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JP4941896B2 - 耐熱合わせガラス及び耐熱合わせガラス構造物 - Google Patents

耐熱合わせガラス及び耐熱合わせガラス構造物 Download PDF

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Description

本発明は、主に建造物などに採用される窓材として、高い透明性を有し、さらに耐火性、遮熱性や耐熱性等の防火性能と耐貫通性、耐衝撃性等に富む防犯性能とを併せ持つ耐熱合わせガラスと、その耐熱合わせガラスを使用する構造物に関する。
一般に耐貫通性、耐衝撃性を有し、高い防犯性が重視される用途で使用される窓材としては、2枚の板ガラス間にプラスチック等の樹脂材を挟んだ積層構造を有する合わせガラスが使用されている。この合わせガラスは、強度等の機械的な性能に優れているため建造物等の採光を必要とする窓材として大きな価値を持っており、数多くの建造物に利用されている。またこのような合わせガラスは、飛来物等から防護する働きも有するため自動車等の車載用途でも広範に使用され、多くの物理的な付加機能を伴う合わせガラス物品が様々な用途で使用されている。一方、このような合わせガラスは、2枚のガラス板間に挿入される樹脂材の性能を所望の水準となるように調整する等の対応によって、積層時の接着性や樹脂層の耐湿性等を向上させ、さらに積層体を製造する際に、積層構造を構成し易くするといった試みが行われてきている。
また建造物等に使用する窓材では、火災等の際の速い延焼を抑止するため、また加熱された窓が破壊されて飛散することで避難の妨げとなるのを抑止するため、あるいは飛来物による直接的な被災の危険性を防止するという観点等から窓材に積層体の窓ガラスを採用することも行われている。そのため、防火あるいは耐熱といった性能に注目する発明もこれまで多数行われている。
例えば、特許文献1では、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂シートを高周波加熱架橋させることで構成される防犯防弾用複合ガラスが開示されている。特許文献2には、防犯を目的とした窓板ガラスとして、ホウ珪酸ガラス製の板ガラスを使用し、それらの相互間に介在させる中間膜としてテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライドの共重合体を使用する合わせガラスが開示されている。また特許文献3では、2枚の板ガラス間に透明な熱感応型の発泡性を有する発泡層を介在させ、さらにその中央に板状の耐破壊性を有する強化ガラスが組み込まれている積層型の耐火ガラスが開示されている。さらに特許文献4では、板ガラスと樹脂フィルムとを張り合わせた構造の合わせガラスで、板ガラスと樹脂フィルムとを張り合わせる際に使用される接着剤に板ガラスに働く剪断力を低減させるものを使用するという発明も行われている。
特開2003−252658号公報 特開2006−96612号公報 特開平6−170998号公報 特開平7−138051号公報
しかしながら、これまでに開示された発明だけでは、様々な要望に対応する合わせガラスを提供するには十分ではない。近年の社会情勢を反映した防犯意識の向上や繰り返される震災等に対処するといった背景などから、建造物等に使用される窓材に求められる性能は、従来にも増して多様なものとなっている。すなわち耐貫通性や耐衝撃性等の基本的な性能に加えて遮熱性や耐熱性などの防火性、さらに経済的な住環境を構成するための防音性や断熱性等の点にも優れ、しかも高層化が進む建造物などへの施工性が良好なものであるといった点も重要であり、高度な性能、機能を併せ持ち、しかも施工性に富む窓材が求められるようになってきている。
本発明は係る状況に鑑み、耐熱性や遮熱性といった様々な防火性能に優れ、それに加えて衝撃性や貫通性などの高い機械的強度性能を有し、さらに従来の合わせガラスと比較して軽量であるため、高層化した建造物における施工性にも優れた汎用性の高い合わせガラスと、この耐熱合わせガラスによる耐熱合わせガラス構造物の提供を課題とする。
本発明者等は、複数の異なる物理的な性能、すなわち遮熱性等の熱的性能と貫通性等の機械的強度性能、さらに合わせガラス全体の重量を軽量化するという複数の高い水準の要望を同時に満足する合わせガラスに関する研究を行う中で、従来から使用されてきた2枚の板ガラスを単純に合わせた構造とした場合には実現困難であったにもかかわらず、特定の熱的性能を有する3枚以上の1mm未満の厚みの板ガラスを積層することによって、所望の複数の性能を十分に発揮することのできる構成となり、安定した性能を発揮する合わせガラスを得ることができることを見出し、ここに提示するものである。
すなわち、本発明の耐熱合わせガラスは、板厚が1mm未満である3枚以上の板ガラスが、各板ガラス間に介在層を介して積層された合わせガラスであって、前記板ガラスの30℃〜380℃の温度範囲に於ける平均線膨張係数が−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあり、かつ該ガラスのJIS R3103−1(2001)に従う軟化点が830℃以上であり、前記合わせガラスの総厚Tが1.3mmから10mmであって、前記介在層の総厚Sが合わせガラスの総厚Tの3割から6割の範囲にあることを特徴とする。
ここで、板厚が1mm未満である3枚以上の板ガラスが、各板ガラス間に介在層を介して積層された合わせガラスであって、前記板ガラスの30℃〜380℃の温度範囲に於ける平均線膨張係数が−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあり、かつ該ガラスのJIS R3103−1(2001)に従う軟化点が830℃以上であり、前記合わせガラスの総厚Tが1.3mmから10mmであって、前記介在層の総厚Sが合わせガラスの総厚Tの3割から6割の範囲にあるとは、次のようなものである。すなわち、1mm未満の板厚寸法を有する無機ガラス製の薄い厚みの板ガラスを少なくとも3枚積層し、その平行に積層された板ガラス間に2層以上の介在層を配して板ガラスを接合した合わせガラスにおいて、板ガラスのガラス材質が示す熱的な性能として30℃〜380℃の温度範囲についての平均線膨張係数が−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあり、しかも2001年に発行された日本工業規格であるJIS R3103−1に規定された計測方法によって、5±1K/分の速度で直径0.65mm、長さ235mmの円形断面のガラス繊維を加熱した時にガラス繊維の自重で1mm/分の速度でガラス繊維が伸びる温度として測定された軟化温度(リトルトン温度とも呼称する)が830℃以上であって、合わせガラス全体の厚み寸法Tは1.3mmから10mmの範囲内にあり、2以上の介在層の総厚寸法Sが、合わせガラス全体の厚み寸法Tの30%から60%の割合を占めることを意味している。すなわち本発明の合わせガラス全体の厚み寸法Tと2以上の介在層の総厚寸法Sの関係から換算すると、2以上の介在層の総厚寸法Sは、0.39mmから6.0mmの範囲を有するものである。
板ガラスの性能としては上述したように、まず30℃〜380℃の温度範囲についての平均線膨張係数が−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあることが重要である。これはガラスが加熱された場合に50×10-7/Kよりも平均線膨張係数が大きいと、局所的に加熱された際、あるいは一方のガラス表面のみが加熱された際に、加熱されていない箇所と加熱された箇所との膨張差が大きくなり過ぎるので、加熱の初期段階で板ガラスが破損し、ガラス片が周囲に飛散し易くなるため、防災上好ましくない。このように板ガラスの平均線膨張係数は30℃〜380℃の温度範囲において50×10-7/K以下であることが重要である。一方ガラスの平均線膨張係数を−1×10-7/Kよりも小さくする場合には使用するガラスを大きなマイナス膨張を有するものにするため、極めて特殊な結晶化ガラスにする必要があり、別途結晶化工程が増えコストアップ要因となり、好ましくない。また平均線膨張係数の小さいガラス材質は、ガラス原料の溶解に多大なエネルギーを要するため、より好ましくはさらに高い膨張係数の板ガラスを採用することが経費
を小さくすることに繋がる。このような観点からより好ましくは30℃〜380℃の温度範囲についての平均線熱膨張係数は、10×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあることであり、さらに好ましくは30×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあることであり、最も好ましくは31×10-7/Kから48×10-7/Kの範囲とすることである。ちなみに平均線膨張係数の計測は、石英ガラスのように熱膨張係数既知の標準試料によって校正を受けた公知の熱膨張計測機器により計測すればよい。
また軟化点については、JIS R3103−1(2001)に従う計測によって830℃以上の値を有するガラス材質とすることによって、火災などで加熱されたガラス表面が加熱初期に容易に軟化変形し難く、熱的な安定性が高いので好ましい。このような観点から軟化点は、より好ましくは840℃以上であり、さらに好ましくは850℃以上とすることである。また軟化点が高い材質を採用するならば、それだけ熱的に安定なものとなるのは確かであるが、軟化点が高い材質は製造費用が高くなり、合わせガラスの価格も高価なものとなってしまう。このため軟化点にもその上限はあり、その値は1000℃以下とすることであって、より好ましくは995℃以下とすることである。
また本発明の耐熱合わせガラスは、1mm未満の板ガラスが3枚以上積層され、各板ガラス間に介在層を介して積層された構成であって、その板ガラスが上述のような平均線膨張係数や軟化点等の熱的性能を有するものであり、さらに加えて板ガラス1枚の厚みが薄いので、熱エネルギーが速やかに板ガラスの厚み方向に伝播しやすく、温度分布の偏りに起因するガラスの熱的な破壊が生じにくい構成となっている。例えば、この合わせガラスでは透光面を地面に対して水平になるように保持した状態で板ガラスの上方が700℃、下方が100℃といった条件で加熱が行われ、600℃の温度差が生じるような場合であっても合わせガラス内の熱エネルギーの伝播が早いので、ガラスが破壊され難いことを確認している。また3枚以上積層された各板ガラスの厚みが1mmを超える場合には、合わせガラスの重量が重くなり過ぎるので、特に中高層階の建造物への合わせガラスを適正にかつ効率良く少ない経費で短時間に施工するということを目標とする場合に、その施工性などで労力や時間を有することとなる場合もあり、好ましくない。
しかしながら、板ガラスの厚みは、0.3mm未満になると容易に撓みやすくなるので特に面積の大きい板ガラスでは製造時にその扱いが困難になる場合もある。また板厚が0.3mm未満では、板ガラス表面の帯電に伴う静電気の影響もガラス形状の変形などに表れやすくなるので、搬送などの工程に支障が生じる場合も生じ、そのための対策も施す必要があり、製造費用が高価になってしまう。このような問題を重要視する場合には、板ガラスの厚みは0.3mm以上とすることが好ましく、より好ましくは0.35mm以上、一層好ましくは0.4mm以上とすることである。
さらに本発明の耐熱合わせガラスは、前記合わせガラスの総厚Tが1.3mmから10mmの厚み寸法を有するものであって、介在層の総厚Sが、合わせガラスの総厚Tの3割から6割の範囲にあるので、耐熱性能に加えて十分に度高い機械的強度性能を発揮することができる構成となっている。すなわち、介在層の総厚Sが合わせガラス総厚Tの3割に満たない場合には、耐貫通性等について十分な強度を実現し難い場合もあるので好ましくない。また介在層の総厚Sが合わせガラスの総厚Tの6割を超える場合には、介在層の熱的な性能に、合わせガラス全体の熱的性能が大きく依存する場合も生じ、板ガラスの性能を限定しても安定した品位の性能を実現し難くなる場合が生じるため好ましくない。また合わせガラスの総厚Tが小さすぎると、十分高い機械的強度が得られないため1.3mm以上とするのが好ましい。また機械的強度を重視するならば、合わせガラスの総厚は3mm以上とするのがより好ましい。一方合わせガラスの総厚Tが10mmを超えると、合わせガラス全体の重量が重くなり過ぎるので、施工上の労力が大きくなり、施工費用が高価なものとなる場合もあり好ましくない。
また本発明の耐熱合わせガラスは、上述の熱的特性を満足するものであれば、ガラス材質を限定するものではない。すなわちガラス材質としてソーダ石灰ガラス、カリウム含有珪酸塩ガラス、チタン酸塩ガラス、水分高含有ガラス、無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、バリウム珪酸塩ガラス、アルミノシリケートガラス及びアルカリ土類ボレート系ガラス等から選択して使用することが可能である。ただし、膨張係数や軟化点における条件を確実に満足する材質としては、上述の内でも無アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、バリウム珪酸塩ガラス、アルミノシリケートガラス及びアルカリ土類ボレート系ガラスが特に好ましいものである。また板ガラスは、イオン交換強化等の化学強化処理や風冷強化等の物理強化処理を施してあってもよく、鉄やチタン等の遷移金属元素や金属コロイド等の着色成分をppmオーダーから小数点1桁オーダーの質量%百分率表示で表される程度だけガラス組成中に含有させることによってガラスに多様な彩色を施すことも可能である。
また本発明の耐熱合わせガラスは、上述に加え波長400nmから780nmにおける透光面の平均直線透過率が80%以上であるならば、建造物や車載用等の窓材として使用することによって十分に高い採光性を実現することができる。
ここで、透光面の波長550nmから700nmに於ける平均直線透過率が、80%以上であるとは、可視光線に相当する5500Å(オングストローム)から7500Åの範囲の電磁波の波長範囲について、透光面に垂直な方向での平均直線透過率を分光光度計によって計測すると80%以上の値となることを意味している。
また本発明の耐熱合わせガラスは、上述に加え介在層が樹脂を含むものであるならば、積層構造を構成する際に従来から蓄積された製造方法を採用することができるので、精緻な構成を容易に得ることが可能となり好ましい。
ここで介在層が樹脂を含むものであるとは、介在層の主要構成成分がプラスチック材であり、必要に応じて他の有機樹脂や無機材等の媒体を適量だけ添加することができるものであることを表している。
介在層を構成する樹脂については、本発明の耐熱合わせガラスの性能を実現することのできるものであれば、どのようなものであっても採用することができる。採用することのできる樹脂としては、例えばメタクリル樹脂(PMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、セルロースアセテート(CA)、ジアリルフタレート樹脂(DAP)、ユリア樹脂(UP)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルアルコール(PVAL)、酢酸ビニル樹脂(PVAc)、アイオノマー(IO)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、メラミン樹脂(MF)、不飽和ポリエステル(UP)、塩化ビニリデン(PVDC)、ポリスルフォン(PSF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のパーフルオロ樹脂、メタクリル−スチレン共重合樹脂(MS)、ポリアレート(PAR)、ポリアリルスルフォン(PASF)、ポリブタジエン(BR)、ポリエーテルスルフォン(PESF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)を適量だけ使用することができる。この内、特にポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)については、介在層の形成が容易で、高い透明性も有するものであるといった点で本発明に採用するには好ましいものである。
介在層の形成方法については、予め介在層となる液体状の樹脂を所定間隔で保持した板ガラス間に充填することによって介在層を形成する方法であっても、あるいはプレート状ないしフィルム状の介在層となる樹脂材を板ガラス間に挟みこんだ状態とした後に加熱することで板ガラスと介在層とを接合するものであってもよい。また板ガラス間にプレート状ないしフィルム状の介在層となる樹脂材を挟みこむ際に樹脂材と板ガラスとの間に接着剤を塗布した状態とし、その後加熱やUV照射等のエネルギーを付与することによって接合する方法を採用してもよい。
また本発明の耐熱合わせガラスは、上述に加え透光面の波長780nmから1100nmに於ける平均直線赤外透過率が、70%以上であるならば、赤外線により生じる温度上昇を低減することができ、急激に温度が上昇しないため、高い耐熱性を実現することが可能となり好ましい。
ここで透光面の波長780nmから1100nmに於ける平均直線赤外透過率が、70%以上であるとは、赤外光線に相当する7800Å(オングストローム)から11000Åの波長範囲の光線に対して、透光面に垂直な方向での平均直線透過率を分光光度計によって計測すると70%以上の値となることを意味している。
また本発明の耐熱合わせガラスの波長780nmから1100nmに於ける平均直線赤外透過率は、合わせガラスの外表面で反射されることによっても低下することになるので上限値があり、実質的な平均直線赤外透過率は、70%から93%までの範囲内の値となる。
波長780nmから1100nmに於ける平均直線赤外透過率は、赤外光源を有する校正された分光光度計を使用して計測したものであればよい。
本発明の耐熱合わせガラス構造物は、枠体に、上記の耐熱合わせガラスを固定したものであることを特徴とする。
ここで枠体に、上記の耐熱合わせガラスを固定したものであるとは、次のようなものである。すなわち板厚が1mm未満である3枚以上の板ガラスが、各板ガラス間に介在層を介して積層された合わせガラスであって、前記板ガラスの30℃〜380℃の温度範囲に於ける平均線膨張係数が−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあり、かつ該ガラスのJIS R3103−1(2001)に従う軟化点が830℃以上であり、前記合わせガラスの総厚Tが1.3mmから10mmであって、前記介在層の総厚Sが合わせガラスの総厚Tの3割から6割の範囲にある構成であり、透光面が略矩形状を呈する耐熱合わせガラスの周囲の少なくとも1つの端面と透光面とが接する辺を枠体に固定したものであることを表している。
枠体に耐熱合わせガラスを固定する方法については、樹脂材等により枠体と接着することによって固定するものであってもよく、枠体で挟持して固定するものやビスや止め具等を使用することによって固定するものであってもよい。また一辺の固定については、一つの辺の全体を固定する必要はなく、その一部だけ、あるいは特定箇所のみを1箇所あるいは複数箇所だけ固定するものであってもよい。
枠体については、金属、ガラス、ガラスセラミックス、プラスチック、ゴム、岩石及び木材の群より選ばれた1以上の材料を用いたものであればよい。
また本発明の耐熱合わせガラス構造物は、上述に加え耐熱合わせガラスの透光面の少なくとも1面に、被覆膜が形成されてなるものであれば、必要に応じて透過率の調整や透光面の硬度などを適正な状態にすることができる。
耐熱合わせガラスの透光面の少なくとも1面に、被覆膜が形成されてなるものとは、合わせガラスの板厚方向に対向する2つの透光面の内、少なくとも一方の面の表面に被覆膜(薄膜ともいう)が施されているということを意味している。
被覆膜の構成については、どのようなものであっても耐熱性や耐衝撃性、あるいは著しい透光性を損なうようなものでなければ採用することができる。例えば、被腹膜としては赤外線反射膜(又は赤外線カットフィルター)、反射防止膜(ARコートともいう)、無反射膜、導電膜、帯電防止膜、ローパスフィルター、ハイパスフィルター、バンドパスフィルター、遮蔽膜、強化膜、保護膜を必要に応じて使用することができる。被腹膜の厚みや、積層の数についても特に限定するものではない。
上記被覆膜に関して、その被覆膜の具体的な材質としては、次の様なものがある。例えばシリカ(SiO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、酸化タンタル(又はタンタラ)(Ta25)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化ランタン(La23)、酸化イットリウム(Y23)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化クロム(Cr23)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、酸化バナジウム(VO2)、酸化チタンジルコニウム(ZrTiO4)、硫化亜鉛(ZnS)、クリオライト(Na3AlF6)、チオライト(Na5Al3F14)、フッ化イットリウム(YF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化ガドリニウム(GdF3)、フッ化ディスプロシウム(DyF3)、フッ化鉛(PbF3)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)膜、酸化インジウム−スズ膜(ITO膜)、SiO2とAl23の多層膜、SiOx−TiOx系多層膜、SiO2−Ta25系多層膜、SiOx−LaOx−TiOx系列の多層膜、In23−Y23固容体膜、アルミナ固容体膜、金属薄膜、コロイド粒子分散膜、ポリメチルメタクリレート膜(PMMA膜)、ポリカーボネート膜(PC膜)、ポリスチレン膜、メチルメタクリレートスチレン共重合膜、ポリアクリレート膜等の組成を有するものが使用できる。
また被覆膜の形成方法についても所定の表面精度、機能を実現でき、製造に要する費用についても支障のない方法であれば特に限定されるものではなく各種の方法を採用してよい。例えばスパッタリング法、真空蒸着法、あるいは熱CVD法、レーザーCVD法、プラズマCVD法、分子線エピタキシー法(MBE法)、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、有機金属化学気相成長法(MOCVD)等の化学的気相成長法(またはCVD法)、さらにゾル−ゲル法、スピンコーティングやスクリーン印刷の塗布法、メッキ法等の液相成長法でも本発明に係る被覆膜を形成する方法として採用することができる。
また本発明の耐熱合わせガラス構造物の製造方法は、上述の本発明の耐熱合わせガラスの端面を枠体に固定するものであるため、多数の建造物に適用できる汎用性の高いガラス構造物とすることができる。
(1)以上のように、本発明の耐熱合わせガラスは、板厚が1mm未満である3枚以上の板ガラスが、各板ガラス間に介在層を介して積層された合わせガラスであって、前記板ガラスの30℃〜380℃の温度範囲に於ける平均線膨張係数が−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあり、かつ該ガラスのJIS R3103−1(2001)に従う軟化点が830℃以上であり、前記合わせガラスの総厚Tが1.3mmから10mmであって、前記介在層の総厚Sが合わせガラスの総厚Tの3割から6割の範囲にあるため、耐衝撃性などの機械的強度性能に優れるばかりでなく耐熱性にも優れた採光構造材であって、軽量性に富む透光窓として汎用性の高い合わせガラスである。
(2)また本発明の耐熱合わせガラスは、透光面の波長550nmから700nmに於ける平均直線透過率が80%以上であるならば、窓材として必要となる可視光線の透過率が高いため多くの建造物で使用することができる。
(3)さらに本発明の耐熱合わせガラスは、介在層が樹脂を含むものであるならば、用途に応じて様々な樹脂材を選択して使用することが可能であり、所望の性能を得ることができるように介在層の厚みや材料種の設計を行うことができる。
(4)また本発明の耐熱合わせガラスは、透光面の波長780nmから1100nmに於ける平均直線赤外透過率が70%以上であるならば、火災などの輻射熱を吸収して熱割れを起こしにくく、高い耐熱性を有する窓材として好適なものである。
(5)本発明のガラス構造物は、枠体に、上記本発明の耐熱合わせガラスを固定したものであるため、耐熱性ばかりでなく高い衝撃抵抗性をも求められる各種の建造物の窓材として種々の方法によって組み込むことができる。
以下に本発明の耐熱合わせガラスと、この耐熱合わせガラスを用いた構造物について、その詳細を具体的に説明する。
図1に本発明の耐熱合わせガラスの斜視図を示す。図中の10は耐熱合わせガラス、20は板ガラス、30は板ガラス間の介在層、11は耐熱合わせガラスの端面、12は耐熱合わせガラスの透光面、13は耐熱合わせガラスの端面と透光面との境界に相当する辺、Tは合わせガラスの総厚、Sは介在層の総厚(このSは個別の介在層の厚みの総和Σである)をそれぞれ表している。
この耐熱合わせガラス10は、15階以上の高層階を有する事務所兼商業施設用途の建造物の南向きの窓材用として設計されたものであり、0.68mmの厚み寸法を有する4枚の板ガラス20を積層し、それぞれの板ガラス20の間には3つの介在層30を挟んだ構造となっている。この4枚の板ガラス20は、その組成がいずれも酸化物換算の質量百分率表示でSiO2 63質量%、Al23 16質量%、B23 10質量%、MO(M=Ca、Mg、Ba、Sr、Zn) 11質量%よりなるものであり、液晶表示装置などに採用される無アルカリ組成を有する板ガラスと類似した材質を有するものである。
この板ガラス20の平均線熱膨張係数は、校正されたディラトメーター(線熱膨張計)による計測を行うことによって30℃から380℃の温度範囲で、32×10-7/Kの値を示すもので−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にある。また板ガラスの軟化温度については、日本工業規格であるJIS R3103−1(2001)に規定された計測方法によって計測すると、990℃であって830℃以上の値を有している。またこの板ガラスは、予め調合されたガラス原料を溶解して均質化した後に、ダウンドロー成形法により製造されたものであって、均質で表面は平坦なものである。
また介在層30を構成する樹脂は、ポリビニルブチラール(PVB)であり、予めフィルム状のポリビニルブチラールを板ガラス20の間に挟みこんだ状態とし、そのまま加熱、加圧することによって積層状態とすることで形成されたものである。板ガラス20の4枚の間隙にそれぞれ挟まれた3層の介在層30の各々の厚みは、いずれも0.51mmである。よって耐熱合わせガラス10の総厚Tは4.25mmであって1.3mmから10mmの範囲内にある。そして耐熱合わせガラス10の総厚Tに対する介在層30の総厚寸法Sの比率は36%となっており、総厚Tの3割から6割の範囲内にある。
またこの耐熱合わせガラス10の透過率は、校正された分光光度計を使用して計測すると、透光面の波長550nmから700nmに於ける平均直線透過率が88%となり、80%以上を示すものであって、さらに透光面の波長780nmから1100nmに於ける平均直線赤外透過率は78%であり、70%以上となるものである。
この耐熱合わせガラス10の端面11は、予め板ガラス20の透光面12の寸法、すなわち500mm×700mmの寸法に合わせた大きさの樹脂フィルムを2枚の板ガラス20の間に挟みこんだ状態で製造されているため、平坦度の高い面となっている。また耐熱合わせガラス10の最外面に位置する板ガラス20については、透光面12と端面11の境界に相当する耐熱合わせガラス10の辺13には、0.1mmのC面取り加工が施されている。
次いで本発明の他の耐熱合わせガラスを使用することで行った各種の試験について説明し、本発明の耐熱合わせガラスの耐熱性能や光線透過性能などについて明確にする。試験に使用したガラス及び試験結果を表1に示す。
本発明の耐熱合わせガラスを形成するために、まず日本電気硝子株式会社製の無アルカリガラス(ガラスコード OA−10)を板厚0.7mmとなるようにダウンドロー成形法によって板状に成形した。この板ガラス21の平均線熱膨張係数は、校正されたディラトメーター(線膨張係数計)による計測を行うことによって30℃から380℃の温度範囲で38×10-7/Kの値を示すもので−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にある。また板ガラス21のJIS R3103−1(2001)に従う軟化点が950℃で、830℃以上の値となっている。次いで得られたこのOA−10の板ガラスを評価に必要となる寸法、すなわち幅750mm、高さ620mmの寸法に切断し、厚みの異なるポリビニルブチラール(PVB)を本発明の構成を満足するような厚み寸法となるように必要枚数だけ板ガラス間にフィルム状の樹脂材として挟むことによって加熱圧着法によって成形した。
成形された板ガラスの評価としては、まず可視光線及び赤外光線についての透過率曲線の計測を行うため、透光面の面積が30mm×30mmの寸法になるようにガラス板切断装置で加工し、測定用試料を得た。この測定用試料の透光面について、分光光度計(株式会社 島津製作所UV−3100PC)を使用することによって、300nmから3100nmまでの分光透過率の計測を行った。また可視領域の波長400nm、550nm、700nm、及び赤外領域の波長1000nm、1500nmの5点については、その波長における透過率の値の計測を行った。
また、本発明の耐熱合わせガラスの耐熱性試験については、一方の透光面についてその大きさが90mm×90mmの透光面を有するものとなるように大面積を有する状態のものをガラス板切断装置等を使用して加工して試験片とした。この試験片について、酸素炎バーナーの筒先から約5cmの位置に透光面を保持した状態で直接火炎に120秒間曝し、ガラスの割れ、剥落が発生しないかどうかを調査する評価を行った。ガラスの剥落の有無は、目視観察によって確認することができるが、試験の再確認や正確な計測を行うためにビデオ撮影画像を録画してもよい。また試料片の保持は、耐熱性を有するトングなどの保持具を使用すればよい。またこの試験ではガラス片は飛び散る危険性があるため、防火環境の整った状態で評価を行う必要がある。そしてこの試験でガラス割れと剥落の認められなかったものを「〇」判定とした。
さらに、本発明の耐熱合わせガラスの防火設備試験については、本発明の耐熱合わせガラスが、建築基準法第2条第9号の規定に基づく平成12年5月30日建設省告示第1400号に従う「不燃材料」としての性能を有するものであるかどうかを評価するため、ISO834に従う標準加熱温度曲線となるように781℃まで20分間の加熱を行い、加熱時間中に非加熱側に延焼することがないかどうかを評価した。そしてこの評価によって、「不然材料」としての性能を確認することができた場合に「〇」判定とした。
以上の一連の評価を行った結果、表1からも明らかなように、本発明の実施例に相当する試料No.1については、OA−10材質の無アルカリガラスからなる6枚の板ガラスを、介在層として5枚の厚み0.38mmのPVBフィルム材を介して積層したものであって、介在層の総厚寸法Sは1.90mmであり、耐熱合わせガラスの厚み寸法Tの6.10mmに対して、31.1%に相当するものである。そしてこのような構成であるため、その透光面1m2当たりの質量は、12kgと小さいものになっており、十分な軽量性を有するものである。
またこの試料No.1についての透光面の可視透過率は、550nmで90.0%、700nmで90.4%となっており、その平均直線透過率は90%であった。また赤外領域についても透光面の透過率は、1000nmで89.7%、1500nmで75.3%であって、780nmから1100nmの平均直線赤外透過率は、90%であり申し分のない値であることが判明した。また試料No.1の可視領域と赤外領域の透過率曲線については、図2にその全容を示す。この図2の波長に対する分光透過率曲線により試料No.1は非常に高い透過率値を有するものであることは明らかである。
また本発明の実施例である試料No.2については、OA−10材質の板ガラス4枚を介在層として3枚の厚み0.76mmのPVBフィルム材で積層したものであって、介在層の総厚寸法Sは、2.88mmであり、耐熱合わせガラスの厚み寸法Tの5.08mmに対して44.9%に相当するものである。そして合わせガラスの総厚Tが薄めの積層構成であるため、その透光面1m2当たりの質量は9kgであって、高い軽量性を有する。またこの試料No.2についての透光面の可視透過率は、550nmで91.3%、700nmで91.7%となっており、その平均直線透過率は91%であった。また赤外領域についても透光面の透過率は、1000nmで90.5%、1500nmで74.9%であって、780nmから1100nmの平均直線赤外透過率は、91%であり申し分なく高い値であることが判明した。また試料No.2についての可視領域と赤外領域の透過率曲線については、図2にその300nmから2800nm付近までの分光透過率曲線を示す。この図2の波長に対する分光透過率曲線からも試料No.2は非常に高い透過率値を示すことは明らかである。
また本発明の実施例に相当する試料No.3については、OA−10材質の板ガラス5枚を介在層として4枚の厚み0.76mmのPVBフィルム材で積層したものであって、介在層の総厚寸法Sは、3.04mmであり、耐熱合わせガラスの厚み寸法Tの6.54mmに対して46.5%に相当するものである。そしてこの合わせガラスは、少し薄めの積層構成であるため、その透光面1m2当たりの質量は12kgであって、やや高い軽量性を有する。またこの試料No.3についての透光面の可視透過率は、550nmで90.1%、700nmで90.5%となっており、その平均直線透過率は90%であった。また赤外領域についても透光面の透過率は、1000nmで90.2%、1500nmで70.2%であって、780nmから1100nmの平均直線赤外透過率は、91%であり申し分のなく高い値であることが判明した。また試料No.3についての可視領域と赤外領域の透過率曲線は、他の実施例同様に図2に示す。この図2の試料No.3の波長に対する透過率の推移を示す分光透過率曲線は、十分に高い透過率値を示している。
また本発明の実施例に相当する試料No.4については、OA−10材質の板ガラス6枚を介在層として5枚の厚み0.76mmのPVBフィルム材で積層したものであって、介在層の総厚寸法Sは、3.80mmであり、耐熱合わせガラスの厚み寸法Tの8.00mmに対して47.5%に相当するものである。そしてこのような積層構成であるため、その透光面1m2当たりの質量は15kgであって、十分な軽量性を有する。またこの試料No.4についての透光面の可視透過率は、550nmで88.9%、700nmで90.0%となっており、その平均直線透過率は89%であった。また赤外領域についても透光面の透過率は、1000nmで87.7%、1500nmで63.5%であって、780nmから1100nmの平均直線赤外透過率は、88%であり申し分のない値であることが判明した。また試料No.4についての可視領域と赤外領域の透過率曲線については、図2にその全容を示す。この図2の波長に対する透過率のグラフからも試料No.4は高い透過率値を示すことは明らかである。
さらにこの試料No.4については、耐熱性試験と防火設備試験とを実施した。まず耐熱性試験については、録画撮影による検証によって次のような事実が確認できた。酸素炎バーナーによる加熱開始から0.54秒で介在層に使用しているPVBは発泡し始め、10秒後に黒化し始める。そして加熱開始から82秒経過した後に、耐熱合わせガラスはPVBの黒化したカーボンがガラス表面を被覆した状態となるものの、120秒経過後もガラスは破損することなく、剥落も発生することはなく高い耐久性を有する状態にあり「〇」判定となることが判明した。
また防火設備試験についても、前述したようにISO834に従い、温度の上昇曲線が時間t(分)の関数として345×log10(8t+1)+20に従う曲線に沿って上昇させて、781℃までの加熱を20分かけて行ったが、その20分の加熱期間中に非加熱側に延焼することはなく、「不燃材料」としての性能を有するものであり、「〇」判定となることを確認することができた。
一方、本発明の比較例である試料No.101については、市販の厚さ3mmのソーダ石灰板ガラス(平均線膨張係数が98×10-7/K)2枚を0.76mm厚のPVBよりなる介在層で挟みこんだ合わせガラスであるが、合わせガラスの総厚Tの6.76mmに対する、介在層の総厚寸法Sの割合が11.2%であり、さらに板ガラスが2枚のみで構成されたものであるのため本発明の要件を満足していない。このため高い耐熱性を実現し難いものとなっていることが予想できるので、それを確認するため、前記した実施例の試料No.4と同様の仕様に従う耐熱性試験を実施した。その結果、試料No.101については、酸素炎バーナーによる加熱開始から5秒経過後にガラスが破損し、加熱開始から40秒経過後に割れたガラス片が剥落した。そしてさらに80秒経過後、当初は2枚の板ガラスよりなる合わせガラスであったものが1枚のみ残留する状態となった。このように加熱から120秒間にガラス片が剥落することがないものとすることはできず、「×」判定となった。
また試料No.101については、透光面の可視透過率は、550nmで87.8%、700nmで83.1%となっており、その平均直線透過率は83%であった。また赤外領域についても透光面の透過率は、1000nmで73.0%、1500nmで68.7%であって、780nmから1100nmの平均直線赤外透過率は、67%であり、可視領域の透過率は高い値であるものの、赤外領域については70%未満となるものであった。
さらに試料No.102については、試料No.101と同様に市販の厚さ3mmのソーダ石灰板ガラス2枚を積層したもので、試料No.101と異なるのは、介在層であるPVBの厚み寸法が1.52mmとした点だけのものであるが、この試料は板ガラスが2枚のみである点、及び介在層の総厚寸法Sの合わせガラスの総厚Tに対する割合が20.2%と3割には満たないものである点で、本発明の要件を満足しておらず、試料No.101と同様に耐熱性に問題が発生することが予想できる構成である。
また試料No.103は、市販されている合わせガラスであるが、その構成は2枚の厚み3mmのソーダ石灰板ガラスを使用し、そのEVAよりなるそれぞれ厚さ0.5mmの介在層の中央に厚さ1.2mmのポリカーボネート(PC)製のプレートを介在させた構造のものである。この試料No.103は、その構造が本発明の要件を満足していない。すなわち板ガラスが2枚のみしか使用されていないこと、及び介在層の総厚寸法Sが1.00mmであるが、この総厚寸法Sの合わせガラスの総厚Tに対する割合が13.3%と低く、この2点について本発明とは全く異なるものである。
以上の一連の評価より、本発明の耐熱合わせガラスは、十分に軽量で、しかも高い耐熱性を有する構成となっていることが明瞭となった。
Figure 0004941896
本発明の耐熱合わせガラス構造物の例として、本発明の耐熱合わせガラスを使用したものについて、以下で説明する。本発明の耐熱合わせガラスの斜視図を図3に示す。この図3では、100は耐熱合わせガラス構造物、11は耐熱合わせガラスの端面、12は耐熱合わせガラスの透光面、13は耐熱合わせガラスの辺、21は板ガラス、31は介在層、40は枠体をそれぞれ表している。
この耐熱合わせガラス構造物100は、0.7mmのOA−21製の無アルカリ組成の板ガラス3枚を介在層として厚さ0.6mmのPVBフィルム2枚で積層した構造を有する矩形状の耐熱合わせガラスの端面11と四辺13とを固定するようにアルミ製の枠体でカバーしたものである。
ちなみに、耐熱合わせガラス構造物100を構成する板ガラス21の平均線熱膨張係数は、校正されたディラトメーター(線膨張係数)による計測を行うことによって30℃から380℃の温度範囲で32×10-7/Kの値を示すもので−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にある。そしてこの板ガラス21のJIS R3103−1(2001)に従う軟化点が990℃であり、830℃以上の値となっている。
また、介在層の総厚は、1.2mmであって、合わせガラスの総厚3.9mmに対して30.8%の比率を有するものである。そして耐熱合わせガラス構造物100の四辺13と耐熱合わせガラス100の透光面12はほとんど段差ができないように当接された状態となっている。この耐熱合わせガラス構造物100は、高層階の建造物に使用される場合であっても、軽量であるため取り付けに大きな労力を要せず、また高い強度に加えて耐熱性についても優れた性能を有するものであるため、特に防火性を意識する箇所に最適なものとなっている。
本発明の耐熱合わせガラスの斜視図。 本発明の耐熱合わせガラスの波長に対する分光透過率曲線を示す図。 本発明の耐熱合わせガラス構造物の斜視図。
符号の説明
10、100 本発明の耐熱合わせガラス
11 耐熱合わせガラスの端面
12 耐熱合わせガラスの透光面
13 耐熱合わせガラスの辺
20、21 板ガラス
30、31 介在層
40 枠体
T 合わせガラスの総厚
S 介在層の総厚

Claims (5)

  1. 板厚が1mm未満である3枚以上の板ガラスが、各板ガラス間に介在層を介して積層された合わせガラスであって、
    前記板ガラスの30℃〜380℃の温度範囲に於ける平均線膨張係数が−1×10-7/Kから50×10-7/Kの範囲にあり、かつ該ガラスのJIS R3103−1(2001)に従う軟化点が830℃以上であり、
    前記合わせガラスの総厚Tが1.3mmから10mmであって、前記介在層の総厚Sが合わせガラスの総厚Tの3割から6割の範囲にあることを特徴とする耐熱合わせガラス。
  2. 透光面の波長550nmから700nmに於ける平均直線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐熱合わせガラス。
  3. 介在層が樹脂を含むものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐熱合わせガラス。
  4. 透光面の波長780nmから1100nmに於ける平均直線赤外透過率が、70%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の耐熱合わせガラス。
  5. 枠体に、請求項1から請求項4の何れかに記載の耐熱合わせガラスを固定したものであることを特徴とする耐熱合わせガラス構造物。
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