JP4952186B2 - 二次電池用非水系電解液及びそれを用いた二次電池 - Google Patents
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Description
(1)前記二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和が、面積比で20倍以上である。
(2)前記二次電池の直流抵抗成分が、10ミリオーム(mΩ)以下である。
(3)前記二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量が、3アンペアーアワー(Ah)以上である。
本発明の二次電池用非水系電解液は、常用の非水系電解液と同じく、電解質及びこれを溶解する非水溶媒を含有する。
電解質としては、リチウム二次電池用非水系電解液の電解質として用い得ることが知られているリチウム塩であれば特に制限はないが、例えば次のものが挙げられる。
非水溶媒は、従来から非水系電解液の溶媒として提案されているものの中から、適宜選択して用いることができる。例えば、次のものが挙げられる。
環状カーボネートを構成するアルキレン基の炭素数は2〜6が好ましく、特に好ましくは2〜4である。具体的には例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジアルキルカーボネートが好ましく、構成するアルキル基の炭素数は、それぞれ、1〜5が好ましく、特に好ましくは1〜4である。具体的には例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等のジアルキルカーボネートが挙げられる。中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。
具体的には例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等が挙げられる。
(4)鎖状エステル
具体的には例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル等が挙げられる。
(5)環状エーテル
具体的には例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
(6)鎖状エーテル
具体的には例えば、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等が挙げられる。
(7)含硫黄有機溶媒
具体的には例えば、スルフォラン、ジエチルスルホン等が挙げられる。
本発明の非水系電解液は、ジフルオロリン酸塩を含有することを特徴とする。ジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu等の金属元素イオンの他、NR1R2R3R4(式中、R1〜R4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウムが挙げられる。
本発明の非水系電解液は、更にビニレンカーボネートを含有することを特徴とする。本発明において、非水系電解液全体に占めるビニレンカーボネートの割合は、0.001質量%以上であるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。また、3質量%以下であり、好ましくは2.8質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下である。ビニレンカーボネートの濃度が低すぎると、サイクル特性の改善効果が得られ難い場合があり、一方、濃度が高すぎると、電池の低温特性の低下を招く場合がある。
本発明の非水系電解液は、非水溶媒に、電解質リチウム塩、ジフルオロリン酸塩及び必要に応じて他の化合物を溶解することにより調製することができる。すなわち、本発明の非水系電解液においては、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意で他の化合物を適切な任意の量で使用することができる。このような他の化合物としては、例えば、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等の過充電防止剤;ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等の負極被膜形成剤;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、プロパンスルトン、ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド等の正極保護剤等が挙げられる。
以下に、本発明の非水系電解液二次電池について詳細に記す。
電池形状は特に限定されるものではないが、有底筒型形状、有底角型形状、薄型形状、シート形状状、ペーパー形状が挙げられる。システムや機器に組み込まれる際に、容積効率を高めて収納性を上げるために、電池周辺に配置される周辺システムへの収まりを考慮した馬蹄形、櫛型形状等の異型のものであってもよい。電池内部の熱を効率よく外部に放出する観点から、比較的平らで大面積の面を少なくとも一つを有する角型形状が好ましい。
本発明の充放電可能な二次電池は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極及び負極、本発明の上記非水系電解液、正極と負極の間に配設されるセパレータ、集電端子、及び外装ケース等によって少なくとも構成される。要すれば、電池の内部及び/又は電池の外部に保護素子を装着してもよい。
以下に本発明の非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
[[正極活物質]]
以下に正極に使用される正極活物質について述べる。
[[[組成]]]
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はない。リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましく、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物等が挙げられる。
また、これら正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質が付着したものを用いることもできる。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
本発明における正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐため好ましい。また、板状等軸配向性の粒子であるよりも球状ないし楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作製する際の導電剤との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
正極活物質のタップ密度は、通常1.3g/cm3以上、好ましくは1.5g/cm3以上、更に好ましくは1.6g/cm3以上、最も好ましくは1.7g/cm3以上である。正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、通常2.9g/cm3以下、好ましくは2.7g/cm3以下である。
粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、最も好ましくは3μm以上であり、上限は通常20μm以下、好ましくは18μm以下、より好ましくは16μm以下、最も好ましくは15μm以下である。上記下限を下回ると、高嵩密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作製すなわち活物質と導電剤やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上混合することで、正極作製時の充填性を更に向上させることもできる。
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、正極活物質の平均一次粒子径としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.08μm以上、最も好ましくは0.1μm以上であり、上限は通常3μm以下、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.6μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。
本発明の二次電池に供する正極活物質のBET比表面積は、0.2m2/g以上、好ましくは0.3m2/g以上、更に好ましくは0.4m2/g以上であり、上限は4.0m2/g以下、好ましくは2.5m2/g以下、更に好ましくは1.5m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法、また、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
以下に、本発明に使用される正極の構成について述べる。
[[[電極構造と作製法]]]
正極は、正極活物質粒子と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば良いが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電剤、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和が面積比で20倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
本発明の非水系電解液を用いる場合、二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量(電池を満充電状態から放電状態まで放電したときの電気容量)が、3アンペアーアワー(Ah)以上であると、低温放電特性の向上効果が大きくなるため特に好ましい。そのため、正極板は、放電容量が満充電で、3アンペアアワー(Ah)以上20Ah未満になるように設計することが好ましく、更に4Ah以上10Ah未満がより好ましい。3Ah未満では、大電流の取り出し時に電極反応抵抗による電圧低下が大きくなり電力効率が悪くなる場合がある。この場合、低温放電特性も悪化し、ビニレンカーボネートとジフルオロリン酸リチウムを含有する本発明の非水系電解液を用いた場合に得られる低温放電特性の向上が不十分になる場合がある。20Ah以上では、電極反応抵抗が小さくなり電力効率は良くなるが、パルス充放電時の電池内部発熱による温度分布が大きく、充放電繰り返しの耐久性が劣り、また、過充電や内部短絡等の異常時の急激な発熱に対して放熱効率も悪くなり、内圧が上昇してガス放出弁が作動する現象(弁作動)、電池内容物が外に激しく噴出する現象(破裂)に至る確率が上がる場合がある。
正極板の厚さは特に限定されるものではないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、上限としては、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
以下に本発明の非水系電解液二次電池に使用される負極について説明する。
[[負極活物質]]
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。
[[[組成]]]
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質;炭素質物質[例えば天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、或いはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物(例えば、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、或いは乾留液化油等の石炭系重質油、常圧残油、減圧残油の直流系重質油、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等分解系石油重質油、更に、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジン等のN環化合物、チオフェン、ビチオフェン等のS環化合物、ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、含窒素性のポリアクニロニトリル、ポリピロール等の有機高分子、含硫黄性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロースに代表される多糖類等の天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂)及びこれらの炭化物、または炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物]を400から3200℃の範囲で一回以上熱処理された炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ち且つ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ち且つ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。
炭素質材料についての性質や炭素質材料を含有する負極電極及び電極化手法、集電体、リチウムイオン二次電池については、次に示す(1)〜(19)の何れか1項又は複数項を同時に満たしていることが望ましい。
炭素質材料は、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、0.335nm以上であることが好ましく、上限は、通常0.360nm以下、好ましくは0.350nm以下、更に好ましくは0.345nm以下であることが望まれる。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、中でも1.5nm以上であることが更に好ましい。
炭素質材料中に含まれる灰分は、炭素質材料の全質量に対して、1質量%以下、中でも0.5質量%以下、特に0.1質量%以下、下限としては1ppm以上であることが好ましい。上記の範囲を上回ると充放電時の電解液との反応による電池性能の劣化が無視できなくなる場合がある。この範囲を下回ると、製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要とし、コストが上昇する場合がある。
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)が、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは7μm以上である。また、上限は、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下である。上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した炭素質材料のラマンR値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.1以上、上限としては、通常1.5以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.5以下の範囲である。R値がこの範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向し易くなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、この範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
・アルゴンイオンレーザー波長:514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm-1
・測定範囲 :1100cm-1〜1730cm-1
・R値、半値幅解析 :バックグラウンド処理、
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
BET法を用いて測定した炭素質材料の比表面積は、通常0.1m2/g以上、好ましくは0.7m2/g以上、より好ましくは1.0m2/g以上、更に好ましくは1.5m2/g以上である。上限は、通常100m2/g以下、好ましくは25m2/g以下、より好ましくは15m2/g以下、更に好ましくは10m2/g以下である。比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなり易く、リチウムが電極表面で析出し易くなるため、安全上の問題が生ずる場合がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなり易く、好ましい電池が得られにくい場合がある。
炭素質材料の細孔径分布は、Hgポロシオメトリー(水銀圧入法)により求められる、細孔の直径が0.01μm以上、1μm以下に相当する粒子内の空隙、粒子表面のステップによる凹凸、粒子間の接触面等の量が、0.01mL/g以上、好ましくは0.05mL/g以上、より好ましくは0.1mL/g以上、上限として0.6mL/g以下、好ましくは0.4mL/g以下、より好ましくは0.3mL/g以下の範囲である。この範囲を上回ると、極板化時にバインダーが多量に必要となる場合がある。下回ると、高電流密度充放電特性が低下し、且つ充放電時の電極の膨張収縮の緩和効果が得られない場合がある。
炭素質材料の球形の程度として円形度を用い、その粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度が0.1以上が好ましく、より好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.85以上、最も好ましくは0.9以上である。円形度が大きいと高電流密度充放電特性が向上するため好ましい。
円形度
=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)
炭素質材料の真密度は、通常1.4g/cm3以上、好ましくは1.6g/cm3以上、より好ましくは1.8g/cm3以上、更に好ましくは2.0g/cm3以上であり、上限としては2.26g/cm3以下である。上限は黒鉛の理論値である。この範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。本発明においては、真密度は、ブタノールを使用した液相置換法(ピクノメータ法)によって測定したもので定義する。
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g/cm3以上、好ましくは0.5g/cm3以上、更に好ましくは0.7g/cm3以上、特に好ましくは1.0g/cm3以上であることが望まれる。また上限は、好ましくは2.0g/cm3以下、更に好ましくは1.8g/cm3以下、特に好ましくは1.6g/cm3以下である。タップ密度がこの範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。一方、この範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。タップ密度は、正極活物質の項で記載した方法と同様の方法で測定され定義される。
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、上限は、理論上0.67以下の範囲である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
アスペクト比は理論上1以上であり、上限としては、通常10以下、好ましくは8以下、更に好ましくは5以下である。上限を上回ると、極板化時にスジ引きがあったり、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
「副材混合」とは、負極電極中及び/又は負極活物質中に性質の異なる炭素質材料を2種以上含有していることである。ここで述べた性質とは、X線回折パラメータ、メジアン径、アスペクト比、BET比表面積、配向比、ラマンR値、タップ密度、真密度、細孔分布、円形度、灰分量の一つ以上の特性を示す。
電極の製造は、常法によればよい。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。電池の電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限は、通常150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下である。この範囲を上回ると、電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。また、負極活物質をロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極としても良い。
集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
(1)平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体基板の負極活物質薄膜形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.15μm以上であり、上限は、通常1.5μm以下、好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
集電体基板の引張強度は、特に制限されないが、通常100N/mm2以上、好ましくは250N/mm2以上、更に好ましくは400N/mm2以上、特に好ましくは500N/mm2以上である。
集電体基板の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N/mm2以上、好ましくは150N/mm2以上、特に好ましくは300N/mm2以上である。
集電体と活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)が150以下であることが好ましく、より好ましくは20以下、特に好ましくは10以下であり、下限は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.4以上、特に好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、好ましくは1.0g/cm3以上、より好ましくは1.2g/cm3、更に好ましくは1.3g/cm3以上であり、上限として2.0g/cm3以下、好ましくは1.9g/cm3以下、よりに好ましくは1.8g/cm3以下、更に好ましくは1.7g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
活物質を結着するバインダーとしては、電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
極板配向比は、0.001以上が好ましく、より好ましくは0.005以上、特好ましくは0.01以上、上限は理論値である0.67以下である。この範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
・測定範囲、及び、ステップ角度/計測時間:
(110)面:76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面:53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
・試料調製 :硝子板に0.1mm厚さの両面テープで電極を固定
放電状態から公称容量の60%まで充電した時の負極の抵抗が100Ω以下が好ましく、より好ましくは50Ω以下、特に好ましくは20Ω以下、及び/又は二重層容量が1.0×10−6F以上が好ましく、より好ましくは1.0×10−5F、特に好ましくは1.0×10−4Fである。この範囲であると出力特性が良く好ましい。
本発明のリチウム二次電池で用いられるセパレータは、両極間を電子的に絶縁する所定の機械的強度を有し、イオン透過度が大きく、かつ、正極と接する側における酸化性と負極側における還元性への耐性を兼ね備えるものであれば特に限定されるものではない。このような要求特性を有するセパレータの材質として、樹脂、無機物、ガラス繊維等が用いられる。前記樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。具体的には、電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等を用いるのが好ましい。
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による低温放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にする必要がある。こうした内部抵抗が小さい場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解質に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを厚さ20μmのアルミ箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ80μmに圧延したものを幅52mm、長さ830mmに切り出し、正極とした。ただし、表裏とも長さ方向に50mmの無塗工部を設けてあり、活物質層の長さは780mmである。
人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名)98重量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100重量部、及び、スチレン・ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン・ブタジエンゴムの濃度50質量%)2重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを負極集電体である厚さ18μmの銅箔上の両面に均一に塗布し、乾燥後、更にプレス機で85μmに圧延したものを幅56mm、長さ850mmに切り出し、負極とした。ただし、表裏とも長さ方向に30mmの無塗工部を設けてある。
乾燥アルゴン雰囲気下で、精製したエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比3:3:4の混合溶媒に、1mol/Lの濃度で、充分に乾燥したヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させ、非水系電解液(1)を調製した。更に、この非水系電解液(1)に、
Inorganic Nuclear Chemistry Letters(1969),5(7)の第581頁〜第582頁に記載の方法に従って製造したジフルオロリン酸リチウムを0.5質量%となるように含有させ、非水系電解液(2)を調製した。
正極と負極を、正極と負極が直接接触しないようにポリエチレン製のセパレータとともに重ねて捲回し、電極体とした。正極及び負極の端子が外部に出るようにして電池缶に収容した。次いで、これに後述する電解液を5mL注入した後、かしめ成形を行い、18650型円筒電池を作製した。
(初期充放電)
作製した円筒状電池を、25℃において0.2Cの定電流定電圧充電法で4.2Vまで充電した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを5サイクル行って電池を安定させた。このときの第5サイクルの放電容量を初期容量とした。なお、1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。
初期充放電を実施した電池を、60℃において、1Cの定電流定電圧で4.2Vまで充電した後、1Cの定電流で3.0Vまで放電する充放電を500サイクル行った。このときの第1サイクル放電容量に対する第500サイクル放電容量の割合をサイクル維持率とした。
初期充放電を実施した電池を、25℃において、0.2Cの定電流定電圧充電法で4.2Vまで充電した後、−30℃において0.2Cの定電流放電を実施した。このときの放電容量を初期低温容量とし、初期容量に対する初期低温容量の割合を初期低温放電率とした。
非水系電解液(2)に、全電解液質量に対して、1質量%となる量のビニレンカーボネート(以下、「VC」と略記する)を混合し、非水系電解液(3)を調製した。この非水系電解液(3)を用いて、18650型電池を作製し、サイクル維持率及び低温放電率を測定した。結果を表1に示す。なお、初期充放電終了後の電池から遠心分離機にて電解液を回収し、VCの量を測定したところ、0.40質量%であった。
非水系電解液(1)を用いて、実施例1と同様にして、18650型電池を作製し、サイクル維持率及び低温放電率を測定した。結果を表1に示す。
非水系電解液(1)に、全電解液質量に対して、1質量%となる量のVCを混合し、非水系電解液(4)を調製した。この非水系電解液(4)を用いて、実施例1と同様にして、18650型電池を作製し、サイクル維持率及び低温放電率を測定した。結果を表1に示す。なお、初期充放電終了後の電池から遠心分離機にて電解液を回収し、VCの量を測定したところ、0.22質量%であった。
非水系電解液(2)を用いて、VCを混合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、18650型電池を作製し、サイクル維持率及び低温放電率を測定した。結果を表1に示す。
非水系電解液(2)に、全電解液質量に対して5質量%となる量のVCを混合し、非水系電解液(5)を調製した。実施例1において、この非水系電解液(5)を用いて18650型電池を作製し、サイクル維持率及び低温放電率を測定した。結果を表1に示す。
<正極の作製>
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミ箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ80μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅100mm、長さ100mm及び幅30mmの未塗工部を有する形状に切り出し、正極とした。
人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名)98重量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100重量部、及び、スチレン・ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン・ブタジエンゴムの濃度50質量%)2重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔の両面に塗布して乾燥し、プレス機で厚さ75μmに圧延したものを、活物質層のサイズとして幅104mm、長さ104mm及び幅30mmの未塗工部を有する形状に切り出し、負極とした。
正極32枚と負極33枚は交互となるように配置し、各電極の間に多孔製ポリエチレンシートのセパレータ(厚さ25μm)が挟まれるよう積層した。この際、正極活物質面が負極活物質面内から外れないよう対面させた。この正極と負極それぞれについての未塗工部同士を溶接して集電タブを作製し、電極群としたものを電池缶(外寸:120×110×10mm)に封入した。その後、電極群を装填した電池缶に非水系電解液(3)を20mL注入して、電極に充分浸透させ、密閉し角型電池を作製した。
実施例2において、非水系電解液(3)の代わりに非水系電解液(1)を用いて角型電池を作製し、サイクル維持率及び低温放電率を測定した。結果を表1に示す。
実施例2において、非水系電解液(3)の代わりに非水系電解液(4)を用いて角型電池を作製し、サイクル維持率及び低温放電率を測定した。結果を表1に示す。
実施例2において、非水系電解液(3)の代わりに非水系電解液(2)を用いて角型電池を作製し、サイクル維持率及び低温放電率を測定した。結果を表1に示す。
Claims (6)
- 少なくとも、非水溶媒、リチウム塩及びビニレンカーボネートを含有する二次電池用非水系電解液であって、該ビニレンカーボネートの含有量が、電解液総質量の0.001質量%から3質量%の範囲にあり、更に、ジフルオロリン酸塩を電解液総質量に対し10ppm以上含有することを特徴とする二次電池用非水系電解液。
- ジフルオロリン酸塩の含有量が、電解液総質量に対し0.01質量%以上、3質量%以下である請求項1記載の二次電池用非水系電解液。
- リチウム塩が、少なくとも、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する請求項1又は請求項2記載の二次電池用非水系電解液。
- ジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びNR1R2R3R4(式中、R1〜R4は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表わす。)からなる群より選ばれた1種以上である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の二次電池用非水系電解液。
- 少なくとも、非水系電解液、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極並びに正極を備えた非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が、請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の二次電池用非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
- 少なくとも、非水系電解液、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極並びに正極を備えた非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が、請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の二次電池用非水系電解液であり、かつ、下記(1)、(2)及び/又は(3)の性質を有することを特徴とする非水系電解液二次電池。
(1)前記二次電池の外装の表面積に対する前記正極の電極面積の総和が、面積比で20倍以上である。
(2)前記二次電池の直流抵抗成分が、10ミリオーム(mΩ)以下である。
(3)前記二次電池の1個の電池外装に収納される電池要素のもつ電気容量が、3アンペアーアワー(Ah)以上である。
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