は2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.25mm、及び0.125mmの光学くしを用いて測定した各値〔%;写像性C値〕の合計(=2.0mmでの値C+1.0mmでの値C+0.5mmでの値C+0.25mmでの値C+0.125mmでの値C)である。
このときの測定・解析条件は下記の通りである。測定は、インクジェット記録用インクを用いて記録された画像部を印字の主走査方向もしくは副走査方向で行ない、光学くし毎に下記式aにより写像性C値を求めた後、各光学くしでの写像性C値を加算して総和を求めることにより求めることができる。
〈測定・解析条件〉
・写像性C値(%)={(M−m)/(M+m)}×100 ・・・式a
〔式a中、Mは最高波高を、mは最低波高を表す。〕
・測定方法:反射
・測定角度:入射角、受光角ともに60°
本発明のインクジェット記録媒体は、外部より付与された顔料インクを受容して画像を記録するインク受容層として、少なくとも1層の第1のインク受容層と少なくとも1層の第2のインク受容層を含む少なくとも2層を支持体上に有しており、このうち、第2のインク受容層は、支持体上の第1のインク受容層の上に設けられ、支持体から最も離れた最表層を構成してもよい。
本発明において、第1のインク受容層の上層として設けられる第2のインク受容層は、支持体上の第1のインク受容層の上に塗布等により付与された後の乾燥時の乾燥風温度Tより高いガラス転移温度T(以下、「T」と略記することがある。)を有する第1のラテックスと、乾燥時の乾燥風温度Tより低いガラス転移温度T(以下、「T」と略記することがある。)を有する第2のラテックスと、を少なくとも用いて構成されている。乾燥風温度Tに対して、該温度TよりTgの高いラテックスと低いラテックスとを含むので、良好な多孔質膜が得られ、インク吸収性を確保できる。
第2のインク受容層は、必要に応じて、さらに他の成分を用いて構成されてもよい。
−ラテックス−
第2のインク受容層に含有される第1のラテックス及び第2のラテックスは、媒質中に分散状態にあるポリマー微粒子であり、例えば、アクリル系エマルジョン、アクリル−スチレン系エマルジョン、酢酸ビニル−アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、塩素化ポリオレフィン系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−アクリル等の多元共重合体エマルジョン、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックス、カルボキシル化SBRラテックス、カルボキシル化NBRラテックス、カルボキシル化MBRラテックス、水溶性ウレタン系エマルジョン、水溶性ポリエステル系エマルジョン、等が挙げられる。
第1のラテックス及び第2のラテックスは、適宜調製したものを使用してもよいし、上市されている市販品を選択して用いてもよい、第1のラテックスの市販品としては、例えば、ジョンソンポリマー社製のアクリル系エマルジョン DFC3050などが挙げられ、第2のラテックスの市販品としては、例えば、PNT7627(日本ゼオン社製、PVAグラフトラテックス(主組成:メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン)などが挙げられる。
本発明におけるラテックスは、モノマー組成、粒子径、重合度などの異なる複数の重合体を混合して使用してもよい。
前記第1のラテックスは、塗布等により第2のインク受容層を形成した後の乾燥時の乾燥風温度Tより高いガラス転移温度Tを有するポリマー微粒子を含み、乾燥過程では軟化し難いものであればよい。第1のラテックスのTは、多孔質膜の形成性、インク吸収性の点から、乾燥風温度Tより30℃以上高いこと(乾燥風温度T+30℃以上)が好ましい。特には、第1のラテックスのTの範囲を50〜120℃(より好ましくは60〜100℃)とし、少なくとも第2のインク受容層の乾燥を20〜90℃の温度範囲で行なう場合が好ましい。
前記第2のラテックスは、塗布等により第2のインク受容層を形成した後の乾燥時の乾燥風温度Tより低いガラス転移温度Tを有するポリマー微粒子を含み、乾燥過程で成膜可能な程度で第1のラテックスに比べて軟化、膜形成しやすいものであればよい。第2のラテックスのTは、平滑性のある膜形成性の点から、乾燥風温度Tより30℃以上低いこと(乾燥風温度T−30℃以上)が好ましい。特には、第2のラテックスのTの範囲を−10〜40℃(より好ましくは−5〜30℃)とし、少なくとも第2のインク受容層の乾燥を20〜90℃の温度範囲で行なう場合が好ましい。
また、第1のラテックスのTと第2のラテックスのTとの温度差(T−T)としては、50〜90℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
上記のうち、第1のラテックスのTが50〜120℃であって、第2のラテックスのTが−10〜40℃である場合が好ましく、より好ましくは、第1のラテックスのTが60〜100℃であって、第2のラテックスのTが0〜30℃である場合が好ましい。
また、本発明における第1のラテックス及び第2のラテックスのうち、これらの少なくとも一方は、ポリビニルアルコール(PVA)を含む水溶性高分子の存在下で単量体を重合させて得られた含PVAラテックス(以下、単に「本発明における含PVAラテックス」ということがある。)で構成されている。この含PVAラテックスは、少なくともPVAが重合反応により単量体と化学結合したラテックスであり、顔料インクが付与されると顔料インク中の高沸点溶剤が作用してPVAを可塑化して、平滑なラテックス層を形成しやすくなり、ブロンジングの発生が抑制されると共に、光沢及び写像性が良好になる。
本発明における含PVAラテックスの構造は、高い光沢、写像性、脆性を抑える点で、単量体の重合物を含むコア部と、この重合物を覆うようにPVAが結合して形成されるシェル部とを有して構成されており、シェル内部のコアの組成については、特に限定されるものではない。含PVAラテックスは、シェルをなすPVAのタイプや分子量、並びにシェル内部の組成によって、性質を変化させることが可能である。
前記単量体としては、例えば、共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体などが挙げられる。
前記共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエンが好ましい。
前記芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロルスチレン、ジクロルスチレン、トリクロルスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどが挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。
前記エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロプロペンニトリル、2−ブテンニトリルなどが挙げられる。中でも、アクリロニトリルが好ましい。
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体及びその無水物;フマル酸モノエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体の部分エステル化物などが挙げられる。
前記エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピルなどが挙げられる。
前記エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどが挙げられる。
上記の単量体以外には、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのモノオレフィン単量体;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル単量体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。
含PVAラテックスにおける単量体は、一種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記単量体のうち、共役ジエン単量体、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体が好ましい。
芳香族ビニル単量体を必須成分とすることが、光沢と画像濃度のバランスにより優れる点で好ましく、この場合の好ましい量は、重合に用いる単量体全量に対して、70質量%以上である。
また、含PVAラテックスの機械的安定性及び配合安定性に優れる点で、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を必須成分とすることが好ましく、この場合のエチレン性不飽和カルボン酸単量体の量は、重合に用いる単量体全量に対して、好ましくは0.5〜20質量%である。
含PVAラテックスのガラス転移温度は、常法に基づいて重合に用いる単量体の組成を適宜選択することにより調整することができる。
単量体を添加する場合の添加方法としては、特に制限はなく、例えば、重合開始前の反応容器に全量を投入する方法のほか、重合反応と並行して単量体を連続的又は断続的に反応容器に添加する方法、重合開始前の反応容器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に追加添加する方法、重合開始前に反応容器に一部を投入して重合を開始した後、残部を連続的又は断続的に重合系に添加する方法などが挙げられる。
中でも、重合安定性に優れる点で、重合反応と並行して単量体を連続的に反応容器に添加する方法が好ましい。
単量体を連続的に反応容器に添加する場合の単量体の添加速度は、特に制限はないが、重合系内の重合転化率が10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上を保つように制御するのが好ましい。この添加速度が速すぎると、重合安定性が低下して、粗大凝集物が発生しやすい傾向があり、逆に遅すぎると、重合系の粘度が上昇して重合反応熱の除去が困難になる傾向がある。
ポリビニルアルコール(PVA)を含む水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及びその各種変性物などのビニルアルコール系重合体を含む水溶性高分子が好ましい。ビニルアルコール系重合体以外には、水溶性高分子として、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシルメチル澱粉、酸化澱粉などの澱粉誘導体;アラビアゴム、トラガントゴム、ポリアルキレングリコールなどを含むことができる。
前記ビニルアルコール系重合体としては、実質的に水溶性であって安定なラテックスが得られるものであれば、その他の条件には制限はない。例えば、カルボン酸ビニルエステル単量体を主体とするエチレン性不飽和単量体を従来公知の方法で重合して得たカルボン酸ビニルエステル重合体(すなわち、カルボン酸ビニルエステル単量体の単独重合体、2種以上のカルボン酸ビニルエステル単量体の共重合体、並びにカルボン酸ビニルエステル単量体及びこれと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体の共重合体)を常法によりケン化して得ることができる。また、分子の主鎖、側鎖又は末端にメルカプト基などの変性基を導入したものを用いることもできる。
前記カルボン酸ビニルエステル単量体としては、ラジカル重合可能なものであればいずれも使用できる。その具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどを挙げることができる。中でも、工業的に製造され安価な酢酸ビニルが一般的である。
また、カルボン酸ビニルエステル単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体を1種以上共存させ、共重合することも可能である。
共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのモノオレフィン単量体;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸モノエチル、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピルなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル単量体;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体;及び3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム基含有単量体;ビニルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
前記カルボン酸ビニルエステル重合体のケン化度は、変性基の有無及びその種類に依存して変るが、得られるビニルアルコール系重合体の水溶性などの観点から、40〜99.99モル%であることが好ましく、50〜99.9モル%がより好ましく、60〜99.5モル%が更に好ましい。ケン化度が40モル%以上であると、重合体粒子の分散安定性を保持できる。
また、前記カルボン酸ビニルエステル重合体の粘度平均重合度は、通常、50〜8,000であり、好ましくは100〜6,000であり、より好ましくは100〜5,000である。
水溶性高分子の量は、重合に用いる単量体100質量部当たり、好ましくは0.5〜100質量部であり、より好ましくは0.5〜50質量部、特に好ましくは1〜20質量部である。この量は、0.5質量部以上であると、重合時の安定性が良好で凝集物の発生が抑えられ、ラテックスの機械的安定性及び化学的安定性が良好であり、100質量部以下であると、重合系の粘度上昇による反応熱の除去を行なうことができ、ラテックスの粘度が高くなりすぎることもない。
水溶性高分子の添加方法としては、特に制限はなく、例えば、重合開始前の反応容器に全量を投入する方法や、重合反応と並行して水溶性高分子を連続的又は断続的に反応容器に添加する方法、重合開始前の反応容器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に追加添加する方法、重合開始前に反応容器に一部を投入して重合を開始した後、残部を連続的又は断続的に重合系に添加する方法などが挙げられる。
中でも、重合安定性に優れる点で、重合反応と並行して水溶性高分子を連続的に反応容器に添加する方法が好ましい。
単量体及び水溶性高分子の添加方法としては、両者を別々に反応容器に添加しても、両者を混合して反応容器に添加してもよい。中でも、重合安定性に優れる点で、両者を混合して反応容器に添加する方法が好ましく、単量体、水溶性高分子及び水性媒体を混合して得られる単量体乳化物を反応容器に添加する方法がより好ましい。
重合においては、乳化重合において通常用いられるノニオン性、アニオン性、カチオン性又は両性界面活性剤などの各種の界面活性剤は使用しないことの方が特に好ましいが、本発明の効果を実質的に損なわない範囲であれば併用してもよい。
前記アニオン性界面活性剤の例としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールスルホン酸塩、ポリリン酸塩などが挙げられ、前記ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型又はアルキルエーテル型のものなどが挙げられ、前記カチオン性界面活性剤の例としては、脂肪族アミン塩及びその4級アンモニウム塩、芳香族4級アンモニウム塩、複素環4級アンモニウム塩などが挙げられ、前記両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体などが挙げられる。界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。界面活性剤を用いる場合の量は、重合に用いる単量体100質量部に対して、通常は2質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以下である。
前記水性媒体としては、水が一般的であり、他にメタノール、エタノールなどのアルコールやアセトン、テトラヒドロフランなどの水溶性有機溶媒を含有する水溶液を用いることもできる。
水性媒体の量は、重合に用いる単量体100質量部に対して、好ましくは90〜900質量部である、より好ましくは100〜500質量部である。
重合は、アルコールの存在下で行なってもよい。アルコールの存在下で重合させると、粗大凝集物の発生を抑制しながら、安定的に重合反応を行なえる。
ここでのアルコールには、特に制限はなく、1価及び多価のいずれでもよいが、水溶性のものが好ましい。このようなアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールなどが挙げられる。アルコールの量は、重合に用いる単量体100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜20質量部である。
アルコールの添加方法には、特に制限はなく、例えば、重合開始前の反応容器に全量を投入する方法や、重合開始前の反応容器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に追加添加する方法、重合開始前に反応容器に一部を投入して重合を開始した後、残部を連続的又は断続的に重合系に添加する方法などが挙げられる。中でも、重合開始前の反応容器に全量を投入する方法が好ましい。
また、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、過酸化物ラジカルを発生するものが好ましい。過酸化物ラジカルを発生する重合開始剤の具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの水溶性過酸化物;t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの油溶性過酸化物;過酸化物と重亜硫酸水素ナトリウムなどの各種還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤などを挙げることができる。中でも、水溶性過酸化物が好適であり、過硫酸塩が特に好適である。
重合開始剤の量は、単量体100質量部に対して、通常は0.05〜5質量部であり、好ましくは0.1〜4質量部である。
重合開始剤の添加方法には特に制限はなく、例えば、重合開始前の反応容器に全量を投入する方法や、重合開始前の反応容器に一部を投入して重合を開始した後、残部をある特定の時期に追加添加する方法、重合開始前に反応容器に一部を投入して重合を開始した後、残部を連続的又は断続的に重合系に添加する方法などが挙げられる。
重合に際しては、必要に応じて、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、連鎖移動が起こるものであれば特に制限はなく、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのメルカプト基を有する化合物;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイドなどのキサントゲン化合物;α−メチルスチレンダイマー、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダンなどのα−メチルスチレンダイマー類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノールなどのフェノール系化合物;アリルアルコール、アクロレイン、メタクロレインなどのアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化炭化水素化合物;α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド、ターピノレン、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタンなどを挙げることができる。これらの連鎖移動剤は、一種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤を用いる場合の量は、単量体100質量部に対して、通常は5質量部以下である。連鎖移動剤の添加方法は、特に限定されず、一括添加しても、断続的に又は連続的に重合系に添加してもよい。
重合に際しては、上記以外に、乳化重合で通常使用される粒子径調整剤やキレート剤、脱酸素剤、分散剤、pH調整剤、無機塩などの重合副資材を適宜用いることができる。
重合温度は、特に制限はないが、通常は0〜100℃であり、好ましくは50〜95℃である。
以上のように重合反応を行ない、所定の重合転化率に達した時点で、重合停止剤を添加したり、重合系を冷却する等により、重合反応を停止することができる。重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは92質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
重合反応を停止した後は、所望により未反応単量体を除去し、またpHや固形分濃度を調整して、含PVAラテックスが得られる。
含PVAラテックスを構成する重合体は、重合に用いた単量体に由来する重合体と、PVA及び場合により水溶性高分子の一部とが結合したものが好ましく、特にはPVAが単量体に由来の重合体にグラフト重合したPVAグラフト鎖を有していることが好ましい。
重合に用いた単量体に由来の重合体に結合したPVA及びPVA以外の水溶性高分子の割合(以下、「グラフト率」ということがある。)は、単量体に由来の重合体に対して、好ましくは0.5〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%であり、特に好ましくは1〜15質量%である。この割合は、0.5質量%以上であると、インク受容層の表面強度が良好で脆性が小さく、50質量%以下であると、ラテックスの粘度上昇が抑えられ、取り扱いやすく、高い光沢及び画像濃度が得られる。
本発明においては、高いTg及び融点を発現するPVA鎖がシェル部に偏在するので、第2のインク受容層を形成(皮膜化)した場合に、従来から知られている乳化剤によるラテックスやソープフリーラテックスに比べて強靭で、かつ硬いフィルム膜になるので、形成されたインク受容層の脆性や耐傷性が向上する。このとき、上記のように乾燥風温度に対してTgの異なるラテックスを併用するので、インク吸収性は保持される。
また、本発明における含PVAラテックスを含むインク受容層(インクジェット記録媒体)を、顔料インクを用いて記録を行なうインクジェットシステムと組み合わせた構成は、顔料インク(特に高沸点溶剤)がPVAに作用し、PVAが可塑化するので、顔料インクで画像記録した後にインク受容層の表面(画像面を含む)がより平滑になり、光沢感が付与される。
上記のうち、第1のラテックスと第2のラテックスとの組合せ態様としては、(1)第1のラテックスが、Tが60〜100℃のアクリル系エマルジョンであって、第2のラテックスが、Tが0〜30℃であるPVAグラフトしたアクリル系エマルジョンである組合せ、(2)第1のラテックスが、Tが60〜100℃のPVAグラフトしたアクリル系エマルジョンであって、第2のラテックスが、Tが0〜30℃であるアクリル系エマルジョンである組合せ、である場合が、本発明に効果をより効果的に奏する点で好ましい。
含PVAラテックスの体積平均粒子径は、60〜800nmが好ましく、より好ましくは70〜600nmである。体積平均粒子径は、60nm以上であるとラテックスの粘度上昇が抑えられ、取り扱い易く、インク受容層の表面強度、脆性が良好で、逆に800nm以下であると光沢が良好になる。
含PVAラテックスには、所望により、例えば、分散剤、可塑剤、消泡剤、pH調整剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、流動性改良剤などの添加剤を適宜添加してもよい。
本発明において、第1のラテックス及び第2のラテックスの第2のインク受容層中における総量としては、本発明の効果をより効果的に奏し得る点から、0.1〜2g/mが好ましく、より好ましくは0.2〜1g/mであり、更に好ましくは0.3〜0.8g/mである。
また、第1のラテックス(Lx)と第2のラテックス(Lx)との比率(Lx/Lx)としては、多孔質膜の作りやすさの点で、80/20〜40/60が好ましく、より好ましくは70/30〜45/55であり、特に好ましくは65/35〜50/50である。
さらに、第1のラテックス及び第2のラテックスの総量のうち、本発明における含PVAラテックスの含有割合としては、ブロンジングの発生を抑制し、光沢及び写像性を高める点で、0.05〜1g/mが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5g/mであり、更に好ましくは0.15〜0.25g/mである。
前記第2のインク受容層と支持体との間に設けられる第1のインク受容層は、気相法シリカ及び水溶性バインダーを少なくとも含んでなり、必要に応じて、更に他の成分を用いて構成することができる。
−気相法シリカ−
本発明における第1のインク受容層は、気相法シリカの少なくとも1種を含有する。第1のインク受容層は、本発明の効果を損なわない範囲で、気相法シリカ以外の他の無機微粒子を含んでもよい。また、必要に応じて、前記第2のインク受容層も、気相法シリカや他の無機微粒子を含むことができる。
前記他の無機微粒子の種類は、特に限定されないが、他の無機微粒子は、光沢、インク吸収性の点で、気相法シリカ以外のシリカ微粒子、アルミナ、あるいはアルミナ水和物〔Al23・nH2O(n=1〜3)〕等が好適に使用できる。他の無機微粒子は、1種単独で用いても2種以上を組合せて用いてもよい。
気相法シリカは、合成シリカの製造方法によって湿式法シリカと区別されるものであり、火炎加水分解法によって作られる。具体的には、四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシラン等のシラン類も、単独で又は四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカとしては、市販品として、例えば、日本アエロジル(株)製のアエロジルや、(株)トクヤマ製のQSタイプなどを使用することができる。
気相法シリカは一般に、凝集して適度な空隙を有する二次粒子となっており、好ましくは一次粒子の平均粒径が3〜50nmの気相法シリカを用いて、500nm以下、好ましくは100〜400nmの二次粒子になる迄超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕、分散させたものが、光沢度とインク吸収性が良好である点で好ましい。
なお、気相法シリカの二次粒子の平均粒径は、希薄分散液をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定して得られる。また、気相法シリカの一次粒子の平均粒径は、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒径として求めることができる。紡錘状粒子の平均粒径は、長径と短径の平均で得られる。
本発明における気相法シリカの一次粒子の平均粒径は3〜50nmであることが好ましい。気相法シリカの一次粒子の平均粒径が50nm以下とすることで光沢度がより効果的に向上する。また、第1のインク受容層のインク吸収速度が適切になる。更に、画像部の光沢性が向上し、印字濃度が高いより鮮明な色彩を得ることができる。一方、3nm以上とすることにより、第1のインク受容層にインクが溜まりすぎることがなく、滲みやビーディングの発生をより効果的に抑制でき、連続印画の場合であってもインクジェット記録媒体の裏面等の汚れの発生を抑制できる。
気相法シリカの平均一次粒子径は、一次粒子が判別できる程度まで分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積と等しい円の直径を粒子の一次粒子径として求めた平均粒子径である。また、平均二次粒子径は、得られた記録材料のインク受容層を電子顕微鏡で観察することにより、観察される分散された凝集粒子の粒子径の平均値を求めたものである。
気相法シリカの第1のインク受容層中における含有量としては、10〜30g/mが好ましく、15〜25g/mがより好ましい。気相法シリカの含有量が前記範囲内であると、多孔質を得やすく、インク吸収性を確保することができる。
−水溶性バインダー−
本発明における第1のインク受容層は、水溶性バインダーの少なくとも1種を含有する。水溶性バインダーは、透明性が高く、付与されたインクの浸透性を高める点で有用である。また、必要に応じて、前記第2のインク受容層も、水溶性バインダーを含むことができる。
水溶性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉及びその変性物、ゼラチン及びそれらの変性物、カゼイン、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミン等の天然高分子樹脂又はこれらの誘導体、カチオン変性、シラノール変性等のポリビニルアルコールの変性物、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のラテックス類、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸又はその共重合体等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
水溶性バインダーの使用にあたっては、水溶性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、かかる観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましい。
好ましい水溶性バインダーは、完全もしくは部分ケン化のポリビニルアルコール又はカチオン変性ポリビニルアルコールである。
ポリビニルアルコールの中でも、ケン化度が80%以上の部分ケン化もしくは完全ケン化したものが好ましい。平均重合度の点からは、500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
前記カチオン変性ポリビニルアルコールとは、例えば、特開昭61−10483号公報に記載の、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
水溶性バインダーは、1種単独で用いるほか、2種以上を併用してもよい。例えば、ポリビニルアルコールと他の水溶性バインダーの1種もしくは2種以上とを組みあわせて用いることができる。
水溶性バインダーの第1のインク受容層中における混合比率は、気相法シリカに対して、10〜30質量%が好ましく、特に12〜25質量%が好ましい。水溶性バインダーを第2のインク受容層に含有する場合、第2のインク受容層中における混合比率は、3〜10質量%が好ましい。
本発明における第1のインク受容層においては、水溶性バインダーとしてポリビニルアルコールを用い、気相法シリカ(Si)とポリビニルアルコール(PVA)との質量比率(Si/PVA)をSi/PVA<6を満たす範囲とするのが好ましい。質量比率Si/PVAを前記範囲とすることにより、ヘイズを抑え、高い画像濃度及び光沢感が得られる。
質量比率Si/PVAは、ヘイズを抑え、高い画像濃度及び光沢感を得つつ、気相法シリカとの混合性、塗液粘度の調整、及び成膜性を維持する点で、2〜5の範囲がより好ましい。
本発明における各インク受容層は、皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することが好ましい。そのような油滴としては、室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは水溶性バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
本発明において、各インク受容層は、耐水性、ドット再現性を向上させる目的で架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、インク受容層に含まれる水溶性バインダーとの関係で好適なものを適宜選択すればよい。
水溶性バインダーとしてポリビニルアルコールを用いる場合には、架橋反応が迅速である点で、ホウ酸及び/又はその塩が好ましい。ホウ酸には例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸等を使用できる。ホウ酸塩はこれらの可溶性塩が好ましい。具体的には、Na・10HO、NaBO・4H0、K・5HO、NHHB・3HO、NHBO等が挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記水溶性バインダーとしてゼラチンを用いる場合などには、ホウ酸及びその塩以外の下記化合物も架橋剤として用いることができる。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3017280号明細書、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3100704号明細書に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。架橋剤は、1種単独でも、2種以上を組合わせて用いてもよい。
架橋剤は、第1又は第2のインク受容層を形成するための塗布液(インク受容層形成用塗布液)に含有すると共にあるいは含有しないで、各インク受容層の隣接層を形成するための塗布液中に添加してもよい。また、予め架橋剤を含む塗布液を塗布した支持体上に、インク受容層形成用塗布液を塗布する、又は架橋剤非含有のインク受容層形成用塗布液を塗布し乾燥させた後に架橋剤溶液をオーバーコートする、等によりインク受容層に架橋剤を供給してもよい。
架橋剤(好ましくはホウ酸及び/又はその塩)は、1種単独で用いるほか、2種以上を併用してもよい。
架橋剤のインク受容層形成用塗布液中における総含有量としては、水溶性バインダー100質量部に対して、5〜40質量部が好ましく、15〜35質量部がより好ましい。架橋剤の含有量が前記範囲であると、水溶性バインダーを効果的に架橋してひび割れ等を防止することができる。
本発明において、各インク受容層には、上記成分以外に更に、界面活性剤、架橋剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
本発明においては、第1のインク受容層、第2のインク受容層以外に層を更に設けてもよい。その場合には、インク浸透性を損なわない層であることが必要である。
前記第1のインク受容層を形成するためのインク受容層形成用塗布液は、気相法シリカ分散液と、水溶性バインダー及び必要に応じて架橋剤や各種の添加剤等とを通常の方法で混合することにより調製することができる。気相法シリカ分散液は、例えば、気相法シリカを水(例えばイオン交換水)中に加えて、ディゾルバー、吸引分散機等の攪拌機で撹拌して粗分散液を調製し、これを更に高圧分散機もしくはビーズミルで微分散させることにより調製することができる。この塗布液の調製は、例えば、気相法シリカ分散液の調製に続いて、この気相法シリカ分散液を、水溶性バインダー(例えばポリビニルアルコール)と必要に応じてホウ酸及びその塩などの架橋剤並びに他の成分と共に、撹拌し、混合することにより行なえる。
前記高圧分散機としては、加圧したスラリー状の原料同士を超高速で対向衝突させて微粒化するアルティマイザー(例えばスギノマシン社製のHJP25005)、キャビテーションを利用した超音波分散機、ホモバルブ方式のゴーリンホモジナイザー等を使用できる。前記ビーズミルとしては、トライポロジーせん断力を利用したウルトラアペックスミル(例えば寿工業社製のUAM−10)、スターミル(アシザワファインテック社製のナノゲッターDMR65)等を使用できる。
また、前記第2のインク受容層を形成するためのインク受容層形成用塗布液は、所望の第1のラテックスと第2のラテックスとを必要に応じて水溶性バインダー及び各種の添加剤等と共に通常の方法で混合することにより調製することができる。
インク受容層形成用塗布液の調製に用いる溶媒には、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。塗布に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等を挙げることができる。
本発明においては、各インク受容層形成用塗布液のpHは塗布液の安定性、粘性、インク定着性により適宜選択される。好ましくは、第1のラテックスと第2のラテックスを含有する第2のインク受容層形成用塗布液のpHは4〜10、気相法シリカを含有する第1のインク受容層形成用塗布液のpHは3〜6である。これによりインク吸収性、インク定着性が良好となる。
−支持体−
本発明における支持体としては、耐水性支持体であることが好ましい。前記耐水性支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、セロファン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のフィルム、樹脂被覆紙等が用いられる。
支持体の厚みは、約50〜250μm程度のものが好ましく使用される。
樹脂被覆紙の基紙としては、特に制限はなく、一般に用いられている紙を使用できるが、写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。基紙を構成するパルプとしては、天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いることができる。基紙には、一般に製紙で用いられる表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、染料、アンカー剤等の添加剤を配合してもよい。
また、基紙は、抄造中に又は抄造後に、カレンダー等にて圧力を印加して圧縮する等した表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は好ましくは80g/m2〜250g/m2である。
基紙の両面を被覆する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンのホモポリマー、又はエチレン−プロピレン共重合体等のオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びそれらの混合物を用いることができる。また、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを、各々単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
また、樹脂被覆する樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
樹脂被覆紙は、走行する基紙上にポリオレフィンなどの樹脂を加熱溶融した状態で流延する、いわゆる押出コーティング法によりコーティングして製造することができ、基紙は両面が樹脂で被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前には、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。
例えば、樹脂を押出機で加熱溶融した後、基紙の両側に対して、基紙とクーリングロールとの間に樹脂をフィルム状に押出し、圧着、冷却して製造することができる。
支持体には、塗布性や界面の接着強度向上のために、下引き層を設けてもよい。
この下引き層は、インク受容層が塗布形成される前に支持体の表面(樹脂被覆紙の場合は被覆樹脂の表面)に塗布、乾燥して設けられるものである。本発明においては、支持体として前記フィルムや樹脂被覆紙を使用する場合に、インク受容層を設ける面に天然高分子化合物や合成樹脂を主体とする下引き層を設けることが好ましい。
支持体上に設けられる下引き層は、ゼラチン、カゼイン等の天然高分子化合物や合成樹脂を主体とすることができる。前記合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの天然高分子化合物や合成樹脂の量は、0.1〜2g/mが好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有することが好ましい。また、下引き層を塗布する場合、塗布前に支持体の表面をコロナ放電処理することが好ましい。
また、前記フィルムや樹脂被覆紙にインク受容層形成用塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、好ましくはコロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等を行なう。
前記下引き層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けることができる。下引き層の乾燥膜厚として、好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
支持体には、筆記性、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
本発明のインクジェット記録媒体は、以下に示すようにして作製することができる。
本発明におけるインク受容層は、インク受容層形成用塗布液を、支持体上又は該支持体上の既設のインク受容層の上に塗布等して塗布層を形成し、これを乾燥させることにより形成することができる。
具体的には、例えば、本発明のインクジェット記録媒体は、気相法シリカ及び水溶性バインダーを含む第1のインク受容層形成用塗布液と、ガラス転移温度Tを有する第1のラテックス及びガラス転移温度Tを有する第2のラテックスを含む第2のインク受容層形成用塗布液とを、第1のインク受容層形成用塗布液の上に第2のインク受容層形成用塗布液が重層するように、支持体上に同時重層塗布又は逐次塗布することにより塗布層を形成する塗布工程を少なくとも設けることによって好適に作製することができる。
インク受容層を構成する各層の塗布は、公知の塗布方法を用いて行なうことができる。公知の塗布方法としては、例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等がある。
インク受容層を構成する複数の層を乾燥工程を設けずに殆ど同時に塗布(同時重層塗布)すると、各層に要求される特性が効率よく得られ、生産効率の点で好ましい。すなわち、各層を湿潤状態で積層することで各層に含有される成分が下層へ浸透しにくくなり、乾燥後も各層の成分構成が良く保たれるためと推定される。
同時重層塗布は、公知の塗布装置を用いて行なうことができ、例えば、スライドビードコーター、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター等を挙げることができる。
気相法シリカを含む第1のインク受容層形成用塗布液の塗布量としては、固形分換算で10〜30g/mが好ましく、より好ましくは15〜25g/mである。
また、ガラス転移温度Tの第1のラテックス及びガラス転移温度Tの第2のラテックスを含む第2のインク受容層形成用塗布液の塗布量としては、固形分換算で0.1〜50g/mが好ましく、より好ましくは0.5〜3g/mである。塗布量が前記範囲内であると、塗布膜の乾燥性が良好であり、クラックの発生も回避できる。
本発明のインクジェット記録媒体の製造は、塗布膜の膜面温度が20℃未満になる場合を含む条件で、第1のインク受容層の乾燥を行なうことが好ましい。すなわち、乾燥過程において、膜面温度が20℃未満となる乾燥段階が含まれていればよく、乾燥初期に膜面温度が20℃未満になるようにしてもよいし、乾燥開始から所定時間経過した後あるいは乾燥後期に膜面温度が20℃未満まで下がるように乾燥させるようにしてもよい。中でも、均一塗布面状、空隙容量の観点から、膜面温度が20℃未満となる乾燥段階を乾燥初期、特には乾燥開始直後に行なうことが好ましい。乾燥初期(特に乾燥開始直後)に膜面温度が20℃未満になるように乾燥を行なうことにより、塗布液が低粘度でも乾燥ムラを回避でき、光沢感を高めることができる。乾燥初期を高温で乾燥させると、特に塗布液の粘度が低い場合など、乾燥ムラが生じて光沢感は低下する。
膜面温度が20℃未満となる乾燥段階を設けることで、塗布液の膜面が増粘し、より均一な塗布面状を得ることができる。また、膜面温度としては、0℃以上20℃未満が好ましく、5℃以上15℃以下が更に好ましい。膜面温度を0℃以上とすることにより、塗布液の増粘が進みすぎるのを抑え、塗布膜表面の凹凸形成を防止してより高い光沢度を得ることができる。
ここで、膜面温度は、乾燥時の塗布膜表面の温度であり、放射温度計により測定できる。
第1及び第2のインク受容層の乾燥温度は、支持体の耐熱性にもよるが、40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜70℃である。乾燥温度が前記範囲内であると、インク吸収性をより向上でき、更にインク受容層の耐水性も向上できる。例えば、上記温度範囲の乾燥風を与えることにより乾燥させることができる。
−顔料インク−
次に、顔料インクについて以下に説明する。
本発明のインクジェット記録媒体は、顔料インクを用いて画像記録するための記録材料であり、顔料インクを用いた場合において、特に、優れたインク吸収性を発揮し、光沢性及び写像性が良好で、記録後のブロンジングの発生が抑制された画像を得ることができる。また、脆性も抑制される。
顔料インクとしては、いずれのものでもよく特に制限はない。顔料インクとは、着色剤に顔料を使用しているインクをいう。
着色剤である顔料の例としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも用いることができる。顔料の例を以下に挙げる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄などの金属酸化物等に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックを挙げることができる。
また、有機顔料としては、例えば、アゾ染料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジコ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を挙げることができる。
特に黒インクに使用されるカーボンブラックとしては、例えば、三菱化学社製のNo.2300, No.900, MCF88, No.33, No.40, No.45, No.52, MA7, MA8, MA100,No.220QB等が、コロンビア社製のRaven 5750, Raven 5250, Raven 5000, Raven3500, Raven 1255, Raven700等が、キャボット社製のRegal 400R, Regal 330R,Rega 1660R, Mogul L, Monarch 700, Monarch 800, Monarch 880, Monarch 900, Monarch 1000, Monarch 1100, Monarch 1300, Monarch 1400等が、テグッサ社製のColor Black FW1, Color Black FW2, Color Black FW2V, Color Black FW18, Color Black FW200, Color Black S150, Color Black S160, Color Black S170, Printex 35, Printex U, Printex V, Printex 140U, Special Black 6, Special Black 5, Special Black 4A,Special Black 4等が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、例えば、 C.I.Pigment Yellow 1,C.I.Pigment Yellow 2, C.I.Pigment Yellow 3, C.I.Pigment Yellow 12, C.I.Pigment Yellow 13, C.I.Pigment Yellow 14C, C.I.Pigment Yellow 16, C.I.Pigment Yellow 17, C.I.Pigment Yellow 73, C.I.Pigment Yellow 74, C.I.Pigment Yellow 75, C.I.Pigment Yellow 83, C.I.Pigment Yellow 93, C.I.PigmentYellow 95, C.I.Pigment Yellow 97, C.I.Pigment Yellow 98, C.I.Pigment Yellow 114, C.I.Pigment Yellow 128, C.I.Pigment Yellow 129, C.I.Pigment Yellow 151, C.I.Pigment Yellow 154等が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5, C.I.Pigment Red 7, C.I.Pigment Red 12, C.I.Pigment Red 48(Ca), C.I.Pigment Red 48(Mn), C.I.Pigment Red 57(Ca), C.I.Pigment Red 57:1, C.I.Pigment Red112, C.I.Pigment Red 122, C.I.Pigment Red 123, C.I.Pigment Red 168, C.I.Pigment Red 184, C.I.Pigment Red 202等が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1,C.I.Pigment Blue 2, C.I.Pigment Blue 3, C.I.Pigment Blue 15:3, C.I.Pigment Blue 15:34, C.I.Pigment Blue 16, C.I.Pigment Blue 22, C.I.Pigment Blue 60, C.I.Vat Blue 4, C.I.Vat Blue 60が挙げられる。
これらの顔料を用いた好適なインクの組成例としては、国際公開番号:WO99/05230に示されているものが挙げられる。具体的には、着色剤と、水溶性分散剤と、浸透剤とを少なくとも含むインク組成物が挙げられる。
例えば、シアンインク組成物は、着色剤として、C.I.Pigment Blue 15:3を好ましくは2〜4質量%含み、マゼンタインク組成物は、着色材としてC.I.Pigment Red 122を好ましくは3〜5質量%含み、イエローインク組成物は、着色剤としてC.I.Pigment Yellow 74を好ましくは3〜5質量%含み、ブラックインク組成物は、着色剤としてカーボンブラックを好ましくは2〜5質量%含み、オレンジインク組成物は、着色剤としてC.I.Pigment Orange 43もしくはC.I.Pigment Orange 36を、好ましくは2〜5質量%含み、グリーンインク組成物は、着色剤としてC.I.Pigment green 7もしくはC.I.Pigment green 36を、好ましくは2〜5質量%含んで構成されたものが好ましい。さらに、これらのインク組成物が、浸透剤としてアセチレングリコール化合物を好ましくは0.1〜5質量%含み、かつ水溶性分散剤がスチレン−(メタ)アクリル酸系水溶性樹脂であって、該スチレン−(メタ)アクリル酸系水溶性樹脂をSPMP固形分量換算で顔料に対して好ましくは0.1〜1質量%の割合で含むものを挙げることができる。
ここで、顔料インクには、着色剤である顔料をインクジェット記録媒体に定着するために、接着剤(バインダー樹脂)を添加することができる。この場合、顔料インクを吐出したときには、第2のインク受容層では、吐出されたインク中の接着剤と結着せず、速やかに下層のインク受容層にまでインクを吸収させ得ることが重要である。
本発明においては、顔料インクをインクジェット法で吐出してインク受容層に画像を記録した後のインクジェット記録媒体を加熱及び加圧し、第2のインク受容層を可塑化する工程を更に設けてもよい。加熱及び加圧は、一対の加熱加圧ローラー、あるいは一対の加熱加圧ベルト、あるいは画像部(すなわちインクジェット記録媒体の画像記録面側)に接触する部材をベルトとし、インクジェット記録媒体の画像部を有する側と反対側の表面に接する部材をローラーとしたベルト/ローラーを備えた加熱加圧装置を用いることが好ましい。
加熱加圧する工程に用いられるローラーには、制限はないが、金属ローラー、シリコーンゴムローラーが好ましい。対をなす2本のローラーは、ローラー間に圧力を加えることによりローラーを変形させてニップを形成することができ、画像部を加熱加圧処理できる。例えば2本のローラーを用いて加熱加圧する場合、2本のローラー間の圧力は5MPa以上100MPa以下が好ましく、加熱温度は50℃以上150℃以下が好ましい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(実施例1)
−支持体の作製−
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これに、サイズ剤とアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1%、カチオン化澱粉を対パルプ2%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%、それぞれ添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿して支持体の基紙とした。
抄造した基紙の記録面側に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100%の樹脂に対して10%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分にて厚さ30μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて冷却しながら、一方の側に樹脂被覆層を設けた。他方の側には、密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30部とのブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ25μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールで冷却しながら樹脂被覆層を設けた。
上記より得られたポリオレフィン樹脂被覆紙表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下引き層が下記組成であって、ゼラチン量が50mg/mとなるように下引き層を形成して、支持体を作製した。
<下引き層>
・石灰処理ゼラチン ・・・100部
・スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 ・・・2部
・クロム明ばん ・・・10部
−下層形成用塗布液の調製−
下記組成の成分を混合して撹拌し、下層形成用塗布液(第1のインク受容層形成用塗布液)を調製した。
<組成>
・気相法シリカ ・・・100部
(日本アエロジル社製、アエロジル300、1次粒子径:7nm)
・ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー ・・・3部
(第一工業製薬社製、シャロールDC902P、重量平均分子量9000)
・ホウ酸 ・・・5部
・ポリビニルアルコール(PVA−235、(株)クラレ製) ・・・23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
−上層形成用塗布液の調製−
下記組成中の2種類のラテックスとイオン交換水とを下記の組成にて混合し、上層形成用塗布液(第2のインク受容層形成用塗布液)を調製した。
<組成>
・ラテックス1:PNT7627 ・・・100部
(日本ゼオン社製、PVAグラフトラテックス(主組成:メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ブタジエン)、Tg=3℃、固形分30%)
・ラテックス2:DFC3050 ・・・63部
(ジョンソンポリマー社製、アクリル系エマルジョン(PVAグラフトなし)、Tg=99℃、固形分48%)
・イオン交換水 ・・・20部
−インク受容層の形成−
上記の下引き層が設けられた支持体の下引き層上に、得られた下層形成用塗布液をスライドビード塗布装置により、乾燥固形分が20g/mになるように塗布し、5℃で30秒間冷却した後、50℃の乾燥風で乾燥した。続いて、この上に、得られた上層形成用塗布液をグラビア塗布装置により、乾燥固形分が0.4g/mになるように逐次塗布し、35℃の乾燥風で乾燥させた。
このようにして、支持体上に、下層形成用塗布液からなる第1のインク受容層(下層)と上層形成用塗布液からなる第2のインク受容層(上層)とが重層されたインクジェット記録用シートを作製した。
得られたインクジェット記録用シートを用い、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン社製、顔料インク使用のプリンター)にて画像の記録を行なうと共に、以下に示す評価を行なった。評価結果は、下記表1に示す。
−評価−
〈1.ブロンジング〉
インクジェット記録用シートに対して、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン社製)を用い、シアンインクを最大インク吐出量にて吐出し、ベタ画像を記録した。得られたベタ画像を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
◎:ブロンジングの発生はほとんど確認できなかった。
○:ブロンジングの発生が若干確認された。
△:ブロンジングの発生が確認されたが、実用上支障のない程度であった。
×:ブロンジングの発生がはっきりと確認できた。
〈2.インク吸収性〉
インクジェット記録用シートに対して、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン社製)にて、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の各インクをそれぞれ最大インク吐出量にて吐出し、ベタ画像を記録した。記録直後、ベタ画像の上にゼロックス用紙C2(富士ゼロックス社製)を重ね、剥離してゼロックス用紙に転写したインク量の程度を目視により観察し、下記評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:転写はなかった。
B:少量の転写がみられた。
C:転写量が多かった。
〈3.脆性(黒ベタ画像)〉
インクジェット記録用シートに対して、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン社製)を用い、ブラックインクを最大インク吐出量にて吐出してベタ画像を記録した。このとき、ベタ画像が記録された各インクジェット記録用シートを温度10℃、相対湿度20%の恒温恒湿室に1日保管した後、円柱体の曲面に支持体面を接触させて巻きつけ、巻きつけた際に目視によりインク受容層にひび割れが生じた円柱体の直径(φ)を計測した。インク受容層は、巻きつけた円柱の直径が小さいほどひび割れしやすく、ひび割れが発生する限界の円柱の直径を脆性を評価する指標とした。脆性は、ひび割れを起こす直径が小さいほど良好であることを示す。
〈4.耐傷性(生サンプル)〉
インクジェット記録用シートをA4サイズに裁断し、裁断して得られたシート試験片を水平で平面の試験台上に2枚重ね合わせて載せた。この際、各シート試験片は、試験台に近い下側のシート試験片のインク受容層の表面と、上側のシート試験片の支持体面が接触するように重ね合わされている。重ね合わせた上側のシート試験片の上から500g/A4サイズの荷重をかけながら、下側のシート試験片を1cm/秒の速度で引き出し、下側のシート試験片のインク受容層表面にできた傷を下記評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:傷の発生は認められなかった。
B:薄い傷が付いたが、実用上許容範囲内であった。
C:傷が認められ、記録後にも傷が目立ち、実用上許容できない程度であった。
〈5.写像性〉
インクジェット記録用シートに対して、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン社製)を用いて、下記の画像記録条件でブラック(K)のベタ画像を印字し、測定用サンプルを作成した。
〈画像記録条件〉
・用紙設定:EPSON写真用紙
・印画前調湿:23℃50%RH、6時間以上
・印画後写像性及び正反射強度測定までの乾燥条件:温度23℃、相対湿度50%で24時間乾燥
次いで、各測定用サンプルのベタ画像部を、写像性測定器ICM−1(スガ試験機(株)製)を用いて、JIS H 8686−2に規定された写像性試験方法に基づき、下記の測定・解析条件のもと写像性C値(%)の測定を行なった。そして、下記式aにより光学くし毎に写像性C値を求め、各光学くしでの写像性C値を加算することにより、写像性の総和を求めた。下記式a中、Mは最高波高を、mは最低波高を表す。なお、写像性の総和は100以上が許容範囲である。
写像性C値(%)={(M−m)/(M+m)}×100 ・・・式a
〜測定・解析条件〜
・測定方法:反射
・測定角度(入射角、受光角):60°
・光学くし:2.0mm、1.0mm、0.5mm、0.25mm、0.125mm
〈6.光沢均一性〉
インクジェット記録用シートに対して、インクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン社製)にて、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),赤(R),緑(G),青(B),ブラック(K)の各インクをそれぞれ吐出して、画像を記録した。このとき、白地部分の75度鏡面光沢度(JIS Z8741に準拠)と、Y,M,C,R,G,B,及びKの75度鏡面光沢度の平均値を求め、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:両光沢度値が5未満であり、光沢ムラがなく、光沢均一性は良好であった。
B:両光沢度値が5以上15未満であり、実用上支障のない程度であった。
C:両光沢度値が15以上20未満であり、実用限界であった。
D:両光沢度値が20以上であり、光沢ムラがひどく、実用上許容できない程度であった。
(実施例2)
実施例1において、ラテックス2(63部)を、ジョンクリル538(PVAグラフトのないアクリル系ラテックス、Tg=66℃ 固形分45%;ジョンソンポリマー社製)66.7部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録用シートを作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、逐次塗布後に50℃での乾燥を終了した後、エプソンPX−G930(顔料インク使用のプリンタ)で印画し、その後下記の定着条件にて対ローラーで定着を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、インクジェット記録用シートを作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
〜定着条件〜
ローラー :シリコーンゴムローラー
ニップ幅 :100mm
ニップ圧力:50MPa
温度 :120℃
(比較例1)
実施例1において、ラテックス1(100部)をカルナバロウラテックス115.4部に代え、かつラテックス2を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較用のインクジェット記録用シートを作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、ラテックス1(100部)をカルナバロウラテックス115.4部に代え、かつラテックス2(63部)をDFC3050(PVAグラフトのないアクリル系エマルジョン、Tg=99℃、固形分48%、ジョンソンポリマー社製)63部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用のインクジェット記録用シートを作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
(比較例3)
実施例1において、ラテックス1(100部)をジョンクリル7341(PVAグラフトのないアクリル系ラテックス、Tg=15℃、固形分49%;ジョンソンポリマー製)61.2部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用のインクジェット記録用シートを作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
(比較例4)
実施例1において、ラテックス2(63部)をジョンクリル734(PVAグラフトのないアクリル系ラテックス、Tg=30℃、固形分42%;ジョンソンポリマー製)71.4部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用のインクジェット記録用シートを作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
(比較例5)
実施例1において、ラテックス1(100部)をジョンクリル538(PVAグラフトのないアクリル系ラテックス、Tg=66℃、固形分45%;ジョンソンポリマー製)66.7部に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用のインクジェット記録用シートを作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
(比較例6)
実施例1において、下層中の気相法シリカを湿式シリカ(ファインシールX−37B、凝集粒子径3.7μm、比表面積287m/g)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、比較用のインクジェット記録用シートを作製し、評価した。評価結果は下記表1に示す。
Figure 0004969414

前記表1に示すように、実施例では、インク吸収性、光沢性及び写像性に優れており、顔料インクを用いて記録した後のブロンジングの発生を抑えることができた。また、脆性も抑制された。
これに対し、比較例1〜4では、インク吸収性、光沢性及び写像性に劣っているばかりか、ブロンジングの発生及び脆性の抑制の点でも劣っていた。また、PVA等の水溶性高分子存在下で単量体を重合させた含PVAラテックスを用いなかった比較例1〜3では、平滑にならず、光沢均一性及び写像性が大きく低下し、更にブロンジングの発生も抑えられなかった。Tgが乾燥風温度より高いラテックスのみを用いた比較例5では、膜がぼろぼろになって平滑性の高い膜が得られなかった。

Claims (4)

  1. 支持体上に、該支持体側から順に、気相法シリカ及び水溶性バインダーを含む第1のインク受容層と、支持体上に付与された後の乾燥時の乾燥風温度Tより高いガラス転移温度Tを有する第1のラテックス、及び前記乾燥風温度Tより低いガラス転移温度Tを有する第2のラテックスを含む第2のインク受容層とを有し、前記第1のラテックス及び前記第2のラテックスの少なくとも一方は、ポリビニルアルコールを含む水溶性高分子の存在下で単量体を重合させて得られた含PVAラテックスである顔料インク用インクジェット記録媒体。
  2. 前記第1のラテックスのガラス転移温度Tは、前記乾燥風温度T+30℃以上であり、前記第2のラテックスのガラス転移温度Tは、前記乾燥風温度T−30℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の顔料インク用インクジェット記録媒体。
  3. 前記含PVAラテックスは、ポリビニルアルコール(PVA)が単量体の重合体にグラフト重合したPVAグラフト鎖を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の顔料インク用インクジェット記録媒体。
  4. 前記第2のラテックスは、前記含PVAラテックスであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の顔料インク用インクジェット記録媒体。
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