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JP4960146B2 - 気体の圧縮方法、ならびにこれを用いた(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸の製造方法、およびメチルメタクリレートの製造方法 - Google Patents

気体の圧縮方法、ならびにこれを用いた(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸の製造方法、およびメチルメタクリレートの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は微細な粒子を含有した気体の圧縮方法、ならびにこれを用いた(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸の製造方法、およびメチルメタクリレートの製造方法に関する。
微細な粒子(以下、「ミスト」という場合がある。)を含有した気体は、化学プラント内でプロセス気体を圧縮する場合に多く存在する。プロセス気体を圧縮し、ミストを分離する方法としては、通常、圧縮機の吐出圧力が約60hPa以下の場合、ターボファン、プロペラファンなどの送風機や圧縮機を用いて圧縮した後、電気集塵機やガラス繊維を用いた充填層式の集塵機を用いてミストを分離する方法が知られている。
例えば、非特許文献1には、排煙脱硫設備で発生し、塩類を含有するミストを含んだ排気ガスを、大気放出前に電気集塵機やガラス繊維を用いた充填層式の集塵機を用いてミストを分離する方法で環境汚染を防止することが開示されている。
また、硫酸製造プラントの排気ガス中には、SOやSOを含有するミストが含まれるため、ミストを除去せずに大気放出すると白煙がたなびき外観を損ねるだけでなく、深刻な環境汚染が生じることがあった。
そのため非特許文献2には、ターボファン、プロペラファンなどの送風機や圧縮機を用いて当該排気ガスを圧縮した後、電気集塵機やガラス繊維を用いた充填層式の集塵機を用いてミストを分離する方法が開示されている。ターボファン、プロペラファンのような吐出圧力が低い送風機や圧縮機では、インペラーの回転数が低いので、ミストによる汚染物のインペラーへの付着の影響が軽微であり、このような送風機や圧縮機の後に集塵機を設置するプロセスが組まれている。
ところで、イソブチレンなどの気相接触酸化反応においては、通常、主生成物のメタクリル酸と同時に少量のテレフタル酸等の高融点の副反応物が生成する。このような高融点の副反応物は、主生成物の回収設備(吸収塔)で温度が低くなると微細な固形物となってガス中に浮遊する。さらに吸収塔にて発生した水等の液体粒子もガス中に浮遊する。
特許文献1には、気相接触酸化反応により得られる反応ガスから反応生成物を回収した後のガスを、供給原料の希釈ガスとして反応器へリサイクルする方法が開示されている。特許文献1によれば、ミストを含むガスを、ミスト分離器を通過させてからブロワー(圧縮機)を用いてリサイクルしている。
なお、このようなミスト分離器を通過したガス中には、ミスト粒径が10μm以下のテレフタル酸等の固形物状の粒子や水等の液体粒子が浮遊したミストが含まれることとなる。該ミストを含有したガスのリサイクルには、反応器の圧力損失と主生成物の回収設備の圧力損失を合わせた圧力、通常は0.1MPa程度昇圧する圧縮機が必要である。このような圧縮機としては、軸流圧縮機やターボブロワーなどがあり、中でも風量と昇圧の関係から1〜2段のターボブロワーが一般的に使用されている。
また、特許文献2には、イソブチレン等の気相接触酸化反応によりメタクリル酸を製造する方法において、後段反応器の出ガスを凝縮装置に導いて凝縮成分を捕集し、残った廃ガスの一部を前段酸化反応器に循環使用するに際して、該反応器入口ガス中の固形微粒子濃度を0.5g/Nm以下、好ましくは0.1g/Nm以下に調節することが記載されている。特許文献2によれば、後段反応器の出ガスは、主反応物(メタクリル酸)の凝集装置を通過後、バッグフィルター、焼結金属濾過筒、スクラッバー等の微粒子捕集装置で固形微粒子を捕集してガス中の濃度を調節後、圧縮ポンプで昇圧される。
さらに、非特許文献3には、高濃度の有機物を含有した廃硫酸から硫酸を回収するプラントが稼動していることが記載されている。このプラントでは、廃硫酸を高温で燃焼して亜硫酸ガス等の燃焼ガスを得た後冷却し、ブロワーで圧縮し、触媒を用いた接触酸化反応器にて空気酸化して硫酸を得ている。この冷却した燃焼ガス中には微細な硫酸ミストが含有されているので、そのままブロワーにて圧縮操作するとブロワーが短時間で腐食し使用できなくなる。そこで、通常、冷却後の燃焼ガスを円筒式のミストコットレル(湿式電気集塵機)を用いて微細な硫酸ミストの除去した後にブロワーにて圧縮操作を行う。
特開2001−163828号公報 特開昭56−113732号公報 「日本ガイシ株式会社産業機器事業部カタログ(NGK MIST ELIMINATOR)」、1994年3月、p.2 「化学装置」1994年、3月号、p.32〜33 「硫酸と工業」昭和48年、9月号、p.15〜19
しかしながら、非特許文献2に記載された方法では、ミストを分離する前の気体をターボファン、プロペラファンなどの送風機や圧縮機を用いて圧縮するため、送風機や圧縮機を複数設置し、間歇的に切り替え洗浄したり、腐食した部品交換のメンテナンスを実施したりする必要がある。
また、特許文献1に記載された方法では、リサイクルガス中で浮遊する粒径10μm以下の微粒固形物を含むミストが、圧縮機のような稼動部で少量ずつ付着することがある。0.1MPa程度の圧縮を行う圧縮機では、圧縮機のタービン等の部品が駆動しているので、少量の付着物でも圧縮機の性能に大きな影響を及ぼすこととなる。特に、微粒固形物を含むミストが不均一に付着すると、振動等が発生し、圧縮機の安定な駆動に悪影響が生じる。このようなミストを含有した気体の圧縮を行う圧縮機では、汚れによる性能劣化に対応するため本来必要な性能より高い性能の機械を設置し、機械の稼動初期はインレットベーンのような調節器を働かせて性能を抑えて使用し、汚れてくると調節器を開放して使用する。このため稼動初期の段階では調節器の調整のために、一方、後期の段階では回転部分やケーシング部に微粒固形物を含むミストが付着することにより、必要以上の動力を消費することになる。また、微粒固形物などの付着物が突然剥離すると、圧縮機内のバランスが崩れるため、比較的短時間で圧縮機を停止しメンテナンスを行う必要があるが、高価な圧縮機を複数設置したプラント全体では、1年以上の連続運転を可能にすることが求められている。
また、特許文献2では、被圧縮ガス中の固形微粒子濃度を0.5g/Nm以下に調整することが規定されているが、これは単に触媒性能への悪影響を避けるための規定値であり、本発明者らによる検討では固形微粒子濃度を、より好ましいとされる0.1g/Nmに調整したリサイクルガスであっても、ターボブロワーやターボ圧縮機等を用いて圧縮した場合、装置運転上の不具合から充分な安定性が得られないことが見出されている。
また、非特許文献3に記載されたような冷却後の燃焼ガス中の硫酸ミストを、電気集塵機を用いて除去する場合、電気集塵機には燃焼灰等により汚れが発生するため短時間で洗浄を行う必要があり、その結果、複数のラインを所持し切り替え運転を余儀なくされる。電気集塵機は、設備費が高価であるばかりでなく切り替えの手間やメンテナンス費用がかかるので、この代替設備の技術開発も求められている。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、粒径が10μm以下の粒子を含有する気体であっても、長期にわたり安定して圧縮する気体の圧縮方法、ならびにこれを用いた(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸の製造方法、およびメチルメタクリレートの製造方法を目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、代表径が10μm以下の粒子の除去には、ブラウン運動や遮り効果を利用した集塵が有効であり、特定の空隙率を有し、繊維で構成された濾材を有する集塵機に気体を通過させることで、代表径が10μm以下の粒子を効果的に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の気体の圧縮方法は、代表径が10μm以下の粒子を含有する気体を、繊維で構成された空隙率が85%〜99%の濾材を通過させた後に圧縮する気体の圧縮方法であって、前記気体が、気相接触酸化反応により(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸を製造する工程で得られる反応生成ガス、または該反応生成ガスに含まれる成分のうちの一部の成分を分離または低減したガスであり、前記濾材が、ロープ状繊維を円筒状に組立てた濾過円筒であり、前記濾過円筒の外周は、気体が通過できない遮蔽板にて覆われ、かつ、該遮蔽板にて覆われた部分の割合が、前記濾過円筒の上端から、該濾過円筒の全長の20%以下であることを特徴とする。
また、本発明の気体の圧縮方法は、代表径が10μm以下の粒子を含有する気体を、繊維で構成された空隙率が85%〜99%の濾材を通過させた後に圧縮する気体の圧縮方法であって、前記気体が、アセトンシアンヒドリン、メタノール、硫酸を原料とするメチルメタクリレート製造プラントで発生する高濃度有機物含有廃硫酸を、熱分解する過程で生じるガスであり、前記濾材が、ロープ状繊維を円筒状に組立てた濾過円筒であり、前記濾過円筒の外周は、気体が通過できない遮蔽板にて覆われ、かつ、該遮蔽板にて覆われた部分の割合が、前記濾過円筒の上端から、該濾過円筒の全長の20%以下であることを特徴とする。
た、前記濾材を、アルカリ性または酸性の水溶液を用いて洗浄して再生し、再使用することが好ましい。
前記濾材を通過し、圧縮直前の気体中の粒子濃度が2質量ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸の製造方法は、気相接触酸化反応により(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、製造工程で得られる反応生成ガス、または該反応生成ガスに含まれる成分のうちの一部の成分を分離または低減したガスを、前記気体の圧縮方法により圧縮することを特徴とする。
さらに、本発明のメチルメタクリレートの製造方法は、アセトンシアンヒドリン、メタノール、硫酸を原料とするメチルメタクリレートの製造方法であって、製造プラントで発生する高濃度有機物含有廃硫酸を熱分解する過程で生じるガスを、前記気体の圧縮方法により圧縮することを特徴とする。
本発明の気体の圧縮方法によれば、粒径が10μm以下の粒子を含有する気体であっても、長期にわたり安定して圧縮することが可能となる。
また、本発明の気体の圧縮方法は、(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸の製造方法、およびメチルメタクリレートの製造の際に好適に用いられる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の気体の圧縮方法(以下、「圧縮方法」という。)に適用される気体は、代表径が10μm以下の粒子を含有する。なお、粒子の形状は、液体状であってもよく、固体状であってもよい。
ここで、代表径とは、粒径の揃わない粒子群の、代表的な粒子の大きさを意味し、その値は光散乱法によるパーティクルカウンターで測定した値を質量換算した平均値とする。
本発明に適用される気体は、昇圧や送風を必要とする気体であり、その発生源や用途は限定されない。このような気体は、化学プロセスや環境対策設備などで生じることが多く、例えば、気相接触酸化反応により(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸を製造する工程で得られる反応生成ガス、または該反応生成ガスに含まれる成分のうちの一部の成分を分離または低減したガス等が挙げられる。さらに、高濃度の有機物を含有した廃硫酸から硫酸を回収するプラントにおいて、当該廃硫酸を高温で燃焼して得られる亜硫酸ガス等の燃焼ガスなども本発明に適用できる。
上述したような気体中には、代表径が10μm以下の粒子が含まれている。粒子が、腐食性を有する物質、圧縮する際の温度及び圧力下で固体である物質、易重合性の物質から選ばれる少なくとも1つを含有する場合、本発明の効果がより発揮できる。
なお、気体中の粒子の濃度は、その発生源に応じて変化するため特に制限されない。また、液体状の粒子を含まない、または液体状の粒子の濃度が固体状の粒子に比べて少ない場合は、必要に応じて洗浄用に別途適切な液体(洗浄用液体)を気体が後述する濾材を通過する際に噴霧してもよい。
本発明の圧縮方法では、前記気体を繊維で構成された空隙率が85%〜99%の濾材を通過させた後に圧縮する。空隙率とは、前記濾材の見かけ上の全体積に対する空間の体積の割合をいう。
本発明においては、圧縮の際に用いられる装置としては特に限定されず、通常の送風機や圧縮機を用いることができる。具体的には、粒子による影響を敏感に受け易い軸流圧縮機、ターボブロワー、ターボ圧縮機や、高い昇圧用途に用いられる往復動圧縮機など用いることにより、本発明の効果をより明確に発揮できる。中でもターボブロワーが好ましい。また、圧縮の際の圧力も限定されることはないが、−0.01MPa〜0.25MPaで圧縮するのが好ましい。
本発明に用いられる濾材は、上述した送風機や圧縮機よりも上流に設置して、気体中の粒子を除去する。また、本発明においては、濾材よりも上流に、公知の除去機(集塵機)を設けてもよい。除去機としては、充填層形式の除去機が好ましい。なお、充填層形式の除去機に多く使用される形態として、吸収塔やスクラッバーの塔頂に線径が1mm前後のワイヤーメッシュの充填物を設置したワイヤーメッシュデミスターがある。これらは10μmを越える粒子径の粒子を除去するには好適ではあるが、本発明のように代表径が10μm以下の粒子を除去する場合は、以下に示す濾材を用いる。
なお、本発明において濾材とは、充填物、該充填物を構成する繊維、充填物が充填された濾過エレメント、該濾過エレメントにより構成させる濾過円筒などを含むものである。また、これら濾材を複数用いて集塵機とし、本発明に用いてもよい。
本発明に用いられる、濾材となる充填物は、空隙率が85%〜99%であり、86%〜95%がより好ましい。空隙率が上記下限値より小さくなると、代表径が10μm以下の粒子の除去効率が低下して下流の圧縮機に粒子が漏れたり、ラインの圧縮損出が増したりして、圧縮機に影響を及ぼす。一方、空隙率が上記上限値より大きくなると、充填物の遮り効果がなくなるため、粒子の除去効率が低減する。
また、充填物は、繊維で構成されており、綿状の短繊維(スフ綿)で構成させるのが好ましい。綿状の短繊維は、高い空隙率でありながら、充填層における空隙率の均一性を維持できるので、充填物を構成するには好適であり、特に代表径が10μmの粒子を効率よく除去できる。
前記繊維としては、安定性や耐食性などの点からガラス繊維が好ましい。ガラス繊維が好ましい理由は以下の通りである。
集塵機を通過する気体は粒子を含み、また必要に応じて洗浄用液体が噴霧されるため、充填物や後述する濾過エレメントなどの濾材は、気体が通過するのと共に、集塵された液体の粒子や洗浄用液体が、集塵された固体の粒子を伴って重力方向に流れる状態となる。従って、濾材を形成する繊維は、気体の通過圧力損失による力と、除塵した固体を含むスラリー状の液体の落下による力を受けて変形し易い。そのため、繊維自体に一定の剛性が必要であり、ガラス繊維がその点で好ましい。また、ガラス繊維は液体などに濡れにくく、変形しにくいので、濾材を構成するには好適である。
繊維の断面の代表径は、1μm〜50μm程度が好ましい。代表径が上記範囲内であれば、粒子のブラウン運動や遮り効果による集塵機能を充分に発揮し、除塵した粒子が充填層内に蓄積せずに排出されやすくなる。
ここで、本発明に用いられる集塵機および濾材について、図1〜7を参照して説明する。なお、図2、4において図1と同一の構成要素には同一の符号を付して、また、図5において図3と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略することがある。
充填物を充填する容器の形状としては、取扱いが容易な大きさの直方体や、二重円筒型のものが好ましい。
直方体の容器を用いた場合、図1に示すような、濾過エレメント10とするのが好ましい。濾過エレメント10は、充填物収納外枠1の内側に充填物2が充填されており、さらに充填物押さえ3にて充填物2が均一に充填されるようになっている。また、濾過エレメント10は、直方体の一方の面から気体を導入し、その面に対向した面から除塵気体として取り出す機構となっている。
この濾過エレメント10を、気体の導入量(流量)に応じて1個あるいは複数個設置して集塵機とすることができる。
二重円筒型の容器を用いた場合、図2に示すような、濾過エレメント20とするのが好ましい。濾過エレメント20は、円筒の外周面(充填物押さえ3側)から気体を導入し内周面(コア4側)から除塵気体として取り出す機構であっても、円筒の内周面から気体を導入し外周面から除塵気体として取り出す機構であってもよい。
濾過エレメント20の気体通過面は、充填物2が風圧で変形しない程度の強度を有する多孔板、網、空孔率が大きい多孔質素材を単独または併用したものからなるのが好ましい。
また、濾過エレメント内の繊維の充填状態の均一性を確保するために、濾過エレメントのガス通過方向に対して垂直方向の長さを限定した濾過エレメント21を製作し、濾過エレメント21を複数個縦に積み重ねて図3に示すような濾過円筒30としてもよい。濾過円筒30は、濾過エレメント21の中心部を貫通する組み立てロッド5にて固定されている。また、濾過円筒30の端部(最上端部)に位置する濾過エレメント21aの最上端(すなわち、他の濾過エレメントと接していない側)に中空円盤6が取り付けられている。一方、濾過円筒30のもう一方の端部(最下端部)に位置する濾過エレメント21bの最下端(すなわち、他の濾過エレメントと接していない側)に下部円盤7と、濾過物抜き取りパイプ8が取り付けられている。さらに、濾過円筒30の上端から、該濾過円筒30の全長の20%以下の部分の外周は、気体が通過できない遮蔽板9にて覆われている。
この濾過円筒30を気体の導入量(流量)に応じて1個あるいは複数個設置して集塵機とすることができる。
濾過エレメントとしては、図4に示すように、繊維を編んで作成したロープ状繊維41を、円筒42の周方向に巻きつけたものを濾過エレメント40としてもよい。また、補強材として最外周部を被覆材43で被覆してもよい。ロープで形成した濾過エレメント40の寸法は任意であるが、例えば、内径が200mm〜300mm、外形が350mm〜500mm、高さが200mm〜500mm程度であると、取扱いが容易になり、安定した形態を保てるので好ましい。
なお、濾過エレメント40を形成する円筒42および、被覆材43としては、多孔板、網、空孔率が大きい多孔質素材を単独または併用したものが挙げられる。
さらに、濾過エレメント40を複数個縦に積み重ねて図5に示すような濾過円筒50としてもよい。図5に示す濾過円筒50は、濾過エレメント40(40a、40b、40c、40d)を4個積み重ねたものであるが、濾過円筒30と同様に、濾過エレメント40aの最上端には中空円盤6が、一方濾過エレメント40dの最下端には下部円盤7と、濾過物抜き取りパイプ8が取り付けられている。また、濾過円筒50の上端から、該濾過円筒50の全長の20%以下の部分の外周は、気体が通過できない遮蔽板9にて覆われている。
この濾過円筒50を複数本作成し、缶体容器に設置し、缶体の一方から気体を導入し、他方から除塵気体として排出する集塵機を形成することができる。なお、この濾過円筒50への気体の流し方は、内面から外面方向であっても、その逆であってもよく、粒子の量など気体の性状を考慮して決定される。
ところで、濾過円筒30や濾過円筒50のように、濾過エレメントを複数縦に積み重ねたものは、通常、長期間使用していると重力方向に僅かながら縮退する。濾過エレメントの数が多いとこの縮退による隙間が濾過円筒の上部に集中し、気体の短絡通過が生じることとなる。このような現象が起こると気体中の粒子の除去効率が低下しやすくなる。そこで上述したように濾過円筒の上端から、該濾過円筒の全長の20%以下の部分の外周を、気体が通過できない遮蔽板で覆うことで、粒子の除去効率の低下を抑制することが好ましい。遮蔽板で覆われる外周部分の割合は、用いられる繊維の直径、繊維の充填率や集塵する液体の量、その液体に含有される固体の量、使用時間などの要因により増減することができるが、濾過円筒の上端から、該濾過円筒の全長の10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。遮蔽板で覆われる外周部分の割合が、20%を超えると、実際に濾過効果を与える濾材の有効部分が減少する。
なお、本発明において、濾過円筒の上端とは、濾過円筒の最上端部に位置する濾過エレメントの最上端のことである。また、濾過円筒の全長とは、該濾過円筒の最上端部に位置する濾過エレメントの最上端から、濾過円筒の最下端部に位置する濾過エレメントの最下端までの長さのことである。
上述したような濾過エレメントや濾過円筒などの濾材と、これを用いた集塵機を用いると、濾材や集塵機を通過した気体(以下、「集塵機の出口気体」という。)中の液体及び固体粒子の合計の濃度(以下、「粒子濃度」という。)を2質量ppm以下とすることが可能になる。特に、粒子に易重合性の物質が含まれる場合は、ケーシング内に滞留した易重合性の物質が重合し、送風機、圧縮機内に堆積して安定運転の阻害因になりやすい。しかし、本発明によれば、集塵機の出口気体の粒子濃度が2質量ppm以下になることで、送風機や圧縮機で易重合性の物質が重合し堆積するのを抑制できる。
なお、圧縮機内で気体温度が上昇し、液体状の粒子が気化して固体状の粒子が析出するような系では、集塵機の出口気体中に固体粒子が含まれていないこともあるが、このような場合でも、液体及び固体粒子の合計として粒子濃度を算出する。
集塵機の出口気体の粒子濃度が2質量ppmを超えると、圧縮の際に用いられる送風機や圧縮機の運転に影響を与えることとなる。例えば、上述したようなターボブロワーやターボ圧縮機では、タービン翼やケーシングへの固形物等が付着することにより性能が著しく低下したり、回転部の振動発生の原因となったりして安定した運転維持が困難になる。また、このような送風機や圧縮機は化学プラントにおいて多く使用されるため、性能の低下はプラント全体の連続運転阻害の原因にもなり得る。
このような濾材や集塵機は、使用するに連れて濾過エレメントを通過する気体の圧力損失が増加してくる。圧力損失が限界値を超えた場合、濾過エレメントにて除去された濾過物質が酸性の固形物質のときはアルカリ性の水溶液で、濾過物質がアルカリ性の固形物質のときは酸性の水溶液で洗浄し、洗浄後に必要ならば水でリンス洗浄することにより、濾材や集塵機の再使用が可能となる。
以上説明したように、本発明によれば、特定の空隙率を有し、繊維で構成された濾材に気体を通過させることで、粒径が10μm以下の粒子を含有する気体であっても、効果的に粒子を除去でき、長期にわたり安定して気体を圧縮することができる。
また、本発明は、化学工業で多用される気相接触酸化反応における反応生成ガスなどの圧縮に、好適に利用できる。
具体的には、気相接触酸化反応により(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸を製造する工程で得られる反応生成ガス、または該反応生成ガスに含まれる成分のうちの一部の成分を分離または低減したガスを圧縮するのに好適である。
すなわち、本発明の(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸の製造方法によれば、製造過程で発生するガスを、本発明の気体の圧縮方法により圧縮するので、ガス中に高融点の副反応物や水などの粒子が浮遊していても、効果的に粒子を除去でき、長期にわたり安定して気体を圧縮することができる。なお、本発明において、(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸を製造するにあたっては、ガスを圧縮する以外の工程は、公知の方法を用いることができる。
さらに、本発明の気体の圧縮方法は、メチルメタクリレート製造プラントで発生する高濃度有機物含有廃硫酸を、熱分解する過程で生じるガスを圧縮するのにも好適である。
すなわち、本発明のメチルメタクリレートの製造方法によれば、製造過程で発生する高濃度有機物含有廃硫酸を熱分解する過程で生じるガスを、本発明の気体の圧縮方法により圧縮するので、排気ガスを大気放出しても白煙の発生が抑制され、外観の保持や、環境汚染を低減できる。なお、本発明において、メチルメタクリレートを製造するにあたっては、ガスを圧縮する以外の工程は、公知の方法を用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、光散乱法によるパーティクルカウンターで測定した粒子の個数基準の粒度分布から粒子の真密度を仮定して質量基準の粒度分布を求め、その50質量%である粒径を代表径とした。なお、粒子の密度は1(g/ml)と仮定した。また、測定した粒度分布から粒径5μm以上および5μm未満の各々の粒子濃度(質量ppm)を求めた。
[試験1]
メタクロレイン及び分子状酸素を原料として気相接触酸化反応を実施し、反応生成ガスからメタクリル酸を吸収塔により回収した後の気体(以下、「ガス」という。)をターボブロワーで圧縮後、当該酸化反応器へリサイクルする方法に関しての試験を示す。
<実施例1>
触媒層入口を備えた酸化反応容器に、メタクロレイン5容積%、酸素10容積%、水10容積%、その他のイナート成分を入れ、触媒としてリン−モリブデン−バナジウム系の触媒を用いて、気相接触酸化反応を行った。なお、触媒層入口のガス温度は295℃、圧力は0.14MPaであった。
酸化反応により生じたガスを、ボイラー等の熱回収機器、急冷塔を順次経て、主生成物であるメタクリル酸を回収する吸収塔(規則充填物を装備した充填塔)へ導き、メタクリル酸を回収した。
なお、急冷塔より下流を通過するガス中には、酸化反応で副生したテレフタル酸等の高融点物質がミスト状(粒子状)で含まれていた。この粒子の形態は、高沸点物の凝集体であったり、メタクリル酸等の水溶液の液滴に懸濁して付着したものであったりし、粒子の粒径は数mm〜サブミクロンに及ぶ広い範囲のものであった。この粒子は、吸収塔やその後続の設備の機壁に付着して安定運転の障害となるので、急冷塔と吸収塔の中間部に、実開昭55−61422号公報に記載の微細粉塵粒子連続除去装置を設置し、粒子を除去した。
一方、メタクリル酸を回収した後のガスを、吸収塔の出口に設けた粒子除去機(波型の衝突板型)に通過させ、吸収塔出口ガスを得た。粒子除去機により、粒径が数mm〜10μm程度の粒子が除去され、ガス中に含まれていた粒子の大部分が取り除かれた。なお、ガス中に含まれていた粒子の代表径は、3μmであった。
吸収塔出口ガスに含まれる粒径5μm以上、および5μm未満の粒子の各濃度を、表1の「集塵機入口」の欄に示す。
次いで、吸収塔出口ガスを、吸収塔の下流に設けられた、以下に示す仕様の集塵機に通過させ、表1に示す運転状況にて吸収塔出口ガス中に含まれる粒子を除去した。集塵機排出後のガスに含まれる各粒径の粒子の濃度を、表1の「集塵機出口」の欄に示す。
集塵機の仕様:
濾過エレメントとして、図4に示すようなガラス繊維(ガラス製、繊維径:10μm)で編んだロープを、多孔板製の円筒(外径:250mm、高さ:250mm)に巻きつけたものを用いた。ロープを巻きつけた後の濾過エレメントの外形は390mmであり、濾過エレメントのガラス繊維層(濾材)の空隙率は90%であった。
この濾過エレメント10個を積み重ね、図5に示すような濾過円筒50(全長:2500mm)を作成した。濾過円筒に用いた中空円盤は、外径が500mm、内径が250mmであり、遮蔽板9の長さは125mmであった。なお、濾過円筒50に対する遮蔽板9の割合は5%であった。
この濾過円筒50を20本、缶体内(外径:3m、高さ:5m)に設置し、図6に示すような集塵機60とした。ただし、図6は濾過円筒50の20本のうち2本をのみ示した略図である。なお、吸収塔出口ガスは缶体胴部61より導入され、粒子を分離したガスは缶体頂部62より排出される。
集塵機排出後のガスは、粒径が5μm未満の粒子の濃度が0.6質量ppmであった。なお、粒径が5μm以上の粒子は、集塵機60により取り除かれていた。
この集塵機排出後のガスをターボブロワーにて圧縮し酸化反応器へリサイクルした。ターボブロワー入口の圧力は、0.045MPa、出口圧力(吐出圧力)は、0.145MPa(いずれもゲージ圧力で表示)であった。ターボブロワーの運転状況を表1に示す。
以上の条件で一年間連続操業した結果、ターボブロワーの操作は、ガス流量調節弁の調節可能な範囲内で済み、安定に運転できた。運転停止後、ターボブロワーを分解点検した結果、テレフタル酸の固形物がケーシング部に僅かに付着していた以外に機器の腐食や変形等の異常は認められなかった。
一方、集塵機60は、入口、出口のガスの圧力差(以下、「集塵機の圧力損失」という。)が使用開始時一ヶ月の平均値に対し、連続操業終了前一ヶ月の平均値が50%増加していた。なお、運転停止後、濾過円筒にアルカリ性の水溶液として2%の水酸化ナトリウム溶液をスプレーして洗浄し、さらに洗浄水にてリンスして、集塵機60を再利用した。再利用した際の運転開始時の集塵機の圧力損失は、初回運転開始時の圧力損失に比べて10%増加しただけで、再使用可能であった。
<比較例1>
吸収塔の下流に集塵機を設けず、吸収塔出口ガスを集塵機に通過させなかった以外は実施例1と同様にして実施した。
その結果、一週間でターボブロワーの調節弁の作動範囲を超える性能低下が起こり、運転不可能となった。解体して点検したところ、ケーシングやタービン翼にテレフタル酸等の固形物が多量に付着していた。
Figure 0004960146
[試験2]
アセトンシアンヒドリン、メタノール、硫酸を原料とするメチルメタクリレート製造プラント(ACH法MMAプラントと呼ぶ)で発生する、高濃度有機物含有廃硫酸(以下、「廃硫酸」という。)の熱分解プロセスに関しての試験を示す。
参考例2>
ACH法MMAプラントで発生した廃硫酸は、補助燃料及び空気を用いて温度1000〜1100℃の分解炉にて熱分解し、SO、SO、CO、窒素、水を含むガスを生じた。この分解炉から生じたガスを、廃熱回収ボイラーにて熱回収した。廃熱回収ボイラーから生じたガスをスプレー塔式冷却塔にて70〜75℃まで冷却した。さらに充填塔式の洗浄塔にて、副生成物であるSOの大部分を吸収除去し、常温付近まで冷却を行った。洗浄塔から排出された排出ガスに含まれる硫酸ミスト(硫酸粒子)の濃度を、表2の「集塵機入口」の欄に示す。なお、硫酸ミストの代表径は8μmであった。
次いで、洗浄塔から排出された排出ガスを、洗浄塔の下流に設けた、以下に示す仕様の集塵機に通過させ、表2に示す運転状況にて排出ガス中に含まれる硫酸ミストや微細な燃焼灰ダストを除去した。集塵機から排出された排出ガスに含まれる硫酸ミストの濃度を、表2の「集塵機出口」の欄に示す。
集塵機の仕様:
充填物としてガラス繊維を、多孔板製の円筒(外径:620mm、内径:500mm、高さ:3.4m)に充填し、図2に示すような濾過エレメント20を作成した。濾材である濾過エレメントのガラス繊維層の空隙率は91%であった。
この濾過エレメント18本を円筒容器に収納し、図7に示すような集塵機70とした。なお、排出ガスは円筒容器胴部71より導入され、硫酸ミストや微細な燃焼灰ダストを分離したガスは円筒容器頂部72より排出される。
次いで、集塵機70から排出された排出ガスは、ターボブロワーを用いて圧縮し、酸化触媒を充填したSO転化器に送られSOへ酸化した。得られたSOは、水に吸収して製品の濃硫酸とした。ターボブロワーの運転状況を表2に示す。なお、集塵機70での硫酸ミストの分離が不十分な場合は、乾燥塔にてガス中に白煙が発生することで検出できる。
<比較例2>
集塵機70の代わりに、電気集塵機を直列に2基接続したものを2系列設置した以外は参考例2と同様にして実施した。
Figure 0004960146
表2に示すように、参考例2では、一年間の連続操業において白煙の発生が見られず、濾過(硫酸ミストや微細な燃焼灰ダストの除去)は良好であった。また、ターボブロワーや乾燥塔、転化器における異常な腐食も見られなかった。
一方、比較例2では、硫酸ミストの除去状況は、連続操業が約一ヶ月経過すると乾燥塔に白煙が見え始めた。そこで、稼動負荷を減らし、一系列ずつ電極の清掃を行った。このように電気集塵機での濾過では短時間での濾過性能は充分であるが、複数系列をもって間歇運転が必要であり、メンテナンス費用がかかり、操業の安定性に問題が生じた。
本発明の直方体型の濾過エレメントの一例を示す斜視図である。 本発明の円筒型の濾過エレメントの一例を説明する図である。 本発明の円筒型の濾過円筒の一例を示す断面図である。 本発明のロープ型の濾過エレメントの一例を示す説明する図である。 本発明のロープ型の濾過円筒の一例を示す断面図である。 本発明の実施例1で用いた集塵機を示す概略図である。 本発明の参考例2で用いた集塵機を示す概略図である。
符号の説明
10、20、40、:濾過エレメント。
30、50:濾過円筒。
60、70:集塵機。
41:ロープ状繊維。
2:充填物。
9:遮蔽板。

Claims (6)

  1. 代表径が10μm以下の粒子を含有する気体を、繊維で構成された空隙率が85%〜99%の濾材を通過させた後に圧縮する気体の圧縮方法であって、
    前記気体が、気相接触酸化反応により(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸を製造する工程で得られる反応生成ガス、または該反応生成ガスに含まれる成分のうちの一部の成分を分離または低減したガスであり、
    前記濾材が、ロープ状繊維を円筒状に組立てた濾過円筒であり、
    前記濾過円筒の外周は、気体が通過できない遮蔽板にて覆われ、かつ、該遮蔽板にて覆われた部分の割合が、前記濾過円筒の上端から、該濾過円筒の全長の20%以下であることを特徴とする気体の圧縮方法。
  2. 代表径が10μm以下の粒子を含有する気体を、繊維で構成された空隙率が85%〜99%の濾材を通過させた後に圧縮する気体の圧縮方法であって、
    前記気体が、アセトンシアンヒドリン、メタノール、硫酸を原料とするメチルメタクリレート製造プラントで発生する高濃度有機物含有廃硫酸を、熱分解する過程で生じるガスであり、
    前記濾材が、ロープ状繊維を円筒状に組立てた濾過円筒であり、
    前記濾過円筒の外周は、気体が通過できない遮蔽板にて覆われ、かつ、該遮蔽板にて覆われた部分の割合が、前記濾過円筒の上端から、該濾過円筒の全長の20%以下であることを特徴とする気体の圧縮方法。
  3. 前記濾材を、アルカリ性または酸性の水溶液を用いて洗浄して再生し、再使用することを特徴とする請求項1または2に記載の気体の圧縮方法。
  4. 前記濾材を通過し、圧縮直前の気体中の粒子濃度が2質量ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の気体の圧縮方法。
  5. 気相接触酸化反応により(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸を製造する方法であって、
    製造工程で得られる反応生成ガス、または該反応生成ガスに含まれる成分のうちの一部の成分を分離または低減したガスを、請求項1に記載の気体の圧縮方法により圧縮することを特徴とする(メタ)アクロレイン及び/または(メタ)アクリル酸の製造方法。
  6. アセトンシアンヒドリン、メタノール、硫酸を原料とするメチルメタクリレートの製造方法であって、
    製造プラントで発生する高濃度有機物含有廃硫酸を熱分解する過程で生じるガスを、請求項2に記載の気体の圧縮方法により圧縮することを特徴とするメチルメタクリレートの製造方法。
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