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JP4956033B2 - 加熱硬化性シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴム成形体。 - Google Patents

加熱硬化性シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴム成形体。 Download PDF

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Description

本発明は、加熱硬化性シリコーンゴム組成物および該加熱硬化性シリコーンゴム組成物を加熱硬化してなるシリコーンゴム成形体に関する。
シリコーンゴム組成物の押出成形やカレンダー成形などの常圧熱気硬化方法においては、硬化剤として、ハロゲン置換ベンゾイルパーオキサイドが使用されている。しかし、分解生成物の安全衛生上の問題や保存安定性の問題から、ハロゲン置換ベンゾイルパーオキサイドの代替検討がなされている。
例えば、特開昭62−185750号公報には、ビス(4−メチルベンゾイル)ペルオキシドを使用することでオルガノポリシロキサンを架橋する方法が記載されている。しかし、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドからなる硬化剤中に粗大粒子が存在すると、常圧熱気硬化されたシリコーンゴム成形体に白点状の凝集物やボイドが発生するという外観上の問題や、耐高電圧特性などの電気絶縁特性の信頼性が低下したりするという問題があった。
特開平11−246763号公報には、特定範囲の最大粒子径と平均粒子径を有するビス(パラ−メチルベンゾイル)パーオキサイドを含んで成るシリコーンゴム組成物が記載されている。特開2000−53918号公報には、特定範囲の最大粒径を有するp−メチルベンゾイルパーオキサイドを含んで成る電線被覆用シリコーンゴム組成物が記載されている。特開2000−160014号公報には、特定の範囲の最大粒子径と平均一次粒子径を有するビス(p−メチルベンゾイル)パーオキサイドを含んでなるシリコーンゴム組成物が記載されている。特開2003−327830号公報には、特定の平均一次粒子径を有する4−メチルベンゾイルパーオキサイドを使用するシリコーンゴム用架橋剤が記載され、該平均1次粒子径はシリコーンオイル中に分散された4−メチルベンゾイルパーオキサイドの粒子を光学顕微鏡で観察して測定できることが記載されている。
しかし、いずれの架橋剤や組成物も、白点状の凝集物やボイドの発生を抑制したり、耐高電圧特性や電気絶縁特性などの信頼性低下を防止したりする効果が不十分であり、さらなる改善が望まれていた。また、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとシリコーンオイルからなる硬化剤中の粒子には、一次粒子の軟質な凝集物も含まれ、粒子径の測定が容易でないという問題もあった。さらに、本発明者らの検討によれば、1次粒子の軟質凝集物も、上記問題の原因になりえることがわかった。
特開昭62−185750号公報 特開平11−246763号公報 特開2000−53918号公報 特開2000−160014号公報 特開2003−327830号公報
本発明の目的は、本来の外観や特性が損なわれることのないシリコーンゴム成形体を形成しうる加熱硬化性シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴム成形体を提供することにある。
本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、純度が99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、全酸価が1.0mgKOH/g以下であることを特徴とする硬化剤を含んでなることを特徴とする。上記ジオルガノポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
また、本発明のシリコーゴム成形体の製造方法は、上記加熱硬化性シリコーンゴム組成物を加熱硬化することを特徴とする。
また、本発明のシリコーンゴム成形体は、上記シリコーゴム成形体の製造方法により製造されることを特徴とする。シリコーンゴム成形体としては、上記加熱硬化性シリコーンゴム組成物を被覆層とするシリコーンゴム被覆電線が好ましい。
また、加熱硬化性シリコーンゴム組成物用硬化剤は、純度が99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、全酸価が1.0mgKOH/g以下であることを特徴とする。
本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、白点状の凝集物やボイドの発生が抑制された優れた外観のシリコーンゴム成形体を提供し得るという特徴を有する。また、本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴム被覆電線や、電気電子部品用成形材料として好適に使用することができ、優れた耐高電圧特性を有し、信頼性の高い電気絶縁特性を有するシリコーンゴム成形体を製造するための、優れた材料である。したがって、上記加熱硬化性シリコーンゴム組成物を硬化してなることを特徴とする本発明のシリコーンゴム成形体は、白点状の凝集物やボイドの発生が抑制された優れた外観を有し、優れた耐高電圧特性を有し、電気絶縁特性の信頼性が高いという特徴を有する。
本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物に含まれる硬化剤は、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドは、純度99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造され、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物の全酸価が1.0MgKOH/g以下であることを特徴とする。純度が99.7%未満の4−メチルベンゾイルクロライドを原料としてビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドを製造したり、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物の全酸価が1.0MgKOH/gを超えていたりすると、本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物を硬化してなるシリコーンゴム成形体に、ボイドや白点などの外観異常が発生したり、物理物性にばらつきが生じたり、耐高電圧特性の低下やスパークの頻度増加の原因となったりする。
ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドは、4−メチルベンゾイルクロライドを過酸化水素とアルカリ触媒存在下で反応させるなどの公知の方法で製造できる。例えば、特開平11−116808号公報には、メチルベンゾイルクロライド1モルに対して、過酸化水素水をモル比で1〜1.3倍量、アルカリ剤として水酸化ナトリウム等をモル比で1〜1.5倍量使用し反応温度0〜30℃で1〜4時間反応させビス(メチルベンゾイル)パーオキサイドを製造する方法が記載されている。また、特開2003−327830号公報には、4−メチルベンゾイルクロライドと過酸化ソーダを反応させてビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドを製造する方法が記載されている。ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドの原料である4−メチルベンゾイルクロライドの純度は99.7%以上である必要があり、2−メチルベンゾイルクロライドや3−メチルベンゾイルクロライドなどの異性体を実質的に含まないことが好ましい。
ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとを混合する方法は、例えば上記の方法で製造したビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドを水洗後、水分を除去し、ジオルガノポリシロキサンに分散させ3本ロールを通す方法;ジオルガノポリシロキサン存在下でビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドを製造し、水洗してから水分を除去する方法などの公知の方法を用いることができる。特開2003−327830には、上記の方法で製造したビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドを水洗後、クロロホルムに溶解してメタノールで再結晶化し、ジメチルシリコーンオイルに分散させ3本ロールを通す方法が記載されている。
ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物中、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドの含有量は、安全性とシリコーンゴム組成物への配合の容易さの観点から20〜80質量%であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。
ここで、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドと混合されるジオルガノポリシロキサンは、上記硬化剤の安定性、安全性、シリコーンゴム組成物への分散性を向上するための成分であり、直鎖状、もしくは一部に分岐構造を有する分子構造を有し、25℃における粘度が50mPa・s〜1,000,000mPa・sであることが好ましく、25℃における粘度が100mPa・s〜100,000mPa・sであることが特に好ましい。ケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜のアルキル基;フェニル基、ナフチル等のアリール基;トリル基、ベンジル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基が例示され、好ましくはメチル基である。
ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンの混合物の全酸価は、JIS K−2501:1980「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準じた下記の方法で測定することができる。すなわち;
試料m(g)を精秤し、アセトンと蒸留水の1:1混合物を加えて均一な溶液にし、フェノールフタレイン指示薬を加えた後、不活性ガス雰囲気下でN/20水酸化カリウム規定液で滴定する。滴定に要したN/20水酸化カリウム規定液の量(ml)をvとする。また、上記で使用したアセトンと蒸留水の1:1混合物にフェノールフタレイン指示薬を加えて、同一操作で空試験を行い、その際のvに相当する滴定量(ml)をvとする。全酸価は下記計算式によって算出し、式中FはKOHの分子量(56.1)に水酸化カリウム規定液の規定度(1/20)を乗じた2.8である。
全酸価(KOH mg/g)=F×(v−v)/m
ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物には、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドの安定性や加熱硬化性シリコーンゴム組成物やシリコーンゴム成形体の特性に悪影響に与えない従来公知の添加剤を、必要に応じて配合してもよい。このような添加剤としては、シリカや石英粉末などの無機充填剤が例示される。
本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、上記ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンの混合物からなる硬化剤を含んでなることを特徴とする。本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、オルガノポリシロキサン(A)、微粉末状シリカ(B)および上記硬化剤(C)からなることが好ましい。
オルガノポリシロキサン(A)は、上記加熱硬化性シリコーンゴム組成物の主成分であり、硬化剤(C)中のビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドの作用により架橋する。成分(A)は、直鎖状または一部に分岐を有する分子構造を有するジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。また、成分(A)は一分子中に少なくとも2個のビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基を有することが好ましく、中でもビニル基を有することが好ましい。アルケニル基は、分子鎖末端に存在してもよく、分子鎖側鎖に存在してもよく、また、分子鎖末端と分子鎖側鎖の両方に存在してもよい。アルケニル基以外のケイ素原子に結合した基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素原子数1〜のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;トリル基、ベンジル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基が例示され、好ましくはメチル基である。また、分子鎖末端などに少量の水酸基を有していてもよい。
成分(A)の具体例としては、下記のジオルガノポリシロキサンが例示される。
分子鎖両末端水酸基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端水酸基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン・共重合体、分子鎖両末端水酸基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端水酸基封鎖ジフェニルシロキサン・ビニルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端水酸基封鎖(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端水酸基封鎖(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体。
成分(A)は25℃において液状であっても半固体の生ゴム状であってもよいが、重量平均分子量100,000以上の生ゴム状であることが好ましい。生ゴム状の成分(A)としては、重量平均分子量が200,000〜9,000,000の範囲であることがより好ましく、450,000〜4,500,000の範囲であることが特に好ましい。成分(A)の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定することができる。
微粉末状シリカ(B)は、本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させて得られるシリコーンゴム成形体に優れた機械的強度を付与するための成分である。このような微粉末状シリカとしては、ヒュームドシリカ等の乾式法シリカ、沈殿シリカ等の湿式法シリカが挙げられ、さらにそれらの表面が、オルガノクロロシラン、ヘキサオルガノシラザン、ジオルガノシクロポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で疎水化処理された微粉末状シリカも使用できる。本成分はその比表面積が50m/g以上であることが好ましい。本成分の配合量は成分(A)100質量部に対して、10〜100質量部の範囲である。10質量部未満であると機械的強度が低下し、100質量部を超えると成分(A)への配合が困難になるためである。
ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンの混合物からなる硬化剤(C)は、上記したとおりであり、その配合量は、上記オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部の範囲内であり、0.5〜1質量部の範囲内であることが好ましい。また、他の有機過酸化物や、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒などのヒドロシリル化反応触媒からなるヒドロシリル化反応を利用した硬化剤を併用してもよい。
本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、好ましくは、上記した成分(A)〜成分(C)からなるが、これらの成分に加えて、必要に応じて、従来からシリコーンゴム組成物に配合されることが公知とされている各種の添加剤、例えば、両末端シラノール基封鎖ジオルガノシロキサンオリゴマー、ヘキサオルガノジシラザン等のクレープハードニング防止剤;他の補強性充填剤;けいそう土、石英粉末、マイカ、クレイ、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタン、γ型三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化亜鉛、ベンガラ、カーボンブラック等の無機質充填剤;白金化合物、炭酸亜鉛、炭酸マンガン等の難燃性付与剤;酸化鉄、水酸化セリウム、酸化セリウム、セリウムジメチルシラノレート、脂肪酸セリウム塩等の耐熱性付与剤;ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸またはそれらの金属塩等の金型離型剤;顔料;発泡剤を配合することは、本発明の目的を損なわない限り差し支えない。
本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、上記した成分(A)〜成分(C)を均一に混合することによって容易に製造されるが、成分(A)と成分(B)を混練して均一な混合物とした後、成分(C)を配合して製造することが好ましい。成分(A)が生ゴム状である場合は、予め成分(A)と成分(B)をニーダーミキサーのようなバッチ式混合機や、2軸連続混練押出機のような連続混練機等で均一に混練した後、2本ロール等の混練手段を用いて成分(C)を配合することが好ましい。成分(A)が液状である場合は、予め成分(A)と成分(B)をプラネタリーミキサーやフロージェットミキサー等で均一に混合した後、成分(C)を配合することが好ましい。ここで、成分(A)と成分(B)を混合する際の温度は、室温〜250℃が好ましく、室温〜180℃がより好ましい。成分(C)を配合する際の温度は60℃以下が好ましく、40℃以下であることがより好ましい。
本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物を硬化させてシリコーンゴム成形体を製造する方法としては、押出成形、カレンダー成形、圧縮成形、注入成形、射出成形など従来公知の成形方法を加熱硬化性シリコーンゴム組成物の性状と目的物であるシリコーンゴム成形体の形状に応じて適宜選択すればよい。中でも、本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、常圧開放雰囲気下で良好なシリコーンゴム成形体を与えるので、常圧熱気硬化方法による押出し成形やカレンダリング成形に好適に使用することができる。常圧熱気硬化の場合は、本発明の熱硬化性シリコーンゴム組成物を150〜600℃の温度条件で硬化させることが好ましい。また、本発明の熱硬化性シリコーンゴム組成物は比較的速い硬化速度を有しているので、低温温度条件を要する圧縮成形や射出成形、あるいはサイクルタイムを短縮した圧縮成形や射出成形などにも好適に使用することができる。このような金型を用いた成形方法においては、例えば、80〜250℃の温度条件で硬化させることが好ましい。
上記のシリコーンゴム成形体は、チューブやシート状のシリコーンゴム単体の成形体であってもよく、各種プラスチック、ゴム、金属、ガラス、布などとの複合成形体であってもよい。前記複合成形体の好ましい例として、本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物で導体芯線を被覆したシリコーンゴム被覆電線が挙げられる。
次に、本発明を実施例、比較例により説明する。本発明は、これらの実施例、比較例によりなんら限定されるものではない。
[硬化剤の調製]
99.4%から99.9%の範囲の純度の4−メチルベンゾイルクロライドから製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド粒状物50質量部と12,500mPa・sの両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン50質量部を混合し、3本ロールを通して硬化剤を調製した。
[加熱硬化性シリコーンゴム組成物1の調製]
ジメチルシロキサン単位99.6モル%とメチルビニルシロキサン単位0.4モル%からなる両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖オルガノポリシロキサン生ゴム(重量平均分子量350,000)100質量部、25℃における粘度が60mPa・sの両末端ジメチルヒドロキシシリル基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー30質量部、比表面積300m/gのヒュームドシリカ70質量部をニーダーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混練した。次いで、この混合物100質量部に対して、表1に記載した特性を有する硬化剤1.3質量部を2本ロール上で配合して、加熱硬化性シリコーンゴム組成物1を調製した。
[加熱硬化性シリコーンゴム組成物2の調製]
ジメチルシロキサン単位99.6モル%とメチルビニルシロキサン単位0.4モル%からなる両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖オルガノポリシロキサン生ゴム(重量平均分子量350,000)100質量部、25℃における粘度が60mPa・sの両末端ジメチルヒドロキシシリル基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー11質量部、比表面積200m/gのヒュームドシリカ45質量部、平均粒子径が10μmである石英粉末10質量部をニーダーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混練した。次いで、この混合物100質量部に対して、表2に記載した特性を有する硬化剤1.3質量部を2本ロール上で配合して、加熱硬化性シリコーンゴム組成物2を調製した。
[実施例1、比較例1〜4]
上記の加熱硬化性シリコーンゴム組成物1を、2本ロールを用いて十分に脱気し、100mm×100mm×1mm(縦×横×厚さ)のプレフォームとし、オーブン中に150℃×20分間放置して硬化させた。得られた試験片中央付近の5cm×5cmの範囲における50μm以上の白点状の凝集物の数を、株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVH−6200を用いて目視で計数し、表1に示した。
[実施例2、比較例5〜8]
上記の加熱硬化性シリコーンゴム組成物2を内径65mmの1軸押出機に投入し、クロスヘッド内で直径0.9mmの芯線にシリコーンゴム組成物を被覆し、400℃の熱風加熱炉(全長7.2m)中に線速20m/分の速度で通して、外径が2.2mmのシリコーンゴム被覆電線を製造した。さらにこの加硫炉の後にスパークテスターを設置して、スパークの頻度を測定した。また、ここで製造したシリコーンゴム被覆電線の絶縁破壊電圧を測定した。これらの測定結果を後記する表2に示した。
4−メチルベンゾイルクロライドの純度、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイとジメチルポリシロキサンの混合物の全酸価、スパークの頻度、シリコーンゴム被覆電線の絶縁破壊電圧は次のように測定した。
[4−メチルベンゾイルクロライドの純度]
ガスクロマトグラフィーによりその純度を測定した。
[全酸価]
JIS K−2501:1980「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」に準じた以下の方法で測定した。
硬化剤1.0g(試料量り採り量:m(g))を200ml共栓付き三角フラスコに精秤し、アセトン30ml、蒸留水30mlを加え、振り混ぜて均一な溶液にし、フェノールフタレイン指示薬3滴を加えた後、三角フラスコ内の空気を窒素ガスで置換しながらオートビュレットを用いて、N/20水酸化カリウム規定液で滴定する。滴定に要したN/20水酸化カリウム規定液の量(ml)をvとする。また、アセトン30mlと蒸留水30mlを振り混ぜて均一な溶液にし、フェノールフタレイン指示薬3滴を加えて、同一操作で空試験を行い、その際のvに相当する滴定量(ml)をvとする。全酸価は下記計算式によって算出し、式中FはKOHの分子量(56.1)に水酸化カリウム規定液の規定度(1/20)を乗じた2.8である。
全酸価(KOH mg/g)=F×(v−v)/m
[スパークの頻度]
JIS C3005:2000「ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法4.6耐電圧c)スパーク」に準じて、表1に示す交流電圧でそれぞれ20m/1分の速度で1分間電線を流してスパークの回数を調べた。
[シリコーンゴム被覆電線の絶縁破壊電圧]
JIS C3005:2000「ゴム・プラスチック絶縁電線試験方法4.6耐電圧a)水中」に準じて、1mの電線を水中に1時間浸漬してから、1kV/秒で昇圧しながら交流電圧をかけ、電線被覆が絶縁破壊する電圧を調べた。試験は試料1〜5について計5回行った。
Figure 0004956033
Figure 0004956033
実施例1と比較例1、2との対比から、全酸価が1.0mgKOH/g以下の硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、全酸価が1.0mgKOH/gを超える硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物に比べて、該組成物を硬化して得られた試験片中の凝集物が小さく、数も少ないことから、より外観の優れたシリコーンゴム成形体を形成し得ることがわかる。また、硬化剤の全酸価が高くなるにつれ、該組成物を硬化して得られた試験片中に粒子径の大きな粗大粒子が増え、凝集物の数も多くなることがわかる。
実施例1と比較例3の対比から、純度99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドからなる硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、純度が99.7%未満の原料から製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドからなる硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物に比べて、該組成物を硬化して得られた試験片中の凝集物が小さく、数も少ないことから、より外観の優れたシリコーンゴム成形体を形成し得ることがわかる。
実施例1と比較例4の対比から、純度99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドからなり、全酸価が1.0mgKOH/g以下の硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、純度が99.7%未満の原料から製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドからなり、全酸価が1.0mgKOH/gを超える硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物に比べて、該組成物を硬化して得られた試験片中の凝集物が小さく、数も少ないことから、より外観の優れたシリコーンゴム成形体を形成し得ることがわかる。
実施例2と比較例5、6との対比から、全酸価が1.0mgKOH/g以下の硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物より製造されたシリコーンゴム被覆電線は、全酸価が1.0mgKOH/gを超える硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物より製造された被覆電線と比べて、スパークの頻度が少なく絶縁破壊電圧が向上し、より電気絶縁特性の信頼性にすぐれることがわかる。また、硬化剤の全酸価が高くなるにつれ、スパークの頻度が増加することがわかる。
実施例2と比較例7との対比から、純度99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドからなる硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物から製造されたシリコーンゴム被覆電線は、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドの原料の純度が99.7%未満の硬化剤を含有する加熱硬化性シリコーンゴム組成物から製造された被覆電線と比べて、スパークの頻度が少なく絶縁破壊電圧が向上し、より電気絶縁特性の信頼性にすぐれることがわかる。
本発明の加熱硬化性シリコーンゴム組成物は、白点状の凝集物やボイドの発生の抑制された優れた外観を有し、耐高電圧特性に優れ、電気絶縁特性の信頼性が高いシリコーンゴム成形体を形成し得るので、幅広い用途に使用することができる。特に、透明性、外観の均一性や意匠性が必要とされる用途で、押し出し成形やカレンダー成形によって成形されるシリコーンゴムチューブやシリコーンゴムシートなどのシリコーンゴム製品;信頼性の高い電気絶縁特性が必要とされるシリコーンゴム被覆電線や電気・電子機器部品として有用である。

Claims (6)

  1. 純度が99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、全酸価が1.0mgKOH/g以下であることを特徴とする硬化剤を含んでなる加熱硬化性シリコーンゴム組成物。
  2. ジオルガノポリシロキサンがジメチルポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物。
  3. 純度が99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、全酸価が1.0mgKOH/g以下であることを特徴とする硬化剤を配合して得られた加熱硬化性シリコーンゴム組成物を加熱硬化することを特徴とするシリコーンゴム成形体の製造方法。
  4. 請求項3記載のシリコーンゴム成形体の製造方法により製造されたことを特徴とするシリコーンゴム成形体。
  5. 請求項1に記載の加熱硬化性シリコーンゴム組成物を被覆層とすることを特徴とするシリコーンゴム被覆電線。
  6. 純度が99.7%以上の4−メチルベンゾイルクロライドを原料として製造されたビス(4−メチルベンゾイル)パーオキサイドとジオルガノポリシロキサンとの混合物からなり、全酸価が1.0mgKOH/g以下であることを特徴とする加熱硬化性シリコーンゴム組成物用硬化剤。

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