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JP4964020B2 - 薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及び薄肉成形品 - Google Patents

薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及び薄肉成形品 Download PDF

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Description

本発明は、薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーカーボネート樹脂組成物(以下、単に、「芳香族ポリカーボネート樹脂組成物」ということがある)に関し、詳しくは、難燃性、耐衝撃性、流動性、熱安定性および外観に優れた薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および薄肉成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックとして透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性などに優れ、その優れた特性から、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野等の原材料として、工業的に広く利用されている。
一方、OA機器、家電製品等の用途を中心に、樹脂材料の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるために、芳香族ポリカーボネート樹脂に、ハロゲン系化合物、リン系化合物、シロキサン系化合物、ポリフルオロエチレン等を配合して難燃化する技術が多数提案されている。また、最近では携帯電話の電池パックや記憶媒体カバーなどに用いられる樹脂容器は、小型化、軽量化、高機能化等を目的として年々薄肉化されている。この結果、芳香族ポリカーボネート樹脂を用いた薄肉成形品には、高温成形に耐えうる熱安定性と同時に、優れた難燃性、耐衝撃性、流動性、および外観が求められている。
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂に特定のリン酸エステル系化合物、ポリオルガノシロキサン成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分を有する複合ゴム系グラフト共重合体を配合することにより、薄い厚さに成形されても耐衝撃性や難燃性に優れた樹脂組成物が得られると記載されている。
また、特許文献2には、芳香族ポリカーボネート樹脂に特定のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を配合することにより、耐衝撃性と難燃性に優れた樹脂組成物が得られ、さらに高分子加工助剤を配合することができると記載されている。
さらに、特許文献3には、芳香族ポリカーボネート樹脂に、リン系難燃剤、ポリフルオロエチレン樹脂および特定の多層構造重合体を配合してなる樹脂組成物は、難燃性や熱安定性、耐衝撃性に優れ、外観改善効果があるため、大型成形品や薄肉成形品として有用であることが記載されている。
特許文献4には、耐衝撃性、成形性、流動性に優れ、バッテリーパックに適した材料として、ポリカーボネート樹脂、複合ゴム系グラフト共重合体、ハロゲン非含有リン酸エステル化合物およびポリテトラフルオロエチレン(被覆なし)からなる樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献5には、薄肉流動性、耐熱性、低そり性に優れた樹脂組成物として、ポリカーボネート系樹脂に液晶性樹脂とリン酸エステルを配合してなる、その最大投影面の厚さが0.6mm以下である部分が100mm2以上の携帯機器の電池パック筐体部材用樹脂組成物が記載されている。
さらに、特許文献6においては、熱可塑性樹脂に、ゴム質重合体、ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体(被覆あり)を配合した樹脂組成物から得られる成形品は、衝撃強度が改良されることが記載されている。
また、特許文献7においては、芳香族ポリカーボネート樹脂と特定量の弗化物イオンを含有する含フッ素有機金属塩化合物からなる樹脂組成物は、優れたドリップ防止効果を有することが記載されている。
しかしながら、技術の進歩とともに、難燃性、流動性、耐衝撃性および外観について、より高いレベルのものが要求されるようになっている。
ここで、特許文献1〜3では、それらの実施例における難燃性評価用試験片の肉厚は1/16インチ(1.6mm)、特許文献4および7の実施例では0.8mmのものが採用されているが、近年、より薄い成形品、具体的には厚み0.6mm以下の薄肉成形品が求められている。
従って、全体または部分的に0.6mm以下の平板部を有するような薄肉容器に成形した場合でも、良好な成形品外観と難燃性を両立させることができ、さらに耐衝撃性や流動性に優れ、高温成形にも耐えうる熱安定性を有し、総合的に良好な性能を兼ね備えた樹脂組成物の開発が望まれている。
特開平08−259791号公報 特開2003−238639号公報 特開2001−123056号公報 特開平11−21441号公報 特開2002−348460号公報 特開2000−226523号公報 特開2005−112973号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記特許文献1〜3に記載のような樹脂組成物を用いた薄肉成形品では、全体または部分的に0.6mm以下の平板部を有するような薄肉容器に成形した場合には、難燃性や流動性が十分でないことがわかった。
また、特許文献4に記載の樹脂組成物で薄肉成形品を成形した場合、難燃性、耐衝撃性が不足するばかりか、成形品表面に白点異物が多数生じ、外観の劣る成形品しか得られないことがわかった。
さらに、特許文献5〜7に記載の樹脂組成物を用いた場合でも、厚み0.6mmにおける難燃性が不十分であり、本発明の目的である耐衝撃性、熱安定性、成形品外観の全てをバランスよく満足することができないことがわかった。
本発明の目的は、全体または部分的に0.6mm以下の平板部を有するような薄肉成形品であって、良好な成形品外観と難燃性を両立させることができ、さらに耐衝撃性や流動性に優れ、高温成形にも耐えうる熱安定性を有し、総合的に良好な性能を兼ね備えた薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物および薄肉成形品を提供することにある。
本発明者らは、上述した課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂に、リン系難燃剤、ポリフルオロエチレン、および特定のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を含有させることにより、難燃性、成形品外観、耐衝撃性、流動性に優れ、高温成形にも耐えうる熱安定性を兼ね備えた樹脂組成物および薄肉成形品が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第1の要旨は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)リン系難燃剤を3〜20重量部、(C)ポリフルオロエチレンを0.01〜1重量部、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を1〜20重量部配合してなる薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
前記(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものであり、
前記(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体であり、かつ、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.6mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1であることを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物にある。
本発明の第2の要旨は、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる、肉厚0.6mm以下の平板部を有する薄肉成形品にある。
本発明の第3の要旨は、上記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いる工程を含み、0.6mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1であり、肉厚0.6mm以下の平板部を有する薄肉成形品の製造方法にある。
なお、本発明における薄肉成形品とは、例えば、電池パック(携帯電話の電池パック等)または小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器に使用される成形品であり、全体または部分的に0.6mm以下の平板部を有する成形品をいう。
本発明で用いる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、全体または部分的に0.6mm以下の平板部を有する薄肉成形品に成形した場合であっても、良好な難燃性と外観を示す。また、流動性と熱安定性が良好で生産性に優れているため、得られる薄肉成形品は耐衝撃性にも優れた、総合的にバランスの取れた性能を有する。
すなわち、本発明により、携帯電話、携帯ステレオ、モバイルパソコン等の電池パックや、メモリーカード、SDカード等の小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器として好適な薄肉成形品を提供することが可能となった。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。本明細書において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに、炭素数が限定されている基の場合、該炭素数は、置換基が有する炭素数を含めた数を意味している。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明に使用される(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンまたは炭酸ジエステルと反応させることによって得られる熱可塑性重合体である。該(A)芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐していてもよいし、共重合体であってもよい。該(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造できる。また、溶融法によって得られる芳香族ポリカーボネート樹脂を用いる場合、末端基のOH基量を調整して用いてもよい。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、分岐剤、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(すなわち、イサチンビスフェノール)、5−クロロイサチン、5,7−ジクロロイサチン、5−ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマーまたはオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。さらには、上述した芳香族ポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量として、16,000〜30,000が好ましく、18,000〜28,000がより好ましい。粘度平均分子量を30,000以下とすることにより、流動性が良好になる傾向にあり、16,000以上とすることにより、衝撃強度が良好になる傾向にある。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、例えば、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等の一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いることができる。
(B)リン系難燃剤
本発明においては、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂に(B)リン系難燃剤を配合する。本発明で用いる(B)リン系難燃剤は、分子中にリンを含む化合物であればよく、具体的には、環状フェノキシホスファゼン化合物、鎖状フェノキシホスファゼン化合物および架橋フェノキシホスファゼン化合物のようなホスファゼン化合物、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物から選択されるものが好ましい。
一般式(1)
Figure 0004964020
(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、iおよびjは、各々独立に0または1を示す。)
1、R2およびR3は、好ましくは、各々独立に、アルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基である。
上記一般式(1)で表される化合物は、公知の方法で、オキシ塩化リン等から製造することができる。一般式(1)で表されるリン系化合物の具体例としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ジフェニル−2−エチルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、メチルホスホン酸ジフェニルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリブチル等が挙げられる。
一般式(2)
Figure 0004964020
(一般式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
上記一般式(2)で表される化合物は、tが1〜5の縮合リン酸エステルであるが、tが異なる複数種類の縮合リン酸エステルの混合物の場合には、tはそれらの混合物の平均値として算出する。
Xは、好ましくはレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等のジヒドロキシ化合物から誘導される2価の基である。
また、R4、R5、R6およびR7は、好ましくは、各々独立に、フェノール、クレゾール、キシレノールから誘導されるものである。
上述した(B)リン系難燃剤のなかでも、本発明においては、作業性や熱安定性に優れ、成形時の発生ガス量も少ないという点から、一般式(2)で表される化合物がより好ましい。特に好ましくは、一般式(2)でXはレゾルシノールまたはビスフェノールAから誘導されるものであり、p、q、rおよびsは、各々1であり、R4、R5、R6およびR7は、それぞれクレゾールまたはキシレノールから誘導されるものである。具体的にはクレジル・レゾルシンポリホスフェート、キシリル・レゾルシンポリホスフェートなどを挙げることができる。
(B)リン系難燃剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、3〜20重量部であり、さらには4〜18重量部、特には5〜15重量部が好ましい。リン系難燃剤の配合量が20重量部を超えると、機械的物性が低下する場合があり、3重量部未満では難燃性や流動性が低下する場合がある。
尚、本発明において、(B)リン系難燃剤は、2種類以上を併用してもよい。2種類以上用いる場合、その合計量が上記配合量となる。
(C)ポリフルオロエチレン
本発明で用いる(C)ポリフルオロエチレンは、例えば、フィブリル形成能を有するもので、重合体中に容易に分散し、且つ重合体同士を結合して繊維状材料を形成するのに役立つ。ポリフルオロエチレンを含有した樹脂組成物を溶融成形した薄肉成形品の外観を向上させるためには、有機系重合体で被覆された特定の被覆ポリフルオロエチレン(以下、「被覆ポリフルオロエチレン」と略記することがある)を含有させることが好ましい。本発明で好ましく採用される被覆ポリフルオロエチレンは、被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%の範囲内となるものであり、中でも43〜80重量%、さらには45〜70重量%、特には47〜60重量%となるものが好ましい。
被覆ポリフルオロエチレン中のポリフルオロエチレンの含有比率を40重量%以上とすることにより、難燃性が向上する傾向にあり、95重量%以下とすることにより、白点異物をより抑止できる傾向にあり、好ましい。
また、有機系重合体により被覆されるポリフルオロエチレンとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、中でも、フィブリル形成能を有するものが好ましい。このようなPTFEは重合体中に容易に分散し、重合体同士を結合して繊維状材料を形成する傾向を示す。
このような被覆ポリフルオロエチレンを配合することにより、良好な難燃性を維持しつつ、薄肉成形品表面の白点異物の発生をより抑制することができる。
被覆ポリフルオロエチレンは、公知の種々の方法により製造でき、例えば(1)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合して、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(2)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液存在下で、有機系重合体を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、(3)ポリフルオロエチレン粒子水性分散液と有機系重合体粒子水性分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化して製造する方法、等が挙げられる。
ポリフルオロエチレンを被覆する有機系重合体としては、特に制限されるものではないが、樹脂に配合する際の分散性の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性が高いものが好ましい。
有機系重合体を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、tert−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−メトキシスチレン、o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体等を挙げることができる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
本発明で用いる有機系重合体は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂との親和性の観点から、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体を含む有機系重合体が好ましく、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含む有機系重合体がより好ましい。
また、本発明で用いる上記有機系重合体中の、芳香族ビニル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体から選ばれる1種以上の単量体の含有量は10重量%以上であることが好ましい。
本発明において被覆ポリフルオロエチレンとしては、例えば三菱レイヨン(株)製のメタブレンA−3800、KA−5503や、PIC社製のPoly TS AD001等が使用できる。
本発明における(C)ポリフルオロエチレンの配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜1重量部であり、0.05〜0.9重量部であることが好ましく、0.1〜0.7重量部であることがより好ましい。(C)ポリフルオロエチレンの配合量が0.01重量部未満の場合には、難燃性が低下する場合があり、一方1重量部を超えると成形品外観の低下が起こる場合がある。
さらに、上述した(B)リン系難燃剤と(C)ポリフルオロエチレンの配合比率[(B)/(C)]は、薄肉部分の難燃性をより向上させバランスの良い性能を有する樹脂組成物を得るという点から、通常0.1〜1000であり、好ましくは1〜100、さらに好ましくは2〜60である。
(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体
本発明で用いる(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、例えば、特開2003−238639号公報に開示された製造方法によって製造可能である。
即ち、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものである。
(X)ポリオルガノシロキサン粒子は、トルエン不溶分量(該(X)ポリオルガノシロキサン粒子0.5gをトルエン80mlに室温で24時間浸漬した場合のトルエン不溶分量)が95重量%以下、さらには50重量%以下、特には20重量%以下であるものが難燃性、耐衝撃性の点から好ましい。
(X)ポリオルガノシロキサン粒子の具体例としては、ポリジメチルシロキサン粒子、ポリメチルフェニルシロキサン粒子、ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン共重合体粒子などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体、すなわち、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む多官能単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体である。
(Y)第1のビニル系単量体は、難燃化効果および耐衝撃性改良効果を向上させるために使用するものである。
(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体を、好ましくは100〜80重量%、さらに好ましくは100〜90重量%含み、(y−2)その他の共重合可能な単量体を、好ましくは0〜20重量%、さらに好ましくは0〜10重量%含む。(y−1)多官能性単量体を50重量%以上の割合で含めることにより、また、(y−2)その他の共重合可能な単量体を50重量%以下の割合で含めることにより、最終的に得られる(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の耐衝撃性改良効果がより向上する傾向にあり好ましい。
(y−1)多官能性単量体は、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上含む化合物であり、その具体例としては、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、経済性および効果の点で特にメタクリル酸アリルの使用が好ましい。
(y−2)その他の共重合可能な単量体の具体例としては、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル系単量体などがあげられる。これらは2種以上を併用してもよい。
(Z)第2のビニル系単量体は、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を構成する成分であって、該(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を熱可塑性樹脂に配合して難燃性および耐衝撃性を改良する場合に、グラフト共重合体と熱可塑性樹脂との相溶性を確保して熱可塑性樹脂にグラフト共重合体を均一に分散させるために使用される成分でもある。
(Z)第2のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、スチレン、アクリロニトリル等の、上記(Y)第2のビニル系単量体における(y−2)その他の共重合可能な単量体と同じものを使用することができ、2種以上併用してもよい。
(Z)第2のビニル系単量体は、該ビニル系単量体の重合体の溶解度パラメーターが9.15〜10.15[(cal/cm31/2]であることが好ましく、9.17〜10.10[(cal/cm31/2]であることがより好ましく、9.20〜10.05[(cal/cm31/2]であることがさらに好ましい。溶解度パラメーターを上記範囲とすることにより、難燃性がより向上する傾向にあり好ましい。
本発明に使用する(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子を40〜90重量部、好ましくは60〜80重量部、より好ましくは60〜75重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体を0.5〜10重量部、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは2〜4重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体を5〜50重量部、好ましくは15〜39重量部、より好ましくは21〜38重量部を重合して得られる。
(X)ポリオルガノシロキサン粒子の割合が少なすぎる場合および多すぎる場合は、いずれも難燃化効果が低くなる。
また、(Y)第1のビニル系単量体が少なすぎる場合、難燃化効果および耐衝撃性改良効果が低くなり、多すぎる場合、耐衝撃性改良効果が低くなる。
さらに、(Z)第2のビニル系単量体が少なすぎる場合および多すぎる場合は、いずれも難燃化効果が低くなる。
(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、公知のシード乳化重合が適用でき、例えば、(X)ポリオルガノシロキサン粒子のラテックス中で(Y)第1のビニル系単量体のラジカル重合を行い、さらに、(Z)第2のビニル系単量体のラジカル重合を行うことにより得られる。
また、(Y)第1のビニル系単量体および(Z)第2のビニル系単量体は、いずれも1段階で重合させてもよく2段階以上で重合させてもよい。
上記方法によって得られた(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、ラテックスからポリマーを分離して使用してもよく、ラテックスのまま使用してもよい。ポリマーを分離する方法としては、通常の方法、例えば、ラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法が挙げられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。
(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、1〜20重量部であり、好ましくは2〜15重量部であり、より好ましくは3〜13重量部、特に好ましくは4〜12重量部である。
(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が20重量部を超えると剛性が低下し、1重量部未満では難燃性が低下することがある。
本発明においては、(B)リン系難燃剤の配合量および(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の配合量の合計量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは10重量部以上であり、より好ましくは12重量部以上、特に好ましくは14重量部以上である。(B)リン系難燃剤の配合量および(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の配合量の合計を10重量部以上とすることにより、より難燃性が向上する傾向にあり好ましい。
本発明において、樹脂組成物には、上記成分以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の任意の紫外線吸収剤、抗酸化剤、熱安定剤、着色剤、滑剤、離型剤等の添加剤や、ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂、耐衝撃性改良剤等を含有していてもよい。
本発明に用いてもよい抗酸化剤としては、好ましくはヒンダードフェノール系抗酸化剤が挙げられる。具体例としては、ペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)、1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。上記のうちで、特にペンタエリスリト−ルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つのフェノール系抗酸化剤は、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社よりイルガノックス1010およびイルガノックス1076の名称で市販されている。
抗酸化剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部である。抗酸化剤の配合量を0.01重量部以上とすることにより、抗酸化剤としての効果がより発揮されやすい傾向にあり、2重量部を越えても抗酸化剤として更なる効果は得られないことから、2重量部以下が経済的である。
抗酸化剤は複数種併用することもできる。
本発明に用いてもよい熱安定剤としては、亜リン酸エステル系安定剤が好ましく、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイトおよびトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。これらの安定剤のうち、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが特に好ましい。
熱安定剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部であり、より好ましくは0.02〜1重量部である。含有量を0.01重量部以上とすることにより、熱安定剤としての効果がより発揮されやすい傾向にあり、2重量部を超えて添加してもそれ以上の熱安定剤としての効果は得られないことから、2重量部以下が経済的である。
熱安定剤は、複数種併用することもできる。
本発明に用いてもよい離型剤としては、好ましくは、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種のものが用いられる。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく用いられる。
脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸および/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
離型剤の配合量は、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。2重量部以下とすることにより、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等をより効果的に抑止できる傾向にある。該離型剤は、複数種併用することもできる。
本発明で用いる樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、(1)(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)リン系難燃剤、(C)ポリフルオロエチレン、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、および必要により配合される安定剤や離型剤を一括して溶融混練する方法や、(2)(B)リン系難燃剤が液状である場合には、予め(B)リン系難燃剤以外の成分を溶融混練した後に、別途50〜120℃で加温しておいた液状の(B)リン系難燃剤を溶融状態の樹脂に添加して、溶融混練する方法が挙げられる。
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、0.6mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1となるものである。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の難燃性は、該芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の組成比や製造条件、原材料の種類や製造方法などの条件に依存するが、例えば、(B)リン系難燃剤と(C)ポリフルオロエチレンの配合比率[(B)/(C)比]、(B)リン系難燃剤および(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の合計配合量[((B)+(D))量]、溶融混練にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造する場合は溶融混練時の条件等を調整することにより、難燃性以外の物性を低下させることなく、薄肉部においても上記のような高い難燃レベルを達成することがより容易になる。
(B)/(C)比(重量比)としては、0.1〜1000であることが好ましく、1〜100であることがより好ましく、2〜60であることがさらにより好ましい。((B)+(D))量としては、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、10重量部以上が好ましく、12重量部以上がより好ましく、14重量部以上がさらに好ましい。
また、各成分の分散性をより良好とし、(C)ポリフルオロエチレンのフィブリルによる燃焼時の溶融樹脂ドリップ防止能をより向上させ、安定な混練を行うために、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を慎重に選択する必要がある。芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法としては、ベント口から脱揮できる設備を有する2軸スクリュー押出機を混練機として使用する溶融混練法が好ましい。(B)リン系難燃剤以外の成分、すなわち、(A)、(C)、(D)及び任意の添加成分は、タンブラー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー等の混合機を使用して予め混合しておくことが好ましい。溶融混練に際しては、バレル温度を好ましくは350℃以下、より好ましくは240〜320℃に設定することが好ましい。このような温度条件とすることにより、難燃性、衝撃強度等について、より性能を高めることができる。また、(B)リン系難燃剤は液状である場合、押出機の途中のブロックから、ギアポンプ、プランジャーポンプ等の各種ポンプにて添加することが有効である。溶融混練中は、押出機の最大トルクの好ましくは60〜90%の能力で運転できるように、バレル温度、スクリュー回転数を適宜調整することが好ましい。このような手段を採用することにより、難燃性、衝撃強度等について、より性能を高めることができる。
本発明で規定する樹脂組成範囲内において、上記のような条件の何れかを採用することにより、または、複数の条件を組合わせることにより、難燃性以外の物性を良好に維持したまま、0.6mm厚試験片のUL94規格における難燃性をV−0又はV−1レベルとすることがより容易になる。
このようにして得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、従来公知の任意の各種成形方法を用いて、成形品を得ることができるが、流動性に優れ、薄肉の成形品にした場合でも、白点異物の低減と良好な難燃性を両立できることから、射出成形法により、薄物の樹脂容器を成形する場合に好適である。より薄肉の成形品、例えば厚み0.6mm以下の薄肉成形品を射出成形法にて成形する場合は、射出成形の際の樹脂温度を、従来のポリカーボネート樹脂組成物の成形に適用される温度より高めの温度、好ましくは305〜360℃、より好ましくは310〜350℃、さらに好ましくは315〜340℃に設定することが好ましい。従来の樹脂組成物を用いた場合には、薄肉容器を成形するために、成形時の樹脂温度を高めると、薄肉容器の表面に白点異物が生じやすくなるという問題もあったが、従来の樹脂組成物に比べ熱安定性に優れる本発明の樹脂組成物を使用することで、上記のような比較的高い温度範囲であっても、良好な外観を有する薄肉容器を製造することが可能となる。
本発明において、薄肉成形品とは、全体または部分的に0.6mm以下の平板部を有する成形品であり、好ましくは、1cm2以上の0.6mm以下の平板部を有する成形品である。なお、「部分的」とは、成形品全体の面積の25%以上であることを意味する。また「平板部」とは、リブ、ボス等の凹凸や、窓、穴等を除く部分を指し、平面であっても湾曲していてもよい。
例えば、本発明の薄肉成形品とは、電池パック(例えば、携帯電話の電池パックに用いる箱や蓋)や小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器(例えば、メモリーカード、SDカード等のカバーなど)等に使用される樹脂容器であり、0.6mm以下となる平板部を全体または部分的に有する樹脂容器をいう。好ましい薄肉成形品の形態としては、例えば、図1に示すような、容器本体(箱体)とこれを封止する蓋体とからなる樹脂容器であり、容器本体(箱体)は、周囲の立上り片によって凹没した平均肉厚が0.6mm以下の平板部を有する樹脂容器である。また、通常電気・電子部品の使用態様等に基づき、上記平板部の面積は1〜100cm2、立上り片の高さは0.5〜10mmであり、立上り片の肉厚は、容器本体の剛性を高め、収容物の収容効率を高める観点から、通常は、0.3〜1.2mmである。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の例に限定されるものではない。
[原材料]
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製「ユーピロン(登録商標)H−2000」、粘度平均分子量20,000(以下、PCと略す)
(B)難燃剤
(b−1)縮合リン酸エステル:旭電化工業社製「アデカスタブ FP700」
Figure 0004964020
(式中 t1は1.1である。)
(b−2)縮合リン酸エステル:旭電化工業社製「アデカスタブ FP500」
Figure 0004964020
(式中 t2は1.01である。)
(b−3)トリフェニルホスフェート:大八化学工業社製
(b−4)臭素化ポリカーボネートオリゴマー:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロン(登録商標)FR−53」
(C)ポリテトラフルオロエチレン
(c−1)被覆ポリテトラフルオロエチレン:三菱レイヨン社製「メタブレンA−3800」(被覆ポリテトラフルオロエチレン中のポリテトラフルオロエチレンの含有比率は、50重量%である。)
(c−2)ポリテトラフルオロエチレン:ダイキン工業社製「ポリフロンF−201L」
(D)グラフト共重合体
(d−1)(株)カネカ製「カネエースMR−01」
(d−2)ポリオルガノシロキサン粒子が40重量部未満のグラフト共重合体:三菱レイヨン(株)製「メタブレンS−2001」
(d−3)ポリブタジエンコア/ポリメチルメタクリレートシェル系共重合体(多層構造重合体):呉羽化学工業(株)製「パラロイドEXL−2603」
(E)離型剤
ペンタエリスリト−ルテトラステアレート:コグニス社製「VPG861」
(F)熱安定剤
トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト:旭電化工業社製「アデカスタブ2112」
[実施例1〜4、6〜8及び比較例1〜4]
表1に示した割合(重量比)となるよう、(B)難燃剤以外の原料を配合し、タンブラーにて20分間混合した後、2軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30HSST、バレル12ブロック構成)のホッパーに投入した。バレル温度280℃、スクリュー回転数200rpm、押出速度15kg/時間の条件下で表1に記載の各樹脂組成物を溶融混練し、樹脂組成物のペレットを作製した。なお、(B)難燃剤は、予め80℃に加温し、2軸押出機のホッパー側から数えて3番目のブロックからギアポンプにて添加した。
[実施例5及び比較例5]
表1に示した割合(重量比)となるよう、(A)〜(E)の原料を配合し、タンブラーにて20分間混合した後、2軸押出機(日本製鋼所社製 TEX30HSST、バレル12ブロック構成)のホッパーに投入した。バレル温度280℃、スクリュー回転数200rpm、押出速度15kg/時間の条件下で表1に記載の各樹脂組成物を溶融混練し、樹脂組成物のペレットを作製した。
[比較例6]
実施例7において、バレル温度を360℃に変えた以外は、実施例7と同様にして樹脂組成物のペレットを製造した。
[比較例7]
実施例7において、バレル温度を240℃に変えた以外は、実施例7と同様にして樹脂組成物を製造した。なお、上記条件で溶融混練した場合のトルクは押出機最大トルクの92%であった。
得られた樹脂組成物を80℃で5時間乾燥した後、以下の方法により射出成形を行い、得られた試験片を用いて各種評価を行った。結果を表1に示した。
[成形品の物性評価方法]
(1)難燃性
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを、射出成形機 日本製鋼所社製、J50EPにてシリンダー温度320℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、長さ127mm、幅12.7mm、肉厚0.6mmの試験片を得た。得られた試験片について、UL94規格に準拠して燃焼試験を行った。V−0が最も好ましく、V−1、V−2と順に劣り、NGはUL94規格の基準にあてはまらないものである。
(2)シャルピー衝撃強度
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを射出成形機 住友重機械工業社製、SGMIIサイキャップにてシリンダー温度320℃、金型温度80℃の条件で射出成形を行い、ISO試験片を得た。ISO179規格に準拠してノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度は、値が高い方が好ましい。
(3)電池パックの落下試験
上記記載の方法で得られた各樹脂組成物のペレットを、射出成形機、ソディックプラステック社製、TR100EHにてシリンダー温度320℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、図1に示す電池パックの蓋および箱を成形した。図1中、四角で囲んだ数字は、それぞれの部位の厚さを示している。また、四角で囲んだ以外の数字は、成形品各部分の長さを示している。なお、単位は「mm」である。得られた箱に、素電池を組み込み超音波溶着し、蓋をして電池パックとした。得られた電池パックを、1.65mの高さからコンクリート面に落下を各6面について実施した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返して試験を行い、割れが生じない場合を○、割れが生じた場合を×とした。なお、流動性が悪く、金型内に完全に樹脂を充填できなかった場合は「充填不可」と記した。
(4)電池パックの外観
上記記載の方法で得られた実施例3、4、6、7および比較例5、6の各樹脂組成物ペレットを、射出成形機ソディックプラステック社製、TR100EHにて、シリンダー温度320℃、金型温度80℃の条件下で射出成形を行い、図1に示す電池パックの蓋を成形した。最初の100ショットを捨てた後、さらに1000ショット成形し、得られた1000個の蓋について、白点およびシルバーの成形不良の有無について、目視観察した。白点に関しては、確認された個数の数平均値(/蓋1個)を表1に記載した。白点が20個以下であれば、実成形品として問題ないレベルと判断できる。また、成形品にシルバーが認められた場合は「シルバー」と記載した。シルバーがある場合、実成形品として使用できない。
(5)金型汚染(発生ガスの評価)
上記記載の方法で得られた実施例4、5及び比較例5の各樹脂組成物ペレットを、射出成形機 住友重機械工業社製、ミニマット7にて、シリンダー温度300℃、金型温度70℃の条件下で図2に示すような雫型の金型を用い成形片を連続1000ショット射出成形し、発生ガスによる1000ショット成形後の金型表面の汚れを観察した。付着物がないものを◎、付着物が若干認められるが通常の連続成形に問題ないと判断されるものを○、付着物が多く連続成形は困難と判断されるものを×と表記した。
尚、図2の雫型金型とは、反ゲート側の尖点部分に発生ガスを溜まり易く設計した金型である。成形片の厚みは3mm、ゲート部は幅が1mm、厚みが1mmである。図2中、単位は「mm」である。
Figure 0004964020
表1から、次のことが明らかとなった。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、320℃というポリカーボネート樹脂の成形温度としては比較的高い温度で成形しても、得られる薄肉成形品が難燃性、耐衝撃性、熱安定性、成形品外観の全てをバランス良く満足した(実施例1〜8)。特に、高い温度で成形を行った場合、樹脂の劣化による成形品強度の低下や、シルバー、ポリフルオロエチレンの凝集による白点等の外観不良が発生する傾向にあるが、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、このような問題が生じなかった。
一方、本発明で規定するグラフト共重合体以外のグラフト共重合体を配合した場合は、実施例2と、比較例1および2との比較から明らかなとおり、難燃性が本願の目的を達成できず、シャルピー衝撃強度も若干劣った。
また、本発明のグラフト共重合を配合しない場合は、難燃性はV−2レベルで、シャルピー衝撃強度は大きく低下し、電池パックの耐衝撃性も劣るものであった(比較例3)。また、リン系難燃剤を配合しない場合は、難燃性が本願の目的を達成できなかった(比較例4)。
本発明で用いる難燃剤以外の難燃剤を配合した場合は、実施例4および5と、比較例5との比較から明らかなとおり、流動性が低下し金型内に樹脂を完全に充填することができず、さらに、発生ガスが多く電池パックの連続成形が困難であった。また、シャルピー衝撃強度は低下し、得られた電池パックにはシルバーが確認され、外観の悪いものであった。
芳香族ポリカーボネート樹脂、リン系難燃剤、ポリフルオロエチレン及びグラフト共重合体を本発明で規定する範囲内で配合した場合であっても、樹脂組成物溶融混練時のバレル温度が高い場合(比較例6)や、押出機のトルク値が高い場合(比較例7)は、V−1レベル以上の難燃性を達成することができず、シャルピー衝撃強度、電池パックの耐衝撃性及び外観が劣るものであった。
図1は、本願実施例で作製した電池パックの蓋および箱を示す。 図2は、本願実施例の(5)金型汚染(発生ガスの評価)で使用した雫型金型の模式図である。
本発明で用いる難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、全体または部分的に0.6mm以下の平板部を有する薄肉成形品に成形した場合であっても、良好な難燃性と外観を示す。また、流動性と熱安定性が良好であり生産性に優れているため、得られる成形品は耐衝撃性にも優れた、総合的にバランスの取れた性能を有する。
本発明の難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上記のような性能を有するため、携帯電話、携帯ステレオ、モバイルパソコン等の電池パックや、メモリーカード、SDカード等のカード型情報記録媒体等の小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器として好適である。

Claims (14)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)リン系難燃剤を3〜20重量部、(C)ポリフルオロエチレンを0.01〜1重量部、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を1〜20重量部配合してなる薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、2軸スクリュー押出機を混練機として使用する溶融混練法で、バレル温度240〜320℃に設定して混練する工程、および、前記樹脂組成物を、温度315〜360℃に設定して射出成形する工程を含む、薄肉成形品の製造方法であって、
    前記薄肉成形品は、該薄肉成形品全体の面積の25%以上が0.6mm以下の平板部であり、
    前記(C)ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンであり、
    前記(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものであり、
    前記(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体であり、かつ、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.6mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1であることを特徴とする、薄肉成形品の製造方法。
  2. 前記有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレン中の、ポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%である、請求項1に記載の薄肉成形品の製造方法。
  3. 前記(B)リン系難燃剤がホスファゼン化合物、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1または2に記載の薄肉成形品の製造方法。
    一般式(1)
    Figure 0004964020
    (一般式(1)中、R1、R2およびR3は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、iおよびjは、各々独立に0または1を示す。)
    一般式(2)
    Figure 0004964020
    (一般式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  4. 前記(B)リン系難燃剤が下記の一般式(2)で表されるリン系化合物である請求項1〜のいずれか1項に記載の薄肉成形品の製造方法。
    一般式(2)
    Figure 0004964020
    (一般式(2)中、R4、R5、R6およびR7は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  5. 前記薄肉成形品が、1cm 2 以上の0.6mm以下の平板部を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄肉成形品の製造方法。
  6. 前記薄肉成形品が、電池パックまたは小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄肉成形品の製造方法。
  7. 前記薄肉成形品が、箱体とこれを封止する蓋体とからなる樹脂容器であり、前記箱体は、周囲の立上り片によって凹没した平均肉厚が0.6mm以下の平板部を有する樹脂容器であり、前記平板部の面積は、1〜100cm 2 であり、立上り片の高さは0.5〜10mmであり、立上り片の肉厚は0.3〜1.2mmである樹脂容器である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄肉成形品の製造方法。
  8. (A)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(B)リン系難燃剤を3〜20重量部、(C)ポリフルオロエチレンを0.01〜1重量部、(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を1〜20重量部配合してなる薄肉成形用難燃性芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を、2軸スクリュー押出機を混練機として使用する溶融混練法で、バレル温度240〜320℃に設定して混練する工程、および、前記樹脂組成物を、温度315〜360℃に設定して射出成形する工程を含む、薄肉成形品の製造方法で得られた薄肉成形品であって、
    前記薄肉成形品は、該薄肉成形品全体の面積の25%以上が0.6mm以下の平板部であり、
    前記(C)ポリフルオロエチレンが、有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレンであり、
    前記(D)ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体は、(X)ポリオルガノシロキサン粒子40〜90重量部の存在下で、(Y)第1のビニル系単量体0.5〜10重量部を重合し、さらに、(Z)第2のビニル系単量体5〜50重量部を重合して得られるものであり、
    前記(Y)第1のビニル系単量体は、(y−1)多官能性単量体100〜50重量%および(y−2)その他の共重合可能な単量体0〜50重量%からなるビニル系単量体であり、かつ、前記芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から成形された0.6mm厚試験片のUL94規格における難燃性がV−0又はV−1であることを特徴とする、薄肉成形品。
  9. 前記有機系重合体で被覆されたポリフルオロエチレン中の、ポリフルオロエチレンの含有比率が40〜95重量%である、請求項8に記載の薄肉成形品。
  10. 前記(B)リン系難燃剤がホスファゼン化合物、下記の一般式(1)で表される化合物、および下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項8または9に記載の薄肉成形品。
    一般式(1)
    Figure 0004964020
    (一般式(1)中、R 1 、R 2 およびR 3 は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、h、iおよびjは、各々独立に0または1を示す。)
    一般式(2)
    Figure 0004964020
    (一般式(2)中、R 4 、R 5 、R 6 およびR 7 は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  11. 前記(B)リン系難燃剤が下記の一般式(2)で表されるリン系化合物である請求項8〜10のいずれか1項に記載の薄肉成形品。
    一般式(2)
    Figure 0004964020
    (一般式(2)中、R 4 、R 5 、R 6 およびR 7 は、各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示し、p、q、rおよびsは、各々独立に0または1であり、tは、1〜5の整数であり、Xは、アリーレン基を示す。tが2以上のとき、t個の繰り返し単位は、各々同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
  12. 該薄肉成形品が、1cm 2 以上の0.6mm以下の平板部を有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の薄肉成形品。
  13. 該薄肉成形品が、電池パックまたは小型補助記憶装置の外郭部を構成する容器である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の薄肉成形品。
  14. 該薄肉成形品が、箱体とこれを封止する蓋体とからなる樹脂容器であり、前記箱体は、周囲の立上り片によって凹没した平均肉厚が0.6mm以下の平板部を有する樹脂容器であり、前記平板部の面積は、1〜100cm 2 であり、立上り片の高さは0.5〜10mmであり、立上り片の肉厚は0.3〜1.2mmである樹脂容器である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の薄肉成形品。
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