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JP4967567B2 - 転写シート - Google Patents

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Description

本発明は、偽造、改ざん、または秘密にすべき情報の盗み読みなどの不正の防止対策や万一そのような不正が心配されても不正の有無の判別を容易にする対策[本明細書ではこれらの対策を偽造防止対策と総称する]が必要とされる技術分野で用いられる転写シートおよびその製造方法に関する。
より詳しくは、たとえば商品券やクレジットカードなどの有価証券類の偽造防止対策、ブランド品や高級品などの一般に高価なものへの適用希望が多い真正品であることを証明するための偽造防止対策などのニーズに好適な技術、さらにデザインによっては装飾性にも優れた視覚効果を得られる技術であって、ホログラムや回折格子などとの組合せでよりいっそう高い効果が得られる偽造防止のための転写シートおよびその製造方法に関する。
近年、光学効果を発現させる技術の例として、反射光同士の干渉や反射光の分散を用いて立体画像、特殊な装飾画像もしくは特殊な色の変化などを表現し得るホログラムや回折格子、または光学特性の異なる薄膜を光学的に適当な多層に重ねることによって見る角度に応じて色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜などの技術を利用した、いわゆるOVDが利用されている[OVDは"Optical(ly) Variable Device"の略である。OVDの同義語としてDOVIDが知られており、これは"Diffractive Optical(ly) Variable Imaging Device"の略である]。
なお、色の変化についていえば、材料自体による特定波長の色光の吸収に頼ることなく、OVDの材料や構造に起因して色を呈するかまたは色が変化する現象があり、これは光の波長によって光自体の性質が異なることに由来している。本明細書中ではこのような色を構造色と称している。構造色の発現に関わる光学現象としては、多層膜干渉、薄膜干渉、屈折、分散、光散乱、Mie散乱、回折、回折格子などがある。これらのOVDには、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜技術で形成された膜厚1μm以下の光学薄膜が利用されることが多い。
このOVDは、高度な製造技術を要すること、および独特な視覚効果を有し一瞥で真偽が判定できることから、有効な偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類などの一部または全面に形成され使用されている。最近では、有価証券以外に、スポーツ用品、コンピュータ部品をはじめとする電気製品、ソフトウェアパッケージなどにも貼り付けられ、その製品の真正さを証明する認証シールや、その製品の封印シールとしても広く使われるようになってきた。
このようにOVDを、商品券、紙幣、パスポート、株券などの紙媒体に添付する場合、貼り替えが容易でない熱転写方式のOVD転写シートが採用されることが多い。このようなOVD転写シートは、シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、回折光を発生させるための凹凸面を有する透明な回折構造形成層、前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜からなり、該回折構造形成層を透過した光を反射させる回折効果層、および該回折効果層を被覆して設けてある接着剤層を積層した構造を有する。このようなOVD転写シートを用いて熱転写されたOVDを貼り替えようとすると、OVDに利用されている光学薄膜が物理的に破壊されて本来の視覚効果が損なわれるため、その貼り替えの痕が歴然と残るためである。
特にホログラムなどのOVD転写シートは、回折構造の凹凸を設ける回折構造形成層にある程度の厚みが必要であるため、通常の転写シートと比較して転写層の厚みが厚くなる。しかし、転写層の厚みが厚くなると、転写後に被転写体表面との段差が大きくなり転写層が剥離しやすくなる。このため、転写層全体の厚みが必要以上に厚くならないようにするために、接着剤層を薄く形成することが好ましい。また、転写を行う際の箔切れを良好にするためにも、接着剤層を薄く形成することが好ましい。
ところで近年、偽造防止の需要の高まりから、高速で転写できる生産性の高い転写シートが要求されている。しかし、従来のOVD転写シートを用いて高速転写した場合、転写時の熱量不足により、被転写体との接着性が悪くなり、OVDを含む転写層が剥離しやすいという問題があった。
OVD転写シートの接着剤層の厚みを厚く形成して接着感度を向上させることが考えられるが、接着剤層を厚くすると、通常は前述のように箔切れが悪くなって作業性が低下するうえに転写層と被転写体表面との段差が大きくなり爪などで剥離しやすくなるため好ましくない。従って、従来のOVD転写シートでは、単に接着剤層を厚く形成することにより、高速転写を可能にするとともに、密着性を良好にし、かつ転写時の作業性を良好にすることはできなかった。
OVD転写シートの箔切れの向上に対しては、接着剤層に無機微粒子を添加することが提案されている(たとえば特許文献1参照)。無機微粒子としては、シリカ、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、カオリナイトなどが挙げられるが、これらの無機微粒子の添加は接着性の低下を招く。
OVD転写シートの接着剤層を内部が多孔質で表面が凹凸になるように形成することによって、箔切れを向上させる方法も提案されている(たとえば特許文献2参照)。しかし、この転写シートでも、箔切れが十分に良好であるとはいえない。
特開平6−179283号公報 特開平5−155199号公報
本発明は、高速転写が可能であり、転写後の転写層の密着性が良好であり、転写時の作業性に優れた転写シートを提供するとともに、そのような転写シートを容易に製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明に関わる転写シートは、シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、少なくとも、
(イ)回折光を発生させるための凹凸面を有する透明な回折構造形成層、
(ロ)前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜からなり、該回折構造形成層を透過した光を反射させる回折効果層、
および
(ハ)該回折効果層を被覆して設けてある接着剤層、
を具備し、
前記接着剤層はクラックによって区画された表面構造を有することを特徴とする。
本発明の転写シートにおいては、前記接着剤層の厚みが1〜20μmであることが好ましい。
本発明の転写シートにおいては、前記接着剤層の表面においてクラックによって区画された1つの領域の表面積が1mm2以下であることが好ましい。
本発明の転写シートにおいては、前記接着剤層の透過濃度が0.10以上であることが好ましい。
本発明に関わる転写シートの製造方法は、シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、少なくとも、
(イ)回折光を発生させるための凹凸面を有する透明な回折構造形成層、
(ロ)前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜からなり、該回折構造形成層を透過した光を反射させる回折効果層を形成し、
前記回折効果層上に、
(ハ)接着剤組成物を塗工し、
接着剤組成物の最低造膜温度未満の温度で乾燥して接着剤組成物から溶媒の一部を揮発させた後、接着剤組成物の最低造膜温度以上の温度で乾燥して接着剤組成物から残留溶媒を揮発させ、クラックによって区画された表面構造を有する接着剤層を形成することを特徴とする。
本発明の転写シートは、接着剤層がクラックによって区画された表面構造を有するので、高速転写が可能であり、転写後の転写層の密着性が良好であり、転写時の作業性に優れている。また、本発明の方法を用いれば、そのような転写シートを容易に製造することができる。
以下、本発明に係る転写シートの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る転写シートの断面図である。この転写シート(1)は、シート状の支持体(2)の片面に、保護層(3)、回折光を発生させるための凹凸面を有する透明な回折構造形成層(4)、前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜からなり回折構造形成層(4)を透過した光を反射させる回折効果層(5)、および回折効果層(5)を被覆して設けてある接着剤層(6)を順次積層した構造を有する。以下、本発明の転写シートを構成する各部材についてより詳細に説明する。
本発明の転写シートにおいて、支持体2には厚みが安定しており、かつ耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いるのが一般的であるが、その材料は特に限定されない。その他のフィルム材料として、高い耐熱性を示すポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルムなどを同様の目的で使用することができる。また、他のフィルム材料、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニルなども、塗液の塗工条件、さらに乾燥条件が許せば使用できる。
本発明の転写シートにおいて、保護層3は支持体2から剥離可能であってもよい。なお、保護層3の代わりに剥離層または離型層と呼ばれる層が設けられる場合があるが、これらの層はいずれも必須ではない。すなわち、これらの層は、転写した転写層を保護する、または、転写する際の転写性能を高める意図で、設計により適宜設けてもよいオプションである。保護層3としては、ポリメチルメタクリレート樹脂と他の熱可塑性樹脂たとえば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体もしくはニトロセルロース樹脂との混合物、またはポリメチルメタクリレート樹脂とポリエチレンワックスとの混合物などが挙げられる。また、酢酸セルロース樹脂と熱硬化性樹脂たとえばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型アクリル樹脂またはメラミン樹脂との混合物を塗工した後、熱により硬化させたものも好ましい例として挙げられる。
本発明の転写シートにおいて、回折構造形成層4は、その表面に回折光を発生させるための凹凸面を有するように加工され、その凹凸面に沿って設けられ回折構造形成層4を透過した光を反射する回折効果層5に回折効果を発揮させる。回折効果層5の凹凸表面で反射された回折光は互いに干渉して構造色を呈する。一般に、この回折現象によって得られる構造色は、観察者の位置によって異なる色彩を示す。
回折構造形成層4には、その表面にプレス版にて凹凸面を成形できるという性能が要求される。回折構造形成層4の主材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線または電子線硬化性樹脂のいずれでもよい。回折構造形成層4に用いられる材料としては、たとえばアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオールなどにポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂などの熱硬化樹脂や、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどの紫外線または電子線硬化樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、これら以外のものであっても、その表面に凹凸面を形成できれば適宜使用することができる。
微細凹凸形状を構成する回折格子には、可干渉な二光線を干渉させて得られる干渉縞を感光材料に感光させるホログラフィ技術が利用できる。このホログラフィ技術によって、たとえば構造色を制御して奥行き感のある立体的画像を構成することができる。
また、微小な画素毎にホログラフィ技術を適用して回折格子を形成し、これらの回折格子を有する画素を多数配列して画面全体を構成することにより、高い輝感とコントラストを有する画像を表現することもできる。ホログラフィ技術に限らず、たとえば電子線により感光材料に回折格子を直接描画することにより、回折格子を有する画素を設けることもできる。
回折格子を有する画素をそれぞれ適当な形状(たとえば星型など)に形成する手法、これら画素により肉眼では見えない細かな文字(いわゆるマイクロ文字)を形成する手法、回折格子を使用していながらあたかも写真のように被写体の色彩を忠実に再現する手法、または回折格子を使用して見る角度によって全く違う複数の画像を表現する手法などが開発されている。これらの手法を利用することもできる。
回折効果層5の材料としては、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Agなどの金属材料の単体、またはこれらの化合物などが挙げられる。これらの材料は、公知の真空蒸着またはスパッタリングにより成膜される。
回折効果層5の材料として、アルミニウム、銀、ニッケル、金、銅、錫、インジウム、コバルトなどの微細な金属粉または金属ナノ粒子などを有機高分子樹脂に分散して得られる高輝性光反射インキを使用することもできる。この場合、回折構造形成層4のレリーフ形成面を溶剤によりアタックさせないようにする注意が必要であるが、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法など公知の印刷法により形成できる。このような印刷方により回折効果層5を設ける場合には、乾燥後の膜厚が0.1〜10μm程度になるように調整すればよい。
回折効果層5の材料として、回折構造形成層4よりも屈折率が高い高屈折率材料を使用することによって回折効果を得ることもできる。この場合、両層の屈折率の差は、0.2以上であることが好ましい。屈折率の差を0.2以上にすることによって、回折効果層5と回折構造形成層4との界面で屈折および反射が起こり、透光性を維持しつつ良好な光反射によってOVD効果を得ることができる。つまり、視覚的に実効性の高いホログラム(または回折格子)を得ることができる。
使用できる高屈折率材料の例を以下に挙げる。以下に示す化学式または化合物名の後に続くカッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスとしては、Sb23(3.0)、Fe23(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb23(2.0)、WO3(2.0)、SiO(2.0)、Si23(2.5)、In23(2.0)、PbO(2.6)、Ta23(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(2.0)、MgO(1.6)、Si22(1.5)、MgF2(1.4)、CeF3(1.6)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.6)、Al23(1.6)、GaO(1.7)などが挙げられる。有機ポリマーとしては、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)などが挙げられる。これらの材料は、屈折率、反射率、透過率などの光学特性や、耐候性、層間密着性などに基づいて適宜選択され、薄膜の形態で形成される。形成方法としては、膜厚、成膜速度、積層数、光学膜厚などの制御が可能な、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法など公知の方法を適宜使用することができる。なお、本明細書において光学膜厚とは、n・d(ここで、nは屈折率、dは膜厚である)で与えられる量を意味する。
本発明の転写シートにおいて、接着剤層6には、様々な被転写材(たとえば紙やプラスチック)に接した状態で熱および圧力を与えられることにより、被転写材に接着する機能を有する公知の感熱性接着剤が用いられており、接着剤層6はクラックによってブロック状に区画された表面構造(クラック構造)を有する。
図2は、本発明の転写シートにおける接着剤層の表面構造の一例を示す光学顕微鏡写真(倍率1000倍)である。この図に示されるように、接着剤層の表面には多数のクラックが形成され、複数のクラックに囲まれて区画されたブロック状の領域が互いに隣接して平面的に連なって形成されている。接着剤層の表面においてクラックによって区画されたブロック状の1つの領域の表面積は1mm2以下であることが好ましい。ブロック状の1つの領域の表面積が1mm2を超えると、クラックが十分に形成されていないので、箔切れが悪くなり作業性が低下する。
このようにクラックによって区画された表面構造(クラック構造)を有する接着剤層は光の透過濃度が低下する。接着剤層の透過濃度は0.10以上であることが好ましい。接着剤層の透過濃度は0.10未満である場合、クラックが十分に形成されていないので、やはり箔切れが悪くなり作業性が低下する。
接着剤層6の厚みは、被接着素材の種類にも依存するが、1〜20μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。接着剤層の厚みが1μm未満であると、被転写物の凸凹に食い込まないので接着力が低下する。接着剤層の厚みが20μmを超えると、転写後に被転写体表面との段差が大きくなり転写層が剥離しやすくなる。
上記のようにクラック構造を有する接着剤層を形成する方法は特に限定されないが、たとえば次のような手段を用いることができる。まず、シート状の支持体上に、保護層、回折構造形成層、および回折効果層を形成し、この回折効果層上に接着剤層を形成する感熱性接着剤組成物を任意の方法で塗工する。次に、接着剤組成物の最低造膜温度未満の温度(たとえば常温)の冷風で緩やかに乾燥して、接着剤組成物から溶媒の一部を揮発させ、塗膜の体積収縮を発生させることにより、クラックを発生させた後、接着剤組成物の最低造膜温度以上の温度で乾燥して接着剤組成物から残留溶媒を揮発させ、クラックによって区画された表面構造を有する接着剤層を形成する。
接着剤層6には、転写シートの箔切れ性をさらに向上させるために、接着性を阻害しない範囲で、シリカ、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、カオリナイトなど任意の無機物の微粒子や、転写温度以上のTgを有する任意の有機物の微粒子を添加してもよい。
本発明に係る転写シートにおいては、意匠性を向上させるために、各層を着色したり表面または層間に印刷を施したりするなどしてもよい。このような着色や印刷は、使用目的に応じて適宜利用できる。また、各層の層間密着を向上させる目的で、各層間にアンカー層を設けたり、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理などの各種易接着処理を施したりしてもよい。
以下、具体的な実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
本発明に係るホログラム転写シートを製造するために、下記に示すように、保護層、回折構造形成層および接着剤層に用いるインキ組成物を用意した。
「耐熱保護層インキ組成物」
ポリアミドイミド樹脂(ガラス転移点250℃) 19.2重量部
ポリエチレンパウダー 0.8重量部
ジメチルアセトアミド 45.0重量部
トルエン 35.0重量部
「回折構造形成層インキ組成物」
ウレタン樹脂 20.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「接着剤層インキ組成物」
アクリル樹脂ディスパージョン(ガラス転移点41℃、最低造膜温度52℃、不揮発分45%) 100重量部
シリカ(平均粒径1.5μm) 5重量部
厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、耐熱保護層インキ組成物を膜厚2μmとなるように塗布乾燥して保護層を形成した。次に、回折構造形成層インキ組成物を膜厚1μmとなるように塗布し、150℃、10secの条件で焼き付け、回折構造形成層を形成した。次いで、ロールエンボス法により、回折構造形成層の表面に回折格子を構成する微小凹凸のレリーフパターンを形成した。次に、アルミニウムを50nmの膜厚となるように真空蒸着して、回折効果層を形成した。その後、接着剤層インキ組成物をダイレクトグラビアで膜厚6μmとなるように塗工した。最低造膜温度より低い常温の空気を送風し30秒乾燥して溶媒の一部を揮発させることにより、クラックによってブロック状に区画された表面構造を形成した後、最低造膜温度より高い60℃の熱風を送風し30秒乾燥して残留溶媒を揮発させた。得られた接着剤層は、図2に示したような表面構造(クラック構造)を有していた。
<比較例1>
実施例1と同様にして、PETフィルム上に保護層、回折構造形成層および回折効果層を形成した。その後、実施例1と同じ接着剤層インキ組成物を用い、ダイレクトグラビアで膜厚6μmとなるように塗工したが、比較例1では最初から60℃の熱風を送風して乾燥することにより溶媒を揮発させた。得られた接着剤層は均一な塗膜であり、その表面にクラックによって区画されたブロック状の領域は形成されていなかった。
実施例1および比較例1の接着剤層を形成した転写シートについて、接着剤層の透過濃度と、転写シートの箔切れ性(剥離強度、バリ長さ)および密着性を評価した。
[透過濃度の測定]
実施例1および比較例1の転写シートについて、MACBETH社のTD−904を用いて接着剤層の透過濃度を測定した。
[剥離強度の評価]
実施例1および比較例1の転写シートをそれぞれ、被転写材である厚み約200μmの上質紙上に、直径20mm円状スタンパーを用いて版面温度120℃、圧力500kg/cm2、加圧時間0.3秒の条件でホットスタンプした。その後、引っ張り試験機にて、1000mm/minの速度で被転写材と転写シートを水平方向に引っ張って剥離強度を測定した。一片あたりの剥離強度をkgf/片で表わす。
[バリ長さ]
上記のように実施例1および比較例1の転写シートをそれぞれ、転写および剥離した後、転写層に付着しているバリの最大長さ(mm)を測定した。
[密着性の評価]
被転写材に転写された後の実施例1および比較例1の転写層に対して、セロファンテープを貼り付けて90°の方向に引っ張って転写層の剥離の有無を調べた。剥離がなくホログラム画像に乱れがなかった場合を○、密着性不良で剥離がありホログラム画像に乱れがあった場合を×とする。
表1にこれらの評価結果を示す。表1からわかるように、実施例1の転写シートは、箔切れ性(剥離強度、バリ長さ)および密着性が良好であった。
Figure 0004967567
本発明の実施形態に係る転写シートの断面図。 本発明の実施形態に係る転写シートの表面構造を示す光学顕微鏡写真。
符号の説明
1…転写シート、2…支持体、3…保護層、4…回折構造形成層、5…回折効果層、6…接着剤層。

Claims (3)

  1. シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、少なくとも、
    (イ)回折光を発生させるための凹凸面を有する透明な回折構造形成層、
    (ロ)前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜からなり、該回折構造形成層を透過した光を反射させる回折効果層、
    および
    (ハ)該回折効果層を被覆して設けてある接着剤層、
    を具備し、
    前記接着剤層はアクリル樹脂とシリカ粒子とからなり、クラックによって区画された表面構造を有し、前記接着剤層の透過濃度が0.10以上であることを特徴とする転写シート。
  2. 前記接着剤層の厚みが1〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の転写シート。
  3. 前記接着剤層の表面においてクラックによって区画された1つの領域の表面積が1mm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の転写シート。
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