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JP4956225B2 - ローラチェーンのリンクプレートの軽量化方法 - Google Patents

ローラチェーンのリンクプレートの軽量化方法 Download PDF

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この発明は、主としてオートバイの走行駆動用の用途に好適に使用することができるローラチェーンのリンクプレートの軽量化方法に関する。
オートバイの走行駆動用のチェーンは、強度が大きく、軽量であることが求められる。
そこで、チェーンのリンクプレート(外プレート、内プレートを総称していう、以下同じ)において、左右の穴の中心から先端側を見て45°方向が最大となるように外形を一様に滑らかに膨出させることによって、重量増加を最小に抑えながら強度の増大を図ることができる(特許文献1)。ただし、中心線から45°方向は、中心線を挟む2方向に存在するが、これらの各方向の膨出量は、同一に設定する。また、外形を最大に膨出させる「中心線から45°方向」は、必ずしも正確な45°の方向ではなく、たとえば45°±15°の範囲内の方向であればよい。
このようなリンクプレートの一例を図9に示す。ただし、図9(A)〜(C)は、それぞれ全体斜視図、全体平面図、同図(B)のX−X線矢視相当拡大断面図である。すなわち、リンクプレートは、ひょうたん形の板材11の左右に穴12、12を形成するとともに、各穴12の中心から見て、中心線Cから角度θ=43°の方向に、最大の有効幅A1 が形成されている。また、角度θ=0°、90°の方向の有効幅Ao 、A2 は、A2 <Ao <A1 に設定されている。そこで、穴12、12に挿入する連結用のピンまたはブシュを介して中心線C方向に引張り荷重を負荷させると、穴12の中心を通る角度θ=90°の方向の断面が最も破断し易い危険断面となっている。なお、板材11は、均一な厚さtであり、このようなリンクプレートは、プレス打抜により効率的に大量生産することができる。
特開2006−64049号公報
かかる従来技術によるときは、リンクプレートは、各穴に圧入するピンまたはブシュを介して引張り荷重が負荷されるため、各穴の周囲に応力が極端に集中し、全体の厚さを均一にするのでは、過大な厚さの部分が存在し、さらに軽量化の余地があることが判明した。しかし、従来のリンクプレートは、プレス打抜によって製造されるため、部分的に厚さを不均一にすることが本質的に不可能であった。
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の実情に鑑み、生産方法をプレス打抜から鍛(たん)造に転換して厚さを部分的に削減し、強度を維持しながら一層の軽量化を図ることができるローラチェーンのリンクプレートの軽量化方法を提供することにある。
かかる目的を達成するための請求項1の発明の構成は、左右の両端部に穴を有するリンクプレートの軽量化方法であって、各穴の中心から先端側を見て中心線から45°方向の有効幅が最大となるように一様に滑らかに膨出させて両端部の外形を設定するとともに厚さが均一な基準形に対し、全体形状を同一にし、有限要素法による応力解析結果を参照して、穴の直近の応力を維持しながら、各穴の中心を通り中心線に対して90°方向の危険断面における応力が穴からの距離に従って一様に減少し、しかも危険断面における応力分布曲線が基準形の応力分布曲線に近似するように、表面側、裏面側の少なくとも一方から上下左右対称に厚さを部分的に削減して、基準形の強度を維持しながら基準形より軽くすることをその要旨とする。ただし、「危険断面」とは、引張り荷重に対する危険断面をいう。また、「一様に滑らかに膨出」とは、穴の中心より先端側の外形に応力集中を来すような角張った部分が存在せず、外側に凸の曲率部分(曲率ゼロの部分を含む)だけが存在し、凹の曲率部分が同領域の外形に存在しないことをいう。さらに、「中心線から45°方向」の内容、範囲については、背景技術の項において従来技術について説明したと同様である。
請求項2の発明の構成は、左右の両端部に穴を有するリンクプレートの軽量化方法であって、両端部の外形を各穴と同心円状の形状に設定するとともに厚さが均一な基準形に対し、全体形状を同一にし、有限要素法による応力解析結果を参照して、穴の直近の応力を維持しながら、各穴の中心を通り中心線に対して45°方向の危険断面における応力が穴からの距離に従って一様に減少し、しかも危険断面における応力分布曲線が基準形の応力分布曲線に近似するように、表面側、裏面側の少なくとも一方から上下左右対称に厚さを部分的に削減して、基準形の強度を維持しながら基準形より軽くすることをその要旨とする。ただし、「危険断面」とは、引張り荷重に対する危険断面をいう。
かかる発明の構成によるときは、リンクプレートは、全体形状が基準形と同一であるから、中心線に対する危険断面の方向は、基準形のそれと同一である。そこで、有限要素法による応力解析結果を参照して、穴の直近の応力を維持しながら、危険断面における応力が穴からの距離に従って変曲点を生じることなく一様に減少するように、すなわち、危険断面における応力が過大とならないように、過大な厚さを部分的に削減することにより、強度を維持しながら全体の軽量化を図ることができる。ただし、厚さの削減の態様は、穴の直近における最大応力が過大になって強度が低下しないように、また、全体の動的バランスが大きく劣化することがないように、上下左右対称に配分するものとする。
なお、この発明は、外プレート、内プレートのいずれに対しても適用可能である。また、この発明において、基準形の両端部の外形を左右の穴と同心円状の一般的な形状に設定すると、危険断面の方向は、各穴の中心を通り、中心線に対して45°の方向となる。ちなみに、厚さの部分的な削減は、たとえば丸棒材や角材を定寸に切断し、または板材を所定の短冊状に裁断した上、鍛造による数段階の塑性変形加工を経て簡単に実現することができる。
各穴の中心から見て中心線から45°方向の有効幅が最大となるように膨出させて基準形の両端部の外形を設定すると、危険断面は、穴の中心を通り、中心線に対して90°の方向となる。そこで、以下同様にして危険断面における応力を評価しながら過大な厚さを部分的に削減することにより、全体重量を適切に軽減することができる。
危険断面における応力分布曲線を基準形のそれに近似させることにより、基準形の強度を維持しながら、最大の軽量化を実現することができる。すなわち、危険断面における断面形状は、基準形の応力分布曲線にほぼ対応するように変化させることが好ましい。
厚さ削減の態様は、たとえば、全周縁に対して表面側から面取りを施し、中心線と平行な直線の外側を表面側から斜めに削除し、穴の周囲を基準形より厚くするとともに、穴の周囲を除く全面を基準形より薄くし、あるいは全周縁に対して表面側、裏面側の双方から面取りをし、さらに、これらを適切に組み合わせることができる。
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
ローラチェーンのリンクプレートは、横長の板材11の両端部に穴12、12を形成してなる(図1、図2)。ただし、図2(A)〜(E)は、それぞれ全体斜視図、裏面図、図1のX−X線矢視相当断面図、図1のY−Y線矢視相当断面図、図2(D)の要部拡大図である。
リンクプレートの全体形状は、上下の長辺側にくびれを有するひょうたん形に形成されている。リンクプレートの穴12、12を含む全体形状は、図9の全体形状と同一である。そこで、以下、図9の全体形状を基準形というものとする。
図1、図2のリンクプレートは、基準形の全周縁に対して表面側から面取り13を施すとともに、各穴12の上下において、中心線Cと平行な直線C1 、C1 の外側の表面側を斜めの斜面14、14に削除して形成されている。面取り13は、リンクプレートの厚さtの1/2をたとえば45°に切除している。また、左右の穴12、12の上または下の直線C1 、C1 は、くびれ部分において面取り13によりほぼ等分されるように各穴12の上または下に同一高さに配置され、各斜面14は、各直線C1 の外側がたとえば15°に切除されている。
リンクプレートの表面側には、全体重量を軽減するために、横長の長方形の凹部15が形成されている。凹部15は、穴12、12の中間の中心線C上に形成されている。凹部15の深さは、(1/4〜1/3)tの程度であり、凹部15の四周の側壁には、たとえば10°の抜き勾配が付けられている。また、凹部15のすべての角部は、適切に丸められている。凹部15の裏面側には、ほぼ同大の浅い凹部15aが形成されている。凹部15aの深さは、(1/40〜1/30)tの程度でよく、凹部15aには、たとえば90°の抜き勾配が付けられている。凹部15aは、凹部15を塑性成形するときに生じがちな成形斑を消去するとともに、加工時の位置決め用として有益である。リンクプレートは、面取り13、斜面14、14…、凹部15、15aを介し、表面側、裏面側から上下左右対称に厚さtが部分的に削減されている。
かかるリンクプレートは、鍛造による塑性変形加工により製造する。すなわち、リンクプレートは、丸棒材や角材を定寸に切断し、または板材を適切な寸法の短冊状に裁断して出発材料とし、鍛造により穴12、12を除く全体形状を塑性成形した上、バレル研磨を経て、穴12、12を穴明けし、熱処理により焼入れして仕上げればよい。
図1、図2のリンクプレートは、外プレート21、21…として使用することにより、軽量で高速走行性能に優れ、しかも外観的にも極めて優美なローラチェーン20を作ることができる(図3、図4)。各外プレート21の斜面14、14…、凹部15は、外部に露出するピン24、24…の頭部とともに、きれいな外観上のアクセントとなり得るからである。ただし、ローラチェーン20は、外プレート21、21…と、内プレート22、22…、ローラ23、23…、ピン24、24…、ブシュ25、25…と組み合わされ、各外プレート21、内プレート22の間には、ブシュ25を介してシールリング26が介装されている。
内プレート22用のリンクプレートは、外形形状を外プレート21用のリンクプレートと同様の基準形に設定し、全周縁に対して表面側、裏面側の双方からそれぞれ面取り13が施されている。なお、内プレート22用のリンクプレートは、ブシュ25、25用の穴16、16が左右に形成され、穴16、16の間には、軽量化のための長孔17が形成されている。内プレート22用のリンクプレートも、外プレート21用のリンクプレートと同様に、効率よく鍛造成形することができる。
他の実施の形態
外プレート21用のリンクプレートは、穴12、12の周囲を基準形より厚くし、穴12、12の周囲を除く全面を基準形より薄くしてもよい(図5)。ただし、図5(A)〜(C)は、それぞれ全体斜視図、裏面図、同図(B)のX−X線矢視相当拡大断面図である。
リンクプレートは、全体形状が基準形と同一のひょうたん形の板材11に左右の穴12、12を設け、各穴12の周囲の裏面側に環状のリブ18を残すようにして、リブ18以外の全面を薄くして形成されている。ただし、リブ18の部分の厚さt1 ≒(1.1〜1.3)t、リブ18以外の部分の厚さt2 ≒(0.8〜0.95)tに設定し、リブ18の基部の外径Dは、穴12の内径dに対し、D≒d+(0.9〜1.1)tに設定することができる。また、リブ18の外周には、たとえば20°の抜き勾配が付けられており、リブ18の基部は、適切に丸められている。
なお、図5において、リブ18は、リンクプレートの裏面側だけでなく、表面側、裏面側に厚さt1 を任意に配分して形成してもよい。また、リンクプレートは、表面側の面取り13、斜面14、14…、凹部15と、裏面側のリブ18、凹部15aとを組み合わせてもよい(図6)。ただし、図6(A)〜(C)は、それぞれ裏面図、図2(C)相当図、図2(D)相当図である。また、図6において、斜面14、14…、凹部15、15aは、それらの全部または一部を省略してもよい。すなわち、厚さtの削減の態様は、上下左右に対称であればよく、図示以外の任意の態様に変更することができる。
図9を基準形とし、図1、図2を実施例1、図5を実施例2として、強度試験、応力解析の結果をそれぞれ図7、図8に示す。ただし、基準形、実施例1、2の共通諸元として、全長29.2mm、最大高さ12.8mm、くびれ部分の最小高さ8.5mm、各穴12の内径5.29mm、穴12、12の中心間距離(ピッチ)15.71mm、厚さt=2.0mm、中心線Cからの角度θ=0°、43°、90°における有効幅Ao =4.1mm、A1 =4.2mm、A3 =3.76mmとし、材質SAE5046を使用して、硬さ48±2HRCに焼入れした。また、実施例1の各穴12の上下の直線C1 、C1 の間隔8.1mm、凹部15、15aの縦横3×4mm、それぞれの深さ0.6mm、0.06mmとし、実施例2のリブ18の外径D=7.2mm、リブ18の部分の厚さt1 =2.3mm、リブ18以外の部分の厚さt2 =1.8mmとした。
図7によれば、実施例1、2は、いずれも基準形と同等の引張り強さを有しながら、重量においてそれぞれ10%、8%の軽量化が実現され、比強度が改善されていることが分かる。また、図8によれば、穴12の中心を通り、中心線Cに対して角度θ=90°の危険断面における応力Sは、基準形、実施例1、2のいずれについても、穴12からの距離Lに従って一様に滑らかに減少し、距離Lに対してほぼ反比例の関係が得られている。また、実施例1、2のいずれについても、穴12の直近の応力Sが基準形と同等に維持されており、距離Lに沿う応力Sの分布曲線は、基準形のそれに近似している。ただし、このとき、穴12の内周の距離L=0の位置では、穴12にピン24を圧入してかしめることにより、外部からの引張り荷重に比して大きな応力Sが発生していることを想定した。
以上の説明において、基準形の両端部の外形は、各穴12、16と同心円状に設定し、危険断面の方向を、穴12、16の中心を通り、中心線Cに対して45°の方向としてもよい。
表面図 全体構成説明図 使用状態斜視図 図4のX−X線矢視相当拡大断面図 他の実施の形態を示す要部構成説明図(1) 他の実施の形態を示す要部構成説明図(2) 特性試験データを示す図表 特性試験データを示す線図 従来例を示す全体構成説明図
符号の説明
Ao 、A1 、A2 …有効幅
L…距離
t…厚さ
S…応力
12、16…穴
13…面取り

特許出願人 株式会社 江沼チヱン製作所
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

Claims (2)

  1. 左右の両端部に穴を有するリンクプレートの軽量化方法であって、各穴の中心から先端側を見て中心線から45°方向の有効幅が最大となるように一様に滑らかに膨出させて両端部の外形を設定するとともに厚さが均一な基準形に対し、全体形状を同一にし、有限要素法による応力解析結果を参照して、穴の直近の応力を維持しながら、各穴の中心を通り中心線に対して90°方向の危険断面における応力が穴からの距離に従って一様に減少し、しかも危険断面における応力分布曲線が基準形の応力分布曲線に近似するように、表面側、裏面側の少なくとも一方から上下左右対称に厚さを部分的に削減して、基準形の強度を維持しながら基準形より軽くすることを特徴とするローラチェーンのリンクプレートの軽量化方法
  2. 左右の両端部に穴を有するリンクプレートの軽量化方法であって、両端部の外形を各穴と同心円状の形状に設定するとともに厚さが均一な基準形に対し、全体形状を同一にし、有限要素法による応力解析結果を参照して、穴の直近の応力を維持しながら、各穴の中心を通り中心線に対して45°方向の危険断面における応力が穴からの距離に従って一様に減少し、しかも危険断面における応力分布曲線が基準形の応力分布曲線に近似するように、表面側、裏面側の少なくとも一方から上下左右対称に厚さを部分的に削減して、基準形の強度を維持しながら基準形より軽くすることを特徴とするローラチェーンのリンクプレートの軽量化方法
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