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JP4948324B2 - 高分子柔軟電極が付されたエレクトロデバイス - Google Patents

高分子柔軟電極が付されたエレクトロデバイス Download PDF

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JP4948324B2
JP4948324B2 JP2007213074A JP2007213074A JP4948324B2 JP 4948324 B2 JP4948324 B2 JP 4948324B2 JP 2007213074 A JP2007213074 A JP 2007213074A JP 2007213074 A JP2007213074 A JP 2007213074A JP 4948324 B2 JP4948324 B2 JP 4948324B2
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望 須郷
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Description

本発明は、可撓性のエレクトロデバイスを作製するために用いられる高分子柔軟電極が付された高分子アクチュエータのようなエレクトロデバイスに関する。
従来、様々な分野において種々のエレクトロデバイスが用いられているが、昨今、特に可撓性のエレクトロデバイスに注目が集まっている。可撓性エレクトロデバイスとして、高分子アクチュエータや高分子センサー等の研究例が報告されている。
例えば可撓性高分子センサーは、曲面への設置が可能であり、将来的には人工皮膚への応用も期待される。また、高分子アクチュエータは、電場駆動する高分子材料に電極を付したものであり、高分子の特性である柔軟性を生かして、従来のチタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のようなセラミック系アクチュエータでは達成できないような大きな変形、ストロークが可能である。さらに高分子アクチュエータは、軽量であること、構造が単純であるので小型化が比較的容易であること等の特性を有しているため、医療機器分野、マイクロマシン分野、産業用ロボット分野、パーソナルロボット分野等で需要が高まってきている。
このような高分子アクチュエータとして、例えば出力/質量比、及び出力/容積比が優れる高分子誘電体を用いたものが報告されている(例えば特許文献1〜3、及び非特許文献1)。これらの高分子アクチュエータは、数100〜1000V以上の電圧を印加するとその膜面方向に大きく拡張する。
高分子アクチュエータの動作は、諸説あるが、加えた電場によって生じる静電気力からのマクスウェル応力が主な駆動源となると考えられている。マクスウェル応力は帯電した電極間に生じる力であり、したがってこの力を利用するアクチュエータの構成は、誘電性のエラストマー膜の相対する面に少なくとも2つ以上の電極を互いに絶縁した状態で設ける必要がある。もっとも単純には電極−誘電性エラストマー膜−電極からなる積層体は高分子アクチュエータとして機能する。かかるアクチュエータは本質的に圧電性を利用したものであるため、例えば上記した膜に変形を加えた場合には電圧を発生するためセンサーとしても利用することができる。
高分子アクチュエータにおいて電極は重要な役割を果たす。電極は、従来、金蒸着膜や金薄膜、アルミ箔等が用いられていた。しかしながら、金蒸着膜や金薄膜の電極は高分子材料の大きな変形に追随できず破断しやすいといった問題がある。さらに金製の膜の作製は煩雑な上、コストが高い。またアルミ箔の電極はその硬さに起因して高分子材料の柔軟性を損なわせたり、電場駆動する高分子アクチュエータの変形を抑制したりする結果、十分に可撓できないという問題がある。
これらの問題点に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、特願2006−043930号を特許出願した。すなわち、熱可塑性エラストマーとカーボンナノファイバーからなる高分子柔軟電極、特にはポリスチレンとポリオレフィンとのブロック共重合体である熱可塑性エラストマーとカーボンナノファイバーとからなる高分子柔軟電極を見出し、さらには当該高分子柔軟電極が高分子アクチュエータ用の電極として好適に利用できる。
特表2003−506858号公報 特表2003−526213号公報 特許2698716号公報 ソフトアクチュエータ開発の最前線、193頁、エヌティーエス、 2004年
本発明者は、特願2006−043930号の出願後も鋭意検討を続けた結果、特定の構造を持つブロック共重合体とカーボンナノファイバーとからなる高分子柔軟電極が、より高い耐久性を有し、またこれを採用した高分子アクチュエータの耐繰り返し変形性が向上することを見出し、本件発明をするに至った。
本件発明は、可撓性のエレクトロデバイスを作製するために用いられるもので、導電特性及び耐久性に優れ、大きな変形に追随できる柔軟性を有し、簡便かつ安価で、生産効率が高い高分子柔軟電極、及びその高分子柔軟電極を採用した高分子アクチュエータのようなエレクトロデバイスを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたエレクトロデバイスは、下記一般式(1)
Figure 0004948324
(式中、Rは炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、分岐アルキル基、アリール基から選ばれる基であり、Arは置換基を有していてもよいアリール基を示す)で表される繰り返し単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(A)と該重合体ブロック(A)とは異なる少なくとも1つの重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体(X)と、カーボンナノファイバーとを含む高分子柔軟電極が、誘電性柔軟基材の表面に付されていることを特徴とする。
請求項2に記載のエレクトロデバイスは、請求項1に記載されたもので、前記重合体ブロック(A)が、α−メチルスチレンの重合体ブロックであることを特徴とする。
請求項3に記載のエレクトロデバイスは、請求項1または2に記載されたもので、前記重合体ブロック(B)が、置換基を有していてもよい炭素数4〜8の共役アルカジエンの重合体ブロック、又はそれの炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役アルカジエンの重合体ブロックであることを特徴とする。
請求項4に記載のエレクトロデバイスは、請求項1〜3のいずれかに記載されたもので、前記ブロック共重合体(X)の100質量部と、前記カーボンナノファイバーの10〜200質量部とを含むことを特徴とする。
請求項5に記載のエレクトロデバイスは、請求項1〜4のいずれかに記載の高分子柔軟電極が、誘電性柔軟基材の表面の一部に付されていることを特徴とする。
請求項6に記載のエレクトロデバイスは、請求項1〜4のいずれかに記載されたもので、前記誘電性柔軟基材が、(メタ)アクリレートを主成分とするブロック共重合体からなることを特徴とする。
請求項7に記載のエレクトロデバイスは、請求項1〜6のいずれかに記載されたもので、高分子アクチュエータ、コンデンサ、センサーであることを特徴とする。
本発明の高分子柔軟電極は、ブロック共重合体がバインダーとして機能し、カーボンナノファイバーが導電性を提示するので、優れた柔軟性、繰り返し変形に対する高い耐久性、及び良好な導電特性を有し、延伸しても優れた導電特性を維持する。
また、この高分子柔軟電極は、誘電性柔軟基材膜との接着性に優れている。従って、この高分子柔軟電極が誘電性柔軟基材膜に付された高分子アクチュエータは、電極に電界を印加して電場駆動すると、電極がその大きな変形に追随して、破断することなく大きく延伸したり変形したりするという優れた可撓性を示す。さらに、高分子アクチュエータを繰り返し動作させても高分子柔軟電極と誘電性柔軟基材膜とが剥離することがなく、高い耐久性を有している。
発明を実施するための好ましい形態
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
本発明の高分子柔軟電極を構成するブロック共重合体(X)は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を持つ重合体ブロック(A)と、この重合体ブロック(A)とは異なりなおかつ重合体ブロック(A)とは相分離する重合体ブロック(B)とを、各々少なくとも1つずつ含んでいる。
重合体ブロック(A)を構成するモノマーとしては、例えばα−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α-イソプロピルスチレン、α-ブチルスチレン、α-イソブチルスチレン、α−sec−ブチルスチレン、α−t−ブチルスチレン、α−ペンチルスチレン、α−t−ペンチルスチレン、α−ネオペンチルスチレン、α−ヘキシルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等のα置換スチレン誘導体;4,α−ジメチルスチレン、4−エチル−α−メチルスチレン、4−プロピル−α−メチルスチレン、4−イソプロピル−α−メチルスチレン、4−ブチル−α−メチルスチレン、4−イソブチル−α−メチルスチレン、4−t−ブチル−α−メチルスチレン、3,4,α−トリメチルスチレン、2,3,α−トリメチルスチレン、2,3−ジエチル−α−メチルスチレン、4,α−ジエチルスチレン等、芳香環上に置換基を有するα置換スチレン誘導体が挙げられる。
これらの中でも、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン、4,α―ジメチルスチレンは重合体の製造が容易であるため好ましい。さらに、α−メチルスチレン、4,α−メチルスチレンは、それらの重合体を高分子柔軟電極に採用した際その電極に優れた耐久性を与えるため、特に好ましい。これらは単独重合して重合体ブロック(A)を構成してもよく、2種類以上を組み合わせて重合し重合体ブロック(A)を構成してもよい。
α位に置換基を有するスチレン誘導体を繰り返し単位とした重合体ブロックは、構造上3級炭素を有していないため、重合体の劣化の要因の一つであるラジカルによる水素引き抜き反応が起こりにくい。従って前記重合体ブロック(A)は、耐ラジカル安定性や耐酸化性に優れている。
前記重合体ブロック(A)の数平均分子量については特に制限はないが、1000〜500000の範囲にあることが好ましく、3000〜300000の範囲にあるとより好ましい。
前記重合体ブロック(A)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン等のスチレン誘導体;エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン等のオレフィン類;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−シクロヘキサジエン等の共役アルカジエン類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体類;(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール等のアルコール類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のハロゲン化オレフィン類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。このような他のモノマーの含有量は、1〜20質量部、特に0.01〜5質量部であると、本発明の効果を損なうことがないため好ましい。
重合体ブロック(B)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ3−メチル−1−ペンテン、ポリオクテン、ポリイソブチレン等のオレフィン系重合体ブロック;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の酢酸ビニル系重合体ブロック;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート、ポリ(2−アミノエチル)(メタ)アクリレート、ポリベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系重合体ブロック;ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリイソプレン、ポリ(1,3−シクロヘキサジエン)、水添ポリ(1,3−シクロヘキサジエン)等の共役ジエン系重合体ブロック;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル、ポリエトキシエチルビニルエーテル等のビニルエーテル系重合体ブロック;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン含有ビニル系重合体ブロック;(メタ)アクリロニトリル等のアクリロニトリル系重合体ブロック;ポリメチルビニルケトン、ポリメチルイソプロペニルケトン、ポリエチルビニルケトン、ポリエチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系重合体ブロック;ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチル)(メタ)アクリルアミド、ポリ(N,N−ジエチル)(メタ)アクリルアミド、ポリ(N−イソプロピル)(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系重合体ブロック;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラヒドロフラン等のポリエーテル系重合体ブロック;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−メチル−δ−バレロラクトン)等のポリエステル系重合体ブロック;ポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−6,12、ポリアミド−6T、ポリアミド−12T、ポリアミド−9T等のポリアミド系重合体ブロック;ポリイミド系重合体ブロック;ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系重合体ブロック等が挙げられる。
また、重合体ブロック(B)は、上述した重合体ブロックの構成モノマーを共重合して得られる共重合体ブロック、例えばスチレン−ブタジエン重合体ブロックのような共重合体ブロックであってもよい。
柔軟性に優れ、なおかつ変形に伴う膜の延伸に耐え得る高分子柔軟電極を得るためには、前記重合体ブロック(B)はゴム状であることが好ましい。ゴム状の重合体ブロック(B)としては、ポリブテン、ポリオクテン、ポリイソブチレン等のゴム状ポリオレフィンブロック;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系重合体ブロック;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体等のゴム状ポリ共役アルカジエンブロック;水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体等のゴム状水添ポリ共役アルカジエンブロック;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル等のゴム状ポリビニルエーテルブロック;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラヒドロフラン等のポリエーテル系ブロック等が挙げられる。これらの中でも、ゴム状ポリ共役アルカジエンブロック、ゴム状水添ポリ共役アルカジエンブロックはゴムとしての延伸性に優れるため好ましく、特にゴム状水添ポリ共役アルカジエンブロックは耐候性、耐酸化性にも優れるためより好ましい。
前記重合体ブロック(B)の数平均分子量については特に制限はないが、1000〜500000の範囲にあることが好ましく、3000〜300000の範囲にあるとより好ましい。
前記ブロック共重合体(X)を構成する重合体ブロック(A)(以下(A)と略す)と重合体ブロック(B)(以下(B)と略す)とのブロックシーケンスについては、特に制限は無いが、例えば(A)−(B)で表されるジブロック体、(A)−(B)−(A)又は(B)−(A)−(B)で表されるトリブロック体、(A)−(B)−(A)−(B)で表されるテトラブロック体、(A)−(B)−(A)−(B)−(A)又は(B)−(A)−(B)−(A)−(B)で表されるペンタブロック体等が挙げられる。高分子柔軟電極とした際の弾性、さらにはその高分子柔軟電極を使用したエレクトロデバイスや高分子アクチュエータの性能を考慮すると、前記した中でも(A)−(B)−(A)で表されるトリブロック体、又は(A)−(B)−(A)−(B)−(A)で表されるペンタブロック体であることが好ましい。特に、(A)−(B)−(A)で表されるトリブロック体は製造が容易であるためより好ましい。
前記ブロック共重合体(X)は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)とは別の重合体ブロック(C)を有していてもよい。本発明の効果を損なわない限りにおいては別の重合体ブロック(C)の数に制限はなく、例えば構成要素の異なる重合体ブロック(C1)、重合体ブロック(C2)、重合体ブロック(C3)と任意の数であってよい。重合体ブロック(C)の例としては、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の前記例示に準じる。重合体ブロック(C)の数平均分子量については特に制限はないが、1000〜500000の範囲にあることが好ましく、3000〜300000の範囲にあるとより好ましい。
ブロック共重合体(X)の数平均分子量は2000〜2000000であることが好ましく、10000〜500000であるとより好ましい。ブロック共重合体(X)の数平均分子量がこの範囲内であると、ブロック共重合体(X)及びそれを用いた高分子柔軟電極の力学的強度が優れる上、成形が容易である。
前記ブロック共重合体(X)の製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法等のリビング重合法;重合体ブロック(A)又は(B)を前駆体として合成した後、その末端から重合体ブロック(B)または(A)を重合する方法;互いに反応しうる官能基を末端に備えた重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを反応させる方法を挙げることができる。ブロック共重合体(X)の製造方法は、目的とするブロック共重合体(X)の構造に応じ適宜選択することができる。
本発明の高分子柔軟電極に用いられるカーボンナノファイバーとしては、例えば気相成長法によって得られる炭素繊維等を好適に用いることができる。この気相成長法によるカーボンナノファイバーは、繊維径が1〜1000nm程度のナノオーダーであり、繊維長が最大30μm程度の極細の繊維状をなすものであり、また結晶性が高いという特徴がある。具体例としては気相法炭素繊維VGCF(昭和電工株式会社製;登録商標)を挙げることができる。
本発明の高分子柔軟電極を構成するブロック共重合体(X)とカーボンナノファイバーとの配合比については、高分子柔軟電極の柔軟性が損なわれない限り特に制限はないが、好ましくはブロック共重合体(X)の100質量部とカーボンナノファイバーの10〜200質量部、より好ましくは20〜150質量部である。カーボンナノファイバーが10質量部未満であると、高分子柔軟電極の導電性が劣るため好ましくなく、200質量部を超えると、高分子柔軟電極の柔軟性が低下するため好ましくない。
高分子柔軟電極は、上述したブロック共重合体(X)とカーボンナノファイバーとに加えて、ブロック共重合体(X)とは異なる高分子(Z)を含んでいてもよい。高分子(Z)の例としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等のポリオレフィン類;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のオレフィン−極性モノマー共重合体類;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、ポリノナメチレンテレフタルアミド、キシリレン基含有ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー類;塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のハロゲン化オレフィン系樹脂;ポリスチレンと(水添)ポリ共役アルカジエンとのブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリメチルメタクリレートとポリn−ブチルアクリレートとのブロック共重合体等の(メタ)アクリル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらの高分子は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
高分子柔軟電極は、本発明の効果を損なわない範囲において添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば可塑剤、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤、粘着剤、粘着付与剤、帯電防止剤が挙げられる。前記可塑剤は、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル等の鉱物油;フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジノニル、アジピン酸ジ2−エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジノニル等のエステル系可塑剤;アクリル酸誘導体オリゴマー;石油樹脂等のオリゴマー類で例示される。また、前記無機充填剤は誘電率や耐熱性、耐候性、力学強度を向上させるために添加するもので、例えば酸化チタン、シリカ、クレイ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、ガラスビーズ、チタン酸ジルコン酸鉛等の無機物で例示される。これらの充填剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、添加剤の配合量は特に制限はないが、ブロック共重合体(X)100質量部に対して添加剤100質量部未満であると好ましく、ブロック共重合体(X)100質量部に対して添加剤70質量部未満であるとより好ましい。この範囲内であると、高分子柔軟電極、及びこれを採用したエレクトロデバイスや高分子アクチュエータの機能性、耐久性が向上する。
本発明の高分子柔軟電極は、その使用目的に応じて種々の形状に成形される。その形状は膜状であることが好ましいが、フィルム状、シート状、板状、繊維状、ロッド状、立方体状、直方体状、球状、ラグビーボール状であってもよく、さらに複雑な形状であってもよい。高分子柔軟電極の成形方法は、種々の成形方法から目的に応じて適宜選択できる。その成形方法としては例えば、押出成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、回転成形法、圧縮成形法、射出成形法、ロール成形法、真空成形法等のように、ブロック共重合体(X)を溶融した状態で行う成形方法;スピンコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー印刷法等のような印刷・コーティング法が挙げられる。また本発明の高分子柔軟電極は、架橋前には熱可塑性を有するため、熱成形を行うこともできる。
前記高分子柔軟電極が膜状である場合、その膜厚は0.1μm〜1cm、好ましくは1μm〜1mm、より好ましくは5μm〜500μmである。前記膜厚が0.1μm未満であると膜の力学的強度に劣るため好ましくなく、1cmを超えると結果的にエレクトロデバイスの電極間距離が大きくなり、従って電極間に働くマクスウェル応力が低下するので、エレクトロデバイスとしての性能が低下してしまい、好ましくない。
本発明の高分子柔軟電極はエレクトロデバイス、特に高分子アクチュエータの電極として有効である。前記高分子柔軟電極と誘電性柔軟基材とを貼り合わせると、エレクトロデバイスが得られる。前記誘電性柔軟基材としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等のポリオレフィン類;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のオレフィン−極性モノマー共重合体類;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、ポリノナメチレンテレフタルアミド、キシリレン基含有ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー類;塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のハロゲン化オレフィン系樹脂;ポリスチレンと(水添)ポリ共役アルカジエンとのブロック共重合体のようなスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリメチルメタクリレートとポリn−ブチルアクリレートとのブロック共重合体のような(メタ)アクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー類が挙げられる。
また誘電性柔軟基材は、ブロック共重合体(X)あるいはこれと同等の要件を満たす高分子であってもよい。前記誘電性柔軟基材がエラストマー類、熱可塑性エラストマー類であると、得られるエレクトロデバイスの可撓性が優れるため好ましい。特に熱可塑性エラストマー類は成形体の形状自由度が高いためより好ましく、熱可塑性エラストマーの中でも高い誘電率を有する(メタ)アクリル系熱可塑性エラストマーであると一層好ましい。また、誘電性柔軟基材は、前記したような添加剤を含有していてもよい。
誘電性柔軟基材の形状には特に制限はなく、例えば膜状、フィルム状、シート状、板状、繊維状、ロッド状、立方体状、直方体状、球状、ラグビーボール状であってもよく、さらに複雑な形状であってもよい。誘電性柔軟基材の形状は、目的とするエレクトロデバイスに応じて適宜選択できる。また前記誘電性柔軟基材は、高分子アクチュエータのストローク量を改良するために初期歪が印加されていてもよい。前記誘電性柔軟基材が膜状である場合、その膜厚は0.1μm〜1cm、好ましくは1μm〜1mm、より好ましくは5μm〜500μmである。前記膜厚がこの範囲内であると、電極間の短絡を避けることができ、なおかつ得られるエレクトロデバイスの性能を損なうことがない。
前記高分子柔軟電極と前記誘電性柔軟基材とを貼り合わせる方法としては制限はなく、例えば、膜状の誘電性柔軟基材の両面に、別途作製した高分子柔軟電極を貼り合わせて熱溶着する方法;誘電性柔軟基材の表面に、高分子柔軟電極の構成要素を溶質あるいは分散体として含んでいるインクを塗布する方法等がある。これらの貼り合わせ方法は、目的とするエレクトロデバイスの形状に応じて適宜選択できる。
高分子柔軟電極をエレクトロデバイスの電極として用いる場合、導電性をさらに高めるため、導電材を薄く細くパターニングした導電膜又は導電線が高分子柔軟電極上に設けられていてもよい。導電材としては例えば、シングルウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、導電カーボン等の炭素系材料;金をはじめとする金属類等が挙げられる。中でも抵抗を考慮すると金属類が好ましい。導電膜又は導電線は、例えば真空蒸着法やイオンスパッタリング法を用いて高分子柔軟電極上に形成される。
本発明の高分子柔軟電極を採用したエレクトロデバイスは、本質的には圧電素子である。前記高分子柔軟電極は、例えばアクチュエータ素子、圧力や力や変位を検知するセンサー素子、変位や力のような機械エネルギーを電気エネルギーに変換するジェネレーター等のエレクトロデバイスの電極として、好適に使用される。
本発明のエレクトロデバイスは、空気中、真空中等、種々の環境において動作可能である。またエレクトロデバイスは、目的に応じて絶縁性を有する樹脂等で封止されていてもよい。
本発明を適用する高分子柔軟電極及び本発明を適用するエレクトロデバイスである高分子アクチュエータを試作した例を実施例1〜3に、本発明を適用外の高分子柔軟電極及び高分子アクチュエータを試作した例を比較例1〜4に、それぞれ示す。なお、特に記載のない溶剤やモノマー等の薬剤については、必要に応じ定法に従い精製したものを使用した。
(合成例1) ポリα−メチルスチレン−b−水添ポリブタジエン−b−ポリα−メチルスチレンの製造
WO 02/40611で開示された方法と同様の方法で、ポリα−メチルスチレン−b−ポリブタジエン−b−ポリα−メチルスチレン型トリブロック共重合体を合成した。得られたトリブロック共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)とを測定したところ、ポリα−メチルスチレン部のMn=6600、Mw/Mn=1.08、全体のMn=80590、Mw/Mn=1.07であり、ポリブタジエンブロックにおける1,4−結合量は58.9%、α−メチルスチレン単位の含有量は28.7質量%であった。なお、GPC測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフHLC−8020(東ソー社製)、カラムとしてTSKgelであるGMHXL、G4000HXL及びG5000HXL(いずれも東ソー社製)を直列に連結したものを用い、溶離液としてテトラヒドロフランを流量1.0ml/分で流した。検出方法は示唆屈折率(RI)とし、標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。また、ポリブタジエンブロック中において、α−メチルスチレンが実質的に共重合されていないことを、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)(日本電子社製核磁気共鳴装置JNM−ECX400;溶媒は重クロロホルム)による組成分析により確認した。
次いで、得られたトリブロック共重合体をシクロヘキサンに溶解させて耐圧容器に仕込み、十分に窒素置換を行った。その後、ニッケル系チーグラー触媒存在下、981kPaの水素圧、80℃の条件において水素添加を実施して、ポリα−メチルスチレン−b−水添ポリブタジエン−b−ポリα−メチルスチレン型トリブロック共重合体(ブロック共重合体(X1))を得た。ブロック共重合体(X1)の水素添加率は99.7%であった。
(合成例2) ポリ(メチルメタクリレート−b−ポリn−ブチルアクリレート−b−ポリメチルメタクリレート)の製造
撹拌装置付き耐圧容器中に、トルエン40kgと、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン94mLと、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム1.1molを含有するトルエン溶液1.8Lとを加え、さらにsec−ブチルリチウム1.3mol/Lのシクロヘキサン溶液を80mL加えた。ここにメチルメタクリレート737gを添加し、40℃で2時間重合した。ついでこの重合系を−30℃まで冷却し、そこにn−ブチルアクリレート4940gをゆっくりと滴下して重合を行った。その後、メチルメタクリレート50gを添加して40℃に昇温し、さらにメチルメタクリレート687gを添加して40℃で2時間重合した。少量のメタノールを添加して重合を停止した。得られたポリ(メチルメタクリレート−b−ポリn−ブチルアクリレート−b−ポリメチルメタクリレート)を200℃でプレス成形し、膜厚60μmの誘電性柔軟基材膜を得た。
なお、得られたポリマーは、Mn=79200、Mw/Mn=1.06であり、各重合体ブロックの割合は、メチルメタクリレート/ポリn−ブチルアクリレート/ポリメチルメタクリレート=11.5/77/11.5であった。
(実施例1) 高分子柔軟電極の作製
合成例1で得られたブロック共重合体(X1)の100質量部と、気相成長炭素繊維VGCF(昭和電工株式会社製;VGCFは登録商標)の30質量部とを、シクロヘキサン2000質量部に溶解、分散させて、分散液を作製した。得られた分散液をテトラフルオロエチレン製シャーレ上にキャストして、膜厚40〜50μmの高分子柔軟電極を得た。
(実施例2) 高分子柔軟電極の作製
実施例1において、VGCFを50質量部にしたこと以外は実施例1と同様にして、膜厚45〜55μmの高分子柔軟電極を得た。
(比較例1) 高分子柔軟電極の作製
ポリスチレン−b−水添ポリイソプレン−b−ポリスチレンであるセプトン2002(株式会社クラレ製の商品名、ポリスチレン含量30質量%)の100質量部と、VGCFの30質量部とをシクロヘキサン2000質量部に溶解、分散させて、分散液を作製した。得られた分散液をテトラフルオロエチレン製シャーレ上にキャストして、膜厚40〜45μmの高分子柔軟電極を得た。
(比較例2) 高分子柔軟電極の作製
実施例1において、VGCFに代えてカーボンブラックであるデンカブラック(電気化学社製の商品名)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、膜厚40〜50μmの高分子柔軟電極を得た。
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた高分子柔軟電極について、引張強度と表面抵抗値とを以下のようにして測定した。
(引張試験)
各電極の薄膜を、縦50mm×幅4mmに切り出した。これを引張試験機オートグラフAG−2000B(島津製作所社製)にセットして、引張強度と引張伸度とを求めた。
(表面抵抗値の測定)
各電極の薄膜を、縦30mm×横10mmに切り出した。その両端をそれぞれ、10mm離した延伸機の二つのクランプに固定した。室温、湿度55%の環境下で両クランプを引き離すことにより薄膜を徐々に延伸し、未延伸時、50%延伸時、100%延伸時における表面抵抗値を抵抗率計ロレスタEP(ダイアインスツルメンツ社製)により測定した。
各測定結果を表1にまとめて示す。
Figure 0004948324
表1から明らかなように、実施例の高分子柔軟電極は大きな引張伸度を有しており、可撓性エレクトロデバイスの電極として用いる際に有効であることが分かる。また平常時及び延伸時における抵抗も低く、電極として高い性能を示す。一方、本発明の要件であるブロック共重合体とは異なるブロック共重合体(ポリスチレン−b−水添ポリイソプレン−b−ポリスチレン)を用いた比較例1の高分子柔軟電極は、引張伸度及び引張強度が不十分であり、可撓性エレクトロデバイス用電極としての性能が不足している。また、カーボンナノファイバーに代えてカーボンブラックを使用した比較例2の電極は抵抗値が大きく、高分子柔軟電極としての性能が優れるとは言い難い。
次に、実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた高分子柔軟電極を用いて、高分子アクチュエータを作製した。
(実施例3) 高分子アクチュエータの作製
合成例2で得られた誘電性柔軟基材膜の中央に、実施例1で作製した分散液を縦0.5cm×横0.75cmの大きさに塗布し、乾燥して高分子柔軟電極を形成した。高分子柔軟電極の膜厚が20μmに達するまで分散液の塗布、乾燥を繰り返し、高分子柔軟電極と、ポリメチルメタクリレート−b−ポリn−ブチルアクリレート−b−ポリメチルメタクリレート型ブロック共重合体との積層体を作製した。なお、同様の積層体を2枚作製した。
次いで得られた2枚の積層体を、ブロック共重合体面が互いに向かい合うように重ね合わせ、小型プレス機を用いて200℃/10分間加熱して積層体同士を貼り合わせ、両面に高分子柔軟電極を備えた高分子アクチュエータを得た。得られた高分子アクチュエータの厚みは90〜110μmであった。
(比較例3、4) 比較高分子アクチュエータの作製
実施例3において、実施例1で作製した分散液に代えて比較例1及び比較例2で作製した分散液をそれぞれ用いたこと以外は実施例3と同様にして、比較高分子アクチュエータを得た。得られた各比較高分子アクチュエータの厚みは、いずれも90〜110μmであった。
実施例3及び比較例3〜4で得られた各高分子アクチュエータについて、以下のようにして動作試験を行った。
(高分子アクチュエータの動作試験)
図1に示した評価セルを用いて試験を行った。誘電性柔軟基材膜3の両面に夫々高分子柔軟電極2・2を備えた高分子アクチュエータ1を、その高分子柔軟電極2の横の長さが2倍となるよう延伸した。中央に穴が開いた穴開きプラスチック板4に延伸した高分子アクチュエータ1をセットし、テフロン(登録商標)のシール6でその両端を固定した。高分子アクチュエータ両面の高分子柔軟電極2・2の夫々にアルミ箔5・5を接触させ、電源回路を内蔵する絶縁抵抗計7(ムサシインテック社製DI−10)に接続した。絶縁抵抗計7の電源回路から1500Vの直流電圧を印加して、高分子アクチュエータ1の動作の様子を目視で観察した。動作が明らかに確認できた場合は○、動作が確認できなかった場合は×とした。
また、10Hzで100000回の繰り返し動作を行った後の高分子アクチュエータの様子、特に誘電性柔軟基材膜と高分子柔軟電極との接合状態、及び高分子柔軟電極表面の状態を目視で確認し、高分子アクチュエータの耐繰り返し変形性について評価した。試験前後に差がない場合は○、高分子柔軟電極に微小なクラックがある、及び/又は高分子柔軟電極と誘電性柔軟基材膜との間に小さな剥離部が観察される場合は△、高分子柔軟電極にクラックがある、及び/又は高分子柔軟電極と誘電性柔軟基材膜との間に剥離が観察される場合は×とした。
さらに、高分子アクチュエータの電極表面の抵抗を抵抗計にて測定し、高分子アクチュエータの導電性保持率を算出した。導電性保持率は、試験前の抵抗をRb、試験後の抵抗をRaとして下記式のように定義した。
導電性保持率(%)=100×(1/Ra)/(1/Rb)
各測定結果を表2にまとめて示す。
Figure 0004948324
表2から明らかなように、実施例3の高分子アクチュエータは初期の動作、繰り返し動作後の外観ともに良好であった。また、高分子柔軟電極の導電性保持率にも優れていた。このことから、本発明の高分子柔軟電極は、高分子アクチュエータのようなエレクトロデバイスの電極として適していることが確認できた。
これに対して、本発明の要件を満たさないブロック共重合体を用いた高分子柔軟電極を採用した比較例3の高分子アクチュエータは、繰り返し動作後に高分子柔軟電極と誘電性柔軟基材膜とが剥離してしまった。また、カーボンナノファイバーを含有していない高分子柔軟電極を採用した比較例4の高分子アクチュエータは、初期動作が確認できず、高分子アクチュエータとしての機能を果たしていなかった。以上のことから、本発明の要件を満たさない高分子柔軟電極は、高分子アクチュエータのようなエレクトロデバイスの電極として適さないことがわかった。
本発明の高分子柔軟電極は、柔軟性、耐久性、導電性、延伸時の導電性に優れているため、エレクトロデバイス、特に高分子アクチュエータのような可撓性エレクトロデバイスの電極として有効に利用することができる。本発明の高分子柔軟電極を採用した高分子アクチュエータは、動作性、耐久性、繰り返し使用時の性能保持性に優れており、例えば人工筋肉として有用である。
高分子アクチュエータの動作確認を行う装置の斜視図である。
1は高分子アクチュエータ、2は高分子柔軟電極、3は誘電性柔軟基材膜、4は穴あきプラスチック板、5はアルミ箔、6はシール、7は電源である。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)
    Figure 0004948324
    (式中、Rは炭素数1〜6の直鎖状アルキル基、分岐アルキル基、アリール基から選ばれる基であり、Arは置換基を有していてもよいアリール基を示す)で表される繰り返し単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(A)と該重合体ブロック(A)とは異なる少なくとも1つの重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体(X)と、カーボンナノファイバーとを含む高分子柔軟電極が、誘電性柔軟基材の表面に付されていることを特徴とするエレクトロデバイス
  2. 前記重合体ブロック(A)が、α−メチルスチレンの重合体ブロックであることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロデバイス
  3. 前記重合体ブロック(B)が、置換基を有していてもよい炭素数4〜8の共役アルカジエンの重合体ブロック、又はそれの炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役アルカジエンの重合体ブロックであることを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトロデバイス
  4. 前記ブロック共重合体(X)の100質量部と、前記カーボンナノファイバーの10〜200質量部とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエレクトロデバイス
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の高分子柔軟電極が、誘電性柔軟基材の表面の一部に付されていることを特徴とするエレクトロデバイス。
  6. 前記誘電性柔軟基材が、(メタ)アクリレートを主成分とするブロック共重合体からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエレクトロデバイス。
  7. 前記エレクトロデバイスが、高分子アクチュエータ、コンデンサ、センサーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエレクトロデバイス。
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