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JP4969357B2 - 装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた釣糸案内用装飾部品ならびに時計用装飾部品 - Google Patents

装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた釣糸案内用装飾部品ならびに時計用装飾部品 Download PDF

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JP4969357B2 JP2007196126A JP2007196126A JP4969357B2 JP 4969357 B2 JP4969357 B2 JP 4969357B2 JP 2007196126 A JP2007196126 A JP 2007196126A JP 2007196126 A JP2007196126 A JP 2007196126A JP 4969357 B2 JP4969357 B2 JP 4969357B2
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Description

本発明は、釣糸の案内や時計等に用いられる装飾部品用セラミックスに関し、特に耐磨耗性に優れ、装飾的価値の極めて高い赤みを帯びた銀色の色調を醸し出す装飾部品用セラミックスに関するものである。
従来、釣糸の案内や時計等に用いられる装飾部品は、金属系の材料が用いられていたが、耐スクラッチ性や耐食性が劣り、装飾部品の表面に損傷が生じやすく、次第に装飾性が損なわれるという問題があった。
また、基材表面に下地層を形成し、その上にDLC(Diamond Like Carbon)皮膜をプラズマ放電によるCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長法)によって形成して複雑な色彩と色調を醸し出すことが考えられているが、被覆層の剥離や損傷が生じやすく、装飾部品には適さないものもあった。
そのため、最近ではこのような問題を解決するために、様々な色を有したセラミックスが用いられるようになりつつあり、例えば特許文献1には、周期表第4a族、第5a族金属元素から選ばれる少なくとも1種の炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を容量比で50%以上含有するとともに、気孔率が5%以下の焼結体からなる金色を呈する釣具用部品が提案されている。この釣具用部品によれば、強度および耐磨耗性に優れることにより、特に釣糸との摺動性が良好で糸切れ等の発生がなく、また鏡面の光沢のある金色を有し、その色調も長期にわたり維持することができるというものである。
また、特許文献2では、次式(A)で表わされる硬質相が70〜98重量%と、
(Tia,Mb)(Nw,Cx,Oy)Z・・・(A)
但し、M:Zr,Hf,V,Nb,Ta,Crの中の1種以上
a+b=1,1≧a≧0.4,0.6≧b≧0
W+X+Y=1,X+Y>0,1>W≧0.4
0.19≧X≧0,0.6≧Y≧0,0.93≧Z≧0.6
Fe,Ni,Co,Cr,Mo,Wの中から選ばれた1種以上の結合相が2〜30重量%と不可避不純物とから成る装飾用焼結合金が提案されている。この装飾用焼結合金によれば、TiNzを主体にした硬質相によって黄金色系統の色調を保持させるものであるが、Zの値が化学量論組成よりも少なくなるほど黄金色系から淡黄金色系に変化し、この色調変化は、さらに黄金色を呈するTiO,ZrN,HfN,VN,NbN,TaN,CrN,CrN,TaC,NbCを加えることによって、深みのある淡黄金色から鮮明な黄金色までの色調コントロールが一層容易になるというものである。
また、特許文献3には、炭化チタンを主成分とし、炭化クロムを0.1〜40重量%、Yあるいは希土類酸化物のうちの1種以上を0.05〜15重量%含有させた硬質銀色セラミックスが提案されている。この硬質銀色セラミックスによれば、従来の銀色セラミックスに比べ、耐食性や高強度が著しく改良され、長期にわたり腐食やキズの発生のない装飾用部材として用いられるというものである。
特開平4−271739号公報 特開昭58−204149号公報 特開平3−69561号公報
しかしながら、釣糸の案内や時計等に用いられる装飾部品の色調の好みは十人十色であり、特許文献1に開示された釣具用部品や、特許文献2に開示された装飾用焼結合金や、特許文献3に開示された硬質銀色セラミックスは、強度や耐磨耗性に優れるものの、金色や銀色のみの色合いであり、単調な色調を呈するものであった。そのため、さらに装飾的価値が高い色調を有する装飾部品用セラミックスの実用化が望まれている。
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値が高い色調を醸し出し、しかも耐磨耗性に優れた装飾部品用セラミックスを提供することを目的とする。また、この本発明の装飾部品用セラミックスを用いた釣糸案内用装飾部品ならびに時計用装飾部品を提供することを目的とする。
本発明の装飾部品用セラミックスは、ニッケルを7〜16質量%,クロムを2〜6質量%,窒化珪素を5〜14質量%,残部として炭窒化チタンおよび窒化チタンの少なくともいずれか1種を含んでなる炭窒化チタン質焼結体からなり、表面にニッケル,クロムおよびこれらの珪化物と窒化珪素とを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記構成において、窒化珪素がβ型窒化珪素であることを特徴とするものである。
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、上記構成のいずれかにおいて、破壊靱性が3.5MPa・m1/2以上であって、ビッカース硬度が11GPa以上であることを特徴とするものである。
また、本発明の釣糸案内用装飾部品は、上記構成のいずれかの本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
また、本発明の時計用装飾部品は、上記構成のいずれかの本発明の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とするものである。
本発明の装飾部品用セラミックスによれば、ニッケルを7〜16質量%,クロムを2〜6質量%,窒化珪素を5〜14質量%,残部として炭窒化チタンおよび窒化チタンの少なくともいずれか1種を含んでなる炭窒化チタン質焼結体からなり、表面にニッケル,クロムおよびこれらの珪化物と窒化珪素とを含むことから、理由は明らかではないが、炭窒化チタンが呈する金属光沢を有する茶褐色系の色調と、ニッケル,クロムおよびこれらの珪化物が呈する銀色系の色調と、窒化珪素が呈する黒色系の色調とのバランスが合って、CIE1976L*a*b*表色系において明度指数L*が60〜71であり、クロマティクネス指数a*が4〜9であり、b*が7〜10である範囲の、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値の極めて高い色調を醸し出すことができる。しかも、そのような装飾的価値の高い色調を醸し出しながら、硬度や耐磨耗性にも極めて優れたものである。
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、窒化珪素がβ型窒化珪素であるときには、出発原料のα型窒化珪素が焼結に伴ってβ型窒化珪素へ相転移して柱状の窒化珪素粒子が粒界に形成されることによって得られるものであるため、粒界間で結晶が移動することにより変形が生じる粒界滑りが発生しても、この柱状の窒化珪素粒子が楔となって粒界滑りの進行を抑制することができるので、靱性を向上させることができる。
また、本発明の装飾部品用セラミックスによれば、破壊靱性が3.5MPa・m1/2以上であって、ビッカース硬度が11GPa以上であるときには、耐磨耗性に優れることから表面に傷が付きにくく、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値が高い色調を長期にわたり維持することができる。
また、本発明の釣糸案内用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、釣糸を案内する際に釣糸に付着した細かい砂等に擦られても耐磨耗性に優れるものであるので表面に傷が付きにくく、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値が高い色調を長期にわたり維持しつつ、釣糸案内用の部品として長期の使用に耐えるものとすることができる。
また、本発明の時計用装飾部品によれば、本発明の装飾部品用セラミックスからなることから、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値が高い色調を醸し出すことができ、しかも長期にわたって傷付きを抑えることができるので、高級感が溢れる魅力的な商品としての時計用の装飾部品を構成することができる。
以下、本発明の装飾部品用セラミックスおよびこれを用いた釣糸案内用装飾部品ならびに時計用装飾部品の実施の形態の例について説明する。
まず、本発明の装飾部品用セラミックスは、炭窒化チタン質焼結体からなり、表面にニッケル,クロムおよびこれらの珪化物と窒化珪素とを含むものである。なお、本発明の装飾部品用セラミックスにおける表面とは、装飾部品の装飾的価値が要求される面を指し、全ての面を指すものではない。
本発明において、炭窒化チタン質焼結体とは、炭窒化チタン(TiCN)を主成分とする焼結体であり、ここでいう主成分とは、装飾部品用セラミックスを構成する全成分100質量%に対して、50質量%以上を占める成分である。次に、ニッケルおよびニッケルの珪化物、例えばNiSi,NiSi,NiSi,NiSiおよびNiSi等は、炭窒化チタンの結晶粒子を結合する結合相として機能するものである。また、クロムおよびクロムの珪化物、例えばCrSi,CrSi,CrSiおよびCrSi等は、ニッケルおよびニッケルの珪化物の酸化を抑えて耐食性を高めるものである。そして、窒化珪素は、靱性が高いことから耐磨耗性を高めるものである。
また、炭窒化チタン質焼結体においては、微量成分として、例えばMn,Fe,Co,Zn,Nb,Mo,Wおよびこれら金属元素の化合物等を含有していてもよい。
このように本発明の装飾部品用セラミックスは、炭窒化チタン質焼結体からなり、表面にニッケル,クロムおよびこれらの珪化物と窒化珪素とを含むことが重要であり、これにより、理由は明らかではないが、炭窒化チタンが呈する金属光沢を有する茶褐色系の色調と、ニッケル,クロムおよびこれらの珪化物が呈する銀色系の色調と、窒化珪素が呈する黒色系の色調とのバランスが合って、銀色に赤みを帯びるという単なる金色や銀色のような単調な色調ではない装飾的価値が高い色調を醸し出し、しかも耐磨耗性に優れた装飾部品用セラミックスとすることができる。
そして、この本発明の装飾部品用セラミックスは、ニッケルを7〜16質量%,クロムを2〜6質量%,窒化珪素を5〜14質量%とし、残部を炭窒化チタンで構成した調合原料を用いることにより得ることができる。
ここで、ニッケルを7〜16質量%としたのは、この範囲であればニッケルが炭窒化チタンの結晶粒子の結合を高めるので、できるだけ高い破壊靭性を持ちながら硬度(例えばビッカース硬度)を高くすることができるからである。また、クロムを2〜6質量%としたのは、良好な耐食性を得ることができ、色調の鮮やかさを抑えることなく高級感を醸し出すことができるからである。さらに、窒化珪素を5〜14質量%としたのは、靭性が高く耐磨耗性を向上させることができるとともに、窒化珪素自体が有する色合いである黒色の影響が出過ぎるのを抑えることができるからである。
そして、ニッケルが7質量%未満であれば、炭窒化チタンの結晶粒子を良好に結合することができずに強度および破壊靱性が低下することとなり、16質量%を超えると、ビッカース硬度が低下することとなる。また、クロムが2質量%未満であれば、ニッケルおよびニッケルの珪化物の酸化を抑制することができずに耐食性が低下することとなり、6質量%を超えると、クロマティクネス指数a*およびb*が低下して、色調の鮮やかさが抑えられるため、高級感に溢れ、魅力的な装飾部品用セラミックスとすることができなくなる。さらに、窒化珪素が5質量%未満であれば、破壊靱性が低下して耐磨耗性が低下することとなり、14質量%を超えると、黒色系が増すこととなり、明度指数L*ならびにクロマティクネス指数a*およびb*が低下して、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値の高い色調を醸し出すことができなくなる。
このとき、本発明の装飾部品用セラミックスの表面は、CIE1976L*a*b*表色系において、明度指数L*が60〜71であり、クロマティクネス指数a*が4〜9であり、b*が7〜10である範囲となる。
ここで、明度指数L*は色調の明暗を示す指数であり、明度指数L*の値が大きいと色調は明るく、明度指数L*の値が小さいと色調は暗くなる。また、クロマティクネス指数a*は色調の赤から緑の度合いを示す指数であり、クロマティクネス指数a*の値がプラス方向に大きいと色調は赤色になり、その絶対値が小さいと色調は鮮やかさが抑えられ、クロマティクネス指数a*の値がマイナス方向に大きいと色調は緑色になる。さらに、クロマティクネス指数b*は色調の黄から青の度合いを示す指数であり、クロマティクネス指数b*の値がプラス方向に大きいと色調は黄色になり、その絶対値が小さいと色調は鮮やかさが抑えられ、クロマティクネス指数b*の値がマイナス方向に大きいと色調は青色になる。
このCIE1976L*a*b*表色系において、明度指数L*が60〜71であり、クロマティクネス指数a*が4〜9であり、b*が7〜10であれば、程良い金属光沢を有し、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値の高い色調を醸し出すものとなり、高級感に溢れた、魅力的な装飾部品用セラミックスとすることができる。
なお、装飾部品用セラミックスを形成するこれらの成分は、X線回折法により同定することができ、それらの成分比率は蛍光X線分析法またはICP(Inductivity Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析法により求めればよい。そして、このCIE1976L*a*b*表色系における明度指数L*およびクロマティクネス指数a*,b*は、JIS Z 8722−2000に準拠して測定することで求められる。例えば、分光測色計(コニカミノルタホールディングス製 CM−3700d等)を用い、光源をCIE標準光源D65とし、視野角を10°に、測定範囲を5mm×7mmに設定して測定することができる。
また、装飾的価値を維持するという観点からMn,Fe,Co,Zn,Nb,Mo,Wおよびこれら金属元素の化合物等の微量成分は、炭窒化チタン質焼結体100質量%に対してそれぞれ1質量%以下であることが好適であり、これら微量成分の比率は、蛍光X線分析法により測定することができる。
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、窒化珪素がβ型窒化珪素であることが好適である。窒化珪素がβ型窒化珪素であるときは、出発原料のα型窒化珪素が焼結に伴ってβ型窒化珪素へ相転移して柱状の窒化珪素粒子が粒界に形成されることによって得られるものであるため、粒界間で結晶が移動することにより変形が生じる粒界滑りが発生しても、この柱状の窒化珪素粒子が楔となって粒界滑りの進行を抑制することができるので、靱性を向上させることができる。なお、この窒化珪素の結晶相については、X線回折法を用いて同定することができる。
また、本発明の装飾部品用セラミックスは、破壊靱性が3.5MPa・m1/2以上であって、ビッカース硬度が11GPa以上であることが好適である。これは、本発明の装飾部品用セラミックスの耐磨耗性は破壊靱性および硬度の影響を受けるものであり、破壊靱性および硬度が高くなるほど耐磨耗性は高くなるからであり、このような特性値を示す装飾部品用セラミックスであれば、耐磨耗性に優れることから表面に傷が付きにくく、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値の高い色調を長期にわたり維持することができるからである。
このとき、本発明の装飾部品用セラミックスの破壊靭性および硬度に影響を与えるのはニッケルの粉末の比率である。ニッケル粉末の比率が高いほど破壊靭性が高くなり、比率が低いほど硬度が高くなる。このような観点から、ニッケル粉末は調合原料100質量%に対して9〜11質量%であることが好適であり、ニッケル粉末の比率をこの範囲にすることで、破壊靱性が3.5MPa・m1/2以上であって、ビッカース硬度が11GPa以上である装飾部品用セラミックスを得ることができる。なお、破壊靱性およびビッカース硬度については、それぞれJIS R 1607−1995に規定される圧子圧入法(IF法)およびJIS R 1610−2003に準拠して測定することができる。
次に、図1は、本発明の装飾部品用セラミックスからなる本発明の釣糸案内用装飾部品の実施の形態の一例を示す釣糸用ガイドリングの斜視図である。
この釣糸用ガイドリング1は円環体であり、図示しない治具に固定して釣り竿に取り付けられ、この釣糸用ガイドリング1の内周側で釣糸を案内するものとして用いられるものである。
この釣糸用ガイドリング1は、本発明の装飾部品用セラミックスからなることによって、この内周側で釣糸を案内する際に釣糸に付着した細かい砂等に擦られても耐磨耗性に優れることから表面に傷が付きにくく、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値が高い色調を長期にわたり維持することができるものである。このような釣糸用ガイドリング1の耐磨耗性は、以下に示す構成の耐磨耗性評価装置を作製し、これを用いることにより評価することができる。
図2は、本発明の釣糸案内用装飾部品である釣糸用ガイドリングの耐磨耗性の評価に用いる耐磨耗性評価装置の概略構成図である。この耐磨耗性評価装置10は、ナイロン製の糸6と、所定位置で糸6に張力を与えるプーリー5と、糸6を走行させるモーター3と、糸6に泥水を付着させる水槽2とからなり、所定位置に治具(図示しない)等で固定された円環体の釣糸用ガイドリング1にワイヤー7を介しておもり4の質量分の荷重が与えられ、水槽2を通って泥水が付着した糸6が釣糸用ガイドリング1の内周面を摺動する構造となっており、ナイロン製の糸6の号数は、例えば3号とすればよい。
この耐磨耗性評価装置10を用いて釣糸用ガイドリング1の耐磨耗性を評価する際の条件は、例えば、おもり4の質量を500gとし、糸6が釣糸用ガイドリング1の内周側を摺動する速度を60m/分とし、糸6の走行距離が3000m以上になるように設定すればよい。
次に、図3は、本発明の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示す斜視図である。また、図4は、本発明の時計用装飾部品である時計用ケースの他の例を示す斜視図である。また、図5は、本発明の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。なお、これらの図において同じ部位を示す場合は同じ参照符号を付してある。
図3に示す時計用ケース20Aは、図示しないムーブメント(駆動機構)を収容する凹部11と、腕に時計を装着するための時計用バンド(図示しない)を固定する足部12とを備えており、凹部11は厚みの薄い底部13と厚みの厚い胴部14とからなる。
また、図4に示す時計用ケース20Bは、図示しないムーブメント(駆動機構)が入る穴部15と、胴部14に形成された腕に時計を装着するための時計用バンド(図示しない)を固定する足部12とを備えている。
また、図5に示す時計用バンド50を構成するバンド駒は、ピン40が挿入される貫通孔21を有する中駒25と、中駒25を挟むようにして配置され、ピン40の両端が差し込まれるピン穴31を有する外駒30とから構成されており、中駒20の貫通孔21にピン40が挿入され、中駒20の貫通孔21に挿入されたピン40の両端がそれぞれ両側の外駒30のピン穴31に差し込まれることにより、中駒20と外駒30とが順次連結されて時計用バンド50が構成される。
これら、時計用ケース20A,20Bおよび時計用バンド50を構成するバンド駒として用いられる本発明の時計用装飾部品は、本発明の装飾部品用セラミックスからなるものであることから、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値の高い色調を醸し出すことができるとともに硬度が高く耐磨耗性に極めて優れるので、信頼性が高く高級感が溢れる魅力的な商品とすることができる。
次に、本発明の装飾部品用セラミックスの製造方法について説明する。
本発明の装飾部品用セラミックスを得るには、まず、窒化チタン(TiN)および炭窒化チタン(TiCN)の少なくともいずれか1種,ニッケル(Ni),クロム(Cr)および窒化珪素(SiN)の各粉末を所定量秤量し、混合して調合原料とする。より具体的には、調合原料100質量%に対してニッケルの粉末を7〜16質量%,クロムの粉末を2〜6質量%,窒化珪素の粉末を5〜14質量%とし、残りの粉末を窒化チタンおよび炭窒化チタンの少なくともいずれか1種となるように秤量して、混合すればよい。このとき窒化チタンを用いた場合であれば、この窒化チタンは有機溶媒や結合剤を構成する炭素と反応して炭窒化チタンとして装飾部品用セラミックス内に残存することになる。なお、窒化チタンの粉末は化学量論的組成のTiNであっても、あるいは非化学量論的組成のTiN1−x(0<x<1)であってもよい。
次いで、調合原料に有機溶媒として、例えば2−プロパノール(イソプロピルアルコール)またはメタノールを加え、ミルを用いて粉砕・混合した後、結合剤としてパラフィンワックスを所定量添加し、所望の成形法、例えば、乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法等により円板,平板,円環体等の所望形状に成形し成形体を得る。そして、得られた成形体を必要に応じ、窒素雰囲気,不活性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中で脱脂した後、窒素および不活性ガスから選択される少なくとも1種のガス雰囲気中あるいは真空中で温度1350℃以上1600℃以下の範囲で焼成することで、緻密質な、例えば相対密度が95%以上の焼結体を得ることができる。
また、窒化珪素の粉末としてα型窒化珪素を用いた場合は、温度1400℃〜1600℃の範囲で焼成することで、α型窒化珪素がβ型窒化珪素へ相転移して柱状の窒化珪素粒子が形成され、破壊形態の1種である粒界滑りが発生しても、この柱状の窒化珪素粒子が楔となって粒界滑りの進行を抑制することができるので好適である。
なお、窒化珪素を構成する珪素は、焼成中に窒化珪素より一部遊離し、ニッケルやクロムと結合して、NiSi,NiSi,NiSi,NiSi,NiSi等のニッケルの珪化物を形成したり、CrSi,CrSi,CrSi,CrSi等のクロムの珪化物を形成したりする。
そして、得られた焼結体の装飾的価値が求められる表面に、ラップ盤を用いてラップ加工を行なった後、バレル研磨を行なうことにより、焼結体の表面は銀色に赤みを帯びた色調を有する装飾面となって、本発明の装飾部品用セラミックスを得ることができる。なお、このような表面に現れる気孔がある場合は、その最大径を30μm以下にすることが好適である。気孔の最大径をこの範囲にすることで、装飾部品用セラミックスの表面を美しい鏡面とすることができるとともに、気孔内への雑菌,異物,汚染物等の凝着を低減することができる。
また、装飾部品用セラミックスの製品形状が複雑形状である場合には、あらかじめ乾式加圧成形法,冷間静水圧加圧成形法,押し出し成形法,射出成形法等によってブロック形状または製品形状に近い形状に成形し、これを焼結してから、製品形状になるように研削加工を施した後、順次ラップ加工,バレル研磨を行なってもよい。あるいは、最初から射出成形法によって製品形状とし、焼成後に、順次ラップ加工,バレル研磨を行なってもよい。
以上のようにして得られる本発明の装飾部品用セラミックスは、表面が銀色に赤みを帯びるという装飾的価値が高い色調を醸し出し、しかも耐磨耗性に優れるものとなる。また、この本発明の装飾部品用セラミックスを釣糸案内用装飾部品に用いれば、釣糸を案内する際に釣糸に付着した細かい砂等に擦られても耐磨耗性に優れることから表面に傷が付きにくく、銀色に赤みを帯びた色調を長期にわたり維持することができる。さらに、本発明の装飾部品用セラミックスは、表面が銀色に赤みを帯びるという装飾的価値の高い色調を醸し出し、高級感が溢れる魅力的な商品を構成することができるので、時計用ケース,時計用バンド駒等の時計用装飾部品を始め、ダイヤルボタン等の携帯電話機用装飾部品や、ブローチ,ネックレス,イヤリング,リング,ネクタイピン,タイタック,メダル,ボタン等の装身具用装飾部品や、床,壁,天井を飾るタイルあるいはドアの取手等の建材用装飾部品や、スプーン,フォーク等のキッチン部品用装飾部品として好適に用いることができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、炭窒化チタン(TiCN)粉末,炭化チタン(TiN)粉末,ニッケル(Ni)粉末,クロム(Cr)粉末および窒化珪素(SiN)粉末を、表1に示す比率で秤量し混合して調合原料とした。また、比較例として窒化チタン(TiN)粉末,ニッケル粉末,クロム粉末および酸化ジルコニウム粉末を表1に示す比率で秤量し混合した調合原料を準備した。
次に、上記各調合原料に有機溶媒としてメタノールを加え、振動ミルを用いて72時間粉砕・混合した後、ポリエチレングリコール等のバインダを調合原料に対して3質量%添加し混合して、スプレードライヤーを用いて噴霧乾燥し顆粒とした。そして、得られた顆粒を成形型に充填し、98MPaの圧力で加圧成形して、円環体および平板の成形体を複数個ずつ作製した。これら成形体を窒素雰囲気中にて600℃で脱脂した後、窒素雰囲気中にて表1に示す焼成温度で2時間保持することで焼結体を得た。その後、回転バレル研磨機を用いてバレル研磨して、JIS B 0601−2001で規定する算術平均高さ(Ra)が0.05〜0.23μmの表面を有する装飾部品用セラミックスとした。
Figure 0004969357
この装飾部品用セラミックスの組成はX線回折法を用いて同定した。また、JIS Z 8722−2000に準拠して分光測色計(コニカミノルタホールディングス製 CM−3700d)を用い、光源にCIE標準光源D65を用い、視野角を10°に設定して、装飾部品用セラミックスの表面の色調を測定した。さらに、20人にモニターを依頼し、表1に示す試料No.1〜15の装飾部品用セラミックスについて、好印象を与えた装飾部品用セラミックスに○、好印象を与えられなかった装飾部品用セラミックスを△として評価した。また、破壊靱性について、平板の装飾部品用セラミックスから試験片を切り出してJIS R 1607−1995に規定される圧子圧入法(IF法)で測定した。さらに、ビッカース硬度について、JIS R 1610−2003にそれぞれ準拠して測定した。
さらに、耐磨耗性の評価については、図2に示す耐磨耗性評価装置を用いて、試料No.1〜15の円環状の装飾部品用セラミックスを所定位置(釣糸用ガイドリング1の位置)に治具で固定した後、水0.001mに対して半磁器土10gを投入し混合して水槽2中に泥水を準備した。そして、この泥水が付着したナイロン製(東レ製 銀鱗Σ3号)の糸6を、円環体の装飾部品用セラミックスの内周側で摺動させた。この摺動では、おもり4の質量を500gに、糸6が装飾部品用セラミックスの内周側を摺動する速度を60m/分に、糸6の走行距離を3000mになるように設定し、糸6によって装飾部品用セラミックスが磨耗して生じたキズの最大深さを磨耗深さとして測定した。なお、この磨耗深さの測定には表面形状測定顕微鏡(キーエンス製 測定部VF−7510/コントローラVF−7500)を用いた。
これらの同定,評価および測定結果を表2に示す。
Figure 0004969357
表1,2に示す結果からわかるように、比較例である、窒化チタン質焼結体からなり、表面にニッケル,クロムおよび酸化ジルコニウムを含む試料No.15は、色調が金色に赤味を強く帯びた色調であり、モニターに好まれるものではなかったために、好印象を与えることができなかった。
一方、炭窒化チタン質焼結体からなり、表面にニッケル,クロムおよびこれらの珪化物と窒化珪素とを含む本発明の実施例の試料No.1〜14は、CIE1976L*a*b*表色系において、明度指数L*が60〜71,クロマティクネス指数a*が4〜9,b*が7〜10の範囲となる銀色に赤みを帯びた色調であり、色調がモニターに好まれるものであったので、装飾部品として好印象を与えることが確認できた。
特に、破壊靱性が3.5MPa・m1/2以上であって、ビッカース硬度が11GPa以上である試料No.2〜4,7,9〜11,14は、破壊靱性またはビッカース硬度がこの範囲外である試料No.1,5,6,8,12,13より磨耗深さが2.2μm以下とさらに小さく、好適であることが確認できた。また、試料No.3と7、試料No.10と14は、同じ種類の粉末を同じ比率で用いていながら、1350℃で焼成されて窒化硅素の結晶相がα型であることにより破壊靱性が劣り、1400〜1600℃の範囲の温度で焼成し、β型の結晶相とすることによって靱性が向上できることが確認できた。
そして、前述の平板の成形体を用いて時計用ケースの形状とするために研削加工を行ない、これら研削加工を施した成形体を窒素雰囲気中で脱脂した後、窒素雰囲気中で焼成して焼結体を得た。その後、この焼結体の装飾面となる部分を鏡面研磨して図4に示すような時計用ケースを作製し、時計本体に組み込んで目視で評価したところ、銀色に赤みを帯びるという装飾的価値の高い色調を醸し出し、高級感が溢れる魅力的な商品を構成することができることが分かり、本発明の装飾部品用セラミックスは釣糸案内用装飾部品と同様に時計用装飾部品にも好適に用いられることが確認できた。
本発明の釣糸案内用装飾部品の実施の形態の一例を示す釣糸用ガイドリングの斜視図である。 本発明の釣糸案内用装飾部品である釣糸用ガイドリングの耐磨耗性評価装置の概略構成図である。 本発明の時計用装飾部品である時計用ケースの一例を示す斜視図である。 本発明の時計用装飾部品である時計用ケースの他の例を示す斜視図である。 本発明の時計用装飾部品である時計用バンドの構成の一例を示す模式図である。
符号の説明
1:釣糸用ガイドリング
20A,20B:時計用ケース
50:時計用バンド

Claims (5)

  1. ニッケルを7〜16質量%,クロムを2〜6質量%,窒化珪素を5〜14質量%,残部として炭窒化チタンおよび窒化チタンの少なくともいずれか1種を含んでなる炭窒化チタン質焼結体からなり、表面にニッケル,クロムおよびこれらの珪化物と窒化珪素とを含むことを特徴とする装飾部品用セラミックス。
  2. 前記窒化珪素がβ型窒化珪素であることを特徴とする請求項1に記載の装飾部品用セラミックス。
  3. 破壊靱性が3.5MPa・m1/2以上であって、ビッカース硬度が11GPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の装飾部品用セラミックス。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする釣糸案内用装飾部品。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに記載の装飾部品用セラミックスからなることを特徴とする時計用装飾部品。
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