JP4954362B2 - 高分子電解質型燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子電解質型燃料電池の製造方法、特に触媒層の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高分子電解質型燃料電池の電極は、一般的に白金やルテニウムなどの貴金属を触媒成分とする触媒層を、多孔質導電性基材上に形成したものが用いられる。通常、これらの触媒層の形成方法は、貴金属を担持した炭素微粉末と、水素イオン伝導性高分子電解質の溶液と、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒とを混合してインク化し、このインクをスクリーン印刷法やスプレー法を用いて、基材となるカーボンペーパー上に成形するのが一般的である。このようにして作製した電極を、電解質膜を介してホットプレスにより接合し、電極電解質膜接合体を作製する。これ以外にも、化学的に不活性な高分子フィルム上に触媒層を形成した後に、これを電解質膜に転写する方法も提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
高分子電解質型燃料電池は燃料ガスに一酸化炭素が混入していると、性能が低下する。この原因は、触媒層中の白金が一酸化炭素で被毒されることによる。
【0004】
また、カーボンペーパーなどの多孔性電極基材上に形成する触媒層は、基本的に単層であるのが一般的であり、これを多層化することは難しい。例えば、スクリーン印刷などの手法により触媒層を多層化することも製法としては可能であるが、2層目の塗工においては、先に形成した触媒層が印刷圧により破壊される危険性がある。また、仮に塗工が出来たとしても、その界面では2層が混ざり合った中間層的な層が必然的に生じ、2つの触媒層が切り替わる境界が曖昧になる。これにより触媒層多層化の効果が薄れる。また、このような多孔性導電性基材上に触媒層を2層以上形成する製造方法は、工程が複雑となり量産化には不適である。
【0005】
また、多孔性電極基材上に電極を形成する場合、多孔性電極基材中に触媒層が入り込み触媒利用率の低下が起こると共に、基材の表面形状に触媒層が左右され、均一な厚みの触媒層の形成が困難となる。また、多孔性電極基材は、ガス拡散層の役割も果たしているたので、触媒層が入り込むことによりガス拡散性も阻害されるため、電極構造としては理想的ではない。
【0006】
また、高分子フィルム上に触媒層を形成する方法に関しては、電極インクの粘度を高める必要がある。このために高沸点のアルコールや粘度調製剤を入れるのが一般的である。この場合、電極インク塗工工程後の乾燥や焼成を十分行う等の必要性がある。また、これらの処理が不十分な場合には、電池特性が低下するなどの問題がある。さらに、電極インクの粘度が低い場合には、乾燥工程に時間をかけて穏やかに乾燥させる必要がある。また塗膜にクラックが生じたり、塗膜の均一性が損なわれる可能性がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するため本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法は、化学的に不活性な多孔性シート上に、触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質とを含有する電極インクを塗布し、半乾燥状態の塗膜を形成し、乾燥した後、前記塗膜を水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表両側に転写する工程を複数回繰り返す工程、または、化学的に不活性な多孔性シート上に、触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質とを含有する2種以上の電極インクを順次塗布し、半乾燥状態の塗膜を形成し、乾燥した後、前記塗膜を水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表両側に転写する工程を有することを特徴とする。
【0008】
このとき、本発明の製造方法で得られる高分子電解質型燃料電池の電極は、水素イオン伝導性高分子電解質膜に接する第1触媒層と、前記第1触媒層の上に形成した第2触媒層とを有し、前記第1触媒層を構成する触媒成分は白金であり、前記第2触媒層を構成する触媒成分は白金と、これに加えてルテニウム、パラジウム、ロジウム、ニッケル、イリジウム、鉄からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を有することが有効である。
【0011】
このとき、化学的に不活性な多孔性シートは、撥水処理がされていることが有用である。
【0012】
また、化学的に不活性な多孔性シートは、気体透過率の異なる2種類以上のシートが積層されていることが有用である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法で得られる高分子電解質型燃料電池は、触媒層を不連続な2層で構成しているので、触媒層間の界面で2層の触媒が混ざり合うことがない。よって、本来の触媒層多層化の効果がより顕著に現れる。また、燃料ガスに改質ガスを用いる場合は、改質ガス中のCOが白金電極を被毒することが知られている。この場合、高分子電解質膜と接しない第2の触媒層に白金とルテニウム、パラジウムなどの多元系の触媒を用いた触媒層をアノードとして使用すると、この第2層が改質ガス中のCOを酸化し、第1層で本来の電極反応を行うことが出来るために、電池特性が著しく向上する。
【0014】
また、本発明の高分子電解質型燃料電池の製造方法は、多孔性シートの基材上に、2種類以上の電極インクを順次塗工した後に、高分子電解質膜に転写することにより高分子電解質型燃料電池を製造することが出来るため、連続して多層の触媒層を形成することが出来る。この場合コータ塗工等の採用により、一端触媒層を塗工して乾燥させた後に、次の触媒層を重ねて塗工することが出来る。この方法を用いれば、基材上の触媒層が破壊されることなく、次の触媒層を形成することが可能となり、スクリーン印刷のような境界界面での混合も比較的少なくなる。
【0015】
また、触媒層の高分子電解質膜への転写を2回以上行うことにより、例えば最初の触媒層を転写した後に、別の触媒層をその上から転写することができる。これにより多層の触媒層が形成できる。さらに、この触媒層は転写により多層化を実現しており、それぞれの触媒層が形状を保ったままで2層を構成しているので、界面で触媒が混じり合うことなく2層が独立して形成されている。
【0016】
さらに、本発明の固体高分子電解質型燃料電池の製造方法は、適当な気体透過率を有する多孔性シート基材上に電極触媒層を形成するため、電極触媒インク中の溶媒成分が塗工後速やかに多孔性シートに含浸し、半乾燥状態の塗膜を形成することができる。これにより従来粘度調整のために用いていた、高沸点アルコールや粘度調整剤を用いる必要が無くなる。これにより、電池性能の低下も回避できる。また、低粘度のインクでも触媒層が形成でき、溶媒の選択範囲が広がる。また、塗工後、塗膜はすでに半乾燥状態でするので、塗膜の均一性が保たれると同時に、乾燥時のクラックの発生が低減できる。また、多孔性シートに撥水処理を施すことにより、基材への触媒成分の浸透が低減できると共に、転写時の離型性が向上する。さらに、気体透過率の異なる多孔性シートの貼り合わせ品を用いることにより、基材中への触媒の入り込みを極少にできる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の電解質型燃料電池およびその製造方法について図面を参照して述べる。
【0018】
(参考例1)
まず、電極用インクを2種類作製した。25重量%の白金を担持したカーボン粉末に、5重量%のナフィオン溶液(アルドリッチ製)と、溶媒として2−プロパノール(IPA)とテルピネオールとを加え、ボールミル法により混合し、電極インクAを作製した。また、50重量%の白金を担持したカーボン粉末に、5重量%のナフィオン溶液、2−プロパノールとテルピネオールを加え、先と同様に混合して電極インクBを作製した。
【0019】
これらのインクを、図1に示すコータ塗工装置を用いて、基材上に触媒層を形成した。図1において、基材としては、ポリエステルフィルム(厚み50μm、幅250mm)を使用した。塗料タンク3に電極インクBを入れた後、コータ装置の巻出し部1からポリエステルフィルム2を送り、塗工を行った。塗工は、塗料タンクからスリット状のノズルを経てフィルム上に塗布される。この時のノズルとフィルムのギャップは50〜250μm、送り速度は1m/分に設定した。触媒層が塗布されたフィルムを、温度100℃、風量10m3に設定された乾燥室4に送ることにより、フィルム上に触媒B層5を形成した。
【0020】
次に、電極インクAが満たされた塗料タンク6から、スリット上のノズルを経て塗料を触媒B層の上に塗工を行った。この後、先と同様の条件に設定した乾燥室7で乾燥させて、触媒A層8を形成した。このように作製した触媒層付きフィルムは、コータ装置の巻き取り部9で回収した。以上の工程で作成した触媒層付きフィルムをフィルムAとした。
【0021】
また、これとは別に先と同様の装置で、第2の塗工部6と乾燥室7がないコータ装置を用いて、フィルム上に電極インクBのみを塗工、乾燥し、巻き取って、触媒層付きフィルムを作製した。このフィルムをフィルムBとした。
【0022】
また、電極インクAのみを塗工、乾燥し、巻き取って触媒層付きフィルムを作製した。このフィルムをフィルムCとした。
【0023】
以上の工程で作製したフィルムの触媒層の表面には、クラック等の発生も認められなかった。このフィルムAの断面の様子を観察した結果、触媒層A1+触媒層B2の厚みは約15μm、触媒層B1よ触媒層A1の厚みは約8μmであった。これより触媒層A1と触媒層B1は、わずかに混ざり合っている部分が見られるものの、基本的に不連続な分離された2層で構成されていることが分かった。
【0024】
次に、フィルムAとフィルムBとを、高分子電解質膜(Nafion112、デュポン製)を挟んで、ホットローラを用いて接合し、電極電解質接合体を作製した。接合温度は100℃、接合の加圧力は3×107Paで行った。この工程で作成したものを電極電解質接合体Aとした。
【0025】
また、触媒層付きフィルム2を2つ準備し、高分子電解質膜を挟んで先と同様にホットローラーを用いて転写を行った後、一方の側に触媒層付きフィルムを配して、再度ホットローラーを用いて触媒層B1の上に触媒層A1を形成し、電極電解質接合体Bを作製した。この電極電解質接合体Bの断面観察を行ったのが図5である。これより触媒層B1と触媒層A1の境界は、触媒の混ざりあいがなく、不連続な2層から構成されていることが分かった。接合後のポリエステルフィルム上には、触媒層の固形分の残存は認められず、どちらの転写も良好であった。
【0026】
さらに、比較のために電極基材上にスクリーン印刷法で電極インクB、電極インクAを塗工し、電極電解質接合体Cを作製した。まず、所定の大きさのカーボンペーパーを印刷機にセットして、電極インクBを塗工した。この時のスクリーンはステンレス製200メッシュのものを使用した。これを80℃に設定された乾燥器中で乾燥させ触媒層B2をカーボンペーパー上に形成した。これを再度スクリーン印刷機にセットして、同様に電極インクAを塗工し、乾燥させ触媒層A2を触媒層B2上に形成し、触媒層付き電極基材1を作製した。これとは別に、先と同様の装置を用いて、カーボンペーパー上に触媒層A2のみを形成した触媒層付き電極基材2も作製した。触媒層付き電極基材1の断面を観察したのが図6である。これより触媒層A2と触媒層B2の界面は各々の層が混ざり合った混合層が形成されているのが分かった。この触媒層付き電極基材1と触媒層付き電極基材2を膜を介してホットプレスにより接合し、電極電解質接合体Cを作製した。
【0027】
次に、電極電解質接合体A、Bを所定の大きさに打ち抜き、カーボンペーパーとガスケットを介して挟み込み、電極−電解質接合体Cはガスケットを両側に配し、各々多層化した触媒層が燃料極となるようにして、単電池試験装置にセットし電池特性を調べた。作製した単電池には、燃料極に改質模擬ガス(二酸化炭素25%、一酸化炭素50ppm、水素バランスガス)を、空気極には空気を流し、電池温度を80℃、燃料利用率を80%、空気利用率を40%、加湿は改質模擬ガスを75℃、空気を60℃の露点になるように調整した。
【0028】
図7に、それぞれの電池の電流−電圧特性を比較して示した。これより電極電解質接合体Bを用いた電池の特性がもっとも優れていることが分かった。また、電極電解質接合体Cを用いたものはもっとも性能が低くなった。これは接合体Cの燃料極側では、本来、膜と接していない触媒層B2で一酸化炭素が効率よく酸化除去されるはずであるが、触媒層B2と触媒層A2の境界が混ざり合っているため、その効果が低下したものと考えられた。これに対して、接合体Bは燃料極側の触媒層B1と触媒層A1の界面で、各々が混ざり合っていないため、触媒層B1で一酸化炭素を効率よく除去し、触媒層A1への影響を極力低くできたものと考えられた。また、接合体Aでは、接合体Bを用いたものよりも特性は少し劣ったが、触媒層の混合が接合体Cに比べて非常に小さく、接合体Cを用いたものよりも特性は良かった。ここでは示さなかったが、電極インクBの白金ルテニウムを担持したカーボン粉末のかわりに、白金パラジウム、白金ロジウム、白金ニッケル、白金イリジウム、白金鉄を担持したカーボン粉末を用いた場合にも白金ルテニウム担持カーボンと同程度の特性を示した。
【0029】
本方法を用いれば、電極電解質接合体の触媒層の多層化を実現することが出来る。また、従来考えられている多層化の方法よりも、より特性の高い高分子電解質型燃料電池を作製することが出来る。
【0030】
(実施例1)
まず、25重量%の白金を担持したカーボン粉末、5重量%のNafion溶液(アルドリッチ製)、溶媒として2−プロパノール(IPA)と酢酸ブチルを加え、ボールミル法により混合し、電極用インクCを作製した。このインクの粘度は、参考例1で使用した電極インクA、Bよりも低く、せん断速度100(1/sec)の時に10(mPa・s)とした。
【0031】
まず、参考例1で使用した塗工装置2を用いて、多孔性シート上に電極触媒層を形成した。多孔性シートは、太さ50デニールのポリエステル繊維の織布とこの織布に撥水処理を施した2種類と参考例1で使用した通常のポリエステルフィルムを使用した。織布の厚みは約0.1mmである。電極インクCを塗料タンク6に入れ、塗工装置の操作速度を5m/minにして、撥水処理無しのポリエステル織布上に触媒層を形成した後、100℃の乾燥室で乾燥して最終的に巻き取った。乾燥時間は参考例1の1.5倍として行った。塗工直後、電極インク中の溶媒成分は、速やかにポリエステル織布上に浸透した。この時、わずかに織布の裏側に触媒成分が浸透しているのが確認された。乾燥後の塗膜には、クラック等の発生は認められなかった。
【0032】
また、撥水処理を施したポリエステル織布を用いた場合には、無処理よりも触媒成分の浸透は少なく、塗膜の表面形状は良くなった。また、形成された触媒層の膜厚は共に約10μmであった。これに対してポリエステルフィルムに塗工した同様に塗工した場合には、電極インク中の溶媒成分がフィルム上に残るため、塗膜が不安定で、固着しにくく、乾燥後の触媒層塗膜には塗りムラが見られた。これは、塗料の粘度が低いため塗工後の塗膜が形状を維持できなくなり、乾燥時に塗膜のかたよりが生じてしまったためと考えられた。
【0033】
このようにして作製した電極シートを2つ用意し、参考例1で用いたホットローラーを用いて、電解質膜(Nafion112)の両側に接合し、電極ー電解質接合体D(無撥水処理織布使用)、電極電解質接合体E(撥水処理織布使用)、電極−電解質接合体F(フィルム使用)を作製した。接合条件等は参考例1と同じにした。接合後の無撥水処理のポリエステル織布には、わずかに触媒インク固形分の残存が見られたが、撥水処理を施したものには、触媒インク固形分の残存はほとんど見られず、より転写が良好に行われていることが分かった。また、ポリエステルフィルムを用い場合、接合はうまく行うことが出来たが、塗膜形成時のムラがそのまま電解質膜側に転写されていた。
【0034】
また次に、多孔性シートとして、通気度が35secの多孔質テフロンシートと通気度が5sec以下のポリエステル織布がラミネートされた複合シートを用い塗工を行った。通気度はJIS規格の通気性試験(JISP8117)により、645.16mm2の面積の試料を空気100mlが通過するのにかかる平均秒数として示した。つまり、この値が高いほどガスの通気性が悪く、どちらかと言えば素材が緻密になっていることを示す。電極インク、塗工装置、塗工条件等は先に示したポリエステル織布を用いた場合と同じにした。塗工する面はポリエステル織布側とした。塗工直後、電極インク中の溶媒成分は、速やかに表側のポリエステル織布に浸透したが、先のポリエステル織布を用いたときに見られたような裏面への触媒成分の浸透は全く見られなかった。これは裏面側の多孔質テフロンシートの通気度が低く、素材が緻密になっているので触媒成分が目止めされた形になったものと推察された。また乾燥後の塗膜には、クラック等の発生は認めらなかった。
【0035】
このようにして作製した電極シートを先と同様にホットローラーを用いて接合し、電極電解質接合体Gを作製した。接合後の複合シートのポリエステル織布上には、触媒インク固形分の残存は全く見られなかった。
【0036】
次に、電極−電解質接合体D,E,F,Gを所定の大きさに打ち抜き、カーボンペーパーとガスケットを介して挟み込み、単電池試験装置にセットし電池特性を調べた。作製した単電池には、燃料極に水素ガスを、空気極には空気を流し、電池温度を80℃、燃料利用率を80%、空気利用率を40%、加湿は改質模擬ガスを75℃、空気を60℃の露点になるように調整した。図8に、それぞれの電池の電流−電圧特性を比較して示した。これより電極−電解質接合体Gを用いた電池の特性がもっとも優れていることが分かった。
【0037】
また、転写性の良好な順に電池特性も良くなっていることが分かった。
【0038】
本方法を用いれば、適当な気体透過率を有する多孔性シート基材上に電極触媒層を形成するため、電極触媒インク中の溶媒成分が塗工後速やかに多孔性シートに含浸し、半乾燥状態の移動しない塗膜を形成することができる。これにより従来粘度調整のために用いていたテルピネオールなどの粘度調整剤を用いる必要が無くなる。これにより、電池性能の低下も回避できる。また、低粘度のインクでも触媒層が形成でき、溶媒の選択範囲が広がる。また、気体透過率の異なる多孔性シートの貼り合わせ品を用いることにより、基材中への触媒の入り込みが無くなる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、燃料電池の触媒層を2層化することで、特性を向上することが出来た。さらに、本発明は多孔性シートの基材上に2種類以上の電極インクを順次塗工した後に、高分子電解質膜に転写することにより高分子電解質型燃料電池を製造することが出来るため、連続して多層の触媒層を形成することが出来る。この場合コータ塗工等の採用により、一端触媒層を塗工して乾燥させた後に、次の触媒層を重ねて塗工することが出来る。この方法を用いれば、基材上の触媒層が破壊されることなく、次の触媒層を形成することが出来、スクリーン印刷のような境界界面での混合も比較的少なくなる。
【0040】
また、触媒層の高分子電解質膜への転写を2回以上行うことにより、例えば最初の触媒層を転写した後に、別の触媒層をその上から転写することができる。これにより多層の触媒層が形成できる。さらに、この触媒層は転写により多層化を実現しており、それぞれの触媒層が形状を保ったままで2層を構成しているので、界面で触媒が混じり合うことなく形成されている。
【0041】
さらに、適当な気体透過率を有する多孔性シート基材上に電極触媒層を形成するため、電極触媒インク中の溶媒成分が塗工後速やかに多孔性シートに含浸し、半乾燥状態の塗膜を形成することができる。これにより従来粘度調整のために用いていた、高沸点アルコールや粘度調整剤を用いる必要が無くなる。これにより、電池性能の低下も回避できる。また、低粘度のインクでも触媒層が形成でき、溶媒の選択範囲が広がる。また、塗工後、塗膜はすでに半乾燥状態で固定化しているので、塗膜の均一性が保たれると同時に、乾燥時のクラックの発生が低減できる。また、気体透過率の異なる多孔性シートの貼り合わせ品を用いることにより、基材中への触媒の入り込みが極少になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例で用いた第1の製造装置を示す図
【図2】 本発明の参考例で用いた第2の製造装置を示す図
【図3】 本発明の参考例の構成要素である触媒層付きフィルムの断面を示す図
【図4】 本発明の参考例で用いた第3の製造装置を示す図
【図5】 本発明の参考例の構成要素である電極電解質接合体の断面を示す図
【図6】 本発明の参考例の構成要素である触媒層付き電極基材の断面を示す図
【図7】 本発明の参考例である高分子電解質型燃料電池の特性を示す図
【図8】 本発明の実施例である高分子電解質型燃料電池の特性を示す図
【符号の説明】
1,9 コ−タ装置の巻き出し部
2 ポリエステルフィルム
3,6 燃料タンク
4,7 乾燥室
5 触媒B層
8 触媒A層
9 コ−タ装置の巻き取り部
10 高分子電解質膜
11 ホットロ−ラ−
12 電極電解質接合体
A1 触媒層A1
B1 触媒層B1
Claims (3)
- 化学的に不活性な多孔性シート上に、触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質とを含有する電極インクを塗布し、半乾燥状態の塗膜を形成し、乾燥した後、前記塗膜を水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表両側に転写する工程を複数回繰り返す工程、または、化学的に不活性な多孔性シート上に、触媒粒子と水素イオン伝導性高分子電解質とを含有する2種以上の電極インクを順次塗布し、半乾燥状態の塗膜を形成し、乾燥した後、前記塗膜を水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表両側に転写する工程を有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池の製造方法。
- 化学的に不活性な多孔性シートは、撥水処理がされていることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
- 化学的に不活性な多孔性シートは、気体透過率の異なる2種類以上のシートが積層されていることを特徴とする請求項1または2記載の高分子電解質型燃料電池の製造方法。
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